
表証・裏証
表・裏は病気が現れている場所の区分です。
「表」とは、体の表面部分で、皮膚・筋肉・耳・鼻・口や喉あたりも含みます。
「裏」とは、体の内部で、内臓と思われれば理解しやすいでしょう。
ただし、消化管や呼吸器は特別で、場所は裏に位置しますが、管の形で表の延長でもあるために、表・裏の両方に入ります。(正確には、表裏に類似した「外」・「内」という区分が関係します)
病気が表に留まっている時を「表証」・裏に入った時を「裏証」と言い、表から裏へ入り始めた段階は「半表半裏」と表現します。
病気がどの部位にあるのかで治方や処方が違います。
表にある時は、解表法によって発散させることができますが、裏に入ってしまえば表から発散させる治方は効果がなく、和解法や清熱法・温裏法などで対応することになります。
有名な葛根湯が風邪の初期に奏効するのは、解表法の処方だからで、裏に入った状態には効果がないばかりか、体に負担をかけることがあります。
熱証・寒証
「熱証」とは、熱感があり、熱がありそうな赤ら顔で、触れても熱いという状態です。
「寒証」とは、寒気を感じ、外見からも青白い顔おして寒そうで、触れても冷たいという状態です。
表部の熱寒は、素直に熱いや寒いと感じることが多いのですが、裏部の熱寒は、便秘・下痢・動悸などの症状として出てくることが多々あります。
「表熱」や「裏寒」のように、部分的な熱の偏在が起こることがあります。
熱寒は体内の流れが順調であれば偏在しませんので、気・血・水のいずれかに問題があると想像され、程度や部位によって病因特定の情報になります。
血の流れが悪い状態には「鬱血」と「虚血」があり、川に例えると、ダムのように流れを止める場合を鬱血と言い、水量が少なくて流れが細い場合を虚血と言います。
血流が悪い場合は、全体としては寒証になることが多いのですが、鬱血ではダムの部位に熱を帯びることがあり、虚血が長期間続くと「血熱」と言って四肢や頭部に熱を帯びることがあります。
燥証・湿証
水の状態を区分するものです。
細分すると、凝集して粘稠なものを「痰」、希薄なものを「飲」、腫脹を生じるものを「水」、停滞して水と見えないものを「湿」があり、これらを合わせた状態です。
年老いて体内の水分が少なくなり全体的にカサカサする状態、高熱が続いたり下痢による脱水で水分が失われた状態、タンが粘ってきれにくい状態は、全て燥証です。
全身がむくんでいる状態、膝などの関節に水が溜まる状態は、どちらも湿証です。
熱寒と同じく結果としての状態ですが、燥湿はゆっくりと進行し、大きく変動しませんので病状把握の参考になります。
最近に発症した症状であっても、燥湿の証があれば、その原因はかなり前にあると推察されます。
また、水は弱い部位に停滞しやすい特徴があり、根本の病巣部位を判定する時にも役立ちます。
「表燥裏湿」とは、表は乾燥しているのに裏は水が過剰な状態です。
アトピー性皮膚炎の多くはこのタイプで、表の乾燥に目を奪われて水分を過剰に摂取していると、裏湿が悪化して症状が強くなってしまうことがあります。