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この本の著者は上田精一氏。熊本の先生で、日本作文の会、映画センターなどの分野で活動されている。「映画好き少年」がそのまま大人になったようだ、と自己紹介されるように、教育に映画を取り入れていこうという姿勢で一貫しています。自らの教育実践、熊本での上映運動、平和遺跡を訪ねる旅の話、「チンパオの子牛」の映画が成立するいきさつ、演劇の教育実践など、ともに歩んだ道が綴られています。 紹介されている映画は沢山あります。列挙すると、「戦争と人間」、「ひめゆりの塔」「猫は生きている」「ライアンツーリーのうた」「川上哲治物語背番号16」「はだしのゲン」「ボクちゃんの戦場」「チンパオの子牛」「戦争と青春」などです。巻末には平和関係の映画リストがアニメも含めて紹介されています
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34 河上肇(21世紀に生きる思想) 鈴加藤周一・井上ひさし・杉原四郎・一海知義 著 かもがわ出版 2000年10月20日発行 1,800円 2000.11.23読了 | |
全体の構成は以下のとおりでした。 〇どれも興味深く読みましたが、個人的には加藤周一氏の講演が最も興味を惹かれました。特に思想(イデオロギー)を道具化しないということ。洋服のように着替えられる思想ではなく、手作りの思想が河上肇にあったという指摘は鋭いと思う。 河上肇を知るのに役立つ★★★★☆ 何れも第一人者の話★★★★☆ 話なので読みやすい★★★☆
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33 続・映画を読む 鈴木陽子 著 西田書店 2000年3月6日発行 1,300円 2000.11.18読了 | |
ここに収められたコラムは『女性ニュース』(全国婦人新聞社)に掲載されたものとあります。この新聞自身は知りませんが、女性から見た映画評という観点は掲載場所からしても、貫かれているのが納得できる内容です。 取り上げられている38本の映画は、いわゆるハリウッド映画は少数で、イランやインドやイギリスやフランスなどの余り見たことのない映画が多い。紹介の仕方も見開き2ページで1本の映画の紹介で、そこにコラムとともにスチール写真が一枚、映画の監督・脚本・キャストの紹介、テーマに関連する著名人からの本の内容の引用という構成。なかなか味がある構成です。 映画の紹介の仕方がしゃれている★★★★☆ コラムの切れ★★★☆☆ |
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32 どうする日本の政治 石川真澄・田中秀征・山口二郎 岩波ブックレット 2000年10月20日発行 440円 2000.11.15読了 | |
3人のうち、石川さんは1933年生で現在桜美林大学教授だそうです。私の意見に最も近い意見で、納得しながら読みました。特に、専攻の選挙学を駆使して、小選挙区制導入の大義といわれた「お金のかからない選挙」は消え、「政権交代が可能な状況」は逆に政権交代をなくしてしまったことを実証した部分は非常に説得力がありました。 それと森政権が認証されない理由を最初の成立から説くところもよく分かりました。今の課題は憲法改悪に必要な議員を生み出さないこと、と指摘されています。 小選挙区制は民意が最も反映されない★★★★☆ 比例代表制なら政権交代可能★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
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31 企業と人間 佐高信・小倉寛太郎 岩波ブックレット 2000年10月20日発行 440円 2000.11.13読了 | |
小倉さんがよく分かる★★★★☆ 意見に説得力がある★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
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30 映画をマクラに 上野 瞭 者 解放出版社 1999年7月20日発行 1,600円 2000.11.10読了 | |
