安全週記
バック
ナンバー
2021年 2020年 2019年 2018年
2017年 2016年 2015年 2014年
2013年 2012年 2011年 2010年

2022年12月31日記(枚方パークでアトラクションが故障)
 
12月30日19時頃、枚方パークでフリーフォール“ジャイアントドロ
ップ メテオ”が地上50mの高さで止まってしまい、乗客の2人が4時
間にわたり寒風吹き付けるアトラクションで降りられない状態になり
ました。50mもあるためハシゴ車が届かず、レスキュー隊がロープで
機械に接近して手動で操作して地上に降ろすことができました。乗客
2人はかなり衰弱していたそうです。31日の朝には退院できたようで
安心しました。しかし、報道によると、寒さをしのぐ防寒具を係員が
渡そうとしたが、乗客は手がかじかんで受け取れなかったということ
なので相当危険な状態だったのでしょう。救助まで4時間かかりまし
たが、救助が遅れると生命の危険があったかもしれません。
 冬でなければ4時間程度は問題ありませんが、真夏では熱中症の危
険もあるので、季節によっては危険性が変わるということですね。そ
う言えば、4月に発生した知床遊覧船沈没事故も、夏であれば多くの
人が死亡することはなかったでしょう。


2022年12月31日記(2022年の10大ニュース)
 今年もいろいろなことがありました。振り返ってみたいと思います
 1月 那須サファリパークで飼育員がベンガルトラに襲われた
 2月 新潟の三幸製菓の火災で6人が逃げ遅れ
 4月 知床遊覧船沈没事故で20名以上が死亡
 4月 社用車のアルコールチェック義務化
 7月 新型コロナ第7波
 8月 名古屋 高速バス横転炎上事故で2名死亡
 9月 静岡県の認定こども園で女児が車内に取り残された
 10月 富士山ツアーバス フェード現象で横転
 10月 自転車の交通違反でも赤切符で取り締まり強化
 11月 韓国ソウルでの雑踏事故で150人以上が死亡
 2023年は大きな災害が発生しないことを祈りたいと思います。
 2023年には労働安全衛生法関連で化学物質の対策が強化されます。
また、第14次労働災害防止計画が示されます。適宜、情報を紹介して
いきたいと思います。

                   
2023年も ご安全に!

2022年12月24日記(自転車のヘルメット着用が努力義務へ)
 自転車に乗る際のヘルメットが義務化されます(2023年4月)。
 警察庁によると、昨年までの5年間の自転車事故の死者2145人のう
ち、頭部損傷が致命傷だった人は約58%にあたる1237人でした。その
ようなデータから義務化になりました。しかし、義務化といっても努
力義務なので効果は期待できないかもしれません。
 自動二輪は1978年からすべての道路でヘルメットが義務になりまし
た。ただし、原付バイクは対象外です。原付バイクのヘルメットが義
務化されたのは1986年です。その頃は義務化されましたが、定着には
相当の月日が必要でした。今回の自転車では努力義務なので着用率が
劇的に上がることは難しいと思われます。私としては猶予期間を設け
てでも義務化して欲しかったと考えます。毎年、数百人が頭部損傷に
よって命を失っているのですから、対応が甘いと感じます。
 さて、皆さんの会社では、この件について何か考えていますか?
 是非、業務で自転車を使用する場合や通勤で自転車を使用する場合
はヘルメット着用を義務としていただきたいと思います。義務化に反
対する人も居るかもしれませんが、「義務」となっている以上、しな
くてもいいとはいえません。通勤については、ヘルメット購入費用を
一部補助してでも着用義務にしていただきたいと思います。
 なお、罰則のない努力義務であっても、事故にあった場合の損害賠
償は変わるでしょう。ヘルメットを着用していれば死亡事故にならな
かったと判断されると、過失相殺され、賠償金額が減額されるでしょ
う。

  
2022年12月24日記(温水洗浄便座)
 私事ですが、先日、トイレを改造して温水洗浄便座にしました。と
ても快適です。
 さて、温水洗浄便座を付ける時に考えたことがあります。それは、
今まで40Wの照明器具しかつかっていない場所に1200Wも使用するも
のを設置していいのか?ということです。調べてみると同じ系統には
電気ストーブがあるし、ヘアドライヤーなどたくさんの電気機器があ
りました。そんなところに1200Wの温水洗浄便座を付けると、ブレー
カが落ちることもあるし、ブレーカが落ちなくても絶縁被覆が劣化し
てしまいます。安全を考えて、他の系統から電線をつなぐことにしま
した。
 話は変わりますが、先週から急に寒くなってきました。職場が寒く
電気ストーブなどを追加していませんか? 電気ストーブは手軽に暖
をつくることができますが、その配線には注意してください。15Aの
コンセントに電気ストーブを2台つなぐと15Aは超えてしまいます。
ブレーカが落ちなければ大丈夫と思っていませんか。電源ケーブルが
過熱し、絶縁被覆が劣化すると漏電や火災の原因になるかもしれませ
ん。また、電源タップに接続した電気ストーブが1台であっても、延
長コードなどで離れた場所で電気ストーブを接続した場合は、電気ス
トーブを2台つけたことと同じです。ご注意ください。


2022年12月24日記(西宮ボーリング場その後)
 12月10日に西宮市にあるボーリング場でピンセッターに挟まれた事
故について書かせていただきましたが、ピンセッターに挟まれたとい
うのは間違いでした。申し訳ありません。
 詳細は、“トマト西宮”のホームページでご確認ください。
 https://www.e-bowltomato2438official.com/blog-1

                         ご安全に!


2022年12月17日記(化学物質の小分け)
 2023年4月から労働安全衛生規則改正により、化学物質の移し替え
(一斗缶などで購入したものを使いやすいように小分けの容器に移し
替えるなど)する場合、容器には化学物質名だけでなく、危険・有害
性を表示しなければなりません。下記サイトの26ページ参照
 https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/content/contents/001280353.pdf
 試しに、エタノールと1.2-ジクロロプロパンで考えてみました。
(1.2-ジクロロプロパンは2013年に印刷業で胆管癌問題になったも
のです)すると、エタノールと1.2-ジクロロプロパンは危険・有害
性のGHS絵表示が同じになりました(引火の危険、健康有害性と急性
毒性の区分4を示す感嘆符)です。
 今回の改正は使う人が危険・有害性を知ってもらうためなのですが
エタノールと1.2-ジクロロプロパンのGHS絵表示が同じであれば、ど
う感じるでしょうか「エタノールと同じ程度なら影響ない」と考える
かもしれません。来年4月からは小分け容器にGHS絵表示を付ければい
いと安易に考えずに工夫をして欲しいと感じます。当然、化学物質の
取扱い教育は必要なのですが、GHS絵表示以外にも危険有害性を知ら
せる工夫として、“防毒マスク着用”を示すピクトグラムや“ゴーグ
ル”着用を示すピクトグラムも有効だと思います。また、作業環境測
定結果やリスクアセスメント結果に基づいて、特に有害な物質のラベ
ルには白い紙ではなく、赤い紙で表示をしたり、赤い容器を使うなど
「これは危険だ!」「これは注意して使え」などを感覚的に伝える仕
組みはどうでしょうか。

 
2022年12月17日記(北新地雑居ビル心療内科放火事件から1年))
 1年前の12月17日、北新地にある雑居ビルで放火事件があり、26人
の命が奪われました。あれから1年がたちます。事件のあった建物に
は階段が1つしかなく、現在の建築基準法に適応していません。いわ
ゆる既存不適格建築物です。既存不適格建築物に階段などを設置する
ためには、建物全体を現在の建築基準法に適合させる改築が必要とな
り改築が困難な状況ですが、事件から1年が経過し、防火対策に限って
は一部分だけの改修を認めるという方向で検討されています。

                        
 ご安全に!

2022年12月10日記(ボーリング場でピンセッターに挟まれる)
 12月7日、兵庫県西宮市のボーリング場で係員がボーリングのピン
を自動で並べる“ピンセッター”に挟まれて意識不明の重体になる事
故が発生しました。係員は機械の電源を切ってからピンセッターの中
に入って詰まったピンを取り外すときにピンセッターが上昇して挟ま
れたということです。関係者が不思議な事故と考えているのは電源を
切ったにも関わらずピンセッターが動いたということです。
 なぜ、電源を切ったにも関わらず動いたのかは不明です。
 2つ考えられると思います。一つは電源スイッチの端子が癒着した
場合です。スイッチを押すことで端子が接触して電気が流れるのです
が、その接点が癒着すると、スイッチを操作しても癒着しているので
電源が切れていないことになります。2つ目としては、スイッチを切
ったが、身体のバランスを保つために、フレームなどを握った際にス
イッチに触れてしまったか、背中などが当たったのではないかと考え
ます。また、空気圧や油圧で上下をする場合には残圧が残った状態も
考えられます。さらには配線の間違いも考えられます。ピンセッター
のトラブル対応には表側から入り込む場合と裏側から入り込む場合が
あって、表側と裏側の両方に電源スイッチが設けられています、
 機械に絶対安全は存在しません。挟まれる可能性がある場所では、
挟まれないようにする対策が必要です。ある会社で現場指導をしてい
る時に、止まっている動力プレスに安全支柱が取り付けられていまし
た(安全支柱とは、上型が落ちてこないように支えるもので、安全ブ
ロックとも呼ばれます)。担当者に「なぜ作業していないプレスに安
全支柱を付けているのですか?」と質問すると、万一、機械が故障し
て誤動作しても人が挟まれないようにするため、停止した時は必ず安
全ブロックを使用することを指導している。という回答でした。

                         ご安全に!

2022年12月3日記(サッカーワールドカップ)
 サッカーワールドカップのグループステージが終わり、日本はグル
ープEで1位通過することができました。グループEにはドイツとス
ペインの強豪チームがいるのでグループステージ突破は難しいと言わ
れていましたが、そのドイツ・スペインを破ったことから国内でも大
盛り上がりです。次戦トーナメントではベスト8をかけてクロアチア
と対戦しますので、多くの方がテレビにくぎ付けになるでしょう。
 その1回戦は12月6日午前0時キックオフです。終了は午前2時頃に
なるでしょう。それから就寝して6日朝から仕事に行く人も多いでし
ょう。多くの方が寝不足状態で就業することなるので、作業ミスによ
る労働災害が増えるのではないかと心配です。また、午前2時ごろま
でお酒を飲みながらテレビ観戦すると、翌朝はまだ体内にアルコール
が残った状態になります。そのまま自動車を運転すると酒帯運転にな
ります。これは決してしてはなりません。これは自動二輪でも自転車
でも同じです。また、自動車運転以外でもフォークリフト作業なども
あります。自動車運転以外でもアルコールチェックをすることをお勧
めします。
 さらに6日の通勤時間帯は気を付けてください。車道を走る車の中
には多くの酒帯運転者がいると思ってください。
 特に6日は通勤も仕事もご注意ください。

                        
 ご安全に!

2022年11月26日記(外国人のマスク)
 新型コロナの水際対策が緩和され、外国からの観光客も戻ってきた
ようです。先日、電車の中で外国人観光客の家族がありました。全員
マスクをしていますが、その家族は全員とも鼻根(鼻の上の方で両目
の間のこと)と鼻筋が非常に高い。まるで、右目では左の方が全く見
えないのではないかと思うぐらい高い。鼻根が高いため、マスクをし
ていても鼻と頬の間は大きく隙間ができています。それを見た私は、
「あの顔に合う防じんマスクや防毒マスクは日本にはないだろう」と
感じました。日本製のマスクは日本人の顔の形状に合うように作られ
ているからです。特にシリコンゴム製の防じんマスク等はフィットし
ないかもしれません。
 外国人労働者に防じんマスク等を支給する場合は特に気を付けて防
じんマスク等を選定してください。
 また、過去に現場指導に行った時にはとても小柄な女性でしかも顔
が小さい感じの方が他の作業者と同じように防毒マスクを装着してい
ましたが、顎の下にハッキリ目で見てわかるような大きな隙間があり
ました。その事業所ではシールチェック(マスクが顔に密着している
かを確認する行動)をしていないことは明らかです。
 来年度から保護具着用管理責任者を選任することが義務付けられま
す。保護具着用管理責任者には特に資格は必要ありませんが、以下の
職務ができる知識と経験が必要です。
 保護具着用管理責任者の職務
 ・保護具の選択(作業の内容に合わせ、顔にフィットすること)
 ・保護具の着用方法の指導(特に密着の確認方法)
 ・保護具の点検の指導
 ・保護具の着用状況の確認
 ・吸収缶や防じんフィルターの交換頻度の決定と指導
 ・保護具の保管方法の指導など

                        ご安全に!

2022年11月19日記(父親の目の前で子供がトラックに轢かれた)
 事故は11月16日神奈川県で発生しました。
 父親が小学1年生の男の子を学校に送る時でした。車から降りた子
供は父親の車の前方から道路を横切ろうとしました。その時に父親の
車を追い越して走ってきたトラックに轢かれました。
 子供から見ると、右側は父親の車が止まっているので、安全だと思
ったのでしょう。左からの車が途絶えたので道路を渡っている時に轢
かれました。
 トラックの運転手からは父親の車の影になった子供の姿は見えませ
ん。車は停車しているし、対向車線に車が無ければ、父親の車を追い
越すことに何の抵抗も感じないかもしれません。
 このような場合、父親はUターンして車の向きを変えて、学校の前
に車を止めればよかったのですが、学校の前で車を止めると渋滞にな
るので学校側は、それを禁止しているのでしょう。
 このような事故はありがちです。止まっている車を追い越すことは
多いと思います。この事故を教訓として運転する方は十分注意してく
ださい。
 私の家の近くにある長尾駅では同じような状態が時々ありました。
バスが長尾駅前に停車し、そのバスの前方から道路を渡って駅に向か
う人が多かったのです。現在ではバスの停留所の先に信号のある歩道
ができたので、バスの前を横切る人は見られなくなりました。


2022年11月19日記(第14次労働災害防止計画の検討)
 第14次労働災害防止計画の検討が進められています。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29207.html
 第13次労働災害防止計画は死亡者数の目標を達成する可能性があり
ます(ただし、新型コロナり患による死亡者を除いた場合)が、死傷
災害は減少どころか増加しています(新型コロナり患を除いても達成
は難しい状況です。
 第14次労働災害防止計画では“アウトプット指標”と“アウトカム
指標”が設定されるようです。


2022年11月19日記(車内置き去り女児「熱中症死」)
 
また、残念な事故がありました
(ニュース引用)
  大阪府岸和田市の市立保育所の駐車場で11月12日夕、保育所に通
  う女児(2)が車の中で意識不明の状態で見つかり、間もなく死亡
  が確認された。死因は熱中症だった。府警によると、女児を見つ
  けた父親(33)は「保育所に送るため娘3人を車に乗せたが、1一人
  だけ預けるのを忘れて帰った」と説明。府警は、朝から約9時間
  にわたって車内に置き去りにされ、死亡したとみている。
  父親がワンボックスカーに娘3人を乗せて同市内の自宅を出発し
  たのは午前7時50分頃。認定こども園に長女(4)と三女(1)を預け
  た後、別の保育所に預ける予定だった次女を車に乗せたまま帰宅
  したという。父親は午後5時過ぎ、同じ車で保育所を訪れたが、
  職員から「今日は来ていない」と言われ、駐車場に止めた車の中
  を確認。最後列にあるチャイルドシートで意識をなくした次女を
  見つけた。父親は府警に対し「保育所に次女を送り届けたつもり
  だった」と説明。12日は仕事が休みで、自宅に車を止め、窓を閉
  めて鍵をかけた後は夕方まで車を動かさなかったという。普段は
  母親(35)が3人を送り迎えしていたが、この日は仕事で、父親が3
  人を連れて家を出た頃に別の車で職場に向かっていた。岸和田市
  によると、担当の保育士が午前10時頃までに女児が登園していな
  いことに気づいたが、親に確認の連絡を取ることを失念していた
  という。(引用終わり)

 悲しい事件です。父親が保育所に預け忘れたことと、保育所は無断
欠席を確認しなかったという2つのミスが同時に発生しました。
 昔、漫画サザエさんの中で、一家で旅行中に、お父さんを家に忘れ
たという話があったように記憶しています。人間は“あり得ない”よ
うなミスをするものだと実感しました。

                        
ご安全に!

2022年11月12日記(新型コロナ第8波)
 大阪府での新型コロナウイルス感染者の累計が220万人を超えまし
た。大阪府の人口が約880万人ですから4人に1人の割合になります。
私の家族は4人とも感染を免れています。第7波の時、大阪府の新規
感染者のピークでは約25000人/1日でした。第8波では第7波を超え
るという予測もあります。街中ではコロナの前のように人が増えてい
ます。居酒屋を覗くとマスク会食する人は見かけなくなりました。こ
れでは第7波を超えるのは確実のように思います。オミクロン株対応
ワクチンの接種も始まりましたが、関心が薄いようです。ちなみに私
は11月26日に5回目のワクチンを予約しました。
 来週からはサッカーFIFAワールドカップも始まります。クリスマス
や忘年会の時期にもなっていきます。そして年末年始を控え、人の移
動も多くなるでしょう。
 企業の中では昼食時の黙食や昼休みに時間差を設けて、人の集中を
避けるなどの対策をしていますが、仕事が終わればノーマスクの飲み
会も多いのでしょう。
 コロナ対策をもう一度徹底するとともに、大量の欠勤者が発生した
場合の生産対策も検討してください。その場合、生産応援など臨時的
な作業が増えるかもしれません。作業内容が変わる時は、危険性を知
らずに危険な行動をして災害になることが多いので安全衛生教育もし
っかり実施してください。
 また、インフルエンザにも十分注意してください。特に大阪府は増
加傾向にあります。


2022年11月12日記(日没時間) 
 日没時間が早くなりました。大阪では先週から17時より早く、日の
入りが始まっています。作業場の明るさは十分ありますか? 私の場
合、暗くなると視力が悪くなります。年齢の影響がかなりあるのでし
ょう。特に高齢者のいる作業場では適切な照度を確保しましょう。電
気代の高騰で照明を制限している会社もあるでしょうが、暗いときに
人が接近すると発光するようなセンサーライトを使うなど対策を進め
てください。
 また、自転車通勤者はライトを点けて運転するように指導していま
すか? 私が企業に居た時には帰宅時の交通指導をして、自転車ライ
トの点灯チェックをしていました。

                        
ご安全に!

