2015年12月26日(3・3・3運動)
 今年の流行語にトリプルスリーがありました。プロ野球で、30ホームラ
ン、打率3割、盗塁30を記録した選手をいいます。プロ野球の歴史の中で
10人しか記録していないものですが、今年は2人が達成したということで
注目が集まりました。
 私の家の近くでドラッグストアーの建設が始まり、その看板に「333運
動」と書かれていました。これこそ、産業安全のトリプルスリーですね。

 この333運動は、玉掛け作業で進められています。
 玉掛け作業において、その安全を確保するために大切なひとつが、バラ
ンスです。バランスがずれる(重心の判断を誤る)と、荷が振れて、人に
激突するかもしれません。何トンという重量物が意図しない方向に振れる
ので、それが人に激突すると大きなケガをします。場合によっては、挟ま
れて死亡することもあります。
 333運動では、吊荷を地面から30cm上げた箇所で、吊荷から3m離れた場
所で、3秒間静止状態を確認します。つまり、地切りした状態で静止させ、
吊荷の安定性を保持するという行為です。
 これを、玉掛け作業の「3・3・3運動」と呼んでいます。

                           
ご安全に!

2015年12月19日(膀胱がん)
 18日の報道に気になる記事がありました。(朝日新聞記事引用)

  厚生労働省は18日、染料や顔料のもとを製造する事業場で5人が膀
 胱(ぼうこう)がんを発症したと発表した。発がん性がある「オルト―
 トルイジン」を含む複数の化学物質を扱っていた事業場で、働いていた
 約40人のうち40~50代の男性4人と退職した1人が、昨年から今年にかけ
 相次いで膀胱がんを発症した。国は原因の特定を急ぎつつ、業界団体に
 防止対策をとるよう要請した。
  厚労省は事業場名を公表していない。関係者によると、がんを発症し
 たのは、化学製品をつくる企業の北陸地方の工場の従業員だ。
  厚労省によると、現職でがんを発症した人の就労歴は18~24年。退職
 した40代の男性1人も発症し、事業場が今月3日に労働局に報告した。死
 亡者はいない。
  発症者はオルト―トルイジンをはじめ「芳香族アミン」に分類される
 五つの化学物質を反応させたり、生成物を乾かしたりする作業をしてい
 た。オルト―トルイジンはもともと発がん性を指摘されていた物質のた
 め、事業者は、物質を密閉状態で扱うなどして空気中の濃度が有害にな
 らないようにするよう求められている。同社の担当者は取材に対し、
 「製造は続けているが、マスクで防護をしている」と話した。以上

 就労者40人のうち、5人が発症したというのは、異常です。
 よく似た名前として、特定化学物質の第一類物質に「オルト-トリジン」
がありますが、これとは違う物質です。
 日本産業衛生学会が公表している許容濃度(曝露限界値)は1ppmです。
どのようなマスクを使用しているのか判りませんが、マスクだけで製造を
継続してい点が気になります。まさか、「5人はマスクをしなかったから
発症した。マスクを付ければ安全」と説明しているのではないだろうか?
 来年6月から化学物質のリスクアセスメントが義務化されます。今回問
題となっているオルト-トルイジンも対象物質ですが、法の義務化は評価
だけにとどまり、改善は努力義務でしかありません。リスクアセスメント
の結果、重大なリスクがあると評価されても、改善への強制力はありませ
ん。
 参考:厚生労働省 
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000107468.html

                          
ご安全に!

2015年12月12日(ドローン)
 無人航空機(ドローン)の規制が12月10日から始まりました。
 詳細は、下記、国土交通省のHPをご確認ください。
 http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html
 ドローンの活用方法としては、人が容易に近付けないような場所をカメ
ラで調査・点検することもできます。足場を組み立てる必要もなく、高所
作業も無くせます。
 また、農薬散布も可能です。カメラを付けて、その画像を見ながら操縦
し、農薬散布すると、作業者が農薬を吸引することも防げます。
 今後、さらに用途が広がるでしょう。
 一番期待したいのが、救急ドローンです。
 これは、電話を受けたら、その発信元までAEDを搭載したドローンが
GPSの位置情報を元に飛んでいきます。時速100Kmで飛ぶと、発信元
が12kmまでは1分でAEDを届けることができます。これが実用レベル
になって、全国への配備が進むと救命率は格段に向上することでしょう。
 参考URL
 http://gigazine.net/news/20141105-ambulance-drone/
 ドローンは、墜落による事故などのデメリットもありますが、操縦信号
が途絶えた場合には、自動的に元の場所に戻るようなソフトを組み込むと
操縦不能による墜落事故は減ります。
 ドローンが危険な作業や有害な作業、さらに業務効率を上げたり、自然
災害から人を守ることにつながることを期待しています。

                        
  ご安全に!

2015年12月5日(ストレスチェック)
 法改正により12月1日からストレスチェックの実施義務になりました。
 調査表をご覧になった方は何を感じたでしょうか?
 ストレスの測定は、健康診断の血液検査等と異なり、数値で明確になら
ないという課題があります。ストレスチェックの質問に対して、正直にあ
りのまま答えるのは少し難しいと感じます。
 この質問にこう答えると、「ストレスが強いと判定されないか?」と感
じた場合、自分の状態と異なる答えを書く可能性があります。回答を意図
的に操作すると、ストレス判定が狂います。会社が実施するものだから、
「産業医から呼び出しがこないか?」「面倒なことにならないか?」と考
える可能性は高いと言えます。
 そういう意図的に回答しないように、「本人だけが結果を知る、セルフ
チェック」ということを周知しなければなりません。
 また、ストレス対策として、義務化されたストレスチェックに注目が集
まっているようですが、4つのケアを忘れてはなりません。
 ①セルフケア(自分自身でコントロールする)
 ②ラインケア(部下の状況を観察して、必要に応じて対応する)
 ③スタッフケア(人事・健康管理部署が対応する)
 ④事業場外ケア(外部の専門家を利用する
 2番目にあるラインケアはストレスチェックが始まっても重要なことに
は違いません。朝、職場の朝礼等で顔色を見て、声を掛けたり、仕事中に
行動を注意して観察することも重要です。しかし、ライン長(職長・監督
者等)がストレスに関する教育を受けていなければ、異常の芽を発見する
ことはできません。ストレスチェックも重要ですが、ラインケアするため
の管理・監督者への教育も合わせて進めてください。
 また、定期健康診断は1年に1回行います。ストレスチェックも1年に1回
以上です。健康診断は主に生活習慣ですから、1年に1回行えばいいのです
が、ストレスは強くなったり、弱くなったりして一定ではありません。1
年に1回すれば十分というものではないのです。だから、ラインケアで日
々チェックしていくことが重要なのです。

                        
  ご安全に!

2015年11月28日(ボンベの色)
 私が講演の際に、ヒューマンエラーの例として、2008年に発生した、福
岡県八女総合病院での酸素と二酸化炭素を間違えて、二酸化炭素を患者に
吸引させて死亡させた事故を説明しています。ご承知の通り、酸素ボンベ
は黒色、二酸化炭素ボンベは緑色とJISで決まっており、その知識さえ
あれば、間違うことはありません。看護師は、色の決まりを知らず、ボン
ベに付いていた「○○酸素」という会社の荷札を見て、酸素と判断してし
まいました。ボンベの横には大きく「液化炭酸ガス」と記載していたので
すが、荷札の方を見てしまったのです。この事故は患者の危篤状態という
慌てさせる要因もあったのですが、色の知識さえ理解していれば間違えな
かったと考えられます。
 二酸化炭素はアーク溶接などでも使用するので、医療職でなくても多く
の方が理解されていると思います。先日、ボーイング機に乗る機会があり
ました。私の席は一番後ろでした。私の後ろにあるのは緑色の酸素ボンベ
です。救急医療のためのボンベが二酸化炭素のはずは無く、とても驚きま
した。一応、CAの方に聞いても「酸素ボンベですよ」と当たり前のよう
に答えてくれました。「いやいや、居酒屋に行くことがあれば、ビールサ
ーバーのところを見てください。必ず、緑色の二酸化炭素ボンベがありま
すよ。緑は二酸化炭素を表す色ですよ」と、返しました。
 納得がいかないので、調べてみると、黒が酸素というのは日本だけらし
いです。こんなサイトがありました
 http://daitoh-mg.jp/2013/11/world-gas-cylinder-colorhtml.html
 カナダは赤色が酸素です。日本では水素ですから怖いですね。しかし、
ボンバルディア機はカナダですが、酸素ボンベは緑色でした。
 世界共通にしてほしいのですが、日本に合わせてくれれば問題ありませ
んが、今さら色を変えると混乱して、返って危険を感じるので、現状がよ
いのでしょう。
 ちなみに私が飛行機に乗る時はいつも一番後ろの席を予約します。一番
後ろの席は乗る時も面倒ですし、降りる時も一番最後になってしまい面倒
です。一番後ろの席に座る理由は、1985年の日航ジャンボ機墜落事故で、
奇跡的に助かった人は全て後ろの席だったからです。

                          ご安全に!

2015年11月21日(エアセクション)
 11月16日、神戸市でJRの架線切れが発生し、不通になりました。私も
影響を受けてタクシーでなんとか客先訪問の時間に間に合いました。
 架線切れの原因は、エアセクションと呼ばれる電圧の切り替え地点の停
車禁止区域で停車し、発進の際に過電流が流れたことでした。
 同様のトラブルは今年8月4日にJR京浜東北線で発生したばかりです。
(以前にも2006年、2007年にも発生しています)
 下記は、2007年に発生した際の対策について
 http://www.jreast.co.jp/press/2007_1/20070609.pdf
 エアセクションは大きな表示がされており、必ず視界に入ります。しか
し、人間の視界は広い(左右は約180度見えます)のですが、全てを認識
できませんので、視界に入っていても見えていない(認識していない)も
のです。したがって、トラブルの原因を“運転手の見落とし”と判断し、
再教育しても、再発防止としては不完全です。再発防止としては、エアセ
クションの近くで速度を落としたら、警報を発する仕組みが必要です。
 電車の無人走行(自動列車運転装置:ATO)は確立しており、すでに
実施区域もあります。技術的には可能なので、自動化を図る必要があると
感じます。


2015年11月21日(受動喫煙の裁判)
 (11月19日のニュースから引用)
   神奈川県横浜市の自動車教習所の男性職員が職場での受動喫煙によ
   って心臓病を再発したなどとして、スモークハラスメントいわゆる
   「スモハラ」を訴えていた裁判で、横浜地裁は19日、男性の訴え
   を退ける判決を言い渡した。
 以前、受動喫煙で訴えられたら、安全配慮義務違反で事業者側が負ける
という記事を書きましたが、今回の裁判では無罪になりました。この事業
所では四方を壁で囲った喫煙室を設けていたことが判断のポイントになっ
たと思われます。労働安全衛生法では受動喫煙防止は努力義務となってい
ますが、対策が不十分な場合は、裁判で負けてしまいます(安全配慮義務
違反)ご注意ください。
 厚生労働省では無料の相談窓口を設置しています。
      050-3537-0777

                  
        ご安全に!

2015年11月14日(テレビのドラマから)
 私が最近見ているドラマはMBSの「下町ロケット」とNHKの「あさ
が来た」です。とても気に入って毎回欠かさず見ています。
 「下町ロケット」では主人公の佃社長が経営機器を乗り越え、大企業で
ある帝国重工と特許をめぐる駆け引きが面白い。
 さて、先週の放送で、佃社長が帝国重工に行くシーンがありましたが、
その中で、「安全上の問題」を感じたところがありました。
 下記のURLは問題のシーンのスクリーンショットです。
  http://yahoo.jp/box/z_H9LU
 私が何が問題と感じたか判りますか?(答えは下の方です)
 
 「あさが来た」ではドラマの舞台が明治初期の九州の炭坑です。ドラマ
の中で鳥籠に入った小鳥がよく写ります。
 当時の炭坑では小鳥が必要だったのです。なぜかというと、炭坑では、
酸素欠乏の可能性があるからです。現代では酸素濃度計がありますが、当
時はありませんでした。酸素欠乏の状態は人間の五感では感じることがで
きません。異常と感じるのは身体に異変を感じた時です。異変を感じたら
逃げることさえ困難になります。小鳥のカナリヤは酸欠や空金の汚染に敏
感なので、カナリヤの動きに異常があったら、直ぐに逃げ出すためです。
 今は酸素濃度計があるので、カナリヤを使うことはありませんが、オウ
ム真理教の教団本部に捜査員が行く時にはカナリヤを連れて行ってました。
(どんなガスがあるか判らない場合には、測定器では感知できません)

 さて、下町ロケットの問題ですが、判りましたか?
 大きなステージがあり、周囲に柵が設けられています。ステージの高さ
は120cmぐらいだと思います。問題はそのステージの上にある脚立や作
業台(通称:立ち馬)です。脚立や作業台から落ちると、ステージの柵を
越えて転落する可能性があります。
 このようなステージなどで脚立を使う場合は、柵の付いた高所作業台な
どを使う必要があります。または、親綱を張って安全帯を装着する必要が
あると考えます。
 もう一つ、気になるのは、グレーチング(金網)の上に脚立の足が乗っ
ていることです。脚立の足の1本には狭い面積に重量がかかります。グレ
―チングを突き破るかもしれません
 また、柵には中さんがありますが、下さんが無いと考えた方もいるでし
ょう。消火器が無いと思った方もいるでしょう。

                          
ご安全に!

