■ 遺留分の意義 |
● 遺留分とは,一定の相続人が受け取ることができる最低限の相続分
をいいます。すなわち,故人の配偶者,直系尊属及び直系卑属に留
保された相続財産の一定の割合で,故人の生前処分または死後処分
によっても奪うことができないものです。
● 遺留分を侵害する処分(生前贈与・死因贈与・遺贈等)を当然無効
とせずに,遺留分の侵害を受けた相続人にそれらの処分を否認する
権限(遺留分減殺請求権)を与え,これを行使するか否かについて
は相続人の自由意思に委ねられています。
* 遺留分の放棄は相続放棄と異なり,相続開始前でも行うことがで
きます。ただし,家庭裁判所の許可が必要です。親の権限で子に
遺留分の放棄を強要する等の危惧があるからです。
※ 遺留分についての民法の条文はこちらからご覧下さい。
■ 遺留分の割合 |
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■ 遺留分算定の基礎財産 |
● 遺留分算定の基礎となる財産とは
相続開始時に有した財産の価額 + 贈与財産の価額 −
相続債務の価額 となります。
● この場合の贈与の価額は,原則として,相続開始前1年間にされた
ものに限られる。ただし,下記の例外に該当する場合は,相続開始
前1年のものでも遺留分の基礎財産に算入されます。
@ 遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合
「損害を加えることを知って」とは,積極的に加害の意思を必要
としない。ただ,損害を加える事実関係を認識していれば該当し
ます。
A 特別受益としての贈与
これを認めると遺留分制度の意義が失われる。特定の相続人に対
する特別受益は全て遺留分の基礎財産に算入されます。また,寄
与分は控除されません。
B 不相当な対価でなされた有償行為
実質贈与分(例えば,時価1600万円の不動産を1000万円
で売却した場合の差額600万円)が「贈与」として,遺留分の
基礎財産に算入されます。
■ 遺留分減殺請求権 |
● 故人が特定の相続人または受贈者に遺留分を超えて遺贈または贈与
した場合は,遺留分権利者の遺留分が侵害されたとして,受遺者ま
たは受贈者に対して,減殺(減額)を請求することができます。
● 遺留分の減殺請求は,遺留分侵害者に対して,直接意思表示をすれ
ばよく,必ずしも訴訟などによる必要がなく,ただ,後日の証拠と
して内容証明郵便で行います。
なお,遺留分減殺請求を受けた者がその目的物を返還しない場合は
訴訟で返還請求をすることになります。
* 減殺請求権は,短期消滅時効の定めがあります。すなわち,相続
開始と減殺すべき遺贈または贈与があったことを知った時から1
年間行使しないと,時効によって請求権は消滅します。
* この「知った時」からとは,遺留分権利者が,相続開始及び遺贈
・贈与があったことを知った時ではなく,それが遺留分を侵害し
減殺できるものであることを知った時です。なお,この1年の期
間内に減殺請求の意思表示をすればよく,返還請求は1年経過後
でもよい。また,相続開始時から10年経過したときは減殺請求
権は消滅します。

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