成年後見制度と介護予防 その1

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マーク  はじめに

 成年後見制度と介護予防の関連性について話しますと「何故、法律と介護予防ですか」
と殆どの方に問い直されます。私は法律とは人々の幸せの為に創られたものと考えています。
成年後見制度は、判断能力が定かでない高齢者や知的障がい者の自立と尊厳を,そして幸せを
目的にして利用するものと考えています。
 そうであれば成年後見制度と介護予防は接点があり、上手に利用することが大切です。
  
マーク 1)成年後見制度と介護保険制度の共通点

 イ) 2000年4月に同時に施行されたこと
   成年後見制度と介護保険制度は2000年4月に同時に施行しました。
 これは偶然とは思っていません。介護保険制度は、それまでの行政の措置から契約の社会
 となり、一人一人が自分の意思で情報を取得し、自己責任の基に契約することが求められ
 る社会となったということです。
 自分で決める、自分の意思で契約することは非常に素晴らしいことですが、介護保険を利
 用する必要がある方が、自分で情報を集めて自分の意思で契約できるでしょうか。

 契約には自己責任が問われます。特に判断能力が定かでない人・認知症の方が自分に不利
 にならないような契約ができるでしょうか。正式な契約をする為には当事者で契約するか、
 法的な代理人が契約する必要があります。判断能力が定かでない方が契約したとしても
 サービスが契約通りに実行されているかどうかを判断することが可能でしょうか。
 判断能力が定かでない方々の生活を守るためにできた介護保険制度ですが、それが正しく
 守れないと言うことでは何のための法律と言うのでしょうか。
 認知症の方、知的障がいの方がこれらの法律を利用し、自立した日常を送る為に同時に
 施行されたと考えています。
 
 ロ) 両制度とも可能ならば利用しないことが一番
  両制度とも利用しなくて一生送ることができれば最高の幸せと言えるのではないでしょう
 か。そのためには生活習慣の改善が大切なことは言うまでもありません。

  私が、お世話し任意後見契約した方々は成年後見制度を勉強することで知識が豊富にな
 り、自分で考えることが多く非常に元気です。成年後見制度は、その法律そのもより関連
 した法律など多くの勉強が必要です。例えば、遺言書・相続の問題・自分の終の住処の問
 題など自分の老いについて考え、準備しておくことが大切です。
  これら自分の老いを考えるいい機会とも言えます。
 自分の老いを素晴らしい完成期とすることができるか、自分の人生の老いをさみしい日々
 にするかどうかは成年後見制度と介護保険制度の勉強をすることにより自分の意思を人生
 で実行できるものと考えています。両制度とも利用しなくてもいい老いを過ごしたいもの
 です。

 ハ) 理念が非常によく似ていること
  成年後見制度の理念は、「残存能力の活用」「自己決定の尊重」「ノーマライゼーション」
 「身上配慮義務」とされています。
 これらは何処かで聴いたことがある言葉です。北欧の福祉三原則によく似ているのです。

 認知症予防には、残存能力を可能な限り活用し、自分のことは自分で決めることだと考えて
 います。自分のできることは自分ですることが最高の認知症予防と考えます。
 そしてノーマライゼーションです。特別な生活でなく社会の一員として日常を過ごすこと。
 現実には支援者が全てしてしまう(時間がないということで)。認知症の方や知的障がい
 者の方の判断を待つことなく支援者の考えで決めてしまっている場面が多々あります。
  成年後見制度の理念を丁寧に実行すれば認知症予防に大きく効果があると考えます。

 二) 両制度とも相手を思い遣るこころが最も大切なこと。
 成年後見制度は、責務として身上配慮義務が謳われています。本人(被後見人等)の心身の
 状態及び生活の状況に配慮し、穏やかで安心なそして尊厳が守られるように常日頃から、
 気配りすると言うことです。これらは介護保険制度でも同じと思います。

 成年後見制度でこれらを実行できれば認知症の進行も緩やかになることでしょう。又、
 知的障がいの方も社会の一員として日常を過ごすことができるのではないでしょうか。
 上手に成年後見制度を利用することは認知症の予防につながると思っています。