2015年11月7日(自動車の逆走)
 ニュース記事の引用です。
  11月6日深夜、千葉県東金市の有料道路で、大学生5人が乗った車が対
 向車線を逆走して乗用車と正面衝突する事故がありました。対向車を運
 転していた男性が死亡し、大学生5人もけがをしました。
  東金市西中の有料道路で、私立大学2年の男子学生(19)が運転する
 乗用車が、センターラインを越え、対向車線を逆走し、走ってきた乗用
 車に正面衝突しました。この事故で、対向車を運転していた千葉県の県
 立高校教諭・植草健児さん(54)が、全身を強く打ち、搬送先の病院
 で死亡が確認されました。男子学生と同乗していた男女あわせて5人も
 けがをしていて、このうち、後部座席に乗っていた19歳の女子学生が首
 の骨を折る重傷です。現場は片側一車線の道路でしたが、男子学生は
 「一方通行の同じ方向に行く車線だと思っていた」と話しているという
 ことで、警察は過失運転致死傷の疑いで捜査しています。

 どう感じましたか?
 最近、高齢者が高速道路の出口から侵入したり、PAエリアから逆に出
てしまうという逆走事故と少し違うようです。
 有料道路で対向車線がある場合は、ポールとか中央分離帯があると思っ
ていましたが、センターラインだけの道路もあるということですね。黄色
いラインでは車線変更禁止ラインか中央線のラインか判らないとも言えま
す。
 ある時、高架道路の出口を見て、隣の人に、「ここの出口は2車線ある
から、間違えて侵入してしまうかもしれないね」と話すと、「いやいや、
侵入禁止の看板があるからすぐに判るよ」と言われました。
 看板があるから大丈夫だというのは、間違いです。看板があっても侵入
を100%防ぐものではありません。
 
 今度、車に乗せてもらった時、制限速度表示の看板を通り過ぎた時に、
「ここの制限速度は何キロでしたか?」と聞いてみてください。答えられ
人は少ないと思います。視界に入ったことと認識することは全く別です。
“ここの道は通ってもいいのかな?”と考えた時には看板に気がつくでし
ょうが、多くの場合、認識されないものです。

                          
ご安全に!

2015年10月31日(労災隠し)
 茨木労働基準監督署管内で労災隠しがあり、書類送検されました。3社
5名が同時に書類送検されるという事案を紹介します。
 平成25年10月、マンション改修工事現場で3次下請けの従業員が右目打
撲(加療15日)しました。
 3次下請け会社は労災請求の手続きを行いましたが、1次下請けが元請へ
の報告を逃れるために、2次下請け会社と共謀して、3次下請けと被災者に
対し、1次下請会社が元請けとなっている別の現場で発生したように見せ
かける労災請求を指示しました。被災者は労災請求の内容と合わせるよう
に、労働基準監督署の調査に対して嘘の証言を行いました。そのため、3
次下請けの事業者・被災者、2次下請けの取締役、1次下請けの経営者・取
締役の5人が書類送検されるという事件になりました。
 詳細は
 
http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H27/syosyo/1029ibarakisho.pdf
 労災隠し(労災が発生したにも関わらず報告しない場合、労災発生状況
の嘘の報告を行うなど)は、災害防止のため、災害発生原因を把握し、再
発防止対策を進めることができなくなるために、厳しく取り締まっていま
す。
 今回の事例では、被災者が上司の指示により、嘘の証言をしたため、被
災者も書類送検になりました。
 3次下請けの被災者はおそらく自分が不安全行動をとったことによる災
害で責任を感じ、会社に迷惑を掛けないようにしなければならないと感じ
自ら嘘の証言をしたのでしょう。(パワハラがあった可能性もあります)
 最近、偽装事件が目につきます。どんなことがあっても嘘の証言・証拠
は許されません。嘘が明らかになった場合の損害はとても大きなものです。


2015年10月31日(宮崎の交通事故)
 10月29日に宮崎駅前で乗用車が歩道を暴走し、2名が死亡する事故があ
りました。暴走には3種類あると思います。
 ①殺意を持って歩行者を狙って暴走した
 ②運転中に意識を失った
 ③間違いでパニックになり、アクセルとブレーキを間違えた
 今回の場合は③だと思います。車道と思っていたところが歩道と判り、
慌ててブレーキを掛けようとしたが、アクセルを踏んでいたのでしょう。
ブレーキ(本当はアクセル)を踏んでも止まらないので、さらに強く踏み
込んだと思います。
 歩道を歩く時でもこのような災害に巻き込まれることがあるものです。
イヤホン聞きながら・スマホしながら歩いていると、周囲の異常を感じる
ことができなくなり、災害に巻き込まれる可能性が高くなります。「なが
ら歩行・走行」は本当に危険です。

                          
ご安全に!

2015年10月25日(IZANO)
 私のお気に入りのヘルメットは、DICプラスチック㈱のIZANOと
いう物です。「イザ」という時のために、備えておく防災用のヘルメット
ですが、墜落時保護用の国家検定を受けていますので、高所作業でも使え
るものです。最大の利点は、折りたためることです。
 http://www.dic-plas.co.jp/products/helmet/izano/index.html
 私は仕事で、いろいろな企業を訪問させていただいていますが、ヘルメ
ットは客様先で借りるのではなく、持って行った方がいい。しかし、ヘル
メットはかぶって電車に乗りにくいし、持っていくには邪魔になります。
これは折りたたんだ時の厚みが8cmほどになるので、鞄にも入ります。
価格は4500円ぐらいです。
 企業では地震対策として、ヘルメットを備え付けている場合もあります
が、このIZANOヘルメットは収納性に優れています。使う場合でも、
ワンタッチで使えます。1秒で組み立てられます。
 防災用にも使えるし、高所作業でも使えます。欠点としては、雨に弱い
という点です。組立て式のため、雨水が浸透する隙間があります。


                          
ご安全に!

2015年10月17日(偽)
 2007年を表す漢字は「偽」でした。この年は、食品表示偽装が次々と表
面化した年でした。
 「今年の漢字」は日本漢字能力検定協会が公募しています。応募は11月
1日から12月5日までということです。もしかしたら、免震ゴムや傾斜マン
ション問題で、もう一度「偽」になるのでしょうか?
 食品表示偽装が発覚し、多くの企業が信頼を失い、倒産した企業もあり
ました。偽装が表面化した際の影響の大きさは学んだはずなのですが、忘
れたのでしょうか? 「対岸の火事」と考えていたのでしょうか?
 傾斜マンション問題は、他の建物にも同様の問題があるかもしれないと
いうことで、調査が始まるようです。しかも、基礎部分の杭のことなので
補強する方法もなく、建て替えを考えているようですが、住民は長期の仮
住まいをしいられるので、この問題の終息は全く見えてきません。

 安全衛生の面でも、偽装は数多くあります。
 雇用調整助成金(休業して安全衛生教育をしたと嘘の申告をして、給付
金を受け取る)、労災隠し(労災が発生しても、届出を怠る。または、嘘
の労災届を提出する)があります。また、ある監督官に聞いた話ですが、
事業所立入の際に、技能講習修了証の提示を求めると、修了証のコピーを
提示されたが、名前の書体に違和感を感じて、原本の提示を求めたら、名
前を修正してコピーを取ったことが発覚したこともあったそうです。
 たとえば、機械設備の点検表にチェックが付けられているが、1か月分
まとめてチェックを付けていることがあるかもしれません。あなたが、そ
のような現場を見付けた時に、どのように対策するでしょうか? 「毎日
点検しなさい」と注意するだけでしょうか? 注意するだけでは、再発の
おそれがあります。なぜ、毎日点検ができなかったのか、その要因・背景
を検証して、再発防止しなければなりません。もしかしたら、点検の目的
を理解していなかったのかもしれません。点検の仕方を知らなかったのか
もしれません。点検を怠った時のリスクを認識していなかったかもしれま
せん。生産優先を押しつけて、点検の時間が取れなかったのかもしれませ
ん。
 点検は安全の基本です。作業前の点検で1日の作業が始まり、作業後の
点検で1日が終わります。

                          
ご安全に!

2015年10月10日(広島雑居ビル火災)
 10月8日夜、広島市の雑居ビルで火災が発生し、3名が死亡する事故があ
りました。このニュースを見て、2001年新宿歌舞伎町の雑居ビル火災で44
名が死亡した火災を思い出した方も多いでしょう。
 新宿歌舞伎町の雑居ビルの原因は確定していませんが、おそらく放火だ
と思われます。死亡した44人は全て一酸化炭素中毒によるもので、この事
故で一酸化炭素の危険性や雑居ビルの安全管理の重要性が大きくなりまし
た。歌舞伎町の火災ではビルオーナーら5人が有罪判決となり、事故の和
解金は10億円を超えると言われています。
 広島の火災の原因はまだ判りませんが、放火によるものだと感じます。
 広島の雑居ビルには過去4回、消防署から避難訓練未実施などの指導を
受けていました。
 原因が放火であれば、ビルオーナーの過失を問われないかもしれません
が、消防署の指導を改善せずに放置していたとなると、火元の責任はなく
ても、死亡事故に至った責任は免れないでしょう。
 火災の原因の第一位は放火です。第一位になっているから外部からの放
火は想定しなければなりません。
 放火を防ぐために何をしなければならないかは、難しいかもしれません。
そんな時は、放火犯になったつもりで、「どこに火をつければよいか」考
えながら、会社の周囲を見てください。それが見つかれば、そこから可燃
物を取り除いたり、防犯カメラや夜間照明を付けると効果があるでしょう。
また、吸い殻やゴミが落ちているところや落書きがあるところも要注意で
す。それらは「誰も見ていない場所」と思われます。
 放火を防ぐには
 ・可燃物を外に放置しないこと。
 ・防犯カメラの設置すること(外から見えやすいように設置)。
 ・ゴミや落書きの放置をしないこと。
 ・不安な場所には照明を設置すること。


2015年10月10日(運動会のピラミッド)
 運動会シーズン真っただ中ですが、ピラミッドが崩れて、児童が骨折な
ど重傷を負うケースがあり、段数を減らすなどが検討されているようです。
「危険だから止める」というのも対策ですが、正しく教えられているのか
心配です。例えば、両手を前の人の背中に乗せる時に、手の平は「ハ」の
字のように乗せるのか、逆「ハ」の字なのか、真っすぐなのか、指は広げ
るのか閉じるのか、手掌の位置、足の位置は細かく指導しているのか、崩
れる時、腕はどの位置にあるのが良いのか?
 私の時代には、1段組む毎に崩れる練習をした記憶があります。私は背
が低いので、いつも一番上でした。練習の時、崩れる時、下の人が肘を曲
げたままだったので、その肘は私の「みぞおち」を直撃したので、私は呼
吸ができなくなるほど苦しんだ記憶があります。
 児童は高く積み上げることしか考えないものです。手の位置、指の位置、
足の位置、姿勢、悪い姿勢とは、崩れる時の安全な体勢、崩れる原因を教
えているでしょうか?
 ピラミッドを組む前に一人一人の顔色を見て、健康チェックしているで
しょうか?
 崩れた時はなぜ崩れたか検証しているでしょうか?
 運動会も職場の安全も同じだと考えます。
                  
        ご安全に!

2015年10月3日(ルーティン)
 
「ルーティン」という言葉を最近耳にすることが多いと思いませんか。
 ラグビー日本代表の五郎丸選手(ヤマハ発動機ジュビロ所属)がキック
をする前に行う動作が話題となっています。
 五郎丸選手はフリーキックになると、ボールを空中に2回投げて、ボー
ルをセットし、3歩下がって、2歩左に動きます。そして、お尻を突き出す
ようなポーズで、両手の人差し指を合わせる行動をしてから、キックしま
す。この一連の動きをルーティンといいます。
 https://www.youtube.com/watch?v=Bk7ywlXgp5o
 ルーティンは五郎丸選手だけが行うものではありません。有名な選手で
は、大リーグのイチロー選手の前方に腕を伸ばして、バットを立てるなど
の動作。体操の内村選手は両手を前方に延ばして、上下にまっすぐ立てる
ような動作を行います。
 これらのルーティンは、プレーの前に決められた行動を行うことで、脳
と体がいつも通りということを感じて、集中力が高まったり、筋肉が良い
緊張状態になったりするのです。
 今、このルーティンを職場で活用できないものかと考えています。職場
にはミスを許されない操作(作業)が存在するものです。操作の前にルー
ティンを行うと、人間の信頼性は向上すると考えます。もし、何か重要な
作業があった場合は、考えてみてはいかがでしょうか。
 ちなみに、これに近いものとして「指差呼称」があります。しかし、指
差呼称は確認動作なので、ルーティンには入らないでしょう。


2015年10月3日(フォルクスワーゲン)
 フォルクスワーゲンの不正問題はご存じだと思います。この中で感心し
たことがあります。この不正問題は、排ガス測定の際には、クリーンな排
気で、通常走行は燃費等が優先され、排気は基準を満たしません。排ガス
測定の際は、道路走行ではなく、ローラーの上を走行して測定します。こ
の車は、ローラーの上を走行しているのか、道路を走行しているのかをセ
ンサーで判定しているのです。本当にセンシング技術の発達には驚きまし
た。
 センシング技術の発達により、スマホを操作している人が車を運転して
いるか自転車を運転しているか、歩いているかを感知できるようになるか
もしれません。さらに進めば、工場の監視カメラが、作業者の行動をチェ
ックし、不安全行動(作業手順に反した行動)を見つけると、警告などを
出せるようになるかもしれません。

                        
  ご安全に!

