2012年12月22日(労災保険から災害状況を読み取る)
 12月19日に労働者災害補償保険事業の平成23年報告がありました。
 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/138-1g.pdf
 保険料納付金額は、8,253億円、保険給付金額は7,508億円でした。平成
23年といえば、東日本大震災があり、就労中に被災した方はこの保険の適
用を受けますので、労災保険の収支を心配しましたが、保険給付額が収入
保険料を超えることはなかったようです。
 この労災保険報告では災害統計に出ないような不休業災害を含めた状況
を読み取ることができます。これを見るには「新規受給者数」で判ります。
新規受給者数は、平成23年度中に新たに保険給付を受けた人の数になりま
すので、単純に考えると病院で診察を受けた人数になるので、不休業災害
を含めた災害件数の総数の概数が判ります。この新規受給者数は平成23年
度614,914人でした。平成23年度の労働者数が5,274万人ですから、約1.2
%の人が1年間に災害にあったことになります。つまり、従業員100人中で
1人が被災したというのが全産業の平均になります。
 業種別にみると
   製造業 労働者数8,682,559人 新規受給者144,671人 ⇒1.7%
   建設業 労働者数4,309,215人 新規受給者 59,628人 ⇒1.4%
 この数字と比較すれば、皆さんの会社の災害発生が平均より多いか少な
いかを知ることができます。
 この報告には葬祭料受給者数があります。平成23年度は5,509人です。
平成23年の死亡者数は震災を含めても2,338人。5千人を超える葬祭料が発
生するのは理解できません。災害統計は平成23年で、労災保険は平成23年
度であり、集計期間が異なるので、一致しません。それにしても多いです。
この差異の中には、平成23年以前に発症して、平成23年に亡くなった方も
含まれます。たとえば、過去に塵肺や石綿による中皮腫もありますし、自
殺・過労死など確定に時間のかかるものがあります。納得ができないので
厚生労働省に電話をすると、葬祭給付を含んでいますということでした。
業務上災害の場合は葬祭料といい、通勤途上災害は葬祭給付というのです。
通勤途上災害による死者も相当数発生しているということになります。
 冬季は日の出が遅く、日の入りが早いため、交通事故が増えやすくなり
ます。また、凍結・積雪もあるので、通勤途上災害への注意喚起をお願い
します。

                          
 ご安全に!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 29 ☆
 地震動予測地図
  政府の地震調査委員会は30年以内に震度6以上の揺れに見舞われる確
  率を示した「全国地震動予測地図」を公表しました。
  http://www.jishin.go.jp/main/chousa/12_yosokuchizu/index.htm
  30年と漠然としたものなので、何をどうすれば良いのか判りにくいも
  のであり、この地図に無いところでも発生する可能性はあります。
  日本人は多くの地震を経験し、復興の難しさを経験しています。復興
  のためには、産業が早く立ち直ることが不可欠です。
  地震に対する備えが必要だという認識を持ち、地震災害を小さくする
  減災と事業継続に向けた活動が重要なのです。新しい年が始ります。
  新しい年は事業継続について考え、行動を起こしませんか?

2012年12月15日(点検)
 笹子トンネル(上り)の崩落事故を受けて、笹子トンネル(下り)の点
検結果が報道されました。吊り天井を固定するアンカーボルト12,002個の
うち、2個は脱落、緩みは608個、さびは22個もありました。
 詳細はこちら
 http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000311.html
 上りの崩落事故の記者会見の際には、事故前の点検では上り・下りとも
異常なしという報告でした。目視と打音検査等では全く違うということが
判ります。
 皆様の職場でも始業点検や定期点検など日常的に実施していると思いま
すが、その点検の項目や点検要領は見直しの時期を決めているでしょうか。
最近導入した機械と20年も使っている機械の点検内容が同じではないでし
ょうか?
 また、海から近い場合と遠い場合ではサビの発生度合いが異なります。
振動する機械が近くにある場合と、近くに無い場合では、振動によるボル
トの緩む可能性が異なります。腐食性ガスが存在する場合や、粉じんが多
い場合など、機械のおかれている環境は様々です。
 検査には人間の感覚が必要なものもあります。視覚・聴覚・臭覚・触覚
しかし、これらには個人差があります。点検者の教育が必要なもの、力量
が必要なものなどがあります。
 機械の経過年数、使用環境、リスクの大小によって点検の項目、点検要
領を変える必要があるのです。
 人間でも同じです。若い世代と高齢者と同じ健診項目ではないはずです。
男性の場合、50歳を過ぎたら前立腺がんの項目を増やすなど年齢・性別・
既往歴・職歴などで検査内容も変える必要があるのです。
 2007年大阪のエキスポランドでジェットコースターの脱輪事故が発生し
ました。点検の不備が事故の原因の一つにもなっています。エキスポラン
ドはこの事故で信頼を失い、閉園になりました。点検が企業の将来を左右
することもあるのです。

                          
 ご安全に!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 28 ☆
 エレベーター
  エレベーターの中にいる時に地震が発生した時の行動は判りますか?
  まず、エレベーターから出ることを考えなければなりません。閉じ込
  められたら救助隊は何時間も来てくれないでしょう。
  閉じ込められないためには、行き先階のボタンを全て押すことです。
  全て押せば、一番近くの階で止まります。脱出することが先決です。
  でも、万一閉じ込められたらどうなるでしょう。
  ある会社にはエレベーターの中に停止時の備蓄セットを置いていまし
  た。
  https://www.kokuyo-st.co.jp/solution/bousai/elevator.html
  食糧・ラジオ・簡易トイレ・ブランケットなどが入っています。

2012年12月8日(笹子トンネル崩落事故)
 12月2日中央道笹子トンネルの崩落事故で9人の方が死亡する事故が発生
しました。原因はつり天井を支えるボルトが抜けた事だと言われています。
抜け落ちるにはコンクリートの劣化、ボルトの腐食、接着剤の劣化などが
あり、今回の事故は接着剤の劣化の可能性が高いとみられています。現在
の接着剤は金属のような強度を持つものや、瞬間的に接着するもの、高熱
に耐えるものなど優れたものが多くありますが、笹子トンネルが完成した
昭和50年当時の接着剤の耐用年数などは良く分かっていません。
 高度成長期に作られた道路、高架、トンネル、橋などは同様の事故が起
こらないとも限りません。崩落事故後の報道では2000年までは打音検査を
していましたが、それ以降は目視だけになってしまいました。これは逆だ
で経過年数が長くなると打音検査の頻度を多くしたり、エックス線・超音
波などの高度な検査に変えていかなければならないものです。今まで事故
が無かったから、検査の質を落とすという考えでは安全は確保できません。
 この崩落事故を見て、一番に思い出した事故は2004年に発生した美浜原
発での蒸気噴出事故です。冷却系の配管で生じたキャビテーション(高温
高圧の水がオリフィスを通過する際に生じる渦)によって配管が減肉し、
高温高圧(150℃10気圧)により破裂し、水が爆発的に蒸気になり、11人
が被災し、5人が亡くなりました。この事故では点検個所が適切で無かっ
た(リスクの高いところを見逃した)こと、点検を検査会社に委託してい
たことがありました。美浜原発は稼働して27年後の事でした。
 先日、近くのトンネルを通りました。自然と天井に視線が行ってしまい
ました。たまたま前の車は無灯火で走っていました。無灯火で走れるぐら
い明るいと感じるようです(ちなみに私は、車間距離が判りにくくなるの
で、減速して、車間距離を空けるようにして走りました)。明るくすれば
快適ですが、将来、照明の落下やその点検コストを考えるとライトは少な
くてもいいのではないかと感じました。
 近年のトンネルではつり天井型ではなく、ジェットファンを採用してい
るようですが、ファンは激しい振動が発生します。いつ、同様の事故が発
生するかもしれません。
 古いものほど高度な点検や補強が必要になります。その費用は膨大です
が無視はできません。近いうちに新しい政権が誕生するでしょう。日本が
抱える問題はたくさんありますが、これらインフラの老朽化対策にも期待
したいところです。

                         
  ご安全に!
☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 27 ☆
 冬の地震
  12月7日に東北沖で震度5弱の強い地震が発生しました。積雪の多いと
  ころでは積雪の重みと地震により建物の崩壊の危険があります。場合
  によっては雪崩が発生するかもしれません。季節によって地震の被害
  が異なることも考えて地震対策(減災対策)をしてください。
  また、北海道では数日前から停電が相次いでいます。電気暖房が止ま
  ると生命の危険も考慮しなければならないところでは石油ストーブな
  どを用意することも必要です。

2012年12月1日(道路工事の警備員、作業員被災)
 11月25日午前3時頃、仙台市青葉区二日町の国道48号で、道路の補修工
事をしていた作業員2人と警備員1人の計3人が軽乗用車にはねられました。
31歳の警備員と作業員1人が死亡し、作業員1人は重傷を負いました。運転
していたのは20歳の男性で酒酔い運転でした。
 午前3時ですから真っ暗です。車のヘッドライトしか見えません。その
運転が正常な運転か異常な運転かは警備員には判りません。警備員が警告
灯で合図すれば、自動車は気が付いて進路を変えると思ってしまいます。
実際に99%以上もの車が気づき進路を変えているはずです。しかし、全て
の車が工事に気が付くとは限りません。今回の事故のように飲酒運転や、
携帯電話操作、居眠り、体調の急変などが考えら得ます。また、ブレーキ
とアクセルを踏み間違うこともあるでしょう。制限速度を守っていたとし
ても工事現場に突入したら、警備員も作業員も致命傷を受けるでしょう。
飲酒運転は許されるものではありませんが、いまだに無くなりません。道
路工事の作業員はとてもリスクの高いところで作業していると言えるでし
ょう。
 もし目の良い警備員が運転者の異常を感知して身を隠し、被災を逃れた
としても、作業員への避難指示を出すことはできないでしょう。
 ドライバーの信頼性に頼るだけでは安全な作業はできません。どうすれ
ば良いのでしょうか?
 考えられることは、車の突入を防ぐために、車止めを設置したり、ダン
プカーなどを先頭に停車させ、飲酒運転などの暴走車の突入を止めること
が有効でしょう。また警備員についても、すぐに逃げられるような場所を
作っておく必要があるでしょう。
 もちろん飲酒運転を撲滅することが最優先ですが、万一のことを考え、
(可能性は低くても、事故が発生すれば、複数人が致命傷を負います)道
路工事会社は防護措置を取る必要があります。
 もう12月になりました。家の外での飲酒の機会が一番増える時期とも言
われます。
 再度、飲酒運転追放三原則を職場で徹底してください。
  「酒を飲んだら絶対、車を運転しない」
  「酒を飲む席に車を運転して行かない」
  「車を運転する人に酒を勧めない」
 三原則以外では、「宴会出席者の帰宅方法を確認する」「車を運転する
人の飲み物に注意する」「車を運転する人が飲んだ場合は、代行運転業者
で帰るまで確認する」など。
 また、車を運転するためにノンアルコールビールを飲んでいる人のグラ
スに誤って、普通のビールを注ぐことの無いようにご注意ください。

