海・・・多様な生物の生息地
海は、地球の陸地以外の部分で、液体の水があります。
地球の海は、濃度3%前後の塩等が溶け込んだ水(海水)でできています。
地殻の上にあり、ほとんどは地表にありますが、極地の一部では氷の下にあります。
海は、地表の70.8%を占め、全てつながっています。
海の面積は、約3億6106万km2で、陸地の面積(約1億4889万km2)の、2.42倍です。
海水の総量は、約13.5億km3で、現在の地球表面に存在する水の総量( 14億km3 )の、約97.5%を占めます。
次に多いのは氷床で、2500万km3と推定されています。
海水は、風により、表面が波立っている(波)ことが多いです。
海の色は、一般に青色です。
太陽からの可視光線のうち、長波長(赤に近いもの)は表層2-3cmで海水によって吸収されます。
短波長(青に近いもの)は深くまで進み、水深50mでも1/5程度が届き、
青色光が水中で散乱され、水上に届いて青く見えます。
不純物が混ざると、色調に変化が起こります。
高緯度から極海にかけては、植物プランクトンが豊富なため、海はやや緑色を帯びます。
沿岸では、砂や泥が、河川水等から供給されたり、波や暴風雨により海底から巻き上げられたりするため、
プランクトンと相まって、黄緑から黄色・褐色・赤等に見える事があります。
フィヨルド等では、氷河に侵食された岩の粉末が流れ込み、乳白色になる場合もあります。
海水面の高さは、毎日二回(年に数回、一日一回の日があります)、上下に変化します(潮汐)。
地球の潮汐は、主に月と太陽の引力により起こります。
特に、月は地球に近いため、潮汐力は非常に大きいです。
海水は、大きな流れをなしています(海流)。
海の深さは、3000 - 6000mの範囲が最も広く、
この範囲の面積は海洋の70%、地球の全表面積のほぼ半分を占めています。
平均3,800mですが、海底にも高低差はあり、
海中の山脈である海嶺や、
台地である海台、
大洋底に広がる広大な平原である海盆や深海平原、
海底でも更に低い谷となっている海溝等、様々な地形が存在します。
海底には火山も存在し、海底火山の中でも特に高いものは、火山島となります。
地球上の海底で最も深いのは、太平洋にあるマリアナ海溝( 10,920m )です。
大陸周辺に広がる浅い海(深さ約130mまで)を、大陸棚といいます。
海水は、太陽によって温められると、低気圧を発生させる等、気候にも影響を及ぼします。
海には、多様な生物が生存しています。
海水は、塩化ナトリウム( NaCl )を主成分とする塩分が含まれています。
NaCl以外にも各種のイオンが溶解していますが、海水中の総塩分濃度は周辺の影響によって異なります。
大河の河口近くや、氷河が海に流れ込んでいる場所では、塩分濃度は低く、
蒸発が盛んな海域では、塩分濃度が高くなります。
海氷が形成される時にも、水分が選択的に凍るため、塩分に富んだ海水が分離されます。
グリーンランドや南極周辺で作られる、冷たく塩分の濃い海水は、深層流となって地球全体を巡っています。
海水は、塩分等が含まれるため、淡水に比べて凍結しにくい性質を持ちますが、-1.9℃以下になると凍りはじめます。
海氷は、北極海の大部分を覆っており、
より緯度の低い、バルト海やオホーツク海、セントローレンス湾、ハドソン湾、ベーリング海等の海域でも、冬季には凍結する海域があります。
しかし、年間を通じて結氷したままであるのは、北極海のみであり、
それも全域ではなく、夏季には南部を中心に、かなりの海域で解氷します。
海氷は、冬季には南方の海域に押し寄せることがあります(流氷)。
これとは別に、南極の棚氷や北半球の氷河といった陸氷から、海に巨大な氷山が流れ出すことがあります。
各イオン間の比率は、全海洋でほぼ一定です。
海水中のイオン濃度(塩分濃度3.5%) |
||
成分 |
濃度(g/kg) |
重量百分率(%) |
Cl- |
19.35 |
55.07 |
Na+ |
10.76 |
30.62 |
SO42- |
2.71 |
7.72 |
Mg2+ |
1.29 |
3.68 |
Ca2+ |
