2006年安全週記

2006.12.23  (JR福知山線脱線事故調査報告書)
19日に航空・鉄道事故調査委員会(事故調)の報告書がまとまった。(最終報告は来年2月予定)
改めて、当時の事故を思い出しました。当時は運転手が、自らの失敗を取り戻すために無謀な運転をしたとされていましたが、事故の原因。そしてその背景がはっきりしてきました。
事故の3つ前の宝塚駅の直前で、速度超過でATSが作動した。そのATS作動のミスが指令に報告され、また、あの「日勤教育」を受けさせられるのか。。。。という不安があり、事故直前の伊丹駅では72メートルもオーバーランした。まさにミスがミスを呼んだ形になってしまった。そのバック運転で1分30秒遅れてしまった。車掌は運行の遅れを指令に報告している。「もう、この1分半を取り戻す「回復運転」しか道が無い。
スピードを上げている時に、車掌と指令の応答が耳に入る。
このような状態でまともな運転なんてとてもできないであろう。
精神的に行き詰った状態の時に、指令が運転手に応答を求めた。
「応答すれば、指令は何を言うだろう。すぐ応答すべきか、応答の答えをあれこれ考えている時に事故は起こった。
ここまで書くと運転手だけが悪いようであるが、事故調には当時のJRの状況が詳しく書かれてあった。事故の場所は、予定通りなら、事故の2ヶ月前にATSが付いていた。しかし、工事の遅れにより、ATS設置が遅れていた。
「もし」という表現は適切ではないが、もし、予定通りにATSが設置されていたら、1分30秒遅れのままで尼崎駅に到着していただろう。
それにしても運転中に無線をしているとは、考えてみると怖い。聞き逃しても問題無いような話であれば、さほど問題もないだろうが、内容は業務のことであり、前を見ていても、前方の状況を理解できないことは容易に想像できる。
指令は運転手・車掌との応答だけしか情報はないのだろうか、指令室で、○○便は「現在○○地点を○○kmの速度で進行中、時間は○○秒遅れ」という情報が自動的に解るシステムにはできないのだろうか?
そんなことは無い。われわれ一般人が運転する自動車でさえ、今はどこを走っているか解る時代なのだ。事故調を読んで、「ATSだけでは、事故を防げない。」そんな気がしたのは小生だけでしょうか。
                                          
ご安全に


2006.12.16  (命)
毎年恒例の「今年の漢字」は「命」と決まりました。
「命」それこそ、私たち安全衛生を仕事とするものにとって一番大切なものです。
人命尊重という崇高な理念のもとに仕事をしています。戦後から今までに業務中に失った命は20万を超えるものです。これらの悲劇を繰り返さないために労働安全衛生法は施行され、企業においても、労働安全衛生マネジメントシステムをはじめ、自主的な活動を行っています。
私の大切な書籍「安衛法便覧」は私のバイブルです。この中には3000を超える規則があります。どの規則も過去の尊い命をを失った経験から定められたものです。これらの規則をおろそかにすることは、過去の尊い命をおろそかにすることと同じです。
法律を守る「社風」、安全を第一と考える「安全文化」、それらを支える「作業手順書」、「KY活動」など安全活動を活発にして災害ゼロから危険ゼロを目指しましょう。
さて、今週気にかかった災害は苫小牧で発生した一酸化炭素中毒と大型トレーラーのタイヤ脱落事故です。
ファンヒーターの災害は20年以上前に発生し、当時回収作業をしていましたが、その回収もれの商品から発生しました。事故発生後の1986年にJIS規格で「不完全燃焼防止装置」の設置が義務付けられました。
新聞には毎日のように「リコール」「商品回収」などの記事が出ています。皆さんはこれらの記事を毎回確認して、家にある商品は問題ないか確認して欲しいですね。
トレーラーのタイヤ脱落は「またか」という気持ちでとても残念です。タイヤ脱落は1999年からの8年間でなんと200件を超える事故がありました。所有者は点検作業を行う時、通常の点検だけにとどまらず、老朽化した車体は入念に行うなど車に応じた点検をお願いします。団塊の世代が退職する2007年問題はすでに始まっている。ベテランのノウハウを継承し、安全確保のために「人」「金」「時間」をかけていただきたいと考えます。
今週からは年末年始無災害運動です。
「基本通りの安全チェック 年末年始も守ります」
年末年始を無災害で、新しい年を迎えましょう。

