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陰関数定理
陰関数定理
1 逐次近似法
定理1 は連続写像で、ある に関して次の二つの条件がみたされるものとする。
i) 、
ii)
このとき、連続写像 で、「 に対して、」をみたすものが唯一つ存在する。
証明 を に対して を対応させる定値写像とする、定値写像は連続である。以下、連続写像列 を帰納的に で定義したい。 は と ii) によって、確かに として定義されている。いま、連続写像 が次の条件
を満たしながら、定義されていると仮定する。そのうえで
を上のように帰納的に定義すれば、 に対する付加条件も満たされる。なぜなら
であるから。すると、とあわせて
となり、 が示される。すなわち がえられ、これで帰納法が完成したことになる。
同様の計算によって、 も導かれる。これは、 を固定したとき、ベクトル列 がコーシー列であることを示している。コーシー列は収束するから極限がが存在し、その値を と書くことにする。 毎に が定まることから は、関数 とみなすことができる。ここで、 の像が に含まれることは、 に を被せて となることから導かれる。つぎにこの が で連続であることを示そう。
であるから、正値単調減少列 は に収束する。すなわち に対して であるような が存在する。 とおく。 が連続であることから が成り立つ。また に対しても ならば であり、 とすれば がえられる。そこで、
となり、 の連続性が示されたことになる。
の両辺に を被せれば となり、同値条件の一方が成立する。逆に、 について ならば より となる。すなわち、 が成り立つ。
よって、「 に対して、」 が証明された。
(もともと であれば である。)
これと同じやり方で の一意性も証明される。
2 真微分可能性
は位相空間とその一点、 は の近傍、そして はノルム空間とする。 と に対して、 が成り立つとき「 は において に対して無視できる 」 といわれる。
をノルム空間、 を開領域とする。 が で真微分可能であるとは、 が成り立つときである。ここで、定義に登場している関数はすべて の近傍で定義され、 を変数とする2変数関数とみなさていることに注意。すなわち、 である。真微分可能なら微分可能で、 であり、一点で真微分可能な関数は、その点の近傍で一様に連続である。
命題 微分可能な関数について、ある点で真微分可能であることと導関数がその点で連続であることは同値である。従って特に、各点で真微分可能であるという条件と 級であることは、同値である。
証明 まず、 が で真微分可能で、各点 で微分可能であるとする。すなわち、
(1)、
(2)
がみたされている。 に対して、 とおき、上の条件(1)により をさだめ、 とおく。 とする。 とおいて、 における微分可能の条件(2)を使い、 をさだめる。 に対して、 をみたす を(ともかく)一つ固定する。 とおけば、 で とあわせて、(1)より となる。また、 であるから(2)により 。三角不等式と線型性により次を得る。
したがって、 となり、 は で連続であることが示された。
逆に、導関数 が で連続であると仮定する。 が成り立つ。 を で定義する。ここで、 とすれば であるから となる。 有限増分の定理(平均値の定理)より が導かれるが であるから は で真微分可能であることが示されたことになる。
有限増分の定理を知らない人は、導関数の連続性を仮定に付け加えて より を導けばよい。命題の後半だけが証明されたことになる。
3 陰関数定理と逆写像定理
定理3(陰関数定理) を開領域とし、 は で真微分可能で とする。 において が線型同型ならば次が成立する。
i) 連続写像 、 が存在し、
「 のグラフ」である。
ii) は で真微分可能で、 である。
iii) が 級ならば も 級で、 が成り立つ。数学的帰納法によって、 が 級ならば も 級である。
証明 における真微分可能性により、 はその近傍で連続だからもともと で連続として一般性を失わない。 とおく。 を で定義する。 であることを確認しておく。
は で真微分可能であるから として を定めると、
となる。 であることと、積空間のノルムを で定義しているので であることに注意。ここで と定義する。
の における連続性から として を定めると、
となる。 と定義する。
以上のことから、 を 上の関数と考えれば、定理の条件、i), ii) が として、みたされている。
従って連続写像 で 「 に対して、」 をみたすものが存在するのだが、 の定義によって であるから、結論は「 に対して、」に書き換えられる。定理2、i) の証明が完了したことになる。
ii) の証明。 の における真微分可能性を記述する。
に対して とおく。これから が定まるが、 としておく。ここで、 とおくのだが、 の における連続性より をみたすように を定めることが出来る。
とおき、 を使って整理すれば、
となる。 と次の計算、
によって、 である。これを先ほどの整理の結果と合わせると、
となり、ii)の証明が完了した。
iii)の証明。
が 級であるとする。i) の証明をよく見ると、 は の任意の近傍 に対して、 となるように、いくらでも小さく取ることができることがわかる。従って、 が成り立つとしてよい。
に対して、定理の i) を適用することが出来るから、 で真微分可能な関数 が得られ、 をみたしている。上に述べたことから としてよい。 の一意性により である。 は においても真微分可能であることがわかった。すなわち、 は 級で、 をみたす。
定理4(逆写像定理) を開集合とし、 は で真微分可能であるとする。 が同型であるなら で が同相となるものが存在する。逆写像 は で真微分可能で である。また、 が 級であるなら、 も 級で、 となる。
証明 を で定義する。 は で真微分可能、 で は同型である。陰関数定理を適用すれば で真微分可能な写像 が存在して 「 に対して、」となる。 に対し で から が導かれる。これからすぐに二つのことがわかる。まず、 であるから と考えるべきで、 の定義域を とすべきであるということ。つぎに、 は の左逆写像であることである。さて、 に対し、 で より が導かれる。これは を意味する。
より で、これは求める公式である。
が でサブマーシヴであるとは、 が で真微分可能であり、微分 が全射であることとする。
逆関数定理を使えば、陰関数定理はつぎのように言い換えられる。
系5 を開領域とし、 は でサブマーシヴであるとする。このとき、 で真微分可能な同相写像 ( の近傍、 の近傍、 の近傍 ) が存在して、 となる。 が 級なら も 級である。
従って、 は の近傍 で開写像で、 をみたし、 で真微分可能な局所セクション がある。
4 応用
応用としてモースの補題の証明の、おおざっぱな筋書きを書いてみる。
(1) を の近傍、 を滑らかな関数とする。 が危点 () であるとき、滑らかな関数 で を満たすようなものがある(多様体論の教科書参照)。
(2) さらに であるとき、 を非退化危点であるという。このとき、 を と定義すれば、 は でサブマーシヴである。なぜなら、 であり、 に対して をとれば であるから。
したがって、 には をみたすような局所的にセクション がある。 すると が得られる。
(3) は滑らかなチャートになり が導かれる。あとは、 を対角化し、対角成分を に正規化するようにチャートを取り替えればよい。
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