第8回サマーコンサート

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第8回 サマーコンサート
平成19年6月24日(日)    
ひこね市文化プラザグランドホール
指揮 吉住典洋
ロッシーニ   どろぼうかささぎ序曲
ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
ムソルグスキー 展覧会の絵

第2回 ルッチプラザコンサート
平成19年7月1日(日)    
ルッチプラザホール       
指揮 吉住典洋 独奏 中野富雄
ロッシーニ   どろぼうかささぎ序曲
モーツァルト  フルート協奏曲第1番
ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
9

吉住典洋 指揮者プロフィール
   
yoshizumi  愛媛県今冶市生まれ。永岡嘉夫氏にサクソフォンの手ほどきを受け愛知県立芸術 大学管打楽器コースに進学、研究生を経て同大学大学院音楽研究科修了。サクソフォンを雲井雅人、室内楽を菅原眸、中川良平、村田四郎、オーケストラ・ レパートリーを中川良平の各氏に師事。同大学定期演奏会にはJ.S.Bach/NakagawaのMarcello Concerta III BWV974 の ソリストとしてソプラノ・サクソフォンを演奏、好評を博した。よんでん文化振興財団奨学金を受賞。

 在学中より指揮者としての活動を開始、名古屋二期会において外山雄三氏のもとで アシスタントとしての研鑚を積む。以後”中川良平のTokyo BACH-Band"、 日生劇場オペラ名古屋公演など、佐藤功太郎、古谷誠一、松尾葉子、竹本泰蔵、 現田茂夫、沼尻竜典各氏のアシスタントを歴任する。またその間も自らのタクトで オーケストラや合唱など数々の音楽愛好団体と共演、'98年からはセントラル愛知交響楽団、'00年から名古屋フィルハーモニー交響楽団ユニオンコンサー トに出演する。'99年アシスタントとして入っていた名古屋市文化振興事業団主催"かるめん・じょーんず" (原作G.Bizet:Carmen)の最終公演において急遽指揮を命ぜられピット・デビュー、好評を博す。'01年に行われた春日井オペラ八百比丘尼物 語初演では、作曲家河野恭子氏より的確な譜面の解釈」と讃えられる。年末に東京で行われるサクソフォンフェスティバルにも、指揮者として近年連続して招か れている。現在、愛知県立芸術大学、愛知県立明和高等学校音楽科各非常勤講師。

演奏会に寄せて「命」   指揮者 吉住典洋
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 先日、私の家の近所で立てこもり銃撃事件が起こりました。悲しいことに尊い命が奪われるという最悪の結末を迎えてしまいました。後で聞けば身内話のもつ れ、犠牲になった方のご家族は奥様にまだとても小さいお子様のお二人。私にも妻と3歳になる娘がいます。とても他人事とは思えません。昨今、このような理 不尽な事件が後を絶ちません。人の命を何だと思っているのでしょう、本当にやるせない気持ちで一杯です。本日演奏いたします曲は、作曲者自らが命と真正面から向き合って書かれた作品と言えるものです。聴力を失い自殺を考えるほどの苦悩のなかから命を見つめな おしたベートーヴェン、熱く芸術論を戦わせ合った無二の親友の突然の死に自分を責めるムソルグスキー。これら二人の作曲家に、ベートーヴェンが認めたほど のオペラ作曲家ロッシーニの、人生の悲哀から勝利を予感させる躍動感たっぷりの序曲が花を添えます。

