2008年12月20日(ガスボンベの廃棄)
 本日、読売新聞では国内10大ニュースの報道がありました。
 1番は「中国製ギョーザで中毒、中国産食品のトラブル相次ぐ」
 2番は「福田首相が突然の退陣表明、後継は麻生首相」
 3番は「ノーベル物理学賞に南部、小林、益川氏、化学賞には下村氏」
 でした。やはり、健康被害まで発生した中国製食品が1番でした。昨年の
漢字で表わされた「偽」のような偽装ではなく、毒物の混入で実害があった
ことは悲しい出来事でした。

 さて、今日のテーマは家庭で使用するガスボンベ(カセットコンロのガス
や、殺虫剤、ヘヤスプレーなどの缶製品)をゴミとして出す時の話です。ボ
ンベをゴミとして出す時に、穴を開けて、出すのは当然のことだと思ってい
ました。廃棄物収集車の中で火災・爆発が発生するので、収集作業員が被災
するのでガスを抜いて、穴を開けるのは日本の常識と思っていました。しか
し、穴開けが不要な自治体も多いのです。なぜなら、穴を開ける時にケガを
するだけでなく、穴開け時の火災によって、死亡事故も起きているのです
(1999年に福岡の主婦が被災)。死亡までには至らなくても、相当数の
方がケガや火傷をしていると思います。
(専用の穴開け器を購入している人には災害が少ないでしょうが、ペンチで
開けたり、缶切りで開けたり、釘を打ち付けたり、亀裂ができるまで踏み付
けたり、千枚通しで突いたり、ナタを振り下ろす人など、さまざまでしょう)
 収集作業員のケガを防ぐのか、一般消費者のケガを防ぐのか、という問題
になっているのです。
 私の住む大阪府枚方市は穴開けが必要だと思っていましたが、確認すると、
「使いきってから出して下さい」と書いているだけでした。他の都市は、
 京都市:「完全に使いきってから、穴を開けずに出して下さい」
 大阪市:「使いきり、火気のない風通しの良い場所で穴を開けて出して」
 福岡市:「下記のない風通しの良い場所で穴を開ける。穴あけは,缶切り
   やホームセンターなどで市販している専用の器具を使うと簡単です」
 このようにルールも表記の仕方もバラバラです。

 皆さんは、消費者が缶に穴を開けて排出するべきだと思いますか、それと
も、消費者は使いきるだけで、収集作業員が対応する方がいいと思いますか。
私は、消費者が穴を開ける方がいいと思います。ただし、火災・爆発などの
災害が多い事を周知して、穴開け時にケガが多いことを周知して、適切な道
具を支給することが望ましいと思います。
 この考えには、購入したものには最後(廃棄する)まで責任を持って欲し
いという、地球環境保全の願いが含まれています。
                            ご安全に!


2008年12月13日(自殺防止の青色照明)
 12月10日読売新聞の夕刊に興味深い記事がありました。みだしは「自
殺防止に青色照明」です。(下記に新聞記事を掲載します)
 照明を青色に変えると自殺防止に効果があるそうです。記事を読む限りで
は効果があったように思われます。
 しかし、本当に自殺防止に効くかは、実績の比較だけでは判りません。自
殺をしようとした人が、その照明を見て、思いとどまったという証言が多数
ないと判断できないでしょう。
 人間は青色を見ると、落ち付くという実験データがあるようです。はたし
て、自殺を思いとどまった人は、青色照明を見て、心が落ち着き、冷静にな
って自殺を止めたのでしょうか?
 みなさんの身近に青色照明がありますか?
 この新聞を見て、さっそくLEDの青白いランプ(電球タイプ)を買って、
試してみたが、何も感じない。もっとも自殺を考えていないから、当然でし
ょう。
 このような青い光は日常では接しませんので、青色照明の下では、違和感
があります。この違和感が自殺を思いとどまらせたのかもしれません。見慣
れない色を見て、自殺以外のことを考えたのかもしれません。
 環境の変化を付けることが有効だったのではないかと思います。人が近づ
くと光るようなセンサーライトでも同様の効果があるのではないでしょうか。
 しかし、自殺予防には自殺の場所を無くすだけでは、防止にはなりません。
メンタル教育や、相談体制、ラインケア、セルフケアなど、地道な活動が必
要です。内定取り消しや、リストラなど、暗い話題が多い中、年末を迎えて
います。自らのストレスコントロールや、周囲の方の言動に注意していきま
しょう。
                            ご安全に!

以下、12月10日読売新聞夕刊より引用
 防犯効果があるとして街路灯に用いられるようになった青色照明を鉄道各
社が踏切や駅ホームに、飛び込み自殺防止などの目的で導入する動きが広ま
っている。実際に自殺防止に役立つかどうかは専門家の間でも意見が分かれ
ているが、青色照明を設置した鉄道会社は「毎年起きていた自殺がゼロにな
った」などと効果に手応えを感じている。
 京浜急行は今年2月、横浜市南区の弘明寺駅で、ホームの端の照明8基を
青色に変えた。同駅では前月の1月、ホーム端の人けのない場所で2日続け
て夜間に飛び込み自殺があった。同駅は、未遂も含め、毎年2、3件の飛び
込み自殺が起きており、「自殺を1件でも減らすため、できることはなんで
もしてみようと、わらにもすがる思いで始めた」(同社鉄道本部安全対策担
当)という。
 同社によると、同駅では青色照明設置後、飛び込みは起きていない。
 JR東海も今年8月以降、愛知や岐阜、三重県で、東海道線や中央線など
の踏切計10か所に試験的に青色照明を設置し、効果を探っている。JR東
日本やJR九州でも、導入に向けた検討を始めている。
 鉄道会社の中で青色照明をいち早く導入したのはJR西日本だ。車が強引
に踏切を渡るケースが後を絶たず、頭を悩ませていた同社は、2006年
12月以降、大阪府と和歌山県を結ぶ阪和線などの踏切計38か所に青色照
明を設置。その結果、夜間の車の踏切事故がゼロになり、飛び込み自殺もな
くなったという。
 国土交通省の調査では、07年度に全国の鉄道で起きた飛び込み自殺(未
遂含む)は640件で、前年度より約2割(106件)増えている。鉄道各
社によると、飛び込み自殺が多いのは夜間だといい、JR西は青色照明によ
る自殺防止について「一定の効果があることは間違いない」(広報担当)と
自信を見せる。

 ◆青色照明とは◆ イギリス・グラスゴー市が2000年、景観改善のた
めに街路灯に導入、犯罪発生件数が減少したことで注目を集めた。日本では
05年に奈良県警が導入を進めたところ、1年後に周辺の夜間の犯罪認知件
数が約9%減少。その後も、北海道から沖縄県まで各地で防犯灯として取り
入れられるようになった。


2008年12月6日(裁判員制度)
 今週は裁判員制度の話題が多かったのではないでしょうか?私は、裁判員
になりたかったのです。労働災害が安全配慮義務違反で民事訴訟になること
がありますので、裁判にかかわるというのは、貴重な経験になります。しか
し残念ながら、私の一家はだれも当たりませんでした。こんな確率の高いも
のに当たらないということは、宝くじも当たらないし、車にも当たらないと
いうことでしょう。
 企業では裁判員になった方に特別休暇を与えるなど対策しているでしょう。
でも「その日に休めるのか?」が最大の課題になっているのではないでしょ
うか?(仕事が忙しいだけでは免除されませんので、罰金を求められます)
 私が心配しているのは、裁判に参加したあとです。被告に睨みつけられる
かもしれません。犯罪の動機を聞くと人間不信になるかもしれません。生々
しい殺害現場の写真を見るかもしれません。一般人には過去になかったスト
レスがかかります。1日で終わらずに、何日にもなる可能性があります。メ
ンタル不調になる可能性はとても高いのです。
 それを防ぐには、裁判員の召集前のメンタルチェックが必要ではないでし
ょうか。場合によっては産業医または主治医が診断書を書いて、裁判員辞退
させることも必要だと思います。召集だけでも大きなストレスです。裁判の
何日前に通知が届くのか分かりませんけど、通知が届いてから裁判の日まで
ずっとストレスを抱えている状態は危険です。
 また、裁判員が終わったあとのメンタルチェックが必要になります。保健
師や産業医が面談するのも必要だと思います。(裁判員が判決を決める打合
せの内容は守秘義務があるので、面談は難しくなる可能性があります)
 最初の方は仕方ありませんが、来年からずっと続くのですから、経験者と
未経験者が意見交換をする機会を作るのもいい方法だと思います。

 皆さんは、事件の報道をみて、「こんな悪い奴は死刑にしろ」と思うこと
があるでしょう。しかし、それを裁判所で判断しなければならないのです。
テレビの前で「死刑にしろ」とは全く違うのです。誰も経験したことのない
ストレスがあります。

 人事の方や産業医などメンタルヘルスに関係する方は早く裁判員を経験し
て欲しいと思います。
 私やりたかったなぁ。残念!
                            ご安全に!


2008年11月29日(労働災害の現状)

 今週、厚生労働省は10月までの死亡者数を発表しました。1月から10
月までの死亡者数は956人です。昨年と同時期と比べると、80人の減少
で、増減率はマイナス7.7%となります。
 平成20年から始まった、第11次労働災害防止計画によると、平成24
年の死亡者数の目標は1,085人(平成19年の1,357人の20%減
少)だから目標より早く達成できるかもしれないというほど、順調に減って
いるように思います。
 しかし、死傷者数(死亡者と休業4日以上の災害の合計)は前年に比べ、
213人減ってはいるものの、増減率を見ると、わずかにマイナス0.3%
の減少でしかありません(第11次労働災害防止計画の死傷者数の削減目標
は15%減少)
 この死亡者数が減っている事を取り上げて、災害が減ったというイメージ
がありますが、実は災害は減っていないのです。
 その根拠は「度数率」の推移に見ることができます。「度数率」というの
は、100万延べ労働時間当たりの労働災害の死傷者数です。簡単に言えば、
労働災害の発生の頻度と考えてもいいでしょう。
 この度数率の推移は(全産業の度数率)
   平成7年1.88
   平成8年1.89
   平成9年1.75
   平成10年1.72
   平成11年1.80
   平成12年1.82
   平成13年1.79
   平成14年1.77
   平成15年1.78
   平成16年1.85
   平成17年1.95
   平成18年1.90
   平成19年1.83
 のように平成7年に初めて、「2」を割った以降はほとんど変わってない
のです。この事から災害自体は全く減っておらず、死亡者数だけが減少して
いることが分かります。
 なぜ死亡者数が減っているのかというと、リスクアセスメントの普及によ
って、リスクの高い作業が改善されたのかもしれませんが、医師が頑張って
いるおかげかもしれません。
 もうすぐ12月です。「師走」と言われるように、1年で一番忙しい時期
なので、災害が増える時期です。年末から来年1月にかけて無災害が実現で
きるよう頑張りましょう。
 年末年始無災害運動のスローガンは
 「目配り 気配り 安全確認 無事故でつなぐ 年末年始」

                            ご安全に!


2008年11月22日 (振り込め詐欺)

 今週、テレビ番組で「振り込め詐欺」の特集がありました。2003年頃から
「オレオレ詐欺」が急増して、2004年12月に警察庁が「振り込め詐欺」と名
称を統一しました。もう5年にもなりますが、いまだに被害が発生していま
す。警察や、金融機関でも対策をしていますが、一向に減らないようです。
 番組を見ていると、実に手口が巧妙です。
 まず、名前などの個人情報を把握しています。昔のように「オレオレ」で
はないそうです。そして、最初に「電話番号が変わった」と伝えます。そこ
で、新しい電話番号を登録させるのです。その日はそれだけです。そして、
翌日、副業が失敗したから巨額の負債を背負って大変なことになる。と言っ
て、パニックにさせるのです。パニックにさせておいて、冷静な判断をでき
なくするのです。そして、今度は、その回避方法として、○万円振り込んだ
ら被害を最小限にすることができると、解決方法を教えるのです。パニック
の状態から解決方法を聞くと多くの方が安心して、「じゃ、振込する」って
ことになるのです。もし、その電話の後で、不審に思って、電話しても、前
日に電話番号を変更しているから、詐欺師に電話をかけることになってしま
い。だまされることになるのです。
 さらに手口が巧妙なものがあるそうです。電話の途中で、他の人に代わり
ます。その人も詐欺師で、「弁護士の○○です。息子さんの言うとおり、本
日中に振り込めば大丈夫です」と、言われるから、「弁護士の言うとおりに
すればいい」と思うのです。
 番組の中では「洗脳されている」という言葉も使われていました。金融機
関の窓口で、係員が不審に思って止めようとしても、「騙されているのでは
ない。本当に、今日中に振り込まないと大変なことになってしまう」と信じ
ているのです。
 短時間で、電話だけで、洗脳してしまうノウハウに関心してしまいました。
 この短時間に洗脳する手法を安全衛生に活用できないものだろうか?
 たとえば「この機械に手を入れると、一瞬で巻き込まれて、手も頭もバラ
バラになるぞ」と教え、「僕は死ぬかもしれない。どうしよう、どうしよう」
とパニックにさせるのです。そこで今度は、「こうすれば安全に作業できる」
と教えるのです。「良かった。こうすれば、死ななくて済む」と洗脳できる
と、その人は必ずその手順を守るようになる。
 このようになればいいのですが、振り込め詐欺をヒントに、安全洗脳教育
を考えていた一週間でした。

 (参考)警視庁には、振り込め詐欺の手口を紹介したHPがあります。

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/koreisagi/hurikome_onsei/hurikomesagi.htm

                            ご安全に!

2008年11月16日 (右側歩行と左側歩行)

 今週は右側歩行と左側歩行ってどっちが正しいのかを考えていました。
 ことの始まりは、11月10日に千葉県で24歳の会社員が19歳の運転
する軽乗用車にひかれるという事故がありました。左側を歩いていた男性を
いきなり後ろからひき飛ばしたのです。その運転手は「誰でもいいので、は
ね飛ばしたかった」と、とても恐ろしい発言をしたようです。
 道路では、「人は右」ですね。なぜ右なのか。単にルールというだけでな
く、その方が安全なのです。ちょっと情景を浮かべながら読んでいただきた
いのですが、右側を歩いていると、正面から車が走ってきます。走ってくる
車は視界に入りますので、「危険」と感じたら、避けることが簡単にできま
す。これが、もし、左側を歩いていると、車は後からくるのですから危険を
感じにくくなるのです。
 今回のように故意にひき殺そうと思っている運転者が操縦する車も、右側
を歩いていると、危険を感じることができるのです。危険を予知する力、危
険を感じる力を発揮するためには、5感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)
を生かしやすい状況にしなければならないということです。
 車道と歩道とが区別されているところは、歩道を歩き、混在している場所
では右側を歩くことが必要です。しかし、それでも危険はあります。特に大
阪では自転車が歩道・車道の区別なく、猛スピードで走り抜けていくことが
多いのです。だから、歩行者は右側を歩いていても危険です。電話をしなが
ら歩いたり、音楽を聞きながら歩くと危険を感じにくいのです。歩道であっ
ても周囲に注意しながら歩いていただきたいと思います。
 たとえ、故意に危害を加えようとしている者からも、自分の身を守ること
が必要です。

 さて、道路上は「車は左、人は右」で分かりやすいのですが、歩道内では
混乱があるようです。「左側歩行」の指定がある場所、「右側歩行」の指定
がある場所、何も指定のない場所があります。
 日本人は昔から左側歩行のようです。通説では、武士は左腰に刀を差しま
す。もし、右側を歩いて、武士同志がすれ違うと、刀の鞘がぶつかり、切り
合いになるため、左側を歩く。と言われています。通達によると、明治14
年に警視庁の通達があって、歩行者は左と定められました。しかし、戦後に
なり、GHQの指導で昭和24年に道路交通法の改正があり、「車は左、人
は右」と変わりました。当時はかなり混乱したようです。今でも混乱してい
ると思う方は、「道路では・・・」「歩道では・・・」と分けて考えてはい
かがでしょうか。
 どこを歩けばいいのか考えるながら歩くことは安全(身を守る)の大切な
ポイントです。企業の安全担当者は「どこを歩かせるか」という通路の表示
だけだなく、「どちら側を歩かせるか」を統一していくことも安全化の一つ
の方法だと思います。
                            ご安全に!


2008年11月8日 (ホームを走行する電車)

 先日、新幹線に乗りました。ホームに入ってくる“のぞみ”を見ながら、
改めて、その長さを実感しました。調べてみると400mにも達します。重
量は700トン、定員は約1300人です。満席になると、総重量は800
トンにも達します。
 ホームに入ってくる“のぞみ”を見るとかなりスピードを落として入って
きます。これだけの長さ・重量があると止められないから、ホームに入って
くる時はスピードを落としているのだなと感じました。その後、在来線に乗
り換えました。その時にホームに入ってくる電車のスピードがとても早く感
じました。その駅での電車の停車時間は3分でした。3分もあるなら、もっ
とゆっくりホームに入ることができるはずです。あと30秒かけてでも、ゆ
っくりホームに入れば、安全性は全く異なります。ホームの端から飛び込も
うとする自殺を考えている人も、電車がゆっくり走ってくれば飛び込もうと
考えないのではないでしょうか。その時乗った電車は8両編成でした。車両
が長いほど、ホームに入ってくるスピードが速いと感じました。
 宝塚線の事故以来、「ゆとりダイヤ」に変わっていますが、駅での停車時
間を長くするより、ホームに入る前・ホームの中を走行するスピードにゆと
りを持って欲しいと感じました。
 別の日、京阪電車に乗りました。普通電車しか止まらない駅で急行電車の
通過を待っている時でした。スピードを落としながらホームに入ってきまし
た。まるで、このホームに停止するのではないかというスピードでした。そ
のままホーム内では徐行を続け、ホームを出る時に加速して通過して行きま
した。その後に入ってくる普通電車もホームの手前で徐行し、徐行の状態で、
ホームを走行し、停止しました。乗客だけでなく、ホームにいる人の安全確
保も十分配慮されていることが良く分かりました。
 同じ鉄道事業でも安全運転に対する考え方が違い、安全を重視する社風の
差を感じました。
 事故後、安全対策を進めているようですが、やはり不安を感じます。これ
からも先頭車両には乗れません。私は、いつも、真ん中から後の車両に乗る
ように心掛けています。
                            ご安全に!