                           ご安全に!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 26 ☆
 防護塗料LINE-X
  先日、テレビで防護塗料LINE-Xを見ました。
  テロの爆破から人命を守るための防護塗料です。スプレーで塗布する
  だけで耐震化ができます。
  http://www.japanhomeland-security.jp/
  プロモーションビデオがありますので、効果を目で確認することがで
  きます。

2012年11月24日(800kgの金庫が倒れた)
 11月13日沖縄県名護市役所市民福祉部羽地支所で、800kgもの大型金庫
を廃棄のため運ぶ途中で金庫が倒れ、リサイクル会社の社員が下敷きにな
り、死亡する事故が発生しました(金庫は縦150cm、横70cm、奥行き
80cm)。金庫を運んでいたのは、被災したリサイクル会社の社員と市の
職員の3人、合わせて4人です。金庫を台車に乗せて運んでいましたが、室
内の段差になっている所を通過する際に金庫が倒れたようです。
 室内の段差はどの程度なのか判りませんが、800kgの金庫なので少しの
段差でも超える事が出来ず、加速度があるために倒れたのでしょう。
(台車の最大積載荷重は不明)
 この事故では業務の責任範囲が不明確です。職員がリサイクル会社の車
まで運ぶのか、リサイクル会社が事務所から運びだすのかは報道の中では
判りませんが、このような作業では業務の範囲を明確にしないことが多々
あるのではないでしょうか。職員が運び出す時にリサイクル会社に応援を
求めたのか、リサイクル会社が職員に応援を求めたのか判りません。
 一般の企業であれば、業者の納品の際に、トラックの運転手は「会社に
乗り入れて、荷台の扉を開けるまで」、あるいは、「指定の場所に降ろす
まで」と具体的に定めているでしょう。今回の事故のように、通常発生し
ないような廃棄物の場合はどうしているのでしょうか。
 また、この台車は800kgの物を載せてよい台車だったのでしょうか?
 事務所の職員が最大積載荷重を考えて載せたとは考えにくいです。単に
大きさが合ったので使ったと想像します。
 また、人間は何かトラブルがあると、とっさの行動で対応しようと考え
るものです。たとえば、トラックを斜面に止めて、降りた時、トラックが
動き出した際、慌てて止めようとして、そのトラックに轢かれるような事
故もあります。この金庫を運んでいた従業員も、金庫が傾いた時に慌てて
支えようとしたのかもしれません。後で考えると、人間が支えられること
は不可能だとわかっても、一瞬に止めようと行動を起こすものです。この
一瞬の判断は、多くの事故例を知っているとか、過去に災害にあったとか、
ヒヤリとした経験がないとできないものでしょう。
 組織が違う人でも「困っていたら助けよう」と考えるのが普通ですね。
しかし、このような事故もあるので、十分気をつけていただきたいと感じ
ました。

                     
      ご安全に!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 25 ☆
 ラジコ
  地震が発生した際に必要になるものとして「情報」があります。
  「情報」としてテレビ・ラジオなどがあります。ラジオを非常持出と
  して用意している人も多いことでしょう。
  携帯電話等でインターネットに接続できると、ラジオを聴くことがで
  きることをご存じでしょうか。ラジコ(radiko)があります。
  http://radiko.jp/#
  ネットの「お気に入り」に登録しておくと、役に立つ場面もあるでし
  ょう。

2012年11月17日(騒音対策)
 今週、ある事業所に訪問しました。その事業所では機械からの騒音が大
きいことが気になりました。騒音の管理区分はⅡもⅢもあります。騒音管
理区分Ⅲということは、等価騒音の平均が90dBを超えるものであり、職業
性難聴の危険が高いものです。その職場では区域内の作業者に耳栓着用を
義務付けていました。
 騒音対策としては多くの会社が耳栓で対応しています。耳栓は10dB程度
下げることができるので、安く、早くできるため、採用されるケースが多
いのです。機械設備等で騒音対策しようと考えると、10dB下げるためには
とても大きな金額が必要となるので、実行されることが少ないようです。
 耳栓を確実に着用すれば職業性難聴は防げるでしょう。しかしそれでい
いのでしょうか?
 私が企業で安全衛生担当をしていた時のことですが、騒音職場がありま
した(管理区分はⅠ)。その職場の安全衛生パトロールをすると、異常な
騒音を感じました。騒音発生源を見つけ、騒音計で図ると95dBにもなりま
す。すぐに機械設備保全担当者を呼んで調べさせると、回転部分のベアリ
ングが破損していました。しかし、その職場の人は誰ひとり異常に気が付
いていなかったのです。常時、騒音にさらされているので、異常と感じな
いのでしょう。発見が遅れたら、機械自体が破損し、大きな損害を生じた
かもしれません。
 聴覚は職場の異常を感知する重要なものですが、慣れてしまうと異常を
感知できないということです。
 また、職業性難聴にならないレベルであっても、毎日、不快な騒音の中
で勤務するのは、高いストレス要因にもなります。ストレスが強くなると
心の健康にも影響します。耳栓を常時装着することも作業者にとっては、
強いストレスであり、心も身体にもストレスが蓄積されます、ストレスか
ら間違い・ミスも生じるでしょう。
 さらに、騒音により、フォークリフトや台車などの接近、人の接近に気
が付きにくく、災害の要因になることもあります。
 ストレスを減らすため、災害を防止するため、周囲の状況を把握するた
め、快適な職場を創るためにも、騒音問題には真剣に取り組んでいただき
たいと考えます。
 では、どのような対策をすれば良いかが課題になりますが、これについ
ては改めてお話したいと思います。

                         
 ご安全に!  

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 24 ☆
 ファイヤーホールド
  「ファイヤーホールド」って何か知っていますか?
  名前を知らなくても、多くの方が知っているものです。
  正解はトイレットペーパーの端を三角に折ることです。
  「なぜファイヤーなの?」と思うでしょう。
  これはもう60年も前の事ですが、アメリカの消防士がトイレに入って
  いる時に緊急連絡が入った際、トイレットペーパーの端が見つからず、
  焦った事で、その対策として考えられたものだそうです。
  もし、トイレの中に居る時に地震が来たら、多くの方は焦るでしょう
  ね。まさか、お尻を拭かずに逃げるわけにもいきません。ファイヤー
  ホールドは地震時の避難に効果的かもしれません。
  トイレットペーパーに限らず、緊急時にすぐに必要なものは取出しや
  すいように改善しましょう。

2012年11月10日(咽喉マイク)
 10月17日から開催された危機管理産業展で見つけた良い商品を紹介しま
す。今回は谷沢製作所のハンドフリー拡声器「らくらくホーンⅡ」です。
http://www.tanizawa.co.jp/products/etc/data/x-00058.html
 拡声器といえば、一般的なものとして、メガホンマイクがあります。ど
この現場でもあるでしょう。メガホンマイクは片手で持たなければならな
いところが難点ですが、それを改善した、マイクを頭部に固定するハンド
フリー型の拡声器も世の中にたくさんあり、別に目新しいものではありま
せん。
 谷沢製作所のホームページには出ていませんが、咽喉マイク仕様のらく
らくホーンがあります。これはらくらくホーン(ST#8701)に咽喉マイク
(SO-HS173)を付けたものです。
 咽喉マイクというのは、首に巻くように取り付けたマイクで咽喉の振動
を音声に変換するものです。声が出せないような障害者のために開発され
たそうです。
 この咽喉マイク仕様の拡声器は特定の現場に適していると考えるので特
に紹介します。たとえば、酸欠の危険があるところでは空気呼吸器や送気
マスクを使用します。酸欠は死亡災害も発生するような危険なもので、常
に空気呼吸器等を使わなければなりません。一瞬でもマスクを顔から離す
ことができないので、声で指示することができません。マスクの中で話し
てもモゴモゴしてなかなか意図が伝わりません。その結果、誤った内容が
伝わるかもしれません。誤った情報で多くの人が危険な状態になっては大
変です。しかし、この咽喉マイク仕様は声をマイクでキャッチするのでは
なく、咽喉でキャッチするので、空気呼吸器等をしていても、問題ありま
せん。
 酸欠の場所だけでなく、除染作業や石綿除去作業、ダイオキシン類の業
務、硫化水素発生場所での作業に適しています。また、周囲の騒音が激し
いところで拡声器を使うと周囲の騒音まで一緒に出してしまいますが、咽
喉マイクでは周囲の音を拾いませんので、声だけをスピーカーから流すこ
とができます。
 さらには、騒音の激しいところでの工場見学などでは、案内をする人が
無線機で話し、参加者が無線機で聞くところもありますが、騒音も一緒に
無線機を通して聞くので聞き取りにくいのですが、これを使えば、案内者
の声だけを流すことができます。

 下記は谷沢製作所の製品ではありませんが、動画で様子を見ることがで
きます。http://www.youtube.com/watch?v=m_hpe96vZDA
 他にも咽喉マイクを扱っている会社がありますので、検索してみてはい
かがでしょうか。

              
            ご安全に!  

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 23 ☆
 オフィスグリコ
  11月11日は「ポッキーの日」だそうです。ポッキーが並んでいるよう
  に見えるかららしいのですが、今回紹介するのは「オフィスグリコ」
  です。
   http://www.ezaki-glico.net/officeglico/
  これは職場でお菓子を手軽に食べられるようなものです。設置料は無
  料だそうです。中身はグリコが補充してくれるので、会社にとっては
  コストがかかりません。
  従業員の福利厚生的なものですが、震災時には非常食にもなります。
  お菓子は高カロリーなので、非常食に向いています。
  コストのかからない備蓄食糧として検討されてはいかがでしょうか。
  なお、身近にお菓子があればついつい食べ過ぎてしまいますので、生
  活習慣病にはご注意ください。

2012年11月3日(泡消火剤)
 11月1日にドン・キホーテ青戸店で泡消火剤の誤放射がありました。
 http://www.donki.com/shared/pdf/news/co_news/1172/1101aoto_BszMV.pdf
 原因は軽トラックの荷台が天井のスプリンクラー配管に激突し、破損し
たものです。駐車場ではガソリン火災のリスクがありますので、水のスプ
リンクラーは使用せず、泡消火剤を噴霧します。
 報道で見ると、消防隊の方が排水溝に流して処理していました。あの泡
は排水溝に流していいものでしょうか?一般家庭の洗濯機と同じように考
えているのではないでしょうか?
 あの泡はPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)であり、PRT
R法で定める第一種指定化学物質のため、河川および下水に排出するのは
環境上問題があります。 あの泡はバキュームカーなどで吸引し、廃液とし
て処理しなければなりません。
 消火剤に詳しいと思われる消防隊が排水溝に流しているのを見て、がっ
かりしました。
 あの泡は人間にとっては有害なものでしょうか?
 発がん性など重篤なものとは明確になっていません。しかし、自然界で
分解されにくいフッ素化合物なので作業者はそれを吸引することは避けな
ければなりません。適切な保護具は何があるでしょう。防毒マスクが良い
とは思えません。送気マスクが良いでしょう。化学防護服と化学防護手袋、
ゴーグル型保護メガネ、長靴等が必要になると考えます。
 ISO14000シリーズの認証を得た会社も多いでしょうが、このような
泡消火剤を有する会社は泡消火剤の放出を影響評価しているでしょうか。
一度ご確認ください。
 対応だけでなく、誤放射を防止する措置が必要です。この店舗では、駐
車場の入り口に警告看板(車高○m以下)があったようですが、警告看板
に当たったことに気がついたのかどうか判りませんが、それを超えて侵入
したようです。警告看板の次には侵入防止バーが必要になります。侵入防
止バーを付けると、車に傷を付けるかもしれませんが、泡消火剤の誤放射
による排出は地球環境にも有害であり、廃液処理の環境負荷もあります。
会社にとっては費用の問題も大きくなります。

                         
 ご安全に!  

