- 構成生薬:葛根・甘草・桂枝・芍薬・生姜・大棗・麻黄
- 陽陰区分:太陽病
- 治 方:辛温解表
- 適 合:実証、寒証、表実証、頭痛・悪寒・発熱があって頸の後ろが凝り汗が出ないもの
桂枝湯に葛根と麻黄を加味した処方で、骨格筋の緊張をほぐす作用が加わり、温める力が増して解表作用がより強力になっています。
日頃から汗をかかない表実証に使用するもので、汗かき体質の表虚証に使用すると発汗過多により虚脱を起こす場合があります。
また、麻黄の交感神経興奮作用が強く現れ、動悸・血圧上昇・胃部不快感や不眠などの副作用を呈する場合もあります。
無汗は表実によって起こるだけでなく、腎虚によって起こる場合もあり、現代人には後者の方が多いとされますので、汗だけで判断すると間違う場合がありますので注意が必要です。
桂枝湯と同様に、悪寒を感じる時期に適し、熱を不快に感じる段階に入ると、柴葛解肌湯などの辛凉解表剤の方が適します。
ただ、太陽・陽明合病による下痢には有効で、表実証であって表症状と下痢が同時に起こっている感冒性胃腸炎にも効果があります。
頸の後ろにある僧帽筋が過剰に緊張している肩凝りにも使用しますが、肩凝りを対象にするのであれば派生処方の独活葛根湯があり、こちらの方が効果は上です。(どちらも表実証に使う処方であり、証が違う場合は疎経活血湯を検討します)
筋緊張性頭痛は肩凝りの延長のような疾患であるために、葛根湯が奏効する場合が多いですが、血管性頭痛に対しては温作用によって痛みが悪化する可能性があります。
骨格筋の緊張緩和を応用した使い方として、実証体質の人が筋肉に過剰な負荷をかけたことで発症した急性の腰痛に、頓服的に服用して奏効する場合があります。
名前が先行してしまい、単なる風邪薬や肩こりの薬として、証を無視して使用されるケースもあるので注意が必要です。
特に、高齢者において本方が適する人はそれほど多くなく、以前(若い頃)に服用して問題がなかったとしても、年齢を経て実証ではなくなっている可能性も考えましょう。
乳汁の分泌促進を目的に使用されるケースもありますが、麻黄の成分は乳汁中に移行するために、推奨はできません。(催乳目的であれば、キュウ帰調血飲第一加減がお勧めです)
麻黄の成分であるエフェドリンが膀胱括約筋を収縮させますので、腹圧性の尿失禁を防ぐために使用された時代もありました。
今では新薬の方に優れた薬が登場していますので、尿失禁防止では使用はされなくなっています。(新薬は小児に使えない種類が多く、夜尿症の治療に類薬の麻黄湯を使うケースはあります)
他の特殊な使い方としては、桔梗石膏および地竜エキスを併用して、中耳炎に伴う疼痛の緩和や突発性難聴の治療にも使用されます。
葛根湯と総合感冒薬の成分を合体させた市販薬がTVコマーシャルをしています。
葛根湯は咳を発している時期には使用しない処方であり、少陽病期に強い解表を行うと、かえって長引かせてしまうことがあります。
咳止め成分を含む総合感冒薬との相性は良いとは言えません。