クラトン・・・古の大陸と生命の意外な関係
クラトン : クラトンの構造、クラトンの形成
フェノスカンジア(バルト楯状地)
参考 : リソスフェア、アセノスフェア、ホットスポット
クラトンは、大陸地殻のうち、カンブリア紀以前に安定化した部分です。
20億年以上、存在してきたものもあります。
27億年前の地層から、ストロマトライトの化石が見つかっています。
この化石は、光合成を行うシアノバクテリアと考えられています。
この時期に大規模な火山活動があり、初めて大陸と呼べる陸地が形成されたようです。
シアノバクテリアが光合成を行うためには、光の届く浅い海底が必要であり、
シアノバクテリアの誕生と大陸の形成とは関連があると考えられています。
19億年前に、火山活動が非常に活発になって、大きな大陸が形成され、同時に大気中の酸素濃度が上がり始めました。ヌーナ大陸
最初の真核生物が生まれたのも、この時期であり、
環境の変化と生命の進化の相互関係について、検討されているようです。
クラトン(安定陸塊)
地域
ローレンシア(カナダ楯状地) :ハドソン湾の地域
バルト楯状地(フェノスカンジア)
シベリア卓状地(アンガラランド) :シベリア大陸
ゴンドワナ大陸(ゴンドワナランド) :ブラジル楯状地、アフリカ楯状地、アラビア楯状地、オーストラリア楯状地、インド、南極大陸(の一部分)
シナ地塊 :アジア大陸東部
クラトンは、大陸地殻のうち、カンブリア紀以前に安定化した部分です。
5億年以上、大陸と超大陸の合体と分離の影響を受けなかった、大陸地殻の古く安定な部分です。
20億年以上存在してきたものもあります。
地表の侵食が進み、台地や準平原、構造平野等を形成しています。
楯状地、プラットフォーム(卓状地)とほぼ一致します。
楯状地は、クラトンの一部で、先カンブリア時代の岩盤が、地表に露出している場所です。
プラットフォームは、基盤岩が(ほぼ)水平な、堆積物の層によって覆われたものです。
クラトンという用語は、安定な大陸の内陸部分を、
沈み込み帯等に伴って形成される、帯状の堆積物がなす地向斜性トラフ(付加体)等から区別するのに使われます。
クラトンは、花こう岩等の軽量の珪長質の火成岩からなる、古代の結晶質基盤岩の地殻からできています。
地殻部分は厚く、マントルの内部、200 kmの深さまで及んでいます(下部リソスフェア)。
大陸クラトンは、下部リソスフェアがあります。
マントルの地震波トモグラフィーによる解析では、
クラトンは、リソスフェアに相当する、冷たいマントルの上に乗っており、
リソスフェアの部分は、厚さ約100 kmの古い海洋性リソスフェア、または非クラトン性大陸リソスフェアの、2倍以上の厚さです。
クラトンは、最深部でアセノスフェアに錨(びょう)着しているとする説もあります。
マントルの根の岩石は、かんらん岩を含んでおり、
これらは、キンバーライト・パイプという、火山活動性のパイプの内容物として、地表に運び上げられます。
かんらん岩の団塊は、変成したマントル岩石の一部分です。
斜方輝石かんらん岩は、玄武岩やコマチアイト等から、融解成分を取り除いた結晶質の残滓(ざんし)です。
アルプス型かんらん岩は、最上部マントルのスラブ(多くは海洋リソスフェア)を起源の、融解成分が抽出された残渣で、
その後、海洋地殻とともに、衝上断層に沿ってアルプス山脈まで押し上げられたものです。
エクロジャイトという、かんらん岩に付随する内容物は、
海洋地殻に対応する岩石が、マントル中の環境で変成作用を受けたものです。
エクロジャイトは、古代の海洋地殻が、数十億年前に150 km以上、沈み込んで形成されました。
これらは、深部で発生したマグマ噴出活動によって地表に運ばれるまで、浮遊状態のプレートの中に固定されたままでした。
かんらん岩とエクロジャイトからなる内容物が、同時期に形成されたとすると、
かんらん岩も、数十億年前に海底を拡張した海嶺か、
海洋地殻の沈み込みの影響を受けたマントルに起源があることになります。
初期の地球は、非常に高温であり、
海嶺では、現在より大量の融解が起こり、海洋リソスフェアは厚くなりました( 20 km超 )。
クラトン由来のマントルの根は、海洋リソスフェアから構成されており、
この根によって、クラトンは安定しているようです。
初期の岩石からクラトンが形成されたプロセスは、クラトン化といいます。
クラトンは、始生代に形成されました。
始生代初期においては、地球内部からの熱フローは、現在の3倍近くありました。
これは、放射性同位元素の濃度が高かったことと、地球の降着形成時の残熱が原因とされます。
その頃のプレート運動や火山性活動は、現在より活発でした。
マントルは、現在よりも流動性が大きく、