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 22 ☆
 カイロ(使い捨てタイプのカイロ)
  11月になりました。もしも今、大規模な地震が来ると、暖をとること
  が重要になります。電気・ガスが止まると、寒さに襲われるかもしれ
  ません。そんな時のためにカイロを相当数用意しておきましょう。今
  はホームセンター・ドラッグストアに大量に置いていますが、災害が
  発生すると、瞬く間に無くなってしまうでしょう。
  備蓄する時には、崩壊により取り出せないことを想定して、1つのと
  ころにまとめて置くのではなく、分散して備蓄するようにしてくださ
  い。また、有効期限もありますので、ご注意ください(有効期限が過
  ぎても使用できますが、持続時間が少なくなります)。

2012年10月27日(持病を隠して運転)
 2011年4月18日栃木県鹿沼市で、てんかんの持病を持つ運転手が持病を
隠してクレーン車を運転し、児童6人が犠牲になる事故がありました。ま
た、その直後の5月10日には広島県福山市で乗用車が集団登校の列に激突
し、4人が重軽傷を負う事故がありました。さらに、今年4月には京都・祇
園での暴走事故では持病を隠して免許更新するなど問題が発生しています。
道路交通法では、てんかんなど運転に支障が生じる可能性のある人の免許
取り消しを定めていますが、本人が虚偽の申告をしても罰則はありません。
そのため、事故被害者遺族が改善を求めていました。
 警察庁がまとめた運転免許制度見直し案では、医師が医療情報を申告で
きるとなっていますが、医師が個人情報を提供するのは問題があるという
ことで、任意提出にとどめたそうです。しかし、任意提出では事故防止の
実効性という面では不安が残ります。
 これらは、てんかんに限ったことではありません。躁鬱(そううつ)病、
重度の睡眠障害もあります。
 さらにこれらの持病は産業の場でも問題になります。業務での車運転だ
けでなく、クレーンの操作などもありますので、特に注意が必要です。こ
れらの持病は健康診断で発見できることは少なく、労働者が健康診断の問
診票に書かないというだけで簡単に見逃されてしまいます。
 会社内の健康診断であっても、故意に虚偽の申告をした場合のペナルテ
ィは検討する必要があると考えます。
 当然、飲酒によるアルコールが検出されるような場合も含まれます。さ
らに、禁煙を始めた人も要注意です。ファイザー製薬の「チャンピックス」
という禁煙のための飲み薬の服薬指導には「自動車運転をさける」と明記
されています。車での出張がある人、クレーンの運転をする人も同じよう
に検討しなければなりません。
 http://sugu-kinen.jp/patient/pdf/befoattent.pdf
 車通勤も考えざるえません。ご注意ください。

                           
 ご安全に!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 21 ☆
 放射性物質拡散予測   
  10月24日、原子力規制委員会は原発事故の際の放射性物質の拡散予測
  を発表しました。
  http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/20121024.html
  原発のストレステストなどで、安全性は高まっているとはいえ、最悪
  の状態を想定する必要があります。事業所等がこのエリアにある場合
  はBCP(事業継続計画)を進める必要があると考えます。
  事業所・支店・店舗・倉庫などがこのエリアにある場合には、災害発
  生時に長期間の停止を余儀なくされるかもしれません。

2012年10月20日(省スペースヘルメット)
 今週、危機管理産業展に行きました。災害に備える商品の情報収集をし
てきました。その中で今週はヘルメットの話をさせていただきます。作業
で頭部を守るだけでなく、震災対策として避難時の頭部保護のために常備
する会社も増えてます。
 しかし、ヘルメットは使わない時には、邪魔なものかもしれません。そ
んな要望に応えて、省スペースヘルメットが注目されています。中でも、
2008年に販売され大ヒットしたヘルメットが「タタメット」です。
 http://www.yellow-inc.com/prod_tatamet.html
 収納時には僅か35mmと薄く、邪魔になりません。緊急時には両サイドに
広げればヘルメットとして使えます。このタタメットの新型(2013年5月
発売予定)が展示されました。
 http://www.yellow-inc.com/pdf/leaf_tatamet_bcp_news.pdf
 収納時も使用時もさらに簡単にできるようになりました。しかし、タタ
メットは使用時の見た目が不評のようです。ヘルメットを普段から目にし
ている人にとっては、違和感があります。
 トーヨーセーフティの折たたみヘルメット「BLOOM」は球形にこだ
わった商品なので見た目もいいです。
 http://blogs.yahoo.co.jp/fukuraix3/66987774.html
 私がとても気に入って、その場の購入したのは、株式会社香彩堂の「コ
ンパクメット」です。
 http://www.kelvin1900.jp/conpaku-met.html
このヘルメットは3つのパーツに分割されるので、かさばらす、ヘルメッ
トを持って出張する時には最適です。しかも、高所作業の規格に適合して
います。(「タタメット」や「BLOOMは飛来・落下物保護用なので高
所からの転落災害防止については適していません)
しかし、使用時の組み立ては10秒ほどかかるので、地震対策用には不向き
かもしれません。

             
 ご安全に!  がんばろう、日本!  

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 20 ☆ 
 東京都帰宅困難者対策条例
  東京都では大規模災害発生時に多数の帰宅困難者が発生する対策とし
  て、来年4月から「東京都帰宅困難者対策条例」が施行されます。
  http://www.bousai.metro.tokyo.jp/japanese/tmg/kitakujorei.html
  交通機関が止まり、従業員が帰宅できないだけでなく、徒歩で帰宅す
  ると、ビルの崩壊により、ガラス等が落下してとても危険であり、車
  道および歩道に人があふれると、緊急車両の走行にも支障がでます。
  そのため、3日間は帰宅させず、会社内に留まることが努力義務化さ
  れます。水および食料の備蓄が必要になりますが、検討しなければな
  らないものとして、トイレの確保や寝床の確保、冬には暖房の確保が
  必要になります。

2012年10月13日(増える高齢者の骨折)
 足の付け根(大腿骨)を骨折する割合が15年間で2倍になったと言われ
ます。高齢者が増えたことが一番の原因でしょうが、ある医師が言うには、
戦争によって食料不足になり、その頃、成長期だった人は、栄養失調状態
になることが多く、高齢になって早く骨がもろくなり、転倒で骨折しやす
いそうです。厚生労働省の平成22年国民生活基礎調査によると、要支援・
要介護状態となる10人のうち1人は「骨折・転倒」が原因ということです。
 ある企業の安全衛生担当者は「雇用延長等で高齢者が職場に増えており、
転倒災害が増えた。中には、転倒による骨折で長期間の休業災害も発生し
ている。その事故の現場は段差があったわけでもなく、油などがこぼれて
いたのでもないので、どのように対策すれば良いのか頭が痛い。」と言っ
ていました。復職できればいいのですが、中には、そのまま寝たきりにな
り、復職できないという話も聞きます。
 別の安全衛生担当者は、リスクアセスメントを導入しているが、高齢者
の転倒⇒骨折⇒長期休業があり、高齢者対策を取り入れたリスクアセスメ
ントを考えているそうです。これには私も考えさせられました。リスクア
セスメントは危険源(ハザード)に作業者が接触・近接した際の重篤度と
可能性を主に評価しますが、考えられる災害の一番重篤な災害を評価しま
す。リスクアセスメントでは新入社員やベテラン社員の区別をしない方法
が一般的です。しかし、作業者を実際の作業者でなく、60歳を超えたよう
な高齢者を想定した場合には、実際に作業をしている若い作業者を想定し
たリスクアセスメントの結果が異なってくるかもしれません。これは困っ
た問題です。機械への挟まれ、巻き込まれのリスクより、「作業場の移動
の際に、小さな段差につまづいて転倒し、腰の骨を骨折する」というリス
クが多くなり、評価は、重大性が、転倒⇒骨折⇒長期休業または永久労働
不可になってしまい、可能性も大きくなり、「すぐに改善が必要」という
リスクレベルになるかもしれません。
 こうなると、「対策の優先順位を明確にする」というリスクアセスメン
ト本来の目的と乖離してしまうかもしれません。実際には高齢者が作業し
ていないにも関わらず、通路の設備を優先的に行うのは現状のリスク対策
と異なるかもしれません。費用対効果の面でも適切でないかもしれません。
転倒の要因となる段差に明確な数値はなく、わずか数ミリでもつま先が引
っ掛かると転倒してしまいます。
 この場合は、作業者をある程度限定したリスクアセスメントを行うか、
高齢者対策を別に考えることが良いと考えます。
(参考)
 厚労省の平成22年の調査によると、介護を受けたり、寝たきりになった
りせず、制限なく健康な日常生活を送ることができる「健康寿命」は、男
性70.4歳、女性73.6歳。同年の平均寿命は、男性79.6歳、女性86.4歳と推
計していることから、逆に「不健康な期間」は男性9.2年、女性12.8年と
なっており、超少子高齢化社会の到来を前に、医療・介護費用を抑えるた
め、健康寿命を延ばす政策が急務となっています。高齢者の転倒によって
骨折した場合、寝たきりになるかもしれません。転倒および骨折防止は重
要です。
 「健康寿命をのばそう!Smart Life Project」の施策展開について
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002lpyu.html

          
    ご安全に!  がんばろう、日本!  

