【特論】いわゆる「スクラッチ問題」について



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 ハンドラップ技法から見えてくるスクラッチ問題


(細目次) ●ハンドラップ技法でのスクラッチの発生

●ダイヤモンド砥粒と超硬材のラップ技法

●ダイヤモンド砥粒と遊離砥粒ラップ/湿式




●ハンドラップ技法でのスクラッチの発生

 SK工具鋼製のハサミゲージの測定部をダイヤモンド砥粒を使っての遊離砥粒ラップ/湿式でラップを行うと、時として、ラップ工具表面に、極く薄く引き延ばされた金属粒がへばり付くことがある。ワーク表面には特異なラップ痕というものが認められないため、この金属粒がどこから発生したものかの判断に困惑することになるのだが、ワーク表面から生じたものという以外に他の原因はない。

 鉄鋼材料というものは結晶構造を呈しているという教科書の説明から、焼き入れしたワーク表面があくまで均等・均一なものと理解してしまうのだが、実際には、さまざまに粒子状に結集し結合したものというようで、つまりは、ラップ砥粒であるダイヤモンド粒子の切り刃が、ワーク表面の粒子を「引っ掛けて剥ぎ取る」ということのようである。その「引っ掛けて剥ぎ取られた」ワーク表面の粒子が、軟らかいものであるならばラップ工具面とワーク面との間で薄く引き延ばされ、固いもので一定以上の大きさがあったなら、ラップ工具表面に固着したその粒子が今度はワーク表面を損傷させるということになる。
 
 しかしながら、このような見方に対して、ワーク表面から剥ぎ取られた粒子とワークの材質とは同じものであるから、同じ硬さであろうことはいうまでもなく、従ってその粒子がワーク表面を損傷させるということは考えにくいという意見があり得る。いわゆる「モース硬度」の原理なのだが、例えば、ガラスを微細に砕いて砥粒とし、それで焼き入れたSK工具鋼の表面をラップしてみると、そのワーク表面をガラス砥粒は損傷させるに充分であることが分かる。ガラス砥粒の尖った角(切り刃)にラップの加工力が集中するために、ガラス砥粒の切り刃がワーク表面に押し込められるのである。ガラス粒子とワーク表面とどちらが固いかという問題ではなくて、ガラス粒子の切り刃に集中する力と、ワーク表面がその切り刃の切り込み力に対する抵抗力との間の問題である。

 スクラッチの発生原因というのは、ダイヤモンド砥粒粒子の切り刃がワーク表面を形成する粒子を引っ掛けて剥ぎ取るという点に置いた場合、ラップ動作のメカニズムがスクラッチ発生の原因になっている。
 当たり前のことで、ラップ加工をしなければスクラッチは発生しない。
 遊離砥粒ラップ/湿式という技法では、一定の垂直方向の「加圧力」の下で、ラップ工具を前後に押し切り」の要領で水平方向に動作させるものであるから、ワーク表面に対しては、その合成力が斜め下方に作用する。この力の作用がラップ砥粒の切り込み力となってラップ加工がなされる。ハンドラップ技法の場合、ラップ工具の水平動に対して下方への加圧力が大きいから、その切り込み力は存外に大きなものとなる。従って、ワーク表面粒子を引っ掛ける機会確率も大きい。

 これらの点は、ダイヤモンド砥粒を使う場合に顕著なことであり、ワーク表面粒子とダイヤモンド砥粒粒子の切り刃の大きさとの相関で、特定のダイヤモンド砥粒の粒径でいっそうスクラッチが発生しやすいということが分かる。逆にいうと、ラップ加工すべきワークの材質如何がスクラッチ発生のメカニズムを大きく左右する。焼き入れしたSK工具鋼というのは「複合材」だから、個々の構成粒子を引っ掛けるということになるのだが、純粋な単一材に対しては、別なメカニズムを辿ると考えないといけない。


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●ダイヤモンド砥粒と超硬材のラップ技法

 焼き入れしたSK工具鋼の表面を構成する粒子を引っ掛けて剥ぎ取るということが出来ているということは、このメカニズムを使って、超硬材をうまくラップするという技法ね展開できる。

