烏賊と電脳のホームページ

烏賊と電脳の綜合百科事典
烏賊の王様

烏賊の分類と各論

分類に依る索引(ツツイカ目)

(赤文字の部分をクリックすると詳細説明が表示されます。)

(分類は、主に須山三千三、鴻巣章二、浜部基次、奥田行雄各氏共著、恒星社厚生閣刊『イカの利用』に依る)


アカイカ科(スルメイカ類)

スルメイカ類には世界の大洋に亘って広域分布するコスモポリタン種が多く、現在の處では11属25種(亞種)の分布が知られて居る。スルメ イカ類の内、既に利用されて居る日本周辺のスルメイカと外国産のニュージーランドスルメイカ、カナダイレックス等は、それぞれの夫々れの 生活圏内で索餌成長と生殖産卵の爲に季節的、場所的に方向が逆に成る回遊移動を行う。生活圏(分布域)の低温側縁邊域に向かって 秋冬季に大群を形成して回遊し、其の途上で魚道漁場を形成しつつ、濃密に群集し、産卵水域では深處へ沈降し走光性が減退し、分散して 産卵すると謂う共通の生態特性が認められる。スルメイカ類は、索餌と産卵の爲に粗(ほぼ)1年の寿命の間に遠距離の回遊移動を前後 2回に亘って行うが、此の回遊に際しては性格の異なる水塊の接触面に形成される海洋構造性極前線から、局地的な潮境、潮目等、海水の 流動に伴う収斂發散区域に溜まる爲、漁業上利用し易く、此の類の者が、現在は勿論、將來の利用に關しても有用烏賊供給の主座を占める 者と考えられる。

躰は筋肉質で中・大型。外套膜は円筒円錐形。鰭は菱形で後位。漏斗軟骨噐は逆T字型。腕吸盤は2列。触腕吸盤は一例外を除いて4列。 囲口膜は第4腕の脊側に聨結する。幼稚期はリンコトウチオンと呼ばれ触腕が融合して居て一本の状を呈す。吻3亞科、11属。

ジンドウイカ科(ヤリイカ類)

ヤリイカ類はスルメイカ類と共に、筒形の細長い筋肉の締まった外套膜を有し、遊泳力は強く、外套膜の後端には菱形の鰭(ひれ)が有る。資 源量の多い種群を含む者の双璧で有る。肉質は柔らかく美味で有る爲、世界各地で廣く食用に供される者が多い。ヤリイカ類は、コウイカ類と 異なり、新旧両大陸沿岸に分布するが、形態的には閉眼型で有る事、漏斗軟骨噐が単純な事、生態的には沿岸種で有り、産卵期には淺處に 産卵回遊して集群する事を利用して漁獲される。産卵に當たっては、隠元豆等の実莢状を仕た紡錘形の寒天質卵嚢内に數箇乃至數十箇の 卵を納めて地物に附着する様に産卵する者が多い。

現在の處では8属60種の分布が知られて居り、多くの種が温帯から熱帯に集中して居るが、地理的分布を觀ると、大西洋乃至地中海に4種、 アメリカ大陸に9種(西岸4種、東岸5種)、印度洋乃至西太平洋(紅海、北オーストラリア)に40數種で有る。猶、從來8属と分類されて居たが、 最近では細分化の方向に在り、安定して居ない。此處では西太平洋の物を中心に10属とする。 ヤリイカ類でも外套長20糎以上に成る者が經濟價値は大きく、巨大種としてはヨーロッパオオヤリイカ(40糎)が有る。日本から東南亜細亜 一帯に懸けてアオリイカ、ケンサキイカ、ヤリイカ、ブドウイカ等20〜40糎級の中・大型種が數種分布して居る。ヤリイカ類は、一般に肉質に 弾力が有り乍ら適当に柔らかく、美味で有る爲、小型の者でも地域的に生鮮消費されて居る事が多い。日本のベイカや東南亜細亜のアジア ジンドウイカ、北米西岸のカリフォルニアヤリイカ等は小型乍ら漁獲対象種と成って居る。北米北東岸ニューヨーク沖では最近に成ってアメリカ ケンサキイカのトロール漁業が活溌と成り、諸外國船に混じって日本のトロール船團が數千屯の漁獲を上げて居る。

