2011年12月31日(フルハーネス安全帯)
 12月26日、東京練馬区の生コンクリート会社「リバスター」で高さ12mの
砂・砂利貯蔵サイロに55歳の男性が転落し、首から下が埋まってしまい、死
亡する事故が発生しました。被災者はサイロ内にたまっていた砂を取り除こ
うとしていたようです。安全帯等の転落防止措置はできていなかったことが
事故の要因だと考えられます。
 すぐにレスキュー隊へ応援をもとめましたが、救助まで6時間を要しまし
た。首下まで埋もれると呼吸も困難になるので救出まで持たなかったのでし
ょう。
 高さ12mのサイロで砂に埋まった被災者を救助するのは容易ではありませ
ん。もし、安全帯を付けていたらどうでしょうか?(フックは付けていない)
胴ベルトにロープを付けて引き上げようとしても、ベルトが内臓に食い込ん
でしまい、引き上げることができません。
 もし、フルハーネス安全帯を付けていたらどうでしょうか?フルハーネス
安全帯なら、引っ張る力が身体全体にかかるため、短時間で引き上げること
が可能であり、助かったかもしれません。
 安全帯は墜転落を防止するものであり、人を引っ張り上げるための器具で
はありませんが、このような災害時には救出に役立つと考えられます。
 また、安全帯は墜転落を防止できますが、救助までの時間がかかる場合に
は、とても苦痛を感じるものです。腰骨の当たりから上にずれると、内臓を
圧迫します。逆に下にずれると、上半身の重さにより、体勢が逆になり、抜
けるように落ちることがあります。安全帯は万一の時に短時間で救出できれ
ばいいのですが、レスキュー隊を呼ばなければ助けられない状態が考えられ
るのであれば、安全帯は保護具としては不十分なものではないでしょうか?
 災害防止のために危険体感教育として安全帯にぶら下がる(墜落を想定し
たぶら下がり)ことをやっている企業もあると思います。短時間であっても
苦しいはずです。1本吊り安全帯は腰骨当たりでぶら下がるので、身体が曲
がり、苦しいですが、フルハーネスはほぼ垂直な状態に保たれますので、1
本吊りより楽なはずです。
 その事を考えたら、普通の一種安全帯より、フルハーネス安全帯の方が有
効と判ると思います。
 安全帯を使用している企業では、定期的に交換していると思いますが、次
の交換時にフルハーネスに替えませんか?

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年12月24日(坂道)
 12月19日、愛知県の伊勢湾岸自動車道飛鳥インターチェンジ料金所付近の
ガードレールに大型トレーラーが衝突し、運転手がトレーラーとガードレー
ルに挟まれて死亡する事故がありました。
 トレーラーはハザードランプを付けいたことから、運転手は何らかの点検・
確認のために降りたと考えられます。料金所付近は下り坂になっており、サ
イドブレーキが甘くて、もしくは忘れていたため動き出したのだと推測しま
す。運転手はガードレールに寄りかかって休んでいたのか、動き出したトレー
ラーを止めようとしたのか判りませんが、挟まれて死亡しました。
 動き出した自動車を止めようとして、止め切れず、そのまま押されて、壁
などに挟まれて死亡する事故例は多く発生しています。冷静に考えれば、人
力で止められるはずはないのですが、パニック状態になったのでしょう。
 坂道での事故と言えば、今年10月24日東京で、JR横須賀線の線路にタク
シーが転落し、電車と接触する事故がありました。線路はガードレールとフ
ェンスがありましたが、それらを突き破って転落しました。乗客の証言によ
ると、目的地に到着して、清算中に車が動き出したということから、サイド
ブレーキを忘れ(または不十分)て、車が動き出し、慌ててブレーキを踏み
込んだつもりが、アクセルを踏み込んだと考えられます。
 道が平坦だからといって、サイドブレーキを忘れることがあるのでしょう
か?
 おそらく、トレーラーの運転手は、積み荷のことが心配で仕方がなかった
のかもしれません。早く確認して、再スタートしなければいけないと焦って
いたのかもしれません。タクシーの運転手は乗客との話に夢中になったのか
もしれません。ちょっとしたことが、単純な操作を忘れる要因になります。
 12月は師走と言われ、何かと急いでしまう時期です。
 今年もあと僅か、年末を無災害で新しい年を迎えられることを祈ります。


               
 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年12月17日(インフルエンザ)
 今年もインフルエンザの流行が認められました。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/houdou20111216-01.pdf
 みなさんは予防接種をされましたか?
 これから予防接種をする方は、その病院内の待合室で感染する可能性が高
いことを覚悟してください。
 みなさんは、インフルエンザを防止するためには加湿が一番効果的だと考
えていませんか?
 加湿は重要なのですが、インフルエンザウイルスの活動と湿度には相関関
係がありません。インフルエンザウイルスの活動は空気中の水分量と相関関
係にあります。インフルエンザウイルスは水には弱いのですが、湿度ではな
く、水分量が重要だというのです。これは庄司眞先生が研究したもので、空
気1立法メートル当たりの水分量11g以上であれば、ウイルスは死滅する
ということです。
 湿度と水分量は同じと思われるかもしれませんが、
 同じ湿度50%でも、気温が30℃の時の水分量は30g/m3、気温20℃の時
の水分量は8.5g/m3となります。湿度50%の時、気温が30℃であれば、ウ
イルスは死滅し、気温20℃なら、死滅しないのです。
 湿度50%で水分量を11g/m3にするには温度を25℃まで上げる必要があ
ります。でも今は、全国的に節電が求められており、室温を25℃まで上げる
ことは困難です。ということは、加湿によってインフルエンザを防止するこ
とは困難だということが分かります。
 インフルエンザを防ぐためにマスクをする人も多いと思いますが、市販の
マスクでは顔に密着せず、60%から90%ぐらい漏れます。マスクではウイル
スの侵入を防ぐのは困難なのです。
 うがいがありますが、常時うがいをするなら効果はあるでしょうが、1日
に数回というのでは効果は薄いようです。
 手洗いはどうかというと、手はアチコチに触れるので、ウイルスが付着し
ます。その手で鼻・口に触れると体内に入ってしまいます。
 このようにインフルエンザを防ぐのは困難なので、インフルエンザにかか
った場合は、外出を控え、ウイルスを拡散させないようにしてください。特
に出社して職場でウイルスをまき散らすと、職場内で流行し、業務に支障が
でます。なお、予防接種はウイルスをシャットアウトするのではなく、症状
の悪化を防ぐ程度のものですから、過信しないでください。
 ウイルスから完全に身を守ることはできません。できるだけ、ウイルスが
活動できない環境を作り、体内に入れないように工夫してください。そして、
日頃から十分な睡眠と栄養を摂って、健康な体で、この冬を乗り越えてくだ
さい。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年12月10日(硫酸が爆発)
 12月2日午前10時頃、千葉県のJFEケミカル東日本製造所千葉工場で爆
発事故があり、4人が重軽傷を負いました。
 http://www.jfe-chem.com/news/20111202.pdf
 硫酸タンク(最大容量305トン。当時は約100トン貯蔵)が爆発したという
ことでした。
 多くの人が、「あれ?硫酸は引火性・爆発性はあるのかな?」と疑問に感
じたと思います。硫酸および硫酸ガスには引火性はありません。爆発するも
のではありません。
 しかし、金属と接触すると水素が発生します。水素は爆発する可能性があ
ります。
 硫酸タンクは金属製ではないと思いますが、事故の前にタンク上部に2か
所の穴があったということで、金属類が中に入り、水素が発生していた可能
性があります。
 当時は穴をふさぐ作業であり、足場を組んでグラインダーで補修していた
時に火花が飛び、穴からタンクの中に入って、爆発したのだと推測します。
 このような事故は予測しにくいものですね。もし、このタンクがガソリン
などの引火性液体であれば、近くでグラインダーを使うのは危険だと判るの
で、事前にタンク内を空にして、洗浄するなどの対策を取るでしょう。
 同じ千葉県で8月24日に塩酸タンク内に作業員が転落して2名死亡する事故
がありました。とても悲惨な事故でした。(下記、8月27日参照)
 http://www.oshms.net/diary.html
 12月9日には米子市にある王子製紙米子工場から水酸化ナトリウム水溶液
が約1立方メートルが漏れ出し、液が霧状に広がり、従業員38人がやけどを
負う事故が発生しました。
http://www.ojipaper.co.jp/release/cgi-bin/back_num.pl5?sele=20111209144616&page_view_selected_=1
 化学薬品を大量に扱う事業所では、少量取扱の作業とは違うリスクがあり
ますので、あらゆる災害の可能性を洗い出し、災害時の重篤度、可能性、さ
らには環境影響を検討してください。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年12月3日(飲酒)
 全日空は11月30日、機長が運航前のアルコール検査で基準値を超えたため、
福岡発羽田行きを欠航したと発表しました。この運航前のアルコール検査は
平成20年から開始され、操縦士が基準値を超えて、欠航したのは初めてだと
いうことです。
 このアルコール検査を実施するのは良いのですが、基準値を超えた時の対
応はできているのでしょうか?航空業界に限らず、皆さまの会社でも同じで
す。検査は良いが基準値を超えた時の対応は決めているのでしょうか?
 代行できる人がいれば良いのですが、特殊な機械の場合は、一人しか資格
者が居ないということもあると思います。
 全日空の場合は欠航という判断をしましたが、みなさんの会社では、「今
日は有資格者の○○さんがアルコール基準を超えたため、作業を中止して解
散にします。」とはできないかもしれません。「○○さんはアルコール基準
超えだから、十分に注意して、お互いに声を掛け合って、安全第一で仕事し
ましょう。」ということになるのではありませんか?
 アルコール検査は意識喚起のためであって、その時の対応までは考えてい
ない会社が多いのではないでしょうか?
 全日空の社内規定では、乗務前日(乗務の12時間前まで)に飲酒ができる
のは、ビール中瓶2本、日本酒2合、焼酎140ミリリットル程度と細かく決め
ているそうですが、飲み仲間と一緒であれば、限度を守るのは厳しいかもし
れません。
 12月になり、飲酒の機会が増える時です。朝のミーティングでは、アル
コール臭、言動、できれば気中アルコール濃度測定などして、作業者の健康
状態を確認してから作業をすすめてください。

                
ご安全に!  がんばろう、日本!

2011年11月26日(自転車問題難しい)
 10月25日に発表された「自転車総合対策」には困惑していませんか?
 (自転車は歩道を走らずに、車道を走るなど)
 http://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/taisaku/kouhou.pdf
 警察庁では自転車対策Q&Aを公表しています
 http://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/231108_q_a.pdf
 「自転車は車両であり、車道を走ること(子供・老人を除く)」は昔から
決まっているのですが、自転車を運転する人によっては、車道を走るのは怖
いと考える人がおられ、クレームの電話をする人が多いようです。確かに、
自動車の違法駐車などがあり、車道を走るのは危険と考えられます。
 京都府警では、12月から信号無視や飲酒運転など悪質は違反については、
刑事処分の対象となる交通切符(赤切符)を切る方針を決めました。(対象
は、「信号無視」「飲酒運転」「一時不停止」「二人乗り」「無灯火」
「通行禁止違反」「ブレーキの不備」)
 その一方で、警察庁の交通局長は、「自転車は車両という意識を持っても
らうことが目的で、スピードを出す人以外は従来通り、歩道走行で構わない」
と言いました。混乱に拍車をかけるような報道も見られます。
 歩道を見ると、「自転車通行可」の標識はありますし、歩道上には自転車
通行帯の区画もあります。標識を外すことや、通行帯区画の消去には何カ月
もかかるでしょう。本当に混乱します。
 みなさんの事業所では通勤途上災害を防止するため、自転車についても指
導していると思いますので、困っているのではないでしょうか。みなさんが
困っているとしたら、自転車通勤の方はもっと困っているでしょう。
 私は次のように考えます。
 自転車で走行するのは原則として車道とする。ただし、自転車通行が可能
な歩道については(標識等があるもの)、歩道を徐行してもよい。徐行とい
うのは、1m以内に止まることができるスピードですから、具体的はスピー
ドは時速10km(歩行速度の2倍程度)。たとえ標識があっても、歩道は歩
行者優先ですから、徐行する義務があります。もちろん、車道を走る場合は、
逆走してはいけません。
 なお、車道には駐車違反などの障害物がありますので、自動車が止まって
いる時は、後方の安全確認をしながら走行する必要があります。
 これから年末年始を迎えるにあたって、飲酒の機会も増えることと思いま
す。自転車といえども、飲酒運転は禁止ですから、自動車やバイクと同じよ
うに、飲酒運転禁止の指導をお願いします。
 また、これからは車道を走る自転車が増えると思いますので、自動車・バ
イクの運転者には、自転車に対する注意を怠らないように注意喚起をしてく
ださい。
 できれば、自転車通勤者にヘルメットを義務付けて欲しいところですが、
難しいでしょうか?

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年11月19日(医療ミス)
 (ニュース記事より)
  京都大学附属病院は、脳死肝移植を受けた男性に人工透析を行った際、
  取りつける器具を間違えて、男性が死亡したと発表した。
  京大病院によると、死亡したのは11月5日に脳死肝移植手術を受けた50
  歳代の男性で、男性は術後の経過は順調だったが、肝臓のほかにも腎不
  全を患っていたため、12日、人工透析の治療を受けた。
  この時に使われる予定だったのは、透析用の白いろ過装置だったが、実
  際に使われたのは血液中の成分を取り除く緑の血液分離装置で、大きさ
  も違うものだった。
  男性は容態が急変して、13日に死亡し、病院がミスに気づいた。
 
 医療現場のテレビドラマは数多くあります。とてもリアルな映像で、胸を
切り開き、心臓手術の映像もあります。血管を縫い合わすようなものもあり
ます。ちょっとでも手元がずれると、大出血になるような場面があります。
これはドラマですが、実際の手術でも大手術・難手術は多く成功しています。
今回の肝移植手術は成功したものの、その後の人工透析でミスがありました。
ろ過装置を付けるようなものは容易なものだから、油断したのでしょうか?
 ろ過装置を倉庫から持ってきた人、ろ過装置と思って取り付けた人、その
経過を確認する人と、何人もがその現場を見ているのですが、誰もその過ち
に気が付きませんでした。色が違っても、大きさが違っても気が付かないも
のなのでしょうか?
 「ろ過装置を持ってこい」と指示し、看護師が持ってきたものを、何の疑
いも感じることなく、取り付けたのでしょう。
 例えば、銀行のATMで現金を引き出した時に、誰も、本物か偽物かを確
認しないでしょう。ATMは信頼性が高いから、偽札が入っているかとか、
1000円札と1万円札が間違って入っていないかを確認しません。
 人間は間違える動物です。「見間違い」「読み間違い」「勘違い」「取り
間違い」するものです。ほんの数秒の確認作業を省いていると、大きな事故
になるかもしれません。「人を疑え」とまでは言いませんが、作業の前には
確認・点検を怠らないようにしましょう。特に、これから年末に向かって、
多忙な時期でもあります。今回の事故は医療の現場だから、自分の作業では
関係無いと考えず、くれぐれもご注意ください。


2011年11月19日(日没時間)
 日没の時間が早くなりました。
 先日、夕方5時過ぎにビルの建設現場の横を歩いていると、暗がりの中で
ゴソゴソ動いている人がいました。「こんな暗いところで作業している人も
いるんだなぁ」と感じました。今日は19日です。大阪の日没時間は夕方4時
51分です。夕方5時より前に日没の時間があるのは来年1月3日まで続きます。
暗い場所で作業をすると、見落としなどが発生しやすくなります。
 5時は多くの会社で通常の勤務時間だと思います。
 暗がりで歩行者に気が付かず、フォークリフトが接触する危険もあります。
日中の仕事とは環境が変わりますので、適切な照明を付けるなどしてくださ
い。
 12月は年末の忙しさから事故が多くなる季節です。朝は日の出の前に家を
出る人も少なくないでしょう。大阪府内では無灯火で走る自転車がとても多
いです。帰宅時も自転車置き場から会社を出るまでに無灯火で走っていると
構内での接触事故も考えられます。
 
 各地の日没時間は下記でご確認ください。
 http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年11月12日(フェールセーフのトラブル)
 「フェールセーフ」
 この安全週記で過去何回と話をしているので、お判りだと思います。
 フェールセーフは安全装置・安全システムにおいて誤操作・誤作動による
障害が発生した場合、常に安全側に制御するものです。人間は間違いを起こ
すものであり、機械はいつか故障します。人間がミスしても、機械が故障し
ても事故が発生しないようにするものです。
 私がフェールセーフの説明をするときに、例として出すのが、鉄道での遮
断機です。遮断機は、一見すると、電車が近付いたという指令のもとに遮断
機の竿が降りてくるように見えます。しかし、それは逆で、
「電車は今、通りませんよ。安全ですよ」という安全信号を受けて、遮断機
の竿を上げるのです。もし、これが逆で、「電車が来ますよ。危険ですよ」
という信号を受けて動作していたら、その危険信号が何らかの故障により途
絶えてしまうと、遮断機の竿が降りずに電車が通ることになり、とても危険
です。安全信号を受けて、遮断機の竿を降ろすのであれば、たとえ、その信
号が途絶えても、遮断機の竿は降りた状態になるので、システムが故障して
も、線路と道路が遮断されますので、通行者の安全を確保できるものです。
 ちなみに、遮断機の竿は動力で持ちあげられており、停電が発生した時に
は、竿は降りている状態になります。
 しかし、11月11日、遮断機が上がったまま、電車が通過するトラブルが発
生しました。(京王動物園線 詳細は下記)
 http://www.keio.co.jp/news/update/announce/nr111111v03/index.html
 なぜ、このような事が発生したのかは不明です。機器の不具合があれば、
安全信号を確認できなくなるため、遮断機の竿は下がったままにならなけれ
ばなりません。
 フェールセーフでトラブルがあったものとして、代表的なものは、パロマ
のガス湯沸かし器の事故でした。あの事故は修理者が誤って、フェールセー
フ回路を短絡したのが原因でした。今回のトラブルは、何か改良した時の確
認漏れがあったのだと推測します。
 フェールセーフ機能があっても、踏切を横断する時には、左右の確認を怠
らないようにお願いします。
 
               ご安全に!  がんばろう、日本!