同志社女子大学名誉教授で72歳の著者の映画評というのが気になって図書館で借りた本です。内容は40本の映画が自分流の解釈で紹介されています。なかなか味わいのある紹介です。そのうち26本が見た映画でしたので、案外ポピュラーなものを選んで批評しているようです。作品の出所がwowowというのも結構あって、微笑みました。 読んで映画が面白くなる★★★★☆ 批評が鋭い★★☆☆☆ 推薦度★★★☆☆ |
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29 有田あや 絵更紗抄 有田正三 編者 丸善(株) 出版サービスセンター 2000年10月15日発行 2,858円 2000.11.5読了 | |
「絵更紗」とは布地の模様で、独特の味わいのある色とかたちが形づくられています。以下はその解説です。 絵 更 紗 について
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28 ハリーポッターと賢者の石 J・ K ローリング著 静山社 1999年12月8日発行 462ページ 1900円 2000.10.24読了 | |
ベストセラー度★★★★★ 面白い内容★★★★☆ 続けて読みたい★★★★☆ 推薦度★★★★☆ |
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27 介護保険とボランティア 巡 静一著 かもがわブックレット 2000年8月10日発行 63ページ 571円 2000.9.24読了 | |
筆者は、介護保険導入の背景を @超高齢社会の到来、A家庭の福祉力。教育力の低下 の2点を指摘して、「介護の社会化」(介護を広く社会的に支えようとするもの)と捉えています。そこでは「退職後の20年間地域社会を中心にして暮らす」地域社会の支えあいの活動の重要性を説きます。 福祉の担い手として、著者の概念として「自助」(本人・家庭の頑張り)−「公助」(行政サービス・介護保険)−「共助」(地域住民ボランティア)−「償助」(有償サービス)の4つのポイントを紹介しています。ボランティアの位置の明確化のためです。特に、共助と公助の役割分担を強調しています。ボランティアを行政の肩代わりさせることはよくないが、介護保険の平等性・公平性に重点が置かれるのは公設の必然性とするとき、ボランティア無くして介護は成り立たないと言います。 関心の高いテーマ★★★★☆ 内容がよく分かった★★★☆☆ 説得力がある★★★☆☆ 推薦度★★★☆☆ |
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26 誰のための公共事業か 高橋ユリカ著 岩波ブックレット 2000年8月18日発行 63ページ 440円 2000.9.23読了 | |
公共事業の批判に対して先ず建設省が「川辺川ダム事業審議会」を1995年9月に発足。翌年の8月にはダム事業継続が答申されています。一方の農水省モ1998年3月に大型公共事業の「再評価システム」を閣議決定、九州農政局は1998年に第三者機関を設置して、同11月には「事業推進」を答申しています。結局再評価システムは、結局のところ、事業推進のお墨付き機関に成り下がっています。 2000.9.8にはこの利水裁判での一審判決が出ているとのこと。早速調べる必要があります。 関心の高いテーマ★★★★☆ 内容がよく分かった★★★★☆ よく調べている★★★☆☆ 推薦度★★★☆☆ |
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25 戦後文学放浪記 安岡章太郎著 岩波新書 2000年6月20日発行 213ページ 660円 2000.9.15読了 | |
著者は1920年生まれである。80歳。「戦中文学」、「第3の新人」時代と呼ばれていたらしい。昭和28年に芥川賞を受賞しています(「悪い仲間」と「陰気な愉しみ」)。何れも未読。吉行淳之介や遠藤周作などと同時代だそうです。というのはこの頃の文学もその歴史も全く疎いから分からないことだらけです。その意味でこの本が新鮮でした。全てが初耳だから。 関心の高いテーマ★☆☆☆☆ 面白く読めた★★☆☆☆ 文章が上手★★★★☆ 推薦度★★☆☆☆ |
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24 東京国税局査察部 立石勝規著 岩波新書 1999年2月22日発行 217ページ 660円 2000.8.22読了 | |
