ウイルス分類・・・DNAウイルスとRNAウイルス

 

 

ボルティモア分類

1 ( 2本鎖DNA) ポックスウイルス科ヘルペスウイルス科アデノウイルス

2 ( 1本鎖DNA) パルボウイルス

3 ( 2本鎖RNA) レオウイルス科

4 (1本鎖RNA+鎖) コロナウイルス科ピコルナウイルス科トガウイルス科フラビウイルス科カリシウイルス科

5 (1本鎖RNA − 鎖) パラミクソウイルス科ラブドウイルス科フィロウイルス科オルトミクソウイルス科アレナウイルス科ブニヤウイルス科

6 (1本鎖RNA逆転写) レトロウイルス科

7 (2本鎖DNA逆転写) ヘパドナウイルス科

 

DNAウイルス

RNAウイルス

 

ファージ

 

サテライトウイルス

ウイロイド

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ウイルス・・・複製システムの起源?

 

ウイルス分類・・・DNAウイルスとRNAウイルス

 

 地球上には、膨大な数のウイルスがいます。

ほとんどは、細菌や藍藻を宿主とするファージです。 膨大な数のウイルス

 

海洋全体では、1031ものウイルスが存在するという推算もあります。

 

 また、ウイルスは、同種の動物間だけでなく、

別種の動物間を移動することができます。

 更に、動物と植物の間を移動することもできるようです。 生物の間を移動するウイルス

 

ウイルスの分類について、です。

 

 

ボルティモア分類 DNAウイルス RNAウイルス

1 ( 2本鎖DNA)

ポックスウイルス科細胞質内で増殖。

ヘルペスウイルス科

アデノウイルス

 

2 ( 1本鎖DNA)

パルボウイルス

 

3 ( 2本鎖RNA)

レオウイルス科

 

4 (1本鎖RNA+鎖)

コロナウイルス科  :ニドウイルス目

ピコルナウイルス科

トガウイルス科    

フラビウイルス科 

カリシウイルス科  

 

5 (1本鎖RNA − 鎖)

パラミクソウイルス科: モノネガウイルス目

ラブドウイルス科   : モノネガウイルス目

フィロウイルス科   : モノネガウイルス目

オルトミクソウイルス科: 細胞核内で増殖。

アレナウイルス科 

ブニヤウイルス科 

 

6 (1本鎖RNA逆転写)

レトロウイルス科  

 

7 (2本鎖DNA逆転写)

ヘパドナウイルス科

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DNAウイルス ボルティモア分類

ゲノムとしてDNAをもつウイルスです。

 

ゲノムDNAから宿主細胞のRNAポリメラーゼを利用してmRNAを合成し、

そのmRNAからタンパク質を合成するのが、DNAウイルスの増殖経路です。

 

DNAウイルスは、RNAウイルスと異なり、ゲノムの構造に多様性がありません

ほとんどが二本鎖DNAウイルスであり、

二本鎖でないウイルスは、一本鎖マイナス鎖DNAウイルスのパルボウイルスと、

不完全二本鎖DNAウイルスのヘパドナウイルス科のみです。

 

DNAの構造は、ほとんどが線状で、

環状DNAをもつのは、パポバウイルスだけです。

 

尚、一本鎖DNAウイルスゲノムは、そのままでは増殖できないため、

宿主細胞のDNAポリメラーゼを使い、二本鎖の状態を経て増殖します。

 

ヘパドナウイルスは、非常に特異的な増殖様式を取ります。

ゲノムには、部分的に一本鎖があり、宿主細胞内で完全な二本鎖DNAウイルスとなり、mRNAを合成します。

DNAの合成は、そのmRNAを逆転写することで合成されます。 逆転写酵素をもつ原核生物

 

通常のDNAウイルスは、RNAウイルスと異なり、核内で増殖しますが、

ポックスウイルスは、細胞質内で増殖を行います。

 

DNAウイルスには、増殖の過程で生じたDNA複製のミスを修正する機構が備わっています。

そのため、RNAウイルスと比較すると遺伝子の変異が少ないです。

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ポックスウイルス科

線状の二本鎖DNAをゲノムとして持つDNAウイルスです。

 

ビリオンは、220450nm×140260nm×140260nmもある大きなウイルスで、レンガ状または卵形です。

 

エンベロープを持ちますが、

通常のエンベロープを持つウイルスとは異なり、エーテル耐性のものも存在します

(オルトポックスウイルス属、アビポックスウイルス属)。

 

ポックスウイルスは、DNA複製に必要な酵素のほとんどを自前で持っているので、細胞質内で増殖を行います。

分類

 

 

ヘルペスウイルス科

線状の二本鎖DNAをゲノムとして持つDNAウイルスです。

 

