相互作用・・・創発現象からなる生命
参考 : 創発、グラフ理論、スモール・ワールド現象、超伝導、フォノン
相互作用とは、物質や力、エネルギー等が互いに影響を及ぼしあうことです。
相互作用により、個別の要素の振る舞いからは予測できない、新しいシステムが構成されることがあります(創発)。
生命には、分子同士、細胞同士、個体同士、個体と環境等による相互作用で、様々な創発現象がみられます。
また、つながり方の性質に関する理論が、グラフ理論です・・・
一筆書きが有名ですが、WWWも、グラフですね。
ちなみに、世界は、6人の知り合いでつながっているようです(スモール・ワールド現象)。
尚、複雑系という、相互に関連する要因が合わさって、全体としての性質がみられる系、もあります。
生命体は、特殊な複雑系である、複雑適応系です。
相互作用(交互作用・インタラクション等)
相互作用とは、二つ以上の存在が、互いに影響を及ぼしあうことです。
二つ以上の物質が、互いに力を及ぼしあうという概念です。
物体に働く、基本的な力には、
強い力、
弱い力、
電磁気力、
重力、
の4つがあり、
特定の素粒子と場が、近接作用することで発現します。
すなわち、場と物体が近接作用する機構を、相互作用といいます。
その他にも、種々の場と物体との相互作用が存在し、特性は様々な現れ方をしますが、
物理学における相互作用の源泉は、基本相互作用です。
超伝導は、
結晶格子とクーパー対電子の相互作用で発現すると考えられています。
場と物体の近接作用以外で、二つ以上の対象が、互いに影響を及ぼしあった結果を、相互作用という場合もあります。
スピン軌道相互作用は、電子のスピンと、原子軌道等が、互いに影響を及ぼしあう作用で、場は関与していません。
力学では、作用と反作用が対で発生することを、相互作用といいます。
流体力学では、波同士の間で働く作用を、相互作用といいます。
化学では、分子間力(分子の間の相互作用)を、共有結合に比較して弱いという意味で、相互作用といいますが、
そのうち強いものは、結合ともいいます。
イオン間相互作用(イオン結合)、
水素結合、
ロンドン分散力(ファンデルワールス力)があり、
これらは、電磁気学的要因(クーロン力)に基づく力です。
上記に含まれますが、特殊なものとして、
電荷移動相互作用(2分子間で電子が移動し、クーロン力によって錯体を形成)や
π-π相互作用(渡環相互作用:芳香環の間に働く、強い分散力)があります。
その他、熱力学的要因(系をマクロに見た時、自由エネルギーが低い方が安定化する)に基づく、疎水相互作用があります。
超分子の形成、
結晶構造、
液体や液晶の物性、
生体高分子(DNA、タンパク質等)、の構造に重要です。
生化学では、タンパク質等の分子が特異的に会合することを、相互作用といいます。
ノード(節点・頂点)の集合と、エッジ(枝・辺)の集合で構成される、グラフの性質についての理論です。
エッジを、リンクともいいます。
グラフを用いることで、様々なものの関連性を表すことができます。
つながり方に着目して、抽象化された点とそれをむすぶ線の概念が、グラフであり、
グラフが持つ様々な性質を探求するのが、グラフ理論です。
つながり方だけではなく、点のつながりの方向を問題にする場合、エッジに矢印をつけます。
このようなグラフを、有向グラフまたは、ダイグラフといいます。
矢印のないグラフは、無向グラフといいます。
路線図、電気回路、WWWの構造、等があります。
1736年、「ケーニヒスベルクの問題」に対して、オイラーが解法を示したのが起源とされます。
この問題は、一筆書きと関連しています。
集合 V ・ E と、
E の元に二つの V を元の対で対応させる写像、f : E → V × V、
の三つ組G : = ( f , V , E )を、有向グラフといいます。
V の元を、 G の頂点またはノード、
E の元を、 G の辺または弧といいます。
P ( V ) を、 V のべき集合とします。
E の元に V の 部分集合を対応させる写像
G : E → P( V )
があって、E の任意の元 e の像が g ( e ) = { v1, v2 } のように、ちょうど二つの元の集合になっているとします。