                                          
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2006.12.9  (甲子園球場前の交通事故)
今週もいろいろありました。相次ぐ知事の不祥事や、近未来通信の詐欺事件、電信柱の崩壊など、、、、今回のテーマには5日に発生した甲子園球場前の交通事故で3トンもの鉄の塊が落下し、2人が死傷した事故を取り上げます。
事故の発生が深夜の3時ということで、甲子園球場前には通行者が居なかったことが幸いでした。
事故の原因は運転手のミスで壁に当り、衝撃で鉄の箱が落下したということでした。しかし、鉄の箱がトラックの荷台より幅が広く、荷台から、はみ出していたということです。荷台に収まっていたら、単に壁への激突だけで済んだかもしれません。運転手は荷台からはみ出していることを会社に報告したが、会社は「そのまま走行しろ」と命じたそうです。
トラックの荷積み制限は重量と横幅があります。車体をはみ出した荷積みは道路交通法に違反しています。違反状態の走行を会社が命じたことも大きな問題ですが、その会社の命令に従った運転手も大きな問題です。
会社・運転手とも「このくらいなら、いいだろう」という意識が働いたのでしょう。
不安全な状態と不安全な行動から発生した事故でした。
先週、クレーンのタイヤ破裂事故がおきたばかりで、また今回大型車両の事故です。車両は普通乗用車でも凶器に変わります。まして大型車両は大災害を引き起こします。来週からは年末年始無災害運動です。特に車を運転する方は十分点検し、走行中も絶えず集中して安全運転を心がけ、年末年始を無災害で、新しい年を迎えましょう。

                                          
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2006.12.3  (クレーンタイヤ破裂)
11月30日にクレーンのタイヤが破裂して、その爆風が近くを停車したワゴン車を直撃し、お子さんが重症を負う災害がありました。

  (写真は毎日新聞ホームページより引用)
写真を見ると、もの凄い破壊力です。
クレーン車のタイヤは直径が155センチあり、私の背丈に近い、とても大きなものです。
この破裂事故はなぜ起こったのでしょう。タイヤの溝がなくなるぐらい磨耗していたということです。整備不良が疑われます。溝がなくなるぐらいまで使用していたことから交換時期を過ぎていたと考えられます。
車の整備の漏れなのか、「このくらいではまだまだ使用できる」と判断したのでしょうか?
車の整備をする人は、この事故をよく覚えてください。
昨年も北海道でタイヤ破裂で近くに居た運転手が死亡する事故がありました。
私たちは事故から「安全」を学び、それを生かさなければなりません。

                                          
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2006.11.26  (飲酒運転)
今週も飲酒運転による悲劇がありました。
飲酒運転による事故が無くなることを祈り、飲酒運転をテーマとします。
24日福島県で45歳の男性が飲酒運転をして妻をひき逃げ・死亡させる事故がありました。
45歳といえば小生と同じです。本当に悲しいやら情けないやら。。。。。
無くなった奥様は、靴も履いておらず、30〜40メートルに渡り引きずられた形跡がある状態から察して、酔った旦那の運転に気づき、家を飛び出して、必死に運転を制止しようとしたに違いありません。そのような正義感の強い奥様が被災者にあってしまい、本当に残念な事故です。
最近「アルコールチェッカー」という1万円ぐらいで呼気の中のアルコールが測定できるものがあります。非常に売れているようです。タクシー会社や交通機関が朝の体調確認のために使用するのはいいことですが、飲酒した人がこのアルコールチェッカーで法違反数値以下になったことを確認してから運転するための測定器として利用されているなら大変な問題です。血中アルコール濃度や呼気中アルコール濃度は検挙の基準であって、安全運転の基準ではないのです。
私たちが目にする(知る)事故は人が亡くなったりする大きな事故だけでしょう。
ハインリッヒの法則から推察すると、この29倍の小さな飲酒運転による事故が起こっている。またこの300倍の人が飲酒運転によるヒヤリハットの経験がある。それ以上にヒヤリもハットも無かった飲酒運転は無数にあるでしょう。普段、何気なくすれ違う無数の車の中には何台もの飲酒ドライバーがいると考えられます。そう考えると、たとえ青信号で横断歩道を渡る時でも安心できません。被害者にならないために特に夜間の歩行・運転は気をつけましょう。
もうすぐ12月です。飲酒が最も多い季節と言われています。
「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。」と、「運転する人には飲ませるな。飲んだ人には運転させるな」。運転手本人だけの注意ではなく、運転しない人も注意しましょう。