ツメイカ科

此の類の烏賊は、躰は中型乃至巨大型で、長円錐形で筋肉質の外套膜を有し、一見スルメイカに酷似して居るが、触腕掌部に吸盤の代わり に2列の強大な鈎列が有る。亦、背軟甲後端に硬化した円錐が有る。鰭は菱形で後位。腕吸盤は2列。交接腕化は無い。漏斗軟骨噐は單純。 囲口膜は第4腕腹側に聨結して居る。

ツメイカの仲間には深層冷水性で巨大種(最大外套2米)のニュウドウイカが有り、三陸海岸から北部北太平洋、カリフォルニア沖に懸けて知ら れて居る。3属5種で生物資源學的知見は多く無い。

テカギイカ科

躰型はスルメイカ型で有る。外套膜は長円錐形で、鰭は菱形か幾分丸味が有り後位。第1〜3腕の吸盤は4列で、其の内側の2列は鈎に變 形して居る。交接腕化は認められ無い。触腕を有する者は吸盤が密生し、少數の者が大型の鉤に變わる場合が有る。漏斗軟骨噐は單純。囲 口膜は第4腕の腹側に聨結。北太平洋の広域分布種が多い。4属。

ホタルイカモドキ科

少數属を除いて小型種が大部分で有る。躰型は1、2の例外を除いて代表種で有るホタルイカ型が普通で有る。ホタルイカの名前が象徴する 様に、強力な發光噐を多數有する者が多い。發光噐は外套膜、頭部腹面、腕部、眼胞腹面に分布して居る。外套膜は円錐形、鰭は菱形後位。 腕吸盤は2列だが、希に先端而巳4列。一部鉤に變化。触腕掌部に鈎が有り、縁吸盤列は退化的。同着噐は明瞭。囲口膜は8尖葉で、第4 腕には脊側で接着して居る。5属。

ソデイカ科

外套膜は筋肉質で円錐形。鰭は菱形で外套の粗全長に及ぶ。漏斗軟骨噐は横向きのT型、頸部軟骨噐は2箇の瘤状突起から成る。腕の保 護膜を支持する肉柱が極めて長い。囲口膜は第4腕の腹側に聨結する。腕吸盤2列、触腕吸盤4列。發光噐は無い。2属。

ピックフォードイカ科

躰は小型で、外套膜は円筒形。鰭は丸耳型。軟甲は鳥羽型。腕吸盤は2列で、触腕頭掌部も吸盤が2列だが、先端部は4列。囲口膜には吸 盤を欠く。漏斗軟骨噐は眞直で單純。フロリダ半島に只一種。

リコトゥチス科

外套膜は短円錐形。鰭は菱形。腕吸盤は2列で、触腕掌部吸盤は4列。囲口膜は8尖葉で、第4腕では脊側に聨結する。内臓上と眼胞の腹 列に發光噐を持つ。2亞科3属。

マダマイカ科

外套膜は円錐形。鰭は丸い。躰後端は軟甲で硬化して居る。外套膜、頭部、腕表面には發光噐は無いが、内臓上、眼胞周囲、及び、触腕柄 部に發光噐が有る。2属。

ダイオウホタルイカモドキ科

外套膜は柔軟、鰭は亞菱形で外套膜の全長に及ぶ。大型。外套膜上、及び、頭部、触腕柄部に發光噐が散在するが、腕や内臓上や眼胞に は發光噐を欠く。1属。

ヤツデイカ科

外套膜は円錐形で表層は寒天状。鰭は亞菱形で兩葉は一續きで、鰭長は外套長の75%以上に及ぶ。稚仔時は触腕が有るが、成体では欠 く。腕には2列の鉤列が有り、先端は吸盤の場合が有る。囲口膜聨結は第4腕の腹側。漏斗軟骨噐は眞直で單純。2属。

ワルビストゥチス科

外套膜は柔らかく円錐形。鰭は廣い櫂型。漏斗軟骨噐は弛く曲がるが單純。腕吸盤は2列。囲口膜は保護膜の極めて擴がった第4腕の腹側 に接着。第3腕先端の吸盤は膨大する。触腕は極めて退化的で脆弱。軟甲は後方に而巳翼状部を持つ。1属。

