大量絶滅・・・生命の種の入れ替わり
大量絶滅は、多種類の生物が、同時に絶滅することです。
オルドビス紀末、デボン紀末、ペルム紀末(P-T境界)、三畳紀末、白亜期末(K-T境界)を、ビッグファイブということがあります。
大量絶滅の原因については、
隕石や彗星等の天体の衝突、
光合成による酸素増加が原因の、大量絶滅もあったようです。
一方、大量絶滅の直後には、生き延びた生物による適応放散が起きます。
人類を含む哺乳類は、恐竜絶滅後、急速に繁栄するようになりました。
大量絶滅(大絶滅)
多種類の生物が、同時に絶滅することです。
顕生代において起こった、特に規模の大きな5回の絶滅イベント、
オルドビス紀末、デボン紀末、ペルム紀末(P-T境界)、三畳紀末、白亜期末(K-T境界)を、ビッグファイブということがあります。
地質時代の「代」や「紀」の区分は、化石として発見される動物相の相違によるものです。
大量絶滅により従来の動物の多くが絶滅し、新たな動物が発生したことによる区分です。
「紀」の時代区分は、「代」との比較では動物相の相違は小さいですが、大量絶滅による場合もあります。
多細胞生物が現れたエディアカラン以降、
5度の大量絶滅(ビッグファイブ)と、
それよりは若干規模の小さい絶滅が数度あったとされます。
大量絶滅の原因については、
K-T境界のように、隕石や彗星等の天体の衝突説が、有力視されている事件や、
P-T境界のように、超大陸の形成と分裂に際する、大規模な火山活動による環境変化(プルームテクトニクス)が、有力視されている事件等
様々であり、その原因は一定しているわけではありません。
大量絶滅の直後には、空席になったニッチを埋めるべく、生き延びた生物による急激な適応放散が起きます。
哺乳類は、白亜紀以前には小型動物が中心でしたが、
恐竜絶滅後、急速に多様化・大型化が進み、生態系の上位の存在として繁栄するようになりました。
地質時代における大量絶滅
冥王代〜始生代(原始生代)
後期重爆撃期により、初期生物に大量絶滅を起こしました。
シアノバクテリア等の酸素発生型光合成細菌による、大量の酸素供給により、在来偏性嫌気性原核生物の多くが大量絶滅したようです。
併せてもたらされた、二酸化炭素・メタン等の温室効果ガスの減少で発生した、スノーボールアースも大量絶滅を起こしました。
超大陸の形成と分裂が原因と推定されている大量絶滅です。
ゴンドワナ大陸が、形成・分裂した時期に相当します。
超大陸の分裂に際しては、スーパープルームが地上まで上昇してきて非常に大規模な火山活動が起こり、
地球表面の環境が激変するため、大量絶滅が起こると考えられています。 P-T境界
原生代のエディアカラン紀には、エディアカラ生物群が存在しました。
エディアカラ生物群は、約5億4500万年前のV-C境界を境に、ほとんどみられなくなります。
以後、三葉虫のような、硬骨格を有する生物が出現しました。
カンブリア紀
シルル紀
ビッグファイブの一つです。
古生代のオルドビス紀末(約4億4400万年前)に大量絶滅が発生し、
それまで繁栄していた、三葉虫、腕足類、ウミリンゴ、サンゴ類、筆石、コノドントの大半が絶滅しました。
当時生息していた全ての生物種の、85%が絶滅したと考えられています。
この時期、大陸は南極域にあり、短い期間ですが、大陸氷河が発達しました。
絶滅は、氷床の発達に伴う海水準の低下時と、
氷河の消滅に伴う海水準の上昇時の、2回確認されていますが、
海水準の変動をもたらした環境の変化と大量絶滅との関係は、不明です。
近く(6000光年以内)で起こった超新星爆発によるガンマ線バーストを、地球が受けたことが大量絶滅の引き金となった、という説もあります。
ビッグファイブの一つです。
