成年後見制度と医療問題 

 マーク  ある成年後見制度の説明会場にて

 「成年後見制度を利用しても医療に関することで代理権はないと聞きますが、
判断能力が不足している人が、医療について自身で判断できるでしょうか。
少しおかしい様な気がします」と質問されました。

 認知症であっても全く判断能力がないとは言えないのですが、確かに後見類型は
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に在る者となっています。
 補助類型や保佐類型(一部全て同じではないと思考する)の方は少しは判断する
ことは可能とも考えますが、後見類型では無理かも知れません。

 多くの高齢者施設を訪問していますが、要介護度5にもなれば言葉も出ない人、
目も明かない人が多くいます。その方達に医療に対する判断を求めても到底無理と
思います。

 法的な権限がないと言っても急を要する場合にはどうすればいいのでしょうか。

 現在の特別養護老人ホームでは、殆どの場合親族の意見で医療判断をしています。
成年後見人等の場合はどうすればいいのでしょうか。私見を述べてみます。

 後見人等は常日頃から被後見人等の親族とコミュニケーションを密にし、情報の
交換をし、被後見人等に関する医療的な考え方の統一をしておくことが必要です。
緊急時の連絡方法などを打合せをしておき、いざという時に直ちに動ける体制作り
を構築しておくことも大切でしょう。

 医療を受けるための契約は当然に成年後見人等の仕事と言えます。
また、医療に関する契約の行為は事実行為ですが、後見人等の仕事でしょう。

 ドイツの世話人法ではどのようになっているのでしょうか。
ドイツでは、後見人(世話人)職務の中に医療に関する要素が含まれています。
生命に危険がある場合の医療処置等については後見裁判所が決定しますが、
日常的な医療行為については後見人が判断できることになっているようです。
これは合理的と考えます。

 日常的な医療、例えば予防接種、健康診断、軽微な風邪等は後見人等が判断
してもいい様な気がしますがいかがでしょうか。
法律専門家間でも意見の相違があるようです。

 日本の場合には、責任という問題をあまりにも前面に出し過ぎて行動の手足を
縛るような場合が多々あるように思えてなりません。
 私が、現在も活動を続けている「救急インストラクター」でもよく聞かれます。
事故の方に心肺蘇生法を実施してそれがより以上の事故となるような場合の
責任問題はと、市民救命士講習を多く実施していますが、心肺蘇生法に関しては
責任を問われないということになっています。

 成年後見制度の場合も権限がないといって処置が遅れて大変なことになる場合が
多くあると考えます。
また、軽微な医療行為の権限がなく、健康維持ができないとなったら何のための
後見人等かといわれるような気がします。
 「NPO市民後見ひょうご」もこの問題につき勉強をし、法人としての見解を統一
しておくことが求められていると思います。

 シニア ライフ アドバイザー
岡島 貞雄

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