仮称:Web数学辞典化計画

03/夏開設 最終更新 22/07/27


WEB 上にもっと数学があってもいい、もっとなければならない。しばらく前にそう思いました。 その頃、たとえば「陰関数定理」で検索にかけると、いろんな大学の講義要綱(学外者には何の意味もありません)が延々と出てきたものです。 その中に時々PDFが混ざるという具合でした。 いろんな試みが出てきましたが、まだまだです。いろんなレベルの数学が、WEB 上にあるべきではないでしょうか。

MathML という XML の規格があって、これを使えばブラウザー上に直接数式が表示できる、と聞いてこれだと思いました。 数学のノートがいくつかあり、多くは〈自分を納得させるため〉に書いたもので公開を前提にしたものではないのですが、これをWebにのせることにしました。
若い頃に、文章を書いて公表するというようなことはすまいと(「ハードボイルド小説ひとつを死ぬ前の例外として」という冗談を付けて)決心したことがあるのですが、数学は自己表現ではないと言い訳して戒律を破ることにしました。

もちろん、MathML に対応したブラウザーでないと正しい表示が得られません。 いまは、Fire Fox をはじめいろんなブラウザーが対応しています。

MathML を含んだ HTML ファイルの生成には GPL ライセンスのフリーソフト Smart Doc を使っていました。TeX の数式を MathML に変換してくれるので TeX のソースファイルがあれば、いくらでも HTML ファイルを作ることができました。数学者をはじめもっとたくさんの人たちがこれを使ってくだされば、Web上を数学だらけにすることもできるのではないかと思いました。 Smart Doc の作者浅海智晴さん、TeX 数式の MathML 変換の部分を作られた桜井雅史さん、メーリングリストの皆さんに感謝しています。

また WEB 上に MathML ファイルを公開されていた先行者、行木孝夫さん、XeCl さん、塚見正裕さんのホームページから大きな影響を受けました。有り難うございました。

平嶋 康昌

追記:ここにおいたノートは平嶋康昌の著作物です。著作権は平嶋にあり無断転載を禁止します。 もちろん数学の〈内容〉に関して著作権などあるわけはありませんから、利用されることを歓迎します。 が、表現の〈カタチ〉は私の労働の結果です。

追記の続きの続き:コンピュータを取り換えて、長らく更新をしておりません。FTP ソフトの扱い方も忘れてしまいました。 どうやら接続できたようなので、少しずつ思い出して再開するつもりです。 今や、フォントに関して思い煩う必要もなくファイアフォックスをインストールするだけです。 ウィンドウズも IE が MathML を表示するので感動・・・したのですが、なんと上付き下付などがめちゃくちゃ。あきれてしまいました。ノートの素材はいくらかあるものの Smart Doc の使い方も大方忘れたので、中身の更新がどうなるやら・・・。
メールアドレスは定年退職に際し、延長し忘れましたので無効です。 今回は PDF ファイルをそのまま貼り付けることにしました。 Adobe の手を離れたことと、まだ Smart Doc をインストールしてないことによります。 いまのヴァージョンの Java で動くのかどうかもよくわかりません。

続きの続きの続き:昔書いた西遊日記を貼り付けます。 フランクフルト、ケルン、ストックホルム、ロンドン、アバディーンで止まっています。 その後ロンドン、パリという旅程でしたがメモは残っているものの書き継ぐ気力は残っていません。 パパラッチを楽しんだ大衆が、そのままダイアナの追悼に〈狂奔〉するその時を見たのですが、これはそのまま日本の十数年に重なってしまいました。 西宮の鉄道事故の時、関係のない野次馬が駅員を殴りつけるなどという〈あってあられん:「神聖喜劇」大西巨人〉ような時代が来たのでした。
(ドイツ語の発音、表記に問題がありますが、辞書は退職の時の引っ越し荷物の奥に隠れています。 見ないふりをしてください。)