しかし、なぜこんなに違反が多いのでしょう。
飲酒運転に限らず、違反は街にあふれています。
歩行者の信号無視。自転車の無灯火。自転車の携帯電話使用など多く目にします。
駅では、人の流れをスムーズにするため、右側通行とか左側通行とか指定していますが、守らない人がとても多い。喫煙コーナー以外でタバコを吸う人。電車の優先座席で携帯電話を使用している人。違反を違反と感じない人が多いことに驚きます。
私たち安全衛生に従事する者は、作業手順などのルールを指導・徹底することが仕事です。このように違反を繰り返す・違反を違反と認識しない人たちが多い中で、安全衛生ルールだけは守る。ということは考えられません。
作業者は違反をするものだということを頭に入れて、安全パトロール・安全指導をしましょう。
危険予知・ツールボックスミーティング・指差呼称など安全意識を高める活動は多くの会社に認識され実践されていますが、「違反」をなくすのは困難だと認識せざる得ません。
「違反」をしても事故が起こらない事を考えなければなりません。「フール・プルーフ」の考え方による作業改善を進めていきましょう。
                                          
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2006.11.19  (津波)
今週もいろいろなことがありました。
和歌山県知事の談合、中高生の自殺、千島列島の地震、狂犬病の発症・死亡などなど。
狂犬病というのは存在は知っていましたが、今回改めて恐ろしさを知りました。発症すると、100%死に至るという病気は余りないでしょう。医療が進んでいる現代でも直せないというから本当に恐ろしい。
さて、今回のメインテーマは津波にしました。津波といえばスマトラ地震がすぐ思いつきます。死者が20万人を超えるとも言われています。その時マグネチュードは8.9でした。
今回の地震のマグネチュードは8.1(のちに訂正されて7.9)でした。私がその日、家に帰ったのは9時。マグネチュード8を超える海中地震で津波の被害が心配で、ずっとテレビを見ていました。幸いにも50センチ程度の津波ですみ、被害も余り報道されず安心しました。
自然災害にはいろいろあります。先週記載したような竜巻のほかにも、地震、津波・台風などがあります。
自然災害の中にはあらかじめ予測できるものがあります。台風が一番早く情報が入ります。津波も今回のように震源地が離れていると発生を予測することが可能となります。
今回、特に気になったのは翌日の新聞で発表されたものです。岩手県釜石市では1万7600人に避難指示をしていましたが、避難をしたのはたった74人でした。被害がでなかったからいいのですが、もし、数メートルに達する津波だと大惨事になっていたでしょう。
避難指示を聞いた人の多くは、おそらく、「千島列島は離れているから大丈夫」と判断したのではないでしょうか
1960年に発生したチリ地震では、日本でも津波による被害を受け、140名を超える死者を出したことがありました。チリといえば、ちょうど日本とは地球の真裏にあたります。津波は距離とは関係しないことが忘れられたようです。もう46年経ちます。
1993年に北海道南西沖地震がありました。津波で200名を超える災害でした。
今回の避難者数から「災害は忘れたころにやってくる」という言葉を考えさせられました。
近い将来必ず発生すると言われている「南海地震」は、いつ発生するかわかりませんが、幸い地震の被害を受けなくても、地震が発生したら高いところに逃げましょう。

