隕石・・・生命の起源?大量絶滅の原因?
生命の起源に関する仮説に、パンスペルミア仮説がありますが、
マーチソン隕石等には、アミノ酸等多くの有機物が含まれています。
真偽は不明ですが、アラン・ヒルズ84001には、バクテリアの化石のようなものが含まれています。
一方、チクシュルーブ・クレーターを形成した隕石の衝突は、
恐竜を含む多くの生物が絶滅した、白亜紀末の大量絶滅(K-T境界)の、最も有力な原因と考えられています。
更に、鉄隕石には鉄が含まれており、人類は、農具等に利用していました・・・
隕石は、様々な所で、生命に関わっていますね。
隕石(いんせき)
参考 : フレデフォート・ドーム、チクシュルーブ・クレーター、ベスタ
惑星間空間に存在する固体物質が、地球等の惑星の表面に落下してきたものです。
固体物質は、地球では大気中を落下する間に、高温となって気化しますが、気化せずに残ったものが隕石です。
地球上で発見された隕石は、落下中にできた黒い溶融皮殻で覆われています。
隕石カタログ(2000年版)には、22,507個(南極隕石17,808個を含む)が、本物として掲載されています。
このうち、21,514個( 95.6% )が石質隕石、865個( 3.8% )が鉄隕石、116個( 0.5% )が石鉄隕石です。 分類
放射性同位体を用いた測定によって、隕石の多くは約45億年前にできたもので、
太陽系の初期、惑星が形成された当時の始原的な物質と推定されています。
また、隕石の起源天体と、流星物質の起源天体は、必ずしも同種ではありません。
隕石は、地表に到達するまでに、破片になることもあれば、大きな塊のまま到達することもあります。
隕石は、大気との衝突によって多数の破片になり、楕円形の地域(長径、数km〜数十km)に、
数十個〜数百個程度、まれには数万個程度の隕石となって落下することがあります(隕石雨)。
こういう場合では、数百g 〜 数kg程度のものが多いです。
大きな塊のまま、落ちてくることもあります。
世界各地には、大昔に巨大な隕石が落下してできたクレーター(隕石衝突跡)が発見されています。
尚、発見された隕石で最大のものは、ホバ隕石で、重さ66tのものです。
鉄とケイ酸塩鉱物の比率で、大きく3つに分類されます。
鉄隕石(隕鉄) ホバ隕石
鉄隕石は、主に金属鉄(Fe-Ni合金)からなる隕石です。
分化した天体の金属核に由来します。
ニッケル含有比と構造から、ヘキサヘドライト、オクタヘドライト、アタキサイトに大きく分けられます。
オクタヘドライトには、数百万年の時間スケールでの冷却によって生じる、ウィドマンシュテッテン構造が特徴的な模様としてみられます。
これは、Fe-Ni合金の正八面体型結晶構造が出現したものです。
平均して8.59%程度のニッケル、0.63%程度のコバルト、数ppmの金、白金、イリジウム等の貴金属も含まれます。
等量のFe-Ni合金と、ケイ酸塩鉱物からなる隕石です。
分化した天体のマントルに由来します。
パラサイトとメソシデライトに分類されます。
固体惑星に似た組成の小天体のうち、概ね直径100km以上のものは、内部が融解し得ると考えられています。
小天体の内部で融解が生じれば、重力によって成分分離が起こり、密度の大きい金属が中心に集まって核となり、
これを、より密度の小さい岩石質の物質が包んでマントルとなります。
このような小天体が、相互衝突等による何らかの外力を受けて破壊されたものが、隕石として地表に落下してくる天体小片と考えられます。
中心核が鉄隕石であり、
マントル部が石質隕石です。
小天体の中心核とマントルは、明瞭な境界があるのではなく、
境界領域では、金属鉄と岩石が混在します。
これが石鉄隕石の起源物質と考えられています。
トロイライトという、鈍い金属光沢を持つ硫化鉄鉱物を伴うことが多いです。
主にケイ酸塩鉱物からなる隕石です。
球粒状構造のコンドルールがある、コンドライトと、
コンドルールがない、エイコンドライト (アコンドライト) に大きく分けられます。
コンドライトは、未分化の天体の地殻、
エイコンドライトは、分化した天体の地殻に由来します。