0.41 |
1.17 |
K+ |
0.39 |
1.10 |
海水中に含まれる溶存物質
塩化ナトリウムが77.74%
塩化マグネシウムが10.89%
硫酸マグネシウム・硫酸カルシウム・硫酸カリウムが、それぞれ4.74%・3.60%・2.46%
炭酸カルシウムが0.34%
臭化マグネシウムが0.23%
海水中に含まれる主な元素
マグネシウム 2000兆トン
臭素 100兆トン
ヨウ素 750億トン
アルミニウム 150億トン
銅 45億トン
ウラン 45億トン
トリウム 10億トン
銀 4億5000万トン
水銀 4500万トン
金 600万トン
海の一定場所において、ほぼ決まった方向に流れる、海水の流れです。
大洋の表面近くでは、北太平洋・南太平洋・北大西洋・南大西洋等の海域ごとに、まとまった強い流れが循環しています。
海流は、コリオリの力によって、
北半球では時計回りに、
南半球では反時計回りに循環しています。
赤道付近で、東から西向きに流れてきた温かい海流が、
陸地近くで、南北に分かれて、大陸沿岸を北上(または南下)します。
日本周辺では、暖流の黒潮がフィリピン近海から北上してきて、
四国沖で東に向きを変え、東海・関東沖を流れ、
東北地方の東海上で、北から来た寒流の親潮と衝突し、東へ向かっていきます。
暖流は、熱帯近くの海で温められて、水蒸気を蒸発させているため、高温で、塩分濃度が高いです。
寒流は、低温で、塩分濃度は暖流より低いですが、リン等の栄養塩類に富んでおり、
魚の餌となるプランクトンを大量に発生させて、良好な漁場を作ります。
深層流は、1000m以上の深海をゆっくり流れる、グリーンランド周辺で形成された、冷たくて塩分濃度の高い海水です。
これは、赤道を越え、約1000年かけて南極まで流れ、南極大陸周辺をめぐります。
この間 南極の冷たい海からも、低温高濃度の海水の供給を受けて混合されます。
その後、太平洋やインド洋へ北上し、各所で湧昇流となって海面へ到達します。 海洋生物
海面に上昇した深層流は、表層の海流の一部となって、グリーンランド沖へ戻って行きます。
海底の基盤は、比重の大きな玄武岩でできています(大陸の基盤は、比重の軽い花こう岩が主体です)。
プレートテクトニクスによると、海洋底を形成する岩盤(海洋プレートの上部)は中央海嶺で造られますが、
ここは、地下深部からマントル物質が上昇して来る場所です。
海嶺の地下には、マントル成分の一部が融解したマグマ溜まりがあり、マグマが順次冷却固化して、玄武岩の岩盤が形成されます。
海洋プレートは、その後、海嶺から遠ざかるように動き、別の海洋プレートか大陸プレートに衝突して、地殻の下に沈みこみます。
海嶺から他のプレートに衝突するまでの間は、深い平坦な海底( 深度3000 - 6000m )となっており、海洋底面積の大部分を占めます。
他のプレートと衝突して沈み込んでいる部分は、海溝やトラフという溝状の深い部分です。
海洋底は、プレート境界で地球内部に沈み込んでゆくため、最も古いものでも2億年程度です。
海洋底は、ほとんど平坦であり、陸から遠いため、陸を起源とする砂礫等は堆積しません。
代わりに、海洋に広く生息する珪藻・放散虫の死骸を含む、チャート等の岩石や、
海水から化学的に析出する、マンガン団塊がゆっくり堆積します。
南太平洋には、玄武岩質の火山島が点在しており、
その周囲には、サンゴ礁が広がっています。
火山島は噴火が終わると、だんだん低くなって海に沈んでいきますが、
サンゴ礁がある場合、島が沈む速度よりもサンゴの成長速度のほうが速いため、石灰岩の島ができます。
プレートを形成している海底岩盤は、海溝で地下へ沈みこんでいきますが、
岩盤の上に載った、チャートや海底火山、石灰岩等の岩石類は、プレート衝突の際に、相手のプレートに乗り上げてしまうことがあります。
地下に沈むプレートから離れて、相手側のプレートに乗り上げた火山島やサンゴ礁は、
その後の火山活動によって、陸地に取り込まれます(付加体)。
海洋起源の石灰岩の大きな山があったり、三葉虫やアンモナイト等の海生生物の化石が地上で採取できたりするのは、そこが付加体だからです。