古生代デボン紀後期の、フラスニアン期とファメニアン期の境に当たる、F-F境界(約3億7400万年前)には、
ダンクルオステウス等の板皮類や甲冑魚をはじめとした、多くの海生生物が絶滅しています。
全ての生物種の、82%が絶滅したと考えられています。
腕足類や魚類のデータから、高緯度より低緯度の、淡水域より海水域で、絶滅率が高かったようです。
この時期の環境の変化として、寒冷化と、海洋無酸素事変の発生が知られています。
酸素と炭素同位体比のデータは、2度の寒冷化と、有機物の堆積及び大気中の二酸化炭素の減少を示しており、
これは、海水準の上昇と大量絶滅と同時に起こっています。
また、海水中のストロンチウム同位体比の変動は、大陸風化の増加(気温の上昇)を示しています。
ベルギー及び中国南部のF/F境界層から、小天体衝突の証拠となるスフェルールが報告されているものの、大量絶滅との関連は不明です。
巨大な陸塊である、ゴンドワナ大陸の南部が南極にあったこともあり、ここには大規模な氷河(氷床)が形成されました。
尚、3億6千万年前から2億6千万年前に、氷河の拡大期(カルー氷期)があったようです。
植物が繁栄したことで、大量の二酸化炭素が吸収され、
その多くが大気中に還元されずに石炭化していったため、大気中の二酸化炭素濃度が激減しました。
このことが、寒冷化と氷河の発達、更には氷河期の一因とされています。
尚、大気中の酸素濃度は、35%に達したといわれます(現代は21%)。
石炭紀末には、数百万年に渡る氷河期が到来し、多くの生物が絶滅しました。
ビッグファイブの一つです。
古生代後期のペルム紀末、P-T境界(約2億5100万年前)に地球の歴史上最大の大量絶滅が起こりました。
海生生物のうち最大96%、全ての生物種で見ても90%から95%が絶滅しました。
すでに絶滅に近い状態まで数を減らしていた三葉虫は、この時に絶滅しました。
絶滅の原因について。
全世界規模で海岸線が後退した痕跡がみられ、これにより食物連鎖のバランスが崩れたことによるという説。
巨大なマントルの上昇流である、スーパープルームによって発生した、大規模な火山活動によるという説。
パンゲア超大陸の形成が、スーパープルームを引き起こしたとされます。 V-C境界
実際、シベリアには、シベリア・トラップという火山岩が広い範囲に残されており、これが当時の火山活動の痕跡と考えられています。
火山活動で発生した大量の二酸化炭素は、温室効果による気温の上昇を引き起こしたようです。
また、大気中に放出されたメタンと酸素が化学反応を起こし、酸素濃度が著しく低下したようです。
このことも大量絶滅の要因となったようです。
古生代に繁栄した単弓類の多くは絶滅しました。
しかし、単弓類の中で、横隔膜を生じて腹式呼吸を身につけたグループは、哺乳類の先祖となりました。
この時代を生き延びて三畳紀に繁栄した主竜類の中で、
気嚢により、低酸素環境に適応した恐竜が、繁栄していきました。
ジュラ紀
ビッグファイブの一つです。
中生代の三畳紀末(約1億9960万年前)の大量絶滅で、アンモナイトの多くの種が絶滅しました。
また、爬虫類や単弓類も大型動物を中心に多くの系統が絶え、
当時はまだ比較的小型だった恐竜が、以降、急速に発展していきました。
全ての生物種の76%が絶滅したと考えられています。
絶滅の原因としては、
中央大西洋マグマ分布域における火山活動との関連が有力視されています。
また、カナダにあるマニクアガン・クレーターを作り出した、隕石の衝突とする説もあります。
木曽川の河床にある、このクレーターが作られた時期である、約2億1500万年前の地層から、
白金族元素が、通常の20倍から5000倍の濃度で発見されています。 K-T境界
ビッグファイブの一つです。