2015年9月26日(ウインドウメイト)
 お掃除ロボットとして、「ルンバ(アイロボット社)」が有名になり、
他の電機メーカーでも同様のものが販売されていますが、今回注目したの
は窓掃除ロボット「ウインドウメイト」です。
 https://prw.kyodonews.jp/opn/release/201508283092/
 窓の掃除は危険が伴う場合があります。私が中学生の時は窓掃除と言え
ば、窓の枠を跨いで、座って(身体の半分は建物から外に出ている状態)
掃除しました。手が届かないところは窓枠に立って拭いたものです。今考
えると危険な行動でした。
 窓掃除では高く、手が届かないところは脚立などを使います。脚立を使
うと転落災害の発生の可能性があります。
 今回紹介したウインドウメイトは窓ガラスを外と中から磁石によって装
置を挟みます。スイッチを入れると、「ルンバ」と同じように窓をキレイ
に掃除し、終わったら、最初の位置に戻るので、窓掃除も安全にできます。
途中で充電池が切れたら落ちるのか?と心配しましたが、残量が少なくな
ると最初の位置に戻るそうです。また、永久磁石を使っているので、電池
切れでも落ちることは無いそうです。
 価格は9万円(税別)ということで、リスク対策の費用としては、十分
検討する余地はあると思います。
 掃除中の転落災害防止に採用してはどうでしょうか?
 ただ、落下の可能性があります。たとえば、窓の内側に付けた方を引き
離すと、外側の装置は落ちます。また、この装置で清掃中ということに気
が付かず、窓を開けて、装置に当たると、落ちます。装置の付属品として
「落下防止用ヒモ」が付属しているので、必ず使うようにしてください。
装置は1kg以上あります。ビルの上から、地面に落ちることがあれば、路
上の通行人に致命的な障害を与える場合もあります。窓の下側は通行禁止
にするなど、安全対策を怠らないようにしてください。落下防止用ヒモを
付け忘れる可能性があることも忘れないでください。

                          
 ご安全に!

2015年9月19日(足ふきマット)
 足ふきマットには、昔からあるような金網にタワシ状のブラシが付いて
いるもの、埃・雨水を拭き取るカーペットのようなマット、クリーンルー
ムで使う粘着性のあるマットなどいろいろあります。
 ある工場に行った時、タワシ状のブラシが付いている足ふきマットが気
になりました。工場内は全て舗装され、土砂を運びこむような場所ではあ
りません。「ブラシ付きのマットが必要なのだろうか?」と感じました。
見ているとほとんど機能しません。マットは長年使用していると、変形し
てきます。変形していなくても、厚みがありますので、躓く要因になりま
す。ということは、デメリットしかないということです。必要ないものは
撤去すべきです。
 また、ある場所では、防火扉の稼働域にマットが敷かれていました。こ
れでは、火災発生時に防火扉が閉まりません。
 足ふきマットは多くの場所で使用されていますが、本来の機能も重要で
すが、それを置くことによるリスクも考えて置いてください。


2015年9月19日(ロールボックスパレット)
 宅配業、小売業などロールボックスパレット(三方に柵がある、カゴ状
の台車)を多用しています。このロールボックスパレットの災害はかなり
発生しています。たとえば、
 ①押して移動する時、前方が見えず、激突する
 ②引いて移動する時、自分の足にぶつかる
 ③引いて移動する時、身体を捻るので、腰を痛める
 ④棚板の出し入れの時、頭をぶつける
 ⑤物を乗せるときに、腰を痛める
 ⑥台車がぶつかる時に、指を挟む
 ⑦倒れて下敷きになる
 取扱時の注意点をまとめたものが、労働安全衛生総合研究所から公表さ
れました。参考になると思います。
 
http://www.jniosh.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2015_02.html

                           
ご安全に!

2015年9月12日(洗濯機)
 6月8日にドラム式洗濯機に7歳の男児が閉じ込められて死亡する事故が
ありました。フタが横向きで、床から50cmほどだから、子供でも簡単に
入ることができます。洗濯中にフタが開いてしまうと大変なので、中から
は開けることができません。しかも密閉です。男児は窒息死しました。こ
のメーカーでは子供が操作してフタが開かないようにチャイルドロックを
していましたが、多くの場合、洗濯終了後に内部を乾燥させるために、フ
タを開けっぱなしにするので、チャイルドロックも無効になっていました。
 この対策は難しいと思っていましたが、パナソニックが9月以降発売す
る洗濯機は、電源OFFの状態なら、中からフタを押せば開けられるように
しました。
 使い方を間違えたとしても、安全が求められる時代になったということ
を改めて感じました。


2015年9月12日(鬼怒川決壊)
 台風一過という言葉がありますが、台風18号では上陸した時より、通過
後の方が被害が大きくなりました。鬼怒川の決壊により、多くの人が逃げ
場を失い、ヘリで救出される報道に釘付けになったことでしょう。
 この状況で気になったのは、備蓄飲料・食料の置き場です。多くの家庭
でも備蓄をしていると思いますが、1階に置いていれば、今回の状況では
役に立ちません。
 備蓄品の置き場所は最悪の場合を考えて置く必要があります 

                          
 ご安全に!

2015年9月5日(足場特別教育)
 今年の7月1㈰から、足場からの墜落防止対策の強化として、労働安全衛
生規則の改正が行われました。
改正の概要としては
(1)特別教育の追加
 従来は法で定める特別教育の対象となっていませんでしたが、7月1日か
 ら足場の組み立て、解体および変更作業に従事する労働者に対して特別
 教育が必要になりました。法定の特別教育時間は6時間です。ただし、
 施行日(7月1日)現在足場組み立て等に従事している方は3時間に短縮
 した特別教育で可能です。また、特別教育の実施には猶予期間があり、
 平成28年6月末までに実施しなければなりません。
(2)作業床からの墜落防止
 床材と建地との隙間を12cm未満にすることが追加されました。
(3)足場組み立て等の墜落防止措置の充実
 幅40cm以上の作業床の設置等が追加になりました。
(4)注文者の点検義務
 特定事業の仕事を行う注文者の点検義務に、足場又は作業構台の組み立
 て等後の点検が追加されました。
(参考:厚労省ホームページ)
 足場からの墜落防止対策を強化します。~平成27年7月1日から施行
 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000081490.html
 私が所属している、一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会大
阪支部では、特別教育(経験者を対象とした3時間の短時間講習)を11月
1日に開催します。詳細はホームページの新着情報をご確認ください。
 http://jashcon-osaka.com/
 特別教育の未実施で事故が発生した場合には、書類送検になる可能性が
あります。期日までに実施いただくようお願いします。
 なお、日本労働安全衛生コンサルタント会大阪支部では、法定6時間の
新規作業者に対する出張特別教育の実施または、3時間の短縮講習の出張
講習も実施しています。
 詳しい説明が必要な場合は、中川までメールで問い合わせてください。
                           ご安全に!

2015年8月29日(スプレー缶ゴミ)
 書類送検事例を紹介します。(2015年8月21日報道)
  愛知県瀬戸市の廃棄物処理会社「銭屋鋼産」で昨年4月、資源ごみの
  スプレー缶から出た可燃ガスが爆発し、男性社員=当時(44)=が死
  亡する事故があり、県警は8月21日、缶に残ったガスを抜かずに圧縮
  作業をさせたとして、業務上過失致死容疑で社長の男(53)ら3人を
  名古屋地検に書類送検した。
  送検容疑は、ガス抜きを行うよう徹底しなかったほか、ガス抜き用の
  機械や換気装置を導入せず、安全対策を怠った疑い。
  県警瀬戸署によると、爆発は4月25日午後に発生。死亡した社員が地
  面に埋めて設置されたプレス機でスプレー缶を圧縮中、地下にたまっ
  たガスに引火して作業場の建物が全壊した。
  同社は2013年4月、瀬戸市などからスプレー缶を含む金属資源ごみの
  購入を開始。同8月にも小規模な爆発が起きていた。 

 家庭からでるゴミの中で、殺虫剤などのスプレー缶については、全て使
用したあと、穴を開けて金属ゴミとして出さなければなりません。しかし、
穴を開けないばかりか、中にガスが残っている状態で排出されることもあ
り、処理施設での爆発やゴミ収集車の火災につながるケースがあります。
また、家庭での穴開け作業が原因とみられる火災も発生しています。その
ため、環境省では2009年から「住民が穴開けをしない方が望ましい」と自
治体に呼び掛けています。その結果、現在では、「穴開け不要」と「家庭
での穴開けが必要」という自治体があります。
 2種類の自治体があるため、一般家庭では混同する可能性があり、さら
に危険性が増しているように思えます。
 スプレー缶で使用されているガスは一般に空気より重たいガスです。送
検事例にあったように地下にガスが溜まることがありますので、作業だけ
でなく、建物の構造も影響します。また、その会社では過去にも爆発が発
生していました。小規模爆発だったことを甘く考えたのかもしれません。
原因究明が不十分で対策が不完全だったのでしょう。
 ある会社の廃棄物置き場には、フタを外したドラム缶の中にたくさんの
スプレー缶がありました。重みでガスが漏出、腐食でガスが漏出したらど
うなるでしょう。危険を感じます。廃棄物を入れる容器も注意する必要が
あります。スプレー缶にはご注意ください。

                        
ご安全に!

2015年8月22日(電気柵事故 続報)
 農林水産省は、7月におきた静岡県西伊豆町で電気柵に感電して2名死亡
5人が感電した事故を受けて、全国99,696か所の緊急点検を行いました。
 その結果、「危険表示なし」6,713件、「漏電遮断器の未設置」606件、
「適切な電源装置を設置していない」22件、その他49件、合計7,090箇所
の違反を見つけ、改善措置を求める通知を送りました。
 「危険表示なし」には外れたものも多いかもしれないが、それにしても
違反が多過ぎます。
 7月19日に事故があり、多くの方がニュースや新聞で事故を知ったと思
います。電気柵を設置している方は「うちは大丈夫か?」と考えるはずで
すが、この違反数を見ると、無関心な方が多いことに驚きました。
 ニュースで見る事故を「対岸の火事」と考えずに、自分の周辺で同じよ
うなことがないか考えることも災害防止には重要です。
 たとえば、先週、中国の天津で大きな爆発がありました。原因は定かで
はありませんが、禁水物質に水を掛けたことは一つの原因に違いありませ
ん。これを受けて、「会社には禁水物質はないか?」「貯蔵量は問題ない
か?」「消火方法は徹底できているか?」を確認されましたか?
 また、6月27日には台湾でカラーパウダーが爆発した事故がありました。
その時に粉じん爆発の怖さを知った人も多かったかもしれませんが、会社
には粉じん爆発の危険がないか、確認しましたか?
 災害防止には自社の情報だけでは不十分です。社外の事故を見た時、自
社で発生する可能性はないか、類似の作業はないか、点検してください。
社内発生した事故、ヒヤリハットおよびパトロール結果などの情報を共有
している会社は多いと思います。他部署で危険を指摘された情報を得たら、
自部署の類似部署を点検すること。また、他部署で良い改善情報があれば、
自部署にも導入を考えましょう。

                       
 ご安全に!

2015年8月15日(天津爆発)
 8月12日、中国の天津で起こった爆発には驚きました。何が原因?と考
えるより、何が爆発?どれだけの量があれば、あのようなキノコ雲ができ
るような爆発になるのか?と考えましたが、さっぱり判りません。
 高性能爆薬(TNT)21トンと言われてもピンとこない。
 死者が50人を超えたところで、報道規制が行われたので、人的被害の状
況はまったく判りませんが、100人超になるでしょう。
 この事故を見て、頭に浮かんだのは、天六爆発事故です。昭和45年、日
本が万国博覧会で盛り上がっていた4月8日、大阪市営地下鉄谷町線天神橋
六丁目駅工事でガス爆発があり、死者が79名、重軽傷者420名に達しまし
た。この時の死傷者の多くは野次馬ということでした。

 天津の爆発現場にはメチルエチルケトン(危険物第四類 第一石油類)
シアン化ナトリウム(特化物)、硝酸ナトリウム(危険物第一類)、硝酸
カリウム(危険物第一類)、炭化カルシウム(危険物第三類)が保管され
ているように報道されています。このように類が異なる物質が燃えた場合
の対応はどうすれば良いのでしょう。特に炭化カルシウムは、水も泡消火
も禁止です。今回の事故では消火活動を開始した後で大爆発が発生してい
ることから、消火方法を誤った可能性が高いです。

 危険物第一類(酸化性固体)
  その物自体は燃焼しないが、他の物質を強く酸化させる性質を持つ固
  体であり、可燃物と混合したとき、熱・衝撃・摩擦により分解し、極
  めて激しい燃焼を起こさせる。
 危険物第三類(自然発火性物質または禁水性物質)
  空気にさらされることにより自然に発火し、又は水と接触して発火し
  もしくは、可燃性ガスを発生する
 危険物第四類(引火性液体)
  引火性を有する液体(メチルエチルケトンの引火点は、-7℃)

 皆様の職場に類の異なる危険物を一緒に使用・保管していませんか?
 もし、あれば、誤った初期消火が大きな被害をもたらす場合があります。
初期消火の方法が判らなかったら消防署に相談するなどしてください。
 
                        ご安全に!

2015年8月8日(JR熱中症)
 8月4日、JRの新大阪発新宮行きの特急くろしおで運転士が紀伊駅に緊
急停車し、熱中症により運転ができなくなり、運転士を交代して運行しま
した。運転士は緊急搬送されましたが、この緊急停止の判断が良かったと
思います。
 特急くろしお13号は13時00分に新大阪を出発し、途中、天王寺に13時15
分に停車し、次の駅は和歌山に14時01分に停車する予定でした。和歌山駅
まであと数分の紀伊駅で止めました(紀伊駅は通過予定駅)。和歌山駅ま
ではあと5分程度です。通過する駅で止まれば、当然ダイヤが乱れ、他の
車両にも影響がでるので、止めるという判断はとても難しいはずです。苦
しくても、なんとか和歌山駅まで頑張ろうと考えるのが普通ですが、もし、
このまま頑張って走ると意識を失い、大きな事故になったかもしれません。
運転士の判断は良かったと思います。
 運転席のエアコンは正常に動いていたということですが、熱中症は温度
だけが影響するのではありません。窓を通して受ける輻射熱が影響したと
考えらます。

2015年8月8日(JR停電)
 8月4日、JR京浜東北線で架線が切れ、停電する事故がありました。停
電によってエアコンも止まりました。原因は停止した場所がエアセクショ
ンという2本の架線がある場所で停止禁止の場所でした。発進の際に過電
流が流れたことによる断線でした。
 原因は停止禁止の場所ということを知らなかったということでしたが、
エアセクションという停止禁止の場所を作ってしまったことが原因だと考
えます。しかし、変電所が変わるポイントがあるので、エアセクションが
できるのはやむを得ないということです。それなら、エアセクションに入
ったことを運転士に知らせるシステムを組み込まなければなりません。
 そのシステムは一部の車両には導入しているようですが、導入済みと未
導入が混在していることに問題があったようです。
 それにしてもこの暑い時期に、エアコンの止まった車両の中に乗客を1
時間以上も閉じ込めたことは初期対応の課題があります(この車両は窓が
開きません)。この事故が昼の時間帯なら、熱中症で死者を出す結果にな
ったかもしれません。

                        
ご安全に!