2016 年二月:今回は、HTML 5 に書き換え、エンコーディングを UTF-8 に変えることにしました。 HTML 5 では MathML をインラインで入力できるようなのでこれはいいと思ったのですが、まだ Smart Doc を入れていないので猫に小判のようです。
以下の、解題で一か所だけ試みています(一般固有空間への分解(註 3 )の項)。 マイクロソフトのブラウザーが HTML 5 に対応しているなら正常に表示されるはずですが、どうでしょうか。
以下のノートのうち PDF でないものは、文字コードが SJIS で XHTML ファイルです。 長いテキストファイルの文字コードを UTF-8 に書き換える手間が膨大です(HTML 5 にするのは簡単)。文字化け等が起こる可能性がありますが、気長に直していくつもりです。 ネット上では、何々エディターで何とか何とかすればという記事があり、 いくつか試してみましたが、どれも一発でガツンとうまくいくというわけではありません。 ATOM かなにかで開いて、文字化けの部分を手入力すればなんとかなる。 老人はローテクでやるのが一番?!。
2015 年の夏休みのレポート(?)を書いたのですが、満足のいく出来ではないので一部分を PDF で公開するつもりです。

軒先を借りているケイ・オプティコムのサポートの K さんに、index.html の不備を指摘され(UTF-8 と書くべきところを、UTF^8 などとミスタイプしてドジってしまった)助けていただきました。 記して感謝します。

2016 年十月:2016 年の夏休みレポートを追加しました。

2019 年二月:東工大のホモトピー論シンポジウム(18年11月初旬)での講演原稿とその「補遺」をここに張り付けておきます。小田信行氏との共同研究です。

2019 年九月:2019 年の夏休みレポートです。 「モデル圏について」と「プッシュアウトについて(裏口編)」です。 前者は Str{\o}m による位相空間の圏のモデル圏構造についてです(「閉モデル圏」を近年の「モデル圏」におきかえました)。 だいぶ改良を加えたつもりですが Moore の mapping path spaces に引用すべき文献が少なく、それを全部書くと長くなる・・・ ので self contained という訳にいかなくなっています。 未定稿ということにします。

2022 年七月:以下のつもりでやりかけて、基点付ホモトピーの基礎工事のところの整理が雑なのに「自分で自分に」呆れて、修正にかかりました。 以下取り消し:「2020 年十月:「z_{\calC]-空間と古典的モデル圏」、「CW 複体について」、「基点付ホモトピー論への一歩」をアップします。 最初のは福大ホモトピーセミナー(2020 年 1 月)の講演原稿を普通の PDF に直したものです。 小田信行氏との共同研究です。 二番目は、ハウスドルフの仮定なしの CW 複体論です。三番目は Str{\o}m, The homotopy category is a homotopy category, p.438 の下から 15 行あたりに「証明なしで数行で」書かれている、基点付コファイブレーションについてのあれこれを、ながながと解説したものです。 基点付 Puppe の補題の証明、基点付 Gluing Theorem の証明などです。 tom Dieck の本にあるトランスポートを「基点付トランスポート」に直したものを紹介しました」 この作業がまだ続いています。 今回は、「基点付 Puppe の補題」と「基点付コファイブレーションの余基底変換は、基点付コファイブレーションである」のあたりまでを「基点付ホモトピー論への一歩 (I)」としたものと、「基点付コファイブレーションは、基点が非退化ならばコファイブレーションである」の二つをレポートします。 後者は、May and Ponto, More Concise Algebraic Topology の証明が、(読み取り困難な)Str{\o}m の証明のコピー(つまり情報の追加がない)なのに憤慨して〈完全解説〉を試みたものです。 この〈完全〉は、形式論理的な完全であって、「一言でいえばこういうことだ」という意味の〈完全解説〉ではありません。


ノートのリスト

解題

「n次元区間の体積について」: 長方形が小さな有限個の長方形によって分割されているとき、 これらの小長方形の面積の総和が元の長方形の面積に等しい、という自明な事実の証明が 長い間わからなかった。多くの積分論の教科書はこれを当たり前だとしているが、そうだとすれば 私は相当なアホウだということになる。Guillemin-Pollack 『微分位相幾何学』で 証明の方法がわかったときは、本当にうれしかった。それで、解説を試みることにした。 積分論の著者たちには違和感を覚えている。