ウチワイカ科

外套膜は円錐形で、鰭は丸味が有り外套長の70%に及ぶ。腕吸盤は2列、触腕吸盤は4列。囲口膜は第4腕腹側に聨結。漏斗軟骨噐は亞 三角形状。發光噐を持つ。2属。

ナンキョクイカ科

躰は中型。鰭は菱形。漏斗軟骨噐は單純。腕吸盤は2列、角質環は平滑。囲口膜は第4腕の脊側で聨結。触腕頭は稍傾き、掌部と先端部吸 盤は4乃至7列で、基部吸盤は2列。發光噐は無い。軟甲翼部は廣い。

ウロコイカ科

躰は大型。鰭は丸い。漏斗軟骨噐は單純。囲口膜は第4腕の腹側に聨結。腕吸盤は2列で、触腕は無い。外套膜表面が鱗状を呈す。1属。

ヤワライカ科

躰は中・大型。鰭は菱形。外套膜表面は硬い軟骨様の多角形顆粒に被われるが、後部は此れを欠く。漏斗軟骨噐は單純。囲口膜は第4腕の 腹側に接着。腕吸盤は2列。触腕は長く吸盤4列。

ダイオウイカ科

躰は巨大。外套膜は長円錐形。鰭は卵円形。腕吸盤は2列。触腕は極めて長大で、掌部から先端部に懸けて吸盤は4列で、内列吸盤は縁列 に比較して極めて大きい。掌部基部に密生した小吸盤の塊が有り、柄部にも疎らな吸盤群が有る。囲口膜は第4腕の脊側に聨結する。漏斗 軟骨噐は單純。1属。

ゴマフイカ科

外套膜は丸味の有る短円錐形で、鰭は丸く小さい。頭部は大きく、左眼が右眼より著しく大きく不相称。漏斗軟骨噐は幅廣く緩く曲がる。腕吸 盤は2列。囲口膜は第4腕の脊側に聨結。触腕掌部は稍傾き4列、又は、其れ以上の吸盤が稍不規則に配列する。外套膜、頭部、腕上に特 有の發光噐が密に分布する。1属。

ネオトゥチス科

躰は小型。外套膜は長円錐形。鰭は丸味が有り、前葉を欠く。漏斗軟骨噐は單純。腕吸盤は2列。触腕掌部から先端部には吸盤4列で有る が、掌部基部寄りには極めて多數の小吸盤が密生する。囲口膜は第4腕の脊側に聨結する。3属。

ナツメイカ科

躰は卵円筒形。鰭は丸耳形で兩葉離れて居る。漏斗軟骨噐は直線的。腕吸盤は2乃至4列で配列は稍不規則。囲口膜には小吸盤を持ち、 第4腕脊側で聨結する。触腕吸盤列は多い。第1腕乃至第3腕の基部には發光噐が埋没存在する。1属。

ヒレギレイカ科

外套膜は卵円形。鰭は外套膜全長に及び櫛歯状。第1腕乃至第3腕の先端方は吸盤4乃至6列。触腕吸盤列は8乃至14列。囲口膜に小吸 盤を持ち、第4腕の腹側に聨結する。漏斗軟骨噐は單純。外套腔内に發光噐が有る。1属。

クビナガイカ科

外套膜は長円錐形で、鰭は小さいが亞菱形。漏斗軟骨噐は單純。腕吸盤は2列。囲口膜は第4腕の腹面に接着。触腕掌部基部寄りには小 吸盤列が不規則に密生する。未成体期には頸が伸長して居る。1属。

コウモリイカ科

外套膜は長円錐形で、後方は長い尾に成る。鰭は丸く小さい。腕は細く、吸盤2列。触腕も細く掌部も長く6列の柄の長い吸盤列を持つ。囲口 膜は第4腕の腹側に聨結して居る。漏斗軟骨噐は單純。1属。

ユウレイイカ科

躰は寒天質。外套膜は短円錐形。後方は長い尾状と成り、鰭は丸い。漏斗軟骨噐は丸く、中に1乃至2箇の突起を持つ。腕吸盤は2列、触腕 吸盤は4列。囲口膜は第4腕の腹側に聨結する。發光噐を持つ物が多い。4属。

ムチイカ科

躰は寒天質。外套膜は長円錐形。鰭は大きく丸い。漏斗軟骨噐は丸い。窩内突起は屡々貧弱。腕吸盤は2列。囲口膜は第4腕の腹側に接着 する。第4腕は膨大して居る。触腕は細く、掌部は擴がら無いが、微細な吸盤が無數密生して居る。躰表面に埋もれた發光噐を散布する。14 種記録されて居るが、不完全標本に基づく物が有り不安定。2属。