                                          
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2006.11.12  (竜巻)
今回は北海道の佐呂間町で発生した竜巻による災害を取り上げます。
11月8日に発生した竜巻は長さ1キロ、幅200メートルの規模で、そこにあるものを一瞬に破壊してしまった。その間、わずか1分。改めて、竜巻の恐ろしさと速さに驚きました。
1キロを1分で進むということは、時速60キロにもなります。走っても逃げれません。家の柱にしがみついても家が飛んでしまう。車に乗っていても車ごと飛ばされてしまう。本当に恐ろしい。どうすれば、竜巻の被害から身を守ることができるのだろうか?
地下は安全だと言われても、身近に地下があるケースは余りないだろう。地表は竜巻の影響を受けにくいので、地面に伏せるしかないようだ。
余り知られていないようだが、竜巻は年間に20回ぐらいある。その20回というのは、被害があったものだけである。これだけあるなら、研究も進んでそうだが、発生の場所、時間が予測できず、発生のメカニズムの追求は困難である。暖気と寒気がぶつかり、温度差が40度を超えると発生する危険性が高いと言われている。
昨年の12月25日にJR羽越線が強風により脱線転覆し、4人の死者を出したことはまだ記憶に新しい。これはマイクロバーストか竜巻が原因と言われている。
自然災害だから仕方ないとは言っていられない。
皆さんは飛行機に乗って、乱気流を経験したことがあるだろうか? 積乱雲の中を通ることは大変危険ということは判っている。パイロットは飛行機に搭載した気象レーダーで雲の存在を知り、飛行ルートを変えて積乱雲を避けて飛んでいるのである。でも、積乱雲がなくても乱気流は発生している。それらのフライト情報を分析し、乱気流の発生を予測する研究も進められており、ドップラーレーダーや赤外線レーダーの開発が進んでいる。
近い将来、雲の有無にかかわらず、風の流れ・強さを事前に察知して、安全な飛行ができる日も近いだろう。
さて、竜巻に話を戻そう。竜巻の前には積乱雲が発生し、そこに寒気と暖気が流れ込むと竜巻になる。積乱雲ができた状態から身を守ることを考えよう。「あっ、急に暗くなったなぁ」と思ったら危険予知能力を発揮し、「地階に移動しよう」。「窓の付近は危険だから離れよう」。「身を隠せる場所を探そう」はできるかもしれない。
竜巻の根本的な原因は判っていないが、危険予知能力のスイッチを入れることは可能なはずだ。空が急な暗闇になったら実践してみましょう。

                                          
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2006.11.4  (無資格運転)
今回の「安全週記」は10月29日の新聞で読んだ「受刑者が無免許でボイラー操作」です。刑務所・拘置所など、全国21もの刑事施設で、ボイラー技士免許を持たない受刑者にボイラーの操作をさせていたというものです。
労働安全衛生法では就業制限(法61条)があり、危険な業務については有資格者でないと操作ができないものが定められている。この資格には、免許・技能講習修了・特別教育修了などがあり、特に危険な作業には免許取得の義務付けがある。
今回問題になったボイラー運転ですが、最近は安全装置・安全センサーの質的向上によりボイラーの事故は余り聞かなくなったが、点火ミスによる爆発や、異常圧力の発生により破裂などのリスクがある。万一、破裂が起こったなら甚大な災害が起こることは容易に想像できる。そのようなの危険が伴う作業を無資格者が運転していたことは驚きです。受刑者は法を犯したから施設に入れられている。その受刑者に法違反をさせるのだから飽きれるばかりです。
今回、ボイラーの無資格運転が報道されましたが、まだ多くの問題があるのではないでしょうか?フォークリフトの運転や、溶接作業等、労働の中には免許・技能講習修了・特別教育修了などが必要な作業も多いはず。作業主任者や作業指揮者の選任がいる作業もあるでしょう。労働させている以上、衛生管理者も刑事施設管理者が選任しなければならない。
労働安全衛生法は一般の方にはあまり馴染みのないかもしれない。だけど、年間に1500名を超える人が災害で命を失っている。また、11万人を超える人が災害で休業を余儀なくされている。また、それらを含めた労災保険受給者は55万人に上るのです。そんな中で労働安全衛生法を知らずに、人に労働をさせるなんてあってはならないことです。
これを読んでおられる方は、企業などで安全衛生にかかわっている方が多いでしょう。労働安全衛生法は災害を無くし、健康を確保するための法律です。自分がこの法律を知っていればいいだけではありません。多くの作業者に知ってもらい、理解してもらい、実施してもらわなければ、安全と健康を確保することはできません。
安全衛生はとても地道は仕事です。でも皆さんはとても大切な仕事をしているのです。
これからも一緒にがんばりましょう。

