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烏賊と電脳の綜合百科事典
烏賊の王様

烏賊の各論と詳細

スルメイカ
Todarodes pacificus


別称 マイカ、アカイカ、マツイカ、トンキュウ、ガンゼキ、ムギイカ、Common squid−鯣烏賊

形態 標準的な烏賊型を仕た最も普通の烏賊で、外套長27糎に及ぶ。ヤリイカ類と異なるのは、眼が開眼型で有る事と漏斗軟骨噐が T型で有る點で、此等はアカイカ科に共通の特徴で有る。外套背面には黒色一条の縦縞が有る。鰭(ひれ)は幅の廣い菱形で有る。漏斗溝には 縦溝が有るが、側部のポケット状襞は無い。腕の大吸盤角質環には犬歯状鋭歯が有るが、ノトトダルス属の様に其の内の一個が肥大して居ると 謂う事は無い。基部寄りの縁は平滑、雄烏賊の第4腕は先端部が稍(やや)扁平と成り、櫛歯状の肉嘴列が有り、箆(へら)状を呈し、交接腕と 成って居る。触腕の大吸盤には鋭い犬歯状の歯と低い長方形の歯とが大体交互に並んで居る。日本全体で最大の漁獲量30〜70萬屯が本種 から得られて居る(1980年現在)。

生態 三系統群が有る。東支那海から九州近海で發生し、対馬暖流に乘って北海道沿岸に北上分布する一方、太平洋岸では黒潮 流路沿いに紀州、三陸、道東に分布する標準型の冬産まれ群が主体で、次いで九州西方に發生し、対馬暖流域を沖側に北上して大和堆を 中心に沖合分布する大型の秋産まれ群が第二位を占め、其の他にローカル分布をする小型の夏産まれ群が知られて居て、既に詳細な漁 海況予報が効果的に發表されて居る(1980年現在)。
日本列島沿いに九州から北海道迄の北上成長回遊と南下産卵回遊を行う冬産まれ群は、9月以降の南下回遊に際して、壱岐、対馬等の 離島や三陸沿岸の大船渡灣等で迷路状を爲す灣奥に入り込み、數千乃至數萬尾の大群が陸岸に押し上がり自然斃死する『寄り現象』を 起こす。此れは、交接群泳に伴う現象と觀られるが、大資源種の烏賊類、例えばカナダイレックスやアメリカオオアカイカでも文献上古くから 知られて居る。1974年頃から減産して居たが、1980年から冬産まれ群が復活して來た。