2022年11月6日記(九飛勢螺のピアスバレットが凄い)
 10月30日放送のがっちりマンデーで紹介された九飛勢螺(きゅうび
せいら)のピアスバレットが凄いので紹介します。
 このピアスバレットは、ネジなのですが、一瞬のうちにネジを締め
込むことができます。今まではネジの先端にドリルが付いたドリルネ
ジが多く使われていました。このドリルネジは下穴を開けなくてもネ
ジ締めができるのですが、ドリルで穴をあけて同時にネジを締めます
ので、ちょっと時間がかかりますが、このピアスバレットは本当に一
瞬です。テレビで紹介されたものは0.03秒です。
 https://www.qp-seira.jp/pias_bullet/
 https://www.youtube.com/watch?v=OE3i_YLMqos
 ネジを1本締めるだけなら数秒の違いですが、ネジを数百本締める
場合には相当の時間短縮が可能です。
 もっとも、早いということは、仮に人体に当たると一瞬で埋め込ま
れてしまいます。釘打ち機を触っていて、自分の足に釘を打ち込んだ
事故も多く発生しています。作業に採用する場合には、危険性を指導
し、誤って打ち込むことを防ぐポイントを指導してください。


2022年11月6日記(韓国 雑踏事故)
 10月29日に発生した韓国ソウルでの雑踏事故には驚きました。狭い
坂道に上から人が押し寄せ、下からも人が押し寄せる状態で150人以
上が死亡する大きな事故になりました。
 映像を見ると、岡山県の西大寺会陽の裸祭りを思い出しました。西
大寺会陽では事故がなかったのかと調べると、直近では2007年に1人
が転倒し、下敷きになって死亡されたようです。西大寺会陽との違い
は体格の良い男性であり、常連の方が多く、ぎゅうぎゅうつめの状態
を耐えられる自信がある方が集まっていることでしょう。
 韓国の場合は女性も多く、あれほどの雑踏になるとは想像していな
かったのでしょう。また、報道にはありませんが、呼吸困難な状態が
長時間続き、脳へ酸素が送られず、脳への障害が残るような人も発生
しているのではないかと思います。
 テレビ報道では内容を審査しているからと思いますが、ネットで動
画を探してみると、テレビ報道にはなかったような「あの人は立った
まま死んでいるのでは?」という映像もありました。
 あの状態になると命を確実に守る方法はないでしょう。例えば、自
分の周囲の人が倒れると、その上に自分が押し倒され、さらに他の人
が上に被さって潰されるでしょう。自分の命を守るためには雑踏の中
に入らないことですが、もし、入った場合には、両腕を下に垂らした
ままだと何もできません。腕を顔の前で組んだり、カバンを持ってい
たら胸の前に持って、呼吸域のスペースを確保することが必要だと思
います。
 また、10月30日ではインドのグジャラートで吊り橋が崩落し、120
人以上が死亡したいう報道もありました。
 韓国もインドも新型コロナが落ち着いてきて、行動制限が緩んだ結
果かもしれませんが、ご注意ください。
 次に雑踏する機会は新年だと思います。例年、私は大晦日の夜から
明け方にかけて初詣のはしごをしていました。コロナ禍では自粛して
いましたが、今年は再開するつもりでした。しかし、コロナ第8波が
発生するようなので、初詣は日をずらして行こうと思います。

                       
 ご安全に!

2022年10月29日記(電源ケーブル)
 2019年10月31日に首里城の火災が発生し、3年が経過しました。原
因は不明と判断されました。警察は放火ではないと判断していますの
で、原因は電気系統と考えられます。
 さて、私がいつも利用しているスポーツジムに備え付けられている
ヘアードライヤーの電源ケーブルが捻じれています。捻じれを直そう
としても被覆のビニルが伸びているので直りません。
 皆さんの家庭や職場で電源ケーブルが捻じれているものはありませ
んか? 捻じれる原因はなにか判りますか? 捻じれたケーブルの危
険性を知っていますか?
 捻じれる原因は片付け方が悪いのです。使い終わったドライヤーの
ケーブルを本体に巻き付けるとケーブルは捻じれます。1回り巻き付
けるとケーブルは半回転捻じれます。それを何回も繰り返すと捻じれ
はひどくなります。
 捻じれた被覆はビニルですから負荷がかかると伸びてしまいます。
しかし、被覆の中に入っている芯線は伸びません。捻じれの癖が付い
た場合は芯線が引っ張られているのです。何回も繰り返していると、
芯線の細い線が切れてしまいます。1本2本程度なら切れても支障が無
いのですが、切れた本数が増えてくると、芯線を流れる電流が高くな
り、過熱し、やがて発火するでしょう。
 ドライヤーを使い終わったらケーブルを巻き付けるのではなく、束
ねる必要があります。巻き付けるのであれば、1回りするたびに半回
転逆に捻じる必要があります。
 これから寒くなると電気ストーブを使う機会も多くなるでしょう。
職場でも家庭でも電源タップ(卓上コンセント)を使う場合は定格容
量に注意しなければなりません。定格容量1500Wの電源タップに1000
Wの電気ストーブを2台接続すると定格容量を超えます。定格容量を
超えると過熱し、やがて発火することになります。電源タップに1000
Wの電気ストーブを1台接続するのは問題ないと考えるかもしれませ
んが、その電源タップを2台つなぎ、それぞれの電源タップに1000W
の電気ストーブを付けても同じことになります。電源タップの定格容
量を守っていても、その電源タップが分岐されたものであれば同じよ
うに過熱しますのでご注意ください。

2022年10月29日記(木材加工丸ノコ盤の使用停止命令)
 木材加工用丸のこ盤の歯の接触防止対策ができていなかったという
ことで使用停止命令を受け、対策ができていないにもかかわらず使用
して書類送検された事例がありました。
 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202210241552.pdf
 丸ノコ盤の切削速度は速く、太い木材でも瞬時に切断できますので
人間の指もあっという間に切れてしまいます。だから“あっ危ない”
と思った時には指が数本飛んでしまいます。
 上記URLの最終ページに歯の接触予防装置の図がありますが、こ
れで安全が確保されたとは言えません。法律で定められた最低基準を
クリアしただけです。それは、切断しようとする木材を押し込むと接
触予防装置の可動部が中に押し込まれて木材が切れるのですが、木材
を手で持ちながら押し込むと、手も切れてしまいます。
 また、接触予防装置を外すと回転が止まるようなインターロック構
造にした場合でも接触予防装置を外した瞬間に動力が切れますが、歯
は惰性回転しますので、それに当たれば当然ケガをします。
 丸ノコ盤のように惰性回転する機械の対策は難しいものです。たと
えば、家庭用の洗濯機を考えてください。運転停止操作をしてフタを
開けた場合、槽は惰性回転しています。そのため、対策をとった洗濯
機は運転停止をしてもフタは開けられません。惰性回転を検知して、
惰性回転が止まらないとフタが開けられないようになっています。
 丸ノコ盤の安全対策に困った場合は当社に連絡をしてください。

                        
ご安全に!

2022年10月22日記(荷役作業の読み方 「にやく」「にえき」?)
 ある会社で荷役作業を「にえき作業」と言っていました。
 「にやく作業」と「にえき作業」どちらが正しいのか、また、私は
今まで「にやく作業」と言っていましたが、間違っているのかと考え
ました。「役」という漢字の音読みは「ヤク」と「エキ」があります
ので、「にえき」と読むことができます。
 調べてみると「えき」と読む場合の意味は「戦争」や「働かせる」
などの意味でした。「やく」と読む場合の意味は「仕事」や「割り当
て」などの意味となります。戦争で捕虜となった兵士に荷物を運ばせ
る場合は「にえき作業」で良いかもしれませんが、労働者の場合は、
荷を運ぶ役割ですから、「にやく作業」が正しいと言えます。


2022年10月22日記(自転車も赤切符)
 自転車の交通違反による事故が相次いでいることを受け、警視庁は
10月下旬から取り締まりの強化に乗り出すと報道がありました。赤切
符が切られると刑事処分の対象で、飲酒運転などの危険行為で3年以
内に2回以上赤切符を交付された場合は、3時間の違反講習(6000円)
を受講。それに従わない場合は5万円以下の罰金となります。
 街中を自動車を利用したり、歩行する際に、自転車でヒヤリを経験
した人は相当多いと思います。私が一番怖かった経験は、信号のない
交差点で右折する際に、対向車の距離があいたタイミングで右折しよ
うとしたら、対向車線を無灯火で逆走する自転車に接触しそうになっ
たことです。右折するのですから対向車線に注目をしています。右側
から車両が走ってくることもないので、ほとんど意識していません。
さらに無灯火ですからまったく見えませんでした。
 今回、自転車に対する罰則を強化することで抑止力になればと思い
ます。
 安全教育を行う場合はタイミングも重要です。自転車通勤の方に安
全教育をする場合は、何か変化があった場合です。罰則が厳しくなる
タイミングに合わせて交通安全を教育していただきたいと思います。


2022年10月22日記(富士山ツアーバス横転事故)
 10月13日、富士山ツアーバスが横転して1人が死亡した事故があり
ました。原因はブレーキのフェード現象と考えられています。フット
ブレーキを使い過ぎたためにブレーキが高温になり過ぎたために起こ
ります。運転手は26歳の若い方で、事故が発生した“あざみライン”
は初めて走行したということです。あずみラインの下りは延々と下り
が続くのでフットブレーキを使いすぎると過熱した結果、フェード現
象が発生してブレーキが効かずパニック状態になり、エンジンブレー
キをかけるためにシフトダウンしようとしたがギヤが入らずニュート
ラル状態になったようです。6年前には軽井沢スキーバス転落事故で
15名死亡した事故がありました。慣れていなかった点、パニック状態
になったことなど類似したような事故でした。
 バスはタクシーと異なり、あらかじめルートが決まっています。こ
のルートではどのような危険があるか、このルートを安全に走行する
ポイントなどを社内で共有できていれば、初めて走行する場合は、事
前に練習走行するとか、先輩が同乗して指導するなど事故を回避でき
たと考えます。

                        
ご安全に!

2022年10月15日記(10/10 東名高速で車から降りた2人が轢かれる)
 ニュースより
 「10日午前0時20分ごろ、横浜市青葉区の東名高速道路下り線で、
 車道にいた男女2人が車にはねられた。神奈川県警によると、横浜
 市の国田さん(20)が全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡した。男
 性(19)は顔の骨を折る重傷。2人は単独事故を起こして停車。降車
 し て路上にいたところ、後続の車2台にそれぞれはねられたとい
 う。県警によると、現場は片側3車線。国田さんらが乗っていた車
 は、男性が運転していたとみられ、右側の追い越し車線付近に停車
 していた。後続の2台は、止まっていた車の右側を通り抜けようと
 した。」(引用終わり)

 報道によると、右側のガードレールと左側のガードレールに接触の
あとがあるため、ハンドル操作を誤った単独事故で中央分離帯に逃げ
ようとした女性が後続車に轢かれ、助けようとした男性も次の後続車
に轢かれました。
 高速道路で事故や故障により車が動かなくなった場合にはどうすれ
ばよいかを交通教本で調べると、停止表示機材を置き、非常点滅表示
灯、尾灯を点けなければなりません。停止表示機材を置くときには、
発炎筒を使って合図する必要があります。また、後続車が衝突するお
それがあるので車に残らず、ガードレールの外側など安全な場所に避
難しましょう。と記載されています。しかし、車から降りるのは非常
に危険です。車を運転する側から見ると、車は視認できても降りた人
にはまったく気が付かないでしょう。
 時速100Kmで走行する時には秒速約28mにもなります。ドアを開け
て車から降りて、ドアを閉めて、避難する時間は5秒~10秒以上かか
るでしょう。後続車との距離が150~300m必要となりますが、追越車
線では制限速度を超える車も多いので、もっと距離が離れないと車か
ら降りれません。今回の事故は真夜中です。真夜中では車間距離が判
りにくいものです。私のように高齢者になると反射速度も俊敏性も衰
えているので後続車との接触を回避するのは困難でしょう。
 この報道を聞いて自動車の発炎筒を開けてみました。これで後続車
を止めることができるかと考えると難しそうです。もし、電気系統の
故障でハザードなどが点灯しなかったら車が停止していることに気が
付かず、車ごと潰されてしまいます。万一のことを考えて電池式のパ
トライトのようなものを購入しようかと考えています。


2022年10月15日記(園児送迎バスの安全対策)      
 政府は、静岡県の認定こども園の送迎バスで置き去りにより女児が
死亡した事件を受けて、来年4月から子どもをバスから降ろす際の点
呼確認や安全装置の設置を義務付けると発表しました。
 安全装置があれば安全だと考えるのが普通なのかもしれませんが、
報道されている安全装置は安全を保障できるものではありません。な
ぜなら、子供が車内に残っていることを検知して発報するものです。
検知できなければ、人は居ないと判断します。検知できない状態とは
カメラ(検知器)の死角に入った場合や、カメラの角度がずれて検知
できない場合、機器の故障、電気系統のトラブル、通信回線のトラブ
ルなどが考えられます。それらのトラブルを回避するため、使用前点
検が必要です。今回の事件は運転手が降りる際に十分な確認ができな
かったから発生した事件ですから、使用前点検は実施されないでしょ
う。
 安全装置は完全なものではありませんが、関係者がこの事件を忘れ
ることなく、常に意識して不幸な事件がおきないようにしていただき
たいと願っています。

                        
ご安全に!

2022年10月8日記(少し変えれば)
 カシオ計算機は、操作面を3°の角度で傾斜させ、キーを階段状に
配置することで右手使用時の打ちやすさを追究した電卓『人間工学電
卓 JE-12D/DE-12D』を、10月21日に発売すると発表しました。
 https://www.casio.co.jp/release/2022/1006-je-12d_de-12d/
 パソコンのキーボードなど前後で傾斜をつけたものは多いのですが
左右で傾斜をつけたものはおそらく初めてだと思います。
 少し配置を変えるのは作業性を向上し、間違いを防げる改善につな
がることが多いのではないでしょうか。
 たとえば、椅子の高さを少し変える
      工具の置き場所を少し変える
      部品箱の色を変える
      棚の高さを少し変えるなど
 改善することによる効果は少ないかもしれないが、「何かを変えて
みよう」という意識が広がれば改善意欲が高まり大きな改善につなが
るのではないでしょうか。


2022年10月8日記(静岡県での断水問題)      
 台風15号の影響により、静岡県の一部では9月24日から断水が続い
ていました。おととい6日にやっと解消されました。12日間におよぶ
断水には苦労したことだと思います。
 水の備蓄は一般には3日間分が必要と言われています。今回の台風
被害から、3日分では足りないと考えた人も多いのではないでしょう
か。断水が継続しても、自治体が給水車を配備することを考えて3日
としているのでしょう。
 ウォーターサーバーを設置している企業も一般家庭も増えてきまし
た。ウォーターサーバーは12リットルのものが多いと思います。常に
予備のウォータータンクがあれば一般家庭では数日間の確保ができる
でしょう。しかもウォーターサーバーは上部にウォータータンクを置
くので停電していても使えるというメリットがあります。空になった
場合でも給水車が来た時には容器としても使えます。
 今回の給水車の報道で気になったのが、水を入れる容器が無くて困
った人も多かったようです。飲み終わったペットボトルをすぐ捨てる
のではなく、空容器を数個置いておくことも必要だと感じました。

                        
ご安全に!

2022年10月1日記(プレスに関する書類送検事例)
 今週、大阪労働局管内において動力プレスに関する書類送検事例が
3件ありました。
 プレス機械に有効な安全装置を設ける等の措置を講じていなかった
  https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/20220930957.pdf
 プレス機械作業主任者に、切替えキーを保管させなかった 
  https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202209301011.pdf
 プレス機械作業主任者に法令で定める職務を行わせなかった
  https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202209301007.pdf
 プレス機械はご承知の通り、数百トンもの力で金型の形に金属を変
形させたり、打ち抜いたりしますので、プレス機が動いているところ
に手などを入れると、一瞬で潰してしまいます。法令では動力プレス
機械を5台以上設置している事業所ではプレス機械作業主任者技能講
習を修了した者の中からプレス作業主任者を選任しなければなりませ
ん。
 プレス作業主任者には労働安全衛生規則第134条により次の職務が
定められています。
 一 プレス機械及びその安全装置を点検すること。
二 プレス機械及びその安全装置に異常を認めたときは、直ちに必
   要な措置をとること。
三 プレス機械及びその安全装置に切替えキースイツチを設けたと
   きは、当該キーを保管すること。
四 金型の取付け、取はずし及び調整の作業を直接指揮すること。

 送検事例の1番目には有効な安全装置を設けていなかったとありま
すが、手払い式安全装置(プレスが起動する時に、危険領域にある手
を払いのける装置)は設けられていました。しかし、手払い式の安全
装置では効果はあるのですが、形状や大きさによっては手などの侵入
を完全に防げないこともあるので、平成23年の労働安全衛生規則改正
に伴い、手払い式安全装置は有効な安全装置ではないとされました。
規則改正はもう11年も前の事です。改正を知らなかったのかもしれま
せん。道路交通法などの改正は新聞やニュースになることも多いので
すが、労働安全衛生法の改正はあまり報道されません。まして労働安
全衛生規則の改正はまったく報道されないでしょう。
 送検事例2番目の“切替キー”の保管について解説すると、調整等
で安全装置を無効にしなければならない場合もあります。その無効化
のキーのことです。作業者が勝手に安全装置を無効にすることを禁止
するために切替キーを作業主任者が保管しなければならないのです。
 注意していただきたいのは、作業主任者はプレス機械を5台以上有
する場合に選任の義務があるのであって、5台未満の場合は不要とい
うものではありません。切替キーの保管については、プレス機械が1
台であっても責任者が保管しなければなりません。

                          
ご安全に!

