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社会保険労務士田村事務所        事務所便り  『のぞみ』        平成20年5月号



保護される企業の「営業秘密」の範囲が拡大する可能性

 

◆年内にも指針を抜本的に見直し

経済産業省は、法律で保護する企業の「営業秘密」の管理手法の目安を示す指針を抜本的に見直し、年内にも改定する方針です。この見直しにより、これまでよりも幅広い範囲の情報が営業秘密として認められる可能性があります。

 

◆現在の「営業秘密」事情

不正競争防止法では、従業員が営業秘密を故意に漏らした場合などに刑事罰を科すことができるほか、被害を受けた企業が損害賠償や差止請求をできるとしています。保護の対象になる営業秘密については、経済産業省の「営業秘密管理指針」で定義された、以下の3つの要件を満たす必要があるとされています。

(1)機密管理性:施錠保管するなど秘密として管理している

(2)有用性:事業に有用な技術・営業上の情報である

(3)非公知性:公然と知られていない

法律だけでは営業秘密として保護される情報の範囲がはっきりしないため、2003年に、営業秘密と認められるのに必要な企業の管理手法などを例示した指針がつくられました。この指針では、営業秘密の「望ましい管理水準」として、情報へのアクセス制限や特定の管理者による施錠、パソコン保管時のパスワード管理などが列挙されています。

指針に法的拘束力はありませんが、秘密漏洩事件に関する裁判では、企業が指針に基づいた管理をしていたかどうかが、営業秘密と認定されるための重要な判断材料となります。指針に沿った管理をしていなかったため、漏れた情報が営業秘密と認められなかった例も多くあります。

 

◆見直しの内容

今回の見直しでは、企業側からの「これまでの指針は一律に高い管理水準を求めすぎている」との批判を受け、業種や企業規模に応じた弾力的な基準に改めることが検討されています。

具体的には、商品の研究開発や試験に長い時間がかかり、開発に失敗するリスクも高く、情報を幅広く企業秘密として認めて保護しなければ研究開発意欲をそぐおそれのあるバイオテクノロジー・医療分野などでは管理水準が下げられます。

また、中小零細企業も緩和の対象となる見通しです。特に中小企業などから不満の大きかった、管理の際の施錠やパスワード設定、社内での独立した秘密管理部署の設置などについては、削除したり条件を付けたりするなどして管理水準を緩和することが検討されています。

こうした見直しにより、従来よりも幅広い範囲の企業情報が営業秘密として保護される効果が期待されていますが、一方で、他社の企業情報等について、これまで以上に慎重に取り扱う必要が出てくるかもしれません。

 

処分決定前の自宅謹慎期間を

無給扱いにできるか?

 

◆重要情報を他社へ漏洩!

ある会社の社員が会社の重要情報を他社へ漏らしてしまい、処分決定まで自宅謹慎するように会社から命じられました。1週間の謹慎後、減給処分となりましたが、会社は「謹慎中は無給」と言い渡しました。就業規則には謹慎に関する規定は特になく、社員は納得できない様子です。

 

◆規定がなくても謹慎処分に付すことは可能

社員の行為が就業規則で定めた懲戒事由に該当する場合、会社は処分内容を決定します。処分決定をする前の段階として「自宅謹慎」や「自宅待機」を命じることがありますが、就業規則にこれらの扱いに関する規定がない場合、そのような謹慎・待機命令を下せるのかという問題が生じます。

大企業に比べ中小企業では、就業規則に謹慎に関する扱いを明記していないところが多いかもしれません。結論から言うと、そのような規定がなくても、処分決定前の自宅謹慎を命じることは、会社の指揮命令権の一環である業務命令として可能です。

会社の業務命令として自宅謹慎を命じた場合、社員が「働きたい」と言っても会社はこれを拒否することができます。会社には社員の行為が懲戒事由に当たるのか調査する必要があり、職場秩序を維持するためであれば当該社員に自宅謹慎を命じることもやむを得ないと認められるためです。

 

◆「謹慎」の付与名目によって異なる賃金支払義務

処分決定前に自宅謹慎を命じる場合の扱いをめぐる裁判には、「懲戒処分ではなくても、会社側に職場秩序維持の理由などがある場合」に謹慎を命じることができるとしたものの、このような場合の自宅謹慎は当面の職場秩序維持の観点からとられる一種の職務命令であることから、使用者には謹慎期間中の賃金の支払義務があると判断したものがあります(日通名古屋製鉄作業事件・平成3年7月22日名古屋地裁判決)。

他方、謹慎命令が、懲戒規定に基づいた「処分」として出されたものならば、謹慎期間中は無給でもよいとされています。例えば、調査のために1週間休むように命じた後、懲戒処分として再び1週間休むように命じた場合、後者の期間は無給となります。

しかし、処分対象の社員に会社内で強い権限があれば、安易に証拠をもみ消すことができるおそれもあります。前述の名古屋地裁判決は、このような場合には「不正行為の再発、証拠隠滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由」があるとして、例外的に処分決定前の謹慎でも無給にできると判断しています。ただし、この要件は厳格で、該当するケースはかなり限られます。

 

◆この問題に関するポイントは?

 ポイントは次の通りです。

1.規定がなくても、会社は業務命令として自宅謹慎を命じることができる。

2.自宅謹慎が懲戒処分として会社が命じたものである場合は、当該期間は無給でよい。

 

政府管掌健康保険が

1,577億円の赤字を計上

 

◆なぜこれほどの赤字になった?