白亜紀末の約6550万年前に、恐竜は、現生鳥類につながる種を除いて、絶滅しました。
ただし、アラモサウルス等のごく一部の属は、これを生き延びていた可能性もあるようです。
翼竜、首長竜、モササウルス類、アンモナイトが完全に絶滅したのもこの時期です。
全ての生物種の70%が絶滅したと考えられています。
原因については諸説ありますが、現在は、
小惑星が地球に衝突、発生した火災と衝突時に巻き上げられた塵埃が太陽の光を遮ることで、
全地球規模の気温低下を引き起こし、大量絶滅につながったという説(隕石説)が、最も有力です。 三畳紀末
チクシュルーブ・クレーターが、その隕石落下跡と考えられています。
白亜紀と、それに続く古第三紀の地層の境界は、全世界的に共通して分布する薄い粘土層(K-T境界)によって規定されます。
この粘土層からは、全世界的に高濃度のイリジウムが検出されています。
イリジウムは、地表では希少な元素ですが、隕石には多く含まれていることから、
K-T境界のイリジウムは、地球に衝突した隕石によって全世界にばらまかれたと考えられました。
その後、更に同じ層からは、衝撃に伴う高圧環境の発生を示す衝撃石英やダイヤモンド、
大規模な火災が発生したことを示す、「すす」も見つかっています。
反論として、イリジウムは、衝突時の衝撃でめくり上げられた地殻深部由来と考える説もあります。
また、チクシュルーブ・クレーターは、K-T境界線よりもかなり深く(古い時代)入り込んでおり、
隕石が落下した後も、恐竜は相当期間にわたって生きていた、という説もあります。
更に、なぜ多種多様な恐竜だけ小型種を含む全ての種が滅び、
似た生態を持っていた鳥類、哺乳類や爬虫類、両生類は絶滅を免れたのか、という問題がありますが、
現在の所、有効な解釈はありません・・・尚、鳥類は、恐竜に分類されることもあります。
同じ白亜紀末に、インド亜大陸に大量の溶岩が噴出した痕跡が残されており(デカントラップ)、
この大規模な火山活動が、大量絶滅につながったとの説(火山説)もあります。
尚、恐竜等の地上の生物だけでなく、海中の生物にも広範にわたって起きた理由を説明できない説が多いようです。
現在は、隕石説を中心に、大規模火山活動等による地球の内面的な要因が複合的に重なったとする説が主張されているようです。
2010年、ピーター・シュルツらは、
チクシュルーブ・クレーターを形成した隕石の衝突が、白亜紀-古第三紀境界における大量絶滅の主要因と、結論づけたようです。
古第三紀(暁新世、始新世、漸新世)
新第三紀(中新世、鮮新世)
第四紀(更新世、完新世)
暁新世末の約5500万年前に、突発的な温暖化が起こり、海洋に生息していた有孔虫の35 - 50%が絶滅しました。
この時、海洋深層水の温度が5 - 7℃、気温が6 - 8℃、上昇したようです。
原因として、当時の海底に大量に存在していたメタンハイドレートが融解し、
炭素量換算1500ギガトンのメタンガスが大気中に放出されたことによる、温室効果が想定されています。
この温室効果ガスの量は、産業革命以来人類が発生させてきた二酸化炭素量と、
今後発生させると予想される二酸化炭素量の合計に匹敵するとされます。
約1万年前に、マンモス等、多くの大型動物が絶滅しました。
氷期から間氷期に移行する時期に相当し、気温の変化により、絶滅した種もありますが、
人類によって、滅ぼされた種もあるようです。
尚、人類も、現生人類(ホモ・サピエンス)以外は、絶滅しました。
現生人類も、一時、1000組から1万組まで激減したようです。
現在、大量絶滅が起こっているとする説があります。
絶滅に瀕している種は、レッドリストとして発表されています。
一方、種の絶滅はもっとゆっくりで、破局的な状態にまで至るには、長い時間がかかると予想しているものもあります。