註 これを書いて後、吉田洋一さんの本(『ルベグ積分入門』1965培風館)に von Neumann, J.による方法が書かれていて、Guillemin-Pollackのやり方は その書き直しであることがわかった。さすがにvon Neumannだと感心した。 ところで、悪魔がそうであるように彼の精液は冷たかったと物の本に書いてあったが、 悪魔を告発した女性(男?)の運命についてはどこにも記述がない。

「陰関数定理」: このノートがデュドネの『現代解析の基礎』によるものだということは 隠しようがない。十何年かにわたって、原形を留めないくらい書き直ししたつもりなのだが、 元のデュドネのままのようでもある(もっとも、訳者の森毅さんのほのめかしを信ずるならば 「森さんの手が入ったデュドネ」であろうか)。εーδを理解しない学生が増えたので、 (教える学生もいないのに)「挟みうちの原理だらけ」版を作ったりしていた。 近頃は、真微分可能というのが陰関数定理にとって本質的な微分可能性の定義だ、 というセクトに近付いている。「一点でサブマーシヴ」という造語をつくった。
教科書等における陰関数定理の記述の仕方は、よろしくないことが多い。 「方程式の解の集合は、よい条件を満たす解の近くではうまい近傍と関数が存在して その関数のグラフを部分集合とする。」とやり、そんな関数は一意的だなどといらぬことを付け加える。 証明をよくみれば(古典的な証明でもそう)、そのうまい近傍の中にグラフ上にない解が まぎれ込むことはないのである。従って、「方程式の解の集合は、よい条件を満たす解の近くでは うまい近傍と関数が存在してその関数のグラフが近傍における解の集合と一致する。 (だからそんな関数が唯一つしかないのは当たり前)」とやるべきなのである。 そうしておけば、ほとんど自明に逆写像(逆関数)定理が導かれるのである。
紳士的ではないが書いておけば、ポストモダンを標榜する本では、相対位相での開集合が 突如として開集合になる、という不思議な証明が書いてある。それでいいのならその理由を 書いておくべきだろう。第三版がとっくに出ているがこの部分はそのままである。おまけに、 この部分をそのままコピーして日本語にした本も出ているようである。 ドイツ人に誤りを指摘することは、人間関係がご破算になることを意味する(全称命題だから、 数学的には誤りの文章)と聞いたことがある。それなら翻訳者が勝手に直して(森一刀斎のように)、 知らんぷりをしておけばいいんじゃないだろうか。

「弦は弧に親しむ」 : 0の正の近傍で正接関数が恒等関数より大であることの証明は 「容易ではない」と書いた教科書がある。そんなことはないよ、というのがここでの主張である。 〈三角形の最大角の対辺が最大辺であること、従って、二等辺三角形の底角や 直角三角形の直角でない角の外角を角とする三角形では、その角の対辺が最大辺であること〉 をもちいる。

「幾何学2のための素材集(version 0.5)」: 曲面論の講義のための素材のつもり。 今回のヴァージョンで集合と写像に関する準備を付け加えた。陰関数定理の古典的な証明は 微積の教科書に書かれているが、帰納法に持ちこむことにおおわらわで、その幾何学的な意味が 書かれていない。「4次元空間の中の二つの3次元超曲面の共通分を、モンジュの パラメトライゼーションで一方の超曲面の地図上に引き戻せば、まっすぐな3次元空間での 方程式の解集合となるが、接平面がトランスヴァーサルという条件から局所的に グラフで書かれた2次元曲面となる。これをふたたびモンジュのパラメトライゼーションで 4次元空間に戻せば、共通分の形がある写像のグラフとしてたちあらわれる。」 ということを書いたつもり。

