BY 月華美心  
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「19かぁ・・ いいよなあ・・」
彼は本当に羨ましそうに煙草に火を点けながら言った。
「でね、地下鉄を降りて地上に上がるでしょ?そしたらもう北か南かわかんなくなってぇ―・・」
体中で話をすると恭輔さんの顔がやさしくゆるんだ。

私は男に可愛がられる術を知っていた。
透明なうさぎや小熊の着ぐるみを着て遊園地に招き入れればいいだけだ。
こんな調子で学生の頃からモテたし、会社に入ってからも
結構言い寄られていた。
だけど言い寄ってきた男達に一人たりともOKの返事をしたことはない。
私は醒めていた。何も信じていなかった。そして怒っていた。

“ どこ見てんのサ!!”  って・・・。

寂しかった・・・いつも。   
いつも  いつも  いつも  いつも。

私を選ばないだろう男を好きになった。
私を選ばないなんて見る目がある。私は選ばれなくて当然な女なのだから。

恭輔さんは今までの男とは違っていた。
どんな男性でも私の遊園地で楽しく遊ぶのに、
恭輔さんはチケットを手にしながら、入り口の外で震えていた。
楽しみ方を知らない。楽しみを恐れていた。
彼に無邪気さは通用しない。多分私の態度は痛いに違いない。
彼もまた醒めていた。何も信じていなかった。そして怒っていた。
私は若さを武器にうさぎの着ぐるみを着たまま、園の内で踊り続けた。

「ジュースばかりでつまんない。カクテルぐらい・・いい?」
「ダメだよ。酔っちゃうよともちゃん。」
「恭輔さんに介抱してもらうも〜ん。」

きっと人を愛した事のない、あるいは愛せない恭輔さんを誘惑するのに
罪悪感はなかった。
でも、律儀な恭輔さんはうさぎが二十歳になるまで大切に扱ってくれた。

30前の男達は、どうやってかっこいいサムライになろうか城の中で
考えあぐねているらしい。
恭輔さんは苦しんでいた。
城を持ち、組織の長になり、人望も厚く戦いには必ず勝つ、
誰が見ても成功を納めたかっこいいサムライに違いないのに苦しんでいた。

私は泣き叫んでいる恭輔さんを見逃さなかった。
助けたいと思った。
もう彼の回りで飛びはねてばかりもいられない。
彼を愛したい。優しく抱きしめてあげたい。繋がりたい。
しかし、私は肝心な愛を・・・持っていなかった。

成人式の夜・・・
私は振袖のまま恭輔さんのマンションに直行した。
私達は幼い頃から持っている孤独や欠乏感、暗闇の中に居続ける恐怖を
十分理解しあっていた。
その日、恭輔さんは・・・私を抱かなかった。
私が・・・抱いた。

意思を通いあわせる方法が私には3つある。
言葉。瞳。そして・・・肌。
彼の痛みが予想以上に大きなものだと、私はその夜 肌で識った。
切なさと虚しさの波がただ ただ何度もやって来て、彼を助ける事など
到底無力な自分と向き合っていた。

私は何を手に入れたいのだろう? 何に飢えているんだろう?
彼が私を愛し始めそうでとても恐くなっていた。

逃げ道がなくならないうちに 私は他の男を作った。
急かされるように浮気をして悪者になった。 なんて心地良いんだろう。
私を選ばないで欲しい。こんな女を愛さないで欲しい。
三角関係は私の中でベストなバランスを保っていたけれど、
何処へも運んでいってはくれなかった。

私が進まないことで犠牲者が二人。
助けたかったはずの二人。

沼の側でずっと考えていた。

助けて欲しいのは・・・私だ。

 

 

<まりんの処方>

自らの価値を認めることが出来ない女性(無価値観を持つ女性)は
自分自身を責めている男性(罪悪感を持つ男性)を助ける事で
それを“愛”だと勘違いしがちです。
これは、ほとんどの場合“愛”ではありません。補償です。
自分には価値などないと思っている女性は、
人を助ける事で“お役に立てました。あ〜良かった。”と、
ほっとするだけで相手に対する思いやりというより、
自分の人助けという役割に満足しているだけ。
その証拠に相手が自分に向き合い、近づいてこようとすると
受け取れずにたちまち逃げ出します。
自分自身のコントロールがきかなくなるからです。
真実の愛を学ぶ為、若いうちにこんなプロセスを踏むのはけっこうですが、
いつまでも同じパターンを繰り返し年ばかり重ねてしまうのは
いかがなものでしょう…。

お勧めエッセンスはフィロセカ/スタート・デザート・ローズ
スタート・デザート・ピー

まずは愛を受け入れる準備を!

 

 

 

 
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