普通コンドライトは、最も普通の隕石です。
炭素質コンドライトは、熱変成がほとんどみられず、始原的な母天体に由来するとされます。 マーチソン隕石
炭素の含有比が高く、カーバイド(炭化物)や有機化合物を含みます。
また蛇紋岩等の含水鉱物が多く、非常にもろいです。
エイコンドライトは、組織、構造や、鉱物組成は、地球の玄武岩質岩石によく似ています。
コンドライトと比較して、母天体の表面や内部で、融解や再結晶が行われて、様々な度合いの変成作用を受けたものです。
隕石全体の約8%が、エイコンドライトと見積もられています。
エイコンドライトの約2/3が、小惑星ベスタ起源と考えられているHED隕石です。
その他に、火星起源の火星隕石( ALH 84001等 )や、月起源の隕石等が含まれます。
南極で発見された隕石です。
隕石の大部分は、100万年間にわたって、氷の上に降り注いだものとされます。
尚、南極大陸の現在の形は、約2500万年前に形成されたようです。
非南極隕石と比べて、南極隕石は非常に数が多く、
2010年の時点で、非南極隕石の総数は、約1万4000個、南極隕石は、約4万8000個あります。
南極隕石の中には十数個、月隕石や火星隕石、小惑星の岩石、微惑星の表土、原始惑星の破片等、珍しい隕石が含まれています。
特徴
普通の隕石とは違い、南極隕石は周りにクレーターもなく、むき出しの氷の上にあります。
そのため、回収しやすく、隕石の種類は、落下してきた時の割合にかなり近いとされます。
南極隕石は、氷床に包まれている期間が長く、さらに露出した後も、雨雪が少ない地域で発見されることが多いです。
そのため、風化や人為的汚染が、他の隕石よりも少ないという特長があります。
特に炭素質隕石が汚れていないことは、重要で、
マーチソン隕石や、やまと 74662から、アミノ酸が多数検出されました。
2011年、NASAは、南極隕石から、地球上で天然に作られない有機物や、生命維持において重要な有機物と、アデニンとグアニンを発見したようです。
アラン・ヒルズ84001には、微小な生命の証拠が含まれている可能性がありますが、真偽は不明です。
1969年に、オーストラリアのマーチソン村付近に飛来した隕石です。
タイプIIの炭素コンドライトに分類されます。
隕石中に、ピペコリン酸といった生体内で見つかる有機酸や、
グリシン、アラニン、グルタミン酸といったタンパク質を構成するアミノ酸の他、
イソバリン、シュードロイシンといった、生体では見られないアミノ酸も発見されています。 有機反応
これらのアミノ酸は、発見当初はラセミ体であることから、地球上の分子の混入ではなく、地球外で生成され、地球に輸送されたと考えられました。
ユーリー・ミラーの実験で見られたのと同様の、複雑なアルカン混合物も発見されています。
また、人の皮脂により汚染された場合によくみられる、セリンやトレオニンといったものは発見されませんでした。
発見されたアミノ酸の中には、鏡像体過剰がみられるものがありますが、
鏡像体過剰が見られるアミノ酸の窒素 15N の同位体比が、地球上のものと大きく違うことが示され、
地球外で生成されたものであることが証明されました。
ホモキラリティーが、隕石中の鏡像体過剰な分子が引き金となって生成したという説があります。
近年の研究では、L-プロリンが、触媒作用により、糖の鏡像体過剰を促進することが報告されています。
アラン・ヒルズ84001( ALH 84001 ) 南極隕石
1984年に、南極大陸のアラン・ヒルズで採取された、火星起源の石質隕石の破片です。
発見時の重量は、1.93kgでした。
内部からは、バクテリアのような生命体の微細な化石らしきものが、確認されましたが、
地球外生命の痕跡かどうかは不明です。
今から約36億年前に、火星で溶岩から生成された岩石であり、
1300万年前から1600万年前に、小惑星が火星に衝突した際に、破片として宇宙空間に飛散し、
1000万年以上にわたって、宇宙空間を漂流した後、
約1.3万年前に地球に落下したと推定されています。
以下が、微小な生命の証拠とされました。