2008年11月1日 (鍵の掛け忘れ)

 10月27日に小学3年生の男の子が闘犬用の土佐犬にかまれて重傷を負
う事故がありました。(新聞記事は下に掲載しています)重過失傷害容疑者
になった男性は檻の鍵を閉め忘れたということでした。
 今回の土佐犬のように檻に入れても、餌を与えたり、散歩させたり、檻の
掃除など、檻を開けることがあります。今回の事故の原因は鍵の掛け忘れで
した。毎日、檻に鍵を掛けていても、忘れることがあります。

 この「忘れる」というのは、人間なら誰でもあり得るのです。完全に無く
すことはできません。それを無くそうとした一つの方法が「指差し呼称」で
す。行動を「目で見て・口に出して・指を差す」ことによって間違いを防ぐ
ものです。しかし、この3つの動作で無くせるかというと、完全に無くすこ
とは期待できません。「指差し呼称」をしてもミスは発生するのです。何も
しなければ、ミスはいつか発生すると考える必要があります。

 今回のトラブルを防ぐ方法は何か。檻の扉にオートロック(ホテルのドア
のように開閉時は必ず鍵がかかるノブ)やセンサーを付けるなど方法はある
でしょう。しかし、お金をかけずに対策する方法はあります。

 それは、鍵をかけないと扉が開くようにしてしまうことです。
 すなわち、扉の蝶番(扉の開閉金具・ヒンジ)の回転軸を傾けるのです。
扉の重みでいつも開くように傾けるのです。(実際には蝶番を傾けるより、
檻を傾ける方が簡単にできます)蝶番が垂直でなければ、扉が止まる場所が
決まります。それを扉が開いた状態で止まるようにするのです。そうすると、
扉はいつも手前に開きっぱなしになるのです。閉めても、扉が傾いているか
ら自然に開くのです。この事によって鍵の忘れを気付かせることができるの
です。この扉を閉めるには鍵を掛けるしかないのです。
 
 お金をかけず、シンプルな安全対策。これが一番いい安全対策ですね。
 
 しかし、上の方法をとっても「完全」に「鍵忘れ」を防ぐものではありま
せん。危険源がある限りリスクは“ゼロ”にはなりません。くれぐれも油断
しないようにしてください。
 
(10月28日毎日新聞より引用)
10月27日午後4時55分ごろ、大阪府松原市の路上で、一輪車で遊んで
いた近くの小3年(9)が土佐犬に襲われ、首や腹など5カ所をかまれてあ
ごの骨を折るなどの重傷を負った。助けようとした郵便局員の男性(23)
も腕をかまれて軽傷。府警松原署は、近くに住む飼い主の会社員(23)を
重過失傷害容疑で逮捕した。「檻の鍵を閉め忘れた」と認めているという。
(犬は3歳の雄で体長約1.5メートル。容疑者は自宅前の鉄製檻(高さ約
1.6メートル)で闘犬として飼っていた。

                            ご安全に!


2008年10月25日 (喉詰まりの初期対応)

 17日に千葉県の小学校で6年生の男児が給食のパンを詰まらせて窒息す
る事故がありました。報道されている情報では早食いのように大きなパンを
一気に口に押し込んだようです。
 この事故を聞いた方は、「パンは柔らかいものだから詰まるなんて」と思
った人が多いことでしょう。しかし、人間は食べ物と唾液を同時に飲み込ん
でいます。パンが唾液を吸収すると、状況は変わってきます。喉の奥で唾液
を吸収して膨らんできます。統計を見ると、喉詰まりの原因は1位がご飯、
2位お餅、3位パンとなっています。
 東京都では2006年と2007年の2年間に喉を詰まらせて救急車で搬
送された人が2443人もいたそうです。この数字は1日に3人以上発生し
ていることを表します。これは東京都だけの話ですから、全国を考えると、
この10倍近い人が救急車で運ばれているかもしれません。
 (参考:東京都の2443人のうち、死亡は71名)
 喉に物が詰まった時、危険なケースは呼吸が止まって、脳に酸素が送られ
ないことです。次に心臓が止まり、血流が止まります。これから急いで救急
車を要請しても、到着までの所要時間は全国平均で6分30秒です。時間が
経過すると死亡率が高まることはカーラーの救命曲線を見れば分かります。
(参考HP:http://www.bur.osaka-kyoiku.ac.jp/somu/kyumei/cara.htm
心臓が止まってから3分で半分が死亡します。呼吸が止まってから10分で
半分が死亡します。ただ救急車を待つだけでは、死を待つのと同じことです。
救急車到着までの時間に何をするかが重要だということです。

 もし、あなたの目の前に、喉に物を詰まらせた人がいたらどうしますか。
食べた物を取ろうとして、口の中に指を入れる人は居ますか?これは危険で
す。指を入れる時に詰まった物を奥に押し込んでしまうおそれがあります。
詰まった時はハイムリッヒ法をしてください。 *詳細はこちら↓
       http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec24/ch299/ch299d.html
 心臓が止まった時には、心肺蘇生法が必要です。AED(自動体外式除細
動器)があれば使用しましょう。

 皆さまの中には、喉に物が詰まったら掃除機吸引が効果的だと思っている
方もおられるでしょう。しかし、雑菌まみれの掃除機の先を口に入れるのは
お勧めできません。最後の手段として利用するのであればいいと思います。

 喉に物を詰めて搬送される患者の多くは高齢者です。これからますます高
齢化が進みます。喉に物を詰めた窒息者と遭遇する確率は年々増えます。そ
の時のためにハイムリッヒ法を覚えておきましょう。
                            ご安全に!


2008年10月18日 (飲酒運転 同乗者の責任)
 
 15日に判決があった飲酒運転事故は、飲酒運転の黙認・飲酒運転を止め
なかったことにも、大きな責任があることが示されました。

 簡単に概要を説明しますと、2003年鹿児島県で起きた飲酒ひき逃げ事
故で24歳の男性が死亡しました。飲酒運転をしたのは当時19歳の少年で
した。その車には、事故の直前まで24歳の男性が助手席に座っていました。
その後、2005年の損害賠償訴訟で、運転していた少年には5500万円
の支払いが命じられました。そして、今回、飲酒運転の際に同乗していた2
4歳男性にも5300万円の損害賠償訴訟があり、15日の裁判で、同乗者
に「飲酒運転を制止する注意義務を怠った」と同乗者にも責任があると認め、
全額の5300万円支払を命じた判決になりました。

 現在、道路交通法の飲酒ほう助としての罰則は3種類あります。
 「車両の提供」 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
 「酒類の提供」 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
 「飲酒運転車両への同乗」 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
  (上記は全て運転手が“酒酔い”の場合)(2007年改正)

 上記の金額と比べてどうですか。50万円や100万円を払える人はたく
さんいても、5千万円を払えるような人は少ないないでしょう。損害賠償金
に5千万も請求されたら、一生が変わってしまいます。
 ちょっとタクシー代を浮かすための軽い気持ちが、自分の人生だけでなく、
家族の人生も変えてしまうのです。

 飲酒運転の車に同乗していた当時24歳の男性は、「自分は運転していな
いのになぜ、こんなことになったのだろう。」と、一生後悔するでしょう。

 飲酒運転は、してはいけないし、黙認してもいけないのです。“飲酒で事
故を起こした人”も、“飲酒した運転手を黙認した人”も、同罪なのです。
 この判例で、同乗者も飲酒運転手と同じように責任があることが認められ
ました。これからはこの判例が基準になると言っていいでしょう。

 あなたが車を運転する前に、「少しぐらい大丈夫だから、飲め」と言われ
たら断れますか?
  その時はこのように教えてあげて、断ってください
    「これから車を運転する私に酒を進めると、3年以下の懲役ま
    たは、50万円以下の罰金ですよ。そして、もし、私が事故を
    起こしたら、運転した 私と同じ罪になりますよ」
企業の社員教育の場などで周知いただきたいと思います。

(参考)
 道路交通法改正後1年間での検挙数
  同乗罪(飲酒を知りながら同乗する)   954人
  車両提供罪(飲酒した人に車を貸す)   221人
  酒類提供罪(飲酒店が運転者に酒を提供する)93人 

                            ご安全に!


2008年10月12日 (ノーベル賞)
 
 2日続けて、ノーベル賞受賞のニュースが入ってきました。物理学で3名
化学で1名です。4人も同時に受賞者が誕生しました。これで日本のノーベ
ル賞受賞者は何人になったかと考えると、「あれ?思い出せない」恥ずかし
ながら川端康成さんと大江健三郎さんしか思い出せませんでした。皆さんは
何人の受賞者の名前を覚えておられますか(正解は下記)

 ほとんどの方を思い出せないことに「あぁ情けない」と思いながら、なぜ、
覚えていないのだろう?と考えると、ノーベル賞受賞者の功績が理解できな
いのが原因ではないでしょうか。「素粒子物理学と核物理学における自発的
対称性破れの発見」や「クォークの世代数を予言する対称性の破れの起源の
発見」など私には理解できません。「対称性破れ」と言われても全く分かり
ません。「破れ窓理論(割れ窓理論や壊れ窓理論とも言われます)」なら身
近に感じますので理解できるます。悲しいかな、研究の内容が理解できない
から、彼らの業績が記憶に残りにくいのでしょう。「記憶」とはそういうも
のではないでしょうか。

 この事は、安全衛生の教育にも当てはまるのではないでしょうか。理解で
きないことは、覚えられない。納得できないことは忘れてしまう。こういう
「覚えていない」「すぐ忘れる」という事は安全衛生に関わっておられる方
なら経験があるのではないでしょうか。
 理解を求める、納得させる教育が必要なのですね。教育の難しさを感じま
す。

ノーベル賞日本人受賞者(敬称略)
 1949年 物理学賞 湯川 秀樹
 1965年 物理学賞 朝永 振一郎
 1968年 文学賞  川端 康成
 1973年 物理学賞 江崎 玲於奈
 1974年 平和賞  佐藤 栄作
 1981年 化学賞  福井 謙一
 1987年 生理学・医学賞 利根川 進
 1994年 文学賞  大江 健三郎
 2000年 化学賞  白川 秀樹
 2001年 化学賞  野依 良治
 2002年 物理学賞 小柴 昌俊
 2002年 化学賞  田中 耕一
 2008年 物理学賞 南部 陽一郎
   同   同    小林 誠
   同   同    益川 敏英
   同   化学賞  下村 脩 

参考 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より出典
 割れ窓理論(Broken Windows Theory)
 軽微な犯罪も徹底的に取り締まることで凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止でき
 るとする環境犯罪学上の理論。アメリカで考案された。「建物の窓が壊れ
 ているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やが
 て他の窓もまもなく全て壊される」との考え方からこの名がある。「ブロ
 ークン・ウィンドウ理論」、「破れ窓理論」、「壊れ窓理論」ともいう。 
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%B2%E3%82%8C%E7%AA%93%E7%90%86%E8%AB%96
                            ご安全に!


2008年10月4日(大阪 個室ビデオ火災)
 
 雑居ビルでの惨事が繰り返されました。
 10月1日に大阪難波の個室ビデオ店で火災が発生し、15人の命を失い
ました。このニュースを聞いた時に、2001年の新宿歌舞伎町の雑居ビル
火災を思い出した人は私だけではないでしょう。
 当時、雑居ビルでの防災管理が問題になり、法改正を行い、雑居ビルでの
火災を防ぐために規制を厳しくしてきました。しかし、惨事は繰り返されま
した。規制を厳しくしたと言いますが、この個室ビデオ店がどういう業種に
該当するかで、規制が全く異なります。宿泊設備なのか、風俗営業なのか、
それとも一般的な店舗なのか、今後もいろいろな事業形態ができるでしょう
が、消防法・建築基準法等がそれらに対応できるのでしょうか。また、限り
ある、消防職員で、膨大な数の雑居ビルを監視できるのでしょうか。多くの
課題があると思います。
 昨日もある雑居ビルに行きました。階段の踊り場が喫煙場所になっていた
り、防火扉の前に物が置いてあったり、避難誘導灯が消えていたり、避難経
路はどこにも表示されていない状態でした。ビルの管理者や、店舗の事業者
は、少ない金額を投資して、大きな利益を得ようと考えるのは当然ですが、
それによって、防災・安全が疎かになるのは残念なことです。 
 
 私もかなり前ですが、最終電車に間に合わず、同じような個室ビデオ店を
使用したことがあります。とても狭い空間ですが、周りの部屋もすべて、ヘ
ッドホンを利用しているので、とても静かです。アルコールも入っているの
でリクライニングシートを倒せば朝までぐっすり寝られます。
 
 今回の原因として、容疑者の放火が一番ですが、客が逃げれなくなり、被
害を拡大させたことがあります。
 私は、消防学校一日体験入隊をしたことがあります。その体験項目に煙中
避難訓練がありました。煙が充満している真っ暗な通路を避難する訓練です。
有害な煙は使用していないのですが、自分の手もまったく見えない中で、煙
に囲まれて避難した経験があります。その時は、事前に避難道の状況の説明
があり、頭の中でシュミレーションする余裕があったので避難はできました
が、今回のように、日頃行かない場所で、照明が消えた状態で、なおかつ、
個室の扉が開いて、通路がふさがれた状態で避難することは不可能に近いで
しょう。
 11月9日からは秋季全国火災予防運動です。この期間に備えたイベント
を企画し、防災意識の向上を図りましょう。


2008年9月27日(百聞は一験にしかず)
 
 22日に東京大学において交通安全教室が開かれました。対象者は自転車
通学の学生でした。交通安全教室はどこでも開かれていますが、今回の教室
はちょっと違ったものでした。それは、スタントマンがトラックによる自転
車巻き込み事故などを演技するものでした。目の前でスタントマンが事故に
遭う状況は、疑似体験として、災害の怖さを体験できるものです。
 学生からは、「運転免許の更新時に事故のビデオを見たが、今回のものは、
強く印象付けられた。」と、とても好評だったそうです。
 このような教育は企業の安全教育としても取り入れられています。大きな
企業では独自に事故体験装置を作って安全教育をしている企業も多いです。
挟まれても痛いと感じる程度の装置を作り、受講者がそこに手を入れて挟ま
れるものや、マネキン人形を高い所から落とし、その衝撃を近距離で感じた
り、玉掛けの時にワイヤーを掴んだまま吊り上げると、ワイヤーには強い力
が加わり、指を切断する事故があります。それを軽い荷物をつり上げ、ワイ
ヤーに挟まれる疑似体験をしたりします。
 
 日本労働安全衛生コンサルタント会では、これらの安全体感教育は、危険
に対する感受性を高める効果があると考え、テキストを作成し、DVDを作
成しています。
 興味がありましたら、コンサルタント会各支部等にお問い合わせください。
条件等によっては無料で受けられるコースもあります。
 多くの方が「百聞は一見にしかず」ではなく、「百聞は一験にしかず」を
納得していただきたいと思います。

 また、それら体感教育の教育機関もあります。例をあげると
   住金マネジメント株式会社
    http://www.smmgnt.co.jp/gikun/g_17.html

 話は変わりますが、来年春に労働基準法の改正が検討されています。その
中に「時間外労働の割増率の改正」があります。現在の時間外労働の割増率
は25%以上と定めていますが、これを60時間を超えた残業の割増率を5
0%以上と改定する議案がまとまりました。
 「来年からは残業代が増えてしまうなぁ」と考えないで、長時間の残業を
なくす検討をしてください。長時間の労働は労働者の体調を損なうどころか
メンタル面に大きな影響を与えるものです。
 安全衛生委員会などで、長時間労働の実態を把握し、労使で時間外労働の
削減を図っていただくようお願いします。
 
                            ご安全に!


2008年9月21日 (落雷事故裁判)
 
 1996年にサッカーの試合中に発生した落雷による事故の判決が今週の
9月18日にありました。裁判の焦点は「雷を予見できたか」という点でし
た。(事故の状況は安全週記の最後に掲載しています)
 10年前なら、「自然災害だから誰にも過失はない」と考えるのが普通だ
ったかもしれません。
 しかし、雷は自然現象で予想が困難なものですが、晴天から突然、落雷が
発生するという話は聞いたことがありません。
 黒い雲が出て、雷鳴もなく、いきなりの落雷で被災したなら、予見不可能
と考えてもいいでしょう。しかし、今回の場合は、雷の音も聞こえていまし
たし、放電光も見えていたという事でしたので、避難を怠ったと言われても
仕方ないでしょう。実際に事故の前に落雷はあったのだから、「被災者に落
雷するとは思わなかった」では通らないでしょう。

 ここで、雷の知識に関するお話をしましょう。
 あなたは、「ピカッ」と雷光を見て、音が聞こえるまでの時間を数えたり
しますか?「ピカッ」と光ってからの時間で、落雷地点までの距離を推測で
きます。音は1秒で約340メートル進むから3秒あったら、約1km離れ
ているということです。3秒あったら大丈夫。ピカッと音が同時だったら危
ないと考えていませんか?
 これは間違いです。雨雲は10kmも20kmというとても大きなもので
す。その大きな雲の中で帯電しているので、両端の方から落雷があるかもし
れないのです。だから黒い雲の下はどこに落雷があっても不思議ではありま
せん。

 事故の予見、さらには自然災害までも予見が求められている時代になりま
した。職場内での変化、従業員の変化、気候の変化にも関心を持ち、災害の
情報を集め、一歩二歩先を読み取りましょう。

事故の状況
 発生日:1996年8月13日
 事故当時、被災者は高校1年でサッカー部員で、高槻市体育協会が主催す
るサッカーの試合中に雷の直撃を受け、重度の障害を受けました。
 試合開始前に雷鳴が聞こえ、雲の間の放電も目撃されていました。グラン
ドの周囲には防球ネット用のコンクリート柱が50本ありましたので、回避
は十分に可能と考えられました。
(判決文より引用)
教諭は、生徒らを保護範囲に避難させ、会場の担当者に落雷の危険が去るま
で開始を延期することを申し入れて協議するなどの措置が可能であり、落雷
事故を回避できた。教諭には、落雷事故発生の回避措置を取ることなく、漫
然と試合に出場させ、落雷事故に遭わしめた過失がある。また、学校には、
教諭の使用者として、民法715条に基づき、不法行為責任(使用者責任)
を負う。
                            ご安全に!





