中核市

 目次

中核市・特例市に関する大阪自治労連の見解

中核市における高槻市の位置(中核市要覧より) 表とグラフ(2001.7.20更新)

○(分析)人口動態から中核市を読む(2001.8.1更新)

行政分野別の委譲事務項目数(高槻市発表分)(2001.11.10)

中核市委譲事務と財政負担(特別委員会資料より)(2002.2.17更新)

第7回中核市講演会が開かれました。その講演の概要をまとめました(2002.8.16更新)

高槻市が中核市推進計画(中間報告)を公表して意見を求めています(2002.12.22更新)(新規! )
 
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中核市・特例市の指定に関する見解

                        2000年5月9日   大阪自治体労働組合総連合執行委員会

1.府下の状況と、私たちの当面の要求

 地方分権一括法成立にともなう地方自治法改正で、中核市の要件緩和と特例市制度の新設が、2000年4月1日から施行されました。その結果、新たに中核市対象となったのは全国で5市(大阪府下では高槻市)、特例市対象は全国59市(大阪府下では東大阪市、枚方市、豊中市、吹田市、八尾市、寝屋川市、茨木市、計7市)です。
 中核市対象の高槻市では、今年3月に市長が施政方針で「積極的かつ厳しく、国・府と協議し、対応してまいります」と述べ、第5次行財政改革大綱実施計画(2000年度〜2002年度)は、中核市移行をめざしたものとなっています。今年度に実施設計予算が計上された府立高槻保健所の移転新築が終わる2003年度が、移行時期と推測されます。
 一方、特例市対象の7市は、2001年4月1日指定に向けて具体的準備をすすめ、早い市では5月〜7月に、遅い市でも9月〜10月に開催される市議会で、指定申出に関する議案が提出される可能性が高くなっています。しかし豊中市のように「行財政改革・地方分権調査特別委員会」が設置されて審議されている市もありますが、ほとんどの市では、指定申出の議案提出をもって、はじめて審議にはいる模様です。一般市民はもちろんのこと、担当職員以外の圧倒的な職員も知らないまま、手続きが粛々と積み重ねられ、すべての手続きが完了した時点で、初めて特例市移行が知らされるという事態が、容易に推測されます。
 私たち、大阪自治労連は、福祉法人や福祉施設の許認可、保健所の設置など(中核市のみ)や、都市計画法に基づく開発許可等、騒音・振動等の規制地域と基準の設定
(中核市・特例市)などの権限が市民の身近な市に移管され、権限を行使できることは、市民の健康や暮らしを守る施策を拡充しうる可能性を広げるものであり、権限移譲自体に反対するものではありません。しかし後述するように、今回の地方分権一括法、地方自治法改正は、少なくとも地方自治の拡充に逆行する根本的な問題を併せもっています。また中核市・特例市制度に限ってみても、多くの問題点が指摘でき、慎重な検討が必要だと考えます。
 したがって、指定申出にあたっては、法に基づく議会での審議と議決を要することはもちろんですが、それだけではきわめて不充分であり、当面、次のことを要求します。
@中核市・特例市指定にあたっては慎重に検討し、ただちに、当該の自治体労働組合と協議を行うこと。市民に指定の方針や指定にともなうメリット、デメリットなどの情報を知らせ、意見の集約につとめること。
A私たちが次に指摘する地方分権一括法や地方自治法改正の根本的な問題点、中核市・特例市制度の問題点の指摘を真摯に受け止め、中核市・特例市指定が住民自治の拡充と住民福祉の増進に貢献しうる内容を具体的に明らかにすること。