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 19 ☆  
 密集市街地
  10月12日国土交通省が「地震時等に著しく危険な密集市街地」を発表
  しました。
  http://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000102.html
  しかし、おおざっぱな区域図なので、自分の家・会社はどうかわから
  ないと思います。住宅密集地では火災が広がった際に火災旋風で避難
  したけど、周囲を高熱の炎に囲まれる危険があります。また道幅が狭
  いと崩れた家屋に道をふさがれることもあります。一次避難場所、二
  次避難場所さらに広域避難場所への避難ルートを検討する必要があり
  ます。

2012年10月6日(日本触媒爆発事故)
 9月29日の爆発から1週間経過しましたが、まだ原因を特定できていない
ようです。不純物の混入か、酸素などの混入により異常な重合反応が出た
のではないかと言われています。消防士の防火服の損傷から重合反応でア
クリル酸は1000℃を超えていたとも言われています。
 参考:アクリル酸SDS(MSDS)(2012.4.2昭和化学株式会社作成)
  http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/01087160.pdf
 ある報道では、日本触媒が60℃以下に保つように管理していたとありま
したが、化学物質等安全データシートを見ると、引火点が54℃となってお
り、なぜ、日本触媒が60℃以下で管理しているのかと感じました。管理し
ていると言いながら、タンクから白煙が出るまで異常に気がつかなかった
というのは、タンク内の重合を想定していなかったのでしょう。想定して
いれば、温度センサーを設置して、常時監視をしていたはずです。
 また、自然発火温度は360℃ということですから、白煙が出た時にはこ
れに近い温度になっていたと想像できます。そこまで温度が上がると、重
合反応抑制剤や重合反応防止剤を投入することは逆に危険でもあります。
従業員が消火栓で水をかけて冷却したことは間違いではありませんが、容
器の外に水をかけても効果は低く、温度上昇を止めることはできません。
(70トンものタンクに冷水をかけても温度上昇は止められない)
 白煙が出た時点で、社内では対応限度を超えているのですから一刻も早
く消防に通報するべきだったでしょう。
 しかし、消防隊がすぐに駆けつけ、何十本と放水したとしても爆発は止
められなかったと想像します。
 重合反応が制御できなかった場合、爆発することを予測し、消防隊との
連絡ができていれば、犠牲者は出なかったのではと感じました。
 化学物質の「化」は「(化)ばける」です。どのように化けるか想定し
ておくことがとても重要です。


2012年10月6日(ガソリンスタンド爆発)
 10月3日滋賀県甲賀市のガソリンスタンドで業者が掘削工事中に爆発が
ありました。幸い作業員に大きなけがはありませんでしたが、屋根を突き
破る程の大きな爆発でした。
 掘削機が地下約60cmで金属のような固形物に当たり、業者が先のとが
った金属棒で突いて確認していたところ爆発したそうです。
 このスタンドでは約40年前に配管が折れて大量のガソリンが漏れ、地中
に染み込み、毎年、業者による土壌浄化作業を進めていたようです。
 事故の発生状況から考えると、過去に漏えい事故があり、地中に相当量
のガソリンが残っていることを、掘削業者に伝えていなかったのではない
かと想像します。掘削業者のこの事を理解していたら、掘削の方法を変え
ていたと考えられます。もし、その通りであれば、この事故には注文者側
の過失も相当高いと考えます。
 ガソリンの危険性は良く考えていただきたいものです。
 たとえば、ガソリンが一杯に入ったドラム缶とガソリンが入っていたが
ほぼ空になったドラム缶があった場合、一杯入ったドラム缶の方が危険と
思われがちですが、ほぼ空になったドラム缶の方が爆発の危険性は高くな
ります。(爆発限界濃度によるもの)

               
ご安全に!  がんばろう、日本!  
 
☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 18 ☆  
 長周期地震動
  長周期地震動とは、振動の1往復(周期)に2秒以上かかるゆっくりし
  た横揺れで、高層ビルを大きく揺らすのが特徴です。
  南海トラフ巨大地震があった時には、名古屋で周期3秒のところが最も
  多く、大阪では5秒、東京では8秒になるそうです(場所・地盤によっ
  て異なり、何秒の周期が多いかということであり、上記以外の周期も
  発生します)。その周期と建物が共振する周期(固有周期)は関係が
  あり、目安としては、周期(秒)を10倍した階数のビルが揺れやすいそ
  うです。大阪では5秒ですから、10倍した50階前後のビルが揺れやす
  いということになります。

2012年9月29日(海に車が転落)
 24日午前3時ごろ、神戸市中央区でドリフト走行を楽しんでいた若者3人
が死亡し、1人が脱出し命びろいした事故がありました。
 なぜ、1人だけ助かったのか、生死を分けたのは何だろうかと考えてみ
ました。
 事故の車はスバルのレガシーB4、4ドアタイプでした。報道では「助手
席の割れた窓から脱出した」ということでした。事故後の写真では助手席
側の窓ガラスが割れていました。3人は脳震とうなどで気を失い、逃げ遅
れたのだと想像します。
 私も皆さんもドリフト走行することは無いでしょうが、何らかの事故で
海・川に車ごと落ちることがあるかもしれません。その時、脱出できるで
しょうか? 万一に備え、考えてみたいと思います。
 車本体の損傷が無く窓を全て閉めていた場合、密閉性が高く、簡単には
水は入ってきません。この時、どのようにして脱出すれば良いでしょうか。
 多くの車がパワーウインドウです。エンジンルームが水没すると、電気
系統はダウンするため、窓は開けることができません。ドアは水圧がかか
るため、人力では開けることができません。そのまま助けを待っても徐々
に水が入ってくるため、溺れることになります。
 助かるためには、窓を割って脱出する方法と、室内が水で一杯になり、
中と外の水圧差が無くなった時にドアを押しあけるしかないでしょう。た
だし、室内が水で一杯になったとしても、ドアの外に障害物があれば、水
圧差が無くなっても、ドアを開けることはできません。したがって、窓を
割ることを第一に考えなければなりません。
 空手などの格闘技をする人は肘打ちなどでドアを割ることができるかも
しれませんが、多くの方には無理でしょう。
 そのような時のために、車脱出用ハンマーが市販されています。普通の
ハンマーと違い、先が円錐型になっていて、力がピンポイントで加わるた
め、車の窓でも割ることができます。ガラスに穴が開き、ヒビが広がると
比較的容易にガラスを割り、脱出口を確保することができます。
 皆さんの車には常備していますか?私の車には常備していません。車脱
出用ハンマーが無い場合はどうすればよいか調べました。ある方はヘッド
レスト(頭を支える部分で、上下に動くもの)を引き抜いて、その先の金
属で叩けばいいといいます。本当に割れるのでしょうか心配です。火事場
の馬鹿力が出れば割れるのかもしれません。
 海・川に落ちなくても、ゲリラ豪雨などで、動きが取れなくなるかもし
れませんし、津波の被害に遭うかもしれません。(水没する危険を感じた
場合は、電気系統が働くうちに窓を全開することも必要だと考えます)
 そんな事が気になった方は車脱出用ハンマーを購入してはどうでしょう。
 (カー用品店で千円以下で売っているようです)

             
  ご安全に!  がんばろう、日本!  
 
☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 17 ☆
 電車の乗る位置
  9月24日に京浜急行が崩落した土砂に乗り上げ、脱線する事故があり
  ました。地震はあなたが電車に乗っている時に発生するかもしれませ
  ん。緊急地震速報をキャッチすれば速度を落とし、停車しますが、緊
  急地震速報が間に合わない場合もあります。JR宝塚線脱線事故(2005)
  でも先頭車両から数両が大きなダメージを受けました。
  万一に備えて、後ろ側の車両の方が良いかもしれません。

2012年9月22日(飲酒運転の悲劇)
 9月21日から30日まで秋の全国交通安全運動です。交通事故は、業務上
の死亡災害の2番目に多い(平成23年は239人)もの(1番多いものは墜落・
転落で、278人)です。業務上もプライベートも安全運転でお願いします。
 しかし、今週、私の友人のAさんの姪にあたるBさんが横断歩道を横断中
に交通事故にあいました。命は取りとめたものの、頸椎を骨折しました。
意識はあり、手も動くのですが、下半身は動きません。医師の診断では、
下半身の回復は望めないということで、とても気の毒です。
 加害者Cさんは、飲酒運転でした。事故は朝でしたが、加害者は前の日、
夜中過ぎまで飲み、アルコールは全て分解できず、呼気にアルコールが含
まれていました。
 しかも、Cさんは、Aさんが子供の時からの親友でした。
 Aさんにとっては二重の悲しみです。姪が事故に遭い、その加害者が親
友なのです。Aさんは、治療費や入院費はどうなる?、今後の補償はどう
なる? で、とても悩んでいます。
 Bさんの手術はこれからです。日常生活ができる程度まで回復すれば、
まだいいのですが、一生、車椅子での生活になる可能性が高いのです。
 Cさんは自動車保険には入っていましたが、飲酒運転なので保険給付は
受けられないでしょう。Cさんはまだ30代です。そんな貯蓄があるはずも
なく、損害賠償どころか、治療費・入院費の負担さえ困難な状況です。
 Aさん、Bさん、Cさんだけでなく、それぞれの家族にとって大きな障害
になるでしょう。
 Aさんから相談を受けましたが、私としてもどうしようもありません。
とりあえず、自賠責保険の請求をするように言いました。しかし、自賠責
では治療費・入院費にもならないかもしれません。(自賠責は給付される
でしょうが、その費用は加害者に請求されます)
 このAさん、Bさん、Cさんは、一生苦労することになるでしょう。
 この3人だけではありません。家族も親戚にも平穏な生活は戻らないか
もしれません。
 特にAさんのメンタル面を心配しています。Aさんはストレス耐性が弱い
のでメール等でフォローしていくつもりです。
 このように、飲酒運転は、自分だけでなく、被害者やその家族、自分の
親族にも悲しみと経済的負担をかけてしまいます。
 Cさんが出勤途中なのか、業務中なのかは聞いていません。
 被害者は自分の生活を守るために、「管理責任」として、加害者の雇用
者をも訴えるかもしれません。社員の飲酒運転は会社にも影響を与えかね
ません。飲酒運転の撲滅はみんなが真剣に取り組んでほしい問題です。
  「飲酒運転は、しない。させない。黙認しない。」
               ご安全に!  がんばろう、日本!  
 
☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 16 ☆  
 地震時緊急作業マニュアル
   生産設備の異常や化学物質の漏えいに備え、緊急時の作業手順を決
  めている会社も多いと思います。
   その多くは、異常が発生したとか、化学物質が漏えいした時の作業
  手順ではないでしょうか。
   緊急地震速報が発令されたことを想定していますか?
   緊急地震速報が発令された時点では何秒後に地震がくるかわかりま
  せん。緊急地震速報が発令されたら、避難を開始しなければならない
  のですが、機械・化学設備に関しては、避難より先に措置を優先しな
  ければ、人的被害が大きくなるものもあるかもしれません。
   その数秒間に行うべき作業があるなら、地震時緊急作業マニュアル
  が必要になります。緊急地震速報が発令されてから、そのマニュアル
  を探すようでは困ります。何度も訓練し、その機械・設備に掲示する
  などしてください。

2012年9月15日(ジェットコースター事故)
 9月8日、福島県郡山市の「郡山カルチャーパーク」にあるジェットコー
スターで点検作業員が死亡する事故が発生しました。
 亡くなった作業員はジェットコースターのレール上にあるチェーンに潤
滑油を補給する作業をしていたようです。作業をしていた時に別の従業員
がジェットコースターをスタートさせ、車両に挟まれて死亡しました。
 最初、この報道を見たときは、「なぜコース上に作業員がいるのに、運
転を開始したのか?」疑問に感じました。保守作業の連絡が漏れていたの
かと思いましたが、その後の報道ではさらに驚きました。スタートさせた
従業員は被災者が軌道上で作業をすることを知っていたというのです。操
作盤の位置から被災者が作業している場所は容易に目視で確認することが
できました。
 この施設ではマニュアルが定められ、保安作業中は運転禁止となってお
り、保安作業中は、操作盤に「点検修理中さわるな」のプレートを掲げ、
操作盤のカギは保安作業員が携帯することとなっています。
 事故当日はこのマニュアルに反して作業していました。状況から判断す
ると、運転作業者と保安作業者のどちらかがマニュアルに反したのではな
く、お互いの了解の元にマニュアルを無視したと考えられます。
 ジェットコースターの軌道上で作業するためには長い階段を登らなけれ
ばならず、上り下りを繰り返すのは重労働でもあり、お客様のことを考え
れば保安のための停止時間を減らしたいと考えたということも容易に想像
できます。
 保守のための足場があるので、そこでジェットコースターの通過を待つ
こともできるので、今回の状況は、この日が初めてではなく、常習化して
いたとも考えられます。
 安全のためのマニュアルがあっても、それを無視して自分が楽に作業が
できる方法を考えるのは、よくあることです。
 ルールをわかっていても、「自分なら、この方法で安全に楽に作業でき
る」と考えたら、ルールを無視する人がいます。運転作業者も、「この炎
天下で何回も階段を上り下りするのは気の毒だ」と考え、ルール無視に同
意したのでしょう。

                
ご安全に!  がんばろう、日本!  

 216号で出題した答え(人為的災害で死者数が一番多い災害とは?)
 インド  ボパール化学工場事故( 1984年12月2日 深夜発生)
  水がイソシアン酸メチルの入ったタンクの中に流入し、発熱反応が起
  きた。それによりタンク内の温度は200℃にまで上昇し、一気に圧力
  が上昇、約40tのイソシアン酸メチルが流出し、有毒ガスが工場周辺
  の町に流れ出した。この有毒ガスは肺を冒す猛毒である。有毒ガスは
  ボパールの都市へと流れていった。工場の近隣市街がスラムという人
  口密集地域であったこと、また、風がなく有毒ガスは拡散せず滞留し
  たため、夜明けまでに2000人以上が死亡、約30万人が被害を受けた。
  死者の数は最終的に14410人と報道されている。

 
☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 15 ☆
 バーベキューセット
  来週末は秋分の日です。猛暑が続く夏ですが、もうすぐ気温も落ち着
  いて行楽シーズンになるでしょう。テントやバーベキューセットを買
  ってレクリェーションを楽しみましょう。テントやバーベキューセッ
  トは災害発生時には役に立つでしょう。

2012年9月8日(火災時の避難場所)
 先日、南海トラフ巨大地震の被害想定がありました。最大で32万人にも
なります。関東大震災の3倍にもなります。関東大震災では一番被害を大
きくしたのは火災でした。木造の住宅が集中して一度に多くの家屋が燃え
たために火炎旋風が発生しました。火災旋風というのは火災合流もと呼ば
れ、1軒1軒の火災が一つの火柱になり、1000℃を超える高熱になり、その
輻射熱でさらに火災が広がります。関東大震災ではその輻射熱により、公
園に逃げた約4万人全ての命を奪ってしまいました。
 今と当時との一番の違いは車の台数かもしれません。50リットルものガ
ソリンを積んだ車がたくさんあります。輻射熱でガソリンタンクは破裂し、
火に油を注ぐようなもので、大きな火災旋風が発生するかもしれません。
 住宅地の中にある小学校に逃げたのでは輻射熱によって全員が死亡する
かもしれないのです。
 避難場所を決める場合には、周囲の工場、民家等を考え、一次避難場所、
二次避難場所だけでなく、広域避難場所も想定する必要があります。
 また、避難場所に逃げ込むルートも複数を想定しなければなりません。
地震崩壊によって道が無くなるかもしれないからです。
 さらに、避難は火災から逃げるだけではありません。南海トラフ巨大地
震では津波にも警戒しなければなりません。避難場所が津波の警戒区域に
なっている場合には避難場所にはなりません。
 会社の立地環境を評価し、火災を想定した避難場所が必要なのか、津波
を想定した避難場所が必要なのか、火災も津波も想定した避難場所が必要
なのかを見定める必要があります。
 敷地が広く、高い建物がある会社では、地域住民のための避難場所とし
て提供することも検討していただきたいと考えます。
 企業と地域の絆が無ければこの巨大な地震には立ち向かえません。市町
村からの指示を待つのではなく、早く行動を起こしていただくようお願い
します。

               
 ご安全に!  がんばろう、日本! 
 
☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 14 ☆
 救急の日(9月9日)
  通常、ケガ人等が発生すると、救急車を要請しますが、震災時には
  救急車は来ないと考えなければなりません。
  AEDが必要になるかもしれません。
  大けがをして大量出血になるかもしれません。
  止血方法を知っているのと知らないのでは大きな差が生じることも
  あります。できるだけ、消防等で実施している救急措置講習に参加
  するようにしてください。 

2012年9月1日(南海トラフ巨大地震)
 8月29日、マグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震の被害想定が
発表されました。その死者は32万人。耳を疑うような数字に驚きました。
東日本大震災の17倍にもなります。震源位置、季節、時間等で最悪の数値
ということです。この想定を元に、国、市、町、国民、企業が知恵を出し
合い事前の対策を行い、1桁、2桁、3桁と減らし、死者ゼロに近づけなけ
ればなりません。死者の一番多い要因として津波があります。想定の7割
にあたる23万人が津波で命を落とすと考えられています。
 津波が最も早く到達すると考えられている場所は和歌山県串本町です。
地震発生から2分後に1mの津波が来ると発表されました。50cmの津波で、
立つことさえできません。1mになれば人は流されます。流されるのは人
だけでなく、車も家も流されてしまいます。そして、4分後には10mの津
波が襲います。4分以内に高台に避難しなければならないことになります
が、東日本大震災の時には5分以上も揺れ続けました。揺れが収まる前に
津波が押し寄せるかもしれません。揺れている最中に高台に避難できるで
しょうか。揺れている時は家屋の崩壊や屋根瓦等の落下があるので避難は
危険です。また、足元が安定しないので、転倒することもあります。さら
に震源域に近いところでは緊急地震速報が間に合わないと考えられますの
で、突然に地震にあい、揺れが止まる前に津波が襲ってくるということで
す。高台への避難は現実的に難しいのです。東日本大震災の時には、一番
早い場所でも発生から30分が経過していました。東日本大震災の津波と南
海トラフ大地震の津波を一緒に考えるわけにいかないのです。その対策と
しては事前に高台へ移転するか、防潮堤を作るしかないでしょう。(ノア
のようなシェルターに逃げ込むことも有効です)
 防災シェルター「ノア」:http://tsunami-s.com/
 東日本大地震は貞観地震(869年)と似ていると言われています。貞観
地震の18年後に仁和地震(887年)と言われる南海地震が発生しました。
 南海トラフはユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが潜り込
むような大陸の境目です。プレートは常に動いており、地震発生のエネル
ギーをため込んでいるようなものです。いつか急激なズレを生じて、地震
と津波が発生するのは間違いないでしょう。発生しないことを祈るのでは
なく、対策を検討し、実行して備えることが必要だと考えます。 

              
  ご安全に!  がんばろう、日本!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 13 ☆
 災害用伝言板の一括検索
  NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス、ウィル
  コムら携帯電話・PHS各社と、NTT東西、電気通信事業者協会(TCA)
  は8月29日、災害用伝言板の安否情報を事業者を問わず検索できる
  「全社一括検索」を8月30日から開始すると発表しました。
  これによって、回線の違いを意識せず、一度の操作で安否情報を確
  認できるようになりました。
  災害用伝言板は災害時しか運用していませんが、防災週間中(9月5
  日まで)は利用体験ができます。

2012年8月25日(全国労働衛生週間)
 全国労働衛生週間は10月1日~7日となっています。その週間にそなえ、
9月は準備月間です。今年のスローガンは
  「心とからだの健康チェック みんなで進める健康管理」です。
 労働衛生週間というと、自殺者が3万人を超えるようになってからメン
タルヘルスに重点が置かれていますが、業務上疾病は毎年8000人ほど被災
しています。
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/index.html
 メンタルヘルス対策や健康診断有所見者対策も重要ですが、今年は化学
物質の取扱いについて考えていただきたいと思います。それは印刷業での
胆管ガンが問題となっていますが、印刷業だから問題になっているのでは
なく、発がん性のおそれのある溶剤を使っていたことが問題なのです。
 みなさんの職場でも化学物質を使っていると思います。その取扱いは法
に準じているでしょうか?取扱い手順書はありますか?保護具は適切な物
を使い、適切な管理ができているでしょうか?さらに、その化学物質を使
っていて将来、疾病のおそれはないでしょうか?
 上司から「○○は安全だ」と言われて、それを鵜のみにしていませんか?
胆管ガンが問題になっている会社でも「○○は安全だ」と教えられたそう
です。
 化学物質は5万種以上が流通していると言われています。その中で、労
働安全衛生法等で規制されているのは、ほんの僅かです。多くの化学物質
の取扱いについては法による規制が無いのが現実です。
 MSDS(化学物質安全データシート)の読み方は理解されていますか?
GHSによるシンボルマークは理解されていますか?
 「上司が大丈夫と言っている」「昔から使っているけど何の問題もない」
というのは正しいことでしょうか?
 不安を掻き立てるような書き方になってしまい、申し訳ないのですが、
この機会に化学物質の取扱いについてもう一度検証していただきたいと考
えます。職場の中には「この化学物質を使っていていいのか?」と感じて
いる方がおられるかもしれません。
 化学物質の見直しは、社会的関心の高い今が一番良い時期だと感じます。
                ご安全に!  がんばろう、日本!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 12 ☆
 消火訓練は消火器だけでなく、消火栓取扱訓練も
  9月1日は関東大震災の発生した日です。この関東大震災では10万人も
  の方が犠牲になりました。多くの方は火災によって命を失いました。
  当時と現代では消火設備が全く異なりますが、火災に対する対応力は
  身につけておかなければなりません。消火器は多くの方が訓練を受け
  ていますが、消火栓の訓練を受けた方は少ないと思います。地震時に
  は消防車は来れない事を想定して、消火栓訓練も行ってください。