2008年9月13日 (事故米被害広がる)
 
 今週、もっとも世間を騒がせた問題は事故米でしょう。
 カビに汚染された米や残留農薬が基準を超えた物は非食用として、工業用
に出荷されています。日本にはこのような食の安全基準があり、厳しい検査
に合格したものが食卓に並び、安心して食べられるのです。しかし、その安
全・安心が根底から崩れてしまいました。政府から非食用の米を安く買い、
食用として出荷されていたのです。誰もが耳を疑うような事件があったので
す。そして、それを使用した酒・焼酎は自主回収となり、メーカーは億単位
の損害を被っています。

 なぜ、こんな事件が起こるのでしょう。
 非食用米は食用の10分の1に近い安い物です。それを食用として売れば
当然儲かります。
 商売というものは、良い商品(美味しい・新鮮・品質が良いなど)を安く
提供して、信頼を得て販路を広げていきます。商品イメージを高め、信頼を
得たものの中にはブランドが付き、さらに信頼を高めることができます。
 しかし、そこまで成長することは並大抵のことではありません。その努力
をせずに儲けようという欲が出ます。そこに不正が生まれてしまいます。悪
いことというのは簡単にできることが多いようです。

 私が頭を悩ましている問題に、作業の現場で手順を守らない、規則を守ら
ないような違反行動があります。その違反行動から災害に結びつくことは少
なくありません。
 人はなぜ、違反行動をするのでしょう。その答えは違反した方が楽に、簡
単にできるということにあります。楽をしたいという欲があるのです。
 例えば、「保護メガネを着用しなさい」と指導しても、作業用の保護メガ
ネは重たく、不快なものです。その保護メガネを取りに行ったり、戻しに行
く行動は面倒なものです。そのため、保護メガネをしないという違反行動が
生まれます。作業者は保護メガネをしない方が生産性が良く、楽に働けると
考えます。違反行動は簡単にできるものなのです。
 保護メガネをしなかったら、必ず怪我をするものであれば、指導しなくて
も保護メガネをするでしょう。しかし、実際には保護メガネをしなくても怪
我をする可能性は低いことが多いのです。その経験から保護メガネをしなく
ても作業できることを経験したら、保護メガネを着用しないで作業しようと
考えてしまいます。それは人間の学習能力が裏目に出た結果なのです。

 皆さんの現場でもそういう問題は多いのではないでしょうか。

 安全を第一に考え、小集団活動などによって、個人個人が安全に対するモ
チベーションを高めて自発的にルールを守る社風がある会社が理想的ですが、
それはごく一部の企業でしょう

 違反を見つけたら、厳しく怒鳴りつけている人も居られるでしょう。しか
し、昨今の労働者は怒られると、さっさと辞めてしまうとか、職場内にしこ
りができるので怒りにくいと思っている方が多いのではないでしょうか。

 一番良いのは、保護メガネをしなくても怪我をしないような作業方法に変
えることです。
 再発防止の基本は、一に危険源・有害物発生源を無くすこと。次は作業者
と危険源等とを分離することです。
 保護メガネなどの保護具で作業者の安全を確保するのは、やむを得ない最
後の手段なのです。
 保護具着用の徹底や作業手順の順守に頼った災害防止策は作業者のミスに
よって、簡単に崩れてしまいます。

 皆さんはどのように対策しますか。
 安全第一に考える社風を作りあげ、全員が安全意識を持ち、自ら積極的に
安全改善をし、ルールを守るような理想的な職場を作りますか?
それとも、危険源の無い、誰もが安全に作業できる作業環境を作りますか?
どちらも困難な道です。でも、あきらめずに一歩づつ前進させましょう。

                            ご安全に!


2008年9月7日 (イージス艦あたごと清徳丸衝突事故)
 9月4日にイージス艦「あたご」と清徳丸衝突事故の海難審判が開かれま
した。2月19日に事故が発生した後の調べでは、「あたご」側に回避の義
務があり、見張りの連絡不備や、マニュアルに反した自動操舵など、全面的
に「あたご」に責任があったとされていましたが、4日の海難審判では、あ
たご側が「漁船の清徳丸の右転により危険が生じ、避けられなかった」と主
張しました。漁船の乗組員はこの事故で行方不明になっており、真相究明に
は時間がかかりそうです。
 しかし、この海難審判は本当に必要なのでしょうか。漁船の乗組員二人が
行方不明になったのだから必要なことかもしれませんが、このような審判で
は、責任回避の方に進む恐れがあります。不利な真実にフタをするかもしれ
ません。真実が隠されては本当の原因を見失うおそれがあります。それより
も、関係者が集い、「何が原因なのか、どうすれば、事故が防げるか」を審
議し、再発防止策をまとめて欲しいと思います。このままでは、誰かに責任
を押し付ける審議が進み、関係者は不利な証言をしなくなり、原因があいま
いになってしまいます。ゆがめられた真実を基に、再発防止策を立てても、
再発防止策の完成度は下がるでしょう。
    そして再発。。。。歴史は繰り返されるでしょう。


 さて、話は変わりますが、9月1日から全国労働衛生週間準備月間が始ま
りました。本週間は10月1日からの1週間です。今回のスローガンは
 「あなたが主役 明るい職場と健康づくり」です。
作業環境はいかがですか? 
 職場内にいつもシンナー臭のような異臭がしていませんか?
 重たい呼吸用保護具をして、保護衣を着て、汗を流すような重労働な職場
 はありませんか?
 作業場所に体を合わせようとして、作業姿勢が悪く、腰痛になったりしま
 せんか?
 騒音が激しく、一日中、耳栓をして、不快な作業をしていませんか?
 粉じんが多くて、作業現場の空気が霞んでいませんか?

「仕方ない」と考えず、作業環境が一歩前進する労働衛生週間にしましょう。

                            ご安全に!


2008年8月30日(酸素と二酸化炭素を間違える)
 8月27日に福岡県八女市立八女総合病院で酸素を吸入させる際に間違っ
て二酸化炭素を吸入させるというミスがありました。
 看護師2人が危篤状態の患者を手術室にストレッチャーで運ぶ際に酸素ボ
ンベが空になっていることに気が付き、二酸化炭素のボンベを持ち出し、接
続したということです。
 問題は、なぜ、「二酸化炭素のボンベを持ってきたか」です。それは新聞
報道によると、ボンベに「渡辺酸素」というメーカーのタグが付いたので
「酸素」と誤って認識したということです。
 私はこのようなミスはしないでしょう。ボンベの向きが悪くて、文字が読
めなくても間違えません。なぜなら、ボンベの色の意味を知っているからで
す。看護師は色の意味について教育を受けていなかったのではないでしょう
か。ボンベの色は容器保安規則で定められています。

  容器保安規則 第10条(抜粋)
    酸素ガス 黒色
    水素ガス 赤色
    液化炭酸ガス(二酸化炭素)緑色
    液化アンモニア 白色
    液化塩素 黄色

 酸素ボンベを教える時に、「これが酸素ボンベ」というだけでなく、「こ
の黒いボンベが酸素ボンベ」と教えたら分かりやすい。
 「これが。。。。」だけでなく、区分の仕方を合わせて説明するとわかり
やすいと思います。

 また、医療の現場では慢性的な人不足で過労常態であるとも言われていま
す。今回のように緊急手術があると、確認がおろそかになることも多いよう
です。教育の充実と同時に適正な労働時間・適正な人員の確保が重要です。

 色は判断する重要な要素です。「形」を説明するのは難しく、文字の場合
は読めない場合があるとか、認識する早さに問題があります。しかし、色は
瞬時に分かるという効果があります。色があるというのは見やすく、分かり
やすいものです。しかし、意味なく色を付けていくと、混乱することがあり
ます。その混乱をさけるために

 安全色はJISで定められています
   JIS-Z9101 安全色及び安全標識
   JIS-Z9103 安全色 一般的事項
   JIS-Z9104 安全標識 一般的事項

 職場にあるライン・通路等を再確認してみてください。
 通路の区画線を示す「白色」でラインをひいてみてください。それだけで
職場がきれいに見えることもあります。
   
                            ご安全に!


2008年8月23日(派遣社員の労働災害が増加)
 8月21日の新聞に派遣労働者の災害が大幅に増加しているという記事が
掲載されていました。
 データ上、2004年に比べて2007年は8.8倍に増えています。し
かし、2004年3月の製造業への派遣が解禁になってから派遣社員は大幅
に増えていますから、派遣社員の災害が増えるのは当然なのですが、それに
しても多すぎます。
 製造業の派遣が解禁になった頃には労災隠しが横行していたと考えられる
ので、実質はこのような大幅な増加ではないかもしれないが、この状況は至
急改善を要します。
 なぜ、このように増えたのでしょうか。
 派遣社員は、短期的な即戦力が求められるため、すぐ現場に配置されるこ
とが多いのです。正規従業員のように新入社員教育を何日もかける余裕がな
いのです。安全に対する十分な教育・指導ができていないのが問題と考えら
れます。
 それと、私が知っている派遣社員に聞くと、社員には「責任」を求められ
るが、それが嫌だから派遣社員を選んでいるということでした。「責任」を
負うのは嫌だ。自由に働いて、稼いで、自分の時間を楽しみたいということ
です。だから仕事に対する姿勢が正規社員とは異なるのです。
 だから、社内ルールを無視することが多いのです。何かミスをしたらそれ
を正そうとして、回転する機械に手を入れたり、職場内を走ったりするので
しょう。派遣社員を雇い入れている企業では派遣社員の不安全行動・ヒュー
マンエラーに頭を悩ませている方が多いのではないでしょうか。
 ヒューマンエラーには、4つに分類されます。
  〈安全に作業する方法を知らない〉
  〈安全に作業するための技術がない〉
  〈安全に作業するためのルールを守らない〉
  〈操作ミスなどの単純な人間のエラー〉があります。
 ヒューマンエラーを防ぐには教育・指導・躾が必要です。しかし、単純な
ミスを無くすことは教育などでは簡単になくせません。なくせないから「仕
方ない」と諦めてはなりません。人間がミスをしても災害に結びつかない工
夫が必要なのです。「フールプルーフ」という言葉を聞いたことがあると思
います。ミスをしても安全を確保することが必要なのです。フールプルーフ
の例として、自動車のシフトレバーがあります。シフトレバーはブレーキを
踏んでいないと、Pの位置から動かせないのです。もし、その仕組みがなけ
ればどうなるでしょう。レバーを動かした時に急発進して、とても危険です。
しかし、この仕組みのお陰で、ブレーキを踏んでいるのでレバーを動かして
も急発進しないのです。
 このような安全を確保する工夫ができていますか?
 人は、決められた操作をその通りに行うロボットではありません。間違っ
た操作をしても災害にならないように機械の安全化を進める必要があります。

派遣労働者の災害状況はこちらをクリックしてください。
                             ご安全に!


2008年8月16日
 (北海道の回転遊具事故)


 8月8日からオリンピックが始まり、世界中はオリンピック一色になって
ようです。4年に1度の大会に向けて、体と技術を磨き、世界一に賭ける強
い精神力に拍手を送りたいと思います。

 さて、8月12日、北海道グリーンランドという遊園地で事故がありまし
た。昨年、エキスポランドの事故以来、遊具の安全性について関心が高まっ
ています。今回の事故は「マンハッタンドリーム」というもので、18人乗
りのアームが回転し、最高到達点は14mにもなります。
 操縦および監視をしている従業員が異常音に気が付き、非常停止ボタンを
押して、遊具を停止させました。そして、従業員が乗客を梯子で地上に降ろ
している時に、遊具が回転し始めました。回転を始めたために梯子が外れ、
乗客の一人が落ち、重傷となりました。
 さて、どこに問題があったのでしょうか?
 手順に問題があったのではないでしょうか。
 非常停止ボタンを押すと、回転力を供給するモーターが停止をします。そ
の時点で救出に行くと、モーターによる回転エネルギーは遮断されるため、
回転力を失いますが、回転エネルギーにはモーターだけでなく、重力があり
ます。遊具のアームの反対側には重りがありますので、重い方が下に回転す
る残存エネルギーが残っていたのです。そのため、重り側が下がって、客席
の方が上に回転したのです。したがって、非常停止ボタンを押した後はブレ
ーキ操作が必要だったはずです。遊具の動きを固定した後に救出しなければ
ならなかったのです。
 梯子の固定方法にも問題があります。
 異常が発生した機械に梯子を掛けるとは、安全の保障がない場所に梯子を
掛けたということです。
 異常時の手順の間違いと、救出方法の間違いが災害の原因だっとというこ
とになります。
 それにしても救出が梯子では不十分です。なぜなら、救出されるまで、乗
客はしがみついています。握力の限界に達しているかもしれません。高所恐
怖症の人は手・足が震えてしまいます。救出は被救助者の体力に依存するも
のでは危険が伴います。せめて地面にクッションを配備し、飛び降りでも避
難ができる状態が必要だと感じます。

                             ご安全に!


2008年8月9日
 下水道工事での事故
 8月5日に東京都豊島区の下水道工事をしていた作業者が豪雨による増水
によって5人が流されました。
 この工事は老朽化した下水道管の内側に塩化ビニール樹脂を貼る作業です。
こんな工事を下水道を止めずに行えるのだから凄いと関心しました。技術力
が優れているのがアダになったのかもしれません。下水道を閉鎖していたら
事故は無かったと思われます。
 この事故は天災なのでしょうか、人災なのでしょうか?
 人災としたら、何か労働安全衛生法に違反しているでしょうか。報道を見
る限りでは違反した事実はありません。避難のための縄梯子もありましたし、
危険を感じて避難の指示もしていました。
 会社は「短時間にこれだけの雨量は予測できなかった」と過失がないこと
を強調していました。しかし、下水道のプロとしては、天候の変化・下水道
の水位変化の予測が甘く、避難指示が遅かったことは否定できません。
 一番大きな原因は「ゲリラ豪雨」という激しい雨だったことは確かです。
しかし、自然災害なのだから仕方がないと考えていいのでしょうか。
 ゲリラ豪雨と言っても、晴天の状態から一転して雨が降ることはありませ
ん。真っ黒な雲が広がってから降り出すのです。だから予測できます。
 その予測を鈍らせているのは、数多くの成功した工事があるためです。過
去に下水工事をしている時に雨が降ることもあったでしょう。下水の水量が
増えてきて、そろそろ避難しないと危険だと考えて、避難するでしょう。雨
が降っても、ほとんど無事に作業をしてきたのです。そうのような成功の経
験が判断を鈍らせたのではないでしょうか。
 仕事には期限がありますから、雨が降ってもギリギリまで作業したいと考
えるのは当然でしょう。しかし、安全に避難できる「ギリギリ」のポイント
(避難指示発令)は、どのように考えて決めますか?
 雨量だけではありません。避難に係る時間が重要です。
 マンホールの直径はたった60cmです。簡単に登れません。まして、タ
ラップではなく、縄梯子です。
 下水道の高さは140cmしかありません。身体を低くしなければならな
いので普通には歩けません。
 重いスエットスーツを着て、水が流れているところを歩くのから容易には
歩けません。
 今回6人が作業していました。今回の状況でその6人が安全に避難するた
めには15分ぐらい必要ではないかと想定します。と、いうことは15分前
には避難開始の決定をしなければなりません。
 判断は、作業場所の雨の状態だけではありません。上流の雨量も関係しま
す。作業場所からマンホールまでの距離も関係します。
 今回の現場監督者は避難までに要する時間が頭の中にありましたでしょう
か?
 さぁ、対策が少し見えてきたのではないでしょうか。
 今はどこにいても、パソコンで気象情報が入手できるようになりました。
風や積乱雲、雨雲など意思決定の情報は眼でわかります。
避難に要する時間を計算していれば、避難の意思決定は難しいものではあり
ません。
 工事の始めに、避難訓練をしましょう。
 怖いのは自然災害ではありません。今回も大丈夫だろうという油断です。

                             ご安全に!
 −  −  −  −  −  −  −  −  −  −  −
(参考)今回の下水道を遮断せずに下水管を修繕する工法はSPR工法と
    いいます。詳しくはこちらのホームページをごらんください。
    http://www.adachi-tokyo.co.jp/product/product_1.html


2008.8.2
(石窯パンの店で一酸化炭素中毒)
 大阪市東住吉区のパン屋で一酸化炭素中毒で12人が被害にあいました。
このパン屋の売りものは高さ2メートルもの大きな石窯です。経営者はヨー
ロッパで修行を積み、「ベーカリーのカリスマ」と呼ばれるほどで、お店も
大盛況です。そんなパン屋を襲った突然の出来事でした。幸い12人とも命
には別条ないということですが、大惨事の一歩手前でした。
 一酸化炭素は本当に恐ろしいガスです。2001年には新宿歌舞伎町火災
で44人が命を失いました。この例は火災ですが、ガス湯沸かし器による一
酸化炭素中毒など、生命を奪うようなガスです、今年の春に大きな問題とな
った硫化水素も恐ろしいガスですが、硫化水素は卵の腐ったような臭いがす
るので低濃度でも危険を感じることができます。しかし、一酸化炭素は臭い
がないのです。色もありません。
 一酸化炭素が体に入ったら体の中で何が起こるか勉強しましょう。
 人間が肺で呼吸すると、肺の中でガス交換が行われます。血液中の二酸化
炭素を排出し、酸素を取り込む働きがあります。その酸素を心臓に送り、脳・
筋肉に送る働きをするのが血液中のヘモグロビンというものです。このヘモ
グロビンと一酸化炭素はとても結合しやすいのです。たとえ、酸素濃度が十
分あったとしても、ヘモグロビンは酸素と結合せず、一酸化炭素と結合しま
すので、脳へ酸素が供給できなくなります。脳へ酸素が送られないのですか
ら、体の自由が利かなくなります。身体が動かないことで異常を感じるよう
なものですから逃げることもできないのです。自覚した時にはすでに中毒状
態です。だからとても怖いガスなのです。

 なぜ、このような一酸化炭素中毒が発生したのでしょうか。
 換気扇が回っていなかったため、排気が不十分だということは解っていま
す。換気扇のスイッチを入れ忘れたのか、それとも誤って切ってしまったの
かもしれません。しかし、過去にも2度、換気扇が回っていなかったことも
あるし、事故当日はオーナーが始業時に確認したということだから、電気系
統のトラブルの可能性もあります。
 この店では巨大な石窯を有していますので、換気が絶対条件になります。
スイッチを入れ忘れた。とか、電源回路が切れる。換気扇が壊れる、間違っ
て切断したなどが考えられます。
常に換気扇の稼働状況を把握する方法として、
・運転状況表示ランプを付ける
・排気口に紙テープを垂らし、眼で見て分かるようにする
・一酸化炭素濃度警報器を設置する
・複数の換気扇を稼働する
 (複数の換気扇を付ける時は、電気回路を分ける必要があります。複数付
 けても、電気回路の事故なら、全部の換気扇が一斉に停止します)
また、換気のためには空気取り入れ口が必要です。密閉していたら、換気扇
は回っていても、排気できないことも考えられます。

 今回、男性従業員の指示で避難がスムーズにできたようです。
 もし、あなたの近くの人が倒れたら、どうしますか? 当然、状況を確認
して、介抱するでしょう。場合によっては心配蘇生法が必要になりかもしれ
ません。しかし、その人が一酸化炭素中毒で倒れた場合は、一刻も早く逃げ
ないと、あなた自身が危険です。
 危険を予知して、リスク評価して、対策を実施すると同時に、教育し、緊
急時の手順を決めておくことも重要です。さらに緊急時訓練が必要です。

                             ご安全に!