2011年11月5日(どうして飲酒運転するのでしょう)
 飲酒運転は本人だけでなく、家族・親戚の一生を左右します。
 2006年8月25日福岡市で飲酒運転の乗用車が5人を乗せたRV車に激突し、
海に墜落させ、3人の子供の命を奪った事故は多くの方の記憶にあると思い
ます。
 飲酒運転をした元福岡市職員(27歳)は危険運転致死傷罪などで懲役20年
の刑が確定しました。刑の確定まで5年かかりました。この5年間は被災者の
家族にも加害者の家族にも辛い月日だったと思います。しかし、まだ損害賠
償の課題が残っています。自賠責保険から最大の3000万円が支払われたと思
いますがこれでは終わらないでしょう。加害者は懲役20年ですから、働いて
支払うこともできません。しかも、自賠責保険は飲酒運転が原因ということ
ですから給付したといっても加害者の立て替え払いのものであり、加害者は
自賠責に返済義務が残ります。
 加害者は懲役刑ですから、家族・親戚の財産を集めるしか方法はないでし
ょう。
 飲んだ時はタクシーで帰れば数千円です。事故を起こせば数千万円にもな
ります。このような何万倍も違ってくるような事をなぜしてしまうのでしょ
う。
 相変わらず福岡県内の飲酒運転摘発件数は全国一です。飲酒運転による事
故・摘発は減少方向ですが、ゼロには遠く及びません。その背景には一部の
運転手の意識が変わっていないことがあるでしょう。「近いから大丈夫」と
か、「今まで飲酒で事故を起こしていないから大丈夫」、「飲んだ時は運転
に注意するから大丈夫」と考えているのでしょう。
 「飲酒運転は合法」と考えている人は一人も居ないでしょう。禁止されて
いる事を理解していても、現実には発生しています。
 もし、「飲酒をしたら必ず事故を起こす」と決まっていたら、誰もしない
でしょう。「飲酒したけど無事に運転できた」という経験が判断を間違う元
となっています。この「悪い事だけど、結果オーライ」が困りものです。
 産業の場でも同じです。高いところで作業するとき、安全帯のフックを掛
けていないと、必ず墜落するのなら、全員が安全帯を適切に使用します。し
かし、安全帯を使用していなくても作業できてしまうから、いつまでたって
も墜落転落災害はゼロになりません。成功する経験が多ければ多いほど、過
信するものです。
 これからお酒を飲むことが多くなる時期です。飲酒運転防止の指導をお願
いします。これは自転車も同じです。自転車でも死亡事故を起こすことが増
えています。
 ある忘年会では運転する人には「運転者ステッカー」を貼って、運転者に
は誰も酒を勧めないように工夫している会社もあります。自転車も同じよう
にしていただくことを願います。

 
2011年11月5日(アマチュア無線)
 アマチュア無線の国家試験受験者が増加しているそうです(21年ぶりの増
加)。国家試験受験者は1990年がピークで年々減少し、昨年は4000人弱でし
た(1990年は21万人)。受験者増加の理由としてあげられるのは、震災です。
受験者は4月以降増加しています。
 アマチュア無線の強みは災害時に強いことが挙げられます。阪神淡路大震
災でも東日本大震災でも交信に支障はなかったようです。
 震災時には固定電話・携帯電話がほとんど使えないというのは多くの方が
経験したと思います。
 将来発生が予測される東海・東南海・南海の三連動地震に備えて、社内で
誰が資格を有しているのか、また、基地局を持っているのは誰かということ
は把握しておいた方が良いと考えます。
 アマチュア無線の資格には無線従事者免許(1級~4級)と無線局免許が必
要になります。資格者の約9割が4級の免許を持っているそうで、比較的簡単
に合格できるようです。(小学生でも取得可能)

 アマチュア無線があれば、災害時の安否確認も可能になります。
 しかし、「アマチュア無線」の名の通り、業務用としての使用は認められ
ていません。安否確認であれば「業務」の域を離れると考えられ、緊急時で
あれば、使用することの問題は無いと考えます。これが他府県の工場との連
絡(被災状況確認等)であれば、業務と考えられますので、業務用無線を利
用してください。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年10月29日(メンタルヘルスと受動喫煙防止)
 先週に引き続き、受動喫煙防止の話になり、申し訳ありません。
 10月24日、労働政策審議会の答申がありました。 
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001slsj.html
 労働安全衛生法の改正がこれから審議されます。
 その中にメンタルヘルス対策の充実と強化があり、労働者の精神的健康の
状況の把握が義務付けられます。従業員全員に対してストレスチェック等を
実施し、その結果に基づいて面接等を行う必要があります。実施の頻度等詳
細は不明ですが、健康管理部門・衛生管理者・人事担当者とも業務が増える
ことになるでしょう。
 次に受動喫煙防止があります。職場の全面禁煙または空間分煙が義務付け
られます。喫煙室等の設備が必要になるので、猶予期間は設けられると思い
ますが、予算を計上するなど今から準備が必要です。
 一番簡易的な対策としては、建物内を禁煙にして、外で喫煙する方法があ
りますが、建物の出入口の近くを喫煙場所にすると、非喫煙者も通りますし、
建物の換気により、出入口から煙が室内に流れ込みますので、これでは意味
がありません。建物のドア・窓から十分離した場所に設置する必要がありま
す。そうなれば、屋根が必要になってきます。建物の外に設置する場合は、
取引先や一般市民の方に見える場所に設置するのは、会社のイメージダウン
につながるおそれもありますのでご注意ください。
 喫煙室を作る場合は、非喫煙区域と喫煙区域との境界において、喫煙区域
内に向かって0.2m/s以上の吸込み気流を発生させる必要があります。
(喫煙室の境界での気流速度等詳細は今後審議されますが、大きくは変わら
ないと考えています)
 少人数の職場で、全員が喫煙者ということも考えられますが、この場合も
全面禁煙もしくは空間分煙が必要になると考えます。(非喫煙者が入室する
こともあるため)
 来年度中には施行されますので、予算の計上および安全衛生委員会等で審
議し、今から準備される方が良いでしょう。


                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年10月22日(受動喫煙防止対策)
 厚生労働省では健康増進法および労働安全衛生法に基づき、受動喫煙防止
対策として、旅館・飲食店に対して、空間分煙導入に対し助成金を支払う支
援をしています。
 助成金は設置に係る費用の4分の1(上限200万円)
 (参考)受動喫煙防止対策助成金制度の創設
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001q37r.html
 今週、空間分煙を検討している飲食店でアドバイスさせていただきました。
 空間分煙とは、区画された室内のみ喫煙が可能であり、非喫煙区域と喫煙
区域との境界において、喫煙区域内に向かって0.2m/s以上の吸込み気流を
発生させる必要があります。
 その吸込み気流を発生させるためには、次の計算によって求めた排風量を
有する換気装置を付ける必要があります。
 Q=A×V  (Q:排風量 A:開口面積 V:風速)
                   Vの風速は0.2m/s
 計算では単位を揃える必要があるので、
 Q(m/min)=A(㎡)×0.2(m/s)×60
      (最後の「×60」は秒を分に直すためです)
 排風量を大きくすると、コストが大きくなります。そのため、排風量を抑
えるには、開口面積を小さくする必要があります。
 喫煙室を設ける時のポイントとして
 ①喫煙室にはエアコンを設置しない
  (エアコンを設置すると、その気流が開口部を超えて、外に漏れます)
 ②開口部と排気口の間の距離を長くする
  (室内の排気効率を高めるために、室全体の空気が流れるようにします)
 ③喫煙室にドアを付ける場合は、給気口を付ける
  (室内が密閉になると、排気能力が高くても、空気の流れが作れません)
 ④喫煙室の窓は開閉禁止とする
  (窓を開けると、外気により、煙が非喫煙区域に流出します)
 ⑤排気口の近くに非喫煙区域の窓などがないこと
  (喫煙室から排気した煙が、窓から流入することがあります)
 なお、助成金を受けるためには、設置工事を行う前に「工事計画認定申請
書」を労働局に提出し、認定を受けた後、工事を開始し、完成後、助成金の
申請になります。計画認定を受けずに工事を開始した場合は不支給になりま
すので、ご注意ください。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年10月15日(防災力診断)
 当社(安全安心株式会社)では「防災力診断」を開始します。
 地震・台風などの自然災害のリスクをどのくらい低減しているかを診断す
るものです。東日本大震災という大きな地震があったばかりですが、東海・
東南海・南海地震や、関東地方等の内陸地震の確立も高いと言われています。
また、台風12号による被害など、事業継続のためには自然災害への対応が不
可欠です。
 しかし、当社では、防災力診断の実績がないため、どのような効果が見込
めるのか、提示できるものがありません。
 そこで、モニターをお願いできる事業所はありませんでしょうか?
 モニター様には無料で「防災力診断」を行います。(限定数:3事業場)
 なお、モニター様で行った診断結果は、事業所が特定できない様式でダイ
ジェスト版として報告書にまとめ、第3者に提示することをあらかじめご了
解ください。ダイジェスト版は当社のノウハウもありますので、全てを公開
せず、サンプル程度のものですので、モニター様にご迷惑をお掛けすること
は無いと考えています。
 診断の項目は「被害想定」「方針」「計画」「組織」「教育」「運用」な
ど、10項目、約100のチェック項目で行います。現状の規定などの書類を確
認させていただき、現場の状況を確認させていただきます。診断に要する時
間は、事業所の規模にもよりますが、半日から1日程度かかると考えてくだ
さい。ただし、建物の耐震性能を評価するものではありませんので、建物の
耐震性能の評価は施工業者等にご相談ください。
 診断をさせていただいたあと、1週間以内に報告書を提示し、改善のため
のアドバイスをさせていただきます。
 また、来年発行予定の国際規格ISO22301(事業継続マネジメントシス
テム)を見据えたアドバイスもさせていただきます。
 なお、モニター様については診断料は不要ですが、大阪府以外の事業所で
は交通費を請求させていただきます。また、事業所の敷地内に複数の建物が
ある場合はリスクが高いと思われる1棟だけの現場視察にさせていただきま
す。
 防災力診断のモニターをさせていただける事業所は下記までお問い合わせ
ください。oshms-consultant@ares.eonet.ne.jp