著者はジャーナリストで現毎日新聞論説副委員長の肩書きが示す通り、事件を追ったジャーナリストの立場から、日本で起こった巨大事件のうち8つを取り上げて、調査部の動きと相手の動き、それにジャーナリストが如何に記事にしたかの3つの観点から事件を追っています。特に私はルノワール絵画事件に興味があったので、そこから入って読み終えました。 関心の高いテーマ★★★★☆ 面白く読めた★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
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23 行政評価の時代 上山信一著 NTT出版 1998年3月30日発行 194ページ 2.300円 2000.8.16読了 | |
当世流行となっている感がする『行政評価』について、最初に取り上げた上山氏の著作と言うことで関心があって読みました 関心の高いテーマ★★★☆☆ 一応参考になった★★★☆☆ 推薦度★★☆☆☆ |
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22 科学事件 柴田鉄治著 岩波新書 2000年3月27日発行 194ページ 660円 2000.8.6読了 | |
ここに取り上げられているのは7つの最近の科学に関する事件です。いずれも身近な事件ばかり。 @脳死・臓器移植 A薬害エイズ B体外受精 C原子力 D水俣病 E大地震 Fクローン牛 の7テーマ。著者は朝日新聞社の元科学部長。振り返り検証する場合に、学会がどう対応したか、行政がどう対応したか、報道がどう対応したかの3つの側面からおっているのも本書の特徴。特に3番目の報道がどう報道したか、を自戒も含めて書いてあるのはジャーナリストならではだと思う。 興味深かったのは、薬害エイズ(行政が何もしなかったことが罪に問われた初めての事件)水俣病(学会はどう総括しているのかという批判) 脳死移植での最初のつまずきに対する学会の反省はあるか、大地震での予防予知の可能性に対する警鐘の指摘など。 どのテーマもコンパクトにまとめられていてよく分かります。 どれも関心の高いテーマ★★★★☆ コンパクトなまとめ★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
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21 週末の心優しい映画たち 秋元 康著 ぴあ 2000年3月25日発行 223ページ 1300円 2000.7.26読了 | |
非常に読みやすい本で、映画のスチールとビデオカバーの写真もちゃんとあって、コメントが軽快で、楽しめます。 著者の秋元康氏は、いままで知りませんでしたが、ついこの前封切りされた『川の流れのように』(森光子主演)の監督をした人で、美空ひばりの名歌となった同名の歌の作詞者ということです。 週末は一年に52回あるということで、全部で52本の映画を紹介してくれます。いずれも週末に家のテレビでビデオを借りてきてみる映画ということで、ビデオが手に入る映画が推薦されています。その映画の選び方に著者の好みが出るのですが、出来るだけ広く取ろうとはしています。 52本のうち数えてみたら、29本を鑑賞していました。5割5分くらいか。未見で本を読んでみたくなった映画をあげると、『ミッドナイト・エキスプレス1978米』『スティング1973米』『隣人は静かに笑う1998米』『ワイルドシングス1998米』の4本です。 見たい映画を探せます★★★★☆ コメントが軽快★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
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20 生活習慣病を防ぐ 香川靖雄著 岩波新書679 2000年6月20日発行 217ページ 700円 2000.7.18読了 | |
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19 NPOはやわかりQ&A 辻元清美他 岩波ブックレット 2000年6月20日発行 63ページ 440円 2000.7.15読了 | |
NPOの活躍する分野としては、保険・医療・福祉分野が最も多く、次いで環境保全、文化・芸術・スポーツ、町づくり、子どもの健全育成、国際協力など、幅広い。 なかなか親切な本で、あとは主なNPO組織のホームページアドレス、NPOに関する文献集なども揃っています。 読んでNPOのことが良く理解できる★★★★☆ 色々な角度からの資料提供があり使える★★★★☆ 推薦度★★★★☆ |