ダルマイカ科

外套膜は卵円形で、鰭も丸味が有る。外套膜は頸部で頭と癒着して居る。漏斗軟骨噐は丸い。眼は退化的。腕吸盤は2列。囲口膜は第4腕 の腹側に聨結。触腕は太く8列以上の小吸盤が密生する。發光噐は持た無い。1属。

トックリイカ科

外套膜は卵円錐形。漏斗軟骨噐は無く、外套膜と癒着して居るが、頸部は遊離。鰭は丸く、外套膜後部に延長した尾上に更に鰭状葉が有り 鰭が2枚有る様に觀える。腕吸盤は2列。囲口膜は第4腕の腹側に聨結。触腕を欠く。1属。

オナガイカ科

外套膜は細長く、後部に外套長より長い尾部を持つ。鰭は小さく丸い。漏斗軟骨噐は丸い。腕吸盤は第1腕乃至第3腕で6列、第4腕で4列。 囲口膜は第4腕の腹側に聨結。触腕は長く、掌部は狭く8乃至10列の小吸盤が密生する。發光噐は無い。1属。

サメハダホウズキイカ科

外套膜は卵形袋状乃至細長い円錐形。鰭は円形。外套膜は漏斗兩側と頸で頭部に癒着して居て軟骨噐を欠く。腕吸盤は2列。囲口膜は第 4腕の腹側に聨結。触腕吸盤は4列を基本とし、稀に鉤状に成る。發光噐を持つ。2亞科に分類される。13属。


イレックス属

イレックス亞科の特徴と仕て、漏斗溝は平滑、發光噐は無く、囲口膜と第2腕基部の間に小孔が有る。触腕先端の吸盤は8列。4種。

ニセイレックス属

イレックス亞科の特徴と仕て、漏斗溝は平滑、發光噐は無く、囲口膜と第2腕基部の間に小孔が有る。触腕先端の吸盤は4列。外套膜が稍 太短い。1種。

スルメイカ属

スルメイカ亞科の特徴と仕て、漏斗溝に縦溝域而巳を有し、發光噐は持たず、囲口膜と第2腕の間の小孔は無い。交接腕變形は右第4腕先 端而巳。5種・亞種。

アカスルメイカ属

スルメイカ亞科の特徴と仕て、漏斗溝に縦溝域而巳を有し、發光噐は持たず、囲口膜と第2腕の間の小孔は無い。交接腕變形は右端而巳。 触腕柄部に顯著な肉嘴を具えて居る。1種。

ニュージーランドスルメイカ属

スルメイカ亞科の特徴と仕て、漏斗溝に縦溝域而巳を有し、發光噐は持たず、囲口膜と第2腕の間の小孔は無い。交接腕變化は右腕而巳 成らず左腕基部に肉質鋸歯が現れる。3種(?)。

アカイカ属

アカイカ亞科の特徴と仕て、漏斗溝に縦溝域而巳成らず側部に袋状肉襞を持ち、直腸上、及び・又は、外套膜組織内に發光噐を持つ。直腸 に發光噐は無いが、外套膜腹面の組織に埋没した様な網目状發光組織が散布する。老成すると第3腕泳膜が擴張する。1種(?)。

アメリカオオアカイカ属

アカイカ亞科の特徴と仕て、漏斗溝に縦溝域而巳成らず側部に袋状肉襞を持ち、直腸上、及び・又は、外套膜組織内に發光噐を持つ。アカイ カ属に類似するが、各腕の先端は非常に細まり、吸盤が100乃至200對以上も並ぶ。1種。

ニセアカイカ属

アカイカ亞科の特徴と仕て、漏斗溝に縦溝域而巳成らず側部に袋状肉襞を持ち、直腸上、及び・又は、外套膜組織内に發光噐を持つ。鰭は 短く幅廣い。外套膜前脊面に卵円形の發光域が有る。幼時期而巳直腸上に發光噐を持つ。2種(?)。

スジイカ属

アカイカ亞科の特徴と仕て、漏斗溝に縦溝域而巳成らず側部に袋状肉襞を持ち、直腸上、及び・又は、外套膜組織内に發光噐を持つ。外套 膜腹面から頭部腹面に懸けて筋状の發光噐が有る。1種。