ビリオンは、直径120200nmで、正20面体の球状粒子です。

 

エンベロープを持ちます。

 

ウイルスの増殖は、宿主細胞の内で行われます。

分類

 

 

アデノウイルス

直鎖状の二本鎖DNAをゲノムとして持つDNAウイルスです。

 

カプシドは、直径約80nmで、正20面体の球形粒子です。

 

エンベロープは持ちません。

 

B群以外のアデノウイルスは、

免疫グロブリンスーパーファミリーに属するCARタンパク質をレセプターとして、宿主細胞内に取り込まれます。

 

E1Aの転写をきっかけとして、各種の初期遺伝子が活性化され、

ウイルスのDNAポリメラーゼDNA結合タンパク質、

感染細胞のアポトーシスを抑制する物質が合成されます。

 

E1Aは、ウイルスのDNA複製に都合のよいSに誘導します。

その後、ウイルスDNAの複製が始まると、後期遺伝子が発現され、

カプシドなどが合成されて、成熟したウイルスとなります。

分類

 

 

パルボウイルス DNAウイルス

パルボウイルス科に属する、直鎖一本鎖DNAウイルスです。

 

直径20nmの球状粒子で、カプシドは正二十面体構造です。

 

エンベロープは持ちません。

 

自然界に存在するウイルスの中で、最も小さい部類です

parvusは、ラテン語の「小さい」を意味します)。

 

増殖のために、ヘルパーウイルスを必要とするものがあります。

 

多くは、自身と関連性がある種の動物にしか感染しません。

分類

 

 

RNAウイルス ボルティモア分類

ゲノムとして、RNAをもつウイルスです。

 

ゲノムRNAから、DNAを介さずに遺伝情報が発現するタイプのウイルスと、

ゲノムRNAを、いったん逆転写酵素によってDNAとしてコピーし、

そのDNAから遺伝情報を読み出すタイプのもの(レトロウイルス)があります。

 

二本鎖RNAウイルスと、一本鎖RNAウイルスに大別されます。

 

更に、一本鎖RNAウイルスを、プラス鎖型マイナス鎖型に分けることもあります。

 

一本鎖プラス鎖RNAウイルスは、ゲノム自体がmRNAとして機能し得ます。

レトロウイルスもここに含まれますが、一旦DNAに遺伝情報を移します。

 

マイナス鎖RNAウイルスゲノムは、

mRNAと相補的な塩基配列のため、そのままではmRNAとして機能できません。

これをRNA依存性RNAポリメラーゼによって、+鎖に転写して機能します。

 

RNAウイルスの増殖は、DNAウイルスと異なり、通常細胞質内で行われますが、

オルトミクソウイルス科や、ラブドウイルス科の一部( Nucleorhabdovirus )のウイルスは、

細胞核内で増殖を行います。

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レオウイルス科

10 12本の、線状の二本鎖RNAを、ゲノムとして持つRNAウイルスです。

 

ビリオンは、直径6080nmの正二十面体構造です。

 

エンベロープを持たないため、エーテルに対しては抵抗性です。

 

細胞質内で増殖し、核周辺部に好酸性の細胞質内封入体を形成します。

 

同属のウイルス種間で、遺伝子再集合を起こすことがあります。

分類

 

 

コロナウイルス

一本鎖プラス鎖RNAウイルスの、ニドウイルス目のコロナウイルス科のウイルスです。

コロナウイルス亜科、トロウイルス亜科を含みます。

 

コロナウイルス属のゲノムは、RNAウイルス中最大(約30kb)です。

 

エンベロープ表面に存在する突起によって、太陽のコロナのような外観を持ちます。

エンベロープに、ヘマグルチニンエステラーゼを有し、赤血球凝集性を示す種が存在します。

 

ウイルスの増殖は、細胞質内で行われ、小胞体ゴルジ装置から出芽します。

分類

 

 

ピコルナウイルス科

一本鎖プラス鎖RNAを、ゲノムとして持つRNAウイルスです。

 

小さなRNA pico - rna )を持つという意味で命名されました。

 

直径2230nm、正20面体のカプシドを持ちます。

 

エンベロープを持たないため、エーテルには耐性があり、酸(pH3.0以下)でも安定です。

 

ウイルスの増殖は、細胞質内で行われます。

分類

 

 

トガウイルス科

一本鎖プラス鎖RNAをゲノムに持つ、RNAウイルスです。

 

ビリオンは、直径約70nmの球形粒子です。

ビリオンの表面には、微小なスパイクが存在します。

 

エンベロープを持ちます。

 

細胞質で増殖し、出芽の際にエンベロープを獲得します。

分類

 

 

フラビウイルス科

一本鎖プラス鎖RNAを、ゲノムとして持つRNAウイルスです。

 