「一般固有空間への分解」: 日本の標準的な教科書ではベズゥの等式と ハミルトン・ケイリーの定理を使うことになっている。私はハミルトン・ケイリーの証明を 〈今〉やってみよと言われても出来ない(銀林浩さんの『線型代数学序説』(現代数学社)を 読んでやっと暗記できそうな気になってはいるので、明日学生さんに講義せよと言われたら、 100年前から知っているかのような顔でやれそうではあるが)。 暗記を必要とする証明はいくら単純でも好みではない。
さて、スメール・ハーシュ『力学系入門』(岩波)の附録は短いが読みにくいと思っていた。 ところがこれは完全列だ(スネーク・レンマ!)、と思った瞬間全部わかった。 一発で『がつん』とわかる証明は好ましい。具体的に言えば補題2と3だけで全部解決。 スメール・ハーシュでは固有値が全部実数である場合を取り扱い、そうでなければ 複素ベクトル空間を使って議論する、ことになっている。それを、補題3の証明は スネーク・レンマで当たり前といったぐらいでは手柄にならぬと、固有値が複素数の場合も 実ベクトル空間でやることにしたので、準備に手間取って長くなってしまった。 一部に「暗記を強いる」証明なんぞがまぎれ込んでしまったような気がする。 ハミルトン・ケイリーは分解定理の系として出る(あたりまえか)。前回から間があいたので 少しあせりがあり、バグがまぎれ込んでいるかもしれない。未定稿。

註1 スメール・ハーシュの証明では、補題3に当たる部分が容易だという理由で省略されている。

註2 ジョルダン標準形については、上記の銀林浩『線型代数学序説』を読めばよい (同工の西岡久美子「ジョルダン標準形のわかり易い求め方」数学(2003年第4号)も 参照のこと、またシロフという人の教科書にも同様なやり方が書いてあるとの説を聞いたが未確認)。 こ(れら)のやり方は、佐武一郎『行列と行列式(=線形代数学)』のものとさほど違っている わけではない。 Ker v^{k+1}/Ker v^k  と Ker[v:Im v^k\to Im v^{k+1}] は同型 (これもやはりスネーク・レンマによる)であり、 前者の生成元を E に持ち上げる (同型を与える加法関係(多価準同型)の途中まで持ち上げる)のが古典的なやり方で、 逆に後者の生成元を持ち上げるのが銀林流である。なぜ、ややこしいやり方が歴史的に先か? 『論理=歴史』説が間違いである例?

註3 スメール・ハーシュのやり方は演習をやらされる学生さんにも役立つ。固有多項式がたとえば X(X-2) 2 であるようなとき(銀林書177ページ数値的実例) 、Ax=0 を解くや Im A の生成元がわかり、(A-2I)x=0, (A-2I)^2x=0 を解く手間が省けるのである (Im A=Ker (A-2I)^2 が補題3によって、初っ端にわかっているから)。 教員は3次の行列を出題できなくなるのではなかろうか。〈この段落の最初の数式だけがインラインの MathML である。Kindle は対応していない(上付きの 2 が表示できない)。 商売と関係ないのでさぼっているのだろう。〉

註4 テニスの先輩筋にあたる近藤庄一さん(早稲田大学)に、「この一冊を読む 『線形代数学』」(数学セミナー、2003年8月号)があるのを思い出して読んでみた。 紹介されている川久保勝夫さんの本に、スメール・ハーシュと同じやり方が書かれているのがわかった (福岡、天神のジュンク堂での立ち読みで確認)。このノートではジョルダン標準形の「脱代数化」を 試みたつもりでもあった。「有限次元の線型代数は有限集合のカテゴリに似ていて、 必ずしも代数であるわけではない」と以前からかんがえていたのだが、近藤さんの文章の後半を読むと、 代数というのはなかなかに(どころじゃなく)ふところが深い、とおもう。