シラホシイカ属

アカイカ亞科の特徴と仕て、漏斗溝に縦溝域而巳成らず側部に袋状肉襞を持ち、直腸上、及び・又は、外套膜組織内に發光噐を持つ。外套 膜腹面に19箇の円形發光噐を具える。1種。

ヤセトビイカ属

アカイカ亞科の特徴と仕て、漏斗溝に縦溝域而巳成らず側部に袋状肉襞を持ち、直腸上、及び・又は、外套膜組織内に發光噐を持つ。外套 膜は細く例外的に漏斗溝側襞と外套上に發光噐を具え無い。直腸上に顯著な2箇の發光噐を持つ。2種。

アオリイカ属

鰭は外套膜の粗全長に及び卵円形。4種、内日本産1種。

ヨーロッパヤリイカ属

鰭は菱形で、後位、外套長の約半長に及ぶ。囲口膜の尖葉には2列宛の小吸盤が有る。約10種、日本産は無い。

ヤリイカ属

躰が細長く成る點でヨーロッパヤリイカ属に類似するが、交接腕の中央に鶏冠状の肉質隆起板を有する。4種、内日本産は1種。

ケンサキイカ属

外套腔内、直腸兩側に細菌性の發光噐を持つ。6種、内日本産は1種。

ウロトゥチス属

外套膜後端は鰭後縁を超え明らかな尾部を形成する。直腸上に發光噐を持つ。亦、囲口膜に小吸盤が有る。熱帶西太平洋産のバルッチ只一 種。

トガリイカ属

雄の躰が極めて細長い點でウロトゥチス属に類似するが、發光噐と囲口膜吸盤を欠く。大西洋と地中海に3種。

ジンドウイカ属

躰は稍小型。鰭は小さ目。發光噐は無い。交接腕の肉嘴が密着し恰も柵状。4種、總て日本産。

ロリオルス属

外套膜は短く、鰭は丸味が有る。軟甲翼部は幅が廣い。左第4腕が交接腕化して居るが、吸盤は無く嚢状に膨大して居る。3種、日本産は無 い。

フクロジンドウイカ属

外套膜は太短く、鰭は丸味が有り幅廣い。腕吸盤環は總て四角い歯が有る。交接腕は吸盤が退化し柄部が延びた兩櫛歯状で肉隆は無い。

パナマニセジンドウイカ属

鰭は小さく楕円形に近い。囲口膜は小吸盤を有す。雄の右第4腕には肉葉片が有り、左第4腕は鞭状に延長する特異な交接腕を持つ。軟甲 は極めて薄い。東太平洋に只一種。

ホンツメイカ属

躰は筋肉質。頸に多數の肉襞を持つ。直腸上に2箇の發光噐が有る。軟甲の後端は鋭く尖る。猶、日本近海を含めて低緯度域に分布するホン ツメイカは數種から成る複合種で有る事が明らかにされつつ有る。4種以上。

ホソツメイカ属

ホンツメイカ属との差違は、直腸上の發光噐を欠く而巳。2種以上、日本産は未知。

ニュウドウイカ属

巨大種を含む。外套膜は多くの場合粗造。触腕には縁列吸盤を欠く。軟甲の後端に軟骨様の尾錐を被る。5種以上、日本産は2種。

テカギイカ属

触腕に大鉤が生じる。11種以上、日本産は6種。

ニセテカギイカ属

鰭は丸味が有る。触腕には鉤を生じず、小吸盤が密生する。千島以北の亞寒帶太平洋西部に只一種。

タコイカ属

成体形では触腕を欠く。4種。

ドスイカ属

鰭は菱形。触腕には鉤を持たず、小吸盤が密生する。ニセテカギイカ属とは、触腕の性質が一見似て居るが、歯舌が1列7歯で有る點、5歯 のニセテカギイカ属と異なる。2種。

ホタルイカモドキ属

外套膜後端は蜂窩状組織の尾部と成る。外套膜上の發光噐は稍線状に並ぶ。眼胞腹面の發光噐は9箇。右第4腕が交接腕化する。腕の口 側面が顆粒状で触腕が弱く其の先端小吸盤列が2列の亞属4種と腕の口側面が平滑で触腕が強く其の先端小吸盤列が4列の亞属5種に分 類される。9種、内日本産は5種。