 たまたま彼らは音楽家でしたが、音楽家である前に一人の人間であったと感じます。私は彼らが創造した音楽を通して彼らの人間性に触れられる気がします。そ して彼らは私たちに生きる勇気と喜びとともに、命の尊さを教えてくれる気がしてならないのです。どうかひと時、私と一緒に思いを馳せてみていただけますで しょうか。足をお運びくださった皆様、ひこね第九オーケストラの皆様との一期一会に深く感謝いたします。  吉住典洋(よしずみのりひろ)
楽曲紹介
●ロッシーニ:歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
ロッシーニはイタリアの作曲家で、他にも「ウィリアム・テル」や「セビリアの理髪師」など数多くの歌劇を作曲しています。
歌劇の内容は、召使の女の子ニネットと、主人の息子の恋愛物語です。身分違いの恋のため、息子の母親は猛反対。ニネットに何かと辛くあたり、銀の食器が盗 まれたこともニネットのせいにしてしまいます。当時、召使が盗みを働いた場合は死刑。これをチャンスとばかりに、昔ニネットに振られた代官が、罪を見逃す 代わりに自分との結婚を迫ってきます。ニネットは断固拒否し、死刑が確定してしまいます。まさに、執行の時、銀の食器を盗んでいったのは、悪戯好きのかさ さぎであったことが判明します。(本当に、かささぎには光り物を集める習性があるようです。)ニネッタと息子は晴れて結婚することとなり、めでたくお話は 終わります。
曲は小太鼓のロールで始まります。楽しげな行進曲調が続いたあと、再び小太鼓のロールがあり、主部が始まります。メランコリックな第1主題、楽天的な第2 主題、息の長いクレッシェンド(いわゆる「ロッシーニ・クレッシェンド」)。これらが繰り返され、コーダに流れ込み、華やかに曲は結ばれます。
余談となりますが、村上春樹氏の「ねじまき鳥クロニクル」という小説の第一部サブタイトルは、まさにこの曲からきています。この小説は、主人公が「どろぼ うかささぎ」序曲を聞きながらスパゲティーをゆでるシーンから始まります。この部分では、「スパゲティーをゆでるにはまずうってつけの音楽だった」と書か れています。短調の部分があるものの、この曲にはイタリアらしい雰囲気があり、長さもちょうど10分弱ということで、確かに“うってつけ”かもしれませ ん。興味のある方は是非お試しを。

●ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
この交響曲第6番は、交響曲第5番とほぼ同時期に作曲されており、初演も同じ日に行われていますが、第5番とは対照的に非常に穏やかで優しい曲です。 ウィーン郊外のハイリゲンシュタットの初夏の情景を描いたと言われますが、ベートーヴェン自身は「絵画と言うよりはむしろ、感情の表現」だと語っていま す。つまり、「どんな場面を思い浮かべるかは聴く者の自由にまかせる」とベートーヴェンが言ったように、この曲はある特定の風景を思い浮かべなければなら ないと私たちに強要している訳ではなく、私たちが思い浮かべるもの自然に対する全ての想いを許容して受け止めてくれる懐の広い曲なのではないでしょうか。 ハイリゲンシュタットでなくても良いのです。琵琶湖かもしれません。伊吹山かもしれません。田んぼのあぜ道かもしれません。ベートーヴェンのように、自然 を敏感に察知し楽しんだことを思い出し、この曲を聞きながら自由な散歩の旅に出てください。
この曲は、ベートーヴェンの全9曲の交響曲の中でも他とは違った特徴を持っています。まず、ベートーヴェン自身がこの曲を「田園交響曲」 (Sinfonia Pastorale)とよんだこと。そして、各楽章にも標題を付けたこと。また、5楽章構成であることも、他の交響曲には見られない特徴です。