 町jこうざいは複合材であるのだが、超硬の粒子を直接にラップしていくというのはかな置困難な作業となる。従って、何をどう考えるかと言えば、超硬材の超硬粒子の大きさとと、超硬粒子を?結合させている粒子間距離の大きさとの関係を勘案して、超硬粒子を引っ掛けて毟り取ることのできるダイヤモンド砥粒の大きさというものが自ずと決まる。遊離砥粒ラップ/湿式の技法に依って、超硬粒子そのものをラップ加工するのではなく、超硬粒子を母材から毟り取っていく。ラップの作用結果は、超硬粒子の大きさに応じた「梨地」になるのだが、最終的に、その時に採用したダイヤモンド砥粒の粒径よりも小さな粒径の砥粒で、超硬粒子をラップして鏡面に仕立て上げる。
 このようにすると、超硬材のラップ仕立てというものは、非常に簡易なものであることが分かる。

 このように、超硬材のラップ加工というものが従前技法の延長線上にあり(あるいは、従前技法そのものの適用)、決して困難な作業となるわけではない。ある意味では、焼き入れたSK工具鋼の鏡面仕立てと比べていっそう簡易なものである。


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●ダイヤモンド砥粒と遊離砥粒ラップ/湿式

 遊離砥粒ラップ/湿式の技法でラップを行う場合、ダイヤモンド砥粒の切り刃をワーク表面に押し込んで、その「切り込み力」でラップ加工を行うという理解が一般的に成り立つのだが、実際には、それだけの「切り込み力」を発揮させるような加圧力が困難な場合、単純にワーク表面を「磨く」もしくは「光らせる」ということに終始する。ハサミゲージ測定面(ラップ加工面)に、下地の粗い条痕が残っているにもかかわらず、妙に光った面であるとかえって下品だと映りかねないから、ダイヤモンド砥粒ラップでは商品価値が期待するほども改善されないということになり、WAやGC砥粒を使ってのラップで、ラップ痕の条痕が綺麗に揃っている方が好まれる場合も多い。

 ダイヤモンド砥粒の「硬さ」によって、ワーク加工面の好気性が高まるのだが、その「硬さ」に基づくラップ力を十全に行使しようとすると、ワーク表面への「切り込み力」を安定的に実現できるようにしなければならず、この点で、いわゆるハンドラップ技法の「原初スタイル」ではそれだけの加圧力をコントロールできない。

 さて、以上のことを踏まえると、ダイヤモンド砥粒を使っての遊離砥粒ラップ/湿式では、スクラッチの発生は一定の確率で現実化する。
 これを防止しようとする場合、単結晶のダイヤモンド砥粒の切り刃のラップ力が強烈だからスクラッチの発生を抑止できないであるから、多結晶のダイヤモンド砥粒を採用すれば解決するという話に至る。
 多結晶のものというのは、いっそう微細なダイヤモンド粒子を一定の粒度まで結合させたものなのだが、ハンドラップの場合、砥粒の「切り刃」を殺したようなことになるから、同じ1μm粒径といっても、多結晶のものはラップ力は落ちる。従って、1μm粒径のダイヤモンド砥粒でスクラッチが発生するという事態に直面した場合、多結晶の砥粒に置き換えても肝腎なラップ力の向上には結びついていかないから、むしろ、単結晶の0.5μm〜0.1μm粒径のダイヤモンド砥粒の活用を試行していくという方向になる。

 別な方向性として、ダイヤモンド砥粒を使っての鏡面ラップ仕立てではなく、GC砥粒を使うという方式を貫くことである。GC砥粒の場合、ワーク表面に対して「切り込む」という力はほとんど無くて、ワーク表面を「磨き重ねる」という作業になるのだが、焼き入れ処理したSK工具鋼「表面を#8000〜#10000のGC砥粒で鏡面が仕立て上げることができるのは、それだけのラップ力を発現するからである。ワーク表面とラップ工具表面との両面の間でGC砥粒が「摺り潰される」ということもあって、実効粒度は更に微細なものとなっている。
 

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