エニグマトゥチス属

ホタルイカモドキ属に類似するが、触腕の鉤は1列而巳。亦、第4腕は脊側で囲口膜と聯絡する。眼胞の發光噐は9箇を原則とするが、小發光 噐が間に入る事も有る。紅海に只一種。

ナンヨウホタルイカ属

外套膜は短め。眼胞上の發光噐は5箇。第4腕先端に大發光噐は無い。交接腕は左右孰れかの第4腕。5亞属16種、内日本産は6種。

ニセホタルイカ属

第4腕先端に大型黒色の發光噐を持つ。4亞属12種、内日本産は3種。

ホタルイカ属

眼胞上の發光噐は5箇。第4腕先端に大型黒色の發光噐を3箇持つ。触腕の鉤は片側而巳で2箇。交接腕は右第4腕に半月形の肉葉が2箇 生じる。日本近海に只一種。

ソデイカ属

ソデイカ科の特徴に同じ。大西洋、太平洋の温帶、熱帶域に只一種。

シロブラチウム属

腕肉柱が分離して居て長いと謂う特徴を持つが、恐らくソデイカ属の幼若形の不完全標本に基づく者と思われる。

ピックフォードイカ属

ピックフォードイカ科に同じ。フロリダ半島に只一種。

リコトゥチス属

リコトゥチス亞科の特徴と仕て、軟甲の後方四分の一位の處で縊れ、後端は匙状を呈し、眼の發光噐は5箇、外套膜發光噐は8乃至10箇で 有る。腕は等長で、外部發光噐は無い。大西洋とニュージーランドに2種、日本産は無い。

セレニトゥチス属

リコトゥチス亞科の特徴と仕て、軟甲の後方四分の一位の處で縊れ、後端は匙状を呈し、眼の發光噐は5箇、外套膜發光噐は8乃至10箇で 有る。外套膜後端に大型球形の發光噐が有り、第2腕、第3腕先端にも球形の發光噐が有る。大西洋に1種、日本産は無い。

ネマトランパス属

リコトゥチス亞科の特徴と仕て、軟甲の後方四分の一位の處で縊れ、後端は匙状を呈し、眼の發光噐は5箇、外套膜發光噐は8乃至10箇で 有る。第3腕が著しく延び、先端方は吸盤が無く絲状。外套腔内に發光噐が8乃至10箇。腕、外套膜、眼球上に發光噐を多數持つ。南大西 洋に1種、日本産は無い。

ランパディオトゥチス属

軟甲は中央で最大幅を呈し、縊れ無い。後端は円錐形に近く丸まる。發光噐は外套腔内に5箇、眼に4箇、触腕に5箇。北西太平洋から南西 太平洋に1種、日本産は無い。

マダマイカ属

腕吸盤は一部鉤に變形して居るが、触腕に鉤は無い。交接腕は左第4腕に肉質膨隆で囲まれた牙状板を生じる。發光噐は眼胞上に14乃至 15箇、外套膜に8箇、及び、触腕柄部に埋没した物が有る。3種。