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18 家族と生きる意味 工藤律子 JULA出版局 2000年4月28日発行 72ページ 700円 2000.6.29読了 | |
工事中! | |
17 川田龍平とこの国の人権を考える 川田龍平と人権アクティビストの会 かもがわブックレット 1998年1月25日発行 62ページ 571円 2000.6.28読了 | |
ミドリ十字は例の731部隊関係者が設立したこと、エイズ予防薬を当のミドリ十字が販売し始めたこと、人権は事実を見つめ明らかにし行動することによって初めて見えてくること、人権と特権を一緒にすることはないのであってミドリ十字社長にも人権があるという主張はことを人権一般に解消することによって結局彼を免罪することになること、などいろいろ刺激的な議論が展開されています。 読みながら考えることができる★★★★☆ 納得できる内容★★★★☆ 推薦度★★★★☆ |
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16 小さな農場主の日記 玉村豊男著 講談社新書 2000.6.23読了 | |
結論からいうと、見事に裏切られました。年齢としては53歳で予想よりも若いのですが、本人はエッセイストで画家で、東京で店を持ち、日本全国、講演や取材、仕事で回っている人。いわゆる有名人でした。農場をやっているのは確かですが、人を雇って「経営」しているのです。それで小さな農場主と、主がついているのです。普通は個人事業主を想像するのですが、この場合は、経営者。多少、土にまみれているのは確かですが、全国を駆けめぐっていて農業を維持することは非常に難しいと思う。 おさわり程度の農業体験?。 本人が自分の力で農業を切り開いている、そうした農場での苦労話中心の日記という内容を期待して見事に裏切られた本でした。エッセイや食の話なら、そのタイトルで書いて欲しい。読まないから。 楽しんで読める★☆☆☆☆ タイトルに偽り★★★★☆ 推薦度☆☆☆☆☆
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15 淀川長治、黒澤明を語る。 淀川長治 河出書房新社 1999年6月15日発行 253P \1600 2000.6.20(火)読了 | |
対談は1952年の「ロサンゼルスでの羅生門の反響」から、「サヨナラ、サヨナラ黒澤明さん」の1998年まで、実に48年間が包含された対談集です。最初の方の対談は特に、第一回作品である姿三四郎や羅生門、虎の尾を踏む男達、醜聞などの初期の作品の当時の評価や、監督の思いなどがよく伝わってきて、大変に興味深い。最近のベルリンやカンヌなどで受賞した日本映画に対する評価と比較すると、当時のベネチアにおける羅生門に対する評価がアメリカとヨーロッパの両方で本当に凄かったのだ、とつくづく思います。 黒澤監督は生涯に30本の映画を撮りました。映画の危機が言われるようになってからは、本当に寡作で、5年に1本の割でしか撮っていません。日本の文化状況が監督の才能を放置したことが大変残念でなりません。 黒澤明の口から語られている言葉の中で印象に残った言葉。「映画は球形、あるいは多面体のようなものだ。どの面からも観察できる。高級な鑑賞は高級なりの切り口で語り、鑑賞できるし、一方、入門者はまた入門者なりの楽しみ方が当然にできるというふうに。」 楽しんで読める★★★★☆ 黒澤映画がよく分かる★★★★☆ 推薦度★★★★☆ |
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14 おしゃべりなランナー 増田明美 リヨン社 1997年12月25日発行 226P \1500 2000.6.14(水)読了 | |
著者は自我が強烈に強いことが行間に出ています。マラソンランナーとしては素質の一つかも知れないが社会人としてはとても及第点はもらえないと思う。大学を中退して、アメリカの大学へ留学するくだりは何かことが簡単に運びすぎて、有名人だから、と思ってしまう。この辺は未だ甘いと思う。 もう少し、著者の人となりが背伸びしたものでなく、自然体であってほしいとおもうことしきりの本です。 早く読める★★★★☆ 散文的★★★★☆ 推薦度★☆☆☆☆ |