2015年8月1日(エスカレーター床が陥没)
 世の中には考えられないような事故があるものです。
 7月26日、中国のショッピングモールでエスカレーターの床が陥没して、
女性が転落し、エスカレーターに巻き込まれて死亡する事故がありました。
 動画ニュースをご覧ください。
 http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20150727-00000014-ann-int
 エスカレーターの上がったところに店員が立っているので、朝一番のお
客様だと思われます。エスカレーターを上がりきったところで、フロアに
足を着いた途端に床板がはずれ、落ちてしまいました。床下はエスカレー
ターのステップが回転しているので、巻き込まれました。
 原因はメンテ等で床板を外して作業したあと、ネジを締め忘れたと考え
られます。
 ネジを締め忘れた原因は定かではありませんが、下記が考えられます。
 ①外したネジを他のネジ箱に入れたので、作業後に気が付かなかった。
 ②作業が途中だったので、床板を乗せただけで忘れてしまった。
 ③ネジを締めるように指示したが、その人が指示を理解していなかった。
 メンテ作業者が使う道具箱の中はゴチャゴチャしているのを見ることが
あります。これではスパナなどの工具を機械の中に残しても気が付かない
場合があります。作業の前には必要な工具を揃え、作業後に全ての工具が
揃っていることを確認できるようにしていなければなりません。ネジ類は
外したあと、空の容器に入れ、他のネジ類と混同させてはなりません。も
し、作業後にネジが残っていたら、どこかでネジの締め忘れがあったこと
が、直ぐに判るようにしておかなければなりません。
 4S・5Sが実践できていなければこのような事故も起こりえます。
 この映像を見て、「非常停止ボタンを押せば良かった」と考えた人も多
いでしょう。しかし、日常教育で非常停止ボタンを押すことを指導してい
なかったら、パニックになって、非常停止ボタンを探すこともできません。
 整理整頓と作業終了後の確認、緊急時の対応が重要だということを改め
て感じました。

                      
  ご安全に!

2015年7月25日(感電事故)
 厚生労働省のパンフレットで良いものがありましたので紹介します。
 機械安全規格を活用して労働災害を防ぎましょう
 http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/150722-1.pdf
 機械の安全については労働安全衛生規則に定められていますが、手指が
挟まれないように安全柵を作る場合でも日本工業規格(JIS)で安全柵
の高さ・距離・隙間など細かく定められています。
 現場に行くと、カラーコーンやプラスチックチェーンで安全対策をした
つもりになっている例をよく見ることがあります。人間は横着な生き物で
す。カラーコーンをまたぐこともあれば、プラスチックチェーンをくぐる
こともあります。そのようなことで事故にならないようにJISの規格に
したがった安全対策が必要です。
 7月19日に発生した静岡県での電気柵感電事故がその例かもしれません。
電気柵は野生の動物を殺すための物ではありません。接触したら感電させ
て驚かすものです。動物にも学習能力はあります。「あそこに近づいたら
ビリってなる。だからあそこには行かないようにしよう」と思わせるもの
です。人間が当たることもあります。だから感電しても致命傷や事故にな
らないようにしなければなりません。市販されている電気柵は1秒ごとに
通電し、その通電時間は3000分の1秒などの瞬間的な痛みを与えるような
ものです。通電状態が継続するのではありませんから致命傷になることは
ありません。
 静岡県の事故ではそのような安全装置はついていませんでした。単に電
線を張り巡らしただけです。しかも、漏電遮断器も付いていないので、電
線が切れても電流は流れ続けます。見た目は同じ電線でも電流の流れ方が
異なると危険性は全く異なります。
 設置した人は電気柵を自分で作ったそうです。法規制等の基準を知らな
ければこのような事故になることもあります。

                         
ご安全に!

2015年7月18日(花火大会)
 夏のイベントに花火大会があります。来週25日は大阪天神祭の花火大会
もあり、各地で花火大会が盛り上がっていくでしょう。しかし、過去には
花火大会での事故というものがありました。大きなものでは、
  2001年7月21日 明石花火大会歩道橋事故 死者11、重軽傷247
  2013年8月15日 福知山花火大会露店爆発事故 死者3、重軽傷59
 福知山花火大会の事故については、ガソリン携行缶が原因になりました。
ガソリン式発電機の使用を禁止し、主催者側が電力を提供すれば、事故も
防げ、騒音も少なくなります。
 今年の花火大会で危惧するのは、ドローン(小型無人飛行機:マルチコ
プター)です。ドローンで撮影すると、今まで見た事もないようなキレイ
な花火が撮影できるでしょう。私も撮影してみたいと思うぐらいです。ド
ローンは、4月22日に首相官邸落下事故があってから、法規制が検討され
ていますが、まだ実現していません。来年には法規制ができるでしょう。
そうなれば、花火大会でドローンが使えるのは今年が最後のチャンスかも
しれません。撮影したいと考えている人はとても多いでしょう。もし、そ
の人が全員、実行すれば、花火大会には何百、何千というドローンが飛び
交います。ドローンの激突や操縦不能など多数が墜落するでしょう。見物
人にも被害が出るかもしれません。
 当然、主催者側も警戒しているでしょうが、ドローン事故は発生するの
ではないでしょうか。今年花火大会に行く人にはヘルメット着用して、自
衛して欲しいものです。もしも、ドローン事故が多発するようなら、主催
者側は見物者の安全を確保しなければなりませんので、花火大会の中止も
余儀なくされるでしょう。
 ドローンは墜落する可能性があります。墜落すると地上の人がケガをす
ることは予見できるはずです。意図していなくても傷害事件になるでしょ
う。
 もう一つ心配なのは、スマホ等を使った自撮り棒(自分を撮影するため
の延長できるスマホのホルダー)です。
 ドローンにしても、自撮り棒にしても、他人に迷惑を掛けず、花火大会
を楽しんでください。
 さて、そろそろ梅雨明けです。梅雨明けとともに増えるのが熱中症です。
熱中症は単に温度・湿度で判断できるものではなく、個人の体調が一番影
響します。そのため、私自身は大丈夫と思っても、同僚は熱中症になる可
能性があります。熱中症は自分を尺度に考えず、30分に1回は声を掛け、
意識の程度・動きを見て、早めの対応をしてください。決して、1人で作
業させないようにしてください。

                        
 ご安全に!

2015年7月11日(エレベーター災害)
 7月7日、埼玉県の中学校のエレベーターで女子生徒が指先を切断する事
故がありました。これだけ見ると、エレベーターでなぜ?と思う方も多い
でしょう。
 災害の状況を説明すると、女子生徒が靴袋の紐を指にかけ、背中に背負
うように持っていました。エレベーターから降りた時に、靴袋の紐の部分
がエレベーターの扉に挟まれ、靴袋の中身がエレベーターの籠の中に残さ
れた状態になり、籠が下に動いたため、紐が引っ張られました。女子生徒
は指に紐を巻き付けるようにして持っていたため、指が抜けず、籠に引っ
張られ、中指の先を1cm程切断してしまいました。
 エレベーターの扉が閉まる時、異物を検知すれば、扉は開く安全装置が
ありましたが、全ての物を検知するのではなく、1cm程度の無検知範囲
があります。紐は柔らかく、細いため、検知できずに籠が動いてしまいま
した。このような事故は珍しいと感じましたが、調べてみると、犬の散歩
の時に、リードが挟まれて、首輪ごと引っ張られるケースはかなり発生し
ているようです。
 エレベーターには多くの安全装置が組み込まれていますが、人間の体の
ような厚みもあるものを想定しています。今回のような紐は検知できませ
ん(紐が挟まっても問題が無いと考える)。このような事故があるという
ことは知っておかなければならないでしょう。ご注意ください。特にお子
様やペット連れの時は注意してください。
 ところで、みなさんの会社ではネックストラップの名札を使っていませ
んか?首に掛けたネックストラップが何かに引っかかったりすると首が締
まるおそれがあります。ネックストラップには大きな力が加わった時に、
外れる安全留め具が付いているものですが、付いていない物もあります。
一度、ご自身のネックストラップを確認して下さい。昔、ある方がネック
ストラップを付けていたのですが、長すぎるということで、紐を結んで安
全留め具が効かないようにしていたこともありました。
 挟まれる・巻き込まれるという災害には髪の毛が関係したものもありま
す。髪の毛1本1本は小さな力で切れますが、何十本、何百本にもなると、
人間の体重も吊り上げるほど強度を持つものです。
 災害は私たちの想定の範囲を超えて発生する場合もあります。災害には
原因が単純な場合もありますが、特殊な場合もあります。それをどれだけ
想定できるかが、危険感受性のポイントなのでしょう。

                         
ご安全に!

2015年7月4日(粉じん爆発)
 6月27日の夜、台湾の音楽イベントでカラーパウダー(トウモロコシか
ら作る着色された粉末)の粉じん爆発によって500人以上が火傷をしまし
た。多くの方が、テレビ等で炎の中を逃げ惑う状況を見たことでしょう。
私は事故も驚きましたが、このようなイベントがあることさえ知りません
でした。カラーパウダーをかけあって楽しむということが理解できません。
罰ゲームで使うようなものとしか思えません。ネットで調べるとパウダー
ランとかで世界各地でイベントが行われており、すでに数百回も開催され
ているということでした。
 今まで数百回も事故が無かったのに、なぜ?と思う方が多いでしょう。
 イベントの多くは、走っているランナーにかけるだけなので着火源が無
かったというだけです。今回は夜のイベントですから、照明など使用する
電力は相当なものです。事故の着火源は不明ですが、大光量の照明器具の
コンセント・プラグからの火花が一番疑わしいと思います。最初の粉じん
爆発で、周囲の床面に堆積したカラーパウダーが撒き上がり、次々と爆発
していたように見えました。
 粉じん爆発は産業の場でも発生します。紙の粉、木材の粉、アルミニウ
ム・マグネシウム・鉄の粉など可燃物の粉末は全て粉じん爆発の危険があ
ります。鉄は燃えないと思う方がいるかもしれませんが、粉末の状態にな
ると可燃物になります(消防法の危険物に該当します)。
 この粉じん爆発を防ぐためには、まず、粉じん爆発というのものを理解
させる教育が必要です。言葉で教えるより体験させることが有効な場合が
あります。小麦粉などをロウソクの炎にかけると、爆発的に大きな火柱を
あげるので簡単に模擬体験することができますが、体験教育で労災を発生
させてはいけません。くれぐれも体験教育の実施にはご注意ください。
 疑似体験教育の次は粉じんの発生や粉じんの堆積を防ぐための教育と作
業環境の改善です。
 粉じん爆発を起こすためには着火源と粉末の可燃物と酸素です。この三
つが同時に存在した時、粉じん爆発が発生します。酸素を無くすことは実
際にはできないので、着火源か粉末可燃物を無くすことです。着火源には
静電気も含まれますので、着火源の根絶は困難ですから粉末可燃物を無く
すことが必要です。
 災害が発生した時の言い訳として「今まで事故は無かった」という言葉
をよく聞きます。今まで事故が無かったというのは、「たまたま」とか
「運が良かった」と考えてほしいものです。
 今回の事故で、カラーパウダーを使うイベントは全て中止されるでしょ
う。また、今回の事故では、水着などの薄着が多かったので、被災者が多
かったという報道がありましたが、普段着なら着衣が燃えて、死亡する方
が増えていたかもしれません。結果的に死亡者ゼロであっても条件が異な
れば、多数の方が死亡していたかもしれないということを忘れないでくだ
さい。

                         
ご安全に!

2015年6月27日(シフトワーク・チャレンジ)
 夜間勤務や交代制勤務に従事している人はどのくらいいるのでしょう?
 コンビニ、病院、警察、消防、電力、タクシーなどの交通もあります。
製造業でも建設業でもさまざまな業種で夜間勤務などが行われています。
私自身もお客様のご希望により、夜間作業の現場指導を行ったこともあり
ました。かなり多くの方が夜間業務等に従事しています。
 人間はフクロウなどの夜行性動物ではありませんから、日勤と夜勤では
パフォーマンスが異なるはずです。体調管理も難しくなるでしょう。夜働
いて昼間に睡眠をとろうとしても、周囲の騒音の影響で睡眠時間が十分に
とれないかもしれません。
 労働災害を考えた場合、眠気を感じる夜の時間帯ではミスが増えること
も考えられます。人間はロボットではありませんから、眠気を感じます。
労働災害防止には夜間勤務を考慮する必要があります。
 そのためには、夜間勤務が人に及ぼす影響を安全担当者は知っておく必
要があります。人間の身体は順応力があるから、「慣れたら大丈夫」と考
えてはいけません。
 労働科学研究所では、セミナー「夜勤・交代勤務に関する検定試験-シ
フトワーク・チャレンジに合格しよう」を、東京と大阪で開催します。開
催日程は東京:7月29日、大阪:7月30日です。
 http://www.isl.or.jp/images/ijikai/seminar/2015_07_semi.pdf
 練習問題もあります
 
http://www.isl.or.jp/research/researchcenter/chronicfatigue-c/423-2014-09-17-06-40-46.html
 私自身、練習問題(20問)をやってみました。結果は正解率50%未満で
した。恥ずかしくて、正解数をここで書けません。もっともっと勉強しな
ければならないことが見つかりました。

                         
ご安全に!

