- 構成生薬:甘草・粳米・大棗・人参・麦門冬・半夏
- 陽陰区分:少陽病
- 治 方:滋陰潤燥
- 適 合:虚証、陰虚、燥証、のぼせと喉の違和感があって咳が強く痰の切れが悪いもの
半夏以外は全て滋潤の生薬で、陰虚に伴う燥証を回復させます。
半夏は燥性の生薬ですが、潤いが過ぎるのを防ぐとともに、気の上逆を下降させます。
ただし、この半夏を配合している故に、長期の連用には適していません。
胃・心の虚弱から起こったのぼせ(気の上逆)と、咽喉の不調(陰虚による燥)に使用します。
冬季や冷房中には乾燥が強くなりますので、症状が強くなることが多いです。
声帯の使い過ぎ・タバコの吸い過ぎなどで、咽頭にダメージがある者にも適します。(タバコによる咳には、清肺湯よりも効果的なケースが多いです)
陰虚によって痰が粘るようになりますので、それを切ろうとして激しく咳き込むことが多いですが、咳が必須の症状というわけではありません。
しかし、新薬の咳止め薬がほとんど効果がない、透析者の咳やACE阻害薬で誘発される末梢性の咳に有効な数少ない薬です。
子息と呼ばれる妊娠中の咳には、本処方以外に使用できる薬がありません。
地竜を加味すると咳への効果が延長します。
咳における鑑別は、継続的に出る咳ではなく、一旦出始めると顔が真っ赤になるまで強くなり、痰の量が多い湿性の咳ではなく乾いた咳で、昼夜に関係しません。
同様の咳が夜にだけ出る場合は滋陰降火湯を、燥があまり強くない(舌の乾燥がない)場合は蘇子降気湯を検討します。
マイコプラズマや百日咳などの長引く咳には、麻杏甘石湯を少し加えて五虎二陳湯の代用として使用する例もあるようですが、麻杏甘石湯とは作用が相殺される部分があり、加える量によっては効果が弱くなってしまう場合があります。
咳以外では、妊娠・心肥大・胃炎・肝炎などによって、横隔膜や迷走神経が刺激されて起こるシャックリに試用します。
コリン作動性ではない腺分泌亢進作用があり、唾液分泌が低下して起こる口腔内乾燥症や、涙液分泌が低下して起こるドライアイ症候群にも使用されます。
シェーングレン症候群には単独でも使用されますが、補中益気湯との併用が効果的との報告があります。
胃陰虚によって口渇や口内乾燥する者が胃痛を起こしたケースには、本処方に芍薬甘草湯を併用します。
便が固くなるタイプの便秘がある場合は、調胃承気湯と併用しますが、皮膚・大腸に燥が及んでいる場合は滋陰降火湯の方が適していると思います。
稀ではありますが、汎用によって血尿を起こした例が報告されていますので、長期に使用する場合は注意が必要です。