2022年9月24日記(同僚を死亡させた)
 労働災害のうちで死亡災害は年間に800件ほどあります。その中に
は作業者のミスで同僚を死亡させた事故も相当数あります。たとえば
機械設備の中に人が居ることに気が付かずに機械を起動させた事故、
同僚が作業を終えたと思い込んで電源のブレーカーを入れて感電させ
た事故、フォークリフトでバックする際に後方を確認せずに走行して
同僚を轢いた事故などです。言葉は不適切ですが、加害者とも言えま
す。その中には責任を感じて自殺する人もいるでしょう。
 同僚や部下を死亡させた側にとっては大きなストレスです。もし、
そのような事故が発生した場合はどのように声をかければいいのでし
ょうか?
 「人間は誰でもミスをするものだ。今回は運が悪かっただけだ」
 「次からはちゃんと確認しろよ」
 「起こったことは仕方ない。いつまでもくよくよするな」
 3つ書いてみましたが、どれも適切だとは思えません。とても難し
い問題です。
 ハラスメントに関わる言動も考えられます。たとえば
 「お前と一緒に仕事する時には殺されないように気をつけよう」
 「しっかり確認しろよ!前みたいに〇〇を殺すなよ」
 「あの時、お前が死んでたら良かった」
 これらは決して口に出してはいけないものです。
 さて、9月18日北海道でゴーカートが見物客に激突して2歳の男児が
死亡した事故はご存じだと思います。走行コースの周りにはブロック
が置かれていましたが、コースからピットに戻るところには三角コー
ンとポールしかありませんでした。そのコースアウトするところで事
故が発生しました。運転していたのは11歳の女の子で激突した原因は
操作ミスだと思われます。おそらく、ピットに戻ろうとブレーキを踏
んで減速しようとしたが減速しなかったのでブレーキと思い込んでい
たアクセルペダルを思い切り踏んだのでしょう。しかし、一番の問題
は走行エリア全体をブロックでガードしていなかったこと、観客を激
突から守る措置ができていなかったことです。
 金銭的な補償はイベントを企画したトヨタ側がすると思うのですが
11歳の女の子が心配です。まわりの大人がしっかりストレスケアしな
ければなりません。学校のクラスメイトがどのような対応をするのか
も心配です。

                         
 ご安全に!

2022年9月17日記(送迎バス置き去り事件の対策)
 静岡県の認定こども園で3歳の女の子が車内に取り残されて熱中症
で死亡する事件がありました。窓がカラーリングされて外から中が見
えないことや、車内の確認を怠ったことや、「登園」申告したにも関
わらず職員は確認もせずに欠席と判断したことなどミスが重なったこ
とが幼い命を奪ってしまいました。政府は、全国全ての通園バスに安
全装置を設置する方向で検討していると報道がありました。安全装置
というのは、前号で紹介した置き去り検知センサーのことだと思いま
す。しかし、センサーは故障することもあり、検知できないことも考
えられます。仮に職員全員が順番に確認したとしても、いたずら好き
な子が隠れようとするかもしれないので、完全に防ぐ方法はありませ
ん。そこで、何か別の方法はないか考えてみました。
 案:通園バスは敷地内の屋根付きの駐車場に駐車して、窓を開放す
る。この方法なら置き去りが発生しても事故にはならない。
 しかし、屋根付きの駐車場も、敷地内に駐車することも現状を考え
ると全ての施設が対応できるものではありません。
 そんなことを考えている時にテレビで園児にクラクションを鳴らす
練習をしている映像がありました。ほとんどの園児には初めての経験
だから興味を持つでしょう、ボタンを押せば大きな音がするのだから
体感として記憶に残るので、万一、置き去りになってもクラクション
を押すことを思いつく可能性は高いでしょう。
 安全対策だけでなく、取り残された園児が自衛する手段を教え、自
ら救援を求める対策も重要だと感じました。
 これは産業の現場でも同じだと思います。安全対策を行うだけでな
く、作業者が自ら危険を知り、その危険を回避する術を身に付けてお
く、ハードのソフトの両方が必要です。

    
2022年9月17日記(「人機一体」という会社をご存じでしょうか)
 TBSのニュースキャスターの番組で人間が乗り込むロボットの紹
介がありました。子供の頃に夢中になったマジンガーZのようです。
番組では高所での作業をロボットが行うのですが、そのロボットは人
間の動作とリンクしています。これが実用化されると高所作業で転落
する事故も感電する事故も減少するでしょう
作っている会社は、「株式会社 人機一体」
 https://www.jinki.jp/
 デモ映像は下記をご覧ください。
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000070266.html
 https://www.youtube.com/watch?v=hfnkL2lzuzE

                         
 ご安全に!

2022年9月10日記(送迎バス置き去り事件)
 静岡県の認定こども園で3歳の女の子が車内に取り残されて熱中症
で死亡する事件がありました。ほんとうに悲しい事件です。昨年、福
岡県で5歳の男の子が取り残されてから同様の施設では対策をしてい
た中での事故ですから残念でなりません。今回の報道によると、水筒
は空で服を脱いで耐えていたことを考えると涙が出る思いです。尊い
命ですから“見ていなかった”では済まされません。
 路線バスでも終点に着くと、忘れ物はないか、座席の汚れはないか
など点検しています。幼稚園の送迎バスでも忘れ物はないかなど確認
するはずですが、日頃から何もやっていなかったのでしょう。
 当時は運転者(園長)と職員が乗っていたようです。職員は人数を
把握していなかったのか、日頃から何人乗って、何人降りたかを確認
していないと思います。たとえ、乗った人数を確認していても、乗っ
た人数を間違うこともあるし、降りた人数を数える時に同じ人を2回
数える可能性もあるので、座席確認は絶対必要です。
 また、送迎バスの映像を見た時に、窓全面にイラストが描かれてい
ることが問題だと思います。もし、普通の窓であれば、誰かが「バス
の中に人が居るよ」と気が付いたかもしれません。車内から外は見え
るけど、外からは全く見えません。
 関連して以下のニュースが気になりました(置き去り検知センサー)
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220908/k10013809631000.html
 ただし、このセンサーを付けていても安心はできません。センサー
は故障することもありますし、園児が寝ていてまったく動かなかった
ら反応しません。置き去り検知センサーは補助的なものと考え、必ず
職員が一番後ろの席まで移動しながら確認しなければなりません。

                          ご安全に!

2022年9月3日記(AED)
 9月1日の“防災の日”にちなんで、ある調査がありました。
 「目の前で知らない女性が倒れている時、AEDを使用することに抵
抗を感じますか?」という問いに対して、およそ4割の男性が「でき
れば、女性には使いたくないと感じる」「女性であれば、AEDは使わ
ない」と答えたということです。
 これは問題ですよね。男性の半分近くがためらうようであれば助か
る命も助かりません。確かに女性を裸にするのは躊躇するかもしれま
せんが、救命が最優先です。
 AEDを使うときに裸にするのは電極パットを貼るためです。電極
パットを貼るところだけ素肌にすればいいのですから、ブラジャーを
少しずらせば電極パットを貼ることは可能だと思います。必要なら、
電極パットを貼ったあとで上から服などをかぶせればいいでしょう。
 心肺蘇生の訓練を受けたことがある人は多いと思います。訓練用の
人形はファスナーを下ろせば裸なので非常に簡単ですが、実際には、
いろんな服を着ています。倒れた人の服を脱がせるのは時間がかかり
ます。救命が最優先なので、服は切ってもかまいません。脱がすより
服を切る方が早いでしょう。AEDを備え付けている会社にはハサミ
を一緒に置いていますか?AEDのバックの中にハサミを入れておき
ましょう。1本だけでなく2本以上あれば早く素肌を露出できます。
 ところで、ハサミを用意するとしたらどんなハサミを準備したらよ
いでしょうか?洋服を切るなら洋裁バサミが切りやすいのですが、洋
裁バサミは先が尖っているため、服を切るときに皮膚まで切る可能性
があります。刃先を保護する形状で直接皮膚に触れないようなハサミ
が適しています。
(下記は一例です)
 救急剪刀
  https://www.monotaro.com/g/01315431/#
 ホータイハサミ
  https://www.monotaro.com/g/02360090/#
 ナースハサミ
  https://www.monotaro.com/g/01327597/
 また、ネックレスなどの金属は外す必要があります。中には簡単に
外せないようなものもあるでしょう。その場合はニッパーなども必要
だと思います。
 最後に心肺蘇生の動画を紹介します
 https://www.youtube.com/watch?v=xgLAEJ3ZugU

                          
ご安全に!

2022年8月27日記(スズキ自動車 一酸化炭素中毒)
 8月23日、浜松市の自動車メーカースズキ本社の厨房において一酸
化炭素中毒が発生し14人が搬送される事故がありました。
 原因は洗浄室の換気扇が止まっていたためと報道がありました。
 考えられるものとしては、換気扇の作動を忘れていたか、誤って止
めてしまったのか、換気扇が故障したものだと思われます。 
 忘れる原因は、いつも起動する担当者が休んだために起動しなかっ
たか、イレギュラーが発生し、換気扇の作動を失念したことが考えら
れます。
 作動中の換気扇を誤って止めてしまうのは、他の機械等と誤って止
めた場合や、背中などが触れてしまい、無意識のうちに止めることが
考えられます。
 換気扇が故障する原因はさまざまです。皆さんの会社でも事務所や
工場その他ほとんどの場所に換気扇が付いていると思いますが、その
換気扇が止まった場合、気が付くでしょうか? よほど大きな騒音を
発する換気扇でなければ気が付かない可能性が高いと思われます。事
務所の換気扇が止まっても健康被害は発生しないでしょうが、給湯設
備が必要な業務用食洗器は換気扇が止まると給湯設備が不完全燃焼し
て一酸化炭素が発生します。
 今回の厨房室(洗浄室)や有害物質を取り扱う局所排気装置などは
換気扇が止まると大きな健康障害につながります。特に一酸化炭素は
色も臭いもないので発生しても気づけません。このような設備では換
気扇が止まった場合には瞬時に認識できるようにしなければなりませ
ん。方法は、一酸化炭素警報器を取り付ける方法や、風の流れ(吸引
風速)を可視化することです。局所排気装置では吸い込みフードに、
“吹き流し”を付けている事業所も多いです。
 さて、一酸化炭素警報器を付ける場所(高さ)はどこがよいでしょ
う? 都市ガスは天井付近に、プロパンガスは床面付近に取り付けま
す。これは比重が違うからです。一酸化炭素は空気より少し比重が軽
いので、天井付近が正しい位置となります。また、熱源に近いところ
にしてください。


2022年8月27日記(名古屋でのバス横転炎上事故)
 22日、名古屋高速でバスが横転、炎上し、2人が死亡した事故があ
りました。
 目撃者によるとバスはふらふら走行していたため、運転手の居眠り
か、体調不調が考えられます。
 この事故で乗客1名が死亡しました。その1名はシートベルトをして
いなかったか、運転手の異変に気が付いて運転席に近づいたのだと思
われます。
 この事故で6人が無事に脱出できたことがすごいと思います。
 バスは左側に通常の乗降口があり、右側に非常口があります。横転
したために、非常口は上になりますので、脱出は困難です。
 今回の場合、リアガラスが割れたことで脱出したようです。リアガ
ラスが割れた原因は乗用車が後ろから激突したからかもしれません。
 高速バスに乗る時はシートベルトを忘れないようにしてください。

                           
ご安全に!

2022年8月20日記(使用停止命令)
 以下、報道の引用です
 
「石川・小松労働基準監督署は、停止命令を命じていたプレス機械
 を労働者に使用させたとして、機械器具製造業の個人事業主である
 宮田製作所の代表(石川県加賀市)を労働安全衛生法第98条(使用
 停止命令等)違反などの疑いで金沢地検に書類送検した。宮田製作
 所に対しては、令和3年1月26日に定期監督を実施した。1台のプレ
 ス機械について安全囲いの設置などの安全対策が一切講じられてい
 なかったことから、使用の停止を命じる行政処分を下した。同年6
 月23日に再監督を実施したところ、停止命令の対象となった機械の
 使用を現認している。同労基署は「機械が使えないと作業に遅れが
 生じるため、安全よりも仕事を優先して使用し続けていたようだ」
 と話している。「労働災害は偶然発生していなかったが、機械は安
 全装置のない古い型の物で、非常に危険だった」とした。
 (引用終わり)

 情報が古いのですが、令和3年12月10日に送検されています。
 使用停止命令を無視して生産を続けるのは論外ですが、使用停止命
令を出して半年後に再調査したというのは、監督署側にも問題があっ
たのではないでしょうか。プレス機械が使えないということは事業者
にとっては死活問題です。安全囲いであれば、生産を再開するために
数日で対応できると思います。その改善(是正)報告が1カ月たって
も出てこないということは、廃業したか、命令を無視して使用してい
ると考えるのが普通だと思います。


2022年8月20日記(フォークリフトで歩行者を死亡させる)
 以下、報道の引用です
 「埼玉・熊谷労働基準監督署は、フォークリフトを無資格で運転さ
 せたとして、畜産業の㈱福島牧場(埼玉県深谷市)と同社代表取締
 役を労働安全衛生法第61条(就業制限)違反の疑いでさいたま地検
 熊谷支部に書類送検した。労働者が運転していたフォークリフトが
 近隣住民に衝突し、住民が死亡する災害が発生している。災害は令
 和3年4月16日、埼玉県深谷市の市道で発生した。同労働者は同社敷
 地から市道を挟んだ場所にある倉庫に牧草を運ぶため、市道をフォ
 ークリフトで走行していたところ、付近を歩いていた住民に衝突し
 て轢いた。住民は、脳挫傷によって死亡している。フォークリフト
 は最大荷重1.7トンで、四角く圧縮した牧草4個を2段に分けて積み、
 運搬していた。牧草は1つの大きさが約1メートル四方、重さ約100
 キロだった。同社にはフォークリフトの有資格者がいたが、同労働
 者と代表取締役は資格を持っていなかった。同労基署は、「代表取
 締役は、無資格だがベテランである同労働者にフォークリフトで牧
 草を運んでおくよう指示していたようだ」と話している。
  (引用終わり)

 この件は令和4年5月12日に送検されています。
 同様の事故は昨年7月30日にも大阪でありました。
 (安全週記2021年8月7日を参照してください)
 敷地外の人の通行は予測が困難です。一時的に通行止めしたり、監
視者を配備しなければなりません。また、少しでも荷を積んだ状態で
敷地外を走行するためには道路使用許可を受けなければなりませんの
で該当する場合は道路使用許可の申請および許可期間を確認してくだ
さい。


2022年8月20日記(運転開始の合図)
 機械の運転開始の合図を行わせなかったということで書類送検され
る災害がありました。
 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202208181343.pdf
 合図を行わせなかったということですが、どんな状態だったのでし
ょうか?
 (作業者A)「調整終わったから、起動していいかな?」
 (作業者B)「準備はいいよ」
 (作業者A) *起動スイッチを操作する ⇒ 事故発生
 上記の場合は、どう思いますか。作業者Aは、Bに対して質問しただ
けとも言えます。“合図”とは言えないかもしれません。Bにとって
は準備ができたことを伝えただけで、すぐに機械が動くとは思わなか
ったとならないでしょうか。
 合図には“声”も含まれますが、今回の場合は納品先だったので周
囲の音で聞こえなかったかもしれません。
 この事故の場合、たとえ合図が無かったとしても、作業者Aの隣に
作業者Bが立っていたら事故にならなかったでしょう。
 2人で作業している時に、相手の姿が見えない、距離が遠くて聞こ
えないという時は怖いと思いませんか?もし、作業中に相手が起動ボ
タンを押すと殺されるかもしれません。そんなときは、“ロックアウ
ト”という方法もあります。起動ボタンに鍵をかけるのですから、鍵
を持っている人が知らない間に起動されて災害にあうことはありませ
ん。
(参考)
 https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/lockout/
 https://lo.midori-sh.jp/?page_id=2749 
 https://ec.midori-anzen.com/shop/e/ea156_001/


2022年8月20日記(濃硫酸流出)
 
8月16日、浜松市の「日本ケイカル」の工場から濃硫酸が最大1900
リットル流出したと報道がありました。触れると重度の化学熱傷を生
じさせる危険なものです。幸い、従業員や周辺住民に被害は出ていな
いようです。
 原因は、機械の誤作動で配管が過熱し、破損したためということで
す。
 多くの事業所では化学物質の漏洩に備え、吸着マットなどを用意し
ていると思いますが、吸着マット等の量はどのように決めているので
しょうか。1900リットルを吸着するマットを常備しておくことは難し
いでしょう。緊急時の手順を定めていると思いますが、少量の場合と
すでに敷地外に出ている場合では手順が異なると思います。化学物質
の保管量によっては複数の手順を準備しておかなければなりません。


2022年8月20日記(労働災害発生状況)
 8月18日に労働災害発生状況の公表がありました(7月末までの統計)
 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html
 死傷災害(休業4日以上)で事故の型別を見ると、長年、「転倒」が
一番多かったのですが、新型コロナが一番多くを占めています。
 平成29年の実績をもとに第13次労働災害防止計画は2018年4月から
2023年3月の5年間で死傷災害を5%以上減少させる目標を立てましたが
2022年7月では74%の増加となっています。ただ、新型コロナの件数を
除外しても5%減少させる目標は達成困難な状況です。
 ふと考えるのは労災保険の収支は大丈夫なのだろうかという点です。
労災保険制度にはメリット制があり、保険給付の多いところは保険料を
増額させるものですが、新型コロナに関してはメリット制から除外する
ということなので、労災保険は支給過多状態なのではないかと心配して
います。

                           ご安全に!

