社会保険労務士田村事務所 事務所便り 『のぞみ』 平成20年3月号
人材不足は再雇用者にも恩恵?
定年退職者の再雇用制度。
以前は再雇用者の仕事は補助的なものが多かったのですが、団塊の世代が退職期に入り,人手不足や技能伝承の懸念が強まる中、
有能なベテランを本格戦力として定着させて最大限に活用するために、給与や働き方を見直して企業内における中核業務に配置する動きが
出てきました。
◆
改正高年齢者雇用安定法
2006年に施行された,
改正高年齢者雇用安定法は、企業に社員の雇用期間を段階的に65歳まで引き上げるよう義務づけました。
引上げの方法としては、再雇用を中心とした「継続雇用」のほか、「定年延長」、「定年廃止」の3つがあります。
このうち、一般的にとられているのが、定年でいったん従業員を退職させた後、一定の能力があることなどを条件に
再雇用するものです。
厚生労働省が昨年6月に約8万2,000社を対象に行った調査では、
改正法には「継続雇用で対応する」と答えた企業が86%を占めました。
ただし、その待遇は、再雇用では賃金が大幅に減額される上、年金の支給が減額されてしまうケースもあり、
働き続けるメリットは小さいと考える退職者も多かったようです。
◆
定年退職者再雇用の最近の動き
定年退職者の再雇用制度を導入した大手企業の間で、
再雇用者の待遇を改善し、本格戦力として活用する動きが広がってきています。
少子高齢化で労働力人口の大幅な減少が予想される中、有能な高齢者の雇用を
促進する必要が出てきたためです。
たとえば、ある企業では、再雇用者の年収を最大で従来の2倍の1,000万円に引き上げています。
また、1日5時間程度の短時間勤務を可能にする企業もあります。
働きやすさを重視する人が退職後も同じ会社で勤められるような、
柔軟な勤務体系を導入する動きも広がってきました。
こうした待遇改善の動きが広がれば、
昨年初めて1,000万人を超えた60歳以上の就業者がさらに拡大しそうです。
少子高齢化問題や、技術継承に課題が残る昨今、各企業が高度な技術を持った
有能な人材を有効に活用していく方法を考えていく必要があるといえます。
勤務医減少に歯止めを!
小規模な公立病院を中心に、病院の医師(以下、「勤務医」)の確保が困難となってきています。
勤務医不足により、病院の存続が危ぶまれるケースも増加傾向にあります。
医師が安易に開業に走る例が増えているためです。
その一因として、勤務医は救急や夜間の産科などの激務が多いわりに、
一般的に収入が開業医より低いことが挙げられます。
勤務医の不足は、われわれの生活の安心に直結する問題です。
勤務医と開業医の格差是正と、それによる勤務医不足解消を課題とした
「2008年度診療報酬改定」について、その原案が明らかになりました。
◆
勤務医の報酬引上げ
勤務医に関する報酬が総額1,500億円規模で引き上げられます。
開業医から勤務医への所得移転を図り、給与面を改善することで、
医師確保につなげようとの考えです。
まず、医科の診療報酬本体部分(医師の技術料などがこれに当たります)が,
0.42%引き上げられます。これにより、約1,100億円、報酬が上乗せされることになります。
さらに、開業医向けの診療報酬から、約400億円程度が委譲されて、勤務医向けの財源に充てられます。
◆
開業医の再診料引下げ
現在、同じ病気で2回目以降の診察を受ける場合にかかる再診料は、
勤務医が570円(ベッド数200床未満)、開業医は710円です。
患者としては、自己負担が少なくて済む病院にかかりたいところですから、
勤務医のほうにかかる傾向が強まります。
これが勤務医の過重労働につながっているとの批判がありました。
そこで議論の焦点となったのが、開業医の再診料の引下げです。
再診料を同程度にすることで、これまで勤務医にかかっていた
患者を分散させようという狙いです。
しかし、医師会の反発に考慮し、再診料は下げない中途半端な決着と
なりました。再診料引下げに代わり、軽度の治療に対する報酬廃止、
外来管理加算の適正化、コンタクトレンズ検査料の引下げが提示され、
合わせて800億円弱程度の財源が提示されています。
◆
格差是正効果はどれほどあるか?