地殻は、もっと薄かったようです。
このため、海嶺とホットスポットにおける海洋地殻の急速な形成や、
沈み込み帯における海洋地殻の急速なリサイクリングの原因となりました。
地球の表面は、多数の小さなプレートに分断され、火山島や弧状列島が大量に存在したようです。
地殻の岩石が、ホットスポットで融解と凝固を繰り返し、
また沈み込み帯でリサイクルを繰り返すうちに、始原大陸(クラトン)が、形成されました。
始生代初期には、大きな大陸は存在しませんでした。
中始生代には、高頻度の地殻変動が、大きなユニットへの合体を妨げたため、小さなクラトンが一般的だったようです。
珪長質のクラトンは、ホットスポットで、
珪長質岩を溶かし込んだ苦鉄質のマグマ、
部分融解した苦鉄質岩、
変成作用を受けた珪長質岩の堆積物、
等から形成されたようです。
最初の大陸は、始生代に形成されましたが、
この時代の岩石は、現在の世界におけるクラトンの7%( 5 - 40% )を構成するにすぎません。
楯状地(盾状地)
構造地質学的に安定している、先カンブリア時代の結晶質火成岩と、高度変成岩が露出する地域です。
主な大陸楯状地
カナダ楯状地 : 北アメリカ大陸北部、北極
ブラジル楯状地 : 南アメリカ大陸東部。その北は、ギアナ楯状地に接しています。
ギアナ楯状地 : ギアナ高地。南アメリカ大陸北部
バルト楯状地 : フェノスカンジア。ノルウェー東部、フィンランド、スウェーデン
ウクライナ楯状地 : ウクライナ中部
アフリカ楯状地 : アフリカ
オーストラリア楯状地 : オーストラリア西部
アラビア楯状地 : アラビア半島西部
南極楯状地 : 南極大陸
シナ地塊 : 中国
シベリア大陸 : アンガラランド。西のエニセイ川、東のレナ川、北の北極海、南のバイカル湖に囲まれている地域。
楯状地を構成する岩石は、5億7千万年以上前に形成され、
20億-35億年前のものもあります。
先カンブリア時代後の地殻変動の影響をほとんど受けず、
楯状地の縁辺やプレート境界でみられる地質活動と比べて、
造山運動、断層運動や、他の構造運動が非常に少ない、比較的平らな地域です。
楯状地は、先カンブリア時代の基盤岩が地表に広範囲に露出した大陸地殻の一部で、
普通トーナライト組成を示す花こう岩や、花こう閃緑岩起源の片麻岩からなる広大な地域であり、
火山性堆積物や緑色岩の岩石帯からなる、堆積岩帯に囲まれます。
これらの岩石は緑色片岩、角閃岩とグラニュライトの変成相を示します。
楯状地は、大陸の中核をなし、カンブリア紀の褶曲した岩石によって縁取られています。
地質学的に安定していたため、多くは長い間の浸食作用により、現在までに準平原となり、平坦化されています。
しかし、楯を伏せたように、極めてなだらかな凸面であることが多いです。
周辺には、浸食堆積物で表面が覆われた、プラットフォーム(卓状地)が囲んでいます。
卓状地の下の楯状地は、結晶質基盤岩と呼ばれ、水平に近い堆積層で覆われます。
いずれにしても、クラトンを構成する一部です。
楯状地の外側には、激しい構造運動またはプレート運動を示すゾーンがあります。
これらの地域では、数億年前から続く、造山運動が記録されています。
北アメリカ大陸、中央から北部カナダに広がる、先カンブリア紀に形成された非常に古い岩盤です。
ハドソン湾を囲むように存在し、大変安定した地盤とされます。
片麻岩や花こう岩で形成されており、氷河で何度も浸食されていて、表面には薄い土からなる地表が少しあります。
鉱物資源が豊富で、金、銀、ウラン、銅、亜鉛が産出されています。
北米またはローレンシア地塊(北アメリカ・クラトン)の核をなしており、
五大湖から北極海、グリーンランドまで広がります。
カナダ楯状地は、始生代のプレートが集まって、原生代のテレーンや堆積盆地が付加したものです。
24.5億年前から12.4億年前に合体が進み、
19〜18億年前のトランスハドソン造山運動で、最も成長しました。
北米大陸で、当初より海面から上にあり、海の進入から免れ続けました。
地球上で、始生代岩石が最も広く露出する場所です。
変成基盤岩類は、大部分が先カンブリア時代で、繰り返し隆起・侵食されました。
今日見られるのは、標高300〜600mの低い山地です。
氷河期には、氷が地面を押し付け、無数の湖をかき取り、土壌を運び去りました。
この氷河作用も、水系が発達していない原因です。
南部では、森林に覆われ、
北部では、ツンドラになっています。
スカンジナビア半島、コラ半島、カレリア、及びフィンランドにあたる地域です。
地質学においては、ノルウェー(カレドニア造山帯と、その北西部を除く)南部、
スウェーデンとフィンランド、そしてロシアの一部の基底をなす、バルト楯状地とほぼ同じ地域を指します。