2022年8月13日記(東大寺お身拭い)
 8月7日に奈良の東大寺でお身拭いの行事が行われました。3年ぶりと
いうことで注目を浴びました。
 お身拭いは僧侶や関係者が140人で行われました。東大寺の大仏は高
さが15mあります。そのような高いところでヘルメットも安全帯もあり
ません。労働安全衛生法違反なのか?となりますが、まず、「僧侶は労
働者なのか?」を考えなければなりません。その判断となる通達は、
 「昭和27年2月5日の労働省基発49号では以下のようにされています。
  ①宗教上の儀式、布教等に従事する者、教師、僧職者等で修行中の
   者、信者であって何等の給与を受けず奉仕する者等は労働基準法
   上の労働者でない。
 ということで、労働安全衛生法の適用はありません。しかし、法違反
がなくても、危険を感じますが、僧侶が高所作業車に乗ったり、ゴンド
ラに乗って清掃したり、フルハーネスにヘルメットを着用して“お身拭
い”は興ざめになるでしょう。


2022年8月13日記(ロボットが子供の指を折る)
 
「ロシア製のチェス用ロボットが少年の指を折る」というニュースが
あり、検索すると動画が見つかりました。(下記は全て同じ動画です)
 https://gigazine.net/news/20220725-chess-robot-grab-and-break-finger/
 https://www.techno-edge.net/article/2022/07/26/124.html
 子供対ロボットのチェスですが、ロボットが駒を取り、ロボット側の
駒を置く前に子供が同じところに手を出したために挟まれました。ロボ
ットは工場にあるような物のように見えますので、子供の指などは簡単
につぶしてしまうでしょう。チェスは交互に駒を動かす競技なので、子
供とロボットが同時にチェス盤に手を触れることは想定していなかった
ようです。
 事故の原因は、ロボットの手番の時に子供が駒を動かしたからですが、
事故を防ぐためには、次のような安全対策が必要です。
 ①駒を動かすだけなので、非力な弱い駆動モーターを使う
 ②ロボットのカメラには、チェス盤と駒以外のものが写り込んだら緊
  急停止する構造
 ③赤外線センサーで人間の指がチェス盤の上にある時は停止する構造
 ④ロボットアームに設定以上の力が加わった場合は原点復帰する構造
 ただし、②③④は装置が故障または誤動作した場合には事故になりま
すので、①の方法が必要です。

                           ご安全に!

2022年8月6日記(安全教育の未実施で書類送検)
 書類送検事例を紹介します(伊勢新聞より引用)
 
 「労働安全衛生法違反で書類送検 四日市市内の会社、作業員に安
  全教育せず 四日市労基署」
  作業内容を変更した労働者に対して安全教育をしなかったとして、
  三重県の四日市労働基準監督署は21日、労働安全衛生法違反の疑い
  で、建築工事、鋼構造物加工などを営む伸和工業所と代表取締役を
  津地方検察庁四日市支部に書類送検したと発表した。
  同署によると、同社は3月1日に作業内容を変更した作業員1人に安
  全教育をしなかった疑い。同作業員は4月4日にドリルマシンを用い
  てH型綱の加工をする際、ローラーの間に右足を挟まれて切断する
  災害を起こしたため、同署が調査し発覚した。(引用終わり)

 社員を雇い入れた際に安全衛生教育を実施することは労働安全衛生法
第59条に定めがあります。また、第59条の2項には作業内容を変更した
際の安全衛生教育を実施することが定められています。上記の書類送検
事例は、作業内容変更時の安全衛生教育をしていないと判断されたよう
です。
 さて、みなさんの会社では、作業内容変更時の安全衛生教育はどのよ
うにしていますか? 
 作業内容変更時の安全衛生教育は、作業手順書を見せながら説明し、
リスクアセスメント結果を指導し、残留リスクに対する順守事項を説明
することが必要です。
 上記の書類送検事例では危険性を教育していなかったことが大きなポ
イントだと考えます。リスクアセスメント結果は重要な教育ツールでも
あります。

                           
ご安全に!

2022年7月30日記(個人事業者等の災害を防止)
 令和3年の労働災害死亡者数は867人でした(5月30日発表)。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25944.html
 しかし、この数字は仕事中の死亡災害の全てではありません。厚生労
働省が発表した867人は“労働者”が対象であり、事業主や個人事業者
は含まれていません。私自身も個人事業者であり、個人タクシーの運転
手、一人親方、芸能人やフードデリバリーであるウーバーイーツの配達
員も個人事業者です。農業従事者、個人で商いをしている店舗など厚生
労働省が発表している対象外がとても多く、事業主を含めた業務中の死
亡者数の実態は判らないのです。おそらく事業主や個人事業者の死亡災
害は数百人いるはずです。もしかしたら、労働者の死亡者数より多いか
もしれません。
 厚生労働省は「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する
検討会資料を公表しました
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26936.html
 たとえば、死亡災害のうち、墜落転落による死亡災害は200人を超え、
死亡災害の4分の1を占めるほど多いのです。そのため、法により、墜落
転落災害防止のために、柵や囲いを義務付けたり、安全帯の着用やヘル
メットの着用などを義務つけていますが、これは労働者に対する災害防
止措置であり、個人事業者に対する義務は何もありません。安全衛生教
育(特別教育を含む)を受ける義務もありません。しかし、労働安全衛
生規則が改正され、2023年4月1日から、事業者の義務として、作業を請
け負わせる一人親方や同じ場所で作業を行う労働者以外の作業者に対し
ても作業方法を周知したり、安全のための保護具を使用させるなどの措
置が追加されます。
 私は、「街の社長さんを応援します」のテレビコマーシャルで有名な
日本フルハップの会員向けの冊子の中で安全衛生のコラムを書き続けて
います(2014年11月から継続中)。毎月1ページのコラムで事業主およ
び個人事業主の災害の減少を願って書き続けています。

                           
ご安全に!

2022年7月23日記(グラインダーの事故防止)
 ある会社で、グラインダーで金属のエッジ部を研削し、グラインダーを
置いた時に、まだ惰性回転している砥石に当たってケガをする事故があり
ました。
 グラインダーの惰性回転はかなり長く続きます。「グラインダー作業で
は惰性回転が終わるまで目を離すな!」とルール化して指導しても、これ
は守りにくいルールです。惰性回転が止まるまで待ってられず次の作業を
始めたいと考えるのが普通だと思いますので、「守られないルール」と言
えます。
 その会社ではブレーキ機能付きの充電式グラインダーを購入し、グライ
ンダー立てを自作しました。グラインダー立ては回転部が作業者と反対側
にしか置けない形状で、さらに取り出しやすく置きやすい角度が付けられ
ていいます。ブレーキ機能付きなので、すぐに惰性回転は終わります。さ
らに充電式なのでケーブルに引っ掛かることも無くせました。
 残念ながら災害が発生しましたが、安全性と作業性を両立した改善対策
ができました。


2022年7月23日記(熱中症に最大警戒してください)
 週明けから35度ぐらいまで気温が上がりそうです。いままで以上に熱中
症に注意してください。もし、重い熱中症になれば緊急搬送が必要なので
すが、ご承知の通り新型コロナが異常なほど急拡大しています。これによ
り救急車を要請してもすぐに来てくれないかもしれません。また、救急車
が到着しても受け入れてくれる病院が見つからないかもしれません。
 熱中症を防ぐために、暑熱環境の対策を行い、作業前の水分補給、休憩
時の水分補給をしっかりとり、状況に応じて休憩時間を増やしたり、回数
を増やし、作業者相互に声掛けをしながら体調異常の早期発見に努めてく
ださい。また、1人作業は避けてください。
 もし、重い熱中症の症状が出た場合に、救急車の到着を待つだけでは悪
化するばかりです。速やかに深部体温を下げなければなりません。しかし
深部体温を下げることは非常に難しいものです。氷などで冷やしながら、
水をかけて風をあて、気化熱を利用するなどで対応してください。


2022年7月23日記(コロナ第7波)
 新型コロナ第7波は今まで以上に急激に拡大しています。しかし、重症
者が少ない等の観点から行動制限には至っていません。日本では第6波ま
で行動制限によって感染を防いできましたので、今後、行動制限を実施し
なければ、今回の第7波はどれほど拡大するか判りません。自治体として
行動制限を設けなくても企業の中では行動制限を考えなければならないと
考えます。たとえば、職場の親睦会をして職場全員が感染者・濃厚接触者
になれば業務が停止してしまいます。
 たとえば、職場同士の夜の飲食は4人まで
      観客の多いスポーツ観戦の自粛
      長時間同じ空間の中に閉じこもる映画鑑賞などの自粛
      リモートワークの継続および対象拡大
      会議は社内でもZOOM等で実施
      暑い職場ではノーマスクでなくフェースシールドの着用
      夏期休暇での外出自粛 など     

                           ご安全に!

2022年7月16日記(着替えは労働時間?)
 川崎市のカフェで働くパート従業員の30代女性が「制服への着替え時間
を労働時間と認めないのは違法だ」と訴え、労基署から是正勧告が出たと
明らかにした。という記事がありました。 
 就業規則に「従業員は、特別の場合を除き、業務中は会社が貸与した所
定の制服を着用しなければならない。」と明記している場合、労働時間と
しなければならないでしょう。私服の汚れ防止としてユニホームを提供し
て、私服勤務可能であれば労働時間にはなりません。また、自宅でユニホ
ームを着て通勤することを可能としていれば着替え時間が判らないので、
労働時間にはならないでしょう
 労働時間とする場合、どのように運用すればいいのでしょうか?
 会社の更衣室の前でタイムカードなどで時間を記録する方法もあるでし
ょうが、友人同士で話しこんだりして着替えが長くなり、それを労働時間
にするのは正しい運用とは思えません。人によって着替えの時間も異なり
ます。対応方法の一例としては、労使協定で着替え時間をあらかじめ定め
て、着替え時間と労働時間と合算する方法が合理的だと思います。
 また、着替えとは別に始業時間の前にラジオ体操をしている会社も多い
でしょう。この場合、ラジオ体操を義務としている場合には労働時間とな
り、ラジオ体操は任意とした場合には労働時間にはなりません。しかし、
ラジオ体操を任意とした結果、腰痛などが増える可能性もありますのでラ
ジオ体操を任意に変えることは好ましくないでしょう。また、ラジオ体操
はその日の健康状態の把握に効果的(職長が各自の動きを見ながら体調確
認できるという効果もあります)なので、労働時間に入れて、職場の仲間
が互いの顔を見ながら、かり身体を動かすように指導することをお勧めし
ます。


2022年7月16日記(サンダル原因で転倒事故)
 2018年8月、横浜市の居酒屋で40代男性従業員が、雨にぬれた外階段を
店備え付けのサンダルを履いて降りていた際に、転倒して骨折し、会社に
対して損害賠償を請求し、先日判決があり、会社側に支払いが命じられま
した。サンダルは裏面が摩耗してツルツルの状態で階段が濡れていて滑り
やすい状態だったということです。
 会社が使用させるものは機械であっても保護具であっても安全に作業で
きるものを選択し、機能を維持しなければなりません。今回の場合、サン
ダルに致命的な欠陥があったというのではなく、階段が濡れていたという
要因もあったと思います。
 私が訪問した会社のことですが、靴は履き替える必要がある場所にスリ
ッパを用意していました。そこで作業する方は先芯が付いた安全靴で職場
以外の人はスリッパとなります。スリッパですから底はツルツルです。水
が床にこぼれていたら転倒するかもしれません。足の上に荷が落ちてくる
とケガをするでしょう。臨時に入室する人の安全を確保しておく必要があ
ります。
 また、防じんマスクや防毒マスクを使用している場合は、扱う化学物質
が変わったり、作業方法が変われば呼吸用保護具の選択を再検討しなけれ
ばなりません。


2022年7月16日記(コロナ第7波)
 厚生労働省では「化学物質管理に関する社内安全衛生教育用eラーニン
グ教材」を公開しています。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26157.html
 全部で8種類のプログラムがあり、全て見ると80分ほどあります。内容
は作業者向けの初心者レベルからリスクアセスメント担当者など上級者レ
ベルまで幅広く、利用しやすいと思います。是非、職場の安全衛生教育に
活用してください。


2022年7月16日記(コロナ第7波)
 7月16日の新規感染者は11万人を超え、あっという間に第6波のピークを
超えてしまいました(第6波のピークは2月3日の104千人)。夏休み期間で
はありますが、行動制限は実施されないということで、新規感染者はもっ
と増える可能性があります。当然、職場でも新規感染者が発生し、その都
度、作業応援などが必要になるでしょう。作業が変わる時には、安全教育
が必要です。作業方法を指導するだけでなく、想定される危険やそれを回
避する方法などリスクアセスメントの結果に基づく教育が必要です。当然
特別教育の対象業務であれば、作業応援であっても認められません。
 先日、飲食店に行くと“マスク会食”(食べ物を口に入れる時だけマス
クを外す行為)をしている人は一人もいません。喫煙室の中を見るとマス
クを外したまま狭い室内で喋っています。スーパーの入り口にはアルコー
ル洗浄液を用意していても素通りする人が多く、基本的感染対策が疎かに
なっています。
 今一度、食事中、休憩中、喫煙中などの感染対策を指導していただきた
いと思います。

                           
ご安全に!

2022年7月2日記(事務所の室温は38℃)
 連日、暑い日が続きます。私の事務所が何度まで上昇するかテストして
みました(窓は開けています)。その結果38.2℃まで上昇しました。この
中で仕事をしていたら熱中症になるレベルですが、空調服を着て仕事をす
ればそれほど危険とは感じませんでした。改めて空調服の効果を実感しま
した。電気代が高騰しているので、空調温度を高めに設定して、空調服を
使用するのもいいかと思います。
 過日、東京都庁で電力ひっ迫注意報に伴い、事務所の照明を全て消した
映像がテレビでありました。パソコンの画面の明るさだけで仕事をしてい
ました。しかし、照明を消したところでさほど効果はないでしょう。電力
節電で照明を消すことは労働基準規則(事務所では300ルクス以上)に反
します。都庁が率先して電力削減をPRしたのでしょうが、最低の照度は
確保しなければなりません。また、事務所以外の通路などの照明を消した
会社も多いかもしれませんが、暗いと通路の状態が見えにくく、転倒事故
の要因にもなりますので、照明器具の節電には十分注意してください。


2022年7月2日記(USJで荷役作業中に下敷きになり、死亡)
 
7月1日朝、大阪にあるユニバーサルスタジオジャパン(USJ)でバッ
クヤードで重さ2トンもある配電盤をトラックからフォーリフトで降ろす
作業で、荷が傾いたため、支えようとした28歳の作業者が倒れた荷の下敷
きになって死亡する事故がありました。
 荷が傾いた時に支えようとしても重量が2トンもあれば作業者が何人支
えようとしても無理です。“倒れそうな荷を支えてはいけない”というよ
りも先に、フォークリフトの近くに作業者を立ち入らせてはなりません。
 フォークリフトの周囲4m以内には近づいてはいけないなどの注意喚起
をしている会社もありますが、実際には接近している状況は頻繁に発生し
てい可能性が高いと感じます。そして、荷が傾いたら反射的に押さえよう
と手を出してしまいます。
 実際に物を見ていませんが、木箱に入った制御盤であれば、重心の位置
が極端に端の方ということはないでしょう。なぜ傾いたかが不思議です。
 考えられる理由として
  ・マストの傾斜操作を間違えた
  ・フォークの長さが荷よりも短かった
  ・木箱が破損した
  ・フォーリフト走行中に急ブレーキをかけた
  ・床面に段差や傾斜があった
  ・フォークリフトの最大荷重が2トン未満であった
 このような事故があった場合、労働基準監督署が調査するポイントは
  ・フォークリフト運転者の資格の有無
  ・作業指揮者の選任など管理体制の状況
  ・作業計画書の有無(走行経路、荷の大きさ、重量など)
  ・立入禁止措置の実施状況
  ・フォークリフトの点検および整備の状況
 荷役作業での労働災害は増加傾向にあります。作業の前に荷の安定状態
や、フォークを少し上げた状態での荷の安定状態を確認して作業しましょ
う。

                           ご安全に!

2022年6月25日記(梅雨明け予想)
 24日に各地の梅雨明け予想が発表されました。
 https://tenki.jp/forecaster/y_maki/2022/06/24/18034.html
 近畿では平年は7月19日頃ですが、今年は6月下旬など全国的に梅雨明け
が早くなりそうです。梅雨が明けると一気に暑い夏になります。熱中症に
は十分警戒しなければなりません。
 厚生労働省では熱中症予防のための情報・資料サイトを公開しています
参考にしてください。
 
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/

2022年6月25日記(管理責任者、取扱責任者などの責任者について)
 みなさんの事業所では、「管理責任者」「取扱責任者」「火元責任者」
などの選任および表示はどのようにしているのでしょうか。
 ある事業所では、その製造課の建物にあるもの全て製造課長を管理責任
者と表示されていました。機械設備や分電盤、課が使用する会議室や湯沸
室、休憩室、消火栓にいたるまで同じ製造課長の名前が表示されていまし
た。製造課長の管理範囲にあるものだから間違いではないでしょうが、全
て表示するのであれば表示の意味がないと思います。また、名前だけ表示
して何も職務がなければ選任する必要がないと思います。
 「管理者」と名が付くのですが、管理職に限定する必要はありません。
実務をする人を選任すればいいと思います。たとえばクレーンであれば、
始業点検など維持管理をする人を管理責任者にすればいいですし、会議室
であれば会議室を予約した人がその会議時間での管理者として特に表示し
なくても問題ないと思います。分電盤は電気主任技術者など新たに配線を
行う際に連絡しなければならない人にすればいいと思います。
 「管理責任者」という言葉の定義はありません。会社の中で管理責任者
の職務を定め、その業務をする適任者を管理責任者としてください。
 またある会社では消火器1本1本に管理責任者を表示していました。「消
火器の管理責任者とはどんな職務があるのですか?」と聞くと、「点検は
専門業者の仕事ですが消火器が汚れないように清掃することと、勝手に移
動されていないか、消火器の前に物を置いていないか確認する仕事です」
と明確に答えていただいたことがあります。
 管理責任者等を定める場合には、まず、その管理責任者の職務を定めて
職務を遂行する適任者を選任するようにしてください。

                           
ご安全に!

