現代都市自治体に期待されるもの(第7回中核市講演会)
                  
講演者 同志社大学 法学部教授 真山達志氏

            
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 2002年8月14日に、高槻市・中核市準備室の主催で『第7回中核市講演会』が開催されました。講演を聴いてのメモです。
 (文責は当新聞社にあります)
 

行政改革が目指してきたものとその成果

 @ガバメント(政府=統治の仕組みと統治活動)の改革
行政の改革といえば簡素・効率化・コスト削減の努力、組織・定数の見直しなど楽しい話ではな い。身を切る思いだと思う。しかし、住民、市民から見て「頑張っている」と見えるか。課がひとつ減っても市民からは分からない。
制度改革と意識改革が地方分権の中身だとすれば、権限と財源がどれだけ地方に委譲されたかは、市民生活からみて関係ないことだ。府営でも市営でも市民からは同じこと。
従来のポジションが集中と標準・画一の交点だとして、今は、集中から分散へのベクトルの最中であって、今後は標準から分散へのベクトルの関心を高める必要がある。そのベクトルの内容をなすものが市の意欲と能力の問題であって、私はそれを政策形成能力と呼んでいる。

 A 行政と市民の関係における変革

  事務事業評価が行われている。市民へのアカウンタビリティが評価の必要性のひとつとなっている。Accountability。説明責任と約している。正確には「結果に対する説明責任」である。イギリス・アメリカでは契約関係が発達していて、市民と行政を本人と代理人の関係でみることができる。本人が市民で行政は代理人。代理人は本人に対して結果責任を負うのは当然の理となる。責任という場合にその内容をなすのは @任務的責任、A応答的責任、B弁明的責任である。
誰が(主体)何を(対象)何のために(目的)評価するのか、ということ。事務事業評価は自己評価だとして批判する人もいる。 

分権改革のめざすもの

  ガバナンス(公共空間の協働管理)の確立がここでの主題である。
公共主体の捉え方
従来は二元的理解(第一セクター=公共、第2セクター=私、交差部分=第3セクター)であった。これは統治の観点が強い捉え方である。近年は、三元的理解に移ってきた(政府と民間営利と民間非営利の三元)。政府と民間非営利が公共を担うことになる。これが公共空間の協働管理である

3ガバナンスのモデルとなる都市自治体の創造

 @自治体内分権(市民への権能付与)の推進
パートナーシップ(真の協働関係の確立)という考え方。市民を信用するということ。パートナーシップの成立要件は、@対等・平等である(命令・服従は駄目。実態としては市民の側に情報量の差がある。)A相互補完(行政は公平性の確保が行動原理であるのに対してボランティアは臨機応変で融通が利く、認め合うこと)B目的の共有(三鷹市の公園の住民による自主管理の例)

 A行政の専門能力の向上
さすがは行政のプロであるという点をのばす。素人ではできない仕事。その内容としては、@最新の理論・技術に精通している(職場の専門雑誌の目次の通読など)A市民意識、市民感覚に敏感であること(職員は2重人格になっていないか。職員と市民と)B政策法務能力の向上

 B行政の政策形成能力の向上
政策・施策・事業という分類で、政策・施策はより上の官庁で事業はより下の官庁でという流れがある。事業案―事業決定―事業実施―事業評価の中で、自治体は事業実施が中心になっている。決められたことを実施するという考えは、政策形成なき事業過程である。対して、現状分析―問題の把握―政策課題の設定―政策案―政策決定という流れが政策型政策形成である。この両者を別のものとして捉えるのではなく、連動させることが大事である。 

編集長のコメント
 
教授としては若いと思われる(50歳くらい?)行政学会に所属する同志社大学法学部教授の講演でした。
 地方自治を巡っては、ガバメントからガバナンスへ、という時代の流れがあって、行政が、非営利の団体と真の協働関係を築いて行くためには、行政側が、さすがは行政のプロといわれるような、政策形成能力をもった職員になることが要請されている。といった趣旨の講演だったと思います。
 行政が非営利団体と協働しているためのパートナーシップを多角的に把握して成立要件を説明されていたのが印象的でした。
 話としては、筋だっていてよく分かる内容でした。最後の政策形成能力とは、というところが本題だったかも知れませんが、時間の関係でかいつまんだ話になって、深くというわけにはいかなかったようでした。
 中核市に限らず、行政に求められている視点を示唆する話でした。

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