2008.7.26
(脳血流からうつ病を診断)
 独立行政法人労働者健康福祉機構が脳血流(SPECT)からうつ病と疲労蓄
積度を客観的に評価する方法を発表しました。
 うつ病の発見にはセルフチェックによるものや職場の人・家族からの情報
に基づいて、主治医・産業医が診断していました。うつ病の初期はなかなか
分かりにくいもので、職場から連絡を受ける頃には就業が困難なケースも多
く発生しています。
 初期の段階では、家族に心配させないように。そして、会社の中では、責
務を全うするために頑張ります。友人がいても、なかなか言い出しにくいも
のだと思います。友人がささいな言動を見て、気になり、「大丈夫か?」と
声を掛けることもあるでしょう。しかし、心配させないように気をつかい、
「大丈夫」と答えることも多いのではないでしょうか。
 また、過労死などにつながる疲労蓄積についても発見が遅れることが多い
と思います。長時間働いても、何の変化もないような心身の健康な人もいれ
ば、労働時間は少なくても仕事・通勤と家庭での疲労が蓄積している人もい
るでしょう。
 セルフチェックにしても、ありのままを、チェックしているとは限りませ
ん。うつ病・疲労蓄積のチェックは主観的な『ものさし』しかないのです。
 しかし、今回発表された脳血流から客観的に評価することが可能になりま
す。これによって、うつ・疲労蓄積の早期発見、早期対応が可能になり、う
つ病等の休職期間も短くなるでしょうし、脳・心臓疾患防止にも効果を発揮
できると思います。この診断方法の普及を期待しています。
詳細はこちらを確認してください。 
http://www.rofuku.go.jp/oshirase/topics_h20kenkyu_seika.html

 仕事がら産業医と話す機会があります。どの先生も過重労働問題とメンタ
ルには苦慮しているようです。過重労働の産業医面談が法定化されています。
それを受けて面談指導をされていますが、先生方がおっしゃるには、「過重
労働対策イコール医師面談と思っている会社が多い。面談結果を報告する際
に労働時間削減をアドバイスしているが、一向に労働時間が減らない」とい
う話が多いです。
 確かに過重労働対策の一つが医師面談ですが、最大でも45時間以下にする
ことが一番重要です。

 また、秋葉原の連続殺傷事件や硫化水素自殺など痛々しい事件にも心の病
が関係しているでしょう。
 今回、画期的な方法が発表されましたが、早期発見よりもストレス耐性を
もつ事、自分で心をコントロールすることが重要ですね。私は新しい趣味を
持ちました。カメラです。いつか皆様に作品をお見せできるように頑張りま
す。
                             ご安全に!



2008年7月19日
(クールビズと作業効率の関係)
 日本建築学会が事務所の28度設定に問題があると発表しました。18日
の発表を見ると、地球温暖化対策として軽装で仕事をするクールビズが多く
の企業で取り組まれていますが、軽装だけでは暑さのために仕事の能率が落
ちると指摘しています。報告によると25度から1度上がるごとに作業効率
が2%低下するということです。
 まして、冷房の状態に問題があるところも多いと思います。エアコンの風
が直接当たるところは良く冷えて、風が届かないところは暑くなります。み
なさんのところはどうでしょうか、エアコンの風が直接当たらないように風
よけを付けているところも多いのではないでしょうか。そのような工夫をし
てもなかなか均一に冷やすことが難しいですね。28度に設定しても、場所
によっては30度を超えるところもあるでしょう。
 作業効率が低下するということは、同様にミスも増えてくると考えていい
と思います。ミスが多くなるとヒヤリハット・労災にもつながります。労働
災害も夏場に多く発生しています。暑さによるミスから災害につながるので
しょう。
 日本建築学会は、換気や送風を組み合わせ、作業効率を下げない省エネ方
法が必要だと提言しています。具体的には、エアコンと同時にサーキュレー
ターで室温の均一化を図り、扇風機で個別送風すれば体感温度が下がって能
率は向上するとしています。

 事務所の空調で理想的だと思うのは清水建設などが提案している「全面床
吹き出し空調システム フロアフロー」です。
(参照 http://www.shimz.co.jp/tw/tech_sheet/rn0138/rn0138.html )
床面全体から空調空気を吹き出すため、空調ムラが発生しにくいと同時に空
気の流れが一様になり、夏は冷たい空気が足元から発生し、パソコンなどか
ら発生する熱気を天井へ押し上げます。冬は暖かい風で足元が暖かです。

 事務所はエアコンがありますが、現場ではなかなか空調するのは難しいで
すね。扇風機を置いたり、スポットクーラーで対応していますが、快適な環
境はなかなか作れません。「クールネック」(水を含ませたものを首の回り
に巻いて、気加熱を利用するもの)を首に巻いたり、保冷剤を作業服の中に
入れたり、ファン付きのヘルメットもあります。
 「つくし工房」の熱中症対策用品などはいかがでしょうか?
   http://www.tukusi.co.jp/

 人間が快適に仕事ができて、作業効率が良くなり、ミスを防ぐ環境を作り
ましょう。『良い仕事は、良い環境から』ということですね。
                             ご安全に!
 − − − − − − − − − − − − − − − −
関係記事(7月18日読売新聞より抜粋)

  地球温暖化対策として、夏場を軽装で過ごす「クールビズ」が、冷房温
 度を28度と高めに設定し、省エネを図る取り組みで、年々広がっている
 が、日本建築学会のチームによる最近の研究で、軽装だけでは暑さで仕事
 の能 率が落ち、経済損失にもつながる場合もあることがわかってきた。
  専門家は「換気や送風を組み合わせ、作業能率を下げない省エネ方法が
 必要だ」と提言している。
  クールビズは、6〜9月に「ノーネクタイ、ノー上着」で職場の消費電
 力を減らす運動。環境省が2005年に提唱した。28度は建築物衛生法
 の定める執務室の上限温度だが、作業の能率への影響は不明で、日本建築
 学会は06年から科学的検証を進めてきた。
  神奈川県の電話交換手100人を対象に1年間かけた調査では、室温が
 25度から1度上がるごとに作業効率が2%ずつ低下した


2008年7月12日 (シュレッダー火災)
 今週注目したニュースは、シュレッダーにスプレーをかけたことによる出
火事故です。2年間に5件以上発生しています。
 紙づまりなどを直すために、スプレー式の潤滑オイル等をかけて、スイッ
チを入れると出火するものです。原因はスプレー缶に入っている液化石油ガ
スです(LPG)。これらのガスは空気より重たいため、空気中に拡散せず、
下に溜まります。シュレッダーは細かく裁断された紙を入れる箱があります。
その箱にガスが溜まります。少量でも爆発下限界を超える可能性があります。
その状態で、スイッチを入れると爆発するように燃えるのです。
 シュレッダーの潤滑オイルは液体タイプを使用してください。紙に潤滑オ
イルを含ませて、シュレッダーに入れるとシュレッダーに刃に潤滑オイルが
付着し、ある程度静かになり、長く使用できます。
 オフィスにおいてはこのような液化石油ガスを利用したスプレーが多く使
われています。狭いところの埃を吹き飛ばすスプレーや、スプレーのりや、
オフィスクリーナー、潤滑油、殺虫スプレーなどがあります。これらはオフ
ィスに限らず、何気なく使われているでしょう。
 気が付きにくいところに危険は存在しているのです。私もこのような火災
が起こるなんて考えていませんでした。多くの事故を知らなければ、危険予
知もリスクアセスメントも正しく行えません。
 オフィスで、液化石油ガス(LPG)の危険性を指導している職場は少な
いのではないでしょうか。ゴキブリなどの害虫が出て、殺虫スプレーをたく
さんかけたところにコンセントがあると引火することもあります。昨年、爆
発的に売れたLION社のバルサン氷殺ジェットの販売自粛されたことがあ
りました。
(解説:バルサン氷殺ジェットはマイナス40度の極低温で瞬間的に害虫を
凍らせるもので、殺虫成分を含まないということから台所でも、幼児が居る
所でも使用できるということが好評で、320万本の大ヒットになりました。
しかし、殺虫成分を含まないことから、コンロに火をかけたまま使用して火
災が発生する事故が多く発生し、LION社は、昨年8月25日に販売中止
を決定しました)
 「火気注意」と書かれたスプレーがどのくらい使われているか調べて、必
要に応じて教育指導をお願いします。
                              
ご安全に

2008年7月5日(新宿歌舞伎町ビル火災)
 7月2日に、2001年9月1日に発生した、新宿歌舞伎町ビル火災の判
決がありました。7年たった今も火災の発生原因は放火の疑いのままです。
火災を発生させた容疑者が不明のまま、ビルの管理者にどうのような判決が
でるのか注目していました。
 判決は起訴された6人のうち、5人が有罪(禁固2年〜3年)、執行猶予
(4年〜5年)。マージャンゲーム店の関係者である1人は無罪となりまし
た。
 この様な火災事故は、一昔前ならば、放火犯人が全面的に悪く、犯人が特
定できない現状では有罪判決にはならなかったかもしれません。しかし、消
防法に違反している事実があり、防火・防災意識が欠如していました。この
火災では数名が無事脱出しましたが、いづれも従業員でした。従業員であり
ながら避難誘導をせずに脱出したということが防火・防災意識が希薄だった
ことを裏付けるように思えます。
 原因は放火ですが、昨今の火災の発生原因のトップは放火であり、放火は
いつどこで発生しても大惨事にならないように防火管理をしなければならな
いことが今回の判決で明らかになったような気がします。
 火災が発生したのは放火ですが、防火扉が閉まらない状態であったこと、
階段に多量の物品が放置されていたり、煙感知器の未設置があったり、非常
用進入口が封鎖されていたなどの防火管理上の不備がなければ、放火されな
かったかもしれないし、放火されても、死者を出すようなことにはならなか
ったということです。
 みなさんの会社では防火扉の回りに物品を放置していませんか?
 私の経験上、防火扉を開放して固定しているのところをよく見かけます。
防火扉は耐火性能上、窓を付けられない(現在では窓付きの防火扉も認めら
れています)ため、ドアの反対側が見えず、危険だからとか、重たくて開き
にくいからとか、出入りが頻繁だから、などの理由により開放したまま固定
しているものを見かけます。これらは、新宿歌舞伎町ビル火災のように大災
害になるおそれがあります。
 みなさんの身の回りにこんなことがあればできるだけ早く改善しましょう。
改善の方法としては、煙感知器連動型の防火扉にするのがいいと考えます。
通常は開放しておくけど、感知器が反応する、もしくは、火災報知機を押し
た場合には自動的に閉鎖するのです。これであれば、たとえその場所が無人
でも、扉が閉鎖します。
 煙感知器連動型にするのは改造費が高いと考えますか? 2001年の新
宿歌舞伎町ビル火災の民事訴訟での和解金は8億6千万円と報道されていま
す。よく考えてみましょう。
                             ご安全に!


2008年6月28日(道路交通法改正からもうすぐ1か月)
 最近、小さな子供を乗せる二人乗りの自転車でヘルメット着用しているの
を見かけることが多い。6月から道路交通法が改正の効果と思います。最近
の子供用ヘルメットはおしゃれなものが増えてきたことも着用率が高くなっ
た要因だと思います。子供が自転車に乗った時の頭の高さは地上から1メー
トル30センチぐらいになるでしょう。自転車が転倒し、子供が地面に落ち
たすると、頭がい骨に相当のダメージを与える可能性があるから是非着用し
て欲しいと思います。
 最近の自転車を見ると、子供の安全のためにいろいろな工夫が見られます。
前に子供を乗せる自転車が良いと思います。後ろに乗せていると、子供の状
態が分からないので運転に集中しにくくなります。さらに前乗せタイプでは、
前輪を小さくして、子供の高さを低くしています。子供の位置が低いと、重
心が下がり安定しますし、前方も見やすくなります。また、万一転倒しても、
ダメージが少ないでしょう。電動アシスト自転車も安くなってきました。電
動アシスト自転車は脚力を補助するので、こぎ始めの不安定な時に安定感を
高めることができます。
 近所では、前と後に子供を乗せる3人乗りも見られます。今の法律では違
反となるのですが、仕事と育児を両立させる方が多く、黙認している状態で
す。現在、3人乗りを認めるかどうかの検討をしていると聞いています。3
人乗りの安全な自転車とはどんな機能が必要なのでしょうか。3人乗りで一
番危険を感じる時は、一人を乗せて、もう一人を乗せる時です。一人を抱え
ている時に転倒しかけても、支えることができません。乗り降りの安定性が
求められます。そう考えると、3輪自転車が一番適していると思います。以
前も3輪自転車が流行った時がありました。しかし、その時の3輪自転車は、
籠が後にあるタイプが多く、後の籠から荷物を抜かれる犯罪が多発し、減っ
たような気がします。3人乗り自転車には前が2輪の3輪自転車が良いでし
ょう。前の2輪の間の低いところに子供を乗せるのが安全だと考えます。
 さて、話は変わりますが、先日、タクシーに乗りました。後の席で、シー
トベルトをしようとすると、ベルトがロックしないのです。運転手に言うと、
「お客さん、ここは高速ではないからベルトしなくていいですよ。高速道路
はしないと捕まるけど、一般道は違反ではないです」と言われました。この
運転手は罰金や減点のことしか考えていないようです。私は目的地に着くま
で「なぜ後部席のシートベルトが義務化されたか」を教えてあげました。も
ちろん、私は、正常に使える場所に移動して、シートベルトをしました。シ
ートベルトをしながら、「こんな運転手には安心して命を預けられない。自
分の身を自分で守らなきゃ」と思いました。
 最後に。来週は安全週間です。スローガンは「トップが率先 みんなが実
行 つみ取ろう職場の危険」です。この期間中に一つでも二つでも危険を排
除して安全で快適な職場を作りましょう。
                             ご安全に!

2008.6.21天窓から小学生が転落
 19日に小学生が学校の天窓から落ちて死亡する事故が発生しました。子
供の事故死は、労働災害による事故死とは違う悲しさがあります。
 なぜ、この事故は発生したのでしょうか。昭和61年に建設されたこの学
校は、屋上には生徒は上がらない。だから特別の措置(転落防止措置)は不
要として施工されました。
 ここで気になるのは、どうして、施工主(杉並区)は「転落防止措置は不
要」と考えたのだろうか、当時の担当者は屋上は教育の場ではないと考えた
のでしょう。学校の建物の使い方は、学校長や教職員の判断に委ねられます。
担当者と当時の学校長との間で、屋上は使用しないと決めたとしても、学校
長は変わるし、教職員も変わります。取り決めが永久に引き継がれることは
困難です。したがって転落防止措置をしなかったことが原因の一つになりま
す。
 次に考えなければならないことは、子供の行動です。子供は高い場所があ
れば「上りたがる」、狭い場所があれば「入りたがる」、歩行が困難な場所
があれば「歩きたがる」、障害物があるとそれに挑もうとする“チャレンジ”
精神が旺盛なのです。それが普段使わない場所なら、天窓を見て、上がりた
がるのは当然の行為だと考えます。
 現場の写真を見ると、チラー(空調機の室外機)や配管があり、小学生が
授業その他で使用するには問題が多くあります。
 この事故のあと、あちこちで小学生の転落事故が過去に多く発生したこと
が報道されています。その状況を見て、六本木の回転ドア事故を思い出しま
した。あの時も死亡事故の前に、「腕を挟まれた。足を挟まれた」という災
害があったにも関わらず。過去の事故情報が生かされていなかったのです。
人間は失敗から学び、成功していくものです。失敗(事故)情報は共有して
いかなければ安全は確保できません。今は、死亡事故が発生してから初めて
アクションを起こしている例が多いのではないでしょうか?
 皆さんは「事故災害防止安全対策会議報告書」(平成11年12月8日)をご
存じでしょうか?(下記URL参照)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jikosaigai/991208houkoku.html
JCOの臨界事故を始め、災害が大きな注目を浴びたときに、「安全を第一に
考えるという安全文化」が必要だと発表したものです。安全文化を構築する
には、安全教育を学校で始める必要がある等述べられています。安全文化を
教えるべき、教育の場でこのような災害が多く発生していることは非常に残
念です。
 私の事務所では産業の現場に限らず、学校施設、福祉施設の安全診断も行
っています。お気軽にお問い合わせください。
                             ご安全に!