この時、三つ組G : = ( g , V, E )を、無向グラフといいます。
V の元を G の頂点、
E の元を G の辺、といいます。
g の値が常にk > 2個の元の集合となっている時、k-ハイパーグラフといいます。
E を最初からある集合の部分集合と考えれば、写像を用いずに、グラフを定義することもできます。
有向グラフでは、E を V × V の部分集合、
無向グラフでは、E を P ( V ) の部分集合で、二つの元の集合のみからなるものとすれば可能です。
グラフ G の、
頂点集合は、V ( G )、
辺集合は、E ( G ) で表します。
グラフの辺に、重み(コスト)が付いているグラフを、重み付きグラフといいます。
重み付きグラフは、ネットワークともいいます。
辺 e の両端の点を端点といい、
端点は、辺e に接合 (接続) している、といいます。
辺と辺が、ある頂点を共有している時、その辺同士は、隣接している、といいます。
2頂点間の最短経路における辺数を、距離といいます。
グラフの最大頂点間距離を、直径といいます。
ある辺の両端点が等しい時、ループ(自己ループ)といいます。
また、2 頂点間に複数の辺がある時、多重辺といいます。
ループも多重辺も含まないグラフのことを、単純グラフといいます。
ループや多重辺を含むグラフのことを、多重グラフといいます。
二つのグラフ G と G' について、
G'の頂点集合と辺集合が、共にG の頂点集合と辺集合の部分集合になっている時、
G'は Gの、部分グラフであるといいます。
逆に、G はG' の、拡大グラフであるといいます。
特に、頂点集合が等しい部分グラフのことを、全域部分グラフ(生成部分グラフ・因子)といいます。
G の頂点集合V の部分集合Sを取り出して、
両端点がSに属する全ての辺を辺集合とする G の部分グラフを、誘導部分グラフといいます。 クリーク
グラフ G からある辺を取り除き、その辺の両端点を一つの頂点に縮約した時、縮約グラフ(商グラフ)といいます。
頂点 v に接続する枝の数を、次数といい、d ( v )で表します。
有向グラフにおいては、v に入ってくる辺数のことを、入次数、
v から出て行く辺数のことを、出次数といいます。
すべての頂点が同数の隣接点、つまり次数を持つグラフを、正則グラフといいます。
v について、d ( v ) = k が成り立つ時、k -正則といいます。
k-正則なグラフのことを、k-正則グラフといいます。
グラフ G における、最小次数の頂点の次数を、δ(G)、
最大次数の頂点の次数を、Δ(G) で表します。
また、次数 0 の頂点のことを、孤立点といいます。
隣接している頂点同士をたどった、v1,e1, v2, e2, ・・・, e{n-1}, vn の系列を、歩道(鎖・ウォーク)といいます。
辺の重複を許さない場合、路(小径・トレイル)といいます。
頂点の重複を許さない場合、道(パス)といいます。
開いた歩道をパスという場合は、単純パスといいます。
始点と終点が同じ路のことを、閉路(回路・循環 ・サーキット、サイクル)、
始点と終点が同じ道(e1, e2, ・・・, en, e1という路で、ei が相異なるもの)のことを、閉道( closed path? )といいます。
任意の 2 頂点間に枝があるグラフのことを、完全グラフ(完備グラフ)といいます。
n 頂点の完全グラフは、Knで表します。
完全グラフになる誘導部分グラフのことを、クリークといいます。
サイズ n のクリークを含むグラフは、n-クリークである、といいます。
辺を持つグラフは、必ず 2 頂点の完全グラフを含むので、2-クリークです。
また n-クリークであって、直径が n 未満となるグラフを、n-クランといいます。
知り合い関係をたどっていけば、比較的簡単に世界中の誰にでも行き着くという仮説です。
(広いようで)世間は狭い現象です。
この仮説は、1967年にスタンレー・ミルグラムが行った実験で検証され、
六次の隔たり、という言葉が生まれました。
この実験によると、アメリカ合衆国国民から2人ずつの組を無作為に抽出し、
2人がつながっている場合には、平均すると6人の知り合いを介しているようです。
