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一般固有空間への分解
一般固有空間への分解
1 準備
写像一般について。
写像 について、 を の源 (source)、 を的 (target) という。 であるとき、源を 的を とする(実体は と同じ)写像 を と書くことにする。( のときは、 を 、 のときは、 を
と略すことにする。 のときは、 を と書いて、不変である、という。)
(1)
以下、 を有限次元実ベクトル空間、 は線形写像である。
(2) は線型全射、部分空間 に関し が同型ならば
証明 (
:線型全射)、 (
:単射)
□
(3) 線型全射 が を満たすとき次のことが成り立つ。
i) が同型ならば、「」 である。
ii)
i)、ii) 共に、短完全列の射に関する「蛇補題」から自明。直接証明もそんなに難しくはない。
実ベクトル空間の複素化について。
に積構造 を付け加えたものが複素数体 である。
実ベクトル空間 の複素化 とは、 に複素スカラー倍 の構造を付加したものである。
の複素化 は で定義される。これは複素線型写像である。
一般の複素線型写像は で与えられる。
は共役線型同型である。 であることことから、共役線型同型 が導かれる。
定義が具体的であるから、つぎのことを確認するのは易しい。
(4) i) 「」、「」
ii) 「」、「」( 「」)
は の、適当な基底に関する表現行列の、固有多項式である。 は の固有値全体のなす集合とする。
(5) 不変部分空間ならば である。また、不変ならば である。
(6) 単射ではない
証明 線型写像の表現行列と、その線型写像の複素化の(同じ基底による)表現行列は同じであるから
「単射ではない」。また、 より
「単射ではない」。 (4) i) により証明おわり。 □
(7) とする。この時任意の正の整数 に関して、次が成り立つ。
証明 、 である。() 逆は当たり前。 □
(8) は実ベクトル空間の自己線型写像で、 を実係数の多項式とする。次が成り立つ。
註 複素係数の多項式であっても、複素ベクトル空間で議論すれば成り立つ(証明もその方が簡単)。
証明 () とする。 について証明する。(そうでないときは を で取り替えればよい。) ((6) による)、 である。これから が導かれるが、これは が 上で単射ではないことを意味している。したがって、
。
() とする。(ここでも について証明する。) がある。 とおけば、 が得られる。 より ならば となり に矛盾する。したがって、 である。 より である。 が示された。(5) によって結論を得る。 □
ついでに。
(9) であるとき、
(10) について、 一次独立。
2 分解
線型写像 に関して、二つのフィルトレーションがある。
、
は有限次元であるから必ず が起る。すると、
となる。また、 より 「」 である。
可換図式 に 準備 (3) i) を適用すれば、「」 である。
補題 1
この数を の最小指数ということにする。 を最小指数より大きな数として、 と定義する。これらは であるような に関して、不変である。線型全射 に対して、 が同型であることから (2) によって、
補題 2
補題 3 ならば である。
証明 を の最小指数より大にとる。可換図式 において (後者は条件と (7) による)が満たされるので、(3) ii) により次の同型が導かれる。
また は の への制限であるから、自然に が導かれる。次元の比較によって、
は同型(同一)である。 □。
補題 4 を実数係数の多項式とする。このとき、 に関して次が成り立つ。
i)
ii) i.e.
iii) で の最小指数は同一である。
iv) は共役線型同型 を導き、 の最小指数も同一である。
註 i)、ii) は複素係数の多項式であっても、複素ベクトル空間で議論すれば成り立つ。
証明 i) と (8) による。
ii) (または ) である。 が 上で単射であることから (または ) も 上で単射である。(6) により は の固有値になり得ない。(5) より であるが、前半とあわせて結論を得る。 iii) (4) による。
iv) 共役線型同型 が を満たし、共役線型同型 を導くからである。 □
補題 5 実(あるいは複素)ベクトル空間 と について、 である。
証明 と分解する。補題 4 ii) によって、 である。これは を意味する。 □
補題 6 実ベクトル空間 と について ならば次が成り立つ。
i)
ii)
証明 i) 補題 5 と同様に、補題 4 i)、ii) により である。
ii) と分解する。補題 4 ii) と註により 。また より と補題 3 が成り立つ。すなわち、 である。 に対して同じ議論を繰り返せば、 も得られる。次元の比較によって である。 □
定理 7 (一般固有空間への分解定理)
で の重複度が であるとする。このとき次が成り立つ。
,
ここで、
証明 に関する帰納法による。 のときは、補題 5、6 で終り。 (または ) と分解して帰納法を進行させる。その準備はすべて終っているので、あとは略。 □
Hamilton-Cayley の定理 は と、固有値 に関して (準備 (10) による)が成り立つことから、分解定理の系として得られる。
(この項続く)
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