2008.6.14(点滴でのヒューマンエラー)
 6月10日の夜に速報で入ってきたニュースは「三重県伊賀市の整形外科
「谷本整形」で点滴などの治療を受けた患者14人が体調を崩し、うち女性
1人が死亡した」というものでした。点滴で? そんなに多くの人数が? 
疑問ばかりで何が起こったのか理解できませんでした。しかし、日々、実態
がはっきり見えてきました。院内感染で「グラム陰性桿菌類」が混入し、作
り置きをしたため、容器内で細菌が増殖し、敗血症などをおこしました。点
滴の薬剤は先生の診断後、調剤の指示が出てから作るのが常識と言われるに
も関わらず、土曜日に作ったものを週明けの月曜日に使用したということも、
さらに、この作り置きが常態化したのは8年も前からということも分かって
きました。
 この病院は大変評判で、遠方からも大勢押し寄せ、朝9時の診察開始にも
かかわらず、朝7時には多くの人が並んでいたほどです。1日に300人以
上だったと言われています。6時間の診察なら1時間に50人にも達します。
先生も大変だが、看護師も大変です。9時の診察開始前に準備しておかなき
ゃ間に合わない。患者さんは受付で待って、診察で待って、点滴で待って、
会計で待たなきゃならない。だから、できるだけ早く処理してあげたい。患
者は体の痛みを訴えているお年寄りが多い状況です。早く処理してあげたい
という親切心は良く分かります。親切心より自分たちの効率を第一に考えた
のかもしれません。ここのところは明確にされていませんが、先生の診断が
あってから1人分づつ作るより、まとめて作った方が効率が良いのは誰が考
えても明らかです。
 効率を優先したいがために発生した事故で一番最初に思い浮かぶのは19
99年に発生したJCOの臨界事故ではないでしょうか? 大きな撹拌槽で
処理するよりバケツに入れて投入した方が早いし、簡単だということでマニ
ュアルに違反する事が日常化され、裏マニュアルまで作られて、臨界事故に
なりました。
 マニュアルに違反したという共通点と、必要な教育ができていなかったと
いう共通点もあるでしょう。院内感染は過去に何度も大きな社会問題になっ
たことがありました。しかし、この谷本整形ではタオルは使い回しするし、
薬剤を事務机に置いていたり、患者のすぐそばで調剤したりしていました。
とても教育ができていたとは思えないような報道がされています。
 それだけでなく、過去にも同様の作り置き点滴で体調を崩した人がいたと
いうことも医院長は認識していたようです。
 マニュアルの問題、教育の問題、再発防止の徹底ができていないという、
「まさに起こるべきして起きた事故」と言えるでしょう。
 毎日300人を超える患者から痛みを訴えられ、医師も看護師も一生懸命、
その痛みから解放してあげようとしていました。しかし、その努力も無にな
ってしまいました。
 1年間で届出のある医療ミスは1300件にも及ぶそうです。それは届け
出のあったものだけです。実際にはその何倍も医療ミスがあるかもしれませ
ん。お医者様と私たち安全衛生に関わる者は同じ問題を抱えているのかもし
れません。
                             ご安全に!

2008.6.7(採血器具使い回し その2)
 5月20日に発覚した島根県の採血器具使い回し問題が全国に広がり、埼
玉県の旭ケ丘病院では1万8千人に使い回しがあったことが報道されました。
採血針は毎回交換していましたが、使い回しを禁止されている本体が使われ
ていました。これから感染がないか確認が進んでいくでしょうが、感染がな
ければいいと思います。
 私は数年前に健康に関するイベント会場で「自分の血液の状態を調べませ
んか〜」と呼び込まれた記憶があります。その時、採血器で“カチッ”っと、
穴を開けて、血を出して、シャーレに乗せて顕微鏡で見ました。なかなか健
康的な血液だと自分で納得をしていたのですが、思いだすと、あれは使い回
しが禁止されている採血器だったような気がします。たしか、私の前に並ん
でいた人が、「針は毎回交換するんだ、もったいないなぁ」って看護師に言
っていました。 あれから何年も経っていますし、大丈夫でしょう。
 さて、この使い回し問題は島根県の診療所だけではなかったのです。全国
規模になりました。その原因はどこにあるのでしょうか。
 2006年3月に厚生労働省は医療機関に感染の可能性がある採血器の使
い回しを禁止する通達が出されました。それを見て、使用禁止にした医療機
関と、感染の恐れがある本体を消毒して使えば良いと判断した医療機関と、
通達が届いていない医療機関があります。2番目の通達を読んで本体を消毒
するとした医療機関が一番問題ですね。厚生労働省が“禁止”と定めたにも
かかわらず、消毒の方法を選んでいます。このような事が発生すると再発防
止も何もできません。おそらく、針と本体カバーを交換するとお金もかかり、
医療廃棄物も増えるし、手間も増えるということで、消毒して使い回すとい
う方法をとったのでしょう。消毒は100%安全を確保できません。「99
%除去できます」と言われても、1%でも不安定要素が残る方法はとっては
ならないのです。
 また、通達が届いていないことも大きな問題です。この機会にどうすれば、
末端の医療機関、すべての医師・医療職に通達が届くか考えて欲しいと思い
ます。でもルートを見直して完了と考えないで下さい。物ごとはプラン通り
進むとは限りません。何万何十万とある医療機関・医師・看護師等の確認は、
現実的ではありません。でもその中のほんの一部の方に通達の配信状況を確
認するのはそれほど困難なことではありません。通達の最終者である医師・
看護師が通達を見て、理解し、実行して、初めて通達の意味があるのです。
6月から道路交通法が改正され、後部座席のシートの着用状況を警察が確認・
指導しているのはご承知だと思います。法改正は国民が理解して実行した時
に意味を持つのです。
 厚生労働省は通達の在り方を再考してください。
 皆さまの企業ではそのような心配はないですよね。社内通達を出したら、
回答を求めるとか、職場を巡視して通達の効果を確認していますよね。そん
な事は当然だというような読者の顔が目に浮かびます。

                             ご安全に!

2008.5.31  北海道 遮断機故障
 5月28日の朝、北海道美唄市のJR函館線茶志内−奈井江間の踏切で、
列車通過時に遮断機が下りなかったことが発生しました。調査の結果、茶志
内駅と踏切を結ぶ信号ケーブルがネズミにかじられ、数本のケーブルがショー
トしたことが原因でした。遮断機が下りず、警報音も鳴らなかったというこ
とで、重篤な事故になるところでした。
 テレビのニュースを見ていると、JR北海道は、「相手はネズミだから対
策のしようがない」と言っていました。
 しかし、この遮断機は大きな問題があると考えます。この遮断機が下りな
いというトラブルはあってはならない種類のトラブルです。遮断機はフェー
ルセーフ対策がされていると聞いていましたが、この遮断機にはそれができ
ていないのです。遮断機は列車が接近すると、信号が送られて、警報が鳴っ
て遮断機が下りるように見えますが、逆なのです。つまり、遮断機は重りの
荷重で常に下りる仕組みになっていなければならないのです。そして、列車
が接近していないという安全信号を受信して、遮断機を上げているのです。
安全信号が受信できない場合は遮断機が下りるのです。だから、列車の接近
時と、システムのトラブル時には遮断機が下りるのです。これがフェールセー
フです。停電など電気系統が不通になった場合は、遮断機が下りるから、停
電があったとしても、安全が確保できるのです。今回のように、ネズミがか
じっていると、安全信号が届かないので、遮断機が下りた状態になるはずな
のです。したがって、ネズミがかじったことが問題ではなく、遮断機の回路
に問題があるのです。
 機械はいつか故障するものです。その機械の稼働および停止をコントロー
ルする安全装置もセンサーもいつか故障するのです。今回のようにネズミが
かじるような事もあるでしょう。いたずらをされる可能性もあります。早急
にフェールセーフに変更していただきたいと考えます。本日、JR北海道に
上記の内容をメールしました。
 さて、6月からは安全週間の準備月間が始まりますが、コンサルタント推
進月間も始まります。コンサルタントの利用についてもご検討ください。
 全国安全週間のスローガンは
「トップが率先 みんなが実行 つみ取ろう職場の危険」です。
全国安全週間のリーフレットはこちらからダウンロードできます。
http://www.geocities.jp/k_iy_yi_kjp/annzendata/safety/ak304.pdf

 また、6月からは道路交通法も変わります。シートベルトは全員がしなけ
ればなりません。一部には高速道路だけと思っておられる方もいるようです
が、行政処分があるのが高速道路だけです。一般道も着用義務になりました。
お間違いのないようにしてください。


○○○ お知らせ ○○○
6月15日は「安全衛生コンサルタントの日」です。
この日から、メールマガジンを創刊します。
私の手作りのメルマガです。毎週日曜日に発行する予定です。
読んでいただける方はメールアドレスを教えて下さい。
(トップページの“メール”からメールしてください。)
もちろん無料です。

                                      ご安全に


2008.5.24  採血針の使い回し
 今週、島根の診療所で採血針を使い回していたことが報道されました。
 「自動に針が交換されると思ったから、そのまま使用した」などの釈明がありました。
 器具の納品業者の問題、院長の問題、看護職員の問題があるようです。
 厚生労働省は2006年に採血器具の使い回しを禁止する通達を出していました。院長は、「開業したのはその後だから知らない」と発言しました。真意のほどは解りませんが、通達を知らなくても、採血器具を使い回してはならないというのは、私たちのような一般人でもわかっていることです。
 器具の納入業者の回答にも信じられない内容がありました。器具には「複数患者使用不可」と赤字のシールが貼っているにも関わらず、「どこの病院でも複数の患者に使用していますよ」と販売しています。
 看護職員は使い方を知らなかったようです。最新式のものだから採血の度に新しい針が出るからと思っていたようです。説明書を読むのが面倒と思ったのでしょうか?メーカーのホームページでは使い方が動画で説明されていますので、それを見て、私でも使い方を理解しました。最新式のものであっても。針が入っている数しか使用できないのが判からなかったのでしょうか?器具本体には残量を示す白線もあります。その白線を見ても何も感じなかったのでしょうか?
 何か解せない会見でした。採血針は、血を抜き取るものではなく、皮膚に小さな穴を開けるものなので、使い回しをしてもいいと考えていたのではないでしょうか?
 もう一つ疑問があります。なぜ「複数患者使用不可」と表示されているものを、看護職員が複数の患者に使うのでしょうか?表示が見えなかったからでしょうか?それは考えられません。シールはとても見やすいところに赤く表示されていますので、見たはずです。見たけど、漢字が読めなかったから意味が理解できなかったのでしょうか? それも違うでしょう。
 シールを読んでも、ここの診療所は「例外」だと考えていたはずです。なぜ例外だと思ったのでしょうか?おそらく、この器具は一般の患者が自宅で使えるものだから、一般人に対する注意喚起文と理解したのでしょう。私たち医療職には関係ない注意喚起文と思っていたはずです。なんとも情けない。
 気になるのが器具を販売していた人の発言です。この器具はこの診療所以外の病院・診療所・クリニックにも販売しているようです。そこもシールを無視しているのではないでしょうか?
 私たちも病院に行くことがあります。その時、何も疑問を感じないでしょう。もし、疑問を感じて、質問しても、回答に納得するでしょう。(たとえ間違った回答であっても私たちは医療職の回答に疑問を持たないケースが多いでしょう。)知らないということは多くの危険を抱えているのです。
 さて、この問題は医療機関に限ったことでしょうか?
 産業の現場でも気になるものがあります。たとえば、「関係者以外立入禁止」の看板をアチコチに付けていると思います。この“関係者”は具体的に名前を定めていますか?
 たとえば、この部屋の中のAさんに書類を渡したいと思っているBさんは「Aさんの関係者だから私も関係者」と思っているかもしれません。また、「この会社の社員だから私は関係者」。と思っている人もあるかもしれません。
 人間というものは自分の都合の良いように解釈するものです。
 “関係者以外立入禁止”看板は改めた方がいいでしょう。では“許可を受けたもの以外立入禁止”ですか?先ほど言ったように人間は都合の良いように理解するのです。この場合は「許可を受けた○○さんと同様の知識・経験があるから許可を受けたものと同じ」と考えるかもしれません。
 では名前を入れたらどうでしょう“福田○○、安倍○○、小泉○○以外立入禁止”これなら明確ですね。たとえ社長でも入れない。でも故意に入る人は防げません。
 その部屋の中のハザードを特定し、リスクアセスメントを実施して、リスクが高いのであれば、ハード的な対策が必要です。ドアのカギはカード錠とか暗証番号錠が一番いいと思います。
 みなさんも週明けに会社の看板をチェックしてはいかがでしょうか。

○○○ お知らせ ○○○
6月15日は「安全衛生コンサルタントの日」です。
この日から、メールマガジンを創刊します。
私の手作りのメルマガです。毎週日曜日に発行する予定です。
読んでいただける方はメールアドレスを教えて下さい。
(トップページの“メール”からメールしてください。)
もちろん無料です。


                                      ご安全に

2008.5.17  四川大地震
12日の四川大地震は驚きました。地震の規模を表すマグネチュードは7.8でした。
 阪神淡路大震災は7.3でした。この差は0.5しかありません。しかし、マグネチュードは“対数”なので、単純な足し算や引き算は意味がありません。マグネチュードの数字上の差は0.5ですが、エネルギーは阪神淡路大震災の10倍にもなります。今後発生が予想される“東海・東南海・南海地震”の複合地震はM8.7とも言われています。このM8.7は四川大震災の30倍と予想されていますから何がどうなるのか予想もつかないものとなります。
 四川大震災の死者は2万人を超えています。最終的には5万人とも言われています。
 この機会に地震対策を改めて考えましょう。
 企業で飲料水の確保とか食糧の備蓄や毛布などの生活必需品の備蓄を進めておられるところもあるようです。ある企業では社員全員にヘルメットを配布し、地震が発生したらすぐヘルメットを着用できるようにしているところもあります。食糧も重要ですが、命を守ることが先決問題です。何かが頭に落ちると、小さいものでも意識を失うおそれがあります。ヘルメットを個人配布するのはとても効果が期待できます。
 さらに考えたいことがあります。阪神の時にも新潟の時にも今回も被災者の救出シーンを見ていると思います。瓦礫に埋まっている人を助けているシーンです。生き埋めから72時間が生死を分けるとも言われています。72時間以内に助けが来てくれるとは限りません。道路が寸断されたら困難です。レスキュー隊より被災者の方が絶対多いのです。自分たちの仲間は自分たちで助けることが必要になります。
 今回の地震を見て、地震後、最初に必要なものはクレーン・ショベルカーなどの重機だと感じました。
 皆さまの会社を見て下さい。救出活動に必要な重機はありますか?
 企業の災害対策として移動式クレーンやショベルカーを配備するのは無理ですか?
 「無理」という企業が多いでしょう。でも、災害時には活躍することは間違いありません。検討の価値はあるはずです。
 それが無理だったらこんなものはどうでしょうか。
 “笛”です。
小さなものでいいのです。携帯電話のストラップに付けたり、財布の中に入れるとか、名札に付けることが可能だと思います。この笛が生き埋めになった時に威力を発揮します。皆さんが生き埋めになったと想定してください。生き埋めになったら、救援を求めるために叫び声をあげると思います。しかし、叫び声は生きていくためのエネルギーを消費します。
でも、笛は小さなエネルギーで大きな音を発生させることが可能です。
1個100円でも購入可能だと思います。社員全員に配布をしても安いものです。
 このアイデアは採用して欲しいと思います。
                                      ご安全に


2008.5.10  船場吉兆の不正の常習化
 船場吉兆のとんでもないことが明るみになりました。
 誰もが耳を疑ったことでしょう。料理の使い回しなんて考えもしないでしょう。
 最初の報道では、食材が足りなかったからやむを得ず使ったようなことでしたが、実態は、刺身を盛り直したり、使いさしのワサビを醤油で溶いて、わさび醤油にするし、刺身のツマを洗い直して使ったり、、、、そんなことが常習化していたのです。“ワンマン社長”的な元社長の指示でやらされていたようです。
 船場吉兆では昨年11月の牛肉偽装事件などが発覚し、休業状態となり、今年の1月22日に再開しました。しかし、今回の報道後、予約はキャンセルになり、もう立ち直れないのではないでしょうか。休業中にはホームページのお詫び文の中に再発防止が盛り込まれていました。このお詫び文は体裁を整えただけで何も改善されていなかったということです。
 常習化というものは恐ろしいものです。
 産業の現場では、「挟まれた」とか、「巻き込まれた」などの災害が後を絶ちません。
 機械のトラブルがあった時、機械を止めて対応することが原則ですが、機械を止めずに手を入れて対応することが常習化していることはありませんか?
 機械の中に手を入れたら、“必ず挟まれる”のなら誰も危険な事はしません。しかし、気を付けながら手を入れたら機械を止めなくても対応が可能ということを学習すると、何の疑問も持たずに手を入れるのです。それが繰り返されていたら、現場の監督者から「稼働中の機械には手を入れるな」と繰り返し指導を受けていたとしても、その作業者は、安全に手を入れる方法を知っているから、何も感じないのです。何回指導されても改善することは考えないのです。「私は、機械を止めなくても、安全に処置できる。私はこの機械のプロだから、他の人とは違う」と考えているのです。そういう人は、一度挟まれて、痛い目をしないと理解できないでしょう。中には、痛い目をしても、「次からは気を付けてしよう。2度と失敗はしない。」と懲りない人もいるはずです。
 リスクアセスメントを実施してもなかなか災害が減らないと嘆いている会社もあるかもしれません。「私の工程は安全だ」と思っている人がリスクアセスメントしても、評価は低くなり、“リスクは許容できる範囲”となってしまいます。リスクアセスメントは作業者とリスク評価者、工程管理者、安全管理者・安全担当者がコミュニケーションをとりながら評価の穴(見落とし)、評価のばらつきをなくすことが重要です。
 リスクアセスメントはとても面倒なことかもしれません。でも、1歩づつ、確実にリスクを低減できる手段です。
 私たち安全にかかわる者は、そのような地味な活動を続けて、“痛い目に遭わないと理解できないような人”や、“痛い目に遭っても理解できない人”を痛い目に遭う前に助けてあげましょう。私たちしかできない重要な仕事なのです。
                                   ご安全に