2022年6月18日記(労災隠し)
 労災隠しとは労働災害が発生したにも関わらず報告書を提出しなかった
ものをいいます。たとえば下記書類送検事例があります。
 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/20220530_1649.pdf
 この災害は令和2年11月10日に災害が発生し11月25日まで休業したにも
かかわらず労働者死傷病報告を提出しなかったものです。
 労働安全衛生法では休業4日以上の労働災害が発生した場合には遅滞な
く様式23号の労働者死傷病災害報告書を提出しなければなりません。なお
休業4日未満の場合は1~3月発生分を4月末まで、4~6月発生分を7月末ま
で、7~9月発生分を10月末まで、10~12月発生分を1月末までに報告しな
ければなりません。
 その報告がなかった場合で労働基準監督署が事実確認ができたものは、
ほぼ例外なく書類送検されるようです。労働安全衛生法では罰金50万円以
下と定めています。書類送検については休業4日であっても40日であって
もケガの程度には関係ないようです。
 以前、労働基準監督署の担当官に「なぜ労災隠しは口頭指導や是正勧告
ではなく、書類送検になるのですか」と聞きました。すると、労働災害の
統計をもとに労働災害削減対策を検討するので、労災の報告に抜けがあれ
ば、災害の実態とかけ離れた災害分析となる可能性があるということでし
た。
 ケガをして病院等で治療し、療養補償給付を請求したことで労災の届出
が完了したと思ってはいませんか? 療養補償給付や休業補償給付を請求
しも別に労働者死傷病報告が必要になるのでご注意ください。
 労働者死傷病報告を提出しない理由としては、
 〇報告すると労働基準監督署が調査に来られると作業がストップしたり、
  他に法違反が見つかってペナルティを受けることをさけるため
 〇客先での災害であって、報告すると客先に労働基準監督署が調査に来
  られると迷惑をかけてしまったり、客先の信用を失うため
 などがあります。たとえば、報告書は作成したが、単純に提出すること
を忘れた場合はどうなるのかを監督署の担当官に聞きました。すると、単
に提出を忘れていたと言われても、故意に提出しなかったのか、たまたま
業務が多忙で忘れたのかが確認できないので書類送検しますということで
した。
 なお、労災隠しには虚偽報告もあります。たとえば、客先で腕を骨折し
たが、客先に迷惑をかけないために自社構内で腕を骨折したという嘘の報
告も該当します。
 災害が発生した時に関係者が全員で隠蔽を図っても、今ではSNSなどで
匿名でつぶやいたことが広がることもあるので、隠蔽は出来ないと考えて
ください。
 世の中にはいろいろ悪いことを考える人が居るようで、たとえば、医師
が1週間の休業・加療が必要と判断した場合に、会社を休ませず、出勤し
て1日中、会社の療養室で寝かせる場合や、会社は休んだが労災のため、
出勤扱いとして休業0日とした場合でも、同様に労災隠しとして書類送検
されるでしょう。
 あるいは、ケガをした本人が労災手続きを嫌がって「労災ではない」と
主張しても、労災の判断は労働基準監督署が行うものなので、労災になる
場合があります。また、災害が発生しても事業主が「被災者が故意に災害
を起こしたものだから労災ではない」と判断しても、労働基準監督署が労
災と判断すれば労災になります。
 労災や通災は多種多様で判断が難しい場合があれば労働基準監督署に相
談してください。相談しにくい場合は、当社に連絡していただければアド
バイスさせていただきます。

                           
ご安全に!

2022年6月11日記(脚立から転落)
 墜落防止措置を取らず社員に高所作業をさせたとして、淀川労働基準監
督署(大阪市)は5月11日、労働安全衛生法違反の疑いで、ヤマト運輸
(東京)と同社の伊丹空港支店(大阪府豊中市)の40代の男性センター長
を書類送検しました。
 被災した社員は脚立に乗って高所に掲示物を貼る際に約3mの高さから
落下して頭を打ち、意識不明の状態ということです。
 書類送検容疑は昨年9月4日、同支店で社員が脚立に乗って高所に掲示物
を貼る際、足場を組むなどの墜落防止措置を取らなかったとしています。
 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202205121057.pdf
 脚立には腰の高さぐらいの低いものから最大では5mを超えるものもあ
ります。労働安全衛生法では2m以上の高所では作業床を設け手すり等で
転落防止措置をとる必要があると定めています。
 なお、2m以上では脚立を使わずに高所作業車などの昇降設備を使う方
法などを検討してください。フォークリフトに人を乗せて作業することは
禁止されていますが、フォークリフト用作業台を使う方法はあります。市
販されているものでは下記のようなものがあります。
https://item.rakuten.co.jp/goldspace/oogata-nk30/ 
 ある会社では2m以上の脚立は赤で着色して、「この脚立を使う場合は
工場長の許可を得て、ヘルメット着用すること」と表示されていました。
しかし、工場長が立ち会えば安全に作業できるというものではありません。
また、ヘルメットを着用しても安全とは言えません。2m以上の脚立を使
用する場合は「この脚立を使用する際にはヘルメットを着用し、必ず安全
帯のフックを掛けて使用すること」と表示するべきだと思います。また、
2m以上の脚立は手すりがあるものやアウトリガー(横に張り出しがあっ
て安定性を高める)が付いているものを使用するようにしてください。
 脚立は一般家庭でも使われている身近なものですが、逆に身近なものだ
から安全教育をしないことも多いと思われます。そのため、天板に乗って
作業したり、段差がある場所で使ったり、逆向きに降りたり、開き止めを
していないなどの不安全行動から事故になることがあります。
 一般に“踏み台”と呼ばれるような低いものであっても転落して頭蓋骨
骨折で死亡するなどの事故もあります。脚立作業はリスクが高い作業とい
う認識をもち、使い方を指導し、使用方法を監督してください。

                           ご安全に!

2022年6月4日記(令和3年労働災害発生状況)
 令和3年の労働災害発生状況が発表されました。
 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html
 死亡者数は867人になり、前年比8.1%増(65人増)ということでした。
 この数字にはコロナによる死亡(89人)もふくまれているので、コロナ
を除くと778人となりますが、前年より6人減ったことになります。
 休業4日以上の死傷病は149,918人となり、前年比18,762人増加となって
います。しかも、コロナを除いても130,586人(前年比5,471人の増加)と
なっています。死傷者数が13万人というのは20年前と同じ水準です。
 20年前と同じということですが、この20年の間にはリスクアセスメント
ができ、足場の規制強化や足場の特別教育追加、安全帯も胴ベルト型から
フルハーネスに移りつつあり、安全対策は年々向上しているはずですが、
結果が伴っていません。6月は全国安全週間の準備月間です。過去の安全
対策が継続されているか確認しましょう。

 
2022年6月4日記(すき家ワンオペ廃止)
 2022年1月、牛丼チェーン「すき家」の名古屋市港区の店舗で、女性店
員が勤務中に倒れ、死亡していたことがわかりました。女性店員は2022年
1月16日の午後10時から翌日午前9時までのシフトで勤務。午前5時半ごろ、
厨房で倒れた(死因は心筋梗塞)ということですが、発見されたのは午前
8時40分頃でした。この店舗では午前5時から9時までは、接客から調理、
そして洗い物までを1人で対応しなければならない「ワンオペレーション
(通称「ワンオペ」)の状態で、朝9時からの勤務予定者が出勤したとき
に発見されました。すき家では深夜の強盗被害が多発したことから深夜0
時から午前5時までは2人体制でしたが、午前5時からはワンオペというこ
とでした。このような事態を防ぐために、ワンオペを6月中に廃止すると
発表しました。
 皆さんの職場では1人作業をしているところはありませんか?健康状態
の異変はいつ発生するか判りません。健康診断で異常が認められなくても
突発的な異変の可能性がありますし、これから夏に向かって熱中症の危険
性もあります。
 すき家と同じように事故が発生してから複数名体制にするのではなく、
事故を事前に防ぐ体制・環境を作りましょう。

                           
ご安全に!

2022年5月28日記(被災時の救急処置)
 5月6日愛知県の県立工科高校2年の男子生徒が、実習授業中に大けがを
負い、その後死亡する事故がありました。男子生徒は木材加工の授業で、
ノミの柄の末端に付いている金具を金づちで叩いて調整する作業を行って
いたところ、誤って刃先が左足の付け根付近に刺さったということです。
生徒は救急搬送されたが、出血多量で一時心肺停止となり、緊急手術で一
命を取り留めたが、再び出血するなどし、12日に死亡しました。
 どのような状態で自分の足に刺さったのかはよくわかりませんが、柄を
叩く時に刃先に気を止めず叩いたのか、支える手が滑ったのだと想像しま
す。さて、問題はその後です。適切な止血ができたのでしょうか? 昔は
出血場所から心臓に近いところで紐で縛り、さらに結び目を捻じって強く
締付けると教わりましたが、この方法は圧迫しすぎるのでよくないという
ことです。出血場所を素早く見つけ指で動脈を圧迫すれば出血を止めるこ
とができ、命を救えたかもしれません。職場で救急処置の方法を教育する
こともあるでしょうが、AEDなどの心肺蘇生法が中心になっているので
はありませんか。呼吸停止と動脈からの大量出血があれば出血を止めるこ
とが優先されます。切れた動脈の位置が判れば指1本でも出血を止めるこ
とができるのですが、実際に目の前でそのような事故があった場合に冷静
に対応することは非常に困難です。大量出血を想定したイメージトレーニ
ングも有効だと思います。、
 話は変わりますが、5月14日に岐阜協立大学の野球部員が1時間ほどラン
ニングして倒れました。重い熱中症だと思われます。監督は救急車を呼ば
ず野球部の車で病院に搬送しましたが、翌日、死亡したということです。
すぐに救急車を要請していたら命は助かったかもしれません。学校から病
院までが近く、救急車を要請するより早く到着できると判断したかもしれ
ませんが、病院が必ず対応できるとは限りません。これは明らかに判断ミ
スです。遺族が学校を訴えるかもしれません。
 熱中症は本人の健康状態が大きく影響するので、責任を問うことは難し
いかもしれませんが、初期対応に間違いがあれば民事訴訟などに発展する
可能性があります。これからさらに暑くなることが予想されますので、予
防について教育することも必要ですが、処置方法も合わせて教育してくだ
さい。

                         
  ご安全に!

2022年5月21日記(マスク着用ルール)
 5月20日、政府はコロナ対策のマスク着用ルールについて公式見解を発
表しました。簡単にまとめると以下の通りとなります。
(屋内で会話がある場合)
 ・2m以上の距離を確保できる場合⇒着用を推奨、ただし、十分な換気
  があれば外すことも可とする
 ・2m以上の距離が確保できない⇒着用を推奨
(屋内で会話がほとんど無い場合)
 ・2m以上の距離を確保できる場合⇒着用の必要はない
 ・2m以上の距離が確保できない⇒着用を推奨 
(屋外で会話がある場合)
 ・2m以上の距離を確保できる場合⇒着用の必要はない
 ・2m以上の距離が確保できない⇒着用を推奨
(屋外で会話がほとんど無い場合)
 ・2m以上の距離を確保できる場合⇒着用の必要はない
 ・2m以上の距離が確保できない⇒着用の必要はない 

 ゴールデンウィークで各地の観光地が賑わい、元の生活に戻りつつあり
ますが、新規感染者は国内で1日に4万人に達することもあり、まだまだ十
分に対策しなければなりません。さらに熱中症対策も必要となります。
 政府の見解は示されましたが、会社ではクラスター発生による業務の停
止などのリスクがありますので、政府が出した見解をそれぞれの社員が拡
大解釈して感染対策が甘くならないように、会社・職場・特定の場所ごと
にルールを決める必要があります。特に喫煙室や喫煙場所での会話は継続
して禁止しなければなりません。
 なお、熱中症のおそれがある場所では一般的なマスクではなく、フェー
スシールドや透明マスクにする方法もあります。 


2022年5月21日記(4630万円誤送金)
 連日、山口県阿武町でのコロナウイルス対策特別給付金の誤送金事件が
話題になっています。
 事件は、担当者のミスと、町役場でのチェックミス、金融機関で誤記入
に気が付かなかったミスが重なり、誤送金先が返却に応じない住人と悪い
ことが重なりました。
 今回の事件をハインリッヒの法則(1:29:300)に当てはめて考えると、
  【1】誤送金が返却されなかった
  【29】金融機関が間違いに気づいて送金を止めた
  【300】担当者が入力ミスをしたが、金融機関に出す前に気づいた
 安全教育などでハインリッヒの法則の法則を説明する時の事例にしよう
かと思っています。
 数字の入力ミスなどは多くの方が経験したことがあると思います。それ
が致命的な大きな問題につながることもあるという事例であり、チェック
機能があったとしても、チェックをすり抜けることがあるという事例とし
て教訓にしたいものです。

                           
ご安全に!

2022年5月14日記(競歩で水分補給時に消毒液を提供)
 5月7日に甲府市で開催された山梨県高校総合体育大会の女子5000m競歩
で給水ポイントに置いたコップにアルコール消毒液を入れてしまい、それ
を飲んだ選手が嘔吐や途中棄権するトラブルが発生しました。
 アルコール消毒液をラベルを剥がした飲料水用ペットボトルに入れたこ
とが大きな間違いです。飲料水を置くところに一緒に置けば間違える可能
性は非常に高くなります。
 アルコール消毒液をペットボトルに入れた方は、間違えないようにラベ
ルを剥がしたのですが、ラベルがなくても、容器の形と、色から飲料水と
判断してしまいます。
 ペットボトルは軽くてアルコールを入れても変質しませんし、フタがあ
って密閉できるので使いやすいものですが、ペットボトル=飲料というイ
メージがあるので、何を入れても飲料用と思い込みやすくなります。
 そのため、間違って飲んでしまうという誤飲事故を防ぐためには、絶対
に他のものを入れてはいけません。
 塗料など明らかに見て判断できるものであればいいと考えるかもしれま
せんが、ペットボトルを容器として扱うことを認めると、灯油を入れたり
さまざまな容器として使われる可能性があるので、認めるべきではありま
せん。
 喫煙室の灰皿の火を消す水であれば問題なさそう思うかもしれませんが、
長期間放置された水を飲んでしまう可能性があるので禁止すべきです。


2022年5月14日記(NHK朝ドラ ちむどんどん)
 NHKの朝ドラ「ちむどんどん」は50年前(沖縄返還前)からスタート
しています。沖縄返還は昭和47年5月15日でした。返還に際して問題とな
ったのは自動車の右側通行です。国内で交通ルールを統一するということ
で昭和53年7月30日に自動車の右側走行から左側走行に改められました。
一日で全ての道路を一斉に変えるのですから相当混乱したようです。
 走行ルールの変更は「沖縄730」と呼ばれ、キャッチフレーズは「車は
左、人は右」でした。
 当時の記録は、科学映像館の「沖縄730 道の記録」として公開されて
います。
 http://www.kagakueizo.org/movie/community/4590/
 ルール変更は十分な論議と準備と意識喚起、教育が必要なのだと改めて
感じました。

                           
ご安全に!

2022年5月7日記(知床半島観光船 運航記録)
 知床半島観光船の沈没から2週間が経過しました。遭難者の捜索は難航
しています。
 今週、新たに無線記録の映像が報道されました。日付・コース・出港時
間・ポイントの通過時間が書かれているだけでした。しかも、通過時間の
記載がないなどずさんな管理が明らかになりました。
 私が問題と感じるのは、無線記録用紙には時間しか記載する項目がない
ことです。運航管理者と船長の無線連絡ですから、天候・風速・波高・船
の状況などを記録する必要があるはずです。運航管理者は風速が早くなっ
ていないか、波が高くなっていないかなど運航を続けていいかの判断とな
るものが一切ありません。通過時間だけの記載では記録を残す必要性があ
りません。必要性がないものは自然とやめてしまうでしょう。
 必要な記録とするためには、気象庁の天候予測とポイントごとの天候・
風速・波髙を記録し、気象庁との差異を検証し、天候の急変を予測できる
ような情報です。さらに船やエンジンの状況などの他、標準的な到着時間
との差を調べることも必要です。標準時間との差異があればエンジンの不
調や風・波の影響を知ることもできます。
 安全面以外では、ヒグマやイルカ、クジラが見えた場所や滝の水量、国
後島の見えやすさなど観光PR的なデータも必要でしょう。
 皆さんの事業所でも記録を残すものも多いと思います。たとえばクレー
ンの点検記録では点検日だけ記録するのではどんな状態か判りません。継
続使用して良いかどうか、また、前回との比較ができるものなどが必要で
す。
 逆に、点検項目が多すぎるというのも問題となることがあります。点検
項目が多すぎると、一つ一つの確認がおろそかになってしまい、異常個所
を見逃してしまうおそれがあります。その場合は、点検項目を減らすので
はなく、毎日の点検項目、週に1回の点検項目、月に1回の点検項目に分け
る方法や、奇数日と偶数日で点検項目を分ける方法も、曜日別にする方法
などもあります。

                           ご安全に!