                                          
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2006.10.29
  (引退)  
今週の話題のひとつに北海道日本ハムファイターズの44年ぶり日本一がありました。
優勝決定の瞬間は北海道で視聴率73.5%を記録したということです。残りの26.5%の人は球場で直接見たとか、街中のテレビを見ていたのではないかというぐらいの勢いを感じました。3戦目の札幌ドームの報道を見て、これは是非とも第5戦の札幌で優勝して欲しいと思いました。私の願いが届いたのか、めでたく札幌での優勝決定。本当におめでとうございました。
優勝での胴上げは監督が一番という常識がありましたが、新庄選手が一番、ヒルマン監督はかなり後になりました。日本ハムが北海道に本拠地を移して3年。選手たちは、新庄選手を先頭にキャラクターに変装したりして、見て楽しい野球、そして、プロの技術で北海道民の心をつかんだ。北海道民とファイターズの心の絆の表れが日本一の結果になったように思います。
新庄選手の引退はとても惜しいと思います。今年はまだまだ現役バリバリの引退が多い年ではないでしょうか、サッカーの中田英寿選手、F1ドライバーのM.シューマッハ、競馬でのディープインパクト。。。。。
引退の話題では、私たち安全衛生にかかわる者として、「2007年問題」も避けられないものです。安全衛生のベテランが職場を去っていく。膨大な安全衛生活動のノウハウを頭に入れたまま現場を去っていきます。現場の中では厳しくミスを叱り、怒鳴りまくっていた「頑固親父」と呼ばれるようなベテランが現場を離れていきます。
ベテランのノウハウを継承すべく、労働安全衛生マネジメントシステムの普及が進められています。ノウハウを文書化し、手順を明確にして、ベテランの経験を職場に引き継ぐという労働安全衛生マネジメントシステムはまだまだ普及されていません。
安全衛生のベテランが現役のうちにノウハウの引き出しが急務となっています。
ノウハウとともに重要なのが、厳しい現場監督です。
厳しく、口やかましい現場監督はどんどん減っているのではないでしょうか?
部下に嫌われるのをイヤがり、厳しく躾けることができない現場監督が増えてくるのも問題です。作業を安全に行うためのシステムがあってもそれを厳しく運用する現場監督が必要なのです。
厳しさは熱意の表れのはずです。安全衛生の熱意を持って欲しい。
「安全はすべてに優先する」この考え方を実践・牽引するのは私たち安全衛生に携わる者の使命です。
これからも一緒にがんばりましょう。

                                          
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2006.10.22  (ETC収受員の安全)
先日の新聞で、高速道路のETC通過車にはねられ、収受員の死傷事故発生のニュースを見ました。
2001年のETC導入後、死傷事故は27件発生し、その内、5人が亡くなっているそうです。
収受員の中には高齢の方も多いはず。ETC通過時は徐行することになっているが、どのくらい徐行しているのだろうか?
被災の状況を思い浮かべると、
「車はまだ遠い。ETCの前では、速度を落とすはずだから十分間に合う」という意識があったのではないだろうか?
「速度を落とすはず」と思っているとすれば、こんな危険な事はない。
ハインリッヒの法則では1:29:300という法則がある。しかし、交通事故は重篤率が高いので、それを単純に当てはめるのは無理があるかもしれないが、
1件の重大な災害の背景には29件の小さい事故があり300のヒヤリハットがある。という。27件の死傷事故があるなら、その300倍のヒヤリハットがあるはず。計算すると8000回を超えるヒヤリハットがあると考えていい。
首都高速では3年以内に全167箇所の安全対策をする方針らしい。しかし、首都高速以外では具体的な改善には消極的だという報道がある。
厚生労働省の指導では安全対策として、「安全通路」の設置や「遠隔操作での進入遮断」などを求めているようだが、「通路を渡る」とか「進入遮断の操作」をするのは人間が行うもの。完全に防げるとは思えない。
この記事を読んでから、収受員が安全に横断できる安全対策方法を考えてみたが、妙案はない。
高速道路でのETC装着車と非装着車の混在が事故の背景にある。安全対策より、高速道路を「ETC装着車専用道路」として名称変更・運用し、料金所の無人化が最善と考えます。