ウイルス粒子は、直径4060nmです。

 

エンベロープを持ちます。

 

脊椎動物に広く分布し、多くはベクター(蚊やダニ)を介して伝播します。

分類

 

 

カリシウイルス科

一本鎖プラス鎖RNAをゲノムに持つ、RNAウイルスです。

2-3種類のORFが存在します。

 

ビリオンは、直径3038nmで、正二十面体構造を形成します。

 

エンベロープを持たないため、エーテルに対する耐性を持ちます。

酸(pH3-5)によって不活化されます。

 

ネガティブ染色による電子顕微鏡観察では、

ビリオンは「ダビデの星」と呼ばれる特徴的な形態を示します。

分類

 

 

パラミクソウイルス科

一本鎖マイナス鎖RNAをゲノムに持つ、RNAウイルスです。

 

ビリオンは、150350nmの多形性を示します。

 

粒子はエンベロープに包まれ、エーテルに対する感受性を持ちます。

エンベロープの表面には、2種類の糖タンパク質のスパイクが密に配列しています(FHN)。

 

細胞質内で増殖し、細胞膜から出芽をします。

 

細胞融合能を持ち、多核巨細胞を形成するものが多いです。 センダイウイルス

分類

 

 

ラブドウイルス科

一本鎖マイナス鎖RNAを、ゲノムとして持つRNAウイルスです。

 

動物ウイルスでは、ビリオンは銃弾型をしています。

 

エンベロープを持ちます。

 

赤血球凝集性を有します。

 

宿主域は非常に広く、動物(脊椎動物、節足動物)及び植物に感染するものが知られています。

昆虫などにより媒介されるものも多いですが、脊椎動物と植物で共に感染するものはありません。

 

多くのウイルスは、Llarge protein)、Gglycoprotein)、Nnucleoprotein)、Pphosphoprotein)、Mmatrix protein)の5種の遺伝子を含みます。

 

RNAの転写と複製には、LPが必要です。

転写は、遺伝子毎に行われ、細胞のものと同じ形のmRNAとなります。

 

ビリオンには、

カプシドを作るN

エンベロープの膜タンパク質G

これらをつなぐM

3種類のタンパク質が含まれます。

 

多くは、宿主細胞の細胞質で増殖しますが、

植物に感染するNucleorhabdovirusだけは、細胞核で増殖します。

分類

 

 

フィロウイルス科

一本鎖マイナス鎖RNAを、ゲノムとして持つRNAウイルスです。

 

ビリオンは、多形性で紐状の形態(直径80nm、長さ14,000nm)を示します。

ラセン対称性のヌクレオカプシドを有します。

 

エンベロープを持ちます。

 

細胞質内で増殖し、細胞膜から出芽します。

 

細胞質内封入体を形成します。

分類

 

 

オルトミクソウイルス科 (オルソミクソウイルス科)

 

インフルエンザウイルス等が含まれる、RNAウイルスです。

 

直径80120nmA型インフルエンザ

 

一本鎖マイナス鎖RNAをゲノムとして持ちます。

ゲノムは分節性です。

 

エンベロープを持ちます。

 

RNA依存RNAポリメラーゼを、ウイルス粒子内部に含みます。

 

RNAの複製が、宿主細胞ので行われます。

分類

 

 

アレナウイルス科

一本鎖のアンビセンスRNA2分子をゲノムとするRNAウイルスです

arenaは、ラテン語の砂を意味します)。

 

ビリオンは、直径50300nmです。

 

エンベロープを持ちます。

 

ビリオン内に、宿主由来のリボソームとRNAを持ちます。

 

宿主細胞の細胞質内で増殖し、細胞質内封入体を形成します。

分類

 

 

ブニヤウイルス科

一本鎖マイナス鎖RNAを、ゲノムとして持つRNAウイルスです。

ゲノムは3分節です。

 

フレボウイルス属とトスポウイルス属のRNAの一部は、プラス鎖で機能します。

 

ビリオンは、92105nmです。

 

エンベロープを持ちます。

 

細胞質内で増殖します。

 

節足動物内で増殖することができます。

 

トスポウイルス属のみ、植物ウイルスであり、

その他の属は、人畜に感染します。

分類

 

 

レトロウイルス科レトロウイルス) RNAウイルス

一本鎖プラス鎖RNAを、ゲノムとして持つRNAウイルスです。

逆転写酵素を持ちます。

 

直径約100nmで、球状です。

 

エンベロープを持ちます。

 

ウイルス粒子のコアには、逆転写酵素と、通常2組の同一RNAゲノムを持ちます。

 