2.地方自治法改正と、中核市・特例市に関する評価

 そもそも地方分権とは、市民生活にかかわる行政の権限や財源を、市民により身近な市町村に移譲することによって、行政(政策決定及び実施)への住民参加の条件を広げ、大型開発優先のゼネコン政治ではなく市民の健康や暮らしを守る施策を拡充できる条件を広げ、市民に対し総合的できめ細かな行政サービスを効率的に提供できる条件を広げることに意義があるものです。そのことが名実ともに実現されるならば、反対する理由はありません。
 しかし地方分権一括法(地方自治法改正等)は、機関委任事務の廃止、条例制定権の拡大(法定受託事務も対象に)などの改善はみられますが、第一に都道府県から市町村への権限委譲に比べて国から自治体への委譲は極めて少なく、第二に自治体に対する国の広範な関与の仕組みがつくられ、第三に税財源の委譲は何らおこなわれず、第四に市町村合併を促進し、第五に都道府県が国の下請け的な役割を強め、第六に福祉や教育など一定の行政サービスの水準を保障してきた施設や専門職員配置の規制が緩和され、第七に住民投票などの住民自治制度改正は見送られるなど、重大な問題をもっています。
 こと、中核市の要件緩和、特例市の新設に限ってみても、市町村合併を促進し、都道府県の役割を変質させ、住民の暮らしを支える行政サービスを後退させる「自治体リストラ」の狙いを色濃くもっている。
 それは第一に、市町村を人口規模等を基準に政令指定都市、中核市、特例市、一般市、町、村という6つのランクに細分化し、それぞれの権限に差異を設け、一般市から特例市へ、特例市から中核市へ、中核市から政令指定都市へと、「より高い」ランクの市町村に移行するように、市町村合併などのメニューを示して誘導していることです。そもそも20万人(特例市)、30万人(中核市)、50万人(政令市、運用上は100万人)規模の市でないと、一定の権限を付与しないという基準そのものが合理性を欠くものです。地方自治の先進であるヨーロッパ諸国では、たとえ人口が少ない町村でも、都市計画や福祉行政で絶大な権限を有し、住民本位の行政をすすめていることは、周知のとおりです。むしろ今日では、大都市の欠陥(非効率や住民参加の欠如)が指摘されて、住民自治や住民参加を促進し、住民の暮らしに則した総合行政をすすめるために、コミュニティレベルでの行政組織の検討が必要であること、つまり自治体内の分権が課題になっているのです。
 第二に、中核市の要件緩和では、合併を促進する狙いがあって、面積要件だけは存続させたことです。そのために大阪府内だけをみても、整合性を著しく欠いたものとなっています。中核市の要件であった人口(30万人以上)、面積(100平方q以上)、昼夜間人口比率(100%以上)のうち、今回の改正で昼夜間人口比率だけを外しました。その結果、住宅都市である高槻市(人口36万人、昼夜間人口比率79.5%)より、人口規模では約1.4倍、地域経済(農業の生産額+製造業の出荷額+商業の販売額)では3.0倍の東大阪市(52万人、103.8%)をはじめ、枚方市(41万人)、豊中市(40万人)、吹田市(35万人)も、面積要件を満たさないため中核市の対象外となっています。多くの事業所が立地し、商工業や文化・娯楽の機能を有し、昼間人口が夜間人口を上回り、総合的な都市行政が求められれる市でありながら、十分な権限が委譲されない、という逆転現象が生じています。
 第三に、地方自治の二層制のなかで、都道府県が市町村とともに果たしてきた、住民のくらしを守る役割が空洞化され、国の下請け的な役割を強め、道州制への道を開いていることです。対象市がすべて中核市、特例市に指定されますと、大阪府の人口884万人のうち、政令指定都市(大阪市)が259万人・30%、中核市(2市)が116万人・13%、特例市(7市)が247万人・29%、あわせて622万人・72%がこれらの市の対象となります。大阪府が「財政再建」を錦の御旗に、府民の暮らし、福祉、健康、文化などにかかわる機関、施設、施策を廃止、統合、市への移管をおこなっていますが、中核市・特例市指定にもとづく権限委譲は、この流れに拍車をかけることが容易に予測できます。現に1996年に堺市が中核市指定を受けたとき、大阪府がこれまで独自施策としておこなってきた民間社会福祉施設に対する補助金などを打ち切ったことは記憶に新しいところです。
 第四に、中核市・特例市をきっかけに、福祉や教育など市民生活を守る独自施策を見直し、職員削減や賃金・勤務時間等の労働条件を改悪する恐れがあることです。要因の一つは、自治省や都道府県の「指導」です。現に、かつての中核市指定で、自治省が申出のあった市幹部を再三、個別に呼び出し、労働条件等を国基準に下げるように指導してきたことは、岡山市等の事例で報告されています。二つは「都市間競争」に煽られるなかで、市が自ら率先垂範して、産業優先の都市基盤整備を重点的にすすめ、福祉や教育などのきめこまかな施策と職員配置を後退させる恐れです。これも、かつての中核市指定で共通してあらわれています。私たちが中核市・特例市指定を評価し、容認できるのは、そのことが住民自治と住民福祉増進に貢献しうる可能性があるからであって、指定を口実に住民や自治体労働者の犠牲を強いる自治体リストラをすすめることは断じて容認できません。
 第五に、中核市・特例市指定にともなう権限委譲とあわせて実行すべき財源保障をおこなっていない問題です。制度上では、地方交付税交付金、および法定補助金等で措置されているとされています。中核市と特例市では、移管される権限(事務事業)と必要財源に著しい差異がありますが、共通していえることは、一つは地方交付税不交付団体は新たな収入が無いなかで事務事業だけが増えることです。二つは交付税で措置されるといっても算出根拠が不明確であり、特別交付金など移行時に限った措置が含まれ、安定的な財源保障ではないことです。ちなみに堺市が中核市指定を受けたことによる普通交付税措置では、措置不足額が約88億円も生じ(1996年度)、「大阪府から多くの単独事業の委譲を受けたことから、経常的経費のうち社会福祉費の多額の増加が生じたとともに、投資的経費のうち高齢者福祉費について、多額の所要一般財源増加額が生じたことが原因と考えられる」(「自治フォーラム」1997年12月号、長谷川論文)といわれています。三つは第三で述べた都道府県の単独事業の打ち切りによって当該市が肩代わりしなければならないことです。四つは権限に付随すべき財源とは単に事務事業をこなす経費ではなく、その権限を行使して積極的に住民のための施策を展開できる財政力ですが、前述のように税財源の委譲がまったく行われなかったことにより、権限委譲が住民にとって「絵に描いた餅」となる可能性が高いことです。これらは、市当局が、議会はもとより、市民や自治体労働組合と共同して、国や大阪府に対し、財源保障の運動をすすめるべきであることを示しています。