2015年6月20日(動力プレス事故 書類送検)
 大阪労働局は6月19日、動力プレスの定期および特定自主検査未実施に
よる労働災害発生(3指を切断)したことで、T社および代表取締役を書
類送検しました。
 
http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H27/syosyo/0619yodogawa.pdf
 事故のあった動力プレスは足踏み式スイッチで起動させる装置で、手指
を守るために光線式安全装置(危険領域への手指等の侵入を検知し、プレ
ス機を停止させる装置)が取り付けられていました。しかし、光線式安全
装置の検知エリアとプレスのスライドが動く危険領域が接近していたよう
です。光線式安全装置は瞬時に侵入を検知し、プレスを停止させますが、
瞬時といえども、わずかな時間は遅れます。そのわずかな時間に指先がプ
レスの危険領域に届いたのでしょう。光線式安全装置は、わずかな時間に
手指が危険領域に届かないようにするために、安全距離が必要になります。
今回の事故では、その光線式安全装置を取り付けてある場所を意図的に変
更したのだと考えます。
 一般に安全カバーや光線式安全装置などの安全装置が付いていれば「危
険領域に手指が入らないから安全だと考えがちですが、安全装置の設置場
所を変える時には安易な判断をせず、社内の専門家や専門の点検業者、メ
ーカーなどの意見を聴く必要があります。


2015年6月20日(労働衛生コンサルタント試験)
 私の知人から、労働衛生コンサルタント試験の受験準備講習をしてもら
えないか? と相談を受けました。(労働衛生コンサルタント試験の受験
準備講習は東京都では開催されていますが、大阪では実施していません)
 何人か集まるようであれば、平日の夜とか土日で開催することを検討し
ています。
 もし、興味がある方は連絡ください。(開催日は未定です)
 会場は大阪市内を考えています。

                          
ご安全に!

2015年6月13日(屋根の葺き替え)
 私ごとですが、自宅の屋根がそろそろ限界になってきました。
 かなりの数の瓦が割れています。業者に聞くと、北側の瓦が先に割れま
す。理由は瓦に染み込んだ水分が凍結して割れるということです。
 見積を何社か取っています。
 ある会社は、「私の会社では足場を組みません。だから、その分、安く
施工できます」と言いました。詳しく話は聞きませんでしたが、そんな会
社は怖くて依頼できませんので断りました。
 瓦を全部撤去して、軽い瓦(カラーベスト)に変えます。従来の瓦は重
量物であり、地震を考慮すると、軽い方が良いと考えました。
 (見た目よりもリスクを考えました)
 工期は未定ですが、施工する会社は足場の労働安全衛生規則改正を知っ
ているでしょうか? 足場作業主任者は選任されているでしょうか? ヘ
ルメット・安全帯を着用するでしょうか? とても気になります。
 私の自宅には小さい文字ですが、「安全安心株式会社」と書いています。
どんな会社か調べているでしょうか?
 今回の施工に際して、私用にハーネス安全帯を購入しました。
 注文主がヘルメット・ハーネス安全帯を装着して現場確認するような家
は無いでしょうから、きっと驚くでしょう。
 施工現場の指導を受けれるので、喜んでもらえるでしょうか? それと
も、「大変な客に当たってしまった」と思うでしょうか?
 また、熱中症の危険もあります。WBGT計(熱中症指標計)を見なが
ら現場を見るつもりです。もちろん、作業員への直接指導は法に反するの
で、その点は自制します。
 7月1日から足場組立ての法規制が適用されます。
 http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H27/anzen/270610tuirakubousiri-fu.pdf
 私にとっても、現場を勉強する良い機会になるでしょう。
 私の自宅で現場作業員が転落して死亡することの無いようにしたいと思
います。もし、事故が起きて、監督署が現場検証ってことになると、私の
信用問題になるかもしれません。気を付けます。

                         
ご安全に!

2015年6月6日(中国:長江旅客船転覆)
 6月1日の夜、乗客乗務員456人を乗せた中国の旅客船「東方之星」が長
江で転覆しました。救助された方はわずかに14人。400人以上が死亡・行
方不明となる大きな事故です。
 (東方之星:横幅11m、高さ18.6m、全長76.5m、定員534人)
 連日報道されていますが、救助にもどかしさを感じたのは私だけではな
いでしょう。
 普通はひっくり返った船底に穴を開けると、空気が抜けて沈みますが、
現場の水深は15m、船の高さを考えると、川の底に着いているので、穴を
開けても沈みません。すぐに穴を開けたら多くの人が助かったのではない
でしょうか。
 転覆の原因は竜巻などの強風ということですが、船室は4階あり、船の
大部分は海上に出ており、非常に倒れやすい形です。また、船べりは水面
ぎりぎりです。少し傾くと客室に水が入ります。
 東方之星は1994年建造であり、よく20年も無事だったなぁと感じます。
 横風に弱い構造だということは知っていたでしょうが、今まで問題なか
ったから、と安易に考えて運航を続けたのでしょう。
 この「今まで事故が無かったから・・・・」というのが、みなさんの会
社にもあるのではないでしょうか?
 先日、ある工場で機械の回転部分に手を接近させる(手を接近させる時
には回転を落とす)作業を見ました。「高速回転というほどではありませ
んが、手が巻き込まれたら、大きなケガになりませんか?」と聞くと、
「今まで事故もヒヤリハット報告もありませんし、従業員はよく判ってい
ますから」という回答でした。
 「判っている」と「安全」は、全く別です。たとえば、右手で機械を操
作している時に、左手がどこにおいているか、どこを触っているかはほと
んど意識しないはずです。また、床に落ちた部品を右手で拾う時に左手が
挟まれたという事故もあります。
 機械安全の原則に「隔離」と「停止」があります。機械の稼働中は作業
員が触れることのできない隔離と、作業員が触れようと接近した時には停
止させなければ、安全は確保できません。
 過去の経験にとらわれず、危険なものを危険と感じる能力が必要です。 

                        
 ご安全に!

2015年5月30日(シートベルト)
 みなさんは自動車を運転する時にシートベルトを着用していますか?
 おそらく全員といっていいほど着用していると思います。
 先日、バスを待っている間に通行する自動車を見ても全員が着用してい
ました。
 シートベルトの着用の歴史は、
 1971年 運転席・助手席のシートベルト着用の努力義務
 1985年 高速道路における、運転席・助手席の着用義務(罰則有り)
 1992年 一般道における、運転席・助手席の着用義務(罰則有り)
 40年経過して、運転席のシートベルト着用が常識となったということで
す。シートベルト着用指導の教育効果はなかなか現れないということです
ね。シートベルト着用が命を救うと判ってても、義務だと判っていても、
守ってもらえないものだったのです。
 シートベルト着用の効果もあるでしょうが、昨年の交通事故死者は4113
人で14年連続で減少しています。
 しかし、なぜ、これほどにシートベルト着用が守られているかと考える
と、ハード対策が進んでいるからです。私の車はシートベルト未着用で時
速20kmを超えると、警報が鳴ります。警報が鳴るから、仕方なくシート
ベルト着用している人は多いのかもしれません。
 今のシートベルト着用の徹底は、教育効果ではなく、ハード対策の結果
と言ってもいいかもしれません。
 飲酒運転による事故は減っていますが、まだまだゼロには程遠い状況で
す。運転で息を吹きかけて、アルコールが検出されない場合のみエンジン
がかかる車の早期普及を望みます。


2015年5月30日(無料安全衛生指導)
 5月27日、厚生労働省では第三次産業における労働災害発生状況を発表
しました。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000086923.html
 私たち安全衛生コンサルタントは厚生労働省の委託を受け、無料で安全
衛生無料指導を行います。ただし、飲食店と社会福祉施設のみです。
 ご希望の方は、当方まで連絡ください。
 できれば、その業種のお知り合いの方にも教えてあげてください。
 遠方の場合は、お近くのコンサルタントを紹介します。

                         
 ご安全に!

2015年5月23日(自転車危険行為)
 6月1日からの改正道路交通法により、自転車運転中に危険行為を2回繰
り返すと、自転車運転者講習の受講が義務になります。受講料は5,700円
で、講習を受けなければ5万円の罰金となります。
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/pdf/H270304/leaflet.pdf
 危険行為とされるのは、下記14の行為です。
 1、信号機の信号等に従わないこと
 2、道路標識等によりその通行を禁止されている道路又はその部分を通
  行すること
 3、歩行者のため通行禁止が標識で表示されている道路を歩行者に注意
  して徐行しないこと
 4、歩道と車道の区別のある道路で車道を通行する等の通行区分を守ら
  ないこと
 5、路側帯を歩行者の通行を妨げるような速度や方法で進行すること
 6、遮断機が閉じようとしている時、閉じている時、警報機が鳴ってい
  る間に踏切に入ること
 7、交通整理の行なわれていない交差点で他の車両の進行を妨害すること
 8、交差点で右折するときに他の車両の進行を妨害すること
 9、環状交差点で他の車両の進行を妨害すること
 10、指定場所で一時停止しないこと
 11、歩道を走る際に指定部分を徐行せず、また歩行者の通行を妨げると
  きに一時停止しないこと
 12、制動装置等を備えていない自転車を運転すること
 13、酒酔い運転
 14、安全運転の義務の規定に違反する行為

 この中に、スマホ運転が無いとか、無灯火が無いとか、二人乗りが無い
と思うかもしれませんが、これらは14の行為に含まれます。また、イヤホ
ンの使用のながら運転、傘さし運転も含まれます。もちろん、2013年12月
より義務化された、自転車の右側走行も危険行為です。
 このような危険行為は珍しいものではなく、よく目にしていると思いま
す。通勤災害防止のためにも、従業員に周知し、朝夕、会社の門付近でチ
ェックと指導をしてください。
 また、この機会に自転車保険加入を指導し、無保険者の自転車通勤を禁
止することも必要だと思います。もし、通勤時に歩行者と激突し、歩行者
を死亡させることがあると、無保険者の場合、損害賠償を払えないので、
会社に損害賠償請求されるかもしれません。

 もうひとつ、とても興味深い裁判を紹介します。
 
 「自転車はね死亡、逆転無罪」
  交差点で自転車の男性をはねて死亡させたとして、自動車運転過失致
  死罪に問われた兵庫県の男性被告(78)の控訴審判決が大阪高裁であっ
  た。裁判長は「自転車が赤信号を無視することまで予見する注意義務
  はない」とし、罰金30万円を命じた1審判決を破棄し、無罪を言い渡
  した。
  被告は2013年6月、交差点で青信号に従って右折させた際、横断歩道
  を直進してきた自転車に衝突し、男性(66)を死亡させたとして、在宅
  起訴されていた。
  1審判決は、横断歩道の信号が赤だったと認定した上で、車側が安全
  確認を尽くす注意義務を怠ったと判断。
  これに対し、今回の裁判長は「自転車が赤信号に従い、横断しないと
  信頼するはずで、過失があるとまではいえない」と述べた。
                (読売新聞2015.5.19夕刊より引用)
 
 この記事を読んでどう思いましたか?
 自動車と自転車の事故であれば、自転車側に相当の過失があったとして
も自動車側の過失と判断されるのが常識と考えていましたが、自転車も自
動車も同じ“車両”であり、道路上では、自転車も自動車も同じ責任があ
ると判断されたものであり、従来の判決を覆す、画期的な判決だと思いま
す。しかし、全ての自転車と自動車の事故がこうなるとは限りません。今
まで通り、自転車は信号無視などの危険運転をする可能性があることを予
測して安全運転をしてください。
 この自動車にはドライブレコーダーが搭載されていたと考えます。相手
側の過失を立証するために必要でしょう。ドライブレコーダーを付けまし
ょう。

                         
ご安全に!

2015年5月16日(安全大会)
 もうすぐ、全国安全週間の準備月間(6月)です。
 弊社の方にも安全大会の講演依頼がいくつかあります。
 私の講演はヒューマンエラーを取り上げたものが多くなっています。ご
承知の通り、労働災害のほとんどはヒューマンエラー(不安全行動)が要
因となっています。ヒューマンエラーとは何かを知り、どうすれば不安全
行動を減らすことができるかを考えていただいています。
 たとえば、人間の視界はとても広いもので、水平角は約180度、垂直角
は約125度(下75度、上50度)もあります。真横の人の動作も、足元に落
ちている物にも気が付くほど視野は広いのです。前方の物は全て見えるの
で、あらゆる危険を感知して避けることができそうですが、実際には事故
が発生しています。この理由としては、網膜に約1億3千万の受容体がある
と言われていますが、それに対して視神経は約100万しかありません。と
いうことは、見えている範囲(情報)の100分の1の情報しか脳は認識でき
ていません。だから視界に入っていても危険を認識できないのです。そう
考えると、駅のホームで歩きスマホをして転落する事故も判っていただけ
ると思います。
 また、最近では意思疎通の体験をしてもらうことを取り入れています。
丸や四角の図形を言葉だけで相手に説明することの難しさを感じてもらい
ます。職場の指示の多くは言語情報です。言語情報だけで意思を伝えるの
は難しいものです。意思が伝わらず、相手も判ったつもりになることも多
く、それが元で事故も発生します。
 例として、重大なヒヤリハットを紹介します。(毎日新聞より引用)
  『2010年7月22日午後0時15分ごろ、愛知県、東海道線上りの安城-西
  岡崎駅間で、岐阜発岡崎行き普通列車の運転士が、架線に長さ約5m
  の黒色ビニールが絡まっているのを見つけ、列車を止めた。連絡を受
  けたJR東海総合指令所は、車掌に「写メールを撮って送ってくれま
  すか」と無線で指示。だが車掌は「撮って」を「取って」と聞き違え、
  ビニール除去を指示されたと誤認し、感電防止の措置をとらずに素手
  で除去作業をしました。』
 どうですか? 幸い感電事故にはなっていませんが、架線には1500アン
ペアの電流が流れていました。一瞬で車掌は死んでいたかもしれません。
 労働安全衛生法第24条には次のような条文があります
 『事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要
な措置を講じなければならない。』これはヒューマンエラーを予測し、事
故を防ぐ義務があるということです。そのためにはヒューマンエラーを知
り、対策を行うことが求められています。
 安全講演の講師を探しておられたら、当方にご連絡ください。 

                        
 ご安全に!