2022年4月30日記(知床半島観光船)
 知床半島の観光船が沈没してから1週間になります。本当に悲しい事故
です。ライフジャケット(救命胴衣)を着けていたとしても水温は3度程
度、3mの波があり、風速15mの風が吹くところでは生き延びることはで
きないでしょう。
 原因はあきらかになっていませんが、会社の無線が故障のため使えない
ということも判りました。通信手段がない状態で出発したことが大きな問
題だったと思います。天候が穏やかであれば通信する必要もないかもしれ
ませんが、強風波浪注意報が出ている状態では会社と観光船は常に情報交
換をしなければなりません。船と会社の連絡が取れていればもう少し早く
帰港して難を逃れたかもしれません。出港前には点検して、異常があれば
躊躇なく出港を取りやめなければなりません。点検と異常発生時の対応が
おろそかになっていたと考えます。
 *衛星電話は船に備え付けられておらず、観覧コースでは携帯電話は圏
外になるようです。
 もうひとつ気になるのはライフジャケットのない状態の人が居たことで
す。装着していればいくら波が強くても脱げるとは思えません。危険な状
態になってから装着を指示したために装着した人としていない人がいたと
思います。「板子一枚、下は地獄」という言葉(船の底の板が一枚外れた
だけでも沈んでしまう。船は危険と隣り合わせという意味)があり、乗船
したらすぐにライフジャケットを装着し、船員は装着状況を確認しなけれ
ばなりません。この事故で思い出すのは2011年に発生した天竜川川下り船
の転覆事故です(乗客にライフジャケットを装着させていなかった)。こ
の事故の影響により天竜川の川下り船は再開しませんでした。
 知床半島では異常発生時に退避する場所もなく、万一の場合にはすぐに
救助に行ける場所ではありません。半島にはヒグマもいるので、転覆の際
に泳いで陸地にたどり着いても安心できません。出港時の天候条件を厳し
くし、強風波浪注意報の時には出港を停止し、天候急変の際には躊躇なく
引き返すことが必要だと考えます。
 なお、沈没した船(KAZU1)は40年前に瀬戸内海を航行するために
作られたという報道がありました。瀬戸内海の比較的穏やかな場所を航行
する船では、オホーツク海で海流が激しくぶつかるような場所には適して
いないように思います。

                           ご安全に

2022年4月23日記(エレベーターの下敷き)
 こちらの記事をご覧ください。
 (ニュース記事引用)
 「東大阪市の工場で、4月15日、従業員の男性がエレベーターの下敷き
 になり死亡しました。15日午前9時半ごろ、若江東町2丁目にあるプラス
 チック製品を製造する「恒徳工業」の工場内で「男性が業務用エレベー
 ターに挟まれている」と従業員から消防に通報がありました。
 約5分後に救急隊が駆け付けたところ、この工場で働く松浦信さん(40)
 が、重さ500キロ以上ある資材運搬用のエレベーターの下敷きになって
 いました。松浦さんは心肺停止の状態で搬送され、その後死亡が確認さ
 れました。警察によりますと、事故の前、従業員が空のエレベーターを
 2階から1階に降ろしていたところ、1階の床から約170cmの高さで突然停
 止。工場内のカメラには、その後、松浦さんがエレベーターの下に入っ
 ていく様子が映っていて、点検中に何らかの原因でエレベーターが落ち
 たとみられています。(引用終わり)

 状況から考えると一般的なエレベーターではなく、ホイストで昇降する
荷物専用エレベーターと考えられます。なんらかの原因によって搬器が止
まったようです。止まる原因として多いものは、荷物が横に飛び出して引
っ掛かる場合です。今回の事故は空のエレベーターということなので、搬
器がずれるなどが原因として考えられます。ホイストで吊った搬器の下に
入ることはとても危険なので絶対にしてはならない行為ですが、やむを得
ず修理等で搬器の下に入る場合には。安全ブロック等搬器を下から支え、
落下しても人が挟まれないようにしなければなりません。対策として「搬
器の下に入るような危険な行為はするな」と指示するだけでは解決しませ
ん。誰かが修理しなければならない時には、作業方法を検討してリスクを
回避できる手順を定め、監視者のもとで行う必要があります。


2022年4月23日記(非常停止ボタンの表示)
 4月20日にインテックス大阪で行われていた“金属プレス加工技術展”
に行きました。そこでプレス機械の安全装置や最新のプレス機を見て来ま
した。新しい物が多い中で、SDGs活動としてプレス機械のオーバーホール
を勧めるブースがありました。古いプレス機に安全対策を付加し、消耗部
品を交換して騒音を減らし、エネルギーロスを減らしながら、プレス機の
寿命を延ばそうというものです。
 いろいろ見ている時にふと、非常停止ボタンの表示がないものが多数あ
ることに気が付きました。私はお客様の事業所で指導する時に“非常停止
ボタン”の表示を付けるようにアドバイスしていますが、最新のプレス機
でも非常停止ボタンの表示がされていないことが気になりました。説明員
に話を聞くと、「非常停止ボタンは色と形が決められているので表示しな
くても判るものなので表示は必要ありません。」ということでした。メー
カーの方ですから非常停止ボタンについては常識なのですが、ユーザーの
作業者は知らないことが多いということをメーカーは理解されていないよ
うです。説明員には「安全のために誰もが判るように表示してください」
とお願いしました。
 皆さんの会社の機械には非常停止ボタンの表示がありますか、購入時に
は表示がない場合であっても表示するようにしてください。また、作業者
が外国人の場合には読めて、意味が分かるような表示をしてください。
 あるメーカーでは非常停止ボタンに接触防止カバーを付けていました。
接触防止カバーを付けると、触れただけでは機能しません。説明員に「な
ぜ接触防止カバーを付けているのですか」と聞くと、「お客さんから接触
防止カバーを付けるという要望が多いのです」という回答でした。その説
明員には安全が最優先だという考えが無いようでがっかりしました。その
説明員に対して「今日は、プレス機械を扱うプロの方ばかりが見に来てい
ます。接触防止カバーを付けて展示する会社は安全を疎かにしているとい
うイメージを与えますので逆効果ですよ」とアドバイスしました。

                           
ご安全に!

2022年4月16日記(アルコールチェック)
 4月から道路交通法改正に伴い、社用車を5台以上使用する場合などは安
全運転管理者の選任義務がある事業所ではアルコールチェックが義務付け
られました。すでに実施していると思いますが、こんなことまで義務付け
られなければならない状況が情けないと思います。
 アルコール検知器の選定については特に決められたものはなく、呼気中
のアルコールを検知し、濃度を表示する機能があれば良いそうですが、セ
ンサーで検知するものであり、センサーの寿命を確認して定期的に更新し
なければなりません。今回の改正以前からアルコール検知器を使用してい
る事業者は注意してください。また、故障して全て“0.00%”と表示する
ようであれば意味がありませんので、取扱説明書等で使用前点検の方法を
確認しておいてください。まだアルコール検知器を購入していない事業所
ではすぐに購入してください。10月からはアルコール検知器でのチェック
が必須になりますので、品切れになる可能性があります。
 今回の改正では、アルコール検知器だけでなく目視等による確認が必要
です。しかし、目視で酒帯び状態を判定するのは難しいと思います。でき
るだけ質問して確認するようにしてください。質問の機会を利用して安全
意識を喚起していただきたいと思います。
 出発前の質問項目例
  「今日のルートで危険個所はどこか把握していますか」
  「運転時にはどんな点に注意していますか」
  「到着予定時間に対してどのくらいの余裕を見ていますか」
  「昨夜はお酒を飲みましたか」「どのくらい・何時まで」
 帰社時の質問項目例
  「時間通り到着できましたか」
  「どのルートを通りましたか」
  「ルート上で、他の人に注意喚起する点はありませんか」
  「危なかったことはありませんか」「それはどんな状況ですか」
  「車の調子で悪い箇所はありませんでしたか」
 また、目視等には呼気の臭いで判断することも入るのですが、コロナ禍
のため、安全運転管理者も運転者もマスクをしているので判りにくいのが
難点です。
 なお、アルコールチェックは安全運転管理者の業務ですが、会議などで
不在になることもありますので、代理者を決めておく必要があります。そ
の代理者を選任する場合は、酒帯びが疑われる場合に躊躇なく、運転禁止
を決定できる人(職制を考慮)でなければなりません。
 皆様の会社には飲酒して運転するような人は居ないと思いますが、万が
一の備えとして実施を徹底してください。
 ただ、今回の改正では安全運転管理者の選任義務がある事業所が対象と
なりますが、社用車が少ない場合やレンタカーを利用する場合でも、同様
の確認をお願いします。
 ちなみに、アルコール検知器の簡易的な機能点検として、点検者がマウ
ススプレーやマウスウォッシュ(アルコール類を含む)を使ったあとでア
ルコールチェックをする方法もあるようです。

                           
ご安全に!

2022年4月9日記(台車の転倒)
 今週は下記の事故例が気になりました。
 
(報道記事引用)
  兵庫・姫路労働基準監督署は、排水溝の隙間を埋めるなど床面を安全
  な状態に保持していなかったとして、発泡スチロール製品製造業の龍
  野コルク工業㈱(兵庫県たつの市)と同社部長を労働安全衛生法第23
  条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで神戸地検に書類送検(2
  月25日送検)した。
  台車が排水溝の隙間につまづいて横転し、下敷きとなった労働者1人
  が死亡する労働災害が発生している。
  労災は令和3年7月16日、同社工場内で発生した。被災者と別の労働者
  1人は、台車に金型を複数枚乗せたものを2人がかりで移動させてい
  た。被災者が台車前方から引っ張り、別の労働者が後方から押してい
  たが、台車が横転した際に被災者が巻き込まれている。
  排水溝には、蓋として金網を数枚かぶせていた。1枚目の金網と2枚目
  の金網の間には、人間の手の平サイズのわずかな隙間が空いていた。
  台車のキャスターが隙間に挟まり、横転したとみられている。
                         (引用終わり)

 
報道では“金網”と記載がありますが、グレーチングと思われます。
 グレーチングは排水溝などに人が落ちないように蓋をするものですが、
完全にふさいでしまうと雨水等が流れ込まないため格子状になっています
が、格子の隙間の幅が狭い物や広いものなどいろいろあります。また、ト
ラックの走行など重量物を支える強度が必要な場合もあれば、軽量のもの
もあります。
 今回の災害はグレーチングとグレーチングの間が広すぎて台車のキャス
ターが落ちて、台車が傾いて倒れたと考えられます(この時に、とっさに
倒れないように支えようとした可能性もあります)。
 排水溝の位置も人が頻繁に通るところもあれば人が近づかないところに
ある場合などさまざまです。
 グレーチングを選ぶ場合は、頻繁にそれを外して掃除する場合には軽い
方がいいのですが、トラックやフォークリフトが通る場合は、十分な強度
が必要になります。また、人や台車が通るところではハイヒールのかかと
部分がはまらないように格子の狭いものが必要となります。また、グレー
チングの表面がツルツルだと、雨の日などに滑りやすくなります(その場
合は表面に滑り止め加工したものが必要です)。取付けの際には隙間がで
きないようにしなければなりません。
 重量物がその上を通ると、変形して、両端が浮き上がってしまい、つま
づきの原因にもなりますので、注意しなければなりません。
 事業所にグレーチングがある場合は、その上を何がどのように通行する
かを考え、危険な隙間がないか、また、変形やズレがないか確認してくだ
さい。


2022年4月9日記(指摘された不適合原因の追究)
 私は、お客様のご要望により職場巡視をする機会も多いです。危険個所
や異常個所を指摘し、お客様は是正していただいているのですが、お客様
には、なぜ危険個所や異常個所ができたのか、また、なぜ、それが放置さ
れたのかを考えていただきたいと思います。そうしなけば、指摘して是正
していただいても再び同じ状況になる場合があります。
 たとえば、“作業の注意書き”の文字が消えている場合、指摘して貼り
替えてもらっても作業者は、その注意書きは必要ないものと考えていたら
文字が消えても問題とは思いません。張り替えたときには“これは必要な
掲示物”と指導して文字が消えたら報告させるように指導してください。
 また、接触防止カバーが外れていた場合、“接触防止カバーを付ける”
だけでなく、なぜ接触防止カバーが外されていたのか、その原因を追究し
なければなりません。なぜ許可なく外されていたか、なぜ外さなければな
らなかったかについて検討しなければなりません。
 さらに、特定化学物質作業主任者の選任ができていなかったというもの
もあります。この場合は法改正などで追加されたことを知らなかったこと
が多いようです。なぜ法改正情報を入手することができなかったかを考え
ていただきたいと思います。

                           
ご安全に!

2022年4月2日記(二酸化炭素消火設備)
 二酸化炭素消火設備は酸素を遮断して消火するもので、粉末消火器や強
化液消火器、泡消火器と違って、消火後に粉末や水などの後始末が必要な
いため、機械式駐車場、クリーンルーム、コンピューター室、精密機械室
などに設置されています。その反面、高濃度の二酸化炭素は人体に有害で
あり、逃げ遅れたりすると生命に関わります。2020年12月から2021年3月
にかけて作業者が逃げ遅れて死亡する事故が相次ぎました。二酸化炭素が
放出されると数秒で部屋全体が白くなり、視界を奪うので避難することは
非常に困難です。
 消防庁では二酸化炭素消火設備による事故の再発防止策をまとめました
 https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/220330_nisankatanso.pdf
 主な項目
  ・二酸化炭素消火設備の中で工事等を行う場合は、閉止弁を閉止した
   状態を維持すること
  ・二酸化炭素消火設備には既存設備を含め閉止弁を設置すること
  ・二酸化炭素消火設備が設置されている建物の点検は消防設備士等が
   行うこと
 ただし、これらの項目が実行されていても完全になくせるものではあり
ませんので、二酸化炭素(100%)以外の消火ガスで人体に影響の少ない
ものを設置するようにしてください。たとえば“IG-541”のように窒素・
アルゴン・二酸化炭素などの混合ガスがあります。


2022年4月2日記(終了ミーティングでのヒヤリハット活動)
 労働災害を防ぐために、作業開始前にKYミーティングをしている事業
所は多いと思います。しかし、作業終了後のミーティングはどうでしょう
か?
 ヒヤリハット活動は作業終了直後の実施が重要です。たとえば、翌日に
同じような危険な状態が発生しないとも限りません。また、ヒヤリハット
は事故・災害がなかったわけですから忘れられることも多いと思います。
さらに、ヒヤリハットという状況でなくても、“危ないな”とか“心配だ
な”ということも記録しておきましょう。
 ヒヤリハット活動は多くの会社で実施していますが、そのヒヤリハット
事例の多くは“自分のミス”から生じるため、自分のミスを隠しておきた
いという意識もあるでしょうし、報告することにためらうことが多くなり
ます。しかし、人間はミスをするものであり、そのミスを職場で共有し、
ミスを減らし、事故を防ぐ活動ということを理解していただきたいと思い
ます。
 重要なことは、管理・監督者がヒヤリハット活動で出てきたミスに対し
て怒ったりしないことです。ミスを咎めるようであればヒヤリハット活動
は継続できません。

                           
ご安全に!

2022年3月26日記(プレス作業主任者)
 動力プレスに関する書類送検事例がありました
 https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/content/contents/001118310.pdf
 プレス機械作業主任者の職務には次のものがあります。
 ①プレス機械及びその安全装置を点検すること。
 ②プレス機械及びその安全装置に異常を認められたときは、直ちに必要
  な措置をとること。
 ③プレス機械及びその安全装置に切り替えキースイッチを設けたときは
  当該キーの保管をすること。
 ④金型の取付け取外し及び調整の作業を直接指揮すること。
 プレス機械作業の選任については、動力により駆動されるプレス機械を
5台以上有する事業場においては、プレス機械作業主任者技能講習を修了
した者のうちから“プレス機械作業主任者”を選任して、労働者の指揮を
するなど、必要な事項を守らなければなりません。
 条文には動力プレス5台以上と台数によって作業主任者が必要な場合と
必要ない場合に分かれるのですが、仮に動力プレスが1台だった場合、作
業主任者は必要ないと言えるのでしょうか? 誰が安全装置を点検するの
か、誰がキースイッチのキーを保管するのか、誰が金型の取替えを指揮す
るのかという疑問が生じますので作業主任者と同等の職務を行う者が必要
となります。
 プレス機械については、昔から指や手の切断など大きな事故がありまし
た。加工品を手で支えながら、フットスイッチでプレス作業をする時に、
危険場所に手があるにも関わらず操作することによって事故になります。
それを防止するための安全装置の設置が義務付けられています。
 プレス作業で必要な作業として金型の取替え作業があります。金型を取
り替える際に機械が誤動作や誤操作によって動けば危険個所にある手は一
瞬のうちにつぶされてしまいます。操作に気を付けていても機械が誤動作
する可能性があるので、万が一に備えて、スライドが落ちてきて手がはさ
まれないように“つっかえ棒”などが必要になります。このつっかえ棒の
役割をするものを安全ブロックと呼んでいます。
 また、金型の交換および調整(安全装置の調整を含む)作業については
特別教育が必要です。なお、プレス機械でなくても刃物が上下にスライド
して物を切るものを“シャー”と言います。このシャーも作業主任者が必
要になり、刃物を交換するための特別教育も必要となりますので、ご注意
ください。


2022年3月26日記(労働安全衛生関係法の改正)
 私は客先の安全衛生診断やパトロールを業務としています。中には法改
正されたが、知らないという例も数多く見てきました。
 事業所では法改正情報をどのように入手しているのでしょうか。
 ・労働基準監督署等が行うセミナー等に参加して情報を得る
 ・技能講習を受けたときに講義の中で情報を得る
 ・厚生労働省などのHPから情報を得る
 ・元請などから情報を得る
 道路交通法の改正や労働基準法の改正はニュースなどで知ることもある
のですが、労働安全衛生法関係のものは全くと言っていいぐらいありませ
ん(石綿則ができた時には報道されていた程度だと思います)。
 ということは、なにもアクションをしなければ法改正情報は入手できて
いないということです。法律ですから知らなかったでは済まされません。
 当社が発行しているメールマガジン“週刊ご安全に!”では、法改正情
報をできるだけ伝えるようにしていますが、配信先はそれほど多くありま
せん。多くの方に知っていただきたいと思います。
 さて、「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」の答申があ
りました(2022年3月23日)
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24724.html
 化学物質管理が非常に強化されます。すべての事業所で化学物質管理者
の選任義務化、SDS情報の定期更新、保護具着用管理責任者の選任義務化、
化学物質容器への表示内容の追加、衛生委員会の付議事項の追加など多岐
にわたります。まだ省令案の段階なので決定次第、皆さまに解説させてい
ただきたいと思います。ぜひとも“週刊ご安全に!”を紹介いただくよう
お願いします。

                           
ご安全に!

