成年後見制度と任意後見制度

記号 成年後見制度と任意後見制度

  成年後見制度が始まる前から興味をもち勉強をしてきました。
そして説明会も数多く実施してきました。
しかし、この制度にもう一つ判らない、何か壁が感じられてなりませんでした。
そのおり、地元の説明会開催の後、ひとりの高齢女性の方より質問がありました。

「私達高齢者には素晴らしい法律と言うことは理解できましたが、それだけです」
「もう少し小人数で時間をかけて、教えて下さい」と言われました。

 それから3年間勉強会を実施し、やっと今年の3月にその方が任意後見制度の契約
を結ぶことができました。その経過を書いてみたいと思います。
法定後見人(親族後見人)からの質問もいろいろとあり併せて述べてみます。

 1・成年後見制度と任意後見制度

  説明会は月に1回ということで始まりました。 当初は、時間の半分を世間話、
残りを成年後見制度の話をして、素晴らしいとは言ってくれましたが、その翌月には
また最初から制度の説明から話が始まります。
参加者の平均年齢は、70歳後半で1人で生活している人々でした。
  成年後見制度の説明の前にジェロントロジーのこころを大切にする必要性を感じ、
参加者の話を聴く、参加者と信頼関係の構築が大切なことに気づきました。
(Gerontologyとはをご参照)
  高齢者が必要としている成年後見制度で最も大切なことは安心感であり、お互い
の信頼関係が確立されていることが大切なことです。
(任意後見制度) ジェロントロジーは、高齢者に関する全ての現象を加齢と併せて
考えることですが、 これらを法律と併せて考える場合には余りにも広範囲であり、
1人では到底無理 と気づきました。
  勉強を進めているうちに当然に私が、任意後見受任者になるものと皆様は考えてい
たようでした。私自身が考える成年後見人には私自身が適応していない旨伝えると
10人位から5人と半分の参加者になってしまいました。
 任意後見契約までの経過を述べてみます

2・任意後見制度を利用するために最初に行なったこと

  参加者の皆様がこれから年を取ると何が一番心配であり、何をしてもらえば安心
か一人一人に書き出してもらいました。

 イ) 認知症になったらどうしょう
  認知症の心配が一番に出てきました。認知症になったら何が心配ですかとの
  質問には、中々答えがでてきませんでしたが、これらから認知症とは病気であり
  そんなに恥かしい事ではない、成年後見制度など勉強する人は認知症にはなり
  にくいなど介護予防の話がしばらくつづきました。  具体的にでてきたことは
  @財産管理 A日常生活について B病気や怪我をしたとき 
  C相続 D自分のお墓の心配 E終末ケアなどなど。
  これらの希望事項を叶えてくれる人はどのような人がよいのでしょうか。
 
 ロ)任意後見受任者について
  任意後見受任者について、皆様と話合っていますと、「好き・好意」と「信頼」
  を同じものと考えていることでした。一般的に、好きであってもその人を信頼
  できるかどうか難しい問題があります。  私流に説明した要点は、


 @ 成年後見制度の知識がある程度あるかどうか。理解しているか。
 A 任意後見受任者になろうとする人は高齢者を理解しているかどうか 
 B 人間的に信頼できるかどうか。好きと嫌いを混合しないこと 
 C ある程度年齢差があること 
どちらが先に認知症になるかどうか判らない年齢差は心配
 D 住居がある程度近くで緊急時に対応できるかどうか
 E 金銭的に綺麗かどうか。
もし不正を働いた場合に金銭的な保証能力があるかどうか

 ハ)任意後見制度で最も説明に要した用語

 @ 事実行為と法律行為・・ホームヘルパーのようなことはしてくれないし受任者
   はそこまでする義務はないこと。しかしそれら生活に必要なことについての手配
  と契約通りに実施されているか、監視はされること。
 A 代理権・同意権・取消権の説明。
  特に任意後見人には同意権と取消権がないこと 。あまり狭い範囲の契約を結ぶと
  将来的に後見人の権限が及ばないことがありよく考えて代理権を契約しておくこ
  とが大切。(詐欺商法など)
 
 二)任意後見候補予定者の検討 
  上記条件にできるだけ満たせる人探しに着手。
   結論はリーガルサポート(司法書士会)の司法書士にお願いすることになりました
  が、多くの司法書士や専門家と言われる人々とお会いしお話しを聴きました。



 高齢者の皆様が、「先生のおっしゃる通り」にならないように、自分の意思を
 表現できる人にめぐり合うまで、約2年間を要しました。
 このような専門家と当事者である高齢者が会い、その印象と相性を確かめあい
 ました。それらをリードし納得のゆくまで話合いをしました。
  (リーガルサポート兵庫は保険に加入している)


 ホ)契約書の内容について
  任意後見契約の原案ができた時点で原案を元に二人で検討会を始め、納得ができた
 時点で私の役目はお仕舞いとなり、任意後見受任者と依頼高齢者の当事者同士で
 契約を結ぶことになりました。契約としては一般的な内容です。  


 契約の中で次ぎの条項に最も “注意”するように高齢者には話すと共にその
  契約が発効する場合には私に報告するように言ってあります。


 契約条項 「判断能力は、正常である場合でも身体が不自由になった場合には
       委任契約を」


  大切なことではありますが、この場合には家庭裁判所が関与しないために間違い
  が多くあるのです。

3. 任意後見制度の形態 

@ 将来型  最も一般的で現在の判断能力が正常なうちに将来を考えて契約を結び 
(公正証書)判断能力が衰えた場合に家庭裁判所に監督人をつけてもらうもの

A 即効型  私には良く判らない型であり、今すぐに効力が発生するのであれば法定
後見の筈。 公証役場の公証人は、契約者が判断能力が正常かどうか見分けることがで
きないのだろうか。

  あまりお薦めではない。

B 移行型  委任契約と任意後見契約を同時に結ぶもの。
委任契約の間は監督人がついないために、委任受任者の不正を見抜くことが難しい。


  任意後見契約の中の委任条項には特に注意を要する。

4・法定後見人からの質問(親族後見人)

  @ 成年後見人になった場合に直ぐやること
  A 被後見人の預貯金の管理方法 
  B 相続財産の事務処理や方法は・・相続人が何処にいるか判らないような場合
  C 保証人の問題
  D 被後見人が現在施設にいる。留守中に家の中を調べたいがいいかどうか。
  E リバースモーゲージの問題
 その他、後見人としての難しさ、大変さなど話を聴くことがよくあります。
 1人の人を幸せにすることの大変さ、難しさが痛いほどに感じられます。
 これから成年後見制度に興味をもち勉強される方は、ぜひとも高齢者心理、
 ジェロントロジーを勉強して欲しいものです。

  これから成年後見制度について一緒に勉強したい方協力し合いませんか、
 メールをお待ちしています。

                    シニア ライフ アドバイザー 岡島貞雄



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