これらの対策により、300床の病院で年間5,000万円の収入増が見込まれます。
しかし、再診料こそが勤務医と開業医の不均衡の象徴ともいわれており、
この差額をそのまま残していたのでは、「開業医の再診料に手を付けずに済む範囲で
対策をまとめた」との批判が出る可能性もあります。想定した収入増が果たされなければ、
今回の中途半端な決着に批判が集まるのは避けられません。
今回の改定が勤務医の減少対策となり得るか、さらなる議論が必要になるといえそうです。
メタボリック・シンドローム
肥満症、高血圧、高脂血症、糖尿病、……こうした生活習慣病は、
それぞれが独立した病気ではなく、肥満(特に内臓に死亡が蓄積した「内臓脂肪型肥満」)が原因と
なって惹き起こされるものだということがわかってきました。
内臓脂肪型肥満によってさまざまな病気が起きやすくなった状態を「メタボリック・シンドローム」といい、
今では治療の対象として考えられるようになっています。
厚生労働省の平成17年国民健康・栄養調査によると、40−74歳の男性の2人に1人、
同女性の5人に1人がメタボリック・シンドロームか、その予備軍であることが報告されています。
◆
メタボリック・シンドロームの診断基準
メタボリック・シンドロームを構成する因子の中でも
重要視されているのは内臓脂肪の蓄積で、内臓脂肪の蓄積を必須項目とした
診断基準が各国で整いつつあります。
内臓脂肪の蓄積は、具体的には、ウエスト径で判断されます。男性85p以上、
女性90p以上であれば、内臓脂肪の蓄積が疑われます。
そのほかに血圧・血糖・血中脂質の判定項目が定められており、
2項目に該当した場合は、メタボリック・シンドロームと診断されます。
◆
特定健康診査の開始
平成20年4月からは、生活習慣病対策の強化を医療費抑制の重要な柱に位置づけた
医療制度改革関連法により、メタボリック・シンドロームに着目した
新しい特定健康診査・保健指導が始まります。
これは、毎年、健康診査によってメタボリック・シンドロームの
該当者・予備軍などを抽出し、リスクの高いグループに対し、効果的・効率的な保健指導を行うものです。
◆
メタボリック・シンドロームの改善策
メタボリック・シンドロームには、生活習慣が密接に関係しています。
生活習慣をちょっと見直すだけで、メタボリック・シンドロームを改善することができます。
メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは生活習慣を振り返り改善するところから始めましょう。
たとえば、食事は満腹になるまで食べてはいませんか?
間食をよくとっていませんか?
濃い味付けが好き、緑黄色野菜をあまり食べない、という食生活ではありませんか?
また、日頃から運動をあまりしていないのではないですか?
アルコールやタバコなどの嗜好品をとりすぎてはいませんか?
当てはまる項目が多い人は要注意です。まずは、腹八分目でやめる、
階段を利用するようにするなど、簡単なところから改善していきましょう。
食事療法や運動療法を3〜4カ月続けても改善がみられない場合は、
医師と相談の上、薬物治療が導入されることもあります。
生き生きと働き続けるためにも、自分の体について、ちょっと考えてみませんか?
派遣社員 2008年の動向
4月の改正パートタイム労働法の施行、
非正社員を正社員へ登用しようとする世の中の流れなどで、
派遣社員のなり手が少なくなっているようです。
そのため、派遣業界では売り手市場で人手不足が深刻化しています。
◆
人材派遣大手の研修メニュー
派遣会社各社では、優秀な派遣スタッフの囲い込みに躍起になっています。
各社とも、派遣社員にとってのメリットのアピールに余念がありません。
教育・研修メニューを充実させ、派遣スタッフへの無料研修を拡充してきています。
例えば、パソナグループでは、自社が派遣している店頭販売員向けの研修プログラムを新設。
販売キャリアセンターを開設し、店長経験者による無料講座、無料セミナーを実施しています。また、
カラーコーディネート、歩き方等のセミナーや、お茶・お花等の講座も行っています。
また、テンプスタッフでは、登録者のためのCAD技術の講習会を開講。
3日間のコースで、操作方法を習得するとしています。
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派遣社員を取り巻く環境
日本人材派遣協会が全国の派遣社員を対象に行ったアンケート調査により、
2007年の派遣社員の平均時給が1,417円であったことが明らかになりました。
正社員の1日の労働時間=8時間に換算すると、1万1,336円となります。
厚生労働省がまとめた2006年度調査では、派遣社員の平均日給は1万571円でした。
調査対象が異なることも考慮に入れなければなりませんが、最近の人手不足を受けて
派遣社員の賃金が上昇しているのは間違いありません。
派遣社員の賃金の上昇傾向は、2008年も続くと思われます。
日本人材派遣協会のアンケート調査によると、派遣で働いている人の93.4%が女性、
平均年齢は34.5歳となっています。時給は1,200円から1,400円未満が最も多く、
次いで1,400円から1,600円未満、1,600円から1,800円未満と続きます。
もっとも、時給は都道府県によって開きがあります。
たとえば、都道府県別では東京が最も高い時給となっており、平均時給は1,604円です。
精神障害者の就労問題
15−64歳の精神障害者のうち、授産施設や企業などで働いている人は17.3%にとどまることが、
