発声練習
いい声を作るための、練習方法です。誰にでもできる簡単な方法を中心に紹介してあります。
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7.発声練習のパターン はじめに
実際の発声練習には、実にいろいろなパターンの練習が行われています。ただ、その練習パターンのうち、これが最もいい方法だとは、
一概に断定できません。練習する団体の人数、年齢構成や、合唱経験の多少などによって、適切な方法は変化します。
また、今歌っている曲によっても変わってくると言ってもいいでしょう。ここでは、その様々な練習パターンのうち、
誰にでも出来そうなパターンを取り上げておきます。
取り上げた練習のポイントは次のとおりで、その練習用楽譜を示します。
@ ハミングの練習に効果的な発声パターン
A ハミングから、母音を響かせるために効果的な発声パターン
B 息のために効果的な発声パターン
C のどを開けるために効果的な発声パターン
D 母音の共鳴を得るために効果的な発声パターン
E 母音の練習のために効果的な発声パターン
F 発音のために効果的な発声パターン
G 腹式呼吸のための練習を含んだ発声パターン
H 和音の感覚を育てるための練習を含んだ発声パターン
7.発声練習のパターン @ ハミングの練習に効果的な発声
ハミング練習の時の注意点です。「よく響かせるための練習」でも書いたように、ハミングは口を閉じて行いますが、
その閉じた口を硬く結んでしまう傾向が見られます。よく響かせるために、口元は緩めておきましょう。
また、口を閉じてしまうことによって、いっしょに喉も閉めて練習してしまう傾向も多く見られます。喉は常に開いて
おきましょう。そのためには、喉仏を下げたり、口の中に大きな空間を作って練習するといいでしょう。
そして、音程が高くなってきたときには、少し口を開けてハミングすると喉が閉まるのを防ぐことが出来ます。
また、ハミングは発声練習の最初にウォーミングアップを兼ねて行うと効果的です。ですので、音形はエネルギーがたくさんいる上行系より、
楽に声の出る下降形のほうがいいと思います。しかし、その音が下がるにつれてハミングの響きが弱くなって、
「ただ単に声を出しているだけ」にならないように注意すべきです。ウォーミングアップのため、下がりきった音までよく響かせて、
声を立ち上げながら練習しましょう。
7.発声練習のパターン A ハミングから、母音を響かせるために効果的な発声
B.F.とは、ハミングで歌うことを表します。続いて出てくる、B.O.は口を開けてハミングすることで、
オープンハミングとも呼ばれる歌い方です。ハニングと呼ぶこともあります。具体的には、ハミングしながら口を開けるのですが、
口からは息を出さずに、鼻からのみ息を出している状態のことです。このように、ハミングと「声」の間にこのオープンハミングの状態を作ってから、
ゆっくり口の中に息を流します。こうすることによって、ハミングでの響きを声に乗せることが出来ます。
一つ注意点は、声にしたときにあくまで口ではなくて鼻の方で響いていることを確かめながら行うことです。
ややもすると、きれいな声をだそうとして声に神経が集中してしまい、響いている状態を忘れて口先だけで声を出そうとしてしまいます。
まだ、きれいな声は必要ありません。この練習はあくまでも、ハミングを使った共鳴を声にのせるための練習です。
7.発声練習のパターン B 息のために効果的な発声
1小節目は発音をはっきりさせるため、息を沢山使って声を出してみて下さい。
そして、そのまま2小節目を、テンポ感を失わないで、そのままの息の流れで歌ってみましょう。
特に、3拍目の4分音符をテヌートしてたっぷり歌うように心がけて下さい。
すると、1小節目で得られた速い息のスピードを保って2小節目を歌うことになります。
この、息のスピードを維持することが、この練習のポイントです。
フレーズの最後まで、しっかりした息を使って歌いきる、このように練習がすることが息のために大切です。
7.発声練習のパターン C のどを開けるために効果的な発声
最初の「no」の音は力をいれずに、「n」の発音を長めに使って、響いている状態を作りましょう。
このとき、のどや口の中が開いているどうかは、あまり気にしなくていいです。それより、次の「na」で、のどを開けて口の中も開けて、
明るく響いた母音が前の方に、声として飛んでいる感じをつかみましょう。
最後の下降旋律は、その響きを落とさないように丁寧に降りてくることが大事です。
また、「no−na」の5度の跳躍の時には、やわらかく、しかし、しっかり息を送って上げるといいでしょう。
そうすることによって、少しクレッシェンドをかけたような状態にはなりますが、
けっして息を上の音にぶつけて大きな声を出すことのないよう注意しましょう。
7.発声練習のパターン D 母音の共鳴を得るために効果的な発声
日本語の5つの母音をうまく響かせるための練習です。この練習は、まず、ゆっくり、休符のところまで一息で声を出してください。
メトロノームで60位が、一つの目標でしょう。息が続くならもう少し遅くてもかまわないと思います。
発声する時は、どの母音も同じように響いているかどうかを確認しましょう。