2008.5.3  ゴールデンウィークの事故
 今年のゴールデンウィークは4月26日から5月6日までの11連休という会社もあるようですね。
 ゴールデンウィークはどこへ行っても人と車がいっぱいですね。おまけにガソリンが160円・・・
 さて、その連休の前半に思わぬ事故の報道がありました。神戸の高校で、アーチェリーの矢が頭に当たったというものです。幸い、命に別状はなく、意識があるということですが、頭がい骨を突き抜け、10cmも刺さったということです。
 なぜこんな事故が発生したのだろうか?
 報道によると、1年生が昼休みを利用して用具の手入れをしていた時です。
 「手入れ」には矢を番える必要があるのだろうか?
 悪ふざけをしていて、誤って指を滑らせたのだろうか?
 疑問がいくつかあります。
 競技とはいえ、殺傷力の高い道具を扱うことに適した施設だったのだろうか?
 取扱の指導はできていたのだろうか?
 監視・監督はできていたのだろうか?
 アーチェリーは弓と矢があり、それぞれ単独では危険性が少ない。両方が揃った時に危険が高くなります。
弓だけの手入れ、矢だけの手入れだけなら何も注意しなくても問題はないでしょう。弓に矢を番える(放つ意思がない時も含める)場合は、監督が必要だと考えます。監督者は部員がどの方向を向けて持っているか、取扱方法を誤っても危険はないか注意する必要があります。放つ意思がなくても、誤射する可能性として、指の力加減を誤ることもあるし、後ろから誰かが誤って接触した時に、驚いて指を離してしまうこともあるだろうし、声をかけられた途端に振り向いた時、指が離れるかもしれない。それは競技でも練習でも用具の手入れでも同様です。
 学校側の謝罪会見には「普段から指導していた」と言う言葉がありました。
 指導された通りにできないのが人間です。矢を放つ意思がなくても、矢は強力な力で飛び出すこともあります。学校側の監督不行き届きは免れません。
 この1週間前にはハンマー投げの競技のハンマーが頭に当たる事故もありました。
 学校は技術力を高める。精神力を高める。の他に安全性を高める工夫・指導をしていただきたいと思います。
 話は変わりますが、この連休中に30度を超える真夏日を記録した地方もありました。これからの時期には熱中症の防止に努めて下さい。熱中症は7月8月だけのものではありません。環境と個人の体調によってはいつでも発生しうるのです。特に今の季節は、猛暑に身体が順応していません。「まさかこんな季節で熱中症?」ということも発生するのです。
                                   ご安全に

2008.4.26  JR脱線事故から3年・硫化水素自殺
 昨日は4月25日でした。JR脱線事故から3年が過ぎました。
 3年でどのくらいの改善が進んだのでしょうか?
 自動列車停止装置(ATS)、EB装置(60秒運転操作が無い場合は警報が鳴り、さらに5秒たつと緊急停止する装置)、DM装置(ハンドルから手を離すと警報が鳴ったり、ブレーキをかけるデッドマン装置)、EB装置やDM装置は運転手の居眠りや病気による意識喪失による運転能力を失った時のバックアップ機能です。また、ホームからの転落や意図的な飛び込みを防止するホームドアやホーム自動可動柵、踏切での障害物検知装置、衝突時に衝撃を吸収するスペースの確保、乱気流を感知するドップラーレーダー装置、衝突時には凶器に変身するような金属製の手すりの改善(乗客を保護するクッション性が無い)など改善することは山のように残っています。それどころか、未だに遮断機のない踏切、警報のない踏切もあります。さらには、岩が崩れ落ちそうな場所とか、大木が倒れ込みそうな場所とか相当数の危険箇所があります。
 JRでもリスクアセスメントを導入すると発表しました。
 改善することは山のように抱えています。その実施の優先順位を決める上でリスクアセスメントは効果があります。優先順位を決めた後は、計画的に実行することです。たとえわずかな改善であっても、線路は長いし、客車も多い。投資金額も大きくなりますが、リスクが高いなら改善するしかないのです。
 毎年、この4月25日には改善箇所、改善投資額など公表してください。

 さて、硫化水素自殺が毎日のように新聞に出ています。23日には市営住宅で女子中学生が自殺を図り、周辺住人の70人が手当を受けるというような事件も起こっています。複数の製品を混ぜ合わせるのですが、個々の製品には特別に危険というものではないし、日常の生活必需品だから店頭から排除することもできません。硫化水素自殺を防ぐのは困難です。
 また、近隣での被災も目立っています。腐った卵の臭いがしたら逃げるしかない。硫化水素の恐ろしい点は毒性の強さだけではありません。わずかな量でも臭覚を麻痺させるのです。臭覚が麻痺したらどこに逃げればよいか分からなくなります。避難と言えば、階下に降りるのが一般的ですが、硫化水素は比重が重いので、下の方に拡散していきます。本当に厄介なものです。
 硫化水素による自殺に限らず、日本では毎日100人近い人が自殺をしているのです。ストレスが多くなったのか、ストレス耐性がなくなってきたのか、原因もいろいろあります。硫化水素自殺を防ぐより自殺自体をなくさなければなりません。自殺を防ぐには「メンタルヘルス教育」と「気配り・目配り」と「異常の早期発見・早期治療」が大切です。「ストレスを抱え込んでいないか」、「異常な言動はないか」、気になることがあれば、声を掛けてあげて下さい。
 でも、どのように声を掛ければいいのかが難しいですよね。その場合、数日後の約束を取りましょう。
 硫化水素自殺の多くは「毒ガス発生中です。注意してください」などの張り紙をしています。律儀なところがあるのです。なぜか解りませんが、自殺を考える時には律儀なようです。
 だから、あなたが、「2日後に夕食を食べに行こう」と誘うと、2日間は自殺を思いとどまってくれると思います。その間が、自殺を止めるチャンスです。学校の先生や、会社の上司などに報告し、できるだけ早くアクションを起こしましょう。
                                   ご安全に

2008.4.19  可動式ホーム柵
JR東日本では山手線のすべてのホームに転落防止のための可動式ホーム柵を新設することを発表しました。
 ホームから線路に突き落とすような犯罪もあれば、飛び込み自殺もあるし、酔っぱらった人が落ちることもあるし、不注意で落ちることもある。また落ちた人を助けようとして被災したケースもありました。すべて悲惨な事故につながっています。
 各駅停車の場合でも危険を感じますし、特急や急行がホームを通過するときも危険を感じます。ホーム柵やホームドアは絶対必要だと思います。
 山手線の整備完了予定は平成32年ということです。まだまだ先の長い話ですが、普及させて欲しい。
 考えてみれば、昔は転落事故をあまり聞かなかったような気がします。昔は、ホームには複数の駅員が監視していましたし、電車も今のように早くなかった。電車の本数も今より少なかった。駅も少なかった。
 リスクアセスメントの考え方でみると、危険に遭遇する「頻度」が増えたこともあるし、監視員が少なくなったし、電車も早くなったし、自殺者の増加もありますので「可能性」も高くなったということですね。
電車がホームに進入してくるという「危険源」に対して、「頻度」「可能性」が増加したのだから、リスクレベルは高くなったのです。
 だから企業の社会的責任として改善を進めて欲しいと思います。
                                   ご安全に

2008.4.12  (毒物混入事件と毒物自殺)
 今週もいろいろありました。9日に新型インフルエンザ対策案が発表されました。危惧する点はいろいろありますが、またの機会にします。11日には東名高速でトラックのタイヤが外れ、対向車線の観光バスを直撃し、
運転手が亡くなりました。運転手は11日が誕生日ということで、家族の怒り・悲しみはなおさら大きいことと思います。これも機会がある時にさせていただきます。申し訳ありません。
 今週は、今、気になっている事件を2点取り上げます。ひとつはペットボトルへの農薬混入事件、もうひとつは硫化水素自殺です。
 冷凍ギョウザ事件の影響なのだろうか、つまらない&悪質な悪戯が発生しています。この事件を見て、昭和52年(1977年)の毒入りコーラ事件を思い出しました。その頃はペットボトルはありませんでした。缶コーラに小さな穴を開けて、青酸を入れ、接着剤で封をして、公衆電話などに置いてあり、持って帰って飲んだ方が亡くなりました。
 そのような事もあり、ペットボトルには単にキャップを付けるだけでなく、開封したら、キャップの一部がリング状に切れて残るように作られています。キャップを強く閉めてもリングを見れば、開封したことが分かるようになっています。それと、中の容器の気圧を下げています。開封したときはリングが切れて、空気が流れ込んで「シュー」という音が出ます。
 農薬入りペットボトルをマネした事件はこれからも発生するかもしれません。ペットボトルを飲む時は、キャップの状況、特にリング状に残る部分を確認して、開封時に「シュー」という音を聴いて、容器が膨らむのを確認して、匂いを嗅いで、少量を口に含んでティステングしてから飲んでください。
 つまり、容器を見て(視覚)、音を聴いて(聴覚)、容器の膨らみを感じて(触覚)、匂いを確認して(臭覚)、味をみて(味覚)、飲んでくださいということです。
 人間の5感(視覚、聴覚、臭覚、触覚、味覚)は自分の安全を守るために大切な機能です。
 これは飲み物だけの注意事項ではありません。仕事でも始業前点検にも言えることです。たとえば、プレス機械を使う前に、点検するのと同じです。
 まず、機械を見て、稼働時の音を聴いて、振動を体で感じて、異常臭の有無を確認します。プレス機械では味覚は関係ありませんが、点検作業には5感を生かすことが必要です。
 ふたつ目のテーマは硫化水素自殺です。
 3月27日の神戸での自殺では、救出した父親まで死亡するような巻き添え事故も発生しています。その後、続けさまに硫化水素自殺の報道があります。誰がネットで流行させたのか分かりませんが、確かに、市販の物で簡単に作れます。しかし、楽には死ねませんよ。硫化水素はごく微量(0.02PPMぐらい)でも卵の腐ったような臭いを感じます。濃度が高くなると、鼻が痛いし、喉も痛い、眼も痛くなり、とても苦痛です。例えて言うなら、糞尿槽に飛び込んで窒息するようなものでしょう。そんなつまらない死に方はおやめなさい。
 どうやって自殺したらいいか考えている方が居ましたら、私にメールしてください。アドバイスさせていただきます。

 さて、話は変わりますが、4月1日に「管理監督者の範囲の適正化について」というタイトルで通達が出ています。(基監発0401001号)
 大手コンビニなどが管理職と言われていた店長に残業手当の支払いを決めたことなど、今後この問題は大きく発展するかもしれません。
 皆様の会社でも現状を確認し、対策を検討する必要があると思いますので通達は確認してください。
   通達はこちら
   大阪労働局が発行したパンフレットはこちら
                            ご安全に

2008.4.5  (11次防)
 第11次労働災害防止計画が発表されました。
 その中に死亡災害の削減があります。平成20年からの5年間で20%削減するということです。
 前回(10次防)は平成14年1658人から1310人(速報値)に減少しました。減少率は約20%になります。今回も20%減を目標としています。1310人の20%減は1048人です。もう少しで桁が1つ減ります。この5年間で3桁にしたいと思います。
 20%減らすためにリスクアセスメントなどいろいろなことが記載されていますが、一つ、効果的な内容が抜けています。
 それはコンサルタントの活用です。
 災害を減らしたいなら労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントの活用を「努力義務」に入れて欲しいですね。
 11次防本文にもありますが、労働者数300人未満の事業所での災害が全体の9割を占めています。
300人未満では、安全衛生を専門に業務する方を配置するのは困難な状況だろうと思います。安全衛生を兼務にすると、「安全第一」は解っていても安全衛生が後回しにされてしまうことがあります。そんな中で災害が発生して、災害の対策に奔走してしまうと、後追い後追いの安全衛生活動になってしまい、いつまでたっても災害が減らない。労働災害でも訴訟が増えてきています。安全衛生活動を怠っていると、災害は発生するし、災害によって、労働力が落ち、生産性も落ちるし、訴えられたり、書類送検されたり、監督署から「安全管理特別指定事業場」に指定されたり、本来の企業活動にも影響してきます。
 後追いの安全衛生活動から脱却し、一歩前を行く、「安全先取り」の安全衛生活動をしていただきたいと思います。
 「餅は餅屋」ということわざもあります。
 4月から労働安全衛生コンサルタント制度推進月間が始まっています。
 コンサルタントの活用をよろしくお願いします

第11次労働災害防止計画
 本文はこちらをクリックしてください
 概要はこちらをクリックしてください
                   ご安全に

2008.3.29  (石綿)
 3月28日に厚生労働省から「石綿ばく露による労災認定等事業場の一覧」の発表がありました。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/03/h0328-4.html
 今回の発表では労災・救済法の認定があった事業場2167社の社名が公表されました。また、平成17年度・18年度の労災保険法と救済法の認定件数が3382件と発表されました。これで現在までに約5000件の認定があっとということになります。「5000人もかぁ、すごい数だなぁ」と思う方がいるでしょうが、実は「まだ5000人だけ」なのです。この問題はまだまだ続きます。数年のうちに、もう1桁上がるでしょう。
 私は、建設業災害防止協会の方で石綿作業主任者技能講習を担当させていただいています。最近、そこで使用されているテキストの変更がありました。それは昭和63年までで石綿を含有する吹き付けは行われていないという記述がありますが、調査の結果、平成8年施工の建物からも石綿が含まれていたという内容です。
当時の労働省が通達を出しても、徹底ができていなかったという裏付けになります。テキストでは、建造年月日から石綿の含有を判断できるとなっており、その結果、石綿の分析を行われず、解体されたものも相当数あるでしょう。
 石綿障害予防規則が施行されたのは2005年です。その頃は作業主任者講習の受講者が急増し、受講を希望しても受講できないほどでしたが、最近は受講者が減りました。しかし、石綿作業主任者が必要な事業者が全て受講を終えたとは思えません。まだまだ徹底できていないように思えます。
 石綿による粉じん災害は、すぐに発生しません。何年もかけて進行していきます。何年、何十年と時が流れ、忘れた頃に発症することもあります。発症しても、今の医学では根治できません。酸素ボンベがなければ生活できないという人が増えてくるのです。
 石綿はアスベストとも呼ばれています。「アスベスト」はギリシャ語で「永久不滅」という意味があります。エジプトのミイラを包む布には石綿布が使われているものもあります。だから数千年の時を経ても形を保っているのです。あなたの肺に入った石綿(アスベスト)は永久になくならないのです。空気中に漂った石綿繊維は決して消滅しません。地面に沈下した石綿繊維は風に乗って、さらに浮遊し、誰かが吸い込んで、肺の中にとどまります。
 石綿繊維は0.1ミクロンという、とても小さいものです。誰も肉眼では見ることができません。見えないからこそ怖いのです。
 石綿は製品に含有されている状態では問題ありませんが、解体等のときに空気中に飛散します。石綿を飛散させない工事が必要なのです。そして、解体時に発生する石綿粉じんを吸引しない作業環境と保護具が必要なのです。その方法を学ぶ方法が作業主任者技能講習であり、また石綿作業特別教育でもあります。特に建物の解体等に従事する方は、石綿作業主任者技能講習または石綿作業特別教育を受けて下さい。石綿はどこに使われているか、石綿の有無をどう判断するか理解してください。
 石綿の有無を判断する知識がない人に石綿作業主任者が必要かどうか判断することは不可能です。石綿を学び、石綿の有無を判断し、石綿が含まれている場合は、石綿障害防止規則に従って作業をしてください。
 私の肺にも石綿が入っています。今も過去も石綿の業務には関わっていませんが、かなりの本数を吸っているはずです。今、皆さんの吸っている空気にも含まれているのです。

 この厚生労働省の発表を機に石綿の危険性、石綿による労災、石綿救済法を知ってください。将来発症する危険があることを理解してください。
 無関心が一番怖いことです。
                    ご安全に

2008.3.22  (新入社員教育)
 イージス艦「あたご」の事故から1か月経過し、防衛省から中間報告と処分の発表がありました。事故の中間発表としては、内容が乏しい。新聞にも「調査不十分」「早期幕引き図る」の見出しが出ています。1か月かけてこの程度? この1か月に何をしたのだろう? 不信感ばかりが沸き立ちます。
 不信感をいだくイベントとして、さる3月13日に「あたご」と同型のイージス艦「あしがら」が竣役しました。「あたご」の事故の原因が特定できないまま、同型の「あしがら」を出港させるなんて、通常は考えられないのではないでしょうか。たとえ、出港の日程は事故の前に決まっていたとしても、延期するのが当たり前だと思います。
 世間一般的な考え方と閣僚の考え方にはズレがあるように思えます。
 石破防衛相が閣僚手当2か月返納するということだが、2か月の根拠はなんだろう? 事故の顛末を明確にするまで返納するべきだと考えます。
 このままでは事故は風化してしまい、近い将来、事故を繰り返すに違いない。これ以上放置できない。
 防衛省の方へ、この記事を読んだら、私を事故調査の担当に採用してください。

