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陽病・陰病

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病気の進行には病気の強さ(病勢)と、それに抵抗する体の闘病力が関わってきます。

漢方では、病勢と闘病力を非常に重視し、実虚と同様に、正確に把握しなければならないものとしています。

簡単に言えば、「陽病」は闘病力>病勢の状態で、「陰病」は病勢>闘病力の状態です。

陽病は「太陽病」「陽明病」「少陽病」に細分され、陰病も「太陰病」「少陰病」「厥陰病」に細分されます。

最初が太陽病で、表部で病勢と闘病力がせめぎあっている時期です。

風邪の場合であれば、悪寒・発熱・筋肉痛・頭痛などの体表部に症状が出ている時期が該当します。

病因が外から侵攻してくる場合には、第一防御ラインとなる重要な時期で、ここで勝利すれば陽明病や少陽病へ進行することはありません。

ただ、全ての病気が太陽病から始まるわけではなく、体内に病因がある場合や闘病力が著しく弱い場合は、体表部での闘病が起こらないので、太陽病に相当する時期はありません。

次の段階が陽明病で、闘病の主舞台は胃腸に移ります。

表証・裏証で紹介しましたように、胃腸は表裏の両方に属します。

陽明病では、裏に侵攻しないように表で闘病している時期で、症状としては吐気や下痢・便秘が中心です。

もう一段階進むと、病気が裏に入り始める少陽病になり、病気の種類によって表でも裏でも症状が出ます。

「半表半裏」と表現されるのは、この時期です。

病気が裏に入ってしまうと太陰病になり、裏としての消化器系症状が出ます。

陽明病の症状は病気に抵抗する症状でしたが、太陰病の症状は病勢に敗れて機能が低下することで引き起こされる症状です。

寝込む程ではない慢性病の多くは、少陽病あるいは太陰病です。

少陰病は更に悪化した状態で、病気そのものの症状だけでなく、体内の調整がうまくできずに様々な派生症状も出ます。

派生症状として表の症状まで出る場合があり、これを太陽病や陽明病と勘違いして対応すると、大変なことになります。

少陰病は常に横になっていたいと思う状態ですが、末期になると、横になっていてもしんどくて寝ておれなくなります。

最後が厥陰病で、あらゆる臓器の機能が低下し、気血水の流れも著しく乱れて瀕死に近い状態です。

同じ病気に罹患しても、実証の人は陽病の期間が長く、虚証の人は短時間で陰病にまで進行します。

陽病であれば、崩れたバランスや流れを改善することで回復できますが、陰病ではまず病勢に打ち勝てる状態にしないと改善しません。

よって、陽病か陰病かで使う処方は全く違い、陰病の人に陽病の対応をすれば悪化させてしまう場合が少なくありません。

順序に関する補足

漢方の重要書物である傷寒論では、陽病の進行を太陽ー少陽ー陽明の順としています。

各区分に特徴的な発熱の型があり、太陽病では悪寒発熱、少陽病は往来寒熱、陽明病は潮熱です。

悪寒発熱は表に熱があり、往来寒熱は表裏に熱があり、潮熱は裏に熱があるとされており、その推移に合わせれば太陽ー少陽ー陽明の順となります。

しかし、この順だとすれば、陽明病の次に太陰病がくることになります。

陽明病と太陰病の状態はかなり乖離していますので、しっくりしません。

漢方の勉強を始めた頃、この順序に適合させようといろいろ悩みましたが、私の頭では納得できる答えを見つけることができませんでした。

壊病・瞑眩

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気は様々な区分や部位に影響を及ぼしており、派生症状を引き起こしたり、実際にはない症状を有るように感じさせることがあります。

この影響で、気の乱れが強い場合は、正しく証の判定をしたつもりでも、実際と異なることがあります。

これを「壊病」と言い、注意をしないと間違った判断をしてしまいます。

日によって訴える症状が変わる場合や、同時に起こりえない症状が出る場合には壊病を疑います。

別に、治療を間違えて新たな症状を誘発した場合、この引き起こされた病態を総称して壊病ということもあります。

漢方療法において快方に向かう途中に、突然に吐気・下痢・痛みなどの予期しない激しい症状が出ることがあり、これを「瞑眩」と言います。

非常に稀なことであり、起こったとしても数日で消え、その後は嘘のように快方に向かいます。

副作用であるとすれば、服用を続けている限りは症状も続きますので、明らかに異質の作用です。

悪いなりにバランスを維持していた体内環境が、快方へ向かう過程で一時的にアンバランス状態となったとも考えられますが、正確なことは不明です。

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