                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年10月8日(ケータイ事故)
 10月6日に放送されたNHKクローズアップ現代では「ケータイ事故」が
テーマでした。
 http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=3104
 携帯電話を使用しながら、歩行して、接触・転倒もあれば、電車のホーム
から転落する事故もあります。ホームからの転落としては、自分自身が携帯
の画面を注視していて落ちることもあれば、視覚障害者が、点字ブロックの
上に立ち止まった人を避けようとして転落することもあります。
 番組では、地図のようなものを見ながら歩く時と、携帯を見ながら歩く時
の視線の動きに違いがあることが紹介されました。地図を見ながら歩く時は、
視線が紙や周囲に散らばりますが、携帯の場合は、視線が画面に集中してい
ます。特に、スマートホンの場合は、画面の情報が多いため、視線集中が高
くなります。当然、人にぶつかることも多くなります。
 また、携帯を見ながら歩く人は、不自然にゆっくり歩き、突然、立ち止ま
ることもあるので、後を歩く人からするととても迷惑なことです。
 歩行者だから、多少ぶつかっても問題無いと考えるかもしれませんが、相
手によっては大きなケガをさせることもあります。
 私が会社で安全衛生していた時は、社内での携帯電話操作を禁止していま
した。みなさんの会社でも同じだと思います。それは徹底できているでしょ
うか。会社の中ではある程度制限できたとしても、問題は出張時や通勤時だ
と思います。もちろん、車運転・自転車運転時も禁止しなければなりません。
 スマートフォンの普及率は10%程度と言われていますが、
 新型iPhoneの発売により、スマートフォンの割合も増えてくるでしょう。
 スマートフォンというと、若い人が使う物と考える人が多いでしょうが、
画面が大きいため、中高齢令者にも人気があるようです。
 社員に対して、歩行中・運転中の携帯操作は禁止するよう教育することが
必要です。「自分だけは大丈夫」と思う人が多いものです。でも、繰り返し
繰り返し、指導していただきたいと思います。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年10月1日(津波シェルター「ノア」
 先日のニュースで「ニュートリノ」は光より速いことが実験で明らかにな
ったということで、不可能とされていたタイムマシンが現実になるかもしれ
ない。と夢のような話がありました。タイムマシーンができればいいですね。
タイムマシンがあれば労働災害は無くすことができます。でも、そんなもの
はできないでしょう。少なくても、私たちが生きている間は無理でしょう。
だから、私たちは災害防止をこれからも続けなければなりません。そんな事
を考えて、私の会社のCMを作りました。もう1年も前のことです。
 http://www.youtube.com/watch?v=66fu_2b35JE
 でも、何百年後でもいいのでタイムマシンを完成させて欲しい。そして、
過去に戻って2011年3月11日に地震がくることを、伝えて欲しいですね。
 さて、東日本大震災からもう200日。復興と同時に、東海・東南海・南海
連動地震や活断層地震への警戒・備えが必要です。地震の予知・予測につい
て研究されていますが、地震予知の完成が早いか、地震が先にくるかは誰も
判りません。津波が襲ってくるスピードは車のように速いです。しかし、車
では逃げ切ることが困難です。なぜなら、渋滞に巻き込まれます。徒歩で逃
げなければなりません。近くに4階建以上の鉄骨ビルがあれば、助かるかも
しれません。でも高層の鉄骨ビルが近くにあるからといっても安心はできま
せん。夜とか休みの日にはビルに入れないかもしれません。
 そこで、私が注目した製品は「津波シェルター・ノア」
 旧約聖書の大洪水から逃れるための「ノアの方舟」のようなものと考えて
名付けられたそうです。FRP(繊維強化プラスチック)製の丸い防災シェ
ルターです。津波に飲み込まれても、土石流に飲み込まれても、水に浮くの
で、万一の時に身を守るためには有効だと考えます。
 http://www.cosmopower.com/product/shelter/dormu.html
 動画はこちらをご覧ください。
 http://www.youtube.com/watch?v=FF7vObu2dsU
 生産が追いつかないほど売れているそうです。
 海岸から近くて、土地の低いところ。近くに避難できるようなビルが無く、
歩行が困難な家族が居る場合、心強いシェルターになるかもしれません。
 しかし、欠点はあります。油が海に流れ、火災が発生した時には、助から
かもしれません。それに夏場は熱中症の危険があります。津波から逃れられ
ても、夏場に1日漂流すれば、とても助からないでしょう。購入・設置する
際には欠点もありますので、ご注意ください。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年9月24日(感電事故)
 21日夕刻、神奈川県相模原市でバスの運転手が感電死するという事故があ
りました。この運転手は路線バスの運転手ですが、市道に垂れさがっている
電線をどけようとして、バスを降り、電線を手で持った瞬間に倒れました。
台風の強風で電線が切れたようです。雨はひどく降っていましたから、運転
手の手は濡れており、電気が流れやすい状態でした。電線を握った瞬間に、
筋肉は縮み、持った電線を離すことは自力ではできません。
 この電気というものは、人間の五感では、通電か停電か判断できません。
運転手には、ただの黒いケーブルとしか見えなかったのでしょう。切れてい
るのだから、電気が流れていないと考えたのかもしれません。
 労働安全衛生法では、業務に伴う危険性・有害性を教育する義務がありま
すが、道路に電線がぶら下がっている場合の対応の仕方までは想定できず、
教育もできていなかったかもしれません。教育をしていたとしても、就業中
に1度経験するかしかいかというものであり、実務で教育効果がどのくらい
あるかは判りません。
 電力会社の方では、台風によって電線が切れる可能性があるからといって、
早期に停電をするわけにいかず、対策が難しい問題です。
 しかし、どんな会社でも電気を使っていない会社はないでしょう。電気に
関する特別な教育を受けていない人ができることは、プラグをコンセントに
差し込むだけです。教育する内容としては、電気のケーブルの被覆を傷付け
ないこと、判らないケーブルには触らないこと、ケーブルの上にものを載せ
ないこと。コンセントボックスが破損していたり、電気コードの破れ、機器
の電源部の破損、異常な臭い、異常な音、異常な過熱など、「目・鼻・耳・
触感」で異常と思われるものについて、上司に報告させることでしょう。さ
らに、万一、感電事故と思われる災害に遭遇したら、安易に触らないことで
す。人間の身体は導体であり、被災者の身体を通じて感電する危険もありま
す。
 家庭用の電圧100Vを触れて、ビリビリした経験がある人も多いでしょう。
100Vなら死亡することは無いと思ったら大間違いです。30Vでも死ぬ危険
があります。「42(死に)ボルト」と言われるように、100V以下でも生
命の危険があります。(被害の程度は電圧(V)だけでなく、接触抵抗(Ω)
にも関係します。濡れていれば、電気は流れやすくなります。)
 繰り返しますが、電気の流れは「目」では判断できません。電気による危
険にはご注意ください。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年9月17日(防災について考えてみました)
 今週は防災について考えてみます。東日本大震災から半年が経過しました。
東日本大震災の影響で、東日本の地盤が東に動いており、断層にストレスが
かかっているということで、5つの断層で地震の可能性が高くなったと発表さ
れました。
 岐阜県の萩原断層
 宮城県~福島県の双葉断層
 長野県の牛伏寺断層
 埼玉県~東京都の立川断層帯
 神奈川県の三浦半島断層群
 とても心配です。さらに、東海・東南海・南海の連動型のプレート地震の
可能性も高いといわれており、特に東海・東南海・南海地震は30年以内とい
うので、私たちが生きている間に発生する可能性がとても高いのです。
 皆さまの事業所ではそのような地震に備えて対策が進んでいるのではない
でしょうか。
 そこでちょっと疑問を感じました。
 地震に備えて対策といっても、どのような想定をしているのでしょうか?
 東海・東南海・南海地震が発生すると、マグニチュード8以上で、太平洋
岸を中心に10m超の津波が発生し、大阪では震度6とも言われています。
でもこれらの想定は事業所の被害想定ではありませんから、事業所で被害の
想定をしなければ、対策は取れないと考えます。
 たとえば、事業所の敷地内に2つの棟があり、一つは昭和50年の創業当時
なので旧耐震基準で建てられてたA棟と、もう一つは平成元年の建築で、新
耐震基準で建てられたのであれば、A棟とB棟ではリスクの発生する可能性
は異なります。耐震性の調査をすれば、どちらの建物がリスクが高いか判り
ます。また、労働者数はどちらが多いか。浸水した場合、どちらの建物の方
が高い位置(海抜)にあるか、どちらが被害金額が高いか、など、建物や工
程別に地震による被害の大きさを想定しないと対策が進むはずはありません。
 東日本大震災による福島原発事故の時に「想定外も想定しなければならな
い」といわれましたが、初めから、「地震で全ての建物が倒壊して、津波で
全て流され、従業員全員が死亡する」と最悪の事だけ考えれば、対策も何も
進められません。
 たとえば、震度6強で、津波による浸水が1mと想定したら、事業所はど
うなるのかという被害(シナリオ)を描かないと対策の具体案が出てきませ
ん。
 地震対策として、水・食糧を備蓄している会社もありますが、その保管場
所がどうなるのか想定していないと「備蓄」とは言えないということです。
 あなたの事業所の防災計画ではどのようなシナリオを描いていますか?
 シナリオを描くことから防災対策がはじまるのではありませんか。もちろ
ん、シナリオを描くためには、現状の把握(リスク評価)が必要です。
 そのシナリオを描くための土地・建物・建物附属設備、機械、作業等のリ
スク評価や、シナリオを描いたら、減災のために何を計画し、どのように進
めていくのか、事業継続(BCP)について、機会がある時に説明させてい
ただきたいと考えています。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年9月10日(エレベーター爆発?)
 9月6日午後、ネットでニュースを見ていたら「エレベーター点検中爆発」
という記事を見つけました。
 はて? エレベーターで爆発って聞いたことがない。
 ニュースを調べていると状況が分かりました。
 9月6日12時ごろ、東京都練馬区のアバートでエレベーター点検をしていま
した。点検は朝9時ごろから2人で行い、1人がエレベーターの内部(籠)で
点検し、1人はエレベーターの下に入って、部品の交換をしていたということ
でした。下の作業者は油汚れをふき取るためにシンナーを使っていました。
そして、下の作業者がタバコを吸おうとした瞬間に爆発したということです。
作業員は顔などに火傷の重傷ということです。
 エレベーターの下側に入るとほとんど換気できません。せまい室内で油汚
れをウエスにシンナーを染み込ませて拭いていたのでしょう。換気が悪いう
えに気温が高く、シンナーは気化し、比重の重たい蒸気が底の方に集まり、
爆発下限界を超えた時に、タバコに火をつけてしまいました。
 
 みなさんはどう思いますか?
 こんな場所(エレベーターの下)でタバコを吸うなんて考えられますか?
 修理も長時間に渡り、一度、エレベーターの下に入ると、簡単には出れま
せん。狭いうえに暑いし、なかなか作業が終わらないし、この場所ならだれ
にも見られずに吸えると考えたのかもしれません。
 喫煙場所以外で吸う行為自体が問題ですが、有機溶剤の危険性を理解して
いなかったのでしょう。
 ウエスや作業服に引火、炎上していたら、死亡事故になっていたことでし
ょう。
 危険性を知らないということは、本当に恐ろしい。


                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年9月3日(禁煙補助剤「チャンピックス」)
 生活習慣病予防のため、企業においても禁煙指導が行われていると思いま
す。禁煙には、自力で行うものと、薬を利用するものがあります。薬を利用
するものには、「ニコチンガム」「ニコチンパッチ」もあれば、飲み薬もあ
ります。その飲み薬の代用的なものとして、禁煙補助剤「チャンピックス」
があります。ファイザーが販売しており、年間に41万人が服用していると言
われています。
  「チャンピックス」は脳細胞のニコチン受容体に作用し、喫煙欲求を抑
   制するものです。
 30日に厚生労働省が発表したのは、このチャンピックスを服用後に意識障
害を起こした例が3年間で6件あり、その内、3件は自動車運転中だったとい
うことです。2人が意識を失い、1人は眠たくなって交通事故を起こしました。
 平均すると1年間に2件となり、40万人が使用しているとしたら、発生率は
0.0005%となります。このように小さい確率だからといって、無視するのは
禁物です。なぜなら、3年間で6件はチャンピックスの副作用の可能性が高い
ものだけであり、氷山の一角かもしれません。
 4月18日には栃木県でクレーンを運転していた男性がてんかんにより意識
を失い、児童が6人死亡する事故がありました。(週刊 ご安全に!149号)
自動車運転時にアクセルを踏みながら意識を失い、前かがみになると、アク
セル全開で走る可能性もあります。
 
 禁煙指導でその人が業務で車を運転するのであれば、チャンピックスを勧
めない方が良いかもしれません。
 また、業務で車を運転する方に対しては、禁煙補助剤「チャンピックス」
の使用の有無を確認しておいた方が良いと考えます。
 もし、対象者がおられたら、産業医とよく相談して対応していただくよう
お願いします。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年8月27日(塩酸タンクに転落 2人死亡)
 8月24日に悲惨な事故がありました。千葉県船橋市西浦の日鉄住金鋼板船
橋製造所で、塩酸タンクに2人が転落して死亡したということです。
 塩酸については学校の理科の実験で金属を溶かす液体ということで実験し
た記憶があります。ビーカーに塩酸を入れ、その中に金属片を入れると、細
かい泡が発生して、金属が溶けていきます。(皆さまもそのような実験をさ
れたのではないでしょうか)そのような中に人間が入ると・・・・これ以上
は考えたくないですね。しかし、現実に発生してしまいました。
 被災者は下請けの配管工事会社の社員ということです。配管のさびを点検・
修理する作業でした。塩酸タンクは強化プラスチック製タンク(高さ約5m、
直径約3m)でした。事故後の写真を見ると、タンクの上部が割れています。
おそらく、2人の体重を支えきれずに割れたのでしょう。丈夫そうに見える
タンクでも割れて下に落ちるということは予知できなかったのでしょうか?
 タンクの上に初めて上がったのか、過去からしていたのかはわかりません
が、下請けの社員で、配管の点検を定期的にやっていたのでしょう。過去に
何度もタンクの上にあがっていたかもしれません。前回、大丈夫であっても、
樹脂のタンクは劣化します。また、前回は一人だったのかもしれません。
過去にこの安全週記で、子供が屋上の天窓で遊んで(天窓はアクリル樹脂)、
割れて、転落死したことを書いたことがあります。
 タンクは内圧に耐えられるように、また、雨水・紫外線に耐えられるよう
に作られていますが、人間の体重に耐えるようには作られていません。樹脂
は(乗ったら)割れるということを知っていて欲しかった。
 ことわざに「石橋を叩いて渡る」がありますが、あれは文面通りに理解し
ないでください。叩いたぐらいでは人間が渡れるかどうかの判断になりませ
ん。樹脂の上、スレートの上は割れる可能性があります。金属でも腐食によ
って割れるかもしれません。ご注意ください。
 報道によると、DNA鑑定をして、被災者を特定するというのです。遺体
の損傷の程度は分かりませんが、DNA鑑定が必要ということは、家族でも
身元がわからないのでしょう。
 朝、元気な顔で会社に行った家族が顔も分からない状態で帰宅するとは、
なんとも残念な事故です。
 この事故はタンクの割れを予知できなかっただけではありません。労働安
全衛生規則519条の転落防止柵または安全帯の着用等が義務つけられていま
す。高い場所では、たとえ慣れていても、地震が発生するかもしれません。
スズメ蜂が飛んでくるかもしれません。強風(ビル風含む)が吹くかもしれ
ません。転落防止の措置を徹底してください。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年8月20日(川下り船転覆事故)
 8月17日に発生した天竜川の川下り船転覆事故で2人が死亡し、3人が行方
不明になる事故が発生しました。約6キロの距離を50分ぐらいかけてゆっく
り川下りをする船がどうしてこのような悲惨な事故になったのでしょうか。
 連日、報道を見ていると、船頭の操舵ミスとか救命具の着用に関する報道
が多いのですが、要因は他にあるのではないかと感じます。
 救命具に関して言えば、大人が使う救命具は、見た目・機能的にも座布団
のようなものでした。船には座席がありませんから、座布団は必要なもので
しょう。救命具は地上であれば、容易に着用できますが、水中に入ってしま
えば、簡単に着用できるものではありません(服を着た状態で、手を使わず
に泳ぐ・浮くことはかなり困難です)。今回の事故でお尻の所に備えている
状態では役に立たないことが分かりました(簡単な説明だったので、理解さ
れていなかったこともあります)。
 救命具は着用していなければなりません。その着用基準が「12歳未満は着
用義務、それ以外は努力義務」というのも考えたらおかしいですね。お客様
には、若くて水泳が得意な人もいれば、70歳80歳の方もおられます。年齢で
区分するのは間違いだと考えます。
 また、船頭自身がライフジャケットを着用していないことも気になります。
努力義務ということですが、船頭が着用しなければ、誰も必要性を感じない
でしょう。
 国交省では事故の翌日「川下り船の安全運航の徹底について通達を出しま
した。
 http://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji06_hh_000038.html
 今回の事故で一番問題と感じるのは、社長の会見にあった「川下りのコー
スは船頭に任せてある」という言葉でした。渦があるところでは、万一転覆
した場合、救命具があっても全員が助かる保障はありません。相手が川の流
れなので、ある程度、船頭の経験と技量に応じてコース取りを変える必要が
あるかもしれませんが、事業計画の中でどのコースを選ぶのか、社長が安全
性と顧客満足を勘案して指示するべきです。全て船頭任せというのは、経営
者として失格と言わなければならないと考えます。
 お客様はスリルを感じ、無事に到着すれば、喜んでもらえます。船頭は、
お客に喜んでいただこうと考えれば、だんだん危険な状態に船を進めていく
でしょう。今回の事故はいつか発生する事故だったのでしょう。
 事業者は過去の無事故経験を過信することなく、常にリスクを考えておく
必要があります。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年8月13日(首都直下型地震の予想)
 
東日本大震災から5カ月が経過しました。その大震災の影響で首都圏での
地震の可能性が高まったという記事がありましたので紹介します。
(8月10日 毎日新聞より引用) 
「首都直下」高まる危機 東日本大震災で地殻変動
 東日本大震災の発生から明日で5カ月。マグニチュード(M)9.0の巨大
地震は東日本の地殻にかかる力を変え、首都圏を含む一部の地域や活断層で
地震を起こしやすい状態が続いている。専門家が懸念するのは、阪神大震災
(M7.3)以上の被害が想定される首都直下地震への影響だ。発生の可能性
はどの程度高まっているのか。【八田浩輔、比嘉洋】
 中央防災会議は、東京近郊を震源とする首都直下地震について、M7級の
18の地震を想定している。なかでも東京湾北部地震(M7.3)では、最悪
のケースで死者1万1000人、全壊全焼の建物は85万棟と想定。関東大震災
(1923年、M7.9)のようなM8級の地震より規模は小さいが、大きな被害が
懸念されている。
 大震災後、特に注目されているのが「立川断層帯」(埼玉県飯能市~東京
都府中市)だ。政府の地震調査委員会は7月までに、国内106の主要活断
層のうち、同断層帯を含む四つの活断層で地震発生確率が高まったと公表し
た。地殻変動により、地震を起こしやすい力が働いているという。
 立川断層帯は長さ約33キロで、予想される地震の規模はM7.4。東京都国
立市、立川市などで震度6強以上、23区西部でも震度6弱が想定され、都
内を中心に6300人の犠牲者が出るという国の推計もある。震災前の予想では、
30年以内に発生する確率が0.5~2%で、主要活断層の中ではやや高い。今回
それが何%上がったかは算出できていない。地震調査委員会委員長の阿部勝
征・東京大名誉教授は「階段に例えれば、一段上がったのは間違いない。た
だ、何段上がると地震の階に行くのかが分からない」と話す。
 一方、地震予知連絡会会長の島崎邦彦・東京大名誉教授は「いつ起きても
不思議ではない」と語る。立川断層帯の平均活動間隔は1万5000~1万年で、
最後に動いた時期は約2万~1万3000年前。「『満期』に近い状態」。

