大きな窓が気に入っていた。
キッチンに朝日が射すという理由だけで私はこの部屋を選んだ。
ベランダの緑と生成りのエプロンは、太陽の光ととても相性がいい。
ハーブたちは喜んで増え続け、毎朝私を待っている。
早起きをし始めたのは、少しあたたかくて少し眩しいここから見える
サンライズのおかげ。
思いきり外で深呼吸のできるおいしい朝に顔がほころぶ・・・。
紅茶で染めたテーブルクロスを広げ、朝摘みのレモンバーベナに
熱い御湯を注いで抽出を待つ。
カットの多いガラスの一輪挿しが小気味よく光を散らせて、
朝食の白い皿やミネラルシャワーを浴びたサラダ菜を演出してくれる。
採れたてのプチトマトは氷で冷やす事にしよう。
器を覆う水滴が更に輝きを増すに違いない。
愛しのキッチンはディナー時よりも活気づいていく――。
やっと手に入れた、私だけの空間。
やっと手に入れた理想の朝・・・
彼を・・起こす時間だ・・・。
私は決して友哉を揺り動かしたり、無情な目覚ましのベル音を
聞かせたりは
しない。
午前7時に不機嫌な顔をしている男を、愛したいとは思わないから――。
カーテンが開かれるレールの音から始まって、歩くスリッパの音、
皿が擦り合う音、お茶を立てる音、ガスレンジのスイッチの音、
果物を砕くミキサーの音。
そうやって友哉の寝返りをさりげなく誘う。
“ ん ・・ ん・・・ ”
喉の奥から漏れてくる友哉の甘い声が聞こえたら、フライパンに卵を落とす。
サラダ油よりバターを使うのは、音がやさしくなるから・・・。
「おはよう・・・」
朝の友哉はとても Sexy だ。
ベッドの中から両手を広げて濡れた瞳で視線を絡めてくる。
「おはよ・・・」
朝食が冷める覚悟で友哉の両手を受けにいく。
友哉は 朝も 抱きしめることを 忘れない。
軽いHugの後、キッチンに戻ろうとすると、MDがONになった。
昨夜セットしておいたアルジャロウは、今朝の友哉にとても響いたようで
一度離したはずの身体をもう一度引き寄せられた。
「どした?」
「・・・ 懐かしすぎる ・・・」
「つきあおっか?」
入り混じる朝の香りに扉をしめて、私は私の知らない友哉の思い出の中に
同化していた。
過去も含めて 友哉を愛している。
だけどもう、結婚は二度としない。
<まりんの処方>
「結婚」という言葉に反応しているうちは、「結婚」が問題です。
せっかく自分のライフワークを手に入れたのだから
一旦結婚を手放して、ただ楽しむというのは
どうでしょう?
「結婚をしたい」という執着も辛いですが、
「結婚をしない」という執着も辛いものです
自分が何に向かい、今すべきことは何かを
ちゃんとわかっていれば、
否定的な発言はあまり出ないもの
信頼関係の上で嫉妬や不安を越えているのなら
いいパートナーシップの築きですが、
諦めからの嫉妬や不安の蓋は
いつか必ず感情に歪みが出ます
結局パートナーは自分の鏡ですから、平穏な心で接すれば
平穏となって返ってくるだけのこと。
毎朝、“不機嫌ではない男”をつくるのはあなたです。
お勧めエッセンスはエンジェルソード/マウンテンデビル
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