世の中に自分の仕事が好きだと言える人が一体何人ぐらいいるのだろう？

夏の騒ぎも手伝って、私の店はとても忙しく、スタッフ一同休みなく働いていた。
朝６時に起き、１時間かけて神戸までの通勤。
行きつけのカフェでモーニングをすませ、８時には店に入る。
スタッフの指導や準備に追われた後、９時にはお客様を迎え、
ほとんど毎日昼食を取る間もないほど忙しい。

私の自慢はスタッフや友人に仕事の愚痴を言わない事だ。
私はこの仕事に誇りを持っている。この仕事を愛している。

多くの女性達は決意を持ってヘアーサロンへ来るものだ。
髪を切るということは自分の身を切るという事。
女達は何かに対する決別と新しい意思のようなものを引き換えに手に入れる。

―　変身だ。

そんな前向きな彼女達の御手伝いができるなら、休みなんかいらない。
せっかくの決意が萎えてしまわぬよう、月曜日の営業もスタッフ達は
快く同意してくれた。
私はとにかく働いて働いて働きまくっていた。　お客様の為に・・・。

彼はいる。でも仕事が忙しくてなかなか会えない。
金はある。でも仕事が忙しくて使う暇がない。
親に会っていない。仕事が忙しくて帰る暇がないから。

最近映画も見ていないし、友人にも連絡を取っていないし、
世界情勢が今一体どうなっているのかもわからない。

だって、仕事が忙しくて・・・

だって、そんな時間がなくて・・・

だって・・　だって・・　だって・・

あぁ、今日は一体何月で何日なんだろう？

３ヶ月ぶりの休日・・。習慣で６時に目が覚める。
布団を干したい。掃除をしたい。映画も見たいし、ショップも巡りたい。
友人のお見舞いも行かなきゃだし、靴の修繕もしなきゃ・・・。
彼に電話を入れて、親に電話を入れて・・・

私・・・もしかしたら疲れているのかもしれない。
ベットの中からなかなか抜け出せない自分がいる。

私・・・疲れているのかなぁ
スタッフ達の笑顔が浮ぶ。

私・・・多分疲れている。
今日は何もしないで体を休めよう。

わたし・・・きっとつかれているんだ。

　・・・ダレニモ　イエナイ・・・

気がつけば夕方の５時をまわっていた。休日は終ったも同然。
また明日からいつもの日々がやってくる。
神戸に行き、モーニングを食べ、９時に店を開け、いつものメンバーと共に・・・
１週間後も、１ヶ月後も、半年先も・・・。

私は好きな仕事をしている。
彼もいるし、金もある。両親は元気で、友人やスタッフにも恵まれている。
幸せだと思う。こんなもんだと思う。

でも・・・なぜ？

　　　　　　　　　　―――　消えてしまいたい　・・・　

<まりんの処方>

何かから逃げている時、人は仕事中毒に陥ります。
感じたくない感情とはどんな感情なのでしょう？
何を忘れたくて仕事に依存しているのでしょう。
絶望の最中だという事に本人は気づいていません。
好き＝働きまくるという方程式はどうかと思います。
好き＝楽しむではないでしょうか？

仕事を楽しんでいない人は休日も楽しんでいません。
逆に充実した休日を過ごすことで、仕事にも張りがでるというものです。
一体何から逃げているのか、立ち止まってちゃんと向き合ってみませんか。
上手に楽しく生きている人は仕事と休日のバランスがとれているものです。

お勧めエッセンス　ワラター/レッドグレビリア