しわの研究 (3)
1、 2点力関係としわ
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NO3
紙の上に2点の力が加えられたとき、どんなしわが現れるだろうか
紙に描かれた2点から加えられる力の方向は、無数に考えられるが、基本的なものは
およそ次の6種類である。
このうち、C、D、Eは力のベクトルを考えても分かるとおり、図にある「⇒」の方向に
紙全体が進むだけでしわは出来ない。
つまり加えられた2点の力が、互いに押し合うか引き合う場合に限って、力は紙の変
形に関係することになる。
Aは互いに引き合う力が加えられた場合であるが、これは力の方向に沿って紙が
ピンと張って引き伸ばされ、最後には敗れてしまうだろう。
したがってこの関係からも、しわは生まれない。
結局、しわが発生する力の関係は、互いに押し合うというただ一つのケースである
ことが分かるだろう。
つまり、@とAの力関係だけが、紙にしわを与えることになる。
2、 @の力関係が生み出すしわ
互いに反対方向に押し合う力関係である。
その結果は左の図のとおりであった。
aの部分でカールし、力が加わるにつれてその弧が小さくなって
いき、やがてちょうど2点の力がぶつかるところでくっきりと折り目
が出来た。
しわは下の図のように、2点との中点に折り目となって現れる。
それは力を加える2点を結ぶ直線に対して常に直角の折れ線
が現れることを意味している。
3、 Bの力関係が生み出すしわ
互いに反対方向の力でありながら、2つの点が一直線
上にないために右回りの回転運動となる。
この場合、2つの点は固定されているために、この点を
中心に紙が回転するような力が生じる。
その結果は、@に比べて複雑なしわが出来る。
aのしわは左からの力を受け止めたために出来たしわ
で、bは右からの力を受け止めた時のしわである。
cは二つの力の中点である。きれいなsの字を描いて
いるのは、互いの力がぶつからずにすれ違っている
ためである。
dとeは紙を押すために固定させた位置を中心にして起こった回転運動が紙に影響を与え
た最後の場所である。
aとbは山折cdeは谷折となっており、力点の2点を中心に回転しながら折りたたまれてい
ったことを物語っている。
Bの実験を見ると、しわの規則正しい配置に驚かされる。
2点の力点を軸にして、見事な対称形を作り上げているのである。それは波に似ている。
紙の上で、力がぶつかりあった場所が自動的に記録されていく。
それがしわの持っている意味だったのである。
力がぶつかり合ってゼロになる地点、言い換えれば力の干渉が、紙の上にしわとなって
現れていると言えるのではないだろうか。