ピロトゥチス属

腕は極先端を除いて2鉤列。触腕に鉤を持つ。其他の特徴はマダマイカ属に同じ。3種、内日本産1種。

ダイオウホタルイカモドキ属

ダイオウホタルイカモドキ科に同じ。日本近海を含む全世界に只一種。

ヤツデイカ属

腕先端に水滴形の發光噐を持つ。外套膜後端近くに肉に埋没した發光噐を持つ。約7種、内日本産2種。

ヒレビロイカ属

躰は巨大と成り、第2腕先端に小判形の大發光噐を持つ。全世界に只一種。

ワルビストゥチス属

ワルビストゥチス科に同じ。南東太平洋のワルビス海嶺に只一種。

トガリウチワイカ属

外套後端は長い尾部と成る。触腕吸盤は4列共粗等大。墨汁嚢上に發光噐を持つ。2種、内日本産1種。

ウチワイカ属

鰭は円盤状。尾部を持た無い。触腕吸盤の内列吸盤は縁列吸盤に比較して著しく大きい。眼に發光噐を持つ。2種、日本産は無い。

ナンキョクイカ属

ナンキョクイカ科に同じ。南極域に只一種。

ウロコイカ属

ウロコイカ科に同じ。日本近海、大西洋に只一種。

ヤワライカ属

躰は大きく柔らかい。角質上皮は鱗状で無く多角形で密着、不規則に配列。鰭は菱形。2種、内日本産1種。

テトロニコトゥチス属

角質上皮は多角形で規則的に配列。触腕吸盤は小さい。頸襞が多數密に有る。2種、日本産は無い。

ダイオウイカ属

ダイオウイカ科に同じ。全世界に數種分布すると思われるが、研究は不充分。

ゴマフイカ属

ゴマフイカ科に同じ。全世界に約20種・亞種、内日本産5種。

ネオトゥチス属

鰭の幅は狭く、外套膜の後部半分以上を占める。2種(?)。

マルヒレナンキョクイカ属

鰭は後位。触腕掌部中央の吸盤は著しく大きい。南極に只一種。

ノトトゥチス属

ネオトゥチス属に似るが、触腕掌部の先端寄りに2箇の巨大吸盤を持つ。チリ沖に只一種。

ナツメイカ属

ナツメイカ科に同じ。3種、内日本産1種。

ヒレギレイカ属

ヒレギレイカ科に同じ。3種以上、内日本産1種。

クビナガイカ属

クビナガイカ科に同じ。數種、内日本産1種。

コウモリイカ属

コウモリイカ科に同じ。南極域に只一種。

ユウレイイカ属

第4腕は著しく膨大。触腕は長く掌部には柄の長い吸盤が4列密生。漏斗軟骨噐の窩内突起は2箇。眼球上、外套腔内、第4腕、触腕柄部、 触腕先端に發光噐を持つ。約10種、内日本産2種。

チロプシス属

ユウレイイカ属に似て居るが、第4腕は短く裁斷状。只一種。

バルビィトゥチス属

外套膜は長卵円錐形。眼は稍突出。第4腕通常。触腕掌部は同大の吸盤4列。漏斗軟骨噐の窩内突起は1箇。發光噐は無い。3種。

シチクイカ属

外套膜上に小棘が有る。鰭は2箇有り、眼球上の發光噐は大きい塊状。触腕先端に發光噐が有るが、内臓上には無い。只一種。

オキノムチイカ属

鰭は小さく、躰表に發光噐を持つ。眼瞼にも發光噐が有る。嗅突起は球状で、腕吸盤に鋭歯が有る。軟甲の円錐は細く尖る。エチノトゥチス亞 属は躰表に軟骨様小顆粒を散らす。?種。

ムチイカ属

鰭は比較的大きく、躰表、眼瞼に發光噐は無い。嗅突起は棍棒状。腕吸盤には鋭歯が有る。軟甲の円錐は稍幅廣い。マグノトゥチス亞属は躰 表に円錐形の疣状突起が有り、軟甲は後端で管状を呈し、触腕吸盤の楔状突起は多角形。?種。

ダルマイカ属

ダルマイカ科に同じ。北西太平洋海盆とチリ沖に2種、内日本産1種。

トックリイカ属

トックリイカ科に同じ。日本本州南岸と北西太平洋に只一種。

オナガイカ属

オナガイカ科に同じ。日本駿河灣と大西洋に只一種。

サメハダホウズキイカ属

サメハダホウズキイカ亞科の特徴と仕て、外套膜上の漏斗外套接合部に當たる處に軟骨様の肋条が有り、交接腕は左第4腕で強く灣曲し、 眼胞の周囲に發光噐を持つ。外套膜表面は星状の軟骨様突起で密に被われる。眼の周りに2列の發光噐が有る。日本近海を含む世界の温 熱帶域に只一種。

ホウズキイカ属

サメハダホウズキイカ亞科の特徴と仕て、外套膜上の漏斗外套接合部に當たる處に軟骨様の肋条が有り、交接腕は左第4腕で強く灣曲し、 眼胞の周囲に發光噐を持つ。外套膜表面は円滑。漏斗外套接合の位置に逆V字型の軟骨条を持ち、其の上に星型突起が並ぶ。眼の周りに 2列の發光噐が有る。2種、内日本産2種。

トウガタイカ属

サメハダホウズキイカ亞科の特徴と仕て、外套膜上の漏斗外套接合部に當たる處に軟骨様の肋条が有り、交接腕は左第4腕で強く灣曲し、 眼胞の周囲に發光噐を持つ。外套膜は細長い。鰭は丸く大きい。漏斗外套接合の位置に外套長の三分の一乃至四分の一に達する軟骨条肋 を持ち、其の上に星状突起が有る。稚仔期は眼柄、及び、頭柱が延びて居る。4乃至5種以上、内日本産1種。