2022年3月19日記(ひらパーでの熱中症2019年)
 2019年、枚方市の遊園地“ひらかたパーク”で着ぐるみを着たアルバイ
トが熱中症で死亡する事故があり、関係者が書類送検されました。
 
(新聞記事引用)
  大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」で2019年7月、熱中症対策
  を怠って着ぐるみを着たアルバイト社員の男性(当時28歳)を死亡さ
  せたとして、府警枚方署は16日、運営会社の社員2人を業務上過失致
  死の疑いで書類送検した。
  送検されたのは、「京阪レジャーサービス」の当時現場責任者だった
  男性(44)と女性(47)。容疑は19年7月28日夜、高温多湿の状態にもか
  かわらず、練習時間を短縮するなどの注意義務を怠り、着ぐるみを着
  たアルバイトの男性に約20分間ダンスの練習をさせ、熱中症で死亡さ
  せたとされる。2人とも容疑を認めているという。同署などによると、
  アルバイトの男性は約19キロの着ぐるみを着て練習していた。練習開
  始時点の枚方市の気温は28・9度だった。同社は毎日新聞の取材に
  「二度とこのような事故が起こらないよう、安全管理体制を強化して
  いく」と話した。(引用終わり)

 今週は暑い日がありました。宮崎では28度を超えたこともありました。
“28度”という数字だけを考えると、7月8月には体温を超えることもある
のでそれほど危険ではないと思うかもしれませんが、10度以下に慣れてい
る身体にとってはとても危険な状態とも言えます。
 厚生労働省では例年より早い2月22日に“令和4年「STOP!熱中症 クー
ルワークキャンペーン」”を宣言しました。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24043.html
 ひらパーの事故については、「着ぐるみでダンスをすることを事前に伝
えていたこと」「28歳の若い男性だったこと」や「集団でのダンス練習中
なので苦しくても言いにくい状況」「着ぐるみで表情が判らなかった」な
どがあり会社側も判断を誤ったのでしょう。
 ゆるキャラをはじめとした着ぐるみは昔からあるものですが、地球温暖
化の気温上昇とともに危険性は増大しています。
 着ぐるみは表情が判らないこと、発汗の状況が判らないことなど最も熱
中症危険な作業とも言えます。さらに着ぐるみの重量は19kgということな
ので手で持っているだけでもかなりの負荷になります。対策として、管理
者側もぜひ着ぐるみを着用し、体験したうえで作業(演技)時間、休憩時
間を検討してください。合わせて保冷剤やハイドレーションバッグ(飲料
水を入れたバッグにチューブが付いて、いつでも飲むことができるもの)
や送風ファンを付けてください。

                          
 ご安全に!

2022年3月12日記(印刷機に巻き込まれて死亡)
 愛知県の書類送検事例から
 https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/content/contents/001100774.pdf
 輪転機のローラーに首を挟まれた事故です。輪転機には紙を送り出すた
めのローラーが上下に付いています。被災者は調整作業中ということでし
た。機械の調整や掃除をする際には機械の運転を停止させることが定めら
れています。機械の回転するトルクは強く、身体の一部や服の一部が巻き
込まれると人間の力で止められるものではありません。
 調整作業では機械を止めて、調整し、稼働確認のために動かす必要があ
る場合でも点検扉などを閉めてから起動しなければなりませんが、場合に
よっては、点検扉を閉めると稼働状況が見えないことがあり、点検扉など
を開けた状態で確認したいと考えるものです。しかし、これは非常に危険
です。
 不具合の状況確認は点検扉などを開放した状態で起動しなければ判らな
い場合もあるかもしれません。「開放した状態で起動してはならない」
「扉を閉めて起動すれば不調箇所の確認できない」。そんな時はどうすれ
ばいいのでしょうか。
 ・手で回して確認する
 ・寸動ボタン(操作ボタンを押した時だけゆっくり少しづつ動く)を使
  って確認する
 このどちらかの方法になるでしょうが、この方法が取れない場合は処理
できません。
 このような場合で役にたつのがカメラです。機械の中にスマートフォン
などをセットし、扉を閉めて撮影しながら起動する。または、工業用内視
鏡(マイクロスコープ)を隙間に差し込んで確認できるはずです。
 多くの会社でリスクアセスメントを導入していますが、機械の修理中や
調整作業などの非定常作業のリスクアセスメントは不十分のようです。
 機械内部に入り込んで機械を動かしてはいけないということは頭では理
解していても、やむを得ないと考えて行動して、巻き込まれる事故は多く
発生しています。
 職場のあんぜんサイト(厚生労働省)でも印刷関係の災害事例を掲載し
ています。参考にご覧ください。
〇印刷工場で印刷機の調整中、紙づまりの除去を行っていた作業者が動き
 はじめた機械のロールにはさまれ死亡
 https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101008
〇印刷工場において、ためし刷りを行っていた作業者が印刷機にはさまれ
 死亡
 https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101009


2022年3月12日記(安全活動は真似から始める)
 災害防止活動などの安全活動をどのように進めるべきなのか悩んでいる
人も多いかもしれません。オリジナルな活動はなかなか難しいものです。
そんな時には、他社の真似をしてください。また、それを参考に考え、応
用すればいいのです。
 厚生労働省が進める「見える安全活動コンクール」の優良事例が決まり
ました。これらを参考にしてください。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24351.html

                           
ご安全に!

2022年3月5日記(事務所則改正 空気調和設備とは)
 
事務所則の改正がありました。
 https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220301K00100.pdf
 空気調和設備を設けている場合には事務所の気温を18度以上28度以下に
保つこととされました。(施行日は令和4年4月1日)
 ところで、空気調和設備とは何かご存じでしょうか?
 私は、この仕事長いのですが、ずっと、空気調和設備=エアコンと思っ
ていましたが、これは間違いで、エアコンは冷暖房設備ということです。
 空気調和設備とは、温度の調節だけでなく、湿度、空気清浄、気流まで
コントロール可能な設備のことをいいます。
 今回の改正では、空気調和設備を設けている場合には室温を18度以上28
度以下に保つこと。空気調和設備がない場合には冷暖房設備(エアコン)
によって室温を18度以上28度以下に保つこと。となりました。
 ちなみに、改正前は17度以上28度以下でした。
 今回の改正はWHOのガイドラインに基づくもので、冬期の高齢者にお
ける血圧上昇に対する影響等を考慮して低温側の室内温度を18度以上にす
ることが勧告されています。
 冬期の暖房温度は環境保全の意識から低めに設定されていることが多い
と思いますが、作業効率や労働者の意見を聞きながら決めることが望まし
いと考えます。今はコロナ禍なので多くの会社が窓を開けたまま暖房を入
れています。そのため、場所によっては冷気が入るため、高めに設定され
ていることが多いと思います。

 
2022年3月5日記(エコ運転は安全運転)
 ガソリンの価格が上昇しています。昨年の今頃は130円台後半(レギュ
ラー)でした。今は160円台後半から170円程度となっています。ウクライ
ナの情勢やロシアへの経済制裁の影響があるのでまだまだ高くなる可能性
があります。政府ではガソリン価格対策をしていますが、1年前のガソリ
ン価格には戻りそうにありません。
 そこで経費削減のためにもエコ運転が必要になってきます。
 安全運転を指導するよりエコ運転を指導した方が事故防止になるのでは
ないでしょうか。“安全運転”を呼びかけても、自分は事故しないと考え
ている人が多いので安全意識はあまり変わらないと感じます。逆に“エコ
運転”を呼びかけると、アクセル操作を頻繁に行わない運転が必要となり
ますので、車間距離を空けるようになります。車間距離が空けば、追突の
可能性も下がりますし、車間距離が空いた分、自然と、周囲を見る余裕が
生まれてきます。急加速を無くそうと思えば、無理な追越しも減ってくる
でしょう。
 ただ、プライベート用の車の燃費は気にするけど、社用車の燃費は気に
しない人が多いと思うので、平均燃費を表示する車については運転日誌に
記入させることも効果があるでしょう。
 エコ運転はガソリン代の節約にもなるし、交通事故防止にも効果がある
はずです。


2022年3月5日記(もうすぐ3.11)
 東日本大震災では多くの犠牲者を出してしまいましたが、逆に多くを学
びました。
 “想定外の災害”とも言われていますが、想定外だからやむを得ないと
いうものではありません。想定外な事案が発生しても安全を確保すること
が必要な時代なのです。
 皆さんの会社ではリスクアセスメントを実施していると思いますが、そ
の中に「地震が発生したとき」という文字があるでしょうか?
 BCP(事業継続計画)の中で地震や津波が発生した際のビジネスのリ
スクとは別に、地震発生時の労働者の負傷に特化したリスクアセスメント
を実施しましょう。

                           
ご安全に!

2022年2月26日記(富士急ハイランド ド・ドドンパ)
 昨年、富士急ハイランドのジェットコースター「ド・ドドンパ」で乗客
に骨折などの負傷が相次いだ問題について2月25日に記者会見がありまし
た。
 (ニュース記事引用)
  「問題の背景に設備や機材整備ばかり重視する傾向があったなどと指
  摘する調査結果を公表した。会見に同席した岩田大昌社長は「予兆情
  報がありながら組織的に探求できなかった。最低でも3例目で運行停
  止すべきだった」と釈明した。調査結果によると、ド・ドドンパが運
  行を停止した2021年8月までに4件で4人が重傷を負った事例について、
  その都度設備の点検をしたが、機器の異常がなかったため運行を継続
  したと認定した。最も症状が重かった3人目の乗客から「姿勢を崩し
  た」との発言があったにもかかわらず、要因を検証しなかったとし
  「オペレーターや接客係、メーカーを含めた探求プロジェクトを発足
  させるべきだった」と指摘した。上山委員長は「機械信仰が災いし4
  件目の事例につながった」と述べた。(引用終わり)

 機械安全は暴走しないことなど人間に危害を加えないことが求められま
す。機械が設計した通りに稼働し、安全装置が有効に機能していれば安全
と考えられるのですが、人間の姿勢や行動を想定した機械安全が求められ
るということです。今回の事故では乗客の安全として「投げ出されないこ
と、周囲に接触しないこと」は確保されていましたが、乗客の姿勢による
ダメージが考慮されなかったのでしょう。乗客が頭をヘッドレストに押し
付ける姿勢を保っていれば問題なかったのかもしれませんが、首の位置、
角度などの条件が変わる場合のダメージを考慮されなかったようです。
 また、昨年11月には、同じく富士急ハイランドの大観覧車のゴンドラの
ドアが全開した状態で1周するトラブルがありました(人身事故はありま
せん)。現場にいた係員は、順番待ちの男児が区画するチェーンにぶら下
がるなどの危険な行為があったのでその対応に追われて、ドアの閉め忘れ
が生じたということでした。係員がドアを開けて、係員がドアを閉めると
いう流れの中でトラブルが発生してトラブル対応している間にゴンドラは
動くので同じようなトラブルが発生する可能性は高いでしょう。係員が操
作しなくても自動でドアがロックするシステムが求められます。
 現在も、ド・ドドンパと大観覧車の運行は停止されています。
 富士急ハイランドのホームページには安全総点検の動画が公開されてい
ます。
 https://www.fujiq.jp/event/h5f6de000002p3zr.html
 この中で「FUJIYAMA安全総点検」の動画を見てください。
 動画が始まって30秒ぐらいで「高所作業車を使用して取付けボルトに異
常がないか点検」とテロップがでますが、高所作業車ではなく、クレーン
でゴンドラを吊り下げています。これは危険です。フックが外れたり、ワ
イヤーが切れた場合には大きな災害となります。
 ちなみに私はジェットコースターには怖くて乗れません。そのきっかけ
は30年ほど前に職場のレクレーションで乗った時、隣の席の人が大きい人
なので、安全バーは隣の人の腰のところで止まったままで、私の身体と安
全バーの隙間は10cmほどあります。私の身体は安全バーで固定されてい
ないのでぐらぐらの状態で非常に怖く、必死に安全バーを握りしめていま
した。 

2022年2月26日記(配線器具の火災が増加)
 nite(製品評価技術基盤機構)が配線器具の火災が増加していると発表
しました。
 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2021fy/prs220224.html
 ■配線器具の事故を防ぐポイント
 ○電源プラグやテーブルタップ及びコンセントの差込口などにほこりが
  たまらないよう掃除する。
 ○テーブルタップやコンセントの差込口などに、水分やアルコールが付
  着しないよう注意する。
 ○変形した電源プラグを使用しない。
 ○電源コードを引っ張る、机や椅子の脚で踏むなど、無理な力を加えな
  い。
 ○接続可能な最大消費電力を確認し、これを超えるような使用をしな
  い。
 再現動画もありますので是非ご確認ください。配線器具の事故は使った
瞬間に事故が発生することよりも時間が経過してから火災などの事故にな
ることがありますのでご注意ください。

                           
ご安全に!

2022年2月19日記(三幸製菓で火災発生 続報)
 三幸製菓の火災で6名の死亡が確認されました。6人のうち4人はアルバ
イトの清掃作業者でした。
 火災があった三幸製菓の荒川工場では、過去に8件のボヤがあったとい
うことです。その全てが菓子くずが炭化して燃えたということです。せん
べいを焼いて作るところですから、せんべいに火がつくことは何度もあっ
たように推測します。せんべいに火がついたら消すということが当たり前
になり、日常発生することですから危機感を持っていなかったのではない
かと感じます。
 会社は避難訓練を実施していたということですが、夜勤の就労者は避難
訓練に参加していなかったことが考えられ、アルバイトに対しても実施で
きてなかったようです。
 報道では4人は防火シャッターの前で死亡していたとありました。それ
で思い出したのは私が以前勤めていた会社でのことです。避難訓練の時に
避難誘導係が避難誘導後に防火扉を閉める訓練も合わせて行いました。そ
の防火扉を閉めたあとにその通路から避難しようとした人から、防火扉が
閉められ、閉じ込められたと報告があったのです。しかし、この報告は間
違いで、この防火扉は押せば簡単に開くのですが、ドアノブがないので開
けられないと思ったということでした。そんなことで逃げ遅れたら大変な
ので「この扉は押せば開けられます」という表示をつけました。さらに従
業員に対して緊急時の避難および防災設備について講習会を実施しました。
 三幸製菓の状況は判らない点が多いのですが、停電し、煙にまかれ、防
火シャッターが閉じていたためさらにパニックになって脱出口が見つけら
れなかったのではないかと思われます。
 三幸製菓では全ての工場の生産を3カ月程度休止して対策を行うようで
す。
 皆様の会社では避難訓練していますか、その際には構内に駐在する会社
に対しても同様に実施していますか。夜勤がある会社での防災体制は夜間
での体制も作成できていますか。
 このような事故の報道があった時、ことわざ“対岸の火事”の通り、自
分には関係ないと考えず、自社の状況を確認することが重要です。

  
2022年2月19日記(シャッター落下)
 愛知労働局の書類送検事例を紹介します。
 https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/content/contents/001088288.pdf
 冷蔵室の修繕作業で手待ちしていた3人の頭上にシャッターの一部が落
下する事故がありました。
 修繕作業はフォークリフトでパレットを持ち上げたところを作業床とし
て作業しており、そのときにシャッターの一部が落下しました。
 この作業では修繕作業の真下に作業員を待機させたこと、ヘルメットを
着用させなかったこと、フォークリフトの主たる用途以外の使用をしてい
たことなど安全対策の不備がありました。
 修繕作業は臨時に発生した作業だと想像しますが、下に人がいる状態で
作業させてはいけません。工具などを落とすこともありますから、上下同
時作業は原則禁止です。やむを得ない場合は、落下によるケガを防ぐため
の防護をしなければなりません。また、フォークリフトで人を持ち上げて
はいけないということは過去の事故も多く、技能講習などで必ず教えられ
ます。
 高い場所での作業では適切な足場を作り、立入禁止区画を作らなければ
なりません。
 この会社は一般貨物自動車運送業であり、冷蔵室の修繕作業は専門外の
はずです。専門外なら、なおさら、作業の前にどんな危険が考えられるか、
どんな対策が必要なのか十分に検討し、作業手順書を作成し、リスクアセ
スメントで安全の確保が必要です。

                           
ご安全に!