2012年8月18日(豪雨による交通マヒ)
 8月14日の早朝に激しい雷雨がありました。朝の5時前です。激しい雷鳴
で起きました。これは危険と考え、万一に備えて、パソコンの電源を抜き、
LANケーブルを抜きました。(うちでは雷による過電流対策をしていな
いからです)
 我が家のトラブルは無かったのですが、近くでは女性が増水した用水路
で死亡していましたし、宇治市では川が氾濫して大きな被害がありました。
 私の娘が大阪駅まで行かなければならないというのですが、JR学研都
市線は雨によって不通です。それなら京阪電車と思って確認すると、配電
室、車庫が浸水して動かない。我が家はJR学研都市線の長尾駅から徒歩
10分ぐらいのところにありますが、JRと京阪電車が止まるとどうしよう
もないことに気が付きました。仕方ない、第二京阪道路を使って送ろうと
考えましたが、第二京阪道路も通行止めという報道でした。不思議だと思
いましたね。全て高架道路なのに通行止めとは驚きました。
 仕方ないので、一般道で、JRが動いている四条畷駅まで車で送ること
にしました。しかし、誰の考えも同じですね。道路は大渋滞です。う回路
を探しながら、なんとか、1時間10分で四条畷駅に送りました。しかし、
そこからが大変です。さらに渋滞はひどくなり、家まで戻るのに3時間も
かかりました。
 家に帰って、反省しました。なぜ、こんな無駄な事をしたのだろう?
 自動車って日常は便利だけど、災害時には役に立たないことは判ってい
るはずなのに、なぜ、「四条畷駅まで送る」ことを選択したのでしょう。
原付バイクで四条畷駅まで行かせたら何の問題も無かった。
 我が家の場所ではJRと京阪電車が止まってしまうと、どうしようもな
いことが判りました。もし、次に同じようなことがあればどうするかです
ね。一番は動かないことですね。仕事等をキャンセルしましょう。でも、
キャンセルできない場合もあります。その場合は、自転車ですね。安い自
転車なら1万円で買えます。タクシーに乗って移動しようとしても1万円で
は足らないかもしれません。タクシーより自転車の方が早く着くでしょう。
ホームセンターや自転車店がどこにあるかを把握しておくと何かの時に役
に立つかもしれません。でも、自転車があっても目的地まで行く体力がな
ければなりません。日頃から身体を鍛えておくことも危機管理に重要だと
考えます。
 14日は多くの会社が盆休みで良かったですね。普通の日なら大混乱にな
ったところでした。

                
ご安全に!  がんばろう、日本!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 11  ☆
 コピー機は凶器にもなる
  多くの職場にコピー機があります。カラー機能が付いた物はとても重
  量があります。多くの場合、移動ができるようにキャスターが付いて
  います。地震時には、猛スピードで激突する可能性があります(普通
  の人が受け止められるものではありません)。固定等をしてください。

2012年8月11日(こんな事故が?)
 今週は、「こんな事故ってあるの?」という新聞記事を紹介します。
 リスクアセスメントでは、考えられる危険・有害要因を検証する必要が
あります。参考になるのではないでしょうか。
◆小松市民病院で爆発事故 昨年12月、地下倉庫で (7/25)
 石川県の小松市民病院(小松市)で昨年12月、スプリンクラーの配管
内で発生した水素ガスが原因で地下の倉庫で爆発事故があったことが分か
った。水素はスプリンクラーの配管が腐食し水と反応して発生しており、
爆発は配管の老朽化によりほかの施設でも起きる恐れがある。総務省消防
庁も全国的に珍しい事故として把握しており、大きな事故につながる可能
性もあるとして定期点検の徹底を呼び掛けている。
 小松市消防本部によると、昨年12月4日午前9時半ごろ、小松市民病
院本館の地下1階の約5平方メートルの地下倉庫で爆発があり、入り口の
厚さ5センチの鉄の扉が折れ曲がり、部屋の外のコンクリートの壁板に長
さ1メートルの亀裂が入った。
 爆発当時、スプリンクラー増設工事のため、業者は地上階で、既存のス
プリンクラーの配管内にたまった水を爆発があった倉庫下の用水槽に出す
作業をしていた。けが人はいなかったものの、倉庫内にいた場合、惨事に
なる恐れもあった。
 市消防本部が依頼した専門家の調査で、内側を亜鉛メッキされた鋼製の
スプリンクラー配管が腐食したことで亜鉛が水中に溶け出し水中の水素イ
オンと反応して水素が発生。水と一緒に用水槽に排出され倉庫に充満。倉
庫にあった分電盤の火花が引火し爆発したことが分かった。
 病院の管理局長は「前例がない事故」と説明。工事業者が、工事中の水
素ガスの検知を怠ったことが原因として改修、修理費の負担を求め修理し
たという。再発防止のため水素が倉庫にたまらないよう、スプリンクラー
配管の排水口も屋外に出した。
 スプリンクラーや屋内消火栓の配管には亜鉛メッキの鋼管が一般的に使
われている。
 総務省消防庁予防課の専門官の話 屋内消火栓では放水時に配管内の水
素ガスに着火した例がある。スプリンクラーも解体工事中に、配管内の水
素に火が付くことがある。作業には細心の注意が必要だ。(中日新聞)
                ご安全に!  がんばろう、日本!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 10 ☆ 
 自動販売機
  飲料自動販売機は備蓄飲用水として利用できます。コーヒーも炭酸飲
  料備蓄飲用水になります。ただし、電源がなければ使えません。発電
  機があれば備蓄飲料水になります。

2012年8月4日(北大阪労働衛生大会)
 北大阪労働基準協会から、9月14日に「北大阪労働衛生大会」での特別
講演の講師をさせていただくことになりました。
 テーマとして、昨今、大阪を中心に関心の深い胆管ガンの原因といわれ
ているジクロロメタンや1.2-ジクロロプロパンなどの化学物質による職業
性疾病の防止についてをメインテーマと考えています。
 講演タイトル:「化学物質は全て有害なもの(安全に使うために、過去
         から学び、未来を予測する)」
       * 参加申込書をご希望の方はメールください。
 思い出してみると、私が社会人になってはじめて配属された部署ではセ
メダインやヘキサンを良く使いました。ヘキサンは汚れをふき取りやすい
ので、手がひどく汚れた時にはヘキサンを直接手にかけて洗い流したもの
です。何十年も前の話ですが、有害なもの危険なものという教育はありま
せんでしたし、何も考えずに使っていました。
 胆管ガンで注目されている会社では、社員から「この溶剤は有害ではな
いのか?」とクレームがあったようですが、会社は「他の従業員が不安に
思うような発言はするな!」と言われたそうです。多くの会社では多種多
様な化学物質を使用していると考えられますが、「人体に有害だから、保
護マスクと保護手袋は必ず使え」と指示している会社はどのくらいあるで
しょうか? 悪臭であっても、健康障害がなければ無害だと考えている事
業所もあると考えられます。通常の使用であれば、人体被害もないので、
「無害だ。心配するな」という会社が多いかもしれません。中小零細企業
で作業環境測定や健康診断をしていない会社も多いかもしれません。無害
だといっても、それは実際に健康影響が表面化していないだけのところも
あるでしょう。
 私は飲酒を好みます。無害どころか、有益なものと思って飲んでいる一
人かもしれません。少量であっても有害という人もあれば、少量なら有益
と考える人もいます。しかし、「度」を過ぎると、有害なものでしょう。
(その「度」は個人差があります)
 化学物質にはサリンのような微量なものであっても致命傷を与えるよう
な殺人兵器につかるようなものもあれば、消毒用エタノールなど身近な化
学物質もあります。消毒用エタノールの蒸気でも高濃度になれば、人体に
有害です。化学物質は、量の大小の違いはあっても全て人体には有害なも
のだと考える必要があります。化学物質ではありませんが、水分の摂取も
度を過ぎると、「水中毒」になります(体内の塩分の異常低下)。人類に
必須な酸素でさえ、高気圧環境であれば、「酸素中毒」にもなります。す
なわち、人類に無害な化学物質は無いと考えるべきなのです。全ての化学
物質は人体に有害だから使用をやめれば問題がないのですが、それでは経
済が成り立ちません。有害な化学物質でも、許容濃度があります。許容濃
度を超えないように、あるいは、極力、曝露を減らせば良いのです。その
ためには衛生工学的職場環境の改善が欠かせません。上記の講演では、そ
の衛生工学について解説していきたいと考えています。多くの方のご参加
をお願いします。 
 最後に一つ問題を出します。
 人類の歴史の中では、多くの人命を失うよう事件・事故がありました。
第二次世界大戦のような戦争でもなく、スマトラ地震・津波のような自然
災害でなく、人為的な災害で一番多くの人命を失った災害は何でしょうか?
(ヒント:豪華客船タイタニックでの事故(1912年4月14日の沈没事故に
よる犠牲者約1500人よりもっと多くの人が人命を失った事故がありました。
それは化学物質漏えい事故です。)
 * 答えは9月14日の北大阪労働衛生大会で解説します。
   また、9月16日のメールマガジンに掲載します。
                ご安全に!  がんばろう、日本!

