烏賊と電脳のホームページ

アルゼンチンイレックス(マツイカ)
Illex argentinus
別称 アルゼンチンマツイカ、マツイカ、Calamar(亞國)、Argentine shortfin squid(英國)
形態 外形はスルメイカ属の日本産スルメイカに酷似し、胴長は通常30糎前後で最大は41糎に及ぶ。鰭は横長の菱形で、鰭頂角
は47乃至52度。鰭の長さは背外套長の39乃至43%、鰭幅の70乃至78%。外套膜は筒形で、中間部は前端部よりも稍幅廣い。頭部は外
套部よりも細く、頭幅は脊外套長の約17%。漏斗溝は平滑で、縦溝も袋状の側襞も無い。外套膜と漏斗を繋ぐ軟骨噐はT型。眼は中康で、眼
球は露出して居る。腕の吸盤は2列で、鉤を持た無い。吸盤の角質環の外縁には數本の歯が有り、特に大型の吸盤では中央の1歯而巳大き
い。第2腕と第3腕の吸盤は大きく、其の最大の物は脊外套長の2.0乃至2.8%。雄では左右孰れかの第4腕が交接腕と成り、其の變形部
分は腕長の2.8乃至5.6%。触腕掌部の中央部の吸盤は4列で、中央の2列が大型化し、其の角質環は尖った歯を持た無い。掌部の基部
には2列の小吸盤が有り、先端部には多數列の微小吸盤が有る。掌部の長さは脊外套長の31乃至39%。外套脊面中央に1本の太い暗褐
色の縦縞が有る。イレックス属は漏斗溝に縦溝も袋状の側襞も持た無い事で他のスルメイカ、アカイカ類から區別される。本種は同属の他の3
種(ヨーロッパイレックス、カナダイレックス、アメリカイレックス)とは分布域が重複して居ないが、形態的には良く類似して居る。肉は日本のス
ルメイカより薄く、大半が加工用に利用される。
生態 南西大西洋のウルグアイ、アルゼンチンからフォークランド諸島に及ぶ南緯30度から南緯55度の大陸棚、及び、陸棚斜面の
水深約800米迄分布して居る。主漁場は、南緯42度附近(アルゼンチン漁業専管水域内、及び、公海)と南緯47度附近(アルゼンチン漁業
専管水域内、及び、公海)と南緯50度附近(アルゼンチン漁業専管水域内、及び、フォークランド諸島漁業専管水域内)の三箇處の水域に分
布し、亦、漁期は、1乃至7月(南半球の夏期から冬期)で、漁種別では、トロール4乃至7月、烏賊釣2乃至5月が盛漁期で有る。
備考 アルゼンチン海域に於いて最も資源量の大きい種で、主要な産卵期は冬季、寿命は約1年と推定されて居る。此の種の開發
は1978年頃からで、日本のトロール漁船は1980年代に外國の遠洋漁業國と共に本格的な操業を開始し、一方、日本の烏賊釣漁船は19
85年から操業を開始した。1987年には十數箇國のトロール漁船、及び、烏賊釣漁船が操業して、約70萬屯を漁獲し、其の内25萬屯を日本
が占めた。亦、日本には韓國・台灣を初めとする外國からも多く輸入されて居る。猶、アルゼンチンの漁獲量は1978年以降約1万乃至9万屯
の範囲に在り、年に依りアルゼンチンより相当量が輸入される事も有る。
猶、烏賊釣漁船に關しては、フォークランド諸島では1987年から、亦、アルゼンチンでは1993年から入漁許可制が実施され、多くの大型
漁船(國際屯數1000屯前後)が同海域での操業に從事して居り、日本の烏賊加工品の原料として重要な位置を占めて居る。