 いかがでしょうか?
 東日本大震災の日、東京では電車が止まり、多くの方が徒歩で帰宅しまし
た。その時の映像はご覧になったと思いますが、歩道には人が並ぶようにし
て歩いていました。その頭上には建物の窓ガラスが無数にあります。余震で
ガラスが割れたら多くの人がケガをするでしょう。本当に考えれば考えるほ
ど危険を感じます。
 また、東日本大震災で地震直後に小中学校では帰宅させた児童が津波の犠
牲になったということで、学校の対応が課題になっているそうです。学校と
いえば、多くの場合避難所として使います。その避難所になるべき場所から
一般の家庭に戻すのは間違った対応ではないかというのです。しかし、校舎
が最上階まで水没したところもあるので、学校内が安全かというと、そうと
は限りません。
 企業でも同じことが言えます。建物が崩壊しなければ、中の方が安全です
(帰宅途中に津波の可能性もあるし、建物のガラスが割れて歩行者の頭上に
落下する危険を避けられるかもしれません)。しかし、従業員には家庭があ
りますので、家族の元へ行かせることも必要です。
 災害後の行動の難しさを感じます。

                ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年8月6日(新潟福島豪雨)
 7月29日から新潟・福島で記録的な豪雨がありました。一部の地域では総
雨量が1000mmに達したようです。短時間のうちに40万人に対して避難勧告
が発令されたことが、被害拡大防止に役だったと思います。
 40万人に対して避難勧告をだせたのは、2004年7月13日の豪雨の経験を生
かすことができたからだと思います。2004年の豪雨では最大雨量が473mm
で、死者を16人も出してしまいました。
 三条市では市民に「豪雨災害対応ガイドブック」を市民に配布し、「緊急
告知FMラジオ」も配布され、市内に配備したスピーカーから緊急情報を流
したり、メールでも情報が配信されたようです。
 避難勧告を早期に発令できたのは、各河川の多くのポイントで警戒水位の
基準を細かく決めていたことが良かったのでしょう。
 三条市防災情報ホームページはこちら
 http://www.city.sanjo.niigata.jp/
 このように過去の経験を生かすことはとても大切です
 さて、先週、記載した中国の高速鉄道の続きですが、また信じられない情
報がありました。落雷防止の設備が無いということです。鉄道省の設備基準
に落雷防止の規制が無いというので、さらに驚きました。
 日本では避雷針等の設置が鉄道だけでなく、全ての産業・事業内容に応じ
た基準があります。中国では避雷針の設置基準は無いのでしょうか? 中国
で事業を展開している会社では確認をしておいた方が良いかもしれません。
日本のでは当たり前でも、中国では何も規制がない場合があるかもしれませ
ん。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年7月30日(日本ではありえない事故?)
 7月23日、中国の高速鉄道の衝突事故にはびっくりしました。
 さらにびっくりしたのは、事故の翌日には事故車両を土の中に埋めてしま
ったこと。あれだけの大事故でありながら、38時間後には運転を再開したこ
とでした。
 報道番組では鉄道評論家といわれる人たちが、「こんな事故は日本の鉄道
では、ありえない」と発言していたことが気になりました。
 この段階では事故の原因は「落雷による列車停止」としか発表がなかった
のです。落雷は事故の一つの要因であって、ほかにも事故の要因はあるはず
です。原因も分からずに、事故の結果だけを見て、「日本ではありえない」
と発言していたことが私には驚きです。「ありえない」と考えることがあり
えないのであって、「ありえない」と考えると、その時点で危険要因を見つ
けることはできません。
 日本の鉄道には自動列車停止装置(ATS)が付いています。しかし、ATS自
体が故障することはないのでしょうか? 意図的に無効化して運転すること
はできないのでしょうか? 障害物を感知しても、ブレーキの故障が重なる
と障害物の手前で止まれないでしょう。ハード的に2重3重の安全装置があっ
たとしても、100%安全(=事故はありえない)ではないはずです。
 28日になって、事故の原因は信号機の欠陥で、赤信号を出さなければなら
ないのに、青信号になったということです。安全ではない状態で青信号を出
すというのは、その信号機自体の信頼性は無いと同じです。
 ここで私は、ある疑問を感じました。時速300kmで走る列車への指示を信
号で伝えていいものでしょうか? 300kmで走る列車の窓から信号を見て判
断できるものでしょうか? 時速300kmは、1秒間に100m近いスピードです。
そんなスピードで信号を見れるものでしょうか?
「見れない」または「見落とす」可能性があるのであれば、それは安全のた
めの信号の機能を有していません。(日本の新幹線では運転席の中に信号が
表示されます) 
 中国では急速な高速鉄道の発達により運転手が不足し、たった10日の研修
で運転士になったと聞きますし、過重労働状態になっているようです。
 ハード的な問題だけでなく、オペレーターの質の問題もあります。
 このままでは惨事は繰り返されることでしょう。日本の新幹線と同じレベ
ルなのは最高速度だけで、安全性の面では日本の新幹線とは別の乗り物と考
えた方が良いかもしれません。
 中国に社員を派遣・出張させている企業も多いと思います。移動に高速鉄
道を利用させないことも検討する必要があるかもしれません。


                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年7月23日(知っているのと守るのは別?)
 5月21日のことですが、宝塚市で酒気帯び状態で車を運転して別の車に衝
突する事故がありました。この運転手は大阪大学の教授(63)でした。しか
も、この教授は警察庁所管の交通事故総合分析センターの「アルコールが運
転に与える影響の調査研究委員会」の委員を約10年間務めています。教授は、
交通心理学などを専攻し、著書に「事故と安全の心理学」があります。言わ
ば、日本で一番、飲酒運転の危険性に詳しい人なのです。逮捕時のアルコー
ル濃度は呼気1リットルあたり0.65mg(0.15mg以上で酒気帯び運転)と
いうことでした。
 本当に情けないことです。
 これを企業内の労働災害防止の面に置き換えて考えています。
 社内で、プレスの特別教育の講師をするような、プレス作業主任者を例に
して話をします。普段から、部下のプレス作業安全を指導している方に対し、
「安全衛生法令や作業手順書に従って、安全第一で作業しなさい」とは誰も
教えないでしょう。そういう人は指導する立場だから、あえてその人に対し
て指導することはしないでしょう。釈迦に説法ですね。
 しかし、現実には大学教授のようなことも起ります。
 十分知っている人でも、手順に反した行動による災害は皆様の企業でも発
生しているのではないでしょうか。災害防止の難しさを感じます。

 さて、パブリックコメントで紹介しましたが、自転車の一方通行標識の導
入が検討されています。 
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=120110014&Mode=0
 自転車の事故防止の改善につながることを期待しますが、特に大阪の自転
車走行の状況を見ると、「知っているのと守るのは別」な感じがあります。
 規範意識の薄い人たちに表示だけでは効果が期待できません。会社の中で
も、会社の外でも、ルールを守る「しつけ・教育」が重要だと感じます。


                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年7月16日(間違いだらけの節電法)
 日本テレビ(関西では読売テレビ)で「所さんの目がテン」という番組が
あります。日常の疑問について科学の目で明らかにするとても良い番組です。
この安全週記でも過去に内容を紹介したこともあります。しかし、今は関西
で放送が打ち切られ、とても残念に思います。
 放送はありませんが、番組の内容は公開されているので、7月2日に放送さ
れた「間違いだらけの節電法」を紹介させていただきます。
 この夏は電力需要が増加し、電力会社の発電量が不足することが心配され、
企業や家庭で節電に励んでおられると思います。
 ここで一つ質問します。
 家庭用エアコンの多くは、「冷房・除湿(ドライ)・暖房・送風」の切り
替えがあると思います。冷房と除湿ではどちらが節電になるでしょうか?
 答えは「冷房」です。
 解説は番組のホームページで確認してください。
 http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/11/07/0702.html
 なお、環境条件・エアコンの機種によっては除湿の方がエコな場合があり
ます。
 次の問題です。
 テレビ番組で省エネを紹介したものが多くありますが、その中で、冷蔵庫
にビニールカーテンを付けると、扉を開けた時に冷気が逃げないので、エコ
だという番組を見たことありませんか?
 私の家では実施していませんが、あれは効果あるのでしょうか?
 答えは「効果なし」
 ただし、効果は番組の実験によるもので、全て効果が無いわけではありま
せん。
 解説は番組のホームページで確認してください。
 http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/11/07/0702.html 
 他にもテレビを使わない時の待機電力についても実験がありました。
 番組のホームページで確認してください。
 http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/11/07/0702.html
 

                ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年7月9日(自転車走行と交通事故)
 平成22年の労働災害の死亡者数は前年と比べ120人増えて、1,195人でした。
その中で、増加が目立つものとして交通事故があります。交通事故による死
亡は40人増加して、278人でした。(一番多いのは墜落転落で311人です。)
交通事故は死亡する方が多いばかりではなく、社会復帰できないような事故
も多く発生しています。
 今年5月12日朝、大阪浪速区でタンクローリー車が歩道に突っ込み、2人が
死亡する事故がありました。タンクローリー車が歩道に突っ込んだのは、割
り込んできたワゴン車を避けようとしたためでした。この事故によりワゴン
車とタンクローリー車の運転手は自動車運転過失致死として逮捕されました。
しかし、この事故で、ワゴン車が走行車線を急に変更して、割り込んだのは、
自転車の無謀運転があったとして、自転車を運転していた60歳の男性が重過
失致死罪で起訴されました。(ワゴン車とタンクローリー車の運転手は処分
保留として釈放されました。)
 278人の死亡者の中にも自転車が事故の要因となったものも相当数あると
考えられます。私が車を運転するとき、ヒヤリ・ハットした経験が何度もあ
りますが、多くの場合、自転車が関係しています。車道を逆走する自転車、
携帯電話を見ながら運転したり、渋滞の間を縫うように走行する自転車、赤
信号でも止まらない自転車など、いつかこのヒヤリハットが現実の事故にな
るかもしれません。本当に危険です。
 7月7日の新聞には「大阪の交通事故の3割は自転車が関係」という見出し
がありました。(全国の平均は2割)
 私は、岡山県で生まれ、就職と同時に大阪に出てきましたが、「赤信号
みんなで渡れば怖くない」というように、赤信号でも堂々と渡る人が多いこ
とに最初は驚きました。それから何十年もたって、今では、自転車走行は、
「事故さえ起こさなければ、自由に走り回ってよい」と思っている人が多い
のではないかと感じます。
 自転車のマナーの悪さについて大阪府警は「最大の原因は規範意識の希薄
さにある」と分析しており、危険な運転に対して、警告を発していますが、
その数は昨年15万件におよびます。さらに悪質なものは反則切符を切るなど
して57人を摘発しています。
 マナーの悪い自転車は簡単には減らせられないでしょう。
 自転車は「危険源」として考えなければならないでしょう。
 加害者にも被害者にもならないために、自転車に対して注意しましょう。


                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年7月2日(停電時リスクアセスメント)
 「電気予報」という新しい言葉が生まれました。
 この夏には、電力需要が増え、発電量を上回ると停電があるかもしれませ
ん。皆様の会社ではリスクアセスメントを導入している会社も多いと思いま
すが、「停電」という事象でリスクアセスメントされているでしょうか。
 たとえば、マグネットクレーンでは磁力によって吊上げた荷が停電によっ
て落下する危険があります。(多くの場合、非常用電源を備えたものがあり
ますので、不意な停電に備えていますが、停電が発生した時に備えて、日常
点検しているところばかりとは限りません))
 送気マスクを使用しているところでは、停電によって、送風機が停止し、
作業員が酸欠になる恐れがあります。
 産業用ロボットは停電によって、止まりますが、電源復旧後、ゼロ点に戻
るものと、電源が切れたポイントからスタートするものもあります。産業用
ロボットごとに停電発生時にはどうなるのかを把握し、作業者に教育してい
なければ、思わぬ事故につながりかねません。
 機械の多くは停電で止まってしまいますが、電源復旧後、起動スイッチを
操作しなければ動かないものと、電源復旧後、すぐに起動するものもありま
す。停電したからといって、安易に可動部に接近するととても危険です。ま
た、活線作業では、停電していてもいつ電気が復旧するかもしれません。停
電時特有のリスクがあります。
 これから猛暑日が増えてくるでしょう。不意な停電は起こりえるものと考
えなければなりません。「停電が発生するとは思わなかった。事故の責任は
電力会社にある」などと言い訳することは許されません。
 電力会社の「電気予報」などの情報をチェックしてください。
 (関西電力の電気予報)
   http://www.kepco.co.jp/setsuden/graph/index.html
 現場の機械等は停電によってどうなるか、通電が始まった時はどうなるか、
停電時の手順、通電開始直後の手順は決まっていますか?
 停電時のリスクアセスメントも必要です。日常の生産活動の中では、停電
という事象はほとんどないと考えることも多いでしょうが、この夏には発生
するかもしれません。関西電力の予想では8月に15日間程度、使用率が95%を
超えると予想しています。停電がないことを願っていますが、停電を想定す
ることはリスク管理上、とても重要となります。

                 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年6月25日(メンタルヘルス)
 先日、福島県の瓦職人が自殺をしたというニュースを聞きました。東日本
大震災で瓦屋根が壊れ、修理依頼が殺到しています。しかし、瓦職人は減少
して(和風家屋の減少など)いるようです。そこに地震により依頼が殺到し、
梅雨を迎えて、矢のような督促があり、「もう限界です」と書き残して、自
殺したそうです。このように一時的な需要があれば、他県より職人を呼び寄
せて対応すればよいのですが、福島県では原発の影響により、福島県内で仕
事に就くことに抵抗があり、職人を呼び寄せることが困難なようです。
 自殺にも東日本大震災の影響が表れているようです。1月から3月までは、
前年より1割程度改善されていましたが、4月・5月は前年より増加していま
す。特に5月は前年より2割も増えています。家族を失う、仕事を失う、財産
を失うなど、自殺の背景になるものが増え、避難生活も3カ月を過ぎていま
す。復興とともに、心の健康対策も急務になっています。
 さて、今週は、埼玉労働局の取組について紹介したいと思います。
 労働局といえば、メンタルヘルス対策を指導する立場ではありますが、メ
ンタルヘルス不調者が増加しています。平成20年には局の職員の3.3%がメ
ンタルヘルス不調で休業していました。これではメンタルヘルス対策を率先
垂範する立場として問題があるとして、平成20年に局長を本部長として、
「埼玉労働局メンタルヘルス対策本部」を設置して対策に取り組んできまし
た。
 労働局は長時間労働を削減する立場であるが、職員でも長時間労働がある
ようです。それら、仕事の量・質、精神的負担、窓口での苦情対応などスト
レスの軽減を図ったり、職員の相談体制の整備、復職の支援など取組み、22
年度には職員の1.3%(8人)まで下がったようです。
 労働局が内部の問題を公表することはあまり聞こえてこないのですが、今
回は改善の成果が見られたということで公表されたようです。
 参考にされてはいかがでしょうか。
http://www.saitama-roudou.go.jp/press/press20110531200202.html