「置換の符号について:講義メモ」: 久しぶりに線型代数の講義を担当した。行列式まで来たとき、 置換の符号が差積を使わず定義されていて証明も書かれていないのに気がついてあわてた。 色々かんがえてこのメモの「補題」を思いついた。この補題は差積を使った定義、転倒数を使った 定義など私が知っているいくつかの符号の定義の同一性や、諸性質を一発で片づけてくれるので 気に入っている。証明は自明?なのだが、とても学生さんが許容してくれるとは思われない。 それでメモに書いたような〈証明?〉を試みた。
講義の評価アンケートを読んでびっくりした。「教科書に書かれていないことを講義するな」と いうのである。置換の説明に当たって、数Ⅲの教科書(数研出版)を引用し、写像の定義、 単射(1:1写像)の定義、合成写像の定義などが書かれていることを示し、もしわからなければと 次のようなことを付け加えた。囚人番号 1 から n までの囚人の集合を X とせよ。監獄の収容房 1 から m までの房の集合を Y とする。どの囚人をどの房にいれたかを記載した表(収容簿)は X を定義域とし Y に像(値)を取る写像とかんがえられる。これが単射とは・・・、全射とは・・・ 全単射とは・・・具体的にどういうことを意味しているかを丁寧に説明し、抽象的な定義と、 具体的なこのような例とをこっちが解らなければあっちで、あっちが解らなければこっちでとやれば だんだん解るようななるぞ・・・。どっちも解らない者がかなりいたようで、怨恨を評価アンケートに ぶつけてきたらしい。このような層の学生さんには、メモの「証明」も解らないであろう。

「次元と階数(ランク)について」: 線型代数について、佐武一郎さん、斎藤正彦さんの むこうを張って hiray 流というのを夢想したことがある。これはその夢想のかけらである。 有限次元ベクトル空間は、(基点つき)有限集合に似ている。双対性が貫徹する世界だから そうした方がよい、と思う。〈線型代数の最初の部分は代数ではない〉ジョルダン標準形の あたりから代数に入るのではないだろうか。
このやり方に好意を示してくれた人は、今まで一人もいない。

「位相空間論1」: 数学科が出来て、学生2名の世話係?なるものになったらしい。 二人とも計算間違いの達人で微積分を苦手としているが、意外や線型代数にアレルギーがない。 抽象に耐えられるとおもう。群論と位相の初歩になるべく早くふれさせて、4年間楽をさせたいと、 これを書いてみた。
昔々、数学科の学生の自主組織が各大学、各地方にあって、セミナーが行われていた。 先輩の黒木哲徳さんの指導で、佐武さんの『行列と行列式』を読んだ。その秋か冬、 工藤達二さんの講義の、黒木さんの丁寧で奇麗な字の「位相空間論」のノートをもらった。 教養1年半で本学に行き、秋からブルバキ『Topologie generale』の、梶原譲二さんの 猛烈に早い講義(半年でフィルターから局所コンパクトまで一章全部)を受けたが、 もう恐ろしくはなかった。
さて、その『Topologie generale』だが、これを書くのに読み返して違和感を覚えた。 せっかく開集合の公理から始めたのに、あっという間に近傍に乗り移って、近傍で やりはじめるのである。なにかといえば、点をとって近傍をとって点と近傍のあいだに開集合が・・・ というような単純労働になる。梶原さんが本を書いたときに近傍から始めたのは、 ブルバキのせいだったのかと、やっと今ごろ気がついた。極端なことをいえば、開集合から始めるのなら 近傍はいらない、どうしてもというときは「点を含む開集合(開近傍)」といえばよい。 まあそうもいかないから、近傍も登場し、「開集合の公理と近傍の公理の同値」も定番だから ちゃんと工夫して書いてみた。「近傍による特徴づけ」もきちんと書いている。単純労働を 避けるために工夫をしているのだが、たぶんそこのところが、近傍〈攘夷〉派には お気に召さないだろうとおもう。
さて工藤さんのノートよりいいところがなければ書く意味がないのだが・・・。なにしろ、 あのノートは短くて簡潔だった。
大学にはいったとき、面と向かえば先生とよぶべきだが、ご当人がいない場面では 「さんづけでよい」と先輩に指導された。いまもこれをまもっている。