2015年5月9日(大阪の祭りで足場倒れる)
 5月3日、大阪市市庁前の中之島公園で、中之島まつりが開かれていまし
た。そのライブ会場で客席の日よけ用のネットを支える足場が倒れ、4人
が重軽傷を負いました。ニュース等でご覧になった方も多いでしょう。
 (できればネットで写真を見つけてご確認ください)
 倒れた足場は枠組み足場の2段で、高さが約3.5m、最上部には、日よけ
用のネットが取り付けてありました。強風を受けて倒れたということで、
ライブ(カラオケ等)を見ていた方数名が下敷きになりました。
 「なぜ、こんな事故が発生したのか?」 というより
 「なぜ、足場を利用して日よけにしたのか?」と感じます。
 ニュースを見る限り、転倒防止措置はありません。転倒防止措置せずに
ネットを張ると風で倒れるのは当たり前のことです。みなさんが工事現場
で足場を組んで、ネットを張っているところを見ることもあると思います
が、あれは転倒防止を施してからネットを張ります。
 用途外使用というべきか、お粗末な事故でした。
 足場組立ては高さが5m以上になれば足場組立て作業主任者が必要にな
りますが、今回ような2段(3.5mぐらい)では特に資格は必要ありません
が、今年7月1日からは足場組立てに携わる全ての作業者に特別教育が義務
付けられます。
 また、今回は、祭りの会場です。小さい子供も参加するでしょう。むき
出しの足場に子供が昇るということもあります。さらに、人が激突して倒
れるということも想定できます。
 5月5日には茨城県結城市にあるニトリで1歳の子供がエスカレーターで
指を挟んで大ケガをしています。親がちょっと目を離した時の出来事です、
子供は興味を持つと、危険を感じることなく、近寄っていくものです。
 使う人の安全、周囲の人の安全、子供の安全を考えて作業していただく
ようお願いします。

                       
  ご安全に!

2015年5月2日(溶接火災)
 4月26日北海道苫小牧市にあるキノコ生産会社の「ホクト」で火災が発
生して4人が亡くなるという事故がありました。報道によると、冷却装置
の入れ替え工事で配管をガスバーナーで切断していたときに、発泡ウレタ
ンに引火したことが原因のようです。亡くなった4人の方は発泡ウレタン
が燃えたことによって発生したシアン化ガスを吸い込んで死亡したという
ことでした。
 断熱材に使用する発泡ウレタンは着火すると一気に燃え広がる可能性が
あります。配管の断熱材である発泡ウレタンを除去せずにガスバーナーで
切断するということは考えにくいので、切断箇所の近くだけ、発泡ウレタ
ンを除去し、バーナーの熱が伝わり、発火したと思われます。
 溶接や溶断など高熱を発する現場では、周囲から可燃物を除去する必要
があるのですが、「配管を切るだけの簡単で短時間で終わる作業」と考え、
切断の前の段取りが不十分になったのではないでしょうか。
 6人で作業しており、冷却装置室の外にいた2人は無事で、4人が死亡し
たということは、冷却装置を置いてある場所が狭く、避難に時間がかかり
シアン化ガスを吸い込んでしまったのでしょう。
 溶接や溶断の時に、「可燃物を片づける必要がある」ことは多くの方が
知っていますが、「何m離せばいいか?」と聞かれた時に、はっきり答え
られる人は少ないでしょう。
 溶接作業時の火災で思い出すのは、2002年の豪華客船ダイヤモンドプリ
ンセス号の火災や、2003年のブリジストン工場での火災です。ダイヤモン
ドプリンセス号の被害額は300億円と言われています。ブリジストン工場
の火災では住民5000人が避難することになりました。
 今年2月には首都高速の高架下で火災が発生して2人が死亡するなど、火
災にはご注意ください。

                         
ご安全に!

2015年4月25日(脚立転落事故)
 2013年10月21日、福岡県にあるドン・キホーテでアルバイトが脚立から
転落する事故があり、遺族が1億3千万円の損害賠償請求をしました。
 以下、朝日新聞より引用
   ディスカウントストア大手のドン・キホーテの店舗でアルバイトと
   して働き、商品陳列中に脚立から転落して死亡した福岡県飯塚市の
   男性(当時25)の遺族が、同社を相手取り、計約1億3千万円の
   損害賠償を求める訴えを福岡地裁飯塚支部に起こした。
   訴状によると、男性は2013年10月20日、アルバイト先の「MEGA
   ドン・キホーテ飯塚店」(飯塚市)で商品を陳列中に脚立から転落
   し、頭を強く打って9日後に死亡した。遺族側は、狭い通路で脚立
   を使って約2mの棚に重い商品を積む作業は危険だったにもかかわ
   らず、同社が安全配慮を怠ったなどと主張している。
   ドン・キホーテ側は「通常使用すべき踏み台ではなく、誤った方法
   で脚立を使って起きた事故と認識している。同種事故が発生しない
   よう、従業員に指導・教育を行って参ります」としている

 この件に関する「ドン・キホーテで起こった死亡事故にまつわる問題」
というサイトがあります。
 http://hokuto-law.jp/donkijiko/
 この中には、遺族がドン・キホーテを訴えるに至った経緯が詳しく書か
れています。転落事故があった直後にスタッフが脚立を撤去したり、事故
の報告が店長に届いていなかったり、会社から遺族への報告がなかったり、
お金でもみ消そうという動きがあったり、会社が遺族との約束を反故にし
たり、話し合いを拒否したり、事故後の対応に問題があり、遺族の怒りを
大きくしてしまいました。
 みなさんの会社で万一、重大事故があった時の対応を考えるためにもご
覧になってください。
 店内の防犯カメラが転落の状況を記録していましたが、脚立の天板に登
ったり、身を乗り出して作業したり、物を持って昇降したり、逆向きにな
って昇降するなど脚立の使用方法を間違っています。脚立はとても手軽な
物ですが、事故も多く、安全な使用方法の教育が必要なものです。
 脚立の教育不足もありますが、この作業で脚立を選んだことに問題を感
じます。この作業では「立ち馬」と呼ばれる手すりの付いた作業台にする
べきでしょう。
 参考に、立ち馬の正しい使い方ビデオを紹介します。
 https://www.youtube.com/watch?v=Qfs6GyXbZjs

                         
ご安全に!

2015年4月18日(東京都下水処理施設事故)
 4月17日、東京都の下水処理施設「芝浦水再生センター」で職員が汚水
の反応槽に転落して死亡する事故がありました。
 作業は反応槽の上に置かれているフタの一部が浮き上がったために5人
で元に戻す作業をしていました。その5人のうちの一人が槽に落ち、死亡
したのです。
 この水再生センターでは市民の見学を受け入れており、各槽には転落防
止の柵がありました。反応槽では微生物による分解を促進するために曝気
(エアーを吹き込む)し、撹拌しています。大量のエアーが吹き込まれて
いるため、汚水が軽くなり、人間は沈んでしまいます。たとえ救命胴衣を
着用していても浮き上がることができません。「落ちたら死ぬ」と見学者
に対して説明していたそうです。ということは、職員は転落時のリスクの
大きさを認識していたと考えられます。
 「落ちたら死ぬ」ということは落ちないように作業を行うのではなく、
(フタを戻す作業のため、柵の外で作業をしていたと考えられる)落ちな
いための対策が必要です。具体的には安全帯が必須です。死亡した方は58
歳でした。経験年数は不明ですが、ベテランだったと考えられます。
 落ちた直接の原因は良く判りません。足を踏み外したのか、力を入れ過
ぎて反動で落ちたのか、他の作業員またはフタに押されて落ちたのか。
 私が原因として気になるのは酸欠です。水槽の上の作業ですが、反応槽
の中には微生物の呼吸による二酸化炭素が大量に発生していたと考えられ、
酸素欠乏の状態だったのではないかと考えます。
 また、作業時の状況は報道されていませんが、おそらく、曝気と撹拌を
止めずに作業していたのでしょう。設備を停止して作業していたら、転落
しても助かったかもしれません。
 「転落防止の柵があるから安全だ」と考えていても、イレギュラー発生
時には柵の外に出る可能性を把握し、手順を定めておく必要があります。
 
                         ご安全に!

2015年4月11日(安全衛生優良企業公表制度)
 厚生労働省では、平成27年6月より「安全衛生優良企業公表制度」の受
付を始めます。
 http://www.bcsa.or.jp/00_honbu/sinchakujyoho/korosho_20150320.pdf
 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075611.html
 「安全衛生優良企業公表制度」は、労働安全衛生に関して積極的な取組
を行っている企業を認定・企業名を公表し、社会的な認知を高め、より多
くの企業に安全衛生の積極的な取組を促進するための制度です。企業も求
職者や取引先などへのアピールに活用することができ、求職者も安全・健
康な職場で働くことを選択することができます。
 ・企業イメージの向上
 ・安全、健康確保による生産性の向上
 ・社員の働く意欲の向上
 ・取引先へのPR
 ・求職者へのPRなど認定のメリットもあります。
 認定を受けるためには、過去3年間労働安全衛生法等の重大な法違反が
ないこと、労働者の健康保持増進対策、メンタルヘルス対策等安全衛生管
理を積極的に行っていることが必要となります。
 当社では、安全衛生優良企業認定を受けるための支援をしています。
 ご関心がある企業様は連絡をいただければ説明に伺います。


2015年4月11日(安全衛生コンサルタント受験支援制度)
 私、中川が所属する日本労働安全衛生コンサルタント会大阪支部では、
これからコンサルタント試験を目指す方を応援します。
1.日本労働安全衛生コンサルタント会が発行する問題集等購入の半額を
  補助します。
   対象「試験合格への手引き」「試験問題集」
   (書籍購入金額と送料の半額を補助します。お一人様各1冊のみ)   
  申込条件
   ①合格後、日本労働安全衛生コンサルタント会に入会し、大阪府内
    を中心に活動できる人(企業等に在籍したままでも可とする)
   ②受験結果を連絡いただける人
  メリット
   ①受験のためのメール相談を無料で受けることができます
   ②コンサルタント開業のための無料メール相談
2.受験のための心構え、受験勉強のアドバイスを行います。
  (問題集等を購入済みの方、筆記試験免除の方を対象)
  申込条件
   ①合格後、日本労働安全衛生コンサルタント会に入会し、大阪府内
    を中心に活動できる人(企業等に在籍したままでも可とする)
   ②受験結果を連絡いただける人
  メリット
   ①受験のためのメール相談を無料で受けることができます
   ②コンサルタント開業のための無料メール相談
 ご希望の方は中川までメールでお問い合わせください。

                        
 ご安全に!

2015年4月4日(米倉庫で酸欠)
 3月30日、青森県十和田市の米卸売会社「まるお商事」の精米倉庫で2名
が酸欠によって死亡する事故がありました。
 「お米で酸欠になるの?」と疑問に感じた方も多いでしょう。私も聞い
たことがありません。
 労働安全衛生法施行令の別表第6に酸素欠乏危険場所が定められていま
す。その中に「穀物若しくは飼料の貯蔵、果菜の熟成、種子の発芽又はき
のこ類の栽培のために使用しているサイロ、むろ、倉庫、船倉又はピツト
の内部」という記述があります。米=穀物ですから、酸素欠乏危険場所で
あり、酸欠作業主任者を定め、作業開始前には酸素濃度を測るなど酸素欠
乏症を防止する措置が必要です。
 今回の事故現場は倉庫の中の精米機の床下に設けられた点検室の中でし
た。点検室は通常作業しないところで、点検室にはこぼれ落ちた玄米やモ
ミが一面に広がっていました。
 玄米やモミが発酵したりして二酸化炭素が発生し、床下に滞留したと考
えられます。
 穀物の倉庫などはものによるでしょうが機械換気による強制換気をしな
い場合が多く、人の出入りが少ないと空気の入れ替えが少なくなります。
 酸素を消費するのは人間だけではありません。植物もカビなどもあらゆ
る生物が酸素を消費し、酸化によって酸素が消費されます。
 今回、消防が現地に駆け付けた際には酸素濃度が10%程度しかなかった
そうです(事故時はもっと低かったかもしれません)。
 酸素欠乏は人間の五感(臭覚・聴覚・視覚等)では感知できません。
 危険を予測するための知識として覚えていて欲しいと感じました。

                         ご安全に!

2015年3月28日(ドイツ機墜落事故)
 航空機の事故は私の専門外ですが、感じたことを記します。
 最初はエンジントラブル?と思っていましたがブラックボックスの回収
後は信じられないようなことが明らかになってきました。
 ・機長がコックピットから出たあと、故意に墜落させた。
 ・機長がコックピットに戻れないようにした
 ・主治医は「乗務不可」と判断したが、それを会社に隠した
 副操縦士は自殺したのだろうか? 自分だけでなく、一般市民を巻き込
み会社にダメージを与えたかったのか? それともテロなのか? 
 操縦士はシュミレーター訓練でエンジンが止まった場合、車輪が出なく
なって着陸が困難な場合などあらゆるトラブルに対応できるように訓練し
ています。今回は降下スイッチを故意に操作したというものであり、しか
も機長がコックピットを出て一人になった時の行動であり、回避行動はと
れません。
 9.11の経験からコックピットへの侵入を防止するために外から破壊する
ことが困難なドアになっており、機長といえども戻れません。
 このような事件に対して対策はないのでしょうか?
 コックピット内は常に二人としていると事件は起こらない(二人が共謀
しての犯行であれば防げません)ので、コックピットから外へ出ることを
無くせば防げるでしょう。(トイレは携帯トイレを使用するなど)
 緊急時には管制塔から遠隔操作する方法も考えられますが、遠隔操作が
可能になれば、悪意を持った人がハッキングによって遠隔操作する可能性
もあるので、これは逆にリスクが大きくなります。
 副操縦士は精神疾患があり、診察を受けており、「乗務不可」の診断が
ありましたが、これを隠しました。日本でも2011年に栃木県鹿沼市でてん
かんの持病があり、医師から運転を止められていましたが、会社にはそれ
を隠し、運転中に気を失い、集団登校の生徒6人を死亡させる事故があり
ました。
 いずれも、会社が把握しておれば防げたはずです。
 しかし、個人で通院していたものは、不利な情報を容易に隠すことがで
きます。
 重要な情報は主治医が本人の同意を取って直接、勤務先に伝えるシステ
ムが必要だと感じます(守秘義務があるので困難かもしれない)。または
健康保険の利用状況を確認して必要に応じて産業医面談を入れることは効
果があると考えます。

                         
ご安全に!