                 
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年6月18日(マスクのフィルターが付いてない?)
 福島原発で作業をしている姿が良くテレビで報道されています。
 全面型の呼吸用保護具(マスク)を付けて、化学防護服を着ています。化
学防護服は真っ白な服です。服に青いラインが見えると思います。あの青い
ラインは化学防護服の縫製で縫い目の穴を隠すテープです。縫い目の穴さえ
塞がなければならないほど厳重な保護が必要なのです。したがって、通気性
は全く無いと思ってください。作業のための装備には、まず、マスクを顔に
付けます。そして、ヘルメットを着用し、化学防護服を着て、靴(長靴のよ
うな靴と考えてください)を履き、ゴム手袋を装着します。これで完了では
なく、化学防護服の頭の部分のフード部の隙間を防ぐために化学防護服とマ
スクを粘着テープで貼り合わせます。そして、化学防護服と靴の隙間・手袋
との継ぎ目にも粘着テープを貼ります。そこまで厳重な装備が必要な作業な
のです。
 しかし、13日のニュースでは驚きました。上に書いたような厳重な装備を
しているにも関わらず、マスクのフィルターを外したまま作業していた人が
居たということです。
 当然、放射性物質を吸い込んで、内部被曝が認められました。
 なぜ、本人も周囲の人も気がつかなかったのでしょう。
 最初のうちは見えない恐怖(放射線障害)があり、何度も何度も確認をし
ていたでしょう。しかし、連日の過酷な職務・ストレスでチェックがだんだ
ん甘くなってしまったのだと考えられます。思いもしないようなミスをする
かもしれません。また作業中に、本人が気がつかないうちに化学防護服が破
れてしまうかもしれません。現場監督者・監視人は作業員の状況を良く見て
いただくようお願いします。
 厚生労働省では東京電力に対して、作業者全員の被爆線量を測定し、報告
させるよう指示をしました。その結果、8人が法令で定める上限を超えてい
るということです。しかし、まだ1000人以上の測定が終わっておらず、まだ
上限を超える方が増えるかもしれません。しかし、8人とはいうものの、以
前の上限である100ミリシーベルトでみると、100人以上が100ミリシーベル
トを超えています。100ミリシーベルトから250ミリシーベルトへの改訂は福
島原発処理の特別な改訂です。作業員の中には500ミリシーベルト超の方も
いますので、従来の規制の5倍にもなります。本当に作業員の今後の健康状
態が心配です。この被爆線量は、外部被爆と内部被爆の合計です。内部被爆
というのは、呼吸器から吸引したものであり、呼吸用保護具の有効性に疑問
を感じます。顔面との密着度を確認するフィットチェックを徹底したり、電
動ファン付き呼吸用保護具の採用などが必要なのではないかと考えます。


                
 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年6月11日(スイッチ見張り番)
 今週は、災害防止の製品を紹介します。
 再通電保護プラグ「スイッチ見張り番」AOC-15
 http://www.tempearl.co.jp/prod2/aoc.htm
 ハンドグラインダーの使用について、みなさんが教育している内容には、
 「使用時は、本体の電源OFFを確認してから、電源プラグを差すこと」
 「使用後は、本体の電源をOFFにしてから、電源プラグを抜くこと」
 この2つは必ず教育していることでしょう。なぜなら、本体の電源がONの
状態で電源プラグを差すと、意図しない回転が始まり、とても危険だからで
す。その確認を忘れてヒヤリハットの経験があるのではないでしょうか。
 また、使用中に突然、回転が止まった時、「なぜだろう?」と思って、回
転部を触ることもあるでしょう。実はその停止の原因は、他の作業者が間違
ってプラグを抜いてしまった場合があります。すぐにプラグを差し込むと、
いきなり回転するので、とても危険です。ハンドグラインダー、丸ノコ、切
断器などの電動工具はそんな危険があります。小さな切創で済めばいいので
すが、指を切り落とすことも考えられます。十分気を付けて作業すれば、防
げる災害かもしれませんが、「人間は間違いを起こす動物」ですから、頭で
は理解していても、周囲の確認を怠り、いきなり触って、被災することも考
えられます。また、この夏の電力供給能力問題で、停電する可能性もありま
す。不意に復電して、被災することも考えられます。
 この再通電保護プラグ「スイッチ見張り番」は、電動工具本体の電源がON
の状態で、プラグを差した時、通電を感知し、電源を遮断してしまうので、
不意な回転を防ぐことができます。本体の電源がOFFで、プラグに差し込む、
正しい動作の場合は、普通に使うことができますので、操作が面倒になるこ
ともありません。安全を確認してから通電するので、フェール・セーフの対
策をしたと同様になります。
 しかし、ホームページにも書かれていますが、誤った接続方法であれば、
通電遮断機構が働かないこともありますので、ご注意ください。

                 
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年6月4日(燻製になるところだった)
 5月27日、JR北海道の特急列車「スーパーおおぞら」がトンネル内で脱
線し、火災が発生する事故がありました。乗客240人ほどは無事脱出したの
で良かったのですが、大きな問題がありました。
 テレビのインタビューである乗客が「JRは外に出るなというが、若者ら
が出てくれたおかげで、助かった。でなきゃ、今頃、燻製になっているとこ
ろだった」と言いました。これを聞く限りでは、乗務員の指示に従わずに避
難したから助かったということです。もし、乗客が、乗務員の指示にしたが
って列車内で待っていたら、多くの方の命を失っていたのかもしれません。
なぜ、乗務員の指示は間違ったのでしょうか。
 脱線して停止した時に、運転席には「火災発生」のランプが点いていたと
いうことですが、マニュアルでは、赤く燃える炎を肉眼で確認した時が「火
災発生」ということです。火災発生の場合は、乗客を降ろして避難させます
が、火災以外の場合は乗客を降ろさない。ということで、マニュアルに準じ
た手順と言えます。しかし、そのマニュアルは正しいのでしょうか?
 今回、トンネルは約700mであり、避難できましたが、1キロ、2キロある
ようなトンネルの場合は、避難が困難です。出口まで歩く間に一酸化炭素中
毒で倒れる可能性があります。今回は、乗客が指示を無視した避難行動と、
トンネルが短かったことが死亡事故にならなかった要因でしょう。
 どうすれば良いのでしょう。まず、トンネル内では停止しないことが一番
です。(1972年11月6日に発生した北陸トンネル火災事故で30人の死者を出
し、714人が負傷しました。事故のあと、火災時にはトンネルを抜けること
を優先するマニュアルに改訂された。さらに不燃材・難燃材の基準が導入さ
れ、万一の延焼を遅らせるようになりました。)
 今回はトンネルの中で脱線し、走り抜けることができない状態でした。ト
ンネル内で走ることができない場合は、すぐに避難を開始するべきでしょう。
しかし、トンネルには長いもの短いものがあります。トンネル内で勾配があ
る場合には、下側に逃げる方が良いかもしれません。単にマニュアルと言っ
ても複雑です。
 トンネルの中と外のマニュアルだけでは不十分です。たとえば陸橋の場合、
列車から外に出ると、転落することもあります。一般の乗客が陸橋を徒歩で
渡ることを想定していませんから、転落防止が十分にできているとは言えま
せん。
 あらゆるリスクを想定してマニュアル化していただきたいと思います。
 もちろん、今回のような推進軸の脱落原因を追及して、再発防止をするこ
とも重要です。JR北海道では2009年にも部品の脱落事故がありました。そ
の再発防止が有効でなかったことも再検討する必要があります。


                 
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年5月28日(100000年後の安全)
 100000年後とはどんな地球だろうか?
 日本という国はあるのか、日本人は存在しているのだろうか、日本の国土
はあるのだろうか。10年後、100年後の未来がわからないのに、10万年後が
わかるはずないですね。逆に10万年前を考えると、ネアンデルタール人の頃
であり、現代の人類は存在していません。それほど10万年は長い長い時間な
のですが、現在、福島原発で問題になっている放射能の有害性は10万年続く
のです。
 先日、映画「100000年後の安全」を見てきました。
 http://www.uplink.co.jp/100000/
 この映画は原発で発生した放射性廃棄物を有害性が無くなるまで地下に埋
めてしまおうというドキュメンタリー映画です。過去の地球史を見ると、6
万年ごとに大氷河時代がきていたそうです。今後、大氷河期になると人類は
滅亡し、その後、新しい人類が誕生しているかもしれません。その新しい人
類に地中に埋めた放射能廃棄物の危険性を知らせなければなりません。もし、
知らずに掘り起こすと大変な災害になるかもしれないからです。しかし、新
しい人類が現代人の言葉(言語)を理解できるとは限りません。そんな10万
年後の未来を考えなければならないものを私たちは使っているのです。
 今は平和ですが、これから地球規模の大きな戦争が起こらないとも限りま
せん。地震や火山活動の可能性もあります。この映画はフィンランドで現在
進められている地下放射能廃棄物貯蔵庫「オンカロ」(オンカロとはフィン
ランド語で「隠し場所」という意味です)の話しですが、日本は火山大国・
地震大国なので、同じ方法はとれないかもしれません。
 そんな危険なものをこれからも使い続けていいのか?と考えさせられまし
た。
 そんな今週、私が注目したのは「コケ(苔)」です。
 工場の屋根にコケを敷き詰めることにより、夏の室温上昇を抑えることが
でき、冷房費(電力使用量)の削減ができます。従来の屋上緑化と違い、土
壌が不要なので、軽量で、建物への負担も軽くなります。さらに工場立地法
上、緑地面積としても認められます(全ての都道府県で認められるものでは
ありません)。
 参考:株式会社モス山形(地球に優しいコケ)
 http://www.mos-yamagata.com/

                 
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年5月21日(熱中症と電力削減)
 昨年の労働災害は昨年より120人も増加して、1,195人になり、休業4日以
上の死傷者数も11,015人増加して116,733人となりました。増加の原因には
記録的な猛暑がありました。熱中症ではなくても、体温の上昇により、脳へ
の血流が減少して、集中力の減退、ふらつきなどで、災害にあった事例も多
いと思います。
 データの詳細はこちらをご確認ください
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001co7w.html
 今年も猛暑だと言われています、さらに電力供給量の減少により東京電力
管内など電力削減に取り組んでおられると思います。電力削減で一番取組や
すいものとして、照明の停止・減少があります。しかし、明るさと労働災害
は関係が深いので実施にはくれぐれもご注意ください。皆様の会社ではリス
クアセスメントを導入していると思いますが、職場が暗くなると、災害の可
能性が高くなる場合もあります。たとえば、通路の歩行などほとんどリスク
が無いような場面でも、暗くなると、小さな凸凹に気がつきにくく、転倒す
るかもしれません。電力削減は重要な課題ではありますが、そのために災害
が増えるようなことがあってはなりません。また、事務所則で定められてい
る照度に合わすのも問題があるでしょう。たとえば、普通作業は150ルクス
以上となっていますが、150ルクスはかなり暗いレベルです。一度に150ルク
スまで下げると、ストレスの増加により間違い・見落としなどが増えるかも
しれません。事務所則は最低の基準ですので、職場の意見を聞きながら照度
を調整してください。なお、照度測定は日中に行う場合と、日没後では全く
条件が異なります。日没後の業務も考慮してください。そして、一度に下げ
るのではなく、少しづつ下げて、従業員のストレスにも気を使ってください。
 参考:JISの照度基準(JIS Z 9110)
 http://www.jisc.go.jp/app/pager?id=2401
 次に空調の設定温度ですが、設定温度28度は暑いかもしれません。しかし、
それは、パソコンなどの発熱や直射日光による温度のムラがある場合があり
ます。サーキュレーターなどを利用してください。気流があるれば、体感温
度は下がります。その他の方法として、窓ガラスに断熱シートを貼るなど、
工夫次第で効果を上げることもできると考えます。
 空調温度の調整や照明の削減では、15%の削減は困難だと感じます。今ま
でISO-14000などで過去から取り組んでいる会社には厳しいのではないでし
ょうか。その場合は勤務の仕方についても検討が必要かもしれません。下記
を参考にしてください。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001apoc-att/2r9852000001c15i.pdf
 ただし、工場や野外の休憩場所の空調温度設定を28度にするのは問題かも
しれません。単なる休憩ではなく、体温を下げるための休憩では、26度以下
に設定することも必要だと考えます。休憩時間に体温を下げて、体力を回復
しなければ、熱中症の危険が高くなります。
 今は非常時なので、多少の我慢は必要ですが、体温の上昇によって脳への
血流が減り、それがもとで、失敗が増えたり、イライラなどストレスにつな
がり、事故が増えたり、熱中症が増えては意味がありません。職場環境の維
持に努め、健康管理に注意しながら、この夏を乗り越えて欲しいと感じます。

                 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2011年5月14日(飲酒運転で懲戒免職は妥当か)
 今週、気になった記事は、飲酒運転で懲戒免職取り消し訴訟の記事です。
 下記ご覧ください。(産経ニュースより本文引用)
  飲酒運転の懲戒免職は適法 高知県が逆転勝訴(2011.5.10)
   飲酒運転による物損事故で懲戒免職となった元高知県職員の男性(49)
   が県に処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、高松高裁は10日、
   処分を取り消した一審高知地裁判決を取り消し、男性の請求を棄却し
   た。
   一審判決は「処分は厳しすぎ、社会通念上妥当性を欠く」としたが、
   小野洋一裁判長は「物損にとどまらず人身事故につながった危険性
   が高く、公務員に対する信頼を失わせた」と指摘。「処分は裁量権
   の範囲を逸脱、乱用したとは認められない」と判断した。
   判決によると、高知土木事務所の主任技師だった男性は2009年4月、
   高知県土佐市の居酒屋などで飲酒後、乗用車で帰宅中に信号機に衝
   突する事故を起こし、呼気1リットルあたり0.7mgのアルコール
   が検出されたため道交法違反(酒酔い運転)で逮捕され、同年5月
   に懲戒免職となった。
 いかがですか、高知県は1997年に「飲酒運転の職員は免職」という基準
を導入しました。
 皆様の事業所でも飲酒運転防止については再三指導していることだと思
います。しかし、懲戒解雇に相当するような規定を掲げている企業は少な
いでしょう。実際には導入が難しいと思います。なぜなら、人にケガをさ
せていないし、物損もない場合、会社の重要なポストにいるような従業員
を解雇するのは大きな損害だと考えるかもしれないし、飲酒運転の事実が
全て会社に入らないため、処分の不公平さが生まれることもあります。
 大阪府では平成18年に飲酒運転事故の件数が781件でしたが、平成22年
では325件に半減しましたが、それでも毎日1件発生しています。事故では
ない飲酒運転件数は3,338件(平成22年)もあります。
 罰則を厳しくすると、隠蔽を誘発する可能性もありますが、会社として
は、飲酒運転は決して許されないものと考えていることを周知することが
必要だと感じます。
                 ご安全に!  がんばろう、日本! 
 (参考)
 全国交通安全運動が11日から始まりました。大阪府警天王寺署では、ユ
ニークな啓発ステッカーを作りました。
 「大トラで飲酒運転! タイガーいにしなはれや!」
 「(飲酒運転で懲役)もうこりゴリラ」
 http://www.asahi.com/national/update/0512/OSK201105120003.html

2011年5月7日(食中毒)
 4月末から焼肉酒家えびすでの食中毒が連日報道されています。病原性大
腸菌O-111による溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し、4人が亡くなり
ました。食中毒を訴えたのは94人にのぼります。
 この報道が最初にあった時は、「原因は「加熱用の肉」を生の状態でユッ
ケにしたことが原因だ。お店側の偽装だ。」ということでしたが、連日の報
道で、日本国内では「生食用牛肉」は流通していない。ということで、今ま
で食べていた生肉(ユッケ等)は「加熱用」の肉を生で食べていたというこ
とに驚いた人も多いでしょう。(厚生労働省は「生食用」として出荷されて
いるのは馬肉だけで、牛肉の「生食用」は流通していないと発表した)
 私は、企業に行って、安全の指導をしていますが、中には、飲食業の安全
衛生指導もあります。これは、包丁でケガをする人が多いとか、腰痛が多い、
あるいは、転倒事故が多いなどです。その現場に入る時には、手の洗い方の
マニュアルに基づいて指導を受けながら、手を洗って中に入ります。ある飲
食店では「手洗い指導員」が任命され、その指導員の立会で手を洗わなけれ
ばならないし、30分ごとに清掃タイムがあり、一斉にアルコールスプレーを
片手に持ち、周囲を清掃するなど、衛生管理を最重点として行われており、
そのたびに、食品衛生管理の知識を勉強させていただいています。
 中毒があった焼肉酒家えびすの厨房の映像が動画投稿サイトYouTubeにあ
りました。そこでとても気になったのは、素手で肉を触り、その手を台布巾
で拭き、その台布巾で、テーブルを拭いたり、お皿まで拭いているものがあ
りました。
  http://www.youtube.com/watch?v=u1q3de-NtkU&NR=1
 この映像だけで判断するのは不適切かもしれませんが、食中毒防止の教育、
食品衛生管理の重要性についての教育が不十分だったのではないかと感じま
す。安全の基本も食品衛生の基本も「教育」だと考えます。今まで安全だっ
たとしても、それが、「根拠のある安全」なのか、「たまたま安全」なのか
は、結果は同じでも、プロセスが異なっているかもしれません。6月から始
まる安全週間準備月間の準備として、安全管理の再確認をお願いします。
 
                 ご安全に!  がんばろう、日本!