非常にタイムリーな企画の本だったので、思わず手にとって読むことになった本です。 本の資料編のところに日本銀行協会と東京都主税局との論争が両者の主張を並べる形で紹介されていてよく分かります。著者は外形課税が正当であるという立場から、安定した財源であること、応益原則の課税であること、地方自治・分権と財政基盤の強化は表裏一体、等の点を上げて論陣を張っています。法人事業税とはどんなものかについても概説があります。 理解が進む★★★★☆ 論点の整理が上手★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
著者は昭和3年生まれのサイコセラピスト(心理療法士)です。プロ以外の映画解説では今まで読んだ中では最も高齢者だと言うことで、映画に関する感性が私と一緒かどうかということの興味もあって手にした書物です。 取り上げられている映画は全部で9本。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『タイタニック』『マイ・ライフ』『陽のあたる教室』『フォレストガンプ/一期一会』『晩秋』『マイルーム』『ドクター』『シャイン』。晩秋とドクター以外は見ている映画で内容を確認しながらよむことが出来ました。 どの解説も映画の要約をしながら登場人物の心の有り様や心理、気持ちの高揚などを興味深く述べています。私的な主人公への傾斜度からいうと、『グット・ウィル』『陽の当たる教室』『シャイン』がベスト3です。 楽しめ度★★★★☆ 映画がよく分かる★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
5月 |
著者は1960年生まれの若手である。金融アナリストという職業にかっていた人である。 彼女はこの10年の銀行の歩みをともに観察してきて、今後予想される「激動」の5年間へ、銀行(メガバンク)に対して警鐘を鳴らしているのが本書である。論旨は明快ではっきりしている。 目次は以下のとおりである。序 銀行の概念が変わる 1章 国産メガバンク誕生の背景 2章 金融不安は終わっていない 3章 米銀の再編と日本の再編 4章国産メガバンクは成功するか 5章 既存銀行を揺さぶる「コンビニバンキング」 6章 電子マネーは金融をどう変えるか あとがき 論旨の大要は、みずほ・住友/さくら・三和/東海/あさひ・東京三菱の4大メガバンクは市場圧力と金融行政当局と銀行当事者の思惑の3つが重なって生まれたものだ。銀行は99年から2002年までの4年間にあと5兆5000億円の不良債権処理が必要とされているが、著者の試算では16兆円となり、約3倍になる。米国の場合、1976年頃から約15年かけてリストラを実施して小売りサービス業へ転換を図ってきたが、日本は2〜3年の短期間が求められている、それは可能か。そして、今新しい波がある。異業種の銀行業への参入であり、コンビニバンキングの広がりであり、ICカード・電子マネーの登場である。銀行が生き残りためには思い切った対応が迫られている。 銀行業がどうなっていくか、確かに先行き不透明だが、はっきりしているのは、お金の流れが激変するということ。リアルネットではコンビニのATMが中心となって登場するだろうし、バーシャルネットでは、電子商取引と電子マネーが将来を大きく変える可能性を持っている。そうした中で銀行業の将来を占うのは難しい。著者はアメリカを例に、小売サービス業への転換を説く。 主張の明快さ★★★★☆ 突っ込み具合と時事性★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
(週一コラムに読後感想を載せましたので転記します)
主張の明快さ★★★★☆ 突っ込み具合と時事性★★★★☆ 推薦度★★★★☆ |
この本の3が意外と(?)面白かったので、2を図書館から借りてきて読了しました。彼(彼女?)の映画評は必ず今の自分の状態から入って行きます。今週の殺人的スケジュールとか、風邪をひいてしまったこととか、そして話題の映画評へ。そこで取り上げる映画はその時期で、最もよいと思った映画か、話題となっている映画のようで、批判よりも良いところを見つけて評価する文章を多くしています。丁度覚えている程度の古さの映画で随分と参考になります。 評論の対象となっている映画は、フォレストガンプ・告発・レオン・クイズショウ・サスペリーナ・フォーウエディング・トウルーライズ・ペリカン文書・シンドラーのリスト・ピアノレッスン・さらば我が愛・めぐり逢えたら・クリフハンガー・リバーランズスルーイット・ボデーガード・ユニバーサルソルジャー・エイリアン3・シティオブジョイ・などです。読んで見たいと思うでしょう。 面白さ★★★★☆ 主張の明快さ★★★☆☆ 意見の一致度★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