  法定後見の後見類型は、できるだけ現状維持をすることが認知症の予防と考えています。
 また、保佐類型・補助類型の方は、症状が快復する見込みもあります。
 老人福祉施設では、介護職員のケアーで快方に向かっている方をよく見かけます。
 しかしそれらは、施設に任せきりにせず、施設と家族の素晴らしい協力があってこそです。
 家族を後見人等と置き換えてみて下さい。法的な後見人等は客観的にケアすることができ
 ますし、施設職員とカンファレンス会議等を持ち、利用者本人が快方に向かっている状況
 を観ることがあります。
  成年後見制度も介護保険制度も相手を思い遣るこころが最も大切ということです。

マーク 2) 成年後見制度と認知症予防の事例

 1. 任意後見契約と介護予防
  成年後見制度には、法定後見と任意後見があります。
 任意後見の契約をお手伝いしたことがあります。70歳代後半の方と80歳代の方でした。
 先ず、成年後見制度の勉強から始めました。大変でしたと話していますが、独居高齢者に
 とって月に1回ないし2回の勉強会は、話ができたことが一番楽しかったとのことです。
  契約まで3年かかりましたが、その間には、老人施設の見学、任意後見受任者との話し
 あい、自分の将来についての考え方、遺言書等多くのことを考えながら進めてきました。
 皆様本当に元気です。この調子ですと、任意後見契約を実行する必要がないと思われます。
 契約後は、受任者との面談もあります。今まで一人で会話さえままならない状況から多く
 の方々と会話ができるようになりました。

  任意後見制度は、自分の信頼できる人に自分が将来認知症を病んだ場合に支援してもら
 うことに付いて、前もって契約するものであり、保険みたいなものです。
 契約後は、受任者との間で訪問回数を決めて面談します。

  2.  法定後見で介護施設職員と協力関係で現状維持が続き元気になっている方
  特別養護老人ホームでは、利用者の家族は施設に「お世話になっている」感覚が強くて
  なかなか自分(利用者)の希望を施設側に伝えることができないとの話をよく聞きます。
 法的後見人は、客観的に利用者と施設を結びつけ利用者にとって「何が必要なのか」を話
 しやすいと考えます。また、利用者の家族は愛情が強すぎて一方的な視点が強く出るよう
 ですが、冷静に客観性を持って話し合いますと最終的には利用者に最も素晴らしい効果が
 出ているようです。
  施設側、家族、法的後見人の三者が話し合えばきっといい結果を得られるものと確信し
 ています。

 3. 介護予防とは
  介護予防とはどのようなことでしょうか。私の考え方ですが、要介護5又は4の方は
  できるだけ苦しまなくて現状維持ができることと考えています。介護する側の一方的な
 思い入れだけで決めてはいけないと考えています。介護度4・5でも必ず自分を持って
 いることを忘れてはならないと思います。
  介護度3以下の方は、支援の仕方で快方に向かいます。
 老人ホームで観察していますとショートステイの方で施設に滞在している間に元気になり
 体重が増えていると思われる方がいます。これらは、施設の職員の素晴らしい支援(介護)
 の結果と考えます。これこそ介護予防と考えます。

  介護保険制度を利用している方は、少なくとも現状維持、介護度の軽い方は快方に向け
 てその人に会った支援を考え得ることが大切でしょう。
  そして苦しまずに終末を迎えることができればうれしい限りです。
 「老衰」と診断書に書いてもらえるように・・。カンファレンスには、家族と法的後見人
 とが参加することが私流の介護予防につながります。
  
  要支援の方々は、まだまだ認知症から逃げ出すことは可能です。不安感をなくし、孤独
 の寂しさを解消すれば元気に楽しい日常を過ごすことが可能でしょう。
 是非、任意後見契約を実行し、将来の不安を解消し、一人でないという・・見守っている
 ひとがいるという気持ちが、元気にする大きな力になると考えています。

  元気で現状では認知症の心配のない方、心配のない今から将来を考えて自らが勉強して
 おくことが必要です。歌を歌うことも、手作業をすることも大切で効果は大いにあると
 考えます。その合間で将来の不安を解消できる勉強もお願いしたいものです。

  成年後見制度を勉強し不安を解消し、色々なゲームや趣味に打ち込めば趣味の世界を
 より以上に、楽しむことが可能と思います。 

                                シニア ライフ アドバイザー  岡島 貞雄

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