しわの研究 (1)

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1、はじめに

紙袋についたしわ、それは無数のバリエーションがあって楽しい。
そして美しい。

紙の作るしわに魅力を感じるのは、そこに人間的な表情を感じさせるからだろうか、
確かに、同じ紙袋でも一つとして同じしわを見ることはないのである。
その上、しわは紙が何らかの力の影響を受けた結果であり、その結果は明らかに
その紙の過去を表しているのである。

この紙袋に出来るしわは決して勝手気ままに出来ているのではない。
ある原因に対して変化する法則が必ずあるだろう。
人間の感情が示す喜びや悲しみの法則と同じように、紙のしわにも心を表す力の
痕跡が法則として見えてくるのではないか。

私は絵画的な視点から、しわのメカニズムに少なからず興味を持ったのである。
しわについて考えてみたい。

なお、
これは私が1985年頃に書いて、草稿のまま放置していたものを改めて書き直した
ものである。
文中の図は当時のものをそのまま使用している。


2、しわとは何か

しわの最も単純な形を考えて見る。

紙は木の繊維を溶かしてつくる。硬質で弾性がある。軽く曲げて放すともとに戻る。

しかしある限度を越えて曲げると、紙は折れ曲がり、もとに戻らなくなる。
それがしわの山や谷を作る基本的な原因となる。


こんな実験をした。

 
      実験1 (1方向の力と紙の変化)



幅10センチの正方形の紙をテーブルに置き、
両脇を木の枠ではさんで間隔を狭めては広げるという動作を繰り返し、
挟んだ紙がどのような変化をするか観察した。

(上の実験から)

@ 枠の幅を 9cmにして、戻すと、紙は少しふくらんで、またもとの形に戻った。
これは、狭められた1cm分の力を紙全体がウエブすることで吸収して解消させたためである。
このように、力を全体で受け止めている間は、紙は折れることがない。
間隔を10cmに戻すと、紙はもとに戻る。

A 幅を5cmにすると、紙の両端は木枠に沿って直線になってしまう部分が現れる。
枠に沿って直線になった部分は力の影響を受けなくなる。
このために、加えられた力は紙のカールした部分だけにかかることになり、
さらに幅を小さくしていけば、紙の中央のカール下部分が狭まっていくのが分かる。

B 枠の幅を狭めて行けば、両側からの力を受けとめる部分が、紙の中央の一点に集中するようになり、ついに1本の折れ線となって、それ以上変化しなくなる。

C 上図のように、真ん中にくっきりと一本の折れ線が出来、復元することはない。
これは、両側からの力を、紙の一点だけで吸収したためである。
折れ線は、受けた力と力の集まった部分をはっきりと示しているのである。
これは何度試してみても同じ結果が得られる。

D 一つとして同じしわが見られないように見えるのは、しわが無秩序に現れて
いるのではなく、この単純な紙の性質に対して力が無秩序に加えられたためだ
と考えられる。
決して無秩序にしわが現れるのではないのだ。

3、しわの持つ意味

先の実験結果からさらに詳しい検討をしてみよう。

右の図から、折れ線はA・B双方の力が働いた結果である。

力(A→)と力(←B)は、互いに逆向きの力であって折れ線CDに対して
直角の方向を持っている。

したがって、折れ線を見れば力がどの方向から加えられたか分かる。
すなわちその方向は、常にしわに対して直角である。

さらに力の大きさは、しわの折れ具合に現れている。
我々はそれを体感的に感じ取ることが出来る。

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