共通の遺伝子としては、

プロモーター活性のある、2つのLTRという塩基配列の繰り返し領域に挟まれて、

gag(構造タンパク質をコード)、

pro(プロテアーゼをコード)、

pol(逆転写酵素などをコード)、

env(エンベロープのタンパク質をコード)、を持っています。

 

ウイルスのエンベロープが、細胞膜の受容体と結合することで、細胞内にRNAと逆転写酵素が侵入します。

その後、逆転写酵素が作用し、ウイルスRNAを鋳型に、マイナス鎖DNAを合成します。

合成されたマイナス鎖DNAを鋳型に、プラス鎖DNAが合成され、

一本鎖RNAが、二本鎖DNAに変換されます。

 

二本鎖DNAは、宿主細胞のDNAに組み込まれ、プロウイルスという状態になります。

プロウイルスは、恒常的に発現している状態となっており、ウイルスRNAmRNAが次々と合成されていきます。

mRNAは、ウイルスタンパクを合成させ、完成したウイルスは宿主細胞から発芽していきます。

分類

 

 

ヘパドナウイルス科 DNAウイルス

部分的に一本鎖領域のある、二本鎖DNAをゲノムとするDNAウイルスです。

 

ビリオンは、直径4048nmの球形粒子です。

 

エンベロープを持ちますが、耐熱性が高く、60℃で数時間処理しても失活しません。

 

ゲノムDNAは、宿主細胞質内でビリオンに含まれるDNAポリメラーゼにより、完全な二本鎖DNAとなり、

マイナス鎖DNAからプラス鎖RNAが転写され、

このプラス鎖RNAから、再びマイナス鎖DNAが逆転写されます。

 

マイナス鎖DNAを鋳型として、プラス鎖DNAが合成されますが、

完全な二本鎖DNAとなる前に細胞から放出されるため、

ビリオンに含まれるウイルスゲノムは、不完全な二本鎖DNAとなります。

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ファージ(バクテリオファージ)

細菌に感染するウイルスです。

 

ファージの基本構造は、タンパク質の外殻と、遺伝情報を担う核酸 (主に二本鎖DNA) からなります。

 

ファージが感染した細菌は、細胞膜を破壊される溶菌という現象を起こします。

細菌が食べ尽くされるかのように死滅するため、バクテリオファージと命名されました。

 

大きさは25200nm程度です。

 

形状は、多くの種は、正二十面体様のカプシドを頭部として、そこからが伸びています。

真核生物に感染するウイルスの様に、単純に頭の部分のみを持つ種もあります。

 

ファージの尾部は、細菌の細胞外に発達した莢膜や、ペプチドグリカンからなる細胞壁を突破して、

細菌の細胞内にファージの核酸を送り込む機能を持ちます。

 

T4ファージの尾の先端にある基盤を構成するタンパク質には、リゾチームとして機能する部分があり、

これがペプチドグリカンを加水分解して、細菌の細胞壁に穴を開けます。

 

ファージの尾は、

細菌細胞に核酸を送り込む時に収縮する長い尾、

柔軟に屈曲するが収縮はしない長い尾、

収縮しない短い尾

3種類があります。

 

T4ファージは、長くて収縮するタイプ、

ラムダファージは、長くて屈曲するタイプの尾を持っています。

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サテライトウイルス

感染性の核酸DNAまたはRNA)で、

増殖のために、他のウイルス(ヘルパーウイルス)が同じ細胞に感染していることを要するものを、サテライトといいます。

 

サテライトのうち、コートタンパク質をコードし、

そのタンパク質に包まれて、独立したビリオンを形成するものを、サテライトウイルスといいます。

 

現在、植物に寄生するものが多数知られる他、微生物や昆虫に寄生するものもあります。

 

サテライト核酸

一本鎖DNA

二本鎖RNA

一本鎖RNA

サブグループ 1:大型サテライトRNA

サブグループ 2:小型線状サテライトRNA

サブグループ 3:環状サテライトRNA(ウイルソイド)

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ウイロイド

塩基数が200400程度と、短い環状の一本鎖RNAのみで構成され、

維管束植物に対して、感染性を持つものです。

 

分子内で塩基対を形成し、多くは生体内で棒状の構造をとると考えられます。

 

ウイロイドには、

ウイルスのような、タンパク質でできた殻がなく、

プラスミドのような、ゲノム上にタンパク質をコードすることもありません。

 

複製は、ローリングサークル様式で行われ、核内あるいは葉緑体内で複製されます。

この過程では、それぞれの単位が、タンデム(二つ)に連なった状態に複製されますが、

これを切断する過程が、リボザイムによって触媒されるウイロイドも知られます。

 

ウイロイドをRNA生物の生きた化石と見なし、ウイロイド様のものから生物が進化したとする説があります。

 

RNAの切れ端が自己複製機能を有するようになったものが、ウイロイドであるとする説もあります。

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