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 9  ☆ 
 震災教育の効果の高い日
  8月30日から9月5日は防災週間です。この期間中は携帯電話会社の伝
  言サービスの体験などができると聞いています。
  災害発生時の通信確保はとても重要です。この防災週間では体験が可
  能になるので、普段の震災教育以上に教育効果を高めることにつなが
  ります。
  受講者の教育効果を高めるためには、「特別の日(1923年9月1日は関
  東大震災の発生した日)・期間に開催することが防災意識を高めるた
  めにも重要だと考えます。 

2012年7月28日(オリンピックに注意)
 28日、開会式行われ、オリンピックが始まりました。開会式に先立っ
て行われた、女子サッカー、男子サッカーは初戦白星で飾り、オリンピ
ック熱がさらに高まったと感じます。しかし、ロンドンと日本の時差は
8時間です。昼間(日本時間は夜)のゲームより、夜(日本時間は深夜)
のゲームに注目のゲームが多いように感じます。どうせ観戦するなら、
リアルタイムで見たいものです。多くの方が深夜にテレビ観戦するでし
ょう。でも多くの方は朝には会社に出勤しなければなりません。睡眠不
足の状態で出勤する社員が多くなる可能性がとても高くなります。睡眠
不足の状態で仕事をすると、ミスが増えます。それに伴って事故も増え
るのではないかと心配しています。それにも増して、猛暑の時期です。
睡眠不足は熱中症の要因の一つでもあります。
 オリンピック期間中は睡眠不足・猛暑による集中力の低下、作業ミス
が増え、労働災害のおそれが高い期間でもあるのです。
 現場責任者の方は朝のミーティングで作業者の健康チェックを十分に
行ってください。この2週間は特に目を配っていただくようお願いしま
す。
 また、中にはビールなどのアルコール類を飲みながらテレビ観戦する
人もあるでしょう。深夜3時・4時まで飲んで、寝て、朝7時に起きて車
で出勤すると酒酔い運転・酒帯運転になります。一晩寝るとアルコール
を分解できると思っても、睡眠時間が短いとアルコール分解が不完全で
す。そのまま運転すると危険です。もしも事故を起こして、人の命を奪
ってしまうことがあると、道路交通法の刑罰だけでなく、損害賠償を請
求されます。自動車保険は飲酒運転では給付されないので、一瞬にして
人生が変わってしまいます。
 オリンピックは全世界の人に感動を与えるものに違いありませんが、
今述べたことが現実になってしまうと大変です。十分にお気を付けくだ
さい。
 では具体的にどうすれば良いでしょう。
 「テレビを見るな」と言うのは酷かもしれません。
 リアルタイムは諦めて、「時間差観戦」がいいでしょう。ゲームの予
定が2時間ならテレビ番組を録画して、朝5時に起きて見ればいいです。
他のテレビもラジオもインターネットも見ずに、試合結果を見たり聞い
たりしないようにして、ロンドンからの映像が4時間かけて自宅のテレ
ビに届くつもりで早朝に起きて観戦してください。早く寝て、早く起き
る。健康的でありながら、翌日、同僚と会話しても話題に乗り遅れるこ
とがありません。
 オリンピックは2週間もあります。この期間、災害ゼロ、熱中症ゼロ
で過ごし、その後の盆休みを楽しめるよう頑張ってください。現場監
督者・安全衛生担当者はテレビの番組表を見て、注目のゲームがある
日は特に注意してください。

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 8 ☆ 
 高所での作業はヘルメット着用
  脚立で作業している時に地震が発生したら、落ちてしまいます。それ
  が致命傷になることもあります。慣れた作業であってもヘルメットは
  必ず着用してください。
  これは地震に限ったことではありません。特に今の時期は、熱中症の
  症状が出やすい時期です。立ちくらみがしてバランスを崩すこともあ
  ります。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年7月21日(1.2-ジクロロプロパン)
 先週の続きのようになりますが1.2-ジクロロプロパンについて思うと
ころを述べさせていただきます。
 マスコミ報道や知人からの情報により、今回問題になっている1.2-ジ
クロロプロパンとジクロロメタンですが、ウエスに染み込ませてインク
等を除去していたということです。「染み込ませる」ってどのくらいの
量だと想像しますか?
 「ウエスが湿った程度」
 と考える人もいるでしょうが、一部の印刷業作業者はウエスにジャバ
ジャバかけていたようです。ウエスからはポタポタ滴が垂れています。
揮発性が高いので、量がとても多いそうです。なぜ、それほどたくさん
の量を付けるかというと、早くインク等を拭き取って、次の作業をしな
ければならないからです。もしかしたら、ウエスに染み込ませるのでは
なく、印刷機に直接洗浄液をかけて、ウエスで拭き取っていた人もいる
ようです。
 私はある会社での死亡事故を思い出しました。
 ある会社で、床の塗装を塗り直すことになり、従業員がウエスにシン
ナーを染み込ませて拭き取っていました。しかし、シンナーといえども
簡単には拭き取れません。そこで、従業員はシンナーをウエスに付けな
いで床にシンナーを撒き、さらに、床面掃除(Pタイル等の表面磨き)
で使用する電動ポリッシャーで塗装を剥がせば早いと考え、実行しまし
た。床一面に撒かれたシンナーの表面からは蒸気が出ています。そこへ
電動ポリッシャーを使ったので、引火・爆発しました。作業員はシン
ナーを撒いた床の上で作業していたので、炎に包まれ、逃げることがで
きませんでした。死亡した従業員数は5人だったと記憶しています。
 1.2-ジクロロプロパンは消防法で定める危険物第4類第一石油類です。
区分でいうとガソリンと同じです。引火性・爆発性の高いものです。
 今回、問題になっている印刷業では有毒性についてあまり判っていな
いようですが、引火等の危険性についてもあまり判っていなかったかも
しれません。


☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 7 ☆ 
 万一の時の懐中電灯
  急な停電時は真っ暗になり、懐中電灯を探しに行くことも困難な場
  合があります。そんな時便利なものが携帯電話の液晶画面です。
  停電時には携帯電話の液晶画面は照明としても使えます。


                ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年7月14日(胆管ガン印刷事業所一斉点検)
 5月に印刷業での胆管ガンが問題視され、厚生労働省では全国561の事
業場の一斉点検を実施しました。
 胆管ガン患者が確認されたのは、東京都、大阪府、石川県、静岡県、
宮城県の5都府県で17人に上ります。
 561事業場のうち、有機溶剤等の規制対象物質を使用していた事業場
は494事業場あり、そのうち、安全衛生対策の不備が見つかった事業場
は383事業場もありました。不備のあった事業場の割合は約8割にも達
しました。主な項目と件数を表記すると、
 有機溶剤等の区分の未表示       186件
 作業環境測定の未実施         181件
 人体に及ぼす作用等の未掲示      149件
 局所排気装置等の未設置        143件
 呼吸用保護具の未使用 121件
 作業主任者の未選任          120件
 特殊健康診断の未実施 106件
 これらは有機溶剤取扱の基本的なものばかりです。これらができてい
ないというだけでなく、「知らない」からしていない会社も少なくない
と思われます。
 報道では「ジクロロメタン」と「1,2-ジクロロプロパン」が問題の原
因物質ではないかと言われています。
 「ジクロロメタン」は有機溶剤中毒予防規則で定められる有機溶剤な
のですが、労働安全衛生法施行令別表第6の2(有機溶剤)にはジクロロ
メタンの表記はありません。
  http://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-1/hor1-1-7-1-8.html
だからジクロロメタンは有機溶剤ではないと思った人もいるかもしれま
せん。この別表第6の2にある「ジクロルメタン」と同じものなので、有
機溶剤に該当するのです。化学物質には別名を持っているものがありま
す。ジクロロメタンの別名としては、「ジクロルメタン」「メチレンク
ロライド」「塩化メチレン」「二塩化メチレン」があります。別名があ
るからとても判りにくくなっています。
 化学物質は世の中に5万種類も6万種類もあると言われています。その
中に安全に使える物質はおそらく無いでしょう。自然界にある水や酸素
でさえ、「水中毒」「酸素中毒」という疾病があるぐらいです。
 化学物質に対するアレルギーを持っている人さえいます。アレルギー
があれば、その物質の僅かな蒸気でも発作が起こることもあります。
 
 参考「ジクロロメタン」MSDS
    http://www.jahcs.org/ghs/methiren.pdf
   「1,2-ジクロロプロパン」MSDS
    http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/04105252.pdf


☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 6 ☆
 スニーカー
  会社にはスニーカーを置いておきましょう。
  大地震が発生すると、交通機関がマヒします。電車やバスが止まる
  と徒歩で帰宅しなければなりません。皮靴やハイヒールでは長距離
  の歩行は困難です。会社の更衣ロッカーの中にスニーカーがあると
  いいですよ

               
 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年7月7日(原発事故は人災)
 事故調査委員会の最終報告が7月5日に提出されました。
 結論は、福島原発の事故は自然災害ではなく、規制当局や東電の安全
対策の「意図的な先送り」が招いた「人災」だと断定されました。
 もし、これを「想定外の地震・津波」だと結論付けたらどうなるでし
ょう? 「責任を回避している」「無能だ」となるので、「人災」にし
なければ収拾がつかないでしょう。また、自然災害によるものと断定す
れば、原発再稼働に影響するでしょう。
 報告書の中では当時の首相管直人氏が直接指示を出したために現場の
指揮命令系統が混乱したことも重大な要因となっています。このような
緊急事態で総理の役割は事前に定められ、訓練(原子力総合防災訓練)
も実施されていました。その訓練は福島第一原発3号機において給水設
備が故障し、冷却機能が働かず、放射性物質が外部に放出される事態を
想定したもので、まさに今回の原発事故を想定したもので、平成20年10
月22日に実施されました。当時の首相は麻生太郎氏でした。その状況は
下記で見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=Hd2OpSN2eJA
http://www.kantei.go.jp/jp/asophoto/2008/10/22gensiryoku.html
 訓練はしていましたが肝心な首相が毎年変わり、訓練の成果が生かさ
れていませんでした。総理が交代する都度、訓練を実施していたら、福
島原発事故の被害も変わっていたのかもしれません。
 みなさんの事業所では地震を想定した訓練を実施していますか?
 実施している事業所でもトップが交代したときには実施する必要があ
りますね。
 

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 5 ☆
 南海トラフ地震(東海・東南海・南海地震)の被害想定
  7月6日、関西大の教授が地震による被害は静岡県から高知県の太平洋
  沿岸を中心に最大で40万人が死亡するという試算を発表しました。
  (想定は真夜中にM9.0の巨大地震が発生としています)
  震度6弱以上が予測される地域の人口は4700万人と想定しています。
  8月下旬頃には内閣府から被害想定の発表があるようですが、今回の
  発表と同程度のものになるようです。
  地震を止めるのは不可能です。地震を想定した減災対策が必要です。