 さて、話は変わりますが、桜の開花予想がいろいろ出ています。もうすぐ桜の季節ですね。桜の開花とともに企業では新入社員を迎えます。安全衛生担当としては、新入社員研修プログラムに安全衛生教育を入れることから始まりますね。新入社員として、安全に作業するための心がまえ、安全に仕事するためのルールを指導するのが一般的かと思います。また、通勤途上や会社構内、仕事場でのマナーも含まれると思います。
 マナーの乱れは皆さんも頭を悩ましているのではないでしょうか。公共交通機関を利用するとき、喫煙場所でもないのに煙草を吸う。線路に煙草を捨てる。優先座席に座って携帯電話を使用する。電車内の床に座り込む。書くと切りがないほどあります。また、一昨日の新聞では「名古屋市の職員がトイレを使用せず、排水路に尿を垂れ流す」なんという記事がありました。ほんとうに情けない。「尿意を感じたら、必ず、トイレで用をたすこと」なんて幼稚な指導している会社はないでしょう。
 今年の新入社員教育内容を検討されている方へ
 新入社員に指導することと、職場の矛盾があることだけはやめて下さい。
 たとえば、「朝、始業前に体操(ラジオ体操)をしてください。」と説明しても、職場の中で誰ひとり体操をしないようでは、意味がありません。意味がないどころかマイナスです。ルールを守らないことが社風だという誤解を生みます。
 今、会社で職場の先輩が実施している内容を説明し、それを確実に引き継ぐことが新入社員教育には一番重要だと感じます。
 新入社員の中には、その実施内容に疑問を感じることもあるかもしれません。その場合は、上司に相談し、最善の方法を検討することが必要です。「報・連・相(ほうれんそう)」の重要性を徹底してください。創意工夫をして仕事にかかるのは良いことではあるが、それを一人の考えで実行してはならないことを指導してください。
 安全衛生の最高責任は会社のトップにあります。それを各階層に権限を移譲しています。その責任と権限を理解させていただきたいと思います。会社のルールは全て、その責任に基づいて作られています。新入社員はそのルールに従って行動することが職務なのです。
 企業の社会的責任(=CSR)は新入社員も同じようにあります。「仕事を決められた手順で安全に作業する」という責任意識を持たせて下さい。
 最後に、皆さんが持つ、安全衛生意識を熱く語ってください。「災害の無い、快適な職場を創ろう」という意欲を伝えてあげてください。
 有意義な、新入社員教育をしていただくようお願いします。
                    ご安全に

2008.3.15  (北京マラソン)
 今月10日に北京オリンピックのマラソン代表が決まりました
 注目を集めたのは女子でした。シドニーで高橋尚子選手が金メダル、アテネで野口みずき選手が金メダルと2大会続けて金メダルを取っているから日本の3連覇を期待する声が高まっていました。世界選手権で3位になった土佐礼子選手は早々と内定を決め、東京国際女子で圧倒的な強さを見せつけた野口みずき選手は当確となり3人目の選手として、先日の名古屋国際女子が注目を集めました。有力選手が多数参加する中で、探り合いのようなゆっくりした序盤でした。その混戦の中で、突然、アナウンサーが「大変な事が起こりました。高橋選手が遅れています」と叫びました。優勝候補の筆頭と言われた選手がわずか8キロで、それも稀に見るスローペースの中での脱落に多くの人が驚いたことでしょう。その大会を制し、一躍、シンデレラガールとなった中村友梨香選手が代表となりました
 北京オリンピックまであと僅か(146日)になりました。代表となった方には体調を整え、いいレースをして、キレイな色のメダルを取って欲しいと思います。
 毎回、オリンピックでは酷暑とアップダウンが話題になりますが、今年はそれ以外の大気汚染が問題となっています。男子の世界最高記録を持つ、ゲブレシラシエ選手がマラソン欠場を決めました。女子の世界最高記録を持つ、ラドクリフ選手も北京の大気汚染対策を検討しているようです。
 産業の現場で夏に多く発生する熱中症ですが、熱中症予防のためにWBGT指標というものを使用します。
これは、3つの温度からその作業場所の環境を判断するもので、その3つとは自然湿球温度・黒球温度、乾球温度の3つを言います。
 自然湿球温度とは、温度計を濡れたガーゼで覆った状態の温度。
 黒球温度とは、黒い艶消しの中に温度計を入れて測ったもので、輻射熱を測定するものです。
 最後の乾球温度は通常の温度計と考えたらいいと思います。
 この自然湿球温度と黒球温度、乾球温度を7対2対1の割合でWBGT指標を求めます(注:屋外の場合です)。このWBGT指標が31度を超えると熱中症予防のために運動は禁止が望ましいとされとなり、激しい労働では23度が限界とされています。北京マラソンの8月の状況はわかりませんが、直射日光を浴びるマラソンでは、31度をはるかに超えるでしょう。その中で全力疾走を2時間以上継続するのは大変厳しく・危険な状態です。毎日厳しいトレーニングを続け、特別な体力を持った人だけができるスポーツです。
 その上、大気汚染との戦いもあるでしょう。中国の人はその中で生活しているから大した事ないと思うかもしれませんが、マラソン選手はレース中には通常の約20倍の呼吸をします。もっと多いかもしれません。大気汚染自体はが人体に影響ないレベルであっても、その空気を20倍の空気を吸い続けると異常がでることも考えられます。
 中国はオリンピックの数日前から閉会式まで産業を止めてでも大気汚染の改善を進めて欲しい。そしてマラソン当日は雨が降って、選手の体熱を奪い、気温が下がって、適度な風も吹いて、できるだけいい環境で走って欲しいと思います。
『がんばれ日本』

追加
中国で危険な通学が改善されたという報道がありました。
小学生が、通学のために川を渡るのですが、両岸を結んだ1本のロープにぶら下がって通学していたことに
危険と感じ、メディアが橋を寄贈したというものです。
yahooニュースヘッドラインより画像添付
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080314-00000032-rcdc-cn

良かった良かった。というより、中国って想像がつかない国だと思いました。
                     ご安全に

2008.3.8  (ユビキタス社会と安全)
 国土交通省では、ETCのような送受信機を車などに付け、近くの車両と交信し、車両との接近状況を運転手に知らせるシステムの実験を始めています。また、情報通信研究機構は歩行者がICタグを付け、自動車に信号を送り、事故を防ぐ技術を発表しました。ユビキタス社会(何時でも何処でも意識せずに、情報通信技術を利用できること)が進んできたように感じられます。
 これらが導入されて、送受信機を自動車に搭載していたら、見通しの悪いところでも、自動車の接近を感知し、事故を防ぐことができます。暗闇を歩いていても、歩行者の存在が自動車にも伝わり、事故を防ぐことができます。自動車には死角があるが、そこにバイク・自動車がいても、運転手には情報が届きます。
 事故防止対策は進んでいるのだな。と感じました。
 作業現場でも活用されるかもしれません。ICタグや送受信機を持った作業者が接近すると、高速回転物は回転を止めたり、産業用ロボットを停止させたりして応用も可能でしょう。
 しかし、大きな問題があることに気が付きました。
 それは、「危険信号」が元になっていることです。
 ご承知の通り、安全センサーなどの感知方法には「危険感知型」と「安全確認型」があります。「危険感知型」とは人の接近を感知し、信号を発信し、機械などを止めるものです。しかし、感知器が故障すると、人が接近したことを感知できません。したがって、機械を止めることができないというものです。
 「安全確認型」とは人が居ない(=居ないから安全)ことを感知して、安全信号を出します。もし、故障したら、安全信号が出ないから機械が止まる。機械が止まれば、災害は起こらないというものです。
 感知器もいつかは故障します。その故障の時にでも、安全を確保しようというものです。
 しかし、ICタグや送受信機による感知は「接近している」という危険信号しか出すことができません。ICタグや送受信機の故障以外にも、それらを携帯していない・装備していない場合は「接近している」という危険信号を出すことができません。ICタグや送受信機による交通安全システムが普及したときには、そのシステムを過信し、見通しの悪い交差点に突入して事故を起こす可能性があります。
 安全のためのシステムは必要なことだけど、落とし穴があります。どんなにシステムが発達しても、システムを過信してはなりません。
 安全に「絶対」という言葉はありません。最後の最後は人間の判断が重要なのです。その判断力を付けるためにも、いつも安全第一を心掛けて行動しましょう。
                     ご安全に

2008.3.1  (イージス艦の事故から原因追及を考える)
イージス艦と漁船の衝突から2週間です。
この原因についてはいろいろの報道があります。
「見張り員の視認が遅れた」
「見張り員がレーダー員に連絡しなかった」
「海上衝突防止法に定められた回避行動を取らなかった」等もっと多くの報道がされています。
災害防止のためには、災害が発生したときの原因を究明し、対策を実行し、再発防止の検討をし、関係者への通知・教育や設備の改善、手順書の改定などが必要です。
皆さんは「原因」をどのように考えていますか?
たとえば、「見張り員がレーダー員に連絡しなかった」を例にとります。
これを災害の原因と考えた時点で、「連絡しなかった」というのは「結果」になるのです。「連絡しなかった」原因はなにか。それは「漁船がよけるから大丈夫と思った」となるのです。「よけるから大丈夫と思った」の原因はなにか。それは、「今まで、漁船の方が回避していたから」という様に、出来事の発端を探していく必要があるのです。
原因究明には「なぜ。なぜ。なぜ。を3回以上繰り返せ」という事を聞いたことがあると思います。
なぜ繰り返す必要があるかというと、「連絡しなかった」事が原因だから、再発防止のために「必ず連絡せよ」と指示しても、見張り員が「漁船はよけてくれるから」と考えていたら、その指示は徹底されないでしょう。
つまり、作業指示やルールは、それを実行する者が納得し必要性を理解して初めて行動を起こすのです。
しかし、必要性を理解したからと言っても、必ずしも実行するとは限りません。
なぜなら、実態として成功する経験が多いのです。毎回、航海で事故が起こっていたら,
見張り員も目を皿のようにして、見渡し、小さなことでも全て連絡するでしょう。しかし、ほとんどの場合、無事、航海を終えているのです。その成功を積み重ねていくにしたがって、見張りの必要性・重要性を頭では理解しても、数多くの成功経験があると、薄れてしまうのです。いわゆる「平和ボケ」です。

石破防衛相があたごの航海長に会ったとか会わなかったとか、答弁が修正・撤回を繰り返しているような報道が出ているのを見ると、原因究明はどこまで進んでいるのか?その原因究明にも信憑性がありません。
民間企業ならそんな悠長なことを言ってられません。
事故の原因を特定して、対策するまでは生産活動も止まってしまいます。
事故の原因を特定しても、隠れている原因はないか、そして、その対策内容を関係者全員が理解し、再発防止策を確実に実行されているか確認し、安全な作業をしてください。
リスクアセスメントを実施し、リスク低減をしたとしても、評価モレや、想定外の災害が出てくるかもしれません。
大切なことは、あらゆる角度から原因を特定し、対策し、作業者に納得させることです。
「失敗は成功の母」です。失敗から『安全』を学び、安全水準を向上させていきましょう。
                      ご安全に

2008.2.23  (頼りないイージス艦)
 今週は、大きなヒヤリハットと大きな災害がありました
 ヒヤリハットというのは16日に発生した日航機の無断滑走です。446人乗りのJAL機が管制官の許可を得ず、離陸滑走したのです。前方には126人乗りのJAL機が停止しており、最悪の場合、500人を超える乗客が被害にあうところでした。すぐに対応して、事なきを得たのですが、大きな課題が残りました。問題を起こしたJAL機は防氷液を使用しており、除雪作業が長引き、効果が切れることを心配し、「早く離陸しなければ。早く指示を出せ。」と思っていました。その時「離陸」という言葉に反応し、確認を怠って滑走を始めてしまいました。指示が出ると思いこんでいると、違う言葉でもそのように聞こえるものです。
 その状況から「インターフェース」の課題があると感じました。今まで、復唱することで安全を確保していましたが、やはり、目と耳の両方が必要だと感じます。管制官の指示はスピーカーからの音声とディスプレーの画面の両方でできないものでしょうか?
技術的には可能だと思うのですが、どうなのでしょう?

 さて、もう一つはイージス艦の事故です。
 この報道を見て、夜中に小型のモーターボートに爆薬を積んで、ライトを消して、イージス艦に向かって突進すれば、誰でも簡単に沈没させることができると考えたのは私だけでしょうか?
 とても1400億円かけたものとは思えない、頼りない護衛艦です。
 報道の中に「漁船とのすれ違いが発生する付近で自動操舵をしているのは問題だ」という報道がありました。今は、市販の自動車でも、前を走行する車がブレーキをかけ、追突のおそれがある場合はブレーキをかける機能があります。今の技術なら、前方の漁船などの位置・進行方向・スピードを認知し、何秒後に追突の可能性があるか、瞬時に計算できるはずです。追突を避けるために最適の進路をコンピューターで判断して操舵することも可能だと考えます。危険な場所こそ、コンピューターによる自動操舵が必要なのではないでしょうか、
 今回、たった1隻の漁船も避けることができなかったのです。人間に頼るだけでは安全は確保できない。と考えるべきです。
「あたご」は全長165メートル、重量7750トンもあるのです。
「大きいから止まりません。大きいから曲がれません」では、漁師はたまったものではありません。大きな物こそ、大きな責任が課せられなければなりません。
 運悪く衝突したのではないはずです。この事故の影には多くの漁船が命がけで回避操舵をしていたに違いありません。
 昭和63年の潜水艦「なだしお」の衝突事故で30人の方が亡くなりました。
 20年たっても何も変わっていないことがとても残念です。
                      ご安全に

2008.2.16  (一酸化炭素中毒)
 2月6日に群馬県で防火水槽の設置工事中に親子が同時に一酸化炭素中毒で死亡する事故がありました。縦横が5m、5mで深さが3メートルの防火水槽をコンクリートで作り、乾燥のために練炭を使用しました。、
 中に入ったのは59歳の社長です。中の換気が十分できていない状態で入ったため、一酸化炭素中毒で倒れました。そばにいたのは社長の息子で33歳の専務でした。おそらく、タラップから転落したような音を聞いたのでしょう。慌てて中に入り、息子も一酸化炭素中毒で倒れ、2人とも死亡しました。
 社長が死亡した原因は、換気不足と一酸化炭素濃度の測定ができておらず、安易に中に入ったためです。息子の専務が死亡した原因は社長と同じですが、さらに呼吸用保護具を使用せずに救助に向かったことが原因です。一度に二人を失った家族のショックは大きいでしょう。
 酸素欠乏等の災害にはこのような救出に向かって命を落とすことが多いのが特徴的です。
 誰しも、目の前で人が倒れると、反射的に助けに行くものです。冷静になって、状況を把握し、呼吸用保護具を着用して救出に向かうのは、なかなかできない。しかも自分の親ですから、冷静になることはできないかもしれません。
 私は、大阪の建設業災害防止協会で酸欠等作業主任者技能講習の講師をしています。そのため酸欠等の事故にはとても関心が高い。
 練炭を使わなければ、事故は起こらなかったでしょう。しかし、納期等によって使わざる得ない状況もでてきます。
 十分換気して、酸素濃度、一酸化炭素濃度を測定してから中に入らなければなりません。そして、安全帯などの墜落防止措置をしてから徐々に入らなければなりません。
 その手順は作業前に打ち合わせするでしょうが、救出方法の打ち合わせはしているでしょうか?
 今回の防火水槽のマンホールは直径が65センチしかありません。被災者を救出に行っても、ぐったりしている被災者を搬出することは困難です。緊急時には呼吸用保護具を使用しても普通の呼吸用保護具の使用時間は短いものです。短時間で狭いマンホールからの救出ができるでしょうか?
 救出作業には作業者の連携が欠かせません。下に入る人と上から引っ張る人が要ります。
 作業者のほとんどは緊急事態に直面した経験がないはずです。救出の知識があるというだけでは、なかなか救出できるものではありません。そのため、救出訓練が必要になります。
 特に建設業では現場ごとに形状が異なります。救出のための道具も現場によって異なります。搬送のための担架の種類も、ロープの長さも、呼吸用保護具の空気ボンベの大きさも変わってきます。
 酸欠等の災害の特徴は、被災者の死亡の割合が高いことがあります。
 始業前のミーティングでKY(危険予知)だけに終わらずに、救出の訓練をやってください。
                      ご安全に