 ちなみに、食中毒について紹介すると、昭和56年から平成22年の30年間
の平均は、事件数1,308件、患者数33,519人、死者数8人となっています。
 (料理店、一般家庭など全ての食中毒の統計です)
 (病原性大腸菌O-157の報道が連日のようにあったのは平成8年でした。
  この年の病原性大腸菌O-157による死亡者は8人でした。)
 単純に平均すると、1日に3.5件、1日に90人もが食中毒になっています。
5月になり、気温も上昇し、これから梅雨に向かい、食中毒が増えてきます。
ご注意いただくようお願いします。
 (参考:厚生労働省「食中毒に関する情報」)
  http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/index.html

2011年4月30日(ヒューマンエラー防止)
 1月30日に発生した東京ドームアトラクションのスピニングコースター
“舞姫”の事故報告書がまとめられ、公表されました。
ご覧になられましたか?
 http://www.tokyo-dome.jp/pdf/important/oshirase110428.pdf
 事故を起こした遊戯施設は撤去され、一部を保存し、今後の安全教育に生
かしていくということです。報告書は16ページにおよぶ長いものですが、今
後の再発防止については疑問に感じます。
 なぜかというと、事故はヒューマンエラーであり、管理体制、マニュアル、
教育を整備して、再発を防止するとしか読み取れないのです。ヒューマンエ
ラーを防止するためには、これらの対策が必要なのですが、それだけでは、
ヒューマンエラーを無くせません。ヒューマンエラーが許されないところに
はハード面の安全対策が必要になります。
 舞姫の場合、ハードの問題点として、「安全バーがロックしなくても発進
する」「ロックの確認は触診に頼らなければならない」「他の安全装置がな
い(シートベルト等がない)」と記載され(本文4ページの第7「その他の問
題点」参照)ており、8ページの第3「安全基準に基づく施設面の整備等」で、
「ハード面の改修を実施する」にとどまっており、具体的な改修内容につい
ては触れられていません。
 また、今回の確認(触診もれ)の要因として、横幅が長く、遠い席の確認
が困難ということで、目視に変わってしまいましたが、プラットホーム(人
が乗り降りする場所)の両サイドで確認すれば簡単なことです。その確認作
業の改善にも触れられていません。目視に変わった要因に対する防止策につ
いての対策が不十分と感じます。
 さらに、報告書には記載されていませんが、当日担当した女性アルバイト
には、安全バー装着の確認作業の他、運行中のコースターの異常があれば、
すぐに非常停止できるよう監視する作業がありましたが、実際には、運行を
始めたらすぐに次のコースターの乗車確認作業のため、運行中のコースター
を確認することは無理なのです。
 国土交通省が4月28日「遊戯施設の運行管理の実施状況に関する調査の結
果について」で全国の遊戯施設の調査を行いましたが、作業員の確認による
ものが非常に多いことに不安を感じます。
 http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000241.html 
 「人は間違いを起こすもの」です。手で触って確認すれば大丈夫と考えて
も、その確認動作を忘れることもあるのです。
           
                 ご安全に!  がんばろう、日本!

2011年4月23日(栃木でのクレーン交通事故)
 4月18日栃木県鹿沼市で登校中の小学生の列にクレーン車が突っ込み、児
童6人が死亡する事故がありました。
 18日のニュースでは「原因は居眠り運転」という報道ですが、疑問に感じ
た方も多かったと思います。私も「これは単なる居眠り運転ではない」と感
じました。なぜなら、会社を出て3分ぐらいで事故を起こしています。助手
席に乗って、寝ようと思ってもそんな短時間で寝られるものではありません。
 翌日からの報道を見ると、いろんな背景が明らかになってきました。
 容疑者は「てんかん」の持病があり、当日は薬を飲み忘れて、発作がおき、
意識が無い状態で運転した可能性がとても高いということです。さらに、こ
の容疑者は3年前にも居眠り運転して、小学5年生の男児をはね、重傷を負わ
したうえ、民家に激突しています。その事故で自動車運転過失傷害罪で禁錮
1年4カ月執行猶予4年の判決を受けています。したがって、今は執行猶予中
の事故でした。(居眠り運転ということですが、この時も発作で意識を失っ
ていた可能性もあります)
 そこである疑問が浮かびました。「運転免許持っているの?」
 旧道路交通法では「てんかん病者」には運転免許を与えないとなっていま
したが、2002年の道路交通法改正により、「発作が再発するおそれのないも
の、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発
作が睡眠中に限り再発するものを除く」と改正されました。
 くわしくはこちらをご確認ください。
  http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/info003.pdf
 容疑者はてんかんの持病を隠して、免許を取得・更新していたと思われま
す。そして、就職後の定期健康診断等でも持病を隠していたと考えられます。
 この問題は非常に厄介です。運転など危険な作業については雇入れ健康診
断結果に基づいて作業をさせますが、問診で既往歴を隠されては、会社で管
理できません。
 なお、てんかんによって生命の危険・危害の危険がある作業は自動車運転
だけに限りません。突然意識を失うと、生命の危険がある作業は数多く存在
します。
 故意に病歴等を隠された場合は手の打ちようがないのですが、逆に、雇入
れ健康診断を実施しなかった場合には、本人からの申告の機会を失うわけで
すから会社の責任は重大です。雇入れ健康診断と定期健康診断は決して怠ら
ないようにお願いします。安全衛生担当者等は健康診断結果に十分注意して
ください。特に、派遣社員を受け入れている会社や、建設業では下請けを含
めてご注意ください。
           がんばろう、日本!
                            ご安全に!

2011年4月16日(局所排気装置の改良)
 過日、ある事業所から電話があり、すぐに来て欲しいというので、早速、
伺いました。用件は、監督署から「使用提出命令」があったので、助けて
欲しいという事でした。状況を伺うと、有機溶剤中毒で休業災害が発生し、
監督署から立ち入り調査があり、その場で使用停止命令を受けたというの
です。
 現場を確認すると、狭い作業室に塗装ブースがあり、その風上側に乾燥
させるための棚があるのです。作業者は塗装ブースと乾燥棚の間で作業す
るため、乾燥棚から発生する有機溶剤蒸気は塗装ブースの吸引によって、
作業者の方に流れ、それによって有機溶剤中毒になり、休業災害になりま
した。
 対策としては、乾燥棚に局所排気装置を設けることが一番に考えられま
すので、局所排気装置を設計して提案しましたが、そこで大きな問題が発
生しました。震災の影響でモーターが入手できないのです。納期は2か月
以上です。急な使用停止命令のため、2か月も生産を止める訳にいきませ
ん。そこで、新たな局所排気装置を設置せずに、現在ある塗装ブースを改
良して作業環境改善する方法を提案して、無事に「使用停止命令解除」を
受けることができました。
 新たに局所排気装置を設置しないのだから、改善費用は安く、工期も短
かったので、事業所の方から、とても感謝されました。私も、とても嬉し
い。こんな時は、「この仕事して良かったなぁ。」と感じます。
(改善の具体的な内容は伏せさせていただきます)

            がんばろう、日本!
                            ご安全に!

2011年4月9日(震災後のがれき処理)
 東日本大震災から1カ月がたとうとしています。被災地では復興のために
がれき等の撤去が急ピッチで進められています。
 がれき等の撤去で心配しているものに、石綿(アスベスト)があります。
「アスベスト」という言葉はギリシャ語では「永久不滅」という意味があり
ます。どんなに細かく粉砕しても、長期間雨ざらしになっていても、無くな
ることはありません。2006年の労働安全衛生法改正もあり、吹き付け石綿は
相当数が撤去されていますが、中には、「封じ込め」といって石綿を撤去せ
ずに、密閉して閉じ込めたものがあります。倒壊によって、密閉されたもの
が解体され、そこから石綿が飛散している可能性があります。撤去作業の責
任者は石綿があるかもしれない、石綿粉じんが飛散している可能性があるこ
とを十分に教育していただく必要があります。震災時の非定常業務といえど
も、石綿を粗末に扱うと、作業者ばかりか、付近の住民まで被害が広がる危
険性があります。
 石綿だけでなく、津波によって海の底の土砂が陸に押し上げられたり大量
の粉じんが飛散しています。
 防じんマスクをして作業していただきたいと考えます。しかし、防じんマ
スクだけでは完全に防護できません。散水するなど、湿潤化して、粉じんの
発生を抑えることが重要です。
 また、粉じんだけでなく、多くの化学物質が流出し、化学反応を起こして
いるかもしれません。強い酸などで化学熱傷をするかもしれません。保護手
袋は軍手ではなく、ゴム手袋などが望ましいと考えます。
 がれき等の撤去作業ではケガの無いよう十分に注意してください。
 さらに、4月7日深夜のような強い余震も発生する可能性があります。ヘル
メットなどの防具を着用し、転落の危険があるところでは安全帯を着用する
など、災害防止対策も十分にお願いいたします。

            がんばろう、日本!
                             ご安全に!

2011年4月2日(此処より下に家を建てるな)
 東北地方太平洋沖地震から3週間が経過しました。しかし、未だに行方不
明者が1万人を超えている状況であり、原子力発電所の近くは立入禁止のた
め、被害の全貌は明らかになっていません。
 この記事を読んでください。(3月30日読売新聞より引用)

 「此処(ここ)より下に家を建てるな」――。
   東日本巨大地震で沿岸部が津波にのみこまれた岩手県宮古市にあって、
  重茂半島東端の姉吉地区(12世帯約40人)では全ての家屋が被害を免れ
  た。1933年の昭和三陸大津波の後、海抜約60mの場所に建てられた石碑
  の警告を守り、坂の上で暮らしてきた住民たちは、改めて先人の教えに
  感謝していた。
   「高き住居は児孫(じそん)の和楽(わらく) 
    想(おも)へ惨禍の大津浪(おおつなみ)
    此処(ここ)より下に家を建てるな」
   本州最東端の魹ヶ埼(とどがさき)灯台から南西約2キロ、姉吉漁港か
  ら延びる急坂に立つ石碑に刻まれた言葉だ。結びで「此処より――」と
  戒めている。
   地区は1896年の明治、1933年の昭和と2度の三陸大津波に襲われ、生
  存者がそれぞれ2人と4人という壊滅的な被害を受けた。昭和大津波の
  直後、住民らが石碑を建立。その後は全ての住民が石碑より高い場所で
  暮らすようになった。
   地震の起きた11日、港にいた住民たちは大津波警報が発令されると、
  高台にある家を目指して、曲がりくねった約800mの坂道を駆け上がっ
  た。巨大な波が濁流となり、漁船もろとも押し寄せてきたが、その勢い
  は石碑の約50m手前で止まった。地区自治会長の木村民茂さん「幼いこ
  ろから『石碑の教えを破るな』と言い聞かされてきた。先人の教訓のお
  かげで集落は生き残った」と話す。  (2011年3月30日 読売新聞)
  http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110329-OYT1T00888.htm

 この地区は過去から大津波の被害を受け、被害を繰り返さないために石碑
を建て、この教えに従って家を建てた方は無事でした。下の家は今回の津波
で流されてしまいました。当時と違い、防潮堤があるので、先人の教えが忘
れ去られたのかもしれません。「先人の教え」の大切さを感じました。
 労働の場でも、みなさんの会社には先輩から教えられたノウハウとして作
業手順書などに残っていることでしょう。しかし、その中には、生産性の向
上のために消されたものもあるかもしれません。先輩の教えを変える場合は、
リスクを十分検証していただくようお願いします。

            頑張れ、日本!
                             ご安全に!


2011年3月26日(計画停電)
 昨年12月8日に中部電力で、わずか0.07秒間の電圧が瞬間的に下がり、東
芝のクリーンルームの空調設備が停止したため1カ月の出荷量が2割程落ち込
むというニュースがありました。電気はライフラインであると同時に産業に
とっての生命線だといえるでしょう。その電気が計画停電により3時間も停
止する計画停電が実施されており、多くの企業はその対応に追われているこ
とでしょう。通電が再開してもすぐに正常の生産ができるとは限りません。
このロスの対応や、納期対応だけでなく、労働者の勤怠・給与にも影響を与
えます。増して、計画停電が直前になって、「実施見送り」と発表されるた
め、生産部門、営業部門、人事部門等は頭を悩ませる毎日だと思います。
 東京電力の1日の最大発電量は3700万KW(3月22日実績)だったそうです。
今は全国的な節電運動が展開されているので、電気使用量が例年より下がっ
ていますが、これから5月、6月、7月と真夏にかけて電気使用量が増えるの
は明らかです。昨年のピークでは約6000万KWであり、現在の能力ではとても
対応できません。東京電力は4月末までに東扇島と鹿島の火力発電所を再稼
働させる計画ですが、それでも4200万KWであり、冷房シーズンにはさらに厳
しい計画停電が実施されるのではないかと想像します。
 停電になると労働災害も関係してきます。
 たとえば、道路の信号です。信号が消えた交差点では交通事故が増加して
いるようです。生産現場でも、マグネットクレーンなどは、電気で磁力を発
生しているのですから、停電になると、磁力で引きつけた材料が落ちること
もあります。
 特に心配しているのは機械です。停電になれば機械が停止するのは誰にで
も分かるのですが、通電が始まった瞬間に稼働するものと、停電によりリセ
ットされ、再起動しなければならないものがあります。例えば、ハンドグラ
インダーなどは停電と同時に回転が停止しますが、通電した瞬間に動き出し、
とても危険です。停電の際には電源スイッチを停止して、通電開始による不
意の起動による災害防止を徹底していただくようお願いします。そのために
は、停電時に電源をOFFにしないとならないものは何かということを明示し
ておくことも必要だと考えます。
 また、この機会に事業所の火災報知設備や非常灯が3時間程の停電に耐え
られるかを確認しておくことも必要だと感じます。瞬間的な停電には問題な
くても、充電池の劣化により計画停電の時間中に切れるようでは万一の時に
役に立ちません。
 この計画停電がいつまで継続するかという発表は明確ではありませんが、
原子力発電所再開の目途が立たないので、今年の夏だけでなく、冬も続くと
言われています。生産拠点の変更、勤務時間の変更など創意工夫により乗り
切っていただきたいと願うばかりです。

            頑張れ、日本!
                             ご安全に!