厚生労働省の実態調査で明らかになりました。
厚生労働省では、5年ごとに身体・知的障害者について就業状況を抽出調査していますが、今
回初めて精神障害者も調査対象となったものです。
調査は、昨年7月1日時点で15−64歳の身体・知的・精神障害者計約21,300人を対象に実施、
計約7,100人から回答を得ました。精神障害者は、うち約1,200人です。
◆
就業実態調査結果の概要
全国の15−64歳の精神障害者は、35万1,000人と推計されますが、
このうち、就業している者が6万1,000人(17.3%)となっています。
就業状況を就業形態別にみると、常用雇用は18.8%、常用雇用以外の形態での雇用は59.7%です。
現在不就労の人のうち、62.3%が就労を希望し、うち50.7%が求職活動をしています。
休職活動の内容をみると、「広告、ちらし等」が53.5%と最も多く、次いで「公共職業安定所に申込み」、
「就業・生活支援センターに相談」、「知人、友人に相談」の割合が高くなっています。
◆
精神障害者就労の課題
同調査では、身体障害者は全体の43%に当たる57万8,000人が、
知的障害者は全体の53%に当たる18万7,000人が就労していることが明らかになっています。
今回の調査により、精神障害者の就労割合は身体・知的障害者の就労割合を大幅に下回り、
精神障害者がなかなか仕事につけない実態が浮き彫りとなりました。
ハローワークなどへの相談では、精神障害者の就労希望者は増えています。
厚生労働省障害者雇用対策課では、働きたいのに働けない精神障害者が多いことから、
「企業に奨励金を出すなど支援を強めたい」としています。
生活保護が年金の代わり!?
高齢無年金者問題
「無年金者」「低年金者」と呼ばれる人たちがいます。
保険料未納等により受給要件を満たさないために年金をまったく受け取ることのできない人、
加入期間が短い等の理由のために年金額が低い人のことです。
高齢期に低所得となり、年金や貯蓄では生活を賄えない人の最後の拠り所となるのが、生活保護です。
2005年時点で生活保護を受けている65歳以上の高齢者のうち、50%以上が「無年金者」であるといわれています。
これは、公的年金の役割を生活保護が事実上肩代わりしている実態を表しているといえるでしょう。
◆
高齢無年金者の現状
生活保護を受けている無年金者は2005年時点で約29万4,000人、
1998年度の14万4,000人から,
7年間で2倍以上に増えています。
低年金のため、年金と生活保護を合わせて受給している高齢者も増加
しています。
自営業者等と異なり、年金以外に収入を持たないような人は、
基礎年金額のみでは生活は困難だからです。
調査によると、こうした人の平均年金受給額は月4万6,000円で、
生活保護を受けていない人の平均額11万円強の半分以下です。
保険料の納付率低下が問題となっていますが、これにより、
将来の無年金者・低年金者の増加や、それに伴う生活保護受給者の増加を
懸念する声もあります。現在、生活保護予算は増加の一途をたどる見通しで
、2007年度の生活保護予算は2兆6,000億円、15年前の約2倍にふくらんでいます。
◆
年金と生活保護の関係
年金額が生活するのに十分でない場合、
預貯金がない、勤労が困難である、親類の支援がない、等の条件を満たせば、
生活保護の受給対象となります。.
無年金者・低年金者の多くが、この条件を満たし、生活保護の受給対象と
なっているのが現実です。
現行の年金制度は、無年金・低年金の高齢者が生活保護に流れることで、
「国民皆年金」の前提が崩れ始めています。
また、将来の年金給付額の水準が生活保護よりも低い場合に納付意欲に影響を
与えるおそれがあること、保険料を納めずに生活保護を受ける人に対する不公平感など、
問題点も挙げられています。
無年金者・低年金者の発生を防ぐための一番の対策は、
国民年金の保険料納付率向上のための対策をとることです。
年金制度改革において、高齢者に対して一定額の所得を保障する制度を設けると
いった案も提案されています。
無年金者・低年金者の問題は、年金改革論議にも一石を投じることとなりそうです。
3月の税務と労務の手続
[提出先・納付先]
1日
○
固定資産課税台帳の縦覧開始
<20日まで>[市区町村]
10日
○
源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○
雇用保険被保険者資格取得届の提出
<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
○
労働保険一括有期事業開始届の提出
<前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]
15日
○
個人の青色申告の承認申請書の提出
<新規適用のもの>[税務署]
○
個人の道府県民税および市町村民税の申告[市区町村]
○
個人事業税の申告[税務署]
○
贈与税の申告期限
<昨年度分>[税務署]
○
所得税の確定申告書の提出[税務署]
○
確定申告税額の延期の届出書の提出
[税務署]
31日
○
健保・厚年保険料の納付
[郵便局または銀行]
○
日雇健保印紙保険料受払報告書の提出[社会保険事務所]
○
労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出
[公共職業安定所]
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