より小さな共同体では、コネクションが密であるようです。
数学者の共著関係によって、自分とポール・エルデシュとの距離を示す、エルデシュ数があります。
エルデシュとの共著がある数学者のエルデシュ数を1、
エルデシュ数nの人物との共著がある数学者のエルデシュ数をn+1、とします。
俳優、ケヴィン・ベーコンによって、映画の共演関係を元にしたものに、ベーコン指数があります。
六次の隔たり現象は、広いネットワークを持ち、他人との接触が多い、少数の特異な人々(接続者、コネクタ)に依存するとされます( Gladwell )。
彼らがハブとなり、大多数のコネクションが薄い人々の、仲介者になっているとするものです。
一方、感染性疾患の伝染における研究では、
社会のネットワーク自体の強結合性によって、ハブをなくしても、グラフの平均的な経路数には、ほとんど差がなかったようです。
ダンカン・ワッツ及びスティーブン・ストロガッツは、
1998年、ネットワーク理論から、スモール・ワールド現象の説明を試みました。
その中で、スモール・ワールド的性格が、
自然または人工的なネットワーク( C. elegansの神経系や、送電網 )双方に出現することを示しました。
規則的な格子に、少数のランダムなリンクを導入した所、
ネットワークの直径(ネットワーク内の、任意の2つの頂点を結ぶ最短経路の平均値)全体が、極めて小さくなったようです。
この特別なモデルは、Jon Kleinbergによって一般化されました。
スケールフリー・ネットワーク: 経路の数の分布が、ベキ則に従うネットワークです。
極端に経路が集中するノードと、そうでないノードとがあるので、特徴的なスケールを決定することができません。
そのため「尺度がない」(スケールフリー)も同様に説明できます。
L.A.N. Amaralらによると、スモール・ワールドに次の3つの種類があるようです。
スケールフリー・ネットワーク :経路が一部のノードに極度に集中しています。ウェブサイトのリンク、食物連鎖等。
ブロードスケール・ネットワーク :経路の集中はありますが、ある程度で頭打ちになります。共演関係のネットワーク(ベーコン指数)等。
シングルスケール・ネットワーク :経路の集中するノードはありますが、集中するノードほど数が減ります。送電網、神経回路網、通常の人的ネットワーク等。
部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れることです。
局所的な複数の相互作用が、複雑に組織化することで、
個別の要素の振る舞いからは予測できないようなシステムが構成されます。
世界の大半のモノ・生物等は、多層の階層構造を含んでおり、
階層構造体においては、下層の要素とその振る舞いの記述をしただけでは、上層の挙動は実際上予測困難です。
つまり、下層には元々なかった性質が、上層に現れることがあります。
生命は、創発現象の塊です。
突然変異や交叉による遺伝子の組み合わせによって、新しい能力を獲得することがあります。
個々の個体による相互作用の他に、
環境との相互作用、という側面も加わっています。
物質を非常に低い温度へ冷却すると、電気抵抗が急激にゼロになる現象です。
また、物質内部から磁力線が排除されるマイスナー効果によって、磁気浮上現象もみられます。
超伝導は、結晶格子とクーパー対電子が、フォノン場を介して、相互作用することで発現すると考えられています(BCS理論)。
結晶格子と電子との間の静電相互作用が、高次的にフォノン場とクーパー対の影響を受けています。
尚、電子-格子相互作用を介して、電子同士がフォノンを仮想的に交換することで、電子同士に引力が働くと考えた時、
この引力によって生じる電子対を、クーパー対(クーパーペア)、といいます。
液体窒素の沸点である−196℃ (77 K) 以上で超伝導現象を起こすものは、高温超伝導物質といいます。
振動(主に結晶中での格子振動)を量子化した粒子です。
フォノンの持つエネルギーは、格子の熱振動によるエネルギーです。
物質によっては、温度を下げるとフォノン(格子振動)の振幅が小さくなり、
ある転移温度以下で、低温相へ相転移し、フォノンによる格子の変位が凍結した状態となることがあるようです(フォノンのソフト化)。