バルト楯状地は、約35 - 30億年前に形成され、
最終氷期の後、厚い氷床が融け、軽くなったことによる隆起が続いています。
隆起運動は、フェノスカンジアの隆起として知られています。
古生代の初期に、地球上に存在したと考えられている大陸です。
現在、シベリア大陸は、シベリアの大部分を構成するクラトンとなっています。
25億年前(古原生代シデリアン)、シベリアは、カナダ楯状地と共に、アークティカ大陸の一部でした。
11億年前(中原生代ステニアン)、シベリアは、ロディニア大陸の一部でした。
7.5億年前(新原生代クリオジェニアン)、ロディニア大陸が分裂し、シベリアは、前ローレンシア大陸の一部となりました。
6億年前(新原生代エディアカラ紀)、前ローレンシア大陸が、パノティア大陸の一部となりました。
5.5億年前(エディアカラ紀)、パノティア大陸が分裂し、ローレンシア大陸、バルティカ大陸、シベリア大陸が誕生しました。
カンブリア紀まで、シベリア大陸は、独立した大陸でした。
石炭紀、シベリア大陸は、小大陸のカザフスタニアと衝突しました。
ペルム紀、シベリアとカザフスタニアは、バルティカ大陸と衝突し、パンゲア大陸が誕生しました。
リソスフェア (岩石圏)
地球の地殻と、マントル最上部の固い岩盤を併せた部分です。
プレートとほぼ同じです。
プレート : 14 - 15枚に大別されます。
ユーラシアプレート
北アメリカプレート
南アメリカプレート
太平洋プレート
ココスプレート
ナスカプレート
カリブプレート
アフリカプレート
南極プレート
アラビアプレート
インド・オーストラリアプレート(1つのプレートですが、インドプレートとオーストラリアプレートの2つに分けることもあります。)
フィリピン海プレート
スコシアプレート(南アメリカプレートの一部とすることもあります。)
ファンデフカプレート(北アメリカプレートの一部とすることもあります。)
地球表面を覆っており、それぞれが互いに相対運動しています。
速度は、場所によって異なり、年間 数mmから10 cm程度です。
リソスフェアの下には、アセノスフェアがあり、
この流体層の存在によって、プレート間の相対運動が可能になっています。
海嶺周辺は、温度が高いため、リソスフェアは薄いです。
海嶺から遠ざかるにつれて、より深部の高温部分が冷えて、弾性的性質を獲得します。
こうして、リソスフェアは時間とともに厚くなります。
リソスフェアと、メソスフェアの間の部分です。
上部マントル中に位置し、深度100km〜300kmの間にあります。
地震波の低速度域であり、物質が部分溶融し、流動性を有しています。
主要組成は、かんらん岩で、鉱物相もかんらん石(α相)です。
マグマの火山活動が起こる場所で、生成源は、アセノスフェアと推定されています。
マントル本体も、その上昇流であるプリュームも、固体ですが、
マントルが上昇すると、部分的に溶けて、マグマが発生します。
溶融量は、通常10%未満です。
ホットスポットは、ほぼ不動と考えられていましたが、
ハワイ・ホットスポットが、約8000万年前から5000万年前の間に、南に約1700q移動した可能性が指摘されています。
海洋プレートは、海溝で、マントル内に沈み込みます。
しかし、深度660km付近で、マントルがペロブスカイト相に遷移して密度が高くなっているため、
プレートはそれ以上沈み込みづらく、ここで一時滞留し、スラブとなります。
その後、スラブ内の圧力が上昇して相転移が進み、密度が上がると、
スラブは分裂し、メガリスとなって、下部マントル内に沈んでいきます。
メガリスが、周辺のマントルを冷却する(コールドプリューム)とともに、対流を起こし、
その反動として、ホットプリュームが発生します。
ホットプリュームの先端は、プレートの弱い部分を突き破って、火山となります。
このように、ホットスポットは、ホットプリュームの先端がプレートを突き破って現れた、火山が起こる地形です。
ハワイ諸島及び天皇海山群は、北から順に、古い海底火山(海山)と火山島が並んでいます。
ホットスポットによって生成された海底火山は、火山島となった後、
プレートの移動によって活動をやめ、順次北西方向に連なる海山となっています。
ホットスポットが多数あると、中央海嶺の成因になります。
アフリカの大地溝帯も、ホットスポットであり、
巨大な割れ目となって大陸が分裂し、将来、中央海嶺が形成されると考えられています。
ホットスポットの種類は、タヒチ型とハワイ型の2種あります。
タヒチ型は、下部マントルのスーパープリュームが、地表に現れたもので、
ハワイ型は、上部マントルの第3次ホットプリュームが表出したものとされます。