2022年2月12日記(アルゴンガス充満で酸欠)
 酸欠事故が発生しました。
 
(新聞記事引用)2月10日午前11時40分ごろ、山口県周南市野村南町の
 日鉄ステンレス山口製造所内の製鋼工場で、作業員2人が倒れていると
 119番通報があった。補修作業中に鋳型内で酸欠状態になったとみられ、
 2人は病院に運ばれたが意識不明の重体。県警周南署や同社によると、
 2人は同社の下請け会社の社員で、ステンレスを精製するための鉄製の
 鋳型の補修をしていた。鋳型は高さ約2mのほぼ直方体で、内側の最大
 幅は1mほど。鋳型内の酸素を取り除くためにアルゴンガスを充塡して
 いたが、鋳型を覆う耐火紙が何らかの原因で破損して内部に落ち、取り
 にいった男性作業員(49)が倒れ、救出しようとした男性作業員(51)も倒
 れたという。(引用終わり)

 アルゴンガスは空気より比重が重たい(空気の1.36倍)ので充満すれば
酸素を取り除くことができる。それと同時に、そこに人が入れば致命的な
事故になります。酸素欠乏の事故を防ぐために酸素欠乏症等防止規則があ
るのですが、アルゴンガスが充満したところに入るような作業はないため
作業主任者の選任、濃度測定等はしていなかったでしょう。
 被災者は下請け会社の社員ということですが、被災した方はアルゴンガ
スが充満していることを知っていたのでしょうか、さらにアルゴンガスの
危険性・有害性等を知っていたのでしょうか。
 作業中に物を下に落としたら取りに行くのが当然の行為であり、同僚が
倒れたら助けに行くのも当然の行為なのでしょう。しかし、この場合は酸
欠危険場所なので他の作業とはまったくことなります。まず、無色透明な
ガスなので存在が見えません。酸素濃度はゼロに近く、立ち入ってはなり
ませんし、救助行為であっても同じです。
 同作業所では「ガスが充満しているところへの立ち入りを禁止」してい
るようですが、非常にリスクが高い内容について規定で定めるだけでは不
十分です。板や格子状のもので開口部を塞いでいなければなりません。


2022年2月12日記(三幸製菓で火災発生)
 近年、火災発生で労働災害死亡事故になる例は少ない(放火を除く)。
しかし、2月11日夜に発生した火災によって三幸製菓荒川工場(新潟県)
では死者が5人(不明1人)にもなりました。
 なぜ、多数の人が被災したのかわからない点が多いのですが、まず、疑
問に思うのは、通報が警備会社から警察に連絡がありました。工場からの
通報は出来なかったのでしょうか。
 報道によると、警報が鳴って停電状態になったということです。多数の
方が死亡したのは、停電によってパニック状態になったのではないかと思
います。
 被害が拡大した原因は不明ですが、要因として考えられるのは以下の通
りです。ただし、これらは火災拡大の要因を列挙したものであり、三幸製
菓の現場の状況を説明したものではありません
 〇ドアが電気式の施錠であって、停電時の開閉の仕方を知らなかった
 〇食品製造業のため窓が少なく、室内が真っ暗になった
 〇避難訓練ができていない
 〇避難経路を全員が把握していない
 〇2方向避難ができない
 〇非常口誘導灯も消えた(充電池が劣化)
 〇停電時非常灯がなかった
 〇通報連絡体制、誘導係が決められていない
 〇通常の出入口付近が出火したため逃げるルートを把握していなかった
 〇非常口等が荷物などによって使用できない状態になっていた
 〇「火事だ!」と大声で叫ぶ初期の行動をとっていなかった
 〇非常口が積雪によって閉ざされていた
 〇発見が遅れて初期消火できなかった
 〇緊急非常放送による情報提供ができなかった
 〇非常口が施錠され、解除の方法を知らなかった
 〇防火シャッターが閉じなかった
  (防火シャッターが火災警報装置と連動していなかった)
 〇引火性の危険物を法定以上に置いていた
 〇ダクト火災に備えて防火ダンパーがなかった
 〇自動消火設備がなかった
 映像を見ると、非常に広範囲で燃えています。上記要因の複数の不備が
あったと思います。
 なお、死亡者のうち、4人は清掃のアルバイトということで火災時の対
応(避難および通報)などの教育および訓練は受けてなかったと思われま
す。

                           
ご安全に!

2022年2月5日記(グラインダーで火傷による死亡事故 続報)
 1月8日の安全週記で難燃性の作業服を着ていたにも関わらず、服が燃え
て火傷し、死亡に至った事故を紹介しました。その際、なぜ難燃性の服が
燃えたのか判りませんでしたが、新たな報道がありましたので紹介します。
(新聞記事引用)
 文星芸大生火傷事故死 作業着の首元から起毛素材インナーに引火か
 文星芸術大で昨年12月、3年生の女子学生=が鉄板の切断作業中に火傷を
負って死亡した事故から1カ月がたった。火花が女子学生の作業着の首元
から入り、起毛素材のインナーに引火したとみられることが捜査関係者へ
の取材で判明。近くに消火器具はなく、付き添いの職員が別の部屋にいた
ことも分かった。作業時の火花を原因とした火災は栃木県内で時折発生し
ており、消防関係者は作業着の適切な着用など対策の徹底を呼び掛けてい
る。県警や大学によると、女子学生は12月22日午後、多目的工房室の外の
作業台で、立体作品制作のため電動工具のグラインダーを使って金属を切
断していた。自主制作日だったが、大学からグラインダーの使用許可を得
て職員に作業助手を頼み、燃えにくいつなぎやゴーグル、手袋の着用など
注意事項を順守していた。一方、捜査関係者によると、女子学生はフリー
スのような燃えやすいインナーを着用していた。つなぎの燃焼状況や火傷
の状況から、首元から火花が入って引火したとみられる。大学は「当日は
風が強く、火花があおられたのかもしれない」とみる。当日は女子学生以
外の学生は出席しておらず、作業助手の職員はいたものの壁を隔てた部屋
で事務作業をしていた。作業台のそばに消火器や水が入ったバケツの用意
はなく、悲鳴を聞いた職員がやかんで水をかけたが、最終的には女子学生
自ら室内の水道で頭から水をかぶって消火した。県内では宇都宮大や帝京
大などでもグラインダーを授業時に使用する。両校は屋内で教職員を含め
た複数人が同じ部屋にいる場合に限って使用を許可しているという。消防
関係者によると、グラインダー使用時の火花は1200~1700度に上り、可燃
物を着火させるには十分な温度だ。県東地区で昨年5月ごろ、住宅が全焼
する被害もあった。難燃性の作業着は燃え広がらないだけで、持続的に加
熱すると一部は燃えて穴が開き、穴から火花が入る可能性も懸念されると
いう。消防関係者は周囲の可燃物の除去や消火器具の準備のほか「作業時
は作業着のファスナーを全て閉めて、つなぎ自体の定期的な点検も大切」
と訴えている。(引用終わり)
 難燃性の作業服を着ていれば、アーク溶接やグラインダーなどによる着
衣着火事故を防止できると考えても、今回の文星芸術の事故のように作業
服の下が燃える可能性があることは是非覚えておきたいと思います。また
昨年9月11日の安全週記で空調服の中のインナーが燃えたということもあ
りますのでご注意ください。
 2022年の安全週記はこちらから
 http://www.eonet.ne.jp/~anzen/diary.html
 2021年の安全週記はこちらから
 http://www.eonet.ne.jp/~anzen/diary2021.html

                          
ご安全に!

2022年1月29日記(エレベーター点検中の事故)
 2019年2月、神戸市のビルでエレベーター点検中に死亡災害が発生し、
会社が安全配慮義務を怠ったとして、遺族が会社と同僚に対して合わせて
1億6000万円の損害賠償を求める訴えがありました。
 死亡したのは当時48歳で、20代の同僚と2人て点検していました。同僚
が誤ってエレベーターの籠を高速で動かし、上から降りてきた重りに頭部
を挟まれて死亡しました。
 エレベーターは乗客に対しては安全装置が求められていますが、エレベ
ーター点検中の事故に対しての安全装置は不十分といえます。
 死亡した48歳と20代の2人ですので、死亡した男性の方が作業指示をす
る立場ではないかと考えられます。
 事故の原因としては(死亡した男性が作業指揮をする場合)、
 (1)同僚が指示を無視してエレベーターを起動した。
 (2)同僚は作業の内容を知らなかったにも関わらず作業を開始した。
 (3)同僚が指示した操作と異なる操作をした。
 (4)死亡した男性が誤った指示をした。
 (5)死亡した男性が重りが降りる危険な場所であることを失念した。
 (6)同僚は操作を開始するときに、重りが落ちてくる場所を確認せずに
  操作した。
 (7)会社はスキルが不十分な2人に作業をさせた。
 などが考えられます。仮に(7)が事実だとすれば安全配慮義務を怠った
と言えるかもしれませんが、(7)以外の場合、立証するのは難しいように
思えます。
 この事故では「どのボタンを操作すると、どうなるか」を理解するだけ
でなく、「どのボタンを操作すると、どうなるか、そして、その時はどん
な危険があるか」を理解し、さらに、安全確認のポイントを理解していな
ければなりません。
 また、安全対策が不十分で信頼性を人間に頼らなければならないところ
では、指差し呼称の方法も考えなければなりません。
 (例)職長がAのボタンを操作するように指示をした場合
  作業者:「Aボタン操作、よいか?」(作業の確認を求める)
  職長: 「Aボタン操作確認、ヨシ!」(確認したことを伝える)
  作業者:「Aボタン操作、ヨシ!」(指差し呼称で実行) 

                         
 ご安全に!

2022年1月22日記(令和3年労働災害発生状況)
 令和3年の労働災害発生状況(1月7日現在)の発表がありました。
 
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html
 (注)令和3年の確定ではありません。
 死亡災害は前年比で61人増えています。令和2年の死亡災害は802人でし
たので、昨年を上回ることは確実な状況です。
 死亡災害の型別では墜落・転落が一番多いのは例年と同じですが、新型
コロナによる死亡災害が5番目に多いということです。
 死傷者数は前年比で2万人増加しており、そのうち、15000人ほどは新型
コロナによるものです。
 死傷災害の型別では転倒が一番多いのは例年と同じですが、新型コロナ
によるものが3番目になりました。
 本日(22日)の新型コロナ新規発生者は5万人を超えています。オミク
ロン株は重症化しにくい傾向にあると言われていますが、感染爆発により
自宅療養者が適切な治療を受けることができず、悪化していく可能性があ
りますので楽観視できません。
 新規感染者が1日に5万人となれば、保健所の対応も不十分となります。
事業所内で新型コロナで休んでいる方にも積極的に連絡を取り、場合によ
っては食事の配達などの支援が必要になることもあるでしょう。
 1日に5万人が感染するということは、1日に10万人以上が感染または濃
厚接触者となって就業ができなくなります。人員が足りず生産が止まる、
部品が入ってこない、交通機関が止まるなどを想定した対応が必要となり
ます。
 1日も早く感染の勢いが止まり、減少方向に向かうことを祈ります。

                          
ご安全に!

2022年1月15日記(新型コロナ第6波)
 みなさんの会社では新型コロナの感染状況はいかがでしょうか。
 政府は新型コロナ感染者の濃厚接触者の待機期間を14日から10日に短縮
すると発表しました。職場で1人感染すると、場合によっては濃厚接触者
が多数になるかもしれません。その人たちが10日間出勤停止となると事業
継続が困難になるかもしれません。リモートワークで対応できる場合はい
いのですが、製造や建設では対応が困難になる可能性があります。
 職長や作業主任者、作業指揮者など作業の指揮や監督する者が出勤でき
なくなれば生産活動が停止します。それを防ぐために作業計画や作業手順
書などノウハウを引き継ぐ準備はできているでしょうか。
 感染拡大を抑えるためには手洗い・マスクなどの基本的なルールを守る
ことと、万が一、感染者および濃厚接触者が発生した場合には、すみやか
に隔離する必要があります。濃厚接触者は10日間の自宅等での待機を守っ
ていただきたいと思います。
 濃厚接触者を自宅待機させる法的義務はないかもしれませんが、事業活
動を優先して出勤させ、万一、職場クラスターが拡大した場合には取り返
しのつかない重大な問題となります。それでも事業継続が最優先と考え、
そのリスクを承知の上で出勤させる企業もあるでしょう。その場合は毎日、
抗原検査(自宅で5分程度で終わるものもあります)を行い、3.5.7日目
にはPCR検査を受けることなどの対策を実施するなどしてください。 
 地震などの事業継続計画(BCP)は準備しているかもしれませんが、そ
れは新型コロナによる欠員対策にも対応しているでしょうか。
 資格者を複数人そろえていても、同じ職場であれば職場内クラスター発
生時には同時に待機することになっても対応できるでしょうか。ご確認く
ださい。
 ほとんどの企業で検温を実施していますが、気温が下がっているため、
冷たい風を受けて一時的に表面温度が低下していることも考えられますの
で検温しているから大丈夫というのは疑問に感じます。


2022年1月15日記(ミキサーに巻き込まれた)
 1月9日、東京都府中市にあるアスファルト製造工場で作業者2名がアス
ファルトの材料を混ぜ合わせるミキサーのメンテナンス中に、稼働したミ
キサーに巻き込まれて死亡する事故がありました。 
 https://mainichi.jp/articles/20220109/k00/00m/040/199000c
 原因は「間違った指示をした」「ミキサーの中を確認しなかった」「ミ
キサーの中を確認したけど、作業者は見えなかった」ということになるか
もしれませんが、これらは間違いです。本当の原因は「作業中に起動でき
なくする対策ができていなかった」と言えます。起動スイッチにはキーを
付け、作業者がキーを抜いてミキサー内に持ち込む対策ができていれば起
こらなかった事故です。
 メンテナンス作業時には起動スイッチに「操作禁止」と表示をする場合
もあるでしょうが、表示だけでは不十分です。たとえば、表示した紙が剥
がれて無くなることもあるし、「操作禁止」と張り紙をしても、剥がし忘
れと考えて操作する可能性もゼロではありません。また、「操作禁止」と
張り紙があっても、起動操作の誤った指示を聞いて、そのまま操作するこ
とも考えられます。
 人間はミスをするものと考え、ミスをしても事故にならない安全対策が
必要です。


2022年1月15日記(寒い)
 先週号で女子大学生の着衣火災事故をお伝えしましたが、職場でも十分
に気をつけなければなりません。
 たとえば、屋外の作業でグラインダー作業や溶接作業を行う際に化学繊
維のジャンパーなどを着ていると火の粉が飛んで着衣から発火する可能性
があります。そのため、燃えやすいジャンパーは使用を禁止すべきです。
しかし、それらのジャンパーを着ている人に対してジャンパー使用禁止と
するのは難しいかもしれません。やむを得ず作業を行う場合は、着衣火災
の基本的対処方法(止まって・地面に倒れ込み・転がって消す)を訓練し
て、監視者が消火器を持ったまま監視してください。
 以前、「自衛隊の豆知識」のような番組で、極寒に耐える対策として、
下着の上に100均などの雨合羽を着ることが効果的とありました。
 動画もありますので紹介します
 https://www.youtube.com/watch?v=FuGWnuzp0lo

                          
ご安全に!

2022年1月8日記(ベンガルトラに襲われる)
 那須サファリパークで1月5日の朝、飼育員3人が体長2mのベンガルトラ
に襲われる事故がありました。
 飼育員が作業スペースから展示スペースに行くときにアニマル通路を通
るとそこにベンガルトラがいて襲われたということです。叫び声に気づい
た2人が助けに行きましたが同じく襲われてしまいました。
 ニュースを読んでいると不可解なことがありました。記者が支配人にボ
ルタがオリの外にいた理由について聞くと「本来は獣舎に収容するはずが、
収容していない可能性があるんです」と答えました。これは、本来は獣舎
に収容して鍵をかけるが、獣舎にベンガルトラが入らない場合はそのまま
になるということになります。支配人は事故の直後のインタビューなので
間違えた回答をしたかもしれませんが、状況によっては獣舎に収容しない
ことがあれば大きな問題です。獣舎に入っている状態と獣舎に入っていな
い状態の2つがあれば当然、ミスの要因になるでしょう。
 相手が凶暴な猛獣ですからルールを決めたら必ず守らなければなりませ
ん。どうしても獣舎に入らない場合は、飼育員側の扉の鍵をかけるなどの
ルールが必要です。
 猛獣を扱う以上大きなリスクがあります。原則は、人と猛獣を隔離する
ことですが、猛獣の檻の掃除は人間がしなければなりません。
 人間はミスをするものですから人に頼る対策では不十分です。そのため
安全装置(危険検知センサー)を幾重にもを付けたとしても誤作動が考え
られます。絶対安全は不可能ともいえます。対策としては檻の外から掃除
ができる構造にするか、掃除ロボットを導入するしかないでしょう。

2022年1月8日記(グラインダーで火傷による死亡事故)
 12月22日、宇都宮市の文星芸術大学で学生がグラインダーで鉄板を切る
作業中にやけどをして死亡する事故がありました。
 報道を聞いたときには、化学繊維の着火しやすい服を着ていたと思った
のですが、いろいろ報道を見ると、難燃性のつなぎ作業服を着ていたとい
うことです。
 
新聞記事引用
 「宇都宮市の文星芸術大構内で22日、同大3年の女子学生(21)が鉄板
の切断作業中にやけどを負って死亡した事故で、女子学生は立体作品の自
主制作の時間に、燃えにく>い作業着などを着て1人で作業していたことが
31日、宇都宮中央署や大学への取材で分かった。同署は大学の安全対策に
問題がなかったかどうかを含め、原因を調べている。同署や大学によると、
女子学生は総合造形専攻で立体が専門だった。22日は授業日ではなく作品
の自主制作日で出席義務はなかった。正午ごろから多目的工房室の外の作
業台で、電動工具のグラインダーで鉄板を切断するなどの作業を1人でし
ていた。事故発生前は難燃性のつなぎ、帽子、ゴーグルなど大学からの注
意事項を守った服装だった。グラインダーを使用する際は見張り役の教職
員が付くルールで、多目的工房室内には職員がいた。午後2時ごろ、職員
が悲鳴を聞いて外に出ると、女子学生の上半身から炎が上がっていたとい
う。」(引用終わり)

 難燃性のつなぎにグラインダーの火花が飛び散った程度では焦げること
はあっても燃え上がることは考えにくい。そもそも、グラインダーで自分
の身体に火花が飛ぶような作業姿勢をとることも考えにくく原因が不明で
す。
 ちなみに着衣に着火した場合の対応方法として“ストップ、ドロップ&
ロール”が有効とされています。
 https://www.city.chiba.jp/shobo/yobo/yobo/chakuichakka.html
 https://www.youtube.com/watch?v=NQenbjbnIfc
 合わせて、近くに人が居る場合は消火器や水で消してください。
 消火器を人に向けて放射していいのかと戸惑うかもしれませんが、問題
ありません。参考に下記の動画を見てください。
 https://www.youtube.com/watch?v=yqdafsOATt0

                         
 ご安全に!

一週間を振り返る

毎週土曜日更新