最初は上の段の「aeiou」で練習するのですが、いきなり母音だけで発音がうまくいかない場合は、
「mamemimomu」と「m」をつけて練習して下さい。慣れたら次の練習のために、
下の段の「ieaou」で練習するといいでしょう。
次に、音程を変えながら母音を歌う練習です。それぞれの母音の二つ目の音に移る時に、音が流れないようにはっきり音程を上げながら練習しましょう。
母音をもう一度響かせるような感じで歌ってください。この練習では、最初の練習の上の段の発音順ではかえって歌い難いので、
楽譜の母音の順序で練習してください。
7.発声練習のパターン E 母音の練習のために効果的な発声
母音の発声は簡単なように思われますが、案外、歌いやすい母音と歌いにくい母音がでてくるものです。
どの母音も、よく響くように歌うことへの注意が必要ですが、まず、その一つの例です。
「i」と「o」を繰り返すのですが、注意を払わずに行うと、「i」の母音は前に出て明るく響くのですが、
「o」の母音はのどの奥のほうで暗く鳴ってしまいます。ではなくて、「i」も「o」も同じように顔の前のほうで響いているように
気をつけなければいけません。コツは、上の歯を意識して練習するといいでしょう。「i」を発音する時に、
上の歯が振動するくらいにしっかり響かせておきます。その後、「o」に移るときに同じ場所で母音を響かせるように意識すると、
奥のほうに響きが逃げなくなります。
母音の発音に、スピード感をつける練習です。母音は、子音がついてないと、どうしてもゆっくり歌いがちです。
もちろん、母音はよく響かせる必要があるので、時間をかけて丁寧に発音するべきなのですが、それと、歌うテンポがゆっくりになってしまうことは
違います。16分音符の一つ一つに息が十分にあるようにして練習しましょう。これも、最初は「i」と「e」の組み合わせが歌いやすいでしょう。
慣れてきたら、「a」と「o」など、母音の組み合わせと変えて、どの母音もスピード感を失わずに歌えるようにしましょう。
7.発声練習のパターン F 発音のために効果的な発声
この練習は、テンポの設定と、使う言葉がポイントになります。まず、テンポですが、他の発声練習よりは少し早めテンポ設定が必要です。
ゆっくり練習する時でもメトロノームで80位に設定して、それより遅くならないようにしましょう。早くするなら、100位でも可能でしょう。
日本語の発音は唇が早く動くことがあまりないので、発音のために出来るだけ素早く動かす練習が必要なのです。
次に、練習で使う言葉ですが、この練習に慣れないうちは、「na」、「ya」のような使い慣れた発音でいいでしょう。
しかし、発音が上手になるためには、日本語にあまりない言葉を選ぶことが必要です。例えば、「pa」のような息を
しっかり出さないとうまく発音できないような言葉を、導入していくと大変良い発音のための練習になります。
7.発声練習のパターン G 腹式呼吸のための練習を含んだ発声
よく発声練習に使われるパターンだと思います。しかし、練習のときに次のような点を注意しましょう。まず、ただ単に声を出すのではなく、
必ず腹筋の動きを伴いながら声を出すことです。ただし、激しく動かす必要はありません。
軽く動いているのが確認できる程度がベストです。腹筋を激しく動かすことだけに神経を集中して、力が入りすぎてしまうことは、
声にとっていい状態とは言えません。リラックスして発声しましょう。また、使用する発音は、すべて「ha」でも構いませんが、
最初に「na」を入れるといいでしょう。それは、「na」を入れることで、声を響かせることも維持すべきだからです。
「ha」だけの時にはと、息を出す練習だけになってしまいがちですので、その点を注意してください。
7.発声練習のパターン H 和音の感覚を育てるための練習を含んだ発声 NEW
これは、バッハの作ったもので、カノンとして歌われます。始めから上下2つの声部で合わせるのは難しいので、
最初は上の段の音形だけで練習しましょう。和音の三つの音の中の、どの音を歌っているのかを意識するために、
この練習は音名で歌います。ただし、かならずしも、ピアノの「ド」の音から始める必要はありません。
適当な高さに移調して、歌いやすい調で歌って下さい。まず、斉唱で音程が確認をしてから、
カノンの練習に入りましょう。まず2パートの練習です。2番目のパートは2拍遅れて、最初のパートが「mi」の音を歌っている時に
入ってくるように練習してください。平行3度で音が重なり綺麗な響きが出来ます。次に3パートに分かれて、さらに、2拍遅れて入ってくると、
和音の三つの音が重なり、よりしっかりした響きになって、和音の重なりを意識して歌う練習になります。
下のパートだけで練習しても、同じ効果が得られます。次に、楽譜どおり2パートに分かれて、1拍ずらした形で歌ってみましょう。
ただし、今度は、和音をよく響かせるためだけの練習ではなくなります。緊張と緩和という、
合唱曲の中にもよく出てくる、音楽の基本的な要素を経験できます。この練習では、音がぶつかりあって濁っている緊張した状態と、
その状態から和音として響いてきれいに聞こえる、落ちついた響きの緩和した状態への移り変わりの練習になります。
最初は、テンポをゆっくりとって、緊張と緩和の状態を十分に聞きあいながら練習を始めてください。