3月 |
あとがきによると雑誌『世界』に連載されたもので、1955年〜1976年までを扱った『現代<死語>ノート』の続編にあたる。1977年から1999年まで、丁度私が結婚した年から現在までを扱っている。ボーナスで1945年から1955年までも載っていて、二冊で戦後55年を網羅していることになる。著者が<死語><半死半生語>と判断する単語が約400紹介されている。そして関連する人名がざっと450名。それだけでもスゴイのにその言葉の解説が歯切れが良くて面白い。現代に近いところだということもあって、全体の約9割くらいは聞いただけで単語の意味が分かった。 時代の中で言葉が流行し、それがいつの間にか消えていったのが沢山あるのに驚いた。作者はメモなどして覚えていたのだろうか。選択の眼が鋭い。例題を以下に。冬彦さん(1992)、カウチポテト族(1987) 、ティラミス(1990)、ジベタリアン(1999)、ランバダ(1990)など。すぐには思い出せないのは横文字が多い。作者の時流に対する批評が明確で、気軽に読める一冊です。 面白さ★★★☆☆ 難易度★☆☆☆☆ 主張の明快さ★★★☆☆ 推薦度★★★☆☆ |
永六輔さんの岩波新書『大往生』が大ヒットして、シリーズのようにその後『二度目の大往生』『職人』『芸人』『商人』と発売されて、いずれもよく読まれているようです。今回は『夫と妻』『親と子』が発売されました。夫と妻のほうの感想ですが、非常に気楽に一気に読むことができました。永六輔さんは常に旅人であり、ストーリーテラーであると思う。その口調がそのまま綴られた本です。その中で印象的だったのは、辛淑玉さん、中山千夏さんとの対談、それに淡谷のり子さんのエピソード、お寺での説法でした。永さんのように旅暮らしをしている夫を永さんの奥さんはどう見ているのだろう、という関心があったが、それに応えてくれたのが「あとがき」の部分。奥さんの幸せは掃除と読書というのがいい。本に書くに当たって、ごく普通に生きている奥さんという当たり前の評価が良いのであって、特別扱いして欲しくないと念を押された様子が書かれています。 面白さ★★★★☆ 難易度★☆☆☆☆ 主張の明快さ★★★☆☆ 推薦度★★★☆☆ |
待望の『沈まぬ太陽』が手に入りました。1〜5まで楽しみに読んでいきます。今日は先ず1のアフリカ篇上。某大学からエリートで半官半民の航空会社に就職した主人公恩地元は、たまたま労働組合の委員長になる。一期の約束で引き受け、正義感から賃金と待遇の改善を求めて団体交渉を進めていく。それが2期になり、ストライキを打つまでになると、会社側はパキスタンのカラチへの勤務を命ずる。2年で帰る慣習は破られ、次はイランのテヘランへ。会社側のこれでもか、の仕打ちと闘う主人公。 週刊誌に連載されている間、某航空会社は機内にその週刊誌を置かなかったという話がついているまで、綿密な取材で書かれた骨太の大河小説である。昨年のベストセラーを遅ればせながら読み進んでいるところです。 面白さ★★★★☆ 物語性★★★★☆ エンターテイメント★★★☆☆ 推薦度★★★★☆ |
4月 |
著者は今が二期目の宮城県知事です。1948年仙台生まれで、東大法学部から厚生省入りしたキャリアが、職を投げうって無所属で知事選挙に立候補、見事に当選を果たしたという筋書きがあって、厚生省の老人福祉課長補佐だったことろから「障害福祉の仕事はライフワーク」だから本のタイトル通りになったということ。本の内容は「現代社会保険」という月刊誌に書いた随筆と、「福祉新聞」に連載した随筆とを集めたとはしがきにあります。 いずれも方の凝らない読み物です。気さくな人柄がよく出ています。ジョギング知事らしく、都道府県駅伝の最終ランナーは各県の知事が走ることに規約を変えたらどうかという提案もあります。県の情報公開でトップを走っているのも宮城県だと思う。仙台オンブズマンの活動も全国的に有名だが。 飾らない言葉で書かれた本音に好感が持てました。 面白さ★★★☆☆ 物語性★★★☆☆ 主張の明快さ★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