2015年3月21日(乳頭温泉 硫化水素)
 3月18日夕方、秋田県仙北市の乳頭温泉で、温泉設備の点検をしていた
3人が硫化水素によって死亡した事故がありました。
 この温泉設備は源泉からおよそ5キロ離れた田沢湖高原温泉郷に湯を送
るためのもので、「温泉の量が減って温度も下がった」という連絡を受け、
現地に行きました。原因はポンプ等に空気が溜まったため、配管の空気を
抜いて流れをよくする作業を行っていたということです。
 ガス検知器(硫化水素濃度計)や呼吸用保護具は車に用意していました
が使われていませんでした。
 源泉付近では硫化水素が発生するため、一般の立ち入りは禁止されてい
る場所であり、作業ではガス検知器で濃度を確認し、濃度に応じて呼吸用
保護具を使うルールになっていましたが、使用されていませんでした。
 硫化水素は一酸化炭素などと違い強い刺激臭があります。強い刺激臭を
感じると危険と認識できますが、源泉近くでは硫化水素の卵が腐った臭い
がするのは当然なので特に危険とは感じていなかったのかもしれません。
(臭覚は強い臭いによって麻痺するものです。臭覚の麻痺も要因と考えら
れます)
 この事故で気になったのは積もった雪です。現場の近くには3mぐらい
雪が積もっていたという報道がありました。3mの雪があったということ
は、3m地下に入ったと同じことです。硫化水素は空気より重く、地下ピ
ットなどでは下の方に溜まりやすくなります。
 硫化水素は気流(風)によって希釈されますが、無風状態であれば、希
釈されず、高濃度になります。その上、周囲に雪が積もっていると、希釈
されず、さらに高濃度になります。
 亡くなった3人は42歳、67歳、78歳で経験豊富だったと考えられますが、
風の流れ、雪の量による影響を甘く考えていたのかもしれません。
 この作業は4人で行い、67歳と78歳の方が倒れ、42歳の方が助けようと
して倒れました。もう一人は通報のために避難して助かりました。
 ガス検知器で測定すれば事故は防げたかもしれませんが硫化水素の場合
は、場所によって濃度が異なることもありますので、個人用のガス検知器
(胸付近に付ける小型検知器が市販されています)を使用することをお勧
めします。                    

                         
ご安全に!

2015年3月14日(やさしい運転)
 みなさんの中には、自動車事故には頭を悩ましている方も多いのでは?
 全国的に交通事故による死亡者は減少傾向(平成26年は4,113人で14年
連続の減少)にありますが、労働災害の死亡事故では交通事故死は多く発
生しています。
 私は交通事故を防止するために車間距離を重視しています。車間距離が
詰まると、前の車に集中してしまい、周囲の状況を認識しにくくなります。
 交通事故防止に悩んでいる会社に対してはドライブレコーダーを勧めて
います。これがあれば、事故があった時の原因が明確になるので、運転手
自身が自ら安全運転に努めるようになります。しかし、ドライブレコーダ
ーのデータは膨大なので、通常の走行まで全てを確認することは困難です。
 そこで気になったのは、ソニー損保の「やさしい運転キャッシュバック
型」です。
 http://www.sonysonpo.co.jp/auto/cashback/
 これはドライブカウンタが急加速・急ブレーキを感知・計測できるので
運転状態の成績が明確になります。急ブレーキを減らすためには車間距離
を十分に取れば少なくなると考えます。
 ゆっくり加速すると燃費も向上するはずです。
 ソニー損保のシステムであり、単体で売っていないのが残念です。
 しかし、単体でも販売されていました。
 OPTEX「セーフメーターOSM-201」14,800円(税別)
 http://www.optex.co.jp/drive-recorder/safemeter/index.html#in01
 急発進・急ブレーキをすると、アラームが鳴るので、運転手の「気付き」
にもつながり、安全運転が期待できると考えます。

                        
 ご安全に!

2015年3月7日(気になった事故・事件)
 今週、気になった事故と事件の話をさせていただきます。
 最初は3月5日大阪府東大阪での交通事故です。
 交差点を右折しようとして交差点中央付近で停車していた車に信号無視
のワゴン車が衝突し、そのはずみで、横断歩道を渡っていた2人が事故に
巻き込まれて死亡しました。
 気になるのは昨今の横断歩道の利用者です。とても多くの方がスマホを
片手に歩いたり、自転車に乗っています。さらに耳にはイヤホンを付けて
いたりします。横断歩道は安全地帯ではないことをこの事故から学んで欲
しいと思います(死亡した2名の状態は判りません。左右に気を付けて歩
いていたけど、避けられなかったのかもしれません)。
 車を運転している人にもスマホ運転等の余所見運転、危険ドラックなど
を服用して正常な運転ができない場合もあるのです。
 2011年5月には大阪市浪速区で自転車が道路を無理に横断して、ワゴン
車とタンクローリーが避けようとして歩道に入り、歩行者2名が死亡した
事故もありました。安全に歩ける場所は存在しないと考えなければなりま
せん。
 
 もう一つの事件は救急車の乗り逃げです。
 3月3日に福島県郡山市で119に電話のあったところへ救急車で向かい、
室内で応急処置をしている間に救急車が乗り逃げられるという事件があり
ました。すぐに別の救急車が現地に到着し、患者を搬送しましたので、患
者は無事でした。救急車の運転手はエンジンキーを付けたまま救急車を駐
車していました。
 皆様の事業所で、フォークリフトを使っている場合も多いと思いますが、
駐車している時にフォークリフトの鍵を抜いて、所定の場所に保管してい
るでしょうか?
 無資格の人が運転したり、許可を受けていない人が運転したり、あるい
は、フォークリフトを盗みに入ってくる部外者が居るかもしれません。
 フォークリフトに限らず、自動機械等、鍵を付けているものも多いと思
います。鍵の管理は正しく行ってください。

                         ご安全に!

2015年2月28日(首都高火災その2)
 先週に引き続いて首都高速の火災事故に関して記します。
 原因は乾燥する時期だから静電気かと考えていたら、火花を発するグラ
インダーの使用や日常的に喫煙をしていたという報道があり、とても残念
な感じがします。タバコを吸うために足場から地上に降りるのは面倒だと
いう気持ちも判りますが、引火性のあるシンナー等を大量に使用する場所
でタバコを吸うとは、呆れました。
 今回の現場では34人が作業していました。昨年の火災では7人が作業し
ていました。約5倍の人数が働いていましたので避難時間は5倍もかかりま
す。一度に多くの人が避難できる昇降設備もないし、消火器も無いので死
者まで出す結果になったのでしょう。(報道では消火器について情報があ
りませんが、用意されていなかったと考えます)

 先週の週記で引火性の無い塗装剥がしは無いものかと探していたら、イ
ンバイロワン工法というものがありました。
 http://invairowan.com/movie.html
 これはアルコールを含みますが、消防法では引火性液体ではなく、指定
可燃物に該当します。スプレーで吹き付けて、24時間放置すると塗料が浮
き上がりスクレーバーなどで容易に塗膜を除去できるものです。SDS
(安全データシート)を見ても、GHSマークに該当するものもなく、粉
じんの発生もなく、リスクは小さいと考えます。これを使用すると、昨年
と今年の2年連続した火災事故は防げる可能性があります。ただ、塗膜除
去の対策であり、塗装作業では塗料もシンナーも使用しますので、まだ火
災の危険性はあります。

 今回の事故は高速道路の塗装作業でしたが、皆さまの事業所でも古い塗
装の塗り替えがあるかもしれません。塗装会社に任せる場合でも万一火災
が発生したら事業存続にも影響します。塗装会社の施工計画書を審査し、
火災のリスク低減措置をチェックしましょう。

                         
ご安全に!

2015年2月21日(首都高火災)
 2月16日首都高速道路の塗装工事現場で火災が発生して2人が命を失う事
故がありました。残念ながら1年前の3月20日にも同じように事故がありま
した。1年前は全員が無事に避難できましたが、今回は死亡事故になりま
した。火災を防ぐためには燃焼の三要素、『可燃物(可燃性物質)』、
『酸素供給源(支燃物)』、『点火源』のどれかを無くさなければなりま
せんが前年の事故から対策されたのは、照明器具の防爆化と防炎シートと
報道されています。今回の場合、可燃物(シンナー)酸素供給源(空気中
の酸素)は無くせないので、点火源を無くさなければなりません。点火源
には、作業員がタバコを吸う・ライターを使う、溶接の火花、グラインダ
ーの火花のような目に見える点火源の他に静電気や電動工具の内部の火花
やコンセントのプラグの接点から発生する火花、ハンマーで金属を叩く際
など目に見えない点火源もあります。特に冬場に発生しやすい静電気は自
覚しにくいものです。ドアノブなどに接触した際に“バチッ”と痛い思い
とした経験をした方も多いでしょう。この静電気でもシンナーを吸い込ん
だウエスには火災発生の原因にもなります。
 しかし、作業員一人ひとりが十分な知識を持ち、作業マニュアルを定め、
それを実行していればシンナーを扱う作業でも火災を防ぐことは可能です。
そもそも、塗装を剥がす作業ではシンナーは必須のものでしょうか? 印
刷業の胆管ガンで問題になったジクロロメタンは非引火性液体です。引火
性ではない溶剤を使う方法もあれば、ドライアイスを用いた剥離・洗浄と
いう方法(ドライアイスの粉体を高速で吹き付けるドライアイスブラスト
洗浄)もあるでしょう。引火性液体のシンナーを使うなら、徹底的に点火
源をなくさなければなりません。
 橋梁の塗装剥がしには他にもリスクがあります。昔の塗装材料にはクロ
ム鉛含有塗料などの有害なものを使っている場合もあります。剥がし作業
でそれらの粉体が飛散することもあります。今回の首都高での作業では防
炎シートで囲い込んでいるため、作業場内での有機溶剤濃度も高くなりま
す(屋外作業であっても囲い込みの状況によっては室内作業と同等)。シ
ンナーの種類によっては、発がん性等重大な健康影響のある物質を含むも
のもあります。
 火災の発生を防ぎ、健康影響も防ぐ作業方法を検討しなければ、「二度
あることは三度ある」になってしまうかもしれません。首都高の塗装作業
は原因を追及し、再発防止策ができるまでは施工が中止されています。火
災発生のリスク・健康影響のリスクを検討し、安全で作業環境の良い作業
(再発防止)を期待しています。

                         ご安全に!

2015年2月14日(ボール盤作業)
 労働安全衛生規則の第111条では、手袋の使用禁止の項目があります。
   「事業者は、ボール盤、面取り盤等の回転する刃物に作業中の労働
   者の手が巻き込まれるおそれのあるときは、当該労働者に手袋を使
   用させてはならない。」
 ボール盤は小さくても、指先を巻き込まれると、腕全体に被害が及びま
す。巻き込まれて死亡事故になるケースがあります。素手で作業すると、
ドリルの刃先に触れて切創になる可能性はありますが、大きな事故にはな
りません。手の模型を作って、手袋を装着してドリルに近づけると一瞬の
うちに巻き込まれます。この時、手袋が破ければ事故にはならないのです
が、手袋は丈夫です。そのため、ボール盤等を使用する時は手袋の装着は
禁止になっています。では、加工物にエッジ等があって素手で使うと危険
な場合の作業では、加工物をバイス(万力)で固定するまでは手袋を装着
しても良いが、ボール盤を起動する前に手袋を外す必要があります。
 ある会社で、ボール盤を使用する研磨で加工物に手の汚れが付くと支障
があるということで、薄い使い捨ての手袋を使用している作業がありまし
た。使い捨ての手袋は装着に時間がかかり非効率的です。使い捨ての手袋
は薄くて破れやすいものですが、破れない可能性もあるので、やはり装着
は禁止にしなければなりません。しかし、面倒なルールは守られにくいも
のです。どうすれば良いでしょうか?
 そこで手袋をしても巻き込まれない方法はないかと考えました。手袋の
指先を切って、指サックを付ける方法が有効ではないでしょうか。指サッ
クなら引っかかっても、1本だけだから、すぐに外れてしまうでしょう。
 しかし、問題もあります。指サックと手袋の重ねですから、液状の有害
物質が付着しているものであれば、手袋の中に入ってしまいます。
 次に考えたのは、巻き込まれてもすぐに停止できればリスクは小さくな
る方法です。それは、ボール盤の起動スイッチと合わせてもう一つの起動
スイッチを付ける方法です。具体的には、足元に3ポジションのイネーブ
ルスイッチ(フットスイッチ型)を付けることです。3ポジションのイネ
ーブルスイッチというのは、OFF→ON→OFFになっており、少し触った程度
ではOFFのままで、中程まで踏み込むとONになり、踏み込み過ぎるとOFFに
なるものです。これは人間工学に基づいたもので、危険と感じた時に離す
人と危険と感じた時に力を入れる場合が考えられ、その中間の時だけONに
なるものです。ボール盤の起動スイッチをONにして、イネーブルスイッチ
を中間まで押した時だけボール盤が回転する仕組みにすると、緊急時にも
回転を止めることが容易になります。
 しかし、欠点もあります。とても高速回転をする機械では惰性回転で巻
き込まれるものは向いていません。また、ボール盤の起動スイッチは常に
ONにして、イネーブルスイッチだけで操作するのは危険です。
 法令で手袋を禁止していても、作業の性質上、禁止できない場合、法違
反とは判っていても仕方ないから黙認するのではなく、他の安全対策を考
えてみましょう。

                         
ご安全に!