「レトラクションについて」: 陰関数の定理のところで「整形補題」と称するものを書いた。 これをもちいて、ミルナーの多様体の定義を書き換えてみた。位相空間論を前提できない学生を 相手に曲面論をやるときに、曲面の定義をどうするかというので試みた。定義をかけというと、 これでも書けない学生が(数学科を含めて)続出して困った。今度の春から担当しなくて 済むようになり、清々している。

「プッシュアウトについて」: 位相空間の圏ではプッシュアウトを手際よく定義して先を急ぐ、 というのが普通である。所々でこの性質は定義そのものから証明できる、などと言い訳を 書くことがある。気持ちがよろしくないので、元に戻って定義を確認してみた。ついでに、 相対同相にたいし準相対同相と言う言葉を導入して、その性質をいくつか書いてみた。 (CW)複体のの理論をハウスドルフ性なしで展開する時に必要な命題等を、余計なことだが、書いた。 そのまたついでに、ブルバキのアンサンブル・サチュレを付録に付け加えた。これがあると、 (準)相対同相の理解がすっきりとするのではないだろうか。

「幾何学的実現について」: ホモトピー論でコエンドといえば、まずは単体的空間 (単体的集合)の幾何学的実現である。ホモトピー余極限や前単体的空間やの 幾何学的実現実現についても同じような議論をすることになる。これらをいちどきにかたずけたいと思う。 性質 (A) 、 (B) 、 (C) がそれぞれの理論で確認できれば、おわりということにしたい。 もともとは、Gelfand-Manin の本の最初の部分を自分流に書き直した未定稿があり、 tom Diek の厚い本の Covering のホモトピー余極限のところを読むのに合わせてぬきだしを作って 手直しをしているうちに、このような形になったものである。「プッシュアウトについて」とともに 2015 年の夏休みレポートの一部分である。

「単体複体と被覆のホモトピー余極限」: tom Diek の厚い本の 13 章 2 節の解説を こころみた。numerable な被覆のホモトピー余極限から元の空間への自然な写像が元の空間上の ホモトピー同値であること、ホモトピー余極限の 重心細分がホモトピー余極限と同相であることの 証明を書いてみた。 昔々、Segal, G. の証明が理解できず困り抜いた(30年!?)ことがある。 この本の tom Diek の証明も理解できない。 2015 年の夏休みのレポートである。1の分解の取り扱いに慣れていないのでどこかでドツボに はまっているかもしれず迷いがあるので公開を引き延ばしていたが、レポートも遅れると怒られる (誰に!?)のでアップすることにした(間違っていたらどなたか直してください)。

「Puppe の補題」: Puppe の補題とは、「位相空間対 $(X, A)$ にたいし、 $X\times 0\cup A\times I$ が $X\times I$ のレトラクトであれば、 $X\times 0\cup A\times I$ は包含写像 $1_X^A:A\subset X$ の写像柱 である」のことである。1967 年 Puppe, D. [1]、の脚注に書かれた。証明は、 翌 1968 年 Str{\o}m, A. [2] にでた。1970 年 tom Dieck, T., Kamps, K.H., Puppe, D. [3] の本の付録に Str{\o}m, A. の証明がていねいに解説されている。たぶん、Puppe の証明は これより重たかったのだろう。これでいいのだが、まだ読んですっきりしない。
定年前の最終年、4年生のセミナーで Str{\o}m, A. の閉モデル圏(の hiray 流準備と解説) を読んでもらった。その夏休みに思い立って、閉包を用いた証明を用意した。これで、 分節化された証明になっていると思ったが、学生さんの顔色はあまりよろしくなかったように 思う。 それをさらに整理したものを、2012 年「位相空間論とその応用」研究会で発表した。 今回は、コピペミスを訂正し枝葉を削り解説を加えたものを、ここに載せることにした。 閉コファイブレーションにあらざればコファイブレーションにあらず、という時代だが 時代遅れもよろしかろうとおもう。