2008.2.8  (バックカントリー)
 日曜にテレビでバックカントリーが人気だというので、「バックカントリー」とは何だ?と思って、その番組を見ました。バックカントリーとは、整備、管理されたゲレンデを滑るのではなく、本来の姿である「雪山」で遊ぶことなのです。地形を読み、雪を読み、「リスク」と向き合い、そして自然の恩恵を感じて「雪山」を楽しむといった、究極の遊びがバックカントリーなのです。しかし、そこには、楽しさとは裏腹に「リスク」も存在します。
 その番組では、リフトで登ったあと、板を担いで、山頂まで登り、新雪の中を滑り下りる場面が流れていました。
 その翌日、広島の恐羅漢(おそらかん)でスノーボードをしていた7人が行方不明になりました。幸い無事救助できましたが、2日間も氷点下の山の中で孤立していました。捜索の方も家族も大変な2日間でした。スキーヤー達は気持ちがいいのだろうが、本当に危険が多い。
 今回のように道に迷うという危険もあるし、雪崩に遭うこともあるし、樹木に激突することもあるし、谷に落ちることもあるでしょう。
 バックカントリーは止めて欲しい。でも、「止めろ」「危険だ」と言われるとやりたいものでしょうね。
 そこで、バックカントリーの安全対策をまとめてみました。
@引き返す勇気を持ってほしい。
天候の不調を感じたら、引き返してください。わざわざ行ったのにそれを中断して帰ることは難しいことかもしれません。でもそれを決断して引き返して下さい。
A装備品を揃えましょう。
バックカントリーではゲレンデと違い、コースは整備・管理されていません。予期しないことが発生します。
まず、今回あったような遭難ですが、これを防ぐためには、現在地の把握と連絡手段を持つことです。位置を知るためには、地図、コンパス、高度計、GPSが必要でしょう。連絡手段として、携帯電話がありますが、圏外の可能性もあります。トランシーバーなどがいいでしょう。
次に雪崩対策です。雪崩の余地は困難です。発生に気づいたとしても、逃げることは困難です。雪に埋もれると、一人では脱出できません。完全に埋もれると探し出すことは不可能です。その時役立つのは「ビーコン」です。ビーコンは常に信号を出していますから、自分の位置を捜査者に知らせることができます。運よく仲間が助かったら自分を探してもらえます。でも、雪の中を手探りで探すのは困難です。その時役に立つのが「ブローブ」です。これは長い棒で、雪に突き刺しながら人を探します。折りたたみ式なのでそれほど邪魔にはなりません。上手く見つかっても、雪から人間を掘り出すのは素手では無理です。窒息の危険があるので一刻も早く救出しなければなりません。その時に必要なのがシャベル・スコップです。携帯タイプのものを用意しましょう
その他には、夜間でも見えるようにライト。夜を明かすためのテント。暖をとるためのライター。非常食などが必要です。
B安全保護具
頭を強く打って、意識を失うようなことがあれば、凍死するかもしれません。ヘルメットは着用しましょう。怪我をしても簡単には救援隊はなかなか来ません。怪我をしないようにヘルメットだけではなく、肘・膝・肩のプロテクターを付けて欲しいですね
C救援グッズ
仲間が怪我をしたら地上まで運ばなければなりません。また、崖の下に助けに行く状況も出てくるでしょう。
ロープを用意した方がいいでしょう。ロープがあれば、けが人を引っ張って運ぶことができるし、足を骨折したときでも、板に足を固定することもできます。
D忘れてはいけないのが教育です。
雪山の知識、雪崩の知識や救急救命法も勉強してください。
E最後に、「過信しないでください」。誰にも家族があるのです。家族に心配をかけているのです。自分の知識と能力を評価し、リスクの大きさを比べてください。
経験を積むと「安全」になるのではありません。たまたま無事に帰れただけです。自然の力は巨大なのです。
                      ご安全に

2008.2.1  (メタミドホスから自分を守ろう)
 中国の餃子にメタミドホスという農薬の混入があり、それを食べた人が「有機リン中毒」になったと発表されました。まだ原因は発表されていないが、農薬が付いた食材によるものか、製造過程で誤混入したものか、意図的に入れた等が考えられます。
 昨年、日本国中を不安に落とした偽装事件とは問題の深刻さが異なります。幸い、中毒になった方も快方に向かっているが、今後大きな問題になるに違いありません。目に見えない恐怖は簡単には払拭されません。多くの方が「中国製」というだけで、その商品を買わなくなるでしょう。「不買運動」にも発展しかねない、日本と中国の国交にもかかわる大きな問題です。そのためには1日も早い原因の特定が望まれます。
 しかし、原因が特定されても、この問題が完全になくなるものではありません。物事には必ずリスクがあるのです。そのリスクを軽減するのが信頼性です。「原料も加工も日本国内だから安心」「この商品は生産者の顔写真が出ているから安心」と考えるようになるでしょう。今までの、「安くて美味しい」から、「高くても安心」の方を選ぶようになるでしょう。
 「安心と安全」は無料ではありません。「安心・安全」にはコストをかける必要があるのです。
 労働の現場だけではなく、自分の身は自分で守らなければならないのです。
 この機会に食べ方にも工夫しましょう。
 1つは、食材に感謝をし、ゆっくり味わって食べましょう。
 ゆっくり味わって食べると食品の異常に気がつきやすくなります。
 ゆっくり味わうとは、良く噛むことです。良く噛めば、脳への刺激も増え、頭が良くなります。そしてゆっくり味わうと、早く満腹感を感じるので、食べる量が少なくてすみます。
 2つ目は、多くの種類を食べましょう。同じものをたくさん食べるのではなく、多くの種類を食べるのです。そうすれば、栄養バランスがよくなり、万一、有害な物質があったとしても、摂取量を少なくすることができます。
 3つ目は、昔から言うように「腹八分目」。お腹一杯食べることは健康に悪いのです。食べる量が少なければ、万一、有害な物質があったとしても、摂取量は少なくなります。

 この3つを心がけてください。
 万一、毒物が入っていても、異常を感じやすくなります。そして、脳にも良く、健康にもいいです。
これらの実践で、自分を守り、メタボリックシンドロームから抜け、生活習慣病の改善にもなります。そして、食べる量が減ると、当然、財布に優しく、高い物を購入しても食費の増大にはつながらないでしょう。
                      ご安全に

2008.1.26  (瞼(まぶた)の開閉検知)
 昨年2月、乗員乗客27人が死傷したスキーバス事故で、「あずみ野観光バス」の社長と専務の有罪判決がありました。事故を起こした運転手は業務上過失致死傷罪で有罪判決となり、その
会社の社長と専務も有罪判決が下されました。事故の原因は運転手の居眠り運転であるが、交代運転手も用意せず、休みもなく、連日、過酷な運行を命じた会社に責任があると認められたのです。
 事故の要因には運転手・バス会社だけでなく、長距離夜行バスの価格競争もあるだろう。そんな報道がある中、トヨタ自動車が素晴らしい安全システムを開発しました。
 運転手を写すカメラが、瞼の開閉状態を感知し、一定時間、目を閉じた状態が続くと、ブザーやブレーキで警告を発するものです。トヨタ自動車はすでに、脇見運転防止のために運転手が正面を向いていない時間を計測し、警告を発するシステムを発売しているが、今回のシステムは、さらに進化しています。
 瞼の位置をコンピューターが解析し、瞼が閉じている時間を計測し、警告を発するのだから
すごい技術です。
 自動車業界はコンピューターを駆使して、あらゆる安全化を図っています。
 昨年は飲酒運転が大きな問題となったが、息を吹きかけて、アルコールチェックをしないとエンジンがかからないシステムもすでに完成しています。
 技術は素晴らしいのだが、それらは一部の高級車しか採用されていないのです。
 バスやタクシーなどお客様を乗せて走る車に導入していただきたいと思います。
 このシステムがあれば、あずみ野観光バスの災害は防げたかもしれません。
 過去の災害を真摯に受け止め、再発防止を図っていく。これこそ「失敗は成功の母」だと思います。
 私は考えました。この技術は労働安全の方にも使えないだろうか?
 いろいろ考えたが応用するものが思いつきません。なぜなら、災害防止の基本は「人」と「機械」の分離なのです。「人はミスを犯すもの」「機械は誤動作をするもの」として考えていますので、災害をなくすためには、完全に分離するのが最善と考えられているからです。
そんな事を考えているときに、「トヨタ自動車の瞼開閉監視システムは国会議事堂に置くべきだ・・・・」という天の声が聞こえてきました。
 なるほど、安全教育など教育の現場では効果があります。
 講習会場などにつけて欲しいですね。
                             ご安全に

2008.1.19  (再生紙偽装)
 年賀状の再生紙はがき偽装問題が大きくクローズアップされています。
 今年来た年賀状を見ると、かなり多くの方が再生紙はがきの年賀状を送っていただきました。環境保全意識が浸透している証拠だと感じます。
 しかし、その再生紙はがきは偽装だったと多くの製紙メーカーが認めました。とても残念なことです。
 昔(再生紙のコピー用紙が注目され始めたころ)、私が企業の総務で勤務していたとき、コピー用紙をどうするかで悩んだことがあります。環境保全のために再生紙コピー用紙を購入するか、普通の(古紙が含有されていない)コピー用紙を購入するかです。価格は普通紙の方が安い。そのころ私の勤務する会社では経費削減に力を入れていました。でも、高くても地球環境にやさしい再生紙を選びました。(再生紙は印刷のインクを洗浄する工程を何回も行うため製紙コストが高い)
 今では、再生紙と普通紙では価格も白さの違いもあまり感じません。印刷のインクを洗浄して白くする技術が進んだものだと思っていました。
 しかし、実際には、古紙の含有量を少なくして、白い紙に仕上げていたことが明らかになりました。とても残念です。
 グリーン購入法(国等における環境物品等の調達の推進等に係る法律:2000年5月制定)では事業者および国民の責務として「できる限り環境物品を選択するよう努めるものとする」となっています。事業者も国民も騙されていました。
 古紙再生紙は地球環境保全になると言われています。
 でも、そうとばかりは言えません。
 それは、紙の繊維についたインクを洗い落とすのですから膨大な行程を経ているからです。古紙を溶かして、薬剤を混ぜて、インクを取り除きます。最初の工程で出る廃液はインクで真黒になります。次の工程でさらに洗浄していきます。この時に発生する廃液もかなり黒いです。何回も洗浄工程を繰り返し、白くしていくのです。そうすれば、工程が長くなります。当然、その工程を動かすために電力エネルギーを使用します。また、インクで汚れた廃液の処理にも膨大な電力エネルギーを使います。したがって、原料となるパルプの使用量は減りますが、膨大なエネルギーを使用するのも事実です。
 真っ白な紙は見栄えが良いと思われます。しかし、真っ白な紙には膨大なエネルギーが使われており、多くの二酸化炭素が発生しているのです。
 少しぐらい色がくすんでいてもいいではないですか、自分の会社で使用している紙が他の会社で使用している紙より黒い場合は、「自分の会社の方が、あの会社より、地球にやさしい」と思ってください。
 でも、それより、紙を使用しないことが一番大切です。
 過剰包装をやめたり、プリントアウトを減らしたり、両面コピーを使ったり、いろんな方法で紙を使用しないことを心がけましょう。
 ハンバーガーショップでハンバーガー購入したとき、「紙ナプキンは要りません」と言って、自分で自分を褒める。そんな人が増えてくると良いと思います。
                             ご安全に

2008.1.12  (飲酒運転事故の判決)
 2006年8月に福岡で発生した飲酒運転事故の判決がありました。この事故では幼い3人が犠牲になったということで、これを機会に飲酒運転の撲滅意識を高まったといっていい事故でした。
今回の判決では「危険運転致死傷罪(最高刑懲役20年)」が成立するかというところに注目が集まりました。しかし、「危険運転致死傷罪」は成立しませんでした。多くの人が「この判決はおかしいのではないか?」と思ったでしょう。
 この危険運転致死傷罪の認定基準は「正常な運転が困難な状態であったかどうか」が論点になります。判決文を見ると、飲酒運転を始めて、事故が起こるまでは正常な運転ができていた。だから、「正常な運転が困難な状態」とは認められない。というものでした。
 なら、「正常な運転が困難な状態」とはどんな状態だろうか。
 たとえば、運転中にガードレールに接触するとか、何かに衝突したあとも運転を継続した。などが
正常な運転が困難な状態となるのだろうか?
 そんな基準は何か間違っている。ガードレールなら誰も怪我をしないだろうが、人間だったら大きな災害になる。「正常な運転が困難な状態」とは運転の状況ではなく、飲酒をしたかどうか。が、論点にならなければならない。
 事故の原因は何かというと、「脇見運転」が直接の原因と判断されたのです。
 これを、「事故の原因は飲酒」とならなければならない。
 今後の法改善を望みます。でも、一番望むのは「飲酒運転の絶滅」です。

 話は変わりますが、今週は、とても大きな事故が発生しました。北九州で発生した酸欠で3人が亡くなったというものです。直接の原因は発電機の不完全燃焼による一酸化炭素中毒です。
 でも、一番重要な原因は発電機を持ち込んだことではないだろうか?
 今回のような横穴で発電機を使用すること自体が間違っている。
 工事計画の甘さが重大事故になりました。
 工事計画は「安全最優先」で作成してください。
                       ご安全に

2008.1.5  (安全装置)
 正月の恒例イベントに箱根駅伝があります。急勾配の箱根山を登るなど過酷なトップ争い、来年のシード権を取るためのデッドヒート。どの選手も母校の名誉を守り、自分への挑戦を続ける姿には感動します。
 なんといっても、すごいのは東海大学の佐藤悠基選手がダントツでした。1年の時、第3区で区間新記録、2年の時は第1区でも区間新記録、3年になった今年は第7区でも区間新記録でした。たった10個しかないのに、その中の3区間を一人で独占しています。佐藤悠基選手には北京オリンピックへの期待も高まります。そして来年には4つ目の区間新記録を塗り替えて欲しいと思います。
 とってもいい駅伝大会でした。
 しかし、今年は過去にないほどの棄権がありました。その中に脱水症状による痙攣がありました。症状は熱中症と同じです。熱中症というと夏の暑い時に起こるものと思いがちであるが、真冬に、ランパン・ランシャツの薄着でも発生しうるというのを改めて感じました。
 ランナーの体温は40度ぐらいまで上昇すると言われています。40度と言えば、風邪を引いたときに、うんうん唸るぐらいの高温です。その上昇する体温を下げるために大量の汗をかく、それと同時にミネラル(塩分)を放出します。そのため、脱水とミネラル不足になります。
 考えてみれば、人間の身体には、生命を守る、いろいろな安全装置があるものです。
 このように脱水とミネラル欠乏があれば、走りたくても、筋肉を痙攣させ、強制的に走れなくしてしまう。まさに生命を守るための安全装置といえるでしょう。
 他にも安全装置はあります。冬山で遭難したときにも、同じように生命を守るための安全装置が働きます。血液循環が悪くなったとき、脳への血流が低下すると大変危険です。そのため、手・足への血流を止めてでも、脳への血液循環を確保しようとします。その結果、手・足には壊死をおこすような凍傷になっても脳を守ろうとします。
 安全装置はどこにもあります。目の眼球を守る瞼や、目に汗が流れないようにする眉毛もそうです。眉毛を剃っている人もいますよね。あれは、目に汗が流れないようにする安全装置を「無効化」した行為です。安全装置の「無効化」は良くないですね。でも、眉毛は剃っても、代わりに、まつ毛を増やしたり、長くしたりしています。結果的に代用の安全装置をつけているようなものなのかもしれませんね。
 人間の身体には他にもたくさんの安全装置がありますので、皆さんで考えてみてください。
 人間の身体にはたくさんの安全装置がありますが、作業現場などでの外部エネルギーに対しては十分ではありません。
 墜落から身を守る「安全帯」、目を守る「保護眼鏡」、プレス災害から手を守るインターロック式ガードなど様々な安全装置が必要となります。労働安全衛生法・労働安全衛生規則などで定められていますが、法を守るだけでは不十分です。なぜなら、法はすべての作業を網羅できないからです。
 法で定められない部分はどうするか?
 そこでリスクアセスメントの活用が重要になります。
 リスクアセスメントをして、その結果に基づいて、リスク低減措置を図る。これが重要になります。

今年の年間標語
「リスクの発見 すばやい対処 みんなで築こう無災害」
このリスクアセスメントの実施およびリスク低減。今年はこれを推進していきましょう。
                        ご安全に

2008.1.1  (明けましておめでとうございます)
 明けまして おめでとうございます。
 この「安全週記」を始めて、1年4か月経過しました。
 多くの方に見ていただき、ありがとうございます。
 先月のアクセス数は1年前の5倍に増えました。
 本当にありがとうございます。
 本年も頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします。
 さて、今回は初心に戻って、整理整頓についてです。
 皆さんの身の回りでは整理整頓ができていますか?
 私の事務所では安全衛生の書類や雑誌がどんどん増えています。皆さんもそうでしょうね?
 書類が多いので、書類はスキャナーで読み取って、電子データに変換(PDFファイルに変換して、アクロバットで閲覧します)するようにし、書類は破棄するようにしています。電子データにすると書類が減ってずいぶんすっきりします。
 でも、作業性が悪いことがあります。
 たとえば、パソコンでワード文章を作成しているとき、ワードを開いたり、スキャナーで読み込んだデータを開いたり、ネットを開いたり、画面をコロコロ入れ換えるのが面倒だと思ったことはないでしょうか?
 画面を換えるより、紙で見ながらパソコンする方が入力しやすい。
 だから、紙の資料・書籍は必要になってくる。
 それでは中々書類等が減らない。
 また、ネットでデータをコピーして、ワードに貼り付ける時など、ネットを開けて、必要なところをコピーして、ワードを開けたり面倒ですよね。
 そこで、私のパソコンはマルチディスプレーにしました。液晶ディスプレーを2つにしたのです。1台をワード作成などのワーク専用画面にし、1台をネットやPDFファイルの閲覧用にしました。こうすれば、作成中のワード画面はそのままで、資料をみたり、資料からデータをコピーして、そのままワードに貼り付けることができます。これで、作業性は向上しますし、書類も処分できます。
 さらに、もう1台ディスプレーを増設したら、メール専用にして、いつでもメールの確認ができる。でも、私の机は2台の液晶で一杯です。
 みなさんもマルチディスプレーにしてはいかがですか?
 快適ですよ。
 整頓とは「使いやすくする」ことなのです。
 「ムリ・ムダ・ムラをなくせ」と言います。
 でも、忘れてならないことは、職場環境・作業改善を考えるときの中心は『人間』であるべきです。
 私はこの1年、『人間=作業者』の側から安全衛生を考えていきたい。
 最後に、
 皆様の健康とご多幸をお祈りいたします。
 私と一緒に、人にやさしい職場環境・作業安全を考えていきましょう。
                        ご安全に
安全週記
バックナンバー 2007年
2006年

一週間を振り返る

毎週土曜日更新