ハンドラップの技法体系


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ゾビラックス軟膏


 ハンドラップの技法体系


細目次
ハンドラップの工程と手段  

論稿・資料

■特論 ハンドラップ技法論
  (2015/06 ページ追加)

■特論 スクラッチ問題
  (2015/07 ページ追加)

■特論 ハンドラップの世界観
  (2015/07 ページ追加)



ハンドラップの工程と手段

 ハンドラップで最終的に鏡面を作り上げていく行程は、「粗から密へ」の段階を踏んでいく。そのプロセスを要約しておこう。


■遊離砥粒ラップ/湿式の場合の工程段階区分
仕立て上げ寸法との隔たり(μm)   ** 〜 -8  -8 〜 -3  -3 〜 -1 - 1 〜 0
 ラップ砥粒の粒度   #1200  #3000   #6000  1〜0.5μm
 ラップ砥粒の種別      WA    WA    GC    ダイヤモンド  
  ラップ工具の種類   砥石    鋳物 人白砥石 人白砥石
  目立て定盤    鋳物     鋳物 人白砥石 人白砥石
  目立て砥粒 ガーネット    WA    GC    ダイヤモンド
(注意点)
・SK工具鋼製ハサミゲージの製作の場合である。
・最終段階でのダイヤモンド砥粒の使用は必須不可欠ではない。
 #8000のGC砥粒を用いての鏡面ラップは十分に可能である。
・ラップ砥粒として、#6000以上に微細な砥粒を採用する場合。
 WAでは効果が不十分で、そのためにGC砥粒を活用する。


■固定砥粒ラップ/乾式の場合の工程段階区分
仕立て上げ寸法との隔たり(μm)    ** 〜 -8    -8 〜 -3   -3 〜 -1    -1 〜 0
 ラップ砥石の粒度         #800       #1500       #3000       #6000
 ラップ砥粒の種別           cBN         cBN        cBN      cBN  
  ラップ工具の種類       砥石        砥石        砥石       砥石
  目立て定盤    石定盤    石定盤 人白砥石   人白砥石
  目立て砥粒    GC/WA   GC/WA        GC          GC
(注意点)
・ダイス鋼製ハサミゲージ製作の場合。
 そのままSK工具鋼製ハサミゲージの製作に転用可能である。
・この技法は、いっそう一般的で汎用性のある技法であると言える。
・cBN砥石の目立てにはWAが有効であると解されている。
 しかしながら、GCでは不適だというわけでは決してない。
 

 上記の表はかなり便宜的にとりまとめたものであるから、区分のあり方や、それぞれの段階での技法については、それぞれでの工夫が必要なのは言うまでもない。

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論稿・資料

 ラップ方式の「違い」というのはその道具立ての違いであって、作業者の身体動作なり技法というものに違いがあるわけではない。従って、この両方式は「選択」の問題であって、技法を適用した結果は「等価」になるということを意味する。結果が出ているかどうかは、仕立て上がった平面の平行度と面粗度で判断され、ブロックゲージ面とリンギングするか否かで一義的に定まる。

 とはいえ、実際の製作実務では、仕立て上げるまでの中間工程がいかに効率よく処理できるかがキー・ポイントになるから、固定砥粒ラップ/乾式の技法の方がラップ効率は高い。

 遊離砥粒ラップ/湿式から固定砥粒ラップ/乾式への技法転換をまとめたのが下記の論稿である。

    『ハンドラップ技術の新展開』 →new_handrappu.pdf


 ここで説明されていることと過去に論述していることの内容が違っているではないか?という指摘を受けそうなので恐縮なのだが、時の経過と共に技能そのものが洗練され、あるいは微妙に修正されてきた経過を示すものなのであって、別段、勝手な空想的技法をでっち上げているわけではない。
 別な言い方をすると、作業者によってはもっと良質な技法が開発されるかも知れない。そういうことを期待している。

 更に、鏡面仕上げとリンギングとの相関について議論をしていたのだった。
 他のページの論述と重複するだろうが、ハンドラップ技能の到達点については何度強調しても言い尽くせないという思いがある。
 ハンドラップ技法が移入されて以来、つまり、ハサミゲージの製作がこの日本で始まって以来、「ブロックゲージと等しい面粗度、平行度、平面度を手業で実現すべし」という命題は、作業者が目指すべき目標であったのだが、「機械でできることは手業ででも可能だろう」といった「機械 Vs. 人間力」といったような一般命題に執着したわけではなく、つまり、何ら根拠のない「願望」「夢想」であったわけではなく、海外製作品か国内製作品かは分からないのだが、確かにそのレベルを実現した者がいたに違いないと思える。そうでなければ、ゲージ屋というのは「妄執にとらわれて見果てぬ夢を追いかけた歴史」を刻んできたということになりかねない。
 今から振り返れば、「鏡面ラップ」とか「リンギング」といったことは原理的には考究し尽くされてきたのである。残る問題は、その原理を実際に実現するべき技法はどのようなものであるか?という、その一点に絞られてきていた訳なのだ。
 この点について言えば、ゲージ屋には既にその技能能力は備わっていて、そこに何か不都合があるわけではない。そうではなくて、その技能能力を実現すべき道具立てにさまざまな可能性があって、それらの道具を目的に適合したものとすることによって、問題解決が図られるという、そういう次第なのである。
 以下の論稿を是非参照していただきたい。

    『鏡面ラップ仕上げとリンギング』 →rinnginngu.pdf


 手業の世界での技能というものは属人的なものであって個性的なものである。
 しかしながら、この「技能の属人性」というものを嫌って、熟練の匠の技を誰でもがこなせるような一般化するという、あるいは、機械化・量産化に対応できるものとするといった、そういった取り組みが流行になっている昨今なのだが、この「技能の属人性」ということは、その者の身体特性や運動能力の如何に技能が大きく依拠しているということは確かに改めて指摘するまでもないことなのだが、煎じ詰めれば、「思想性」の如何に行き当たる。
 昔から、これも一つのパターン化されたものに成り果てているのだが、「妙好人」という、真宗信仰に誠実な職人の日々の暮らしを通じてもの作りに励むという形で現されているのだが、私が言いたいことはそうではない。
 何をどう認識し、その認識からどういう判断を導き出し、その判断に従っての身体統御をどう果たし、その結果をどこにフィードバックさせるか・・・という一連の連関を思想性の問題と言っている。

 「反復」という修練で熟練が仕立て上がるとか、技能というのは「真似る」ことから始まるとか、こういう根拠のない「妄論」によって、成るべき者が成りきれなくなった歴史があったのだけれども。


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