ゴマフホウズキイカ属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。鰭は小さく 櫂型で、軟甲の後端に挿入されて居る。眼は比較的小さい。3種以上、内日本産1種。

メナガイカ属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。鰭は小さく 丸く兩葉著しく離れ、軟甲の後縁に挿入されて居る。眼は大きく球状で大きい發光組織で被われる。稚仔期は眼柄、頭柱は長く、眼は水滴型。 南西日本を含む世界の暖海に只一種。

ナミダホウズキイカ属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。鰭は小さく 軟甲後縁に挿入されて居るが、兩葉片僅かに離れる。眼は大きく球形で、前方の小円形の發光噐は、後方の半月形の大發光噐に抱き込まれ る。稚仔期の眼は靴型で有るが、眼柄は著しくは長く成らず、頭柱も延び無い。南西日本を含む世界の暖海に1種以上。

リグリエラ属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。鰭は小さく 軟甲後縁に挿入され兩葉は接する。外套膜上の漏斗外套接合部の位置に小突起が有る。眼は大きく眼球上には小三日月形の發光噐が、半 月形の大發光噐に抱えられた様に配置する。稚仔期は頭柱は稍長く、眼柄は長く水滴型。1種以上。

クジャクイカ属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。外套膜は 著しく細長く、鰭も縦長の心臓型。軟甲の後縁に挿入。触腕掌部内列吸盤には二叉型の鉤が生じる。眼は球形で、前方に小三日月形の發光 噐が有り、其れを抱き込む様に後方に腎臓型の發光噐が有る。稚仔期は鰭は小さく、眼柄は長く眼は小さい。2種以上、内日本産1種。

スカシイカ属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。外套膜は 細長く、鰭は長楕円形で軟甲後縁に挿入されて居る。外套膜上に漏斗外套接合の位置に小突起を持つ。触腕掌部内列は鉤で縁列吸盤は小 さい。眼は球形で、輝く縁取りの有る大小2箇の三日月形發光噐が組み合わさる。稚仔期は鰭は小さく眼柄が少し長い。3種以上、内日本産 1種。

メソニコトゥチス属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。鰭は卵心 臓型で外套長の二分の一に及ぶ。外套漏斗接合部に小突起が有る。眼は大きく、大小2箇の發光噐が有る。腕吸盤は2列で中央域は鉤列 に成る。触腕掌部の内列2列は鉤。稚仔期は鰭は著しく小さく、眼も小さく眼柄僅かに延びて居る。南極域に只一種。

ホソクジャクイカ属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。外套膜は 長く、鰭は細長く、前葉片は無く、後方は軟甲後縁に挿入。漏斗外套接合部に逆V字型の条が附いて居るが軟骨質では無い。眼は球形で大 きく、長く狭い三日月形の後部發光噐に沿う様に短い三日月状、但し後端が曲がる狭い發光噐を持つ。稚仔期は鰭は小さく、眼も小さいが、 眼柄が少し延びて居る。南西日本と大西洋東部に只一種。

オオホウズキイカ属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。外套膜は 稍細長く、鰭は細い楕円形。漏斗外套接合部の位置に小突起が有る。眼は球状で大きく、前方のS字型の發光噐と其れを囲む様に中央が稍 突き出た三日月形の後部發光噐の2箇が有る。其の他、内臓上に2對の大發光噐を持つ事が特徴で有る。稚仔期は鰭は小さく、眼柄は幾分 延び、眼は楕円形を呈す。北西太平洋と全世界の暖海に1種以上。

サヤボソイカ属

クジャクイカ亞科の特徴と仕て、躰は細長い紡錘形で、鰭は小さい櫂型から大きい心臓型、丸型迄有り、外套膜表面は平滑で有る。鰭は外套 膜に附き卵円形。触腕掌部吸盤は4列、基部に曲折した吸盤列が柄部へ續く。眼は大きく球形で、大型半月形の後部發光噐、其の窪部に小 型の三日月形發光噐、更に前部の卵形發光噐の3種の發光噐を持つ。稚仔期は鰭は極めて小さく、眼柄は僅かに延びる。3種(?)。