「プッシュアウトについて(実践編)」:2016 年の夏休みレポートである。書いているうちに 表題と中身がずれてしまった。準相対同相という概念を、現役時代に学生相手の講義で捏造〈デツゾウ〉 したのだが、これが意外に使えることに気が付いた。接着空間という概念は気が利いているようでそうでもない。 建て増しを続けた温泉旅館みたいで、気色がわるい。あらかじめ。建て増し全体の入る大きな枠組みを作って、 その中で建て増しをすれば、位相の問題が〈部分空間というくくりで〉あらかじめ解決されるのですっきりとして、 気持ちがよいのである。知人から、講義録はどうするのですかと聞かれて、まだまだ完成度が低いので問題外 と答えていたのだが(実際いろんな教科書からの借り物と、自分の工夫とがばらばらの状態)、 借り物はしょうがないとしても、何とか自分の色付けができそうな気がしてきた。 その実験を試みた。

「コンヴィニエントな位相空間の圏について」:2018 年のホモトピー論シンポジウム(11月初旬)講演のビーマーのソースを公開する。小田信行氏との共同研究である。既存のコンパクト生成空間の圏を含む、弱ハウスドルフ z- 空間の圏というものを考えた。Brown と Booth-Tillotsonn による積を用いた美しい理論で「含む」ことの証明はいくつかあり簡単なので、当然「より大きい」と思っていたのが、講演の直前に「等しい」ことを証明してしまった。ドジである。 〈k- 空間の圏と z- 空間の圏はいつも等しいか〉という問いには、反例があることを講演の中でしゃべることさえ忘れていた。重ねてドジである。

「コンヴィニエントな位相空間の圏について(補遺)」:「〈k- 空間の圏と z- 空間の圏はいつも等しいか〉という問いには、反例がある」ことを書いておく。ついでに、島川さんらの圏に対応する z- 空間の圏について少しふれた。

「モデル圏について」:Str{\o}m, A. , The homotopy category is a homotopy category は昔から気に入っていた。自分なりに書き直して書いてみた。Moore の mapping path spaces を用いたが文献が少なくて困った。self contained にしようとすると長くなってバランスが悪い。 これを用意しておけば、いくつかの z-空間の圏がモデル圏になることまでは、あと一歩付け足せばいいので未定稿のままここにおいておく。

「プッシュアウトについて(裏口編)」:位相空間の圏におけるプッシュアウトについては、裏口から入るにかぎる。「プッシュアウト」を三本書いて、自在になってきた。

「基点付ホモトピー論への一歩 (I):「基点付コファイブレーションは埋め込みである」、基点付 Puppe の補題」、「基点付コファイブレーションの余基底変換は、コファイブレーションである」の証明。

「基点付コファイブレーションは、基点が非退化ならばコファイブレーションである」:前書きをそのまま貼り付けておく。 Str{\o}m \cite{St72}, The homotopy category is a homotopy category, p.438 の下から 15 行 あたりに、基点付コファイブレーションに関することがらが、証明抜きで書かれている。 そのたった数行を、ながながと解説した「基点付きホモトピー論への一歩」は書き上げたが、定義やアイディアの変更などでできた不整合を調整する必要があり、整理がついていない。 その数行のすぐ後に、Str{\o}m の〈手抜き証明〉付の、「基点付コファイブレーションは、基点が非退化ならばコファイブレーションである」が書かれている。 これについては、May and Ponto \cite{mp12} に証明があるようだからと後回しにしていた。 ところがこの本の証明を読んでみると、 Str{\o}m 命題 7 の半分に相当する May and Ponto の Step (i) に少し‘解説’が付け加えられているだけ(これでも助かるのだが)で、あとは Str{\o}m の丸写しであることがわかった。 せっかく Str{\o}m の手抜き証明を解読したのだから(なら)、もう少しオコボレがあってもよさそうなものだが、手抜きはそのままに放置されている。 Step (ii) における定義の変更(ミスタイプ?)も混乱を誘う。 記号は May and Ponto の方が普通の教科書風なのでおおよそこれに従うが、証明の方針は Str{\o}m に従う。

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