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烏賊と電脳の綜合百科事典
烏賊の王様

烏賊の各論と詳細

アカイカ
Ommastrephes bartrami


別称 ムラサキイカ、バカイカ、メダマ、クロイカ、ゴウドウイカ、Flying squid−赤烏賊

形態 スルメイカ型で、外套長50糎位迄成長し、肉が厚い。全体の印象はスルメイカに比較してずんぐりして居て、外套前端は円 筒形に近い。外套背面には幅廣い黒紫色帶が有り、海上で觀ると紫色の印象が強い爲、漁業家にはムラサキイカで通って居る。併し、良く 觀ると独得で有る。鰭(ひれ)は横長の菱形で有るが、後縁は稍(やや)凹んで居る。漏斗軟骨噐はT型で、トビイカの様に外套膜と癒着して 居ない。漏斗溝には縦溝とポケット状襞(ひだ)が有る。腕は強く、保護膜は發達して居る。第3腕の泳膜は特に高く、三角帆状に張り出して 居る。大吸盤の角質環には鋭歯が30個程有る。雄烏賊の右、又は、左の第4腕が交接腕に変形して居る。触腕掌部の大吸盤の角質環歯 の内、十字形を描く位置の4歯は特に強大で有る。外套膜の肉質内に列状の發光組織が不規則に分布して居て、網状の處も有るが、古い 標本では判らなく成る。肉は良質で、加工原料としてスルメイカに遜色は無いが、大型の者では稍堅く成る。

生態 近年スルメイカの資源の衰退に反比例して北部太平洋の從來のスルメイカ漁場で資源量が増大し、スルメイカ凶漁に惱む 全國の烏賊一本釣漁船の救世主の役割を果たして來た。今後、冬産まれ群を主とし、秋産まれ群を從とする日本全周のスルメイカ資源の 増大が急速に觀られる状況で、北方での烏賊の種類交替が何の様な様相で進行するか興味が有る處で有る。本種の漁獲量は1974年 1萬5千屯、1975年4萬1千屯、1976年8萬4千屯、1977年12萬3千屯、1978年15萬3千屯、1979年12萬4千屯と頭打ちに成って 居る。本種は暖水域、混合水域に多く、冷水域にも擴がって居り、スルメイカ類中で最も分布域の廣い種類で有る。海洋水産資源開發 センターでは、北太平洋中央域をカムチャッカからガダルカナルの線に平行して縦走する天皇海山周辺の雄大な漁場の開發調査を実施して 居る。

備考 近海のスルメイカの減少に伴い、其の代替漁業として利用される様に成り、1974年から本格的な操業が開始された。最初は 烏賊釣で漁獲されて居たが、此の烏賊の触腕が脆弱な爲に釣り上げる途中で触腕が切斷し海中に転落する爲、流網漁法に切り替えられた。 併し、現在では流網漁法が全面的に禁止され、再び烏賊釣に依り漁獲されて居る。
漁場は、東經170度以東の中央部よりアメリカ近海迄の廣範囲の水域に分布して居り、漁期は7月から始まるが、盛漁期は8乃至10月で 有る。漁獲されたアカイカは外套部と頭脚部を分離した壺抜(つぼぬき)の状態で急速凍結して日本に搬入される。以前は頭脚部を投棄する 事が多々見受けられたが、現在では頭脚部も、内臓・眼球・嘴(くちばし)を除去した後、別に凍結して製品に仕て居る。
此の種は、加工技術の向上に伴い、需要が増加して居り、加工品として、烏賊燻製、裂烏賊(さきいか)等が製造されて居る他、生鮮物は 冷凍ロールイカとしてスーパー等で販賣されて居る。肉は柔らかく少し粘性を有する爲、肉厚の厚い物は關西方面ではコウイカの代わりに 安價な刺身烏賊と仕ても嗜好されて居る。亦、天麩羅にも適して居り、中華料理では良く使用されて居る。