2011年3月19日(地震と労災保険)
 3月11日の東北地方太平洋沖地震は14時46分という日中のため、労働時間
中に被災した方が多く居られます。この方々は業務中なので労災災害として
扱われるのか疑問に感じる方も多いでしょう。
 労災保険では地震等の自然災害に対しては保険給付をしないのが原則とな
っています。「地震、台風など天災地変によって被災した場合は業務災害と
認められません。ただし、事業場の立地条件や作業条件、作業環境等により、
天災地変に際して災害を被りやすい業務の事情がある時には業務災害と認め
らえます」(パンフレット:労災保険給付の概要の1ページを参照)
 http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-12.pdf
 しかし、1995年1月17日の阪神淡路大震災の時には業務災害として認めら
れたものがあります。また当時の労働省から通知も出ています。
 平成7年1月30日事務連絡第4号
 「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」
   http://joshrc.org/files/19950130-001.pdf
 今回も厚生労働省より2011年3月11日に、「東北地方太平洋沖地震に伴う
労災保険給付の請求に係る事務処理について」の通達が出ています。
 http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T110316K0010.pdf
 これにより、業務上災害および通勤途上災害について労災保険給付が受け
られる可能性がありますので、管轄する労働基準監督署等へお問い合わせく
ださい。
 皆様方の中には、労災申請すると、監督署が立ち入るから提出したくない。
労災申請すると、メリット制により労働保険料が高くなるから提出したくな
い。と考える方もおられるでしょうが、被災者救済を第一に考えていただき
たいと考えます。
 地震から1週間が経過しましたが、まだ、1万人以上の方が行方不明と報道
されています。避難所の支援をしている方、救助に当たっている方の疲労も
ピークだと想像します。健康に留意され、職務に当たっていただきたいと願
います。
          頑張れ、東日本! 頑張れ、日本!
                            ご安全に!
(参考)
 青森労働局(2011年3月14日発表)
  http://www.aomori.plb.go.jp/topics/topics218.pdf
 岩手労働局(2011年3月13日発表)
  http://www.iwate-roudou.go.jp/date/topics/pdf/20110316_002.pdf
 宮城労働局(2011年3月17日発表)
  http://www.miyarou.go.jp/new/2011/03/0317-3.pdf
 福島労働局(2011年3月13・15日発表)
  http://www.fukushimaroudoukyoku.go.jp/kikaku/pdf/happyou.pdf
  http://www.fukushimaroudoukyoku.go.jp/kikaku/pdf/hukkousien.pdf
 茨木労働局(2011年3月16日発表)
  http://www.ibarakiroudoukyoku.go.jp/wnew/wnew110316.pdf
 秋田労働局(2011年3月16日発表)
  http://www.akita-rodokyoku.go.jp/topics/20110311zisinmado.pdf
 厚生労働省 東北地方太平洋沖地震関連情報(通知)
  http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014tr1.html

2011年3月12日(東北地方太平洋沖地震)
 「災害は忘れた頃にやってくる」とよく言いますが、3月9日に、M7.2の
大きな地震があったばかりなのに、その2日後の11日午後に地震が発生しま
した。しかも、国内最大のM8.8でした。今回発生した津波は7~10mと言わ
れています。津波が引いたあとは、住宅の基礎しか残っていない場所もあり
ました。本当に津波は恐ろしい。
 「津波いろは歌留多」というものを見つけました。実に興味深い内容なの
で、一部掲載します。
(い)1 度逃げたら、低地に下がるな
 昭和三陸津波の時、ぼくの友だちのお父さんは,1度は高い所に逃げて助
 かったのに,財布を持ち出そうとして低地の家に戻ったまま、次の波にさ
 らわれて死んでしまった。こんな悲劇は津波のたびに繰り返されている。
(ろ)論より実行,津波対策
 津波は、私たち人間の都合と関係なく、明日にでも襲って来るかもしれな
 い。避難道路の整備や災害地図(ハザードマップ)の作成など、必要だと
 気づいたら議論ばかりしていないですぐ実行に移したい。
(は)はじめて安心,警報解除
 津波は一回だけでなく繰り返し襲って来る。昭和8年の津波の時は、大き
 いものは3回だけだったがチリ津波の時には延々と朝から夕方まで押した
 り引いたりを繰り返した。だから警報が解除されるまでは安心できない。
(に)日本は,世界一の津波国
 日本の国土は、周囲を海にかこまれているだけでなく、北から南まで、太
 平洋側から絶えずもぐり込んで来る岩盤(プレート)の上に乗っかった地
 震国であり、インドネシアとならぶ世界一二の津波国である。
(ほ)防潮堤への,過信は禁物
 防潮堤の高さには自ずと限界がある。北海道南西沖地震のとき、奥尻島の
 青苗地区は4.5mの防潮堤に囲まれていたが、約10m の津波は難なく防潮堤
 を乗り越え、内側の家は一軒も残らず流されてしまった。
 全文はこちらをご覧ください。
 http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/rzisin/kaishi_22/P169-174.pdf
 東北地方はまだ雪も残っており、まだまだ寒い日が続きます。救援物資も
不足しています。皆様方の事業所では防災用に飲料水・保存食を備えている
のではないでしょうか。保存期限の迫っているものだけでも現地に送ってい
ただきたいと思います。輸送手段の問題もありますが、ご検討いただくよう
お願いいたします。
                             ご安全に!

2011年3月5日(住宅用火災警報器)
 火災予防週間が3月1日から3月7日まであります。
  全国統一防火標語「消したかな あなたを守る 合言葉」
 今週、私の自宅兼事務所には住宅用火災警報器を設置しました。
 住宅用火災警報器の設置については新築住宅では平成18年6月1日より義務
化されており、既存住宅については平成23年6月1日までに設置しなければな
りません。(市町村条例により義務化の期限は異なります)
 みなさまの自宅では設置が済みましたでしょうか?
 設置は寝室と階段に必要です。(市町村によっては台所も義務になるとこ
ろがあります。設置場所が分からなければ、お近くの消防署に問い合わせて
ください。私が自宅を管轄する消防署に電話して聞くと、親切に教えてくれ
ました。
 (住宅用火災警報器相談室のフリーダイヤルもあります0120-565-911)

 この住宅用火災警報器の目的は逃げ遅れを防止することにあります。2階
で寝ている時に、1階で火災が発生した場合、2階で火災を感じて起きた時に
は階段から煙が2階に上り、逃げ場を失ってしまいます。そうならないよう
に設置してください。皆様におかれては、普段から安全に気を付けられ、火
の不始末などは無いと思いますが、コンセントから火災が発生することや、
放火などもあります。

 住宅用火災警報器の種類には「煙検知式」と「熱検知式」があります。
 一般的に煙が出てから炎が上がることがありますので、煙検知式の方が適
しているとも考えられます(条件によっては熱検知式の方が早く検知する場
合もあります)。消防署に聞くと、階段と寝室は煙検知式を設置し、台所に
設置する場合は熱検知式が良いです。と教えてくれました(枚方市は台所の
設置義務は有りません)
 また住宅用火災警報器にはAC100ボルト式と電池式があります。電池式の
方は電池交換が必要なので、AC100ボルト式の方が良いのですが、電気配線
工事が必要になります。廉価の警報器には乾電池式のものもありますが、電
池寿命のことを考えると、リチウム電池の方が良いと思います(リチウム電
池は5年から10年動作します)。
 高価なものでは「連動式」といって1台が検知すると、全ての検知器が発
報して、広い家でも安心して使えるものもあります。

 家族の生命を守るものと考えると、高いものではありません(安いものは
2000円前後からあります)。後取り付けもドライバーがあれば簡単に付けら
れます。
 まだ設置していない方はお早目に設置してください。
 また、4月5月になるとテレビのCM等で設置を呼び掛けることが増えてき
ます。そこへ乗じて悪徳訪問販売も増えるでしょうから、それにも十分注意
してください。

 ちなみに、私が購入したのは、パナソニック電工の「けむり当番」です。
 http://denko.panasonic.biz/Ebox/jukeiki/
                             ご安全に!

2011年2月26日(ゴミ収集車に巻き込まれ事故の原因は?)
 昨日の朝、大阪の宗右衛門町で84歳の女性がゴミ収集車に巻き込まれて死
亡した事故がありました。ゴミ収集車は宗右衛門町の飲食店等のゴミを収集
する業者の車でした。ゴミ収集車は「パッカー車」と呼ばれ、「回転板式」
「圧縮板式」「ローターリープレス式」などがあります。
 パッカー車は強力な力でプレスしながらゴミを圧縮していきます。缶でも
タンスでも簡単につぶしてしまいます。動きはゆっくりです。ゆっくりです
が、人間の身体の一部がひっかかると逃げることはできません。動きは「連
続運転モード」と「1工程(回転)モード」があります。
 ゴミを入れるという作業は重篤な災害が発生する可能性が高いので、外部
の方が直接ゴミを入れるのはとても危険です。私が昔、ゴミ回収時にゴミを
持って行ってパッカー車に入れようとしたら「近寄らないでください。そこ
に置いてください」と注意された記憶があります。外部の方がゴミを入れる
ことは禁止行為としているそうですが、立ち会って黙認しているケースもあ
るようです。この事故の報道によるネットの書き込みの中に、ゴミ収集作業
者のコメントがあり、「一般の方が入れようとするとパッカーを止めて投入
を黙認しているけど、次からは拒否しよう」というコメントを何件か見まし
た。
 事故のあったゴミ収集車の作業員によれば、ちりとりと箒を持った女性が
ゴミを入れさせてほしいと言ったので、パッカーを止めて、ゴミを投入させ
て、通常の作業に戻ったが、次にパッカーを見ると、女性が挟まれていた。
ということです。おそらく、女性はゴミを投入したのち、他のゴミをちりと
りに集め、投入を繰り返したのでしょう。その時、パッカーは連続運転であ
り、パッカーの動きを理解していなかった女性は、ちりとりか箒を引っ掛け
てしまい、それを抜き取ろうとして、パッカーに挟まれたのだと推測します。
 ゴミ収集車の作業員には次のミスがあったと考えられます。
 ①一般の方に直接投入させたこと
 ②パッカーの連続運転モードにして投入口から目を離した
 ③周囲の状況の確認が不十分だった
 ④女性が再びゴミの投入に来ると考えなかった
 事故にあった女性は事故現場の近くに住んでおり、毎日のように通行人が
落していったタバコや散乱したゴミを掃除していたそうです。
 町をきれいにしようとしていた女性が災害にあったのはとても残念です。
そう考えると、無造作にタバコを投げ捨てる人、ゴミを散らかした人が事故
の原因を作ったとさえ思えてきます。
 事故にあった女性がしようとしてた“きれいな町をつくろう”は事故防止
とともに考えなければならないと感じました。
                             ご安全に!

2011年2月19日(人間は違反する動物)
 「人間はミスをする動物である」という言葉を聞くが、「人間は違反する
動物」と考える事も必要だと感じます。飲酒運転は法に反することは、誰で
も知っていることですが、それが繰り返され、悲しい事故が発生しています。
飲酒運転が原因となる事故で、2月14日に危険運転致死傷幇助罪の裁判員裁
判がありました。
 ご存じの方も多いと思いますが、経過を説明すると、
   2008年2月17日の13時頃からAさんBさんCさんの3人が熊谷市内の飲
  食店で酒を飲みました。18時過ぎまで飲み、他の店に行くため、Aさん
  が車を運転し、BさんCさんが同乗し、19時25分頃、時速100kmを超え
  るスピードで車2台に衝突し、2人が死亡し、7人が重軽傷を負いました。
   運転手のAさんは、危険運転致死傷罪で懲役16年になりました。
   運転手に酒を提供した居酒屋経営者は道交法違反(酒類提供)罪で懲
  役2年(執行猶予5年)の判決が確定しています。
   このたび、裁判員裁判で検察側がBさんとCさんに対して危険運転致
  死傷幇助罪で起訴し(求刑8年)、結果、禁固2年の判決がありました。
   なお、AさんBさんCさんは当時、職場の同僚であり、Aさんは32歳、
  Bさん45歳、Cさん43歳でした。
 みなさんはこの判決をどのように受け止められたでしょうか。
 飲酒運転での事故では、運転手も同乗者も禁固刑を受ける可能性があると
いうことです(事故の被害の程度による)。禁固刑を受けると、多くの会社
では、懲戒解雇になるのではないでしょうか。退職金もなく、職を失い、禁
固刑を受ければ、本人はもとより、家族の人生が一変します。
 皆様の事業所では飲酒運転防止策として、飲酒運転防止教育を行い、中に
は「飲酒運転しない・させない」の宣言をさせ、署名させている会社もあり
ます。会社の役員・社員が突然、懲役になると、経営上の問題にもなりかね
ません。会社にとっても、大きなリスクとなるでしょう。
 AさんBさんCさんの3人が「飲酒運転が違法とは知らなかった」とは思
えません。知っていたけど、違反をした。あるいは違反を黙認したのです。
 なぜ、こんなリスクの高いことをやってしまうのでしょう。なぜ、黙認し
たのでしょう。
 「事故を起こすのは一部の人間だ」「自分は事故を起こさない」「今まで
事故を起こしたことが無い」「事故を起こさなければ運転してもいい」とい
う考えが根強いのだと思います。とても残念なことであり、悲しい現実です。

 また、先週にはこんな事故もありました。
 2月10日福岡県粕屋町で酒帯運転をしていた男性が、歩道を歩いていた高
校生2人をはねて死亡させました。高校生のうち一人は山本寛大さんで、山
本さんのお父さんは有名なアスリートで昨年の東京マラソンの車いす部門で
優勝された方です。

 本当に飲酒運転を無くさなければなりません。こんな運動もあります。
  SDD(STOP! DRUNK DRIVING PROJECT)
  http://fmosaka.net/sdd/index.html
 皆様の事業所では決して発生させないよう、お願いいたします。
 参考データ
 大阪府内で昨年の飲酒運転事故は325件(前年比-74件)(ワースト2)
 ワースト1は福岡県で337件(前年比+41件)
 データ元:福岡県警察
 http://www.police.pref.fukuoka.jp/kotsu/kotsukikaku/kotsukikakuanzen/innsyujikoH22_10.html 
                             ご安全に!

2011年2月12日(タンクローリー酸欠・有機溶剤中毒)
 2月10日新潟県でタンクローリーでの酸欠・有機溶剤中毒があり、1人が死
亡、1人が重体になる事故が発生しました。概略を説明すると、
 タンクローリーのタンクは長さ6m、直径2.4mで容量は26キロリットル
 アセトン(有機溶剤)の配送を終えて(タンクは空)、会社に戻ったあと、
運転手のSさんがタンク内で倒れているのを運送会社所長のIさんが見つけ、
119番通報したあと、救助のため、タンク内に入り、低酸素血症で倒れ、死
亡しました。関係者によると、アセトンを全部排出したあとでも有機溶剤蒸
気が充満するのでタンクに入ることを禁止しているということでした。
 この作業で運転手のSさんは中に入る必要が無かったけど、中で倒れてい
ました。これは中に入る行為ではなく、タンクのフタから転落したと推測で
きます。フタを開けた時に中の気体を吸い込んだのでしょう。アセトン蒸気
は空気より重たいことから、中の空気は追い出され、酸素はほとんど無い状
態です。これを、1回吸い込んだだけで、意識を失います。意識を失うと、
身体を支える力が弛緩し、頭から倒れ、中に転落したと考えます。運転手の
Sさんは防毒マスク(有機溶剤用)をしていましたが、このマスクは酸素欠
乏では全く効果がありません。
 タンク内で倒れている人がいれば、「一刻も早く救出しなければならない」
と考えるのがごく普通の反射的判断です。所長のIさんは119で救助要請を
したまでは良かったのですが、その通報のあと、空気呼吸器等を着用せず、
一人で救出のために中に入り、死亡してしまいました。
 Iさんが酸欠に関する知識をどのくらい有していたのか不明ですが、緊急
の場になると、冷静な判断ができず、救助に行くケースが多く発生していま
す。中には、酸欠作業主任者技能講習を修了し、十分な知識を持っている人
でもこの過ちを犯すことがあります。
 皆様の事業所には酸欠になる可能性がある場所・作業はありませんか?
 もしあれば、緊急時(人が倒れる)の救助について緊急時訓練を実施して
いますか? 教育も必要ですが、パニック状態になると、誤った行動をとっ
てしまうことがあります。身体を使って、頭を使って、救出のための器具を
使うことを繰り返し行うことで、誤った判断を防止する可能性が高くなりま
す。
 酸欠の事故を聞くと残念な気持ちですが、救助に行った方が被災する話を
聞くと、もっとつらい気持ちになります。
                             ご安全に!