2015年2月7日(局所排気装置の自作)
 
局所排気装置を自作しました。目的は安全衛生教育に使うためです。
 ・横引き型の外付け局所排気装置
 ・同上 フランジ付き(吸込み口の周囲に付けるもので、空気の巻き込
  みを防ぎ、排気効率を高めるもの)
 ・囲い式局所排気装置
 ・プッシュプル型換気装置
 4種類の局所排気装置を見て、体験して勉強しようというものです。
 市販されているものもありますが、高価であり、据え付けると移動がで
きないため、自作しました。
 横引き局所排気装置と囲い式局所排気装置の違いや、フランジの有無で
の違い、さらにはプッシュプル型換気装置と外付け局所排気装置の違いを
眼で見て学習するものです。
 局所排気装置を設置している会社は多いが、どのように有害物が吸引さ
れているかは、あまり理解できていないのではないかと思います。その理
由は空気の流れが目に見えないからです。今回作成した局所排気装置では
スモークマシンを使用して、空気の流れを眼で見て理解していただけるよ
うに工夫しました。
 2月21日(土)日本労働安全衛生コンサルタント会大阪支部研修会で、
この局所排気装置・プッシュプル型換気装置の体験型研修会を開催します。
コンサルタント会員でなくても参加できますので、興味がある方は、中川
まで連絡してください。(場所:大阪市鶴見区医師会館。参加費:コンサ
ルタント会員1000円、非会員3000円)
 企業様への出張研修も受け付けています。
 ちなみに、自作の局所排気装置は市販の軸流ファンを使用しており、本
体は加工しやすい安価なものを使用しているので、市販のものよりかなり
安いです。もし、皆さまの会社で、「局所排気装置を使用しているが、作
業環境が改善できない」などの問題があれば、設備改良のヒントになると
思います。

                         
ご安全に!

2015年1月31日(特化則改正)
 昨年11月1日から特化則の改正がありました。
 (厚生労働省)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000057700.html#leaflet1
 これにより、10種類の有機溶剤が特定化学物質に移行しました。
 実は私の仕事先でミスが見つかってしまいました。みなさまの事業所で
は、着実に移行していると思いますが、失敗事例として紹介します。
 改正にあたり、使用している有機溶剤のSDS(安全データシート)を
確認し、今回の対象になっていないと判断しました。しかし、その会社か
ら“これは?”と言われた化学物質がありました。それは有機則で定める
有機溶剤ではありません。その物質はエタノールが主成分で、メチルイソ
ブチルケトンが4%含まれていました。メチルイソブチルケトンは有機溶
剤でしたが、5%以下のため、この物質は有機則による有機溶剤ではない
ため、確認していませんでした。(有機則は5%が基準・特化則は1%が
基準)
 今回指摘を受け、反省しているところです。

2015年1月31日(除雪機)
 家庭用の除雪機が普及し始めています。それに伴い、死亡事故も増えて
います。先日の報道によれば、5年間で死亡事故が14件発生しています。
(国民生活センターで発生しているケガは死亡災害を含めて45件)
 メーカー側でも対策を考え、運転者が力を緩めると運転が止まる安全装
置を2004年から取り付けています。しかし、紐でレバーを固定するなど、
安全装置を無効にして使用している例が増えています。
 雪が降っている時は視界が悪くなります(しゃがんでいる子供を巻き込
んだ事故もありました)。
 周囲に十分に気を付けてご使用ください(前に居る人の頭やコートに雪
が付いて見落とす可能性があります)。

                        
 ご安全に!

2015年1月24日(STOP!転倒災害プロジェクト2015)
 厚生労働省と労働災害防止団体は、休業4日以上の死傷災害で最も件数
が多い「転倒災害」を減少させるため、「STOP!転倒災害プロジェク
ト2015」を開始しました。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000071356.html
 仕事中の転倒が原因で4日以上仕事を休んだ方は25,878人(平成25年)
で、休業4日以上の労働災害全体の22%を占め、平成20年(24,792人・
19%)と比較して、人数、割合ともに拡大。平成26年(12月末日現在速報
値)も、前年同期と比較して3.5%増加しています。また、第三次産業で
は、労働災害全体の30%前後を転倒が占めています。製造業や建設業では
割合は低いものの、その増加率は他の事故と比較して高くなっています。
 転倒事故がなぜ多いのでしょうか。下記のようなヒヤリハット・事故で
考えてみましょう。
 ①凍結により滑った。
 ②床のマットの端がめくれていたためにつまづいた。
 ③床に油がこぼれていて滑った
 ④通路等に部材等があってつまづいた。
 ⑤通路等にデコボコ(通路上の破損等)があってつまづいた。
 ⑥滑りやすい床面が濡れていたため、滑った。
 ⑦靴底がすべりやすい状態だったため、滑った。
 ⑧階段を踏み外して転倒した。
 ⑨階段の段差にばらつきがあるため転倒した。
 ⑩床に置いてあるものを跨ごうとしてつまづいた。
 ⑪通路が暗くて段差に気が付かずにつまづいた。
 ⑫荷物を抱えて、床面が見えないまま歩いて障害物につまづいた。
 ⑬職場内を走っていて転倒した。
 ⑭スマホを見ながら歩いていて、障害物に気が付かずにつまづいた。
 ⑮疲れていて、歩くときに、足の上がりが小さくなってつまづいた。
 ⑯床面に粉じんが堆積して、滑りやすくなっていた。
 ⑰台車や丸棒など動きやすい物に足を乗せたため転倒した。
 ⑱靴紐がほどけており、その紐を踏んだために転倒した。
 ⑲熱中症や体調不調で足元がフラフラしてつまづいた
 ⑳重い荷物を抱えており、バランスを崩して転倒した。
 このように転倒の要因は様々です。これを分析してみましょう
   4S・不安全状態⇒②③④⑥⑩⑯
   不安全行動⇒⑫⑬⑭⑰⑳
   通路の不備⇒⑤⑨⑪
   靴の不良⇒⑦⑱
   体調不調⇒⑮⑲
   自然要因⇒① 
 今回の場合は、4Sや不安全状態に問題が多くなりました。
 転倒事故を防ぐには、躾が必要だと考えます。通路に障害物が無いよう
に維持管理すること。ルールを明確にして守らせることが重要です。
 そのためには職場を絶えず巡視し、異常があれば直ぐに対策し、再発し
ないように教育指導を繰り返す必要があります。
 転倒事故は、ぶつけたところが赤くなる程度で済むものもありますが、
骨折するものも多く発生しています。中には何カ月もの長期間の休業にな
るものがあります。発生した時に、“作業者の不注意”で済まさずに、転
倒の要因を排除することが必要です。

                        
 ご安全に!

2015年1月17日(自動車学校津波訴訟)
 1月13日、宮城県の自動車学校津波訴訟の判決が出ました。教習生25人
と従業員の遺族に対して、総額19億円の賠償命令となりました。
 教習所では地震後に教習を打ち切り、敷地内に50分間待機させていまし
た。その間、消防の避難の呼び掛けが聞こえていたにも関わらず、避難さ
せませんでした。裁判長は「消防による避難呼び掛けを聞いており、その
時点で津波襲来は予測できた。教習生らを避難させる義務を負っていた」
と判断し、安全配慮義務違反を認めました。
 津波被害に関する訴訟は15件以上あり、日和幼稚園に続き、管理者側の
賠償責任が認められました。
 自然災害であり、未曾有の被害であり、想定を超えるものであり、予見
が困難な事例であっても管理者側の安全配慮義務が生じると判断されまし
た。
 このことは、今後の安全管理・防災管理にも影響します。従業員だけで
なく、工場見学の来訪者、打ち合わせの来訪者、構内請負労働者などその
場にいる全て方に対する安全配慮義務が課せられていると考えるべきでし
ょう。
 対策としては、第一に被害想定をすることです。都道府県や市で想定し
ているハザードマップなどを参考にすれば良いでしょう。それに対しての
避難場所・避難方法などを検討してください。地震が発生してから検討し
ていては間に合いません。
 「津波てんでんこ」という言葉があります。「津波が来たら、取る物も
取り敢えず、肉親にも構わずに、各自てんでんばらばらに一人で高台へと
逃げろ」「自分の命は自分で守れ」という意味です。これは正しいとは思
いますが、会社組織であれば、「自分の身は自分で守れ」と従業員に対し
て指導するだけでは安全配慮義務をはたしたとは言えません。どのように
どこに逃げるかを明確に指示しておくことが必要だと感じます。


                         
ご安全に!

2015年1月10日(高速道路逆走)
 今週目立った事故として、高速道路の逆走による事故がありました。高
速道路では時速100キロを超える車が多いものです。それが逆走するので
すから、時速200キロで相手車両が迫ってくることになりますので避ける
ことがとても困難です。下記のJAFのHPでは逆走車の再現ビデオを掲
載しています。車は左を走るので、高速道路では追い越し車線で発生する
ことが多いのですが、追い越し車線を走る車が危険回避のために、走行車
線に入る場合は走行車線の車も巻き込まれるかもしれません。
(参考)
 JAF(高速道路で逆走車に遭遇した際の対処方法
 http://www.jaf.or.jp/qa/ecosafety/careful/28.htm
 交通事故総合分析センター
 http://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info36/info36_1.html
 報道では高齢者が多いということですが、私自身ヒヤリハットした経験
があります。もう20年以上も前なので、記憶が定かではありませんが、確
か国道43号線(兵庫県)を大阪方面に走行して、高速道路に入る時に、
“高速道路は右に寄れ”の指示を見て、右の車線を走行し、高速道路に入
ろうとしたら、そこは出口でびっくりした記憶があります。進入禁止の看
板に気が付いたのか、出てくる車があったから気が付いたのか覚えていま
せん。今はカーナビを利用しているので、今後はそのようなこともないで
しょう。
 逆走の多くは高速道路の出口やSA・PAから本線に戻る時の進入です
が、そこには必ず表示はあります。表示は視界に入っても認識していなけ
れば止まれません。進路はコッチだと思い込んでいると周囲の車に対する
警戒が主になるので、標識は認識しにくくなります。これらを防ぐには、
出口にゲートを設置するしかないでしょうが、しかし、全ての箇所に設置
するのは困難です。
 一般の産業の場でも災害防止のために表示・掲示をして注意喚起をして
いる会社も多いです。しかし、見慣れたら、それらの掲示等を注視するこ
ともなく、行動し、事故になるかもしれません。掲示等では事故の可能性
を低減することはできても、ゼロにすることはできないものです。リスク
の高いものについては、掲示等だけではなく、ハード的な対策が必要にな
ってきます。
 1月9日の報道では淡路島で50歳の会社員が出口を通り過ぎたという理由
でUターンして、バスに接触したというのがありました。運転手には、道
路交通法違反だけでなく、暴行容疑でも書類送検されました。こんな無謀
な運転手もいるのですから、高速道路の運転にはご注意ください。逆走の
被害に遭うのは追い越し車線が多いので、追い越し車線は必要最小限に留
め、走行車線を、車間距離を十分にとって、走行してください。

                       
  ご安全に!

2015年1月3日(タイヤ破裂)
 12月22日滋賀県のガソリンスタンドで店員が大型トラックのタイヤ(直
径80cm)に空気を入れていたところ、タイヤが破裂し、店員は約2m飛ば
され、死亡する事故がありました。心臓近くの動脈が損傷していたという
ことでした。
 この大型トラックのタイヤ破裂による死亡災害は何度も発生しています。
下記の参考動画を見ると、本当に怖いです。

参考動画
タイヤ空気充填事故デモンストレーション
 https://www.youtube.com/watch?v=j8AZE5PnKo0
タイヤがいきなり爆発! 衝撃的な事故の瞬間映像!
 https://www.youtube.com/watch?v=WUYqvf_nFaw
中国のガソリンスタンドで ゆびで指したらトラックのタイヤが爆発
 https://www.youtube.com/watch?v=ydvBCmjvdq0
大型トラックタイヤバースト実験 5/22
 https://www.youtube.com/watch?v=XNyE30HyX6k
ブリヂストン タイヤバースト実験
 https://www.youtube.com/watch?v=I1wU4G_7xsY
大型トラックのタイヤ爆発実験!もし直撃したら即死!
 https://www.youtube.com/watch?v=OBh9PlLFPZ0

 労働安全衛生規則第36条の33号では、自動車(二輪自動車を除く。)用
タイヤの組立てに係る業務のうち、空気圧縮機を用いて当該タイヤに空気
を充填する業務については特別教育を課せられていますが、これは組立に
かかるものであり、ガソリンスタンドでは必須ではありませんがタイヤが
破裂すると重篤な事故になるということは理解しておかなければなりませ
ん。

 読者の皆さまの会社では自動車の組み立てはしないが、タイヤの空気補
充をする場合もあるでしょう。何か対策をしていますか?
 破裂を想定して囲い込みをしようとしても、爆風に耐えられるような囲
いをするのは困難です。
 まず、肉眼で確認して、傷があるようなら交換してください。また、日
常点検を行い、適正な空気圧があることを確認してください。空気圧が下
がった状態で走行しているとタイヤにダメージが蓄積して破裂しやすくな
ります。古くなったタイヤは早期に交換するようにしてください。
 大型タイヤの場合、空気充填の際には周囲に人が居ないことを確認して、
入れようとする空気圧とコンプレッサーやタンクの圧力を確認して、離れ
た場所から空気を送れるように工夫してください。

                         
ご安全に!




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