第1楽章「田園に到着したときの朗らかな感情の目覚め」
他の交響曲の第1楽章が力強く立派なものが多いのに比べ、この曲は非常にのどかな雰囲気を持っています。暖かいメロディーがそれぞれの楽器にリレーされ、絡み合っていきます。
第2楽章「小川のほとりの情景」
小川が静かに流れる情景を暗示する第1主題で始まります。終止部では、フルートでナイチンゲール、オーボエでウズラ、クラリネットでカッコウを真似た鳥の歌が演奏されます。
第3楽章「農民たちの楽しい集い」
この楽章から第5楽章までは切れ目なく演奏されます。歯切れのよい主題の後に続く、田舎風のメロディー。さらにトリオの部分は、ちょっと野性的になり、低音楽器が活躍します。最後は、最初の主題が加速し、途中フッと消えるように、次の楽章に入ります。
第4楽章「雷雨、嵐」
低弦がおどろおどろしく出てきて、遠くでなる雷のような雰囲気を醸し出します。雷が近くで落ちたような激しい音の部分になり、ティンパニの一撃、 低弦の動きなど、雷雨の様子を表しています。クライマックスの後、次第に嵐は弱まり、雷の音も遠ざかり、最後は次の楽章につながる穏やかなメロディーが出 てきます。
第5楽章「牧人の歌、嵐の後の喜ばしい感謝の感情」
クラリネットとホルンが、牧人の笛のようなのどかな主題を奏でます。嵐が去り太陽が雲の合い間から差し込んでくるような安堵感につつまれます。後半から敬虔さが増し、最後は「祈り」のコラールに至ります。
3
●ムソルグスキー/ラヴェル編曲:組曲「展覧会の絵」
ムソルグスキーはロシアの作曲家です。1873年、ムソルグスキーの友人であり、画家であったガルトマンが亡くなりました。翌年、ガルトマンの遺作展が催され、その絵を見たムソルグスキーが、亡き友の絵の印象を音楽として表したものが、この「展覧会の絵」です。
もともとはピアノ曲として作曲されましたが、これをオーケストラ用に編曲したのが、フランスの作曲家ラヴェルでした。ラヴェルはオーケストラの魔術師とも 言われ、この作品はまさにその彼の技が惜しみなく発揮されています。この作品が世に広く知れ渡ったのは彼のおかげだと言っても過言ではないでしょう。ムソ ルグスキーのロシアらしい武骨さと、ラヴェルのフランスらしい優美さが相乗効果となって表れています。

プロムナード~冒頭に演奏されるこの有名なメロディーは「プロムナード」と呼ばれ、その後も曲と曲の間に演奏されます。「プロムナード」とは「散歩道」という意味であり、ここでは絵から絵へと移動するムソルグスキー自身を表したものとも言われています。
グノームス~地底に住み奇妙な格好で動きまわるという、ロシアの伝説的な小人の様子が描かれています。
プロムナード~
古城~中世の城の前で吟遊詩人がメランコリックな歌を歌っている情景を描写しています。この歌はアルト・サキソフォーンで演奏されます。
プロムナード~
テュイルリー~パリのテュイルリー公園で子どもたちが喧嘩している情景です。
ブィドロ~ブィドロとはポーランドの牛車のことですが、実際にこのタイトルのついた絵をガルトマンは描いていなかったようです。ブィドロには「家畜のように虐げられている民衆」という意味があり、複雑なメッセージがこめられているのではないかと推測されています。
プロムナード~ここでの主題は、ブィドロを見た後の感情を反映してか、悲しい短調で示されています。
殻をつけたままの雛の踊り~バレエの舞台衣装のイラストに基づく音楽です。
ザムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ(金持ちのユダヤ人と貧しいユダヤ人)~金持ちのユダヤ人と貧しいユダヤ人が描かれた絵によった曲で、前者は弦と木管の重々しいユニゾンで、後者はトランペットで対照的に示されています。
リモージュの市場~活気に満ちた市場で女性たちがおしゃべりをしている様子を表しています。
カタコンベ~カタコンベとはキリスト教がまだ公認されていない時代に地下に作られた共同墓地のことです。その後“死者とともに死せる言葉で”とラテン語で表記された主題へと続きます。
バーバ・ヤーガの小屋(鶏の足の上に立つ小屋)~ロシアの魔女バーバ・ヤーガの小屋を描いたものです。
キエフの大門~ガルトマンが描いたキエフ街門の設計図に基づく大規模な終曲で、管弦楽の効果を生かした壮麗な響きのうちに圧倒的なクライマックスを築き上げます。
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