2011年2月5日(東京ドームシティアトラクションズ)
 1月30日、東京ドームの隣にある遊園地「東京ドームシティアトラクショ
ンズ」でスピニングコースター舞姫から34歳の男性が転落し、死亡する事故
が発生しました。私はその遊園地に行ったことはありませんが、名前を記憶
していました。「あれ?なんでこの名前を知っているのだろう?」報道を見
ているとその理由が判りました。わずか2カ月前に女性従業員が「タワーハッ
カー」という遊具の点検中に指を3本切断した事故があったからです。わず
か2カ月の間に大きな事故が発生するのは安全管理上の問題があるのでしょ
う。
 男性が転落した事故にはたくさんの要因があります。
 ①安全バーはロックしてなくても、運転を開始できる。
 ②マニュアルには「締め忘れの無いよう確認する」としか書かれておらず、
  具体的な確認方法、可否の判断基準などが不明確であり、それらは口頭
  で指導していた。そして、口頭指示は徹底されていませんでした。
 ③安全バーの状態を目だけで判断していた。大人は乗客任せで、子供の場
  合は手で確認していた。
 ④安全バーのロックはお腹と安全バーの隙間を目視で確認していた。 
 ⑤女性アルバイトは安全バーの確認して出発後に運転状態を監視する仕事
  があったが、実際には、次の乗車準備があるため、運転状態を監視する
  ことができない体制だった。
 ⑥小さい子供は乗車不可としていたが(身長による制限)、体格の大きな
  人の制限は不明確だった。
 ⑦乗客を固定するものは安全バーだけだった。
 ⑧従業員は一人でコースター4人分の確認をしなければならない。
 この報道を見たみなさんは、安全バーのロック状態を検知し、検知した時
だけ運転を可能にするインターロック機能を備えたら良いと思ったでしょう。
しかし、このコースターの安全装置はインターロックだけでは不十分だと考
えます。なぜなら、安全バーは8段階で固定されますが、身体が小柄な人が、
8段階の一番浅いところでロックすると、安全バーとの隙間が大きくなり、
抜けてしまう可能性があるからです。さらに、運転が終わると全席のロック
を解除する機能があります。逆に考えると、「解除」が誤動作すると、運転
中に、全席の安全バーが外れる、全員が投げ出されることも考えられます。
 私が考える対策は、2重の保護です。1つは自動車のシートベルトと同じ構
造の胴ベルト。それと合わせて、安全バーを取りつけます(シートベルトの
金具と安全バーはインターロックで、全席が両方を確実に取りつけないと運
転できない仕組み)。しかし、これでも完全ではありません。たとえば、安
全バーを固定してからシートベルトをすると、隙間ができる可能性がありま
すし、乗客が椅子の前の方にすわると、背中側に隙間ができます。
 スリルを楽しむ遊具と本質安全化は相反するものです。「危険」を証明す
るのは簡単ですが、「安全」を証明するのはとても困難です。
 東京ドームシティアトラクションズは現在、営業停止中です。
 いつ再開するのか分かりませんし、大阪のエキスポランドのように閉鎖の
危機だと思います。
 そのためには、安全対策をして、営業を再開するときには、お客が感じる
「変化」が必要だと考えます。
 遊具の安全装置を確認する時に、安全バーを手で引いて、押して確認した
のち、指差し呼称で「安全バー、ロック良し!」と、一人一人の座席で大声
で叫んでいれば、お客様の信頼を少しは取り戻せるかもしれません。

                             ご安全に!

2011年1月29日記(花粉症対策メガネ)
 1月25日サッカーアジア杯の準決勝があり、5年間勝てなかった韓国に勝ち、
決勝戦に進みました。その時大活躍したのが、ゴールキーパーの川島英嗣選
手です。その川島選手がイメージキャラクターに選ばれたのはフマキラーの
花粉症対策薬の「アレルシャット 花粉 鼻でブロック」です。コマーシャル
をご覧になった方も多いでしょう。CMタイミングは最高で、「この薬効き
そうと思った」のは私だけではないでしょう。
 http://www.fumakilla.co.jp/news/2011/01/-tvcm.html
 今週話題になっているのが、鹿児島県新燃岳の噴火、鳥インフルエンザ、
大雪、そして、昨年の10倍とも言われる花粉の飛散予報。
 杉花粉が大量に飛ぶとからということでもないのですが、花粉症対策メガ
ネを購入しました。この花粉症対策メガネは作業用にもある程度効果があり
ます。
 私が訪問する会社では作業者に保護メガネの着用を義務付けている会社が
あります。会社によっては、近視用のメガネでは横・上下からの異物の飛散
から目を守れないということで、メガネの上からオーバーグラス(ゴーグル
タイプ)をするようにしている会社もあります。私はメガネをしないと日常
生活にさえ支障があるので、メガネが手放せません。だからオーバーグラス
の着用を指示されるのですが、メガネの上にオーバーグラスをするのは装着
感が良くありません。でも、リスク低減のためにはやむを得ない場合もあり
ます。この花粉症対策用メガネ(度入りレンズに変更)は粉じんなどの飛散
から目を守れるので、軽作業には適しています。
 しかし、花粉症対策用メガネの取扱説明書には「保護メガネとしての使用
は止めてください。」と書いてありますので、作業の内容・リスクを考慮し
て使用する必要がありますのでご注意ください。

(参考:2011.1.27環境省)
  平成23年春の花粉総飛散量及び飛散開始時期の予測(第2報)、並びに
  花粉飛散ピーク時期の予測について(お知らせ)
   http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13408
                             ご安全に!

2011年1月22日(脳科学実験)
 21日読売新聞を見ていたら、気になる記事を見つけました。
 (読売新聞より引用します)
  「次の手は」考えるプロ棋士、その時の脳は…
     プロ棋士が盤面を見て「次の一手」を考える時、脳の特定の場所
    が活発に働くことを、理化学研究所などのチームが羽生善治名人ら
    の参加した実験で突き止めた。
     プロ棋士の「判断」を脳科学で初めて解き明かす研究で、21日
    付の米科学誌サイエンスに発表した。
     研究にはプロ28人とアマチュア34人が参加。実験では、脳の
    どの部位が活発化するかを機能的磁気共鳴画像(fMRI)で調べ
    た。
     まず、将棋の盤面で「序盤」「終盤」といった局面を瞬間的に見
    せ、状況をどう把握するか探った。この時、プロでは、視覚に関係
    する大脳の「楔前部(けつぜんぶ)」が、アマの約3倍強く反応した。
     続いて、詰め将棋の盤面を1秒間見せた後、次の一手を2秒以内
    に回答してもらうと、プロでは大脳の「尾状核(びじょうかく)」が
    活発に働き、より活発な棋士ほど正答率が高かった。アマはほとん
    ど活動しなかった。尾状核は、長年の訓練に基づく習慣的な行動に
    関係があることが知られている。
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110121-OYT1T00453.htm
    (リンク先は読売新聞が近日削除しますのでご注意ください)
 
 私は、15年程前にオセロゲームを趣味として、近府県の大会にも出たこと
がありますし、当時はコンピューターゲームにも負けなかった程だったので、
興味深くこの記事を読みました。(オセロゲームはもう引退しています)
 この記事を読み、人間の行動は脳が判断して指令を出している。しかし、
その脳も働く部分が人それぞれ違うことが分かります。私たちの行っている
労働災害防止にも同じようなことが言えるのではないでしょうか。
 たとえば、労災を度々発生している人、不安全行動はあるけど不思議に事
故を起こさない人、作業標準に従っていつも正確・安全な作業をする人、経
験の少ない人などがありますし、作業には一瞬で判断するものや、考慮時間
が比較的あるものなどがあります。
 もし、可能であれば、経験年数や事故経験、作業の危険度合いなど様々な
人を集め、リスクの高い仕事の場面を見せた時にどのような違いがあるか調
べたくなりました。でも、将棋と現場の作業では集中の度合いが違いますか
ら期待するようなデータは集められないかもしれません。
 でも、記事にある「長年の訓練に基づく習慣的な行動に関係がある」のよ
うに、長年の経験、多くの危険に接した経験に基づいた判断は、記事のプロ
棋士のように正しい判断につながるのでしょう。
 逆に、不安全行動を繰り返しているが、たまたま災害に遭わなかった人に
は、リスクを回避する判断が誤っているかもしれません。
 安全教育には、繰り返し繰り返し、疑似危険を体験したり、危険性を理解
させたり、安全な作業を教える必要があるのだと思います。

                   ご安全に!

2011年1月15日(誤飲事故)
 12日栃木県において、栄養ドリンクの瓶に入れた除草剤(パラコート)を
知人に誤って飲ませ、重過失傷害で逮捕したというニュースがありました。
 勤務先にあった除草剤を栄養ドリンクの瓶に詰め、車のトランクに入れて
いました。そのトランクには同じ栄養ドリンク(新品)があり、誤って、除
草剤を入れた方の瓶を渡したようです。飲んだ方は一口飲んで異常に気が付
き、吐き出しましたが、パラコート中毒で重体だそうです。
 また、消費者庁は14日、見た目がペットボトル入りのお茶にそっくりな入
浴剤を愛知県内の男児(4)が誤飲し、意識不明となる事故が発生していた
と発表しました。4歳児は文字が読めず、お茶と思って飲んだようです。
 このように誤飲事故はよく発生しています。
 職場においても発生する可能性があります。私が勤務した会社でも発生し
ました。その方はいつも同じ栄養ドリンクを飲んでおり、空いた瓶に洗浄液
を入れており、休憩時間に誤って飲んだということです。幸い大事には至り
ませんでした。
 また、先日、ある事業所に行くと、洗浄剤を入れたペットボトルが置いて
ありました。ラベルは元の商品のラベルが付いたままです。担当者に説明し、
すぐに処分してもらいました。
 昔、ある方が、「これなら間違って飲むことはありませんよ」と、商品ラ
ベルを剥がし、紙を貼り、ドクロマーク付けたペットボトルを見せてくれま
した。確かにこれは間違えて飲まないでしょうが、飲用のものを職場で使う
ことは間違っていると思います。
 ペットボトルは軽くて丈夫です。落しても割れず、密閉できるし、容器代
は無料と同然であり、液体の保管には適しているのかもしれませんが、誤っ
て飲むという危険がありますので、ペットボトルや飲料用の瓶の使用は止め
ていただきたいと思います。

                                 ご安全に!

2011年1月8日(映画「アンストッパブル」)
 今週は映画「アンストッパブル」をテーマに選びました。(1月7日公開)
 http://movies.foxjapan.com/unstoppable/
 この映画は実際に起こった事故を元に制作されました。
 その事故とは2001年5月15日アメリカのオハイオ州で発生しました。47両
もの貨物を連結したディーゼル機関車が無人で暴走したのです。暴走した原
因は機関士がブレーキとスロットルレバーを間違えて操作したことです。あ
ってはならないヒューマンエラーだったので私の記憶に残っていました。
 その詳細な状況が過去に日本テレビの番組でも取り上げられました。
 http://www.ntv.co.jp/FERC/research/20030615/f0217.html
 状況を説明すると、貨物を連結した機関士は運行を開始するために機関車
を走らせると、本線(線路)へのポイント切り替えができていないことに気
がつきました。「このままでは脱線する」と考え、急いでブレーキをかけま
した。機関車を止めて、機関車から降りて、手動でポイントを切り換えて、
機関車に戻ろうとしたとき、機関車が発車してしまったのです。急いで飛び
乗ろうとしましたが、失敗し、機関車は無人で暴走を始めました。なぜ、機
関車が動いたかというと、このディーゼル機関車を止めるには3つのブレー
キをかけなければなりませんが、ポイント切り替えミスを発見し、パニック
状態になったのです。3つのブレーキをかけなければならないのに、2つのブ
レーキをかけたあと、ブレーキと間違えてスロットルレバーを全開にしてし
まいました(3つ目に操作しようとしたブレーキとスロットルレバーの形は
良く似ていますが、動かす方向が逆なので、通常は間違えることはないもの
です)。2つのブレーキをかけていますが、47両もの貨物を運ぶぐらいのパ
ワーがフルスロットルになっていますので、ブレーキも効きません。やがて、
2つのブレーキは焼き切れ、エンジン全開の状態となり、時速100キロを超え
るスピードで走りました。
 その100キロ先にはケントン市があり、大きく曲がった線路の近くにはガ
スタンクなどの危険物施設が密集しており、貨物の中には液体のフェノール
が2万リットル積載されていました。このフェノールは毒性・腐食性があり、
空気に触れると、爆発性のガスを発するため、大きく曲がった線路で速度
オーバーにより脱線すると、街全体が壊滅するほどの危険がありました。
 機関士の操作ミスによって、街が破壊されるような大惨事になるという
ヒューマンエラーでした。
 私はこのヒューマンエラーに興味がありましたので、映画「アンストッパ
ブル」を早速見てきました。とても面白かったですよ。
                   ご安全に!

2011年1月1日(大掃除を考える)
 明けましておめでとうございます。
 今年最初のテーマに「大掃除」を選びました。
 家庭でも学校でも職場でも、年末の最後には大掃除が当たり前ですね。
 一年分の汚れをきれいに除去することによって、新たな年に歳神を迎える
準備でもあり、来る新年を新たな心持ちで始めるという意味もあります。
 大掃除と言えば、年末の伝統的な行事ですが、海外では12月ではない国も
あるそうです。
 今回は大掃除の「実施時期を見直そう」という提言として読んでください。

 12月といえば「師走」と呼ばれるぐらい、1年で一番忙しい時期です。雪
の多い地方では除雪もしなければなりません。仕事も忙しいが、忘年会も忙
しい。なぜそんな忙しい時期に大掃除をしなければならないのでしょうか?

 職場においては大掃除も作業になります。作業なら合理的に効率的に進め
なければなりません。
 年末に実施することが非合理的な理由
 ①「忙しい」
 ②「寒い」
   インフルエンザ・風邪が流行しはじめるなど、一番体調を崩しやすい
   時期であり。寒い時は筋肉が収縮し、普段動かさない身体を使うこと
   により腰痛などが起こりやすくなります。
 ③「乾燥」
   微細なもの(カビなど)は飛散しやすくなる(空気が乾燥すると微細
   な粉じんが舞い上がりやすい)。粉じんを吸い込みやすいことになり
   ます。
   また、冬は静電気を帯びることが多いので、掃除をしても静電気によ
   り掃除しにくくなります。
 ④「汚れの取りやすさ」
   油汚れを除去するには、気温が低い時より気温が高い時の方が良い。
   なぜなら、油汚れは気温が高いと分子が熱を帯びて運動しやすくなり、
   柔らかくなるため。気温が低いと汚れが取りにくく、作業効率が悪く
   なります。
 ⑤「環境面(二酸化炭素排出)」
   水は冷たく、汚れが取れにくいため、温水を使うことになるし、窓の
   開放によって暖房効率が落ちます。

 このように考えると、年末の大掃除は腰痛など労災の可能性が高く、忙し
いためにミスを犯しやすく、気温が低いので労働条件としては悪い状況とい
うことになります。したがって、12月年末の大掃除は非合理的ということに
なります。
 それなら、「いつ」が適しているかというと、気温が高く、湿度が高い時
の方が良いということです。具体的には6月から8月に行うのが理想的です。
 多くの方は、「大掃除は何十年とやってきたもので、そんな時期に大掃除
なんてできない。」と思われるでしょう。
 一方で、「大掃除」は必要なのか?とも考えます。職場で3S活動、4S
活動などを進めるうえで、清掃場所と清掃内容と清掃頻度は決めていること
が多いはずです。1年に1回と決めた場所は気候の良い時期にすれば良いし、
半年に1回と決めた場所は春や秋にすれば良いでしょう。場所によっては、1
カ月に1度、1週間に1度、毎日というように清掃頻度を決めているはずです。
 さて、今回の結論として、
 大掃除を廃止し、清掃内容・清掃頻度を細かく定め、年間を通して職場の
美化活動を行う。
 いかがでしょうか。
 まとめて大規模に掃除をするより、日々の清掃の積み重ねの方が良いと考
えます。災害防止も日々の活動の積み重ねですね。

                  ことしも1年「ご安全に!」

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