                                          
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2006.10.15 (Book 失敗学)
今日は本の紹介をしたいと思います。
ナツメ社の「図解雑学 失敗学」です。著者は畑村洋太郎先生です。
畑村先生は失敗学を世に出した先生で、森ビルの回転ドア事故の検証をされ、その検証はNHKでもスペシャル番組として放送されました。
この失敗学を知らなくても、誰でも失敗から学んでいますね。皆様方も子供の時に何か失敗して、親父に怒られた経験はあるでしょう。
子供ながらに「二度としてはいけない」として、失敗から学んできたのです。
同じ過ちを繰り返さないのは当然なのですが、最初の失敗を防ぐことも重要です。今年、労働安全衛生法の改正があり、再発防止が中心となっていた、「後追い対策」からリスクアセスメントによる「安全先取り」になりました。
安全先取りをするためには、事故・災害を予見する能力が必要になります。
予見能力を高めるためには「失敗学」はとても必要なものだと思います。
過去の大きな災害から学び、多くの事故事例・災害事例を入手し、安全衛生水準を高めていかなければなりません。
私のホームページのリンクにも「失敗知識データベース」を掲載しています。
是非、活用していただきたいと思います。
                                     
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2006.10.8  (踏切事故)
10月6日午後6時ころ、大阪府茨木市の踏切で悲惨な事故がありました。
母親が自転車の前後に3歳の子と2歳の子を乗せて、踏切を通行している時に転倒し、避難が間に合わず、3歳の子は助けたけど、2歳児は助けることができず、眼の前で轢かれてしまいました。本当にかわいそうな出来事でした。目の前でわが子を失った母親の気持ちを考えると、ことばが出ません。
線路に自転車が引っかかり、それを外すことができず、子供だけでも出そうとしたけど、2歳児の方のシートベルトが外せずに助ける事ができなかったように報道されていました。
夕刊では「その踏切の障害物検知装置が作動しなかった事と、非常通報装置が無く、運転手は肉眼で見るまで異常に気が付かなかったと書かれていました。
(この踏切は細い場所で、おそらく、近くを通る人も少なかったのでしょう)
障害物検知装置が作動しなかったのは、なぜか、非常通報装置が無かったのはなぜか解りませんが、どちらかでも有効であれば、最悪の事態は避けられたのではと考えると、とても残念です。
気になるのは障害物検知装置です。故障なのか、検知エリア外だったのか。もし、検知エリア外なら、なぜ、検知の死角が生まれたのでしょうか、想定範囲の設定が甘かったのでしょうか?
すごく疑問の残る事故です。徹底的に原因を追究し、この種の災害が無くなることを祈ります。

                                      
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2006.10.1  (全国労働衛生週間)
今日から全国労働衛生週間です。
ある人が「なぜ安全週間と衛生週間を分けるの?。安全衛生週間とすればいいじゃないか?」という疑問をぶつけてきました。
それには、明確な答えを出せませんでした。
今、パソコンに向かって、その答えを考えています。
労働安全衛生法に関連した省令が多くあります。それらを合計すると3000にも及ぶ項目があります。一口で「安全衛生」と言っても、とても広い・深いものです。
それらを「安全衛生週間」として活動すると、やるべき項目が多すぎる。
「アレもコレも」と言っていては活動の重点がぼけてきますよね。
その意味で、災害ゼロ危険ゼロを目指す「安全活動」と健康に働ける職場づくりを目指す「衛生活動」は分けて、それぞれに特化して活動するのは理にかなったことでしょう。
また、冬には「年末年始無災害運動」が展開されます。年末年始には日頃行わない仕事をしたり、各人の意識の下にある、あわただしさからくる災害原因もあります。
安全衛生活動は生産活動などの業務に付随したものです。業務と安全衛生を分けて進めることはできません。業務が日々の努力の積み重ねなら、安全衛生も積み重ねが重要です。でも、その中で、暑い夏で気が緩みがちな7月は特に災害防止に力を入れよう。意識を高めよう。そして、気候の良い食欲の秋には特に健康面に重視をしよう。
これが答えだと思います。
                                      