地下深く沈み込んだプレートの上側は、火山活動が活発な場所です。
地下に沈んだ海洋プレートからしぼり出された水が、周囲のマントルを部分溶解して花こう岩質マグマを作り、大陸の基盤が形成されています。
つまり、大陸を構成する花こう岩は、海洋プレートの沈み込みによって作られます。
大陸地殻は、海洋地殻よりも軽いため、一旦形成された大陸は、(侵食を受けながらも)地表に残り続けます。
大陸や大きな島の周辺には、深さ130mより浅い平坦な海域が広がっています。
大陸周辺の浅海は、大陸棚と呼ばれ、
島の周辺のものは島棚といいますが、これらの幅は0 - 1400kmです。
大陸棚の地質は、大陸と同じものです。
太平洋周辺では、大陸棚は顕著ではありませんが、
大西洋では広い面積を有しており、石油等の鉱物資源が豊富です。
大陸棚の外側は、急な斜面である大陸斜面となって、深くなります。
大陸斜面と海洋底の間には、やや平坦なコンチネンタルライズという地形があります。
大陸棚と大陸斜面の境界の深さは、南極やグリーンランドを除く全世界でほぼ一致しており(水深130m)、
直近の氷河期最盛期の海水面に相当します。
海洋は、地上の気候にも大きな影響を及ぼします。
赤道近くの海の表面は、日光で温められ、温かい水の流れ(暖流)となって流れてゆく他、大量の水蒸気を発生します。
1年間に海から蒸発する水量は、50.5万km3と見積もられており、台風の発生等、地球の気象に大きな影響を及ぼしています。
蒸発した水量の91%は、直接海上に降水しますが、
残りの9%は、陸地に雨や雪として降水し、河川・氷河・地下水となって、最終的には海に戻ります。
海から蒸発する水蒸気によって湿度は高いものの、それが必ずしも降水量に影響するわけではありません。
暖流が流れる地域や、一般的な海域においては、海からの水分や風が雨をもたらし、降水量が多くなる傾向があります。
寒流が流れる海岸においては、上層の空気は暖かいのに対し、下層の空気は寒流によって冷やされるため、上昇気流が発生しません。
そのため、雨雲が形成されず、海岸では、降水量は非常に少なく、砂漠が形成されます。
海岸砂漠は、大陸の西岸に形成されることが多いため、西岸砂漠ともいいます。
チリのアタカマ砂漠や、ペルー沿岸部、ナミビアのナミブ砂漠等があります。
ただし大気中の湿度は高いため、これらの海岸砂漠には、しばしば霧が発生し、砂漠を覆います。
海洋生物 深海生物
海中でも、陸上と同様、生命活動の基本となるのは、植物による光合成です。
海水中に太陽光が届く深さは、200mまでなので、その範囲は海洋のごく表層に限られます。
陸地周辺の数十mまでの浅い海では、海底まで光が届くので、海藻等の大型植物も繁茂できますが、
大洋では、植物プランクトン類が光合成を行います。
植物プランクトンの生命活動には、太陽光以外にも、栄養塩類が必要です。
地上では、カリウムが必要ですが、
海水中では、窒素・リン酸と、カリウムの代わりに、珪素が必要です。
陸地では、珪素は地中に大量に存在するのに対し、
海洋では、カリウムは水中に大量にあります。
海中の食物連鎖は、
海面近くで、栄養塩類を使って、植物プランクトンが繁殖し、
植物プランクトンは、動物プランクトンに食べられ、
動物プランクトンが、魚に食べられるという形を取ります。
プランクトンや魚の死骸や糞は、徐々に分解されながら海中に沈んでゆくので、
栄養塩類は、海の表面近くでは枯渇気味ですが、深海の海水には多く含まれます。
そのため、暖流系の海流が貧栄養となります。
深海からの湧昇流が発生する場所は、
魚類の餌となる、大量のプランクトンが繁殖して、好漁場となっています。
アメリカ大陸太平洋側のカリフォルニア州沿岸や、ペルー沿岸等があります。
冬季に結氷するような寒冷な海では、海面水温が低下して、比重が高くなって沈み、
深海の海水がわき上がり、栄養塩類の豊富な海域となります。
東北日本沿岸の親潮等があります。
陸地近くの浅い海は、陸地の河川からの栄養塩類の供給がある上、海底が浅いため、
沈んだ塩類も回収しやすく、生産性の高い海域となります。
イギリスの東にある、ドッガーバンク等があります。