3.大阪自治労連の運動の進め方

 大阪自治労連は、1999年12月10日に、衛都連主催で「中核市・特例市制度を考える学習会」をもち、1989年の第二次行革審答申から地方分権一括法に至る歴史的経過、中核市・特例市の評価と問題点、すでに4年前に中核市に移行した岡山市の経験、地方自治確立の運動の意義、などを検討しました。そして2000年5月8日には「地方自治法改正にともなう中核市・特例市の指定に関する緊急対策会議」を開催し、本見解案に基づき当面の方針を検討しました。
 この取り組みを土台に、新しい情勢に対応するため、@中核市・特例市制度の評価、A自治体当局への当面の要求、B大阪自治労連としての運動の進め方、の3点について、大阪自治労連としての見解をまとめたものです。
 中核市・特例市指定にあたって、私たちは次のことを留意して取り組む必要があります。
 第一に、政令指定都市、あるいは中核市・特例市の増加によって、国や大阪府が住民の暮らしを守る役割を後退させる恐れがあるなか、国や府に対し、財政的保障を求めるたたかいと結合させることです。その点では、岡山市が同年に中核市指定を受けたとき、岡山県単独事業財源問題で市議会として県に要望書を出し、市民団体10団体が共同で県に申し入れ行動をおこない、医療費補助を当面半額存続させるなどの激減緩和措置をとらせたことは教訓的です。
 第二に、対象外の市町村でも大都市志向が強まり、市町村合併と連動する恐れがあるなかで、市町村合併押しつけに反対するたたかいと結合させることです。市町村合併特例法に基づいて、大阪府は2000年2月に「『市町村の合併の推進についての要綱』の策定に関する懇話会」を設置し、今年中にも合併パターンを提示することにしています。あるいは広域行政への政策誘導を目的に1994年の法改正で新設された広域連合制度によって、大阪府内でも1999年5月に守口、門真、四条畷の3市が、介護保険制度を目的とする「くすのき広域連合」をつくりました。したがってこの中核市・特例市問題での取り組みを通じて「大都市ほどステータスが高い」「大都市ほど効率的で行政能力が高い」という「信仰」を事実に基づいて論破し、大都市では規模が大きすぎるために住民参加・住民のための総合行政・民主的効率的行政に欠陥が生じていること、住民の暮らしに密着した市町村の規模では20万人でも大きすぎること、人口規模が小さな市町村でも権限と財政を強化させることが本来の地方分権であることなどを明確に主張することです。
 第三に、委譲された権限を、住民自治と住民福祉増進のために活用させる積極的な取り組みを展開することです。たとえば騒音規制法・振動規制法等に基づく規制地域の指定や基準の設定などをどう活用するのか、都市計画法に基づく開発行為の許可等をどう活用するのかなどを提起することも考えられます。あるいは、現行でも住民にとっては規模が大きすぎて、住民参加・住民のための総合行政・民主的効率的行政に齟齬が生じているなかで、市域を数ブロックに区分して住民参加や住民への総合的なサービスが行われるような行政機構を提起するも考えられます。
 第四に、自治体労働組合のたたかう課題を「権限委譲で仕事が増える分は職員配置せよ、指定を口実にした自治体リストラを許さない」という狭義の労働条件問題としても取り組むことは当然ですが、それだけでは不十分であり、自治体行政のあり方そのものを問う大きな枠組みでとらえることです。中核市・特例市指定は、そもそも主権者である住民自身が決定する問題です。したがって労使協議だけですすめるのではなく、革新政党や地域の労働組合・住民諸団体とも連携し、民主的自治体づくりの課題として取り組む必要があります。
 第五に、大阪自治労連も、当該市だけの課題でなく、大阪府や大阪市を含む自治体のあり方を問う問題であり、大阪自治労連全体の課題として位置づけて取り組むものです。


*注 各市の人口、昼夜間人口比率は、1999年9月1日現在の推計値
 (「大阪府市町村ハンドブック」平成11年11月)
大阪自体労働組合総連合
jichiroren-osaka.iwashita@nifty.ne.jp

 


関連するサイト

         中核市連絡会(全国25市の中核市の連絡会組織) http://www.chuukakushi.gr.jp/
                         


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