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2006.9.23  (全国産業安全衛生大会)
今週は新潟の全国産業安全衛生大会に参加しました。
その中で、特に印象に残ったのは、白鴎大学の畠中信夫教授のお話でした。
畠中教授は労働省時代に労働安全衛生法を作ったと言ってもいい方です。
その講話の中に「安全規則は先人の血で書かれた文字である」という話を聞きました。昭和23年から今日までに22万人を超える尊い命を労働によって失い、その経験から労働安全衛生法・労働安全衛生規則が作られ、今日まで改正をくりかえてしています。本当に血の結晶だと思いました。
昨年度は死亡者数が1600名を下回った。と言っても、22万の先人が流した血を想うと、現状に満足せず、さらなる減少を実現しなければなりません。
私は長年安全衛生活動に従事していますが、労働安全衛生法と労働安全衛生規則の重みを真摯に受け止め、今後の安全衛生活動に力を注ぎたいと思います。
畠中教授の書籍「労働安全衛生法のはなし(平成18年改訂版)中災防新書」はとてもいい書籍でした。労働安全衛生法が生まれた背景や、各法文の目的などが分かり、労働安全衛生法の理解を深めることができました。
皆さんにも是非お勧めしたい1冊です。
                                    
ご安全に

2006.9.16 
(飲酒運転)
飲酒運転の報道が連日あります。皆さんはどう思いますか?
私は安全教育と関連して考えています。
安全教育は、教えても、個人が納得しないと効果がありません。
「飲酒運転はいけない事だ」ということは、捕まった人のほぼ全員が理解しているはずです。「理解」と「納得」の違いを考えさせられます。
「納得」していない理由は何があるでしょう?
おそらく
*他の人もやっているから、(私も)やってもいい
*運転しても、自分は事故をしない
*このぐらいはいつも飲んでいるし、無事に帰れている
*車に乗って帰らないと、明日が不便だ。その不便さを考えたら、まぁいいだろう
*飲酒運転は事故さえしなければいい
*分かっているが、タクシー代や代行費用がもったいない
このように考えられて(受け止められて)しまうと、毎日、「飲酒運転は禁止」と教えても、なかなか守ってもらえないでしょう。
どうすればいいのでしょうね。
このような人は、事故を起こすか、身内・知人が事故を起こすまで「納得」できないかもしれません。
でもそれでは「遅い」です。
事故を起こすのではなく、何かの体験教育をすれば改善できるかもしれません。
たとえば、
*飲酒状態で、ブレーキングがどれだけ遅れるかのシュミレーション体験
*血中あるいは呼気中アルコール濃度の測定
他には、事故の伴う経済損失の計算をさせてみてはいかがでしょう?
事故をすると生活はどうなるのか?賠償責任はどれぐらいになるのか?

安全衛生のアプローチの仕方は無数にあるはず。お互いにがんばりましょう

                                      ご安全に

2006.9.9  (石綿障害予防規則違反)
8月31日の新聞報道で、「石綿障害予防規則違反で逮捕」という記事があった。金沢労働基準監督署が解体業の社長を逮捕したものだ。石綿障害予防規則が施行されて、初めてのものです。
安全対策を怠ったとしか分からないが、飛散防止・呼吸用保護具・作業主任者選任・特別教育の未実施などの不備があったのだと想像する。
石綿による障害が出るのは何十年も先の事になるでしょう。
障害が出てからでは遅い。厳しい措置を行った金沢労働基準監督署に敬意を払いたいと考えます。
健康に有害な石綿の大きさは0.1マイクロメートル以下であり、肉眼では見えない。一般に人は見える物には警戒するが、見えない物には余り警戒をしない。
発注する側は、建設にはお金をかけても立派な物を建造したいが、解体にはお金を掛けたくない。一番安い業者を選ぶでしょう。
でも、石綿作業は見えない危険と隣合わせ、作業者にも周辺の地域にも影響を与えるものです。
解体業者は徹底した粉じん対策を行うことを施主に説明し、施主も作業に応じた代金を払って欲しい。
石綿の解体作業はこれからも増加すると見込まれている。アスベストはギリシャ語で「永久不滅」の意味がある。一度、飛散したものは特別な措置をしない限り永久に無くならない。解体する人はもちろん、施主も、それにかかわる作業者も地域の方も石綿の有害性をしっかり認識して欲しい。
     
                                       ご安全に

一週間を振り返る