映画評論家の映画解説を読むのも好きで今までは淀川長治さんの本が多かった。今回はおすぎさん。登場する映画が1995年から1998年なので、未だちょっと前に見た映画、ということでよく思い出すことができます。彼は1945年生まれで、50才半ば。評論も少し古い映画との比較が多くなったりして丸くなって来ています。マディソン郡の橋・shall we ダンス?・セブン・ベイブ・いつか晴れた日に・ツイスター・ゴースト/ニューヨークの幻・ザファン・シャイン・イングリッシュペイジェント・目撃・ロストワールド・もののけ姫・コンエアー・タイタニック・スポーン・フェイスオフ・ビヨンドサイレンス・モンタナの風に吹かれて・プライベイトライアン・ジョーブラックをよろしくなど。対象となっている映画のタイトルを聞いただけでも一度は読んでみたいと思いませんか。通勤電車の中で一気に読みました。彼の映画を見る目が楽しい。気楽に読めてウンウンと納得できます。 面白さ★★★★☆ 物語性★★☆☆☆ 主張の明快さ★★★★☆ 推薦度★★★★☆ |
テヘランへ飛ばされた恩地元の次の就任地はアフリカ・ケニヤのナイロビだった。度重なる僻地でのたらい回し。爆発しそうになるが狩りをすることで気持ちを抑える。辞表は相手の思うツボ。第2組合の結成と第1組合員への差別待遇が知らされるが、第1組合員の頑張りに応える為にも負けられないと、決意を新たにする。このナイロビの日本人一人の事務所で4年4ヶ月を迎える。会社の拡大路線は安全軽視につながり、事故が連続して発生する。あたかも御鷹巣山の惨劇の序曲のように。経営者の組合敵視の不当労働行為は国会で取り上げられ、テレビのニュースとなり、都労委での証人尋問となるに及んで、ついに恩地は本社勤務のテレックスを受け取る。実に9年4ヶ月ぶりの日本であった。 非常に迫力ある筆致で丁寧にディテイルされた中を恩地が苦悩と固い意志に揺れながら過ごすアフリカ篇でした。余り早く読み進むのではなく、ゆっくりと味わいながら読んでいます。第2組合の結成と第1組合敵視、経営者の動きとマッチした生臭い話が臆面もなく語られるところがこの小説のスゴイところです。取材に裏付けされているのか、説得力があります。次は、3篇・御巣鷹巣です。 面白さ★★★★☆ 物語性★★★★☆ エンターテイメント★★★☆☆ 推薦度★★★★☆ |
日本経済新聞の最終ページに『私の履歴書』という欄があります。各界の著名人が連載自伝を掲載しています。この『へたも絵のうち』は昭和46年(1972年)にこの欄に連載されたとありました。随分と長く続いているのだな、と先ずは感心。最近では『笠智衆』さんのが印象に残っています。 画家の熊谷守一さんは明治13年(1880年)に岐阜県恵那郡付知村生まれである、というところに興味を持ちました。随分と前になりますが、岐阜県の中津川市を車で走っていたとき、確か『郷土の画家・熊谷守一記念館』という看板を見かけて、ああ、こんなところから画家がでているんだ、と発見したことがありました。その画家がこの本に取り上げられていたということ。付知村生まれとはいえ、岐阜市の初代市長の3男であったからこそ、当時の東京美術学校へんぼ入学ができたと思う。 絵そのままに自然に生きた画家が恵那地方から輩出された、ということだけでも嬉しい。(編集長も実は恵那市出身なのです。) 面白さ★★★☆☆ 人物度★★★★☆ 絵の楽しさ★★★★☆ 推薦度★★★☆☆ |
第3篇は、日本航空が起こした最大の航空機事故であるジャンボ747機が群馬県の御巣鷹山に衝突炎上して520名もの命を奪った事故に取材してドキュメント風に展開しています。 遭難・捜索・発見・救出・弔い・その後と、アフリカから帰国して名ばかりの部長職だった恩地は『お客様係』として、遺族の世話係に任じられ、群馬・大阪と帰宅できない日々を過ごす。恩地の感情はまっすぐで曇りがない。経営陣の対応との比較。圧巻はそれにも増して、やっぱり、圧倒的な520名という数である。描いても描いても尽くせない一人ひとりの思いを群像風に追っていく筆致で迫っています。『起こりべくして起きた人災か』という問いは、重く全体を覆っています。 補償問題の交渉を任せられる恩地たちが直接遺族と接して発せられる言葉に、「安全運航」という絶対的な信頼を裏切った絶望感が込められています。二度と起こさないようにするための確認を求める遺族。組合が4つに分裂させられていることも少しだけ触れられています。 社長以下の経営陣の交代で、再建をめざす物語はいよいよ佳境に入っていきます。 物語性★★★★☆ エンターテイメント★★★☆☆ 推薦度★★★★☆ |