ALH84001に含まれる炭酸塩が、生命に適した温度で形成されたこと
有機物は、炭素13を比較的少量しか含んでいなくて、生化学反応の痕跡であること
磁性粒子が、バクテリア由来であること
奇妙な構造は、バクテリアの化石であること
電子顕微鏡により、鎖状構造をした、直径20 - 100 nmの何かが発見されました。
これは、極小細菌の一種と推定されましたが、生物の痕跡かどうかの結論は出ていません。
確認されているものの中で、世界で最も重いです。
ホバ隕石は2.7m×2.7mの長方形で、0.9mの厚さです。
1920年には、66トンの重さがありました。
隕石の成分は約84%が鉄、16%がニッケル、コバルトの痕跡が含まれており、
ニッケルの含有量が多いアタキサイトに分類されています。
表面には、風化によって生じた鉄の水酸化物がみられます。
8万年以上前に落下したと考えられており、地球大気によって減速されて、損傷が少ない状態になったと考えられています。
隕石の形状が、他に例のない平たい面をもつ形状であったため、
大気圏の上部で水切りのように、はねて落下したと考えられています。
南アフリカ共和国にある、世界最大のクレーターです。
現存する世界最古の隕石跡でもあります。
隕石の衝突跡の直径は、約190kmと、世界最大です。
約20億2300万年前(古原生代)に、直径10 - 12kmの小惑星が、約20km/sで衝突して生成されたと考えられています。
衝突時のエネルギーは、TNT火薬に換算して87Tt(広島型原爆(約15kt)の58億倍) です。
この時の衝突で、地殻はえぐられ、地下25kmまで到達したと考えられています。
この時の衝突熱で、マントルが溶融して多量のマグマが発生し、
大量の岩石が蒸発し、急激に冷却したことを示す地質が確認されています。
衝突直後のドームの大きさは、300km程度と推定されています。
この衝突は、カナダに残るサドベリー・クレーター、チクシュルーブ・クレーターと共に、3大隕石衝突(3大インパクト)の1つです。
メキシコのユカタン半島にある、約6550万年前のクレーターです。
クレーターの直径は、約160Kmです。
既知の地球上のクレーターでは、三番目の規模です。 フレデフォート・ドーム
顕生代に形成されたことが確認されるものとしては、最大級です。
この衝突が、恐竜を含む多くの生物が絶滅した、白亜紀末の大量絶滅(K-T境界)の、最も有力な原因と考えられています。
小惑星の大きさは、直径10-15 km、
衝突速度は、約20 km/s、
衝突時のエネルギーは、広島型原子爆弾の約10億倍、
衝突地点付近で発生した地震の規模は、マグニチュード11以上、
生じた津波は、高さ約300 mと推定されています。
ベスタ族(小惑星帯内端付近に位置するV型小惑星の多い小惑星族)に含まれる小惑星です。
ベスタ起源とされる隕石には、タタフィン隕石やNWA 1929隕石があります。
ベスタの直径は468 - 530kmと、小惑星帯(メインベルト)では3番目の大きさであり、四大小惑星の一つに数えられます。
ベスタと他の小惑星を分ける特徴の一つとして、内部が分化している(地球のような層状構造を持つ)点があります。
中心部には、鉄とニッケルからなる核があり、
その外側に、カンラン石からなるマントルを持ちます。
表面は溶岩流に起因する玄武岩からなり、かつて小規模ながら火山活動が存在したと考えられています。
これらの特徴は、太陽系の歴史の初期において、ベスタ内部が相当の熱量により融解していたためと考えられます。
ベスタのような層状構造を持つ分化小惑星は、かつては複数存在していたと考えられており、
このような小惑星が衝突等によって破壊されたことが、太陽系に存在する小惑星の組成における違いの原因と考えられています。
ベスタは、太陽系形成期の姿のまま残っているわけではないと考えられています。
ベスタが形成してから10億年ほど経った時期に作られたと考えられる、直径460kmのクレーター、レアシルヴィアが発見されています。
更に、より古い、ヴェネネイアも発見されています。