主に中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険(以下、「政管健保」という)の医療費収支が、2007年度決算で1,577億円程度の赤字を計上する見通しとなりました。5年ぶりの赤字転落となりますが、社会保険庁では、2008年度も1,700億円程度の赤字が見込まれるとしています。

4年連続で黒字となるなど収支状況を回復していましたが、それがなぜこれほどの赤字を計上することとなったのでしょうか。

 

◆医療費の増加で採算が悪化

2007年度の政管健保の医療費収支見通しは、支出が前年度より4,000億円程度多い7兆2,744億円、収入が7兆1,167億円で、1,577億円の赤字となる模様です。

政府は、慢性的・構造的な赤字体質を改善すべく、2003年度に医療費の患者負担の割合を2割から3割へと引き上げました。これにより収支状況は改善しましたが、わずか4年間で再び赤字体質に陥ることとなりました。

また、2008年度には、メタボリック症候群を予防する特定健診・特定保健指導の開始で、新たに700億円の負担が発生します。そのため、2008年度も赤字となることが確実とみられています。

こうした赤字の背景には、政管健保の採算の急速な悪化があります。高齢化で医療費が大きく膨らむ一方、賃金の伸び悩みなどで保険料収入は微増にとどまっており、再び構造的な赤字体質に陥りつつあるのです。今後、大企業の社員等に、保険料引上げなどの形で負担が付け回される懸念もあります。

 

◆一時的な対策でなく抜本的改革が必要

社会保険庁では、財政の安定運営を目的に積み立ててきた「事業運営安定資金」を取り崩して赤字を穴埋めしますが、この残高は2006年末時点で約5,000億円程度。現在と同程度の赤字が今後も続けば、2009年度にも底をつきます。

厚生労働省は、社会保障費の伸びを抑制する観点から、政管健保に対する国庫負担金を1,000億円程度削減し、これを大企業の社員が加入する健康保険組合と公務員が加入する共済組合に肩代わりさせる特例法を国会に提出しました。これは2008年度の特例措置ですが、赤字が続けば、2009年度以降もこの肩代わりが行われる可能性もあります。ただ、負担を肩代わりさせるような対策では、根本的な解決にはつながりません。

現在、社会保険庁が運営する政管健保は、200810月より、全国健康保険協会管掌の通称「協会けんぽ」となり、国から独立した新たな健康保険として発足します。組織の移行だけではなく、制度自体の抜本的改革も望まれるところです。

 

フリーターの就職は依然として厳しい?

 

◆4年連続でフリーターが減少

2007年のフリーターの人数は、前年比6万人減の181万人となっており、ピークを迎えた2003年から4年連続で減少しています(総務省発表)。雇用環境の改善によるものとも言われていますが、2534歳のいわゆる「年長フリーター」の人数は、前年と横ばいの92万人となっており、依然として状況は厳しいようです。

フリーターを積極的に採用したいと考えている企業はまだまだ多くはないようですが、フリーターを採用する場合、企業はどのようなことを重視しているのでしょうか。

 

◆採用時の面接では「熱意・意欲」などを重視

独立行政法人労働政策研究・研修機構による調査(「企業における若年層の募集・採用等に関する実態調査」)では、フリーターの正社員採用について、過去1年間にフリーターを正社員として採用した企業の担当者が採用する際の面接で最も重視したポイントは「熱意・意欲」であるという結果が出ており、以下、「コミュニケーション力」「忍耐力」と続いています。

また、既卒者(学校卒業後すぐに就職する者以外で35歳未満の者。勤務経験の有無は問わない)を募集した理由について、新規学卒者枠で募集した企業では「新卒者と変わらないから」、中途採用枠で募集した企業では「即戦力になるから」という理由が多く挙がっています。

しかし、フリーター経験を「マイナスに評価する」とした企業が約40%に上るなど、フリーターの就職は依然として厳しい状況であることも明らかになっています。

◆今年度から導入される「ジョブ・カード制度」で変化は?

政府は、フリーターなどの就職を支援するため、今年度から「ジョブ・カード制度」を導入する方針です。職業訓練を受講した者にハローワークから職歴や職業訓練の受講歴を記載した「職業能力証明書」が発行されるもので、就職活動に活用してもらうのがねらいだそうです。

同制度は、企業が一定期間、フリーターなどを雇用しながら職業訓練を実施し、訓練実績や資格を記載した証明書を公的機関が発行する仕組みですが、職業訓練を行う企業には助成金や税制優遇などの経済支援が検討されています。

政府は2008年度からの5年間で100万人程度の同制度の利用を目指していますが、制度導入によりフリーターの就職状況は改善されていくのでしょうか。

 

5月の税務と労務の手続

[提出先・納付先]

 

10

    源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]

    雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>

[公共職業安定所]

    労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]

20

    労働保険の今年度の概算保険料の申告と昨年度分の確定保険料の申告書の提出期限<年度更新>[労働基準監督署]

    労働保険料の納付[郵便局または銀行]

31

    自動車税の納付[都道府県]

    健保・厚年保険料の納付

[郵便局または銀行]

    日雇健保印紙保険料受払報告書の提出   [社会保険事務所]

    労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]

 






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