             
   ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年6月30日(倒れるはずのない物が倒れた)
 先日、ある会社から、「スチールの棚が倒れて、作業者が大けがをし
た」と連絡がありました。
 スチールの棚は横が1.8m、高さ1.8m、奥行き0.8mのもので、なぜ
倒れたか分からないというのです。作業者が足を掛けたわけでもなく、
引っ張ったのではないし、他の作業者は近くにいなかったので、何かが
激突したのでもないし、もちろん、地震もありません。どうしても倒れ
た原因が判らないので、調べて欲しいということでした。
 現地に行ってスチール棚を見ましたが、古いものでとても頑丈に作ら
れ、倒そうと思っても倒れるような棚ではありません。
 当時の状況を聞くとその原因が判りました。
 棚は中程で仕切られ、前方と後方から物が入れられる構造でした、当
時は前方は全く何もない状態で、後方はぎっしりと荷物が積まれていま
した。後方の棚は奥行きが小さい(前と後を仕切る仕切り板は真ん中で
はなく、後寄りにあります)ので、品物がはみ出た状態でぎっしり積ま
れていました。この棚は移動できる棚で下に4つの車輪が付いていまし
た。全て自在車輪(どの方向にも動く車輪)です。車輪は棚の端面から
離れたところにありました。自在車輪は棚に固定する部分の中心と車輪
が床に接する場所が離れています。車輪の向きが内側に向いたとき、棚
の端面と車輪が床に接する場所まで20cmありました。後側にはみ出し
たままギッシリ積まれると、その荷物の重心はかなり、端になります。
その荷物の重心が、自在車輪の外側に移行したため、倒れたとわかりま
した。
 その会社では原因は判らないが、他の棚と連結したら倒れないと判断
し、ボルトで横連結をしました。コの字型に連結したので、もう地震以
外で倒れることはありません。
 これでもう大丈夫というのですが、そこで、私は「待って欲しい」と
お願いしました。再発の可能性があるからです。
 今後この状態が永遠に続くものではありません。レイアウト変更など
で連結を外すことが考えられるからです。今は重大な事故が発生したの
で、職場のみんなが原因を理解しています。しかし、今回の事故は手順
を変えたことが根底にありました。前側の棚は奥行きが広いため、入れ
たものを取りだしにくいために、後側の狭い方に置かれたのです。将来、
管理者・作業者が変わり、事故を知らない人が増えてきます。同じよう
に手順を変えることが考えられます。
 それを防ぐにはこの事故を風化させないことが必要です。同じ棚を含
めて事故事例を棚に掲示し、作業手順に事故事例を記載し、作業者全員
が変わったとしても同じ過ちを繰り返さないことが必要なのです。
 「災害は忘れた頃にやってくる」では困ります。
 みなさんの会社では事故が発生した場所への看板などは実施されてい
ますか?何年も事故が無ければ、忘れ去られる危険があります。リスク
を小さくできないなら、その事故を後輩に伝えるように工夫することが
必要だと考えます。

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 4 ☆
 公衆電話の位置を知っておきましょう。
  公衆電話は災害時でも携帯及び一般電話より優先的につながります。
  職場周辺、自宅周辺等の公衆電話の位置を覚えておくといいかもしれ
  ません。(6月29日から公衆電話の設置場所を公開しています。)
  NTT東日本
  http://www.ntt-east.co.jp/ptd/
  NTT西日本
  http://www.ntt-west.co.jp/ptd/

               
 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年6月23日(緊急地震速報)
 6月28日は緊急地震速報の訓練が行われます(緊急地震速報を見聞きし
た際の行動訓練)(消防庁 2012.6.20) http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/2406/240620_1houdou/02_houdoushiryou.pdf
 気象庁
 http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/usage/index.html
 東日本、関東では3.11の後、数回にわたり緊急地震速報が発令されてい
るようですが、関西では全くありません。携帯電話等により緊急地震速報
を受信した際に何をすれば良いか判らない人も多いでしょう。冷静になっ
て考えれば、何をするべきか分かるでしょうが、緊急地震速報が発令され
た瞬間に行動を起こさなければなりません。その初期行動は教育する必要
があります。机の下に潜ると判っていても、職場では近くに机があるとは
限りません。いつ、どこに居る時に受信するかもしれないので、「考え方」
について教育する必要があるでしょう。
 上のURLの中に「緊急地震速報受信時の対応行動メモ」というのがありま
す(気象庁が作成した「緊急地震速報の活用の手引」18ページ)
http://www.jma.go.jp/jma/press/0708/03a/rikatsuyou.pdf
 受信する場所を特定し、その場所のレイアウトを書き、対応行動を従業
員に考えて書かせることはとても有効です。書いたものを職場の中で共有
し、何が一番効果的かを討議するのも教育効果が高いと思われます。
 しかし、従業員は受信時にどこに居るかわかりません。そのような時に
備えて、「対応行動補助看板」が役に立つでしょう。(同上手引23ページ)
 教育したら教育効果を確認しなければ、本当の地震の時に役立ちません。
訓練をして、想定した対応ができたのか検証しなければなりません。いつ
も事務机に座っている人は簡単にできるでしょうが、現場で働く人は、発
令時に職場のどこにいるか判りません。訓練を繰り返していくうちに対応
方法が身につくでしょう。
 訓練は安全な場所に行き、身を守るだけでは不十分です。たとえば、ク
レーンで荷を吊り上げた時は、安全な場所に逃げるより、クレーンの荷を
降ろさなければ危険です。荷が振り子のように振れるかもしれません。た
だ逃げるだけを教えても、荷が飛んでしまうと、大惨事になるかもしれま
せん。逃げるよりクレーンの荷を下ろすことが最優先になるかもしれませ
ん。また、アーク溶接作業中では、溶接機の電源を切らなくては、感電や
火災の原因にもなります。
 緊急地震速報受信時では何秒後に地震が来るか判りません。1、2秒後か
もしれないのです。瞬間的に判断し、実行するためには訓練が重要です。


☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 3 ☆
 ガラス
  地震でガラスが割れると危険です。建物から外に逃げ出す時に、上か
  らガラスの破片が落ちてくると人命にかかわります。フィルムを貼っ
  ておけば、飛散を防ぐことができます。また、遮熱効果のあるフィル
  ムなら省エネ効果もあります。
  避難通路にガラスがある場合も同じです。扉がガラスのキャビネット
  でもフィルムを貼っておく方が良いでしょう


               
 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年6月16日(事故遊具の運転再開)
 今年5月28日、東京ディズニーシーのジェットコースター「レイジング
スピリッツ」で安全バーが下りないというトラブルが発生し、男性が降り
てけがをする事故が発生しました。(男性は軽傷)
 6月14日(事故が発生してから17日目)で再開することとなり、事故の
原因・対策について公表されました。
 http://www.olc.co.jp/wpmu/wp-content/blogs.dir/2/files/2012/06/20120604_01.pdf
 今回の事故は男性が降りたため、軽傷で済みましたが、もし、男性が降
りなかったら、運転途中で振り落とされ、死亡事故になっていたかもしれ
ません。
 原因は、出発操作後の一時停止状態の時は安全バーを下ろすことができ
ないことをスタッフが知らなかった(誤った認識)こととなっています。
この事故を受けて、ロックおよび解除について教育をし、もし、安全バー
が下がらない座席があれば全てのお客様を降ろして、安全を確保する手順
に変更しました。
 しかし、この報告書には、安全バーのロックができていないにも関わら
ず運転を開始した原因については触れていません。
 運転が開始できたということは、安全バーのロックができなくても運転
開始できる乗り物ということです。
 今回の対策はソフト対策であり、ハード対策は何も行われていません。
安全バーが下りてロックされたかどうかは、スタッフの確認に頼らざる得
ないということです。ここで、普通の自動車で考えてみます。自動車のド
アは開いていてもスタートできますが、警告音が鳴ります。運転手が乗っ
ているので、止めることもできます。しかし、ジェットコースターには運
転手がいません。一度降下による加速がついたら、止めることは不可能で
す。動き出したら制御できないということです。それなのに、今回の事故
報告ではスタートさせた点について原因に触れておらず、対策も書かれて
いません。
 運転再開について安全上の疑問を感じます。事故が軽傷で済んだからで
はないでしょうか?男性は逃げるように降りたから軽傷でしたが、降りる
ことができなかった場合は、大きな事故になったでしょう。
 ちなみに、2007年5月5日にジェットコースターで死亡事故が発生したエ
キスポランドは事故の発生したジェットコースターを撤去し、再開したも
のの客足が戻らず、閉鎖になりました。2011年1月30日にジェットコース
ターで死亡事故が発生した東京ドームアトラクションでは事故の発生した
ジェットコースターを撤去して再開しています。
 結果として、軽傷で済んだからソフト対策だけで、再開したようにしか
感じられません。

☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 2 ☆
 安否確認
  安否確認は問い合わせるのではなく、従業員から自主的に報告させる
  こと。地震発生時には通信が不安定になるのは多くの方が経験してい
  ます。質問して回答を求めるのでは時間がかかり過ぎます。「震度6
  弱以上なら定められた人に携帯メールを送る」ことを周知すると早く
  確認が取れるでしょう。また、災害伝言板(NTT、docomo、softbank
  au等)など合わせて行うように二重の方法が良いでしょう。


                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年6月9(地域防災防犯展)
 6月7日~8日インテックス大阪で地域防災防犯展があり、当社は初めて
出展しました。週刊 ご安全に!の読者もたくさん来ていただき、ありが
とうございました。
 当社のHPの防災ページに写真のある藤本理那さんとビラを配り、ご来場
の方とお話できる機会ができ、とても良かったと思います。しかし、これ
がすぐに仕事に結び付かないのは厳しいです。ご来場者の中には、コンピ
ューターの震災対策コンサルタントをしている方、耐震診断のコンサルタ
ントの方なども見えました。その方々が言うには、企業は地震対策が必要
なことは判っているけど、積極的にBCPを進めるところは少ない。その
理由として、法的な縛りがないからだと言われます。地震で労働者が被災
しても企業の過失は問われないかもしれません。東日本大震災では労災保
険が適用されました。法的な責任が無いし、震災対策で安全は確保できま
せん(地震の日時・規模が不明なため)。ここまで対策すれば十分、ここ
まですれば、許容できるリスクに収められるというゴールがありません。
耐震補強にしても備蓄にしても膨大な金額が必要になります。膨大な金額
を掛けても完全な対策はできません。
 責任もないし、経営を圧迫する投資が必要になるため、震災対策に消極
的なのかもしれません。
 でも、対策とはお金がかかるものだけではありません。組織を作る、マ
ニュアルを作る、教育する、訓練するというのは、それほどの投資は必要
ありません。「緊急地震速報が出たら何をするか」また、「突然地震が発
生したら何をするか」という地震時初動教育をした場合と、しない場合で
は被害の程度は全く異なるはずです。お金を掛けることだけが地震対策で
はないはずです。
 また、多くの企業では緊急時作業マニュアルを作成していると思います。
それらは、電源が止まるなどのイレギュラーな時のマニュアルだと思いま
す。イレギュラー場合の緊急時マニュアルと地震発生時の緊急時マニュア
ルとは違うと思います。緊急地震速報が鳴ってから本振動が来るまでのわ
ずかな時間で行わなければならない緊急作業もあるでしょう。そんな時に
マニュアルを読んでいる時間はありません。この緊急作業の教育と訓練が
被害の大きさを左右します。
 初動教育は、「頭を守る」「机の下に潜り込む」だけではありません。
 作業場所によって、リスクは異なります。作業場所のリスクに応じた初
動教育が必要だと感じます。
 労災保険は治療費を負担し、負傷による休業を補償してくれますが、従
業員がもっているノウハウには何の補償もしてくれません。従業員を守り、
ノウハウを守るためにも震災対策を考えてください。

☆ 震災対策のワンポイントアドバイス 1 ☆
 適用範囲:飲用水高架水槽を有する会社
   高架水槽の中の水は備蓄飲料水になります。しかし、水洗トイレは
   畜電池で自動的に流してしまうものがあります。1回の使用で水は
   10ℓ程度流れます。10ℓは1人の3日分に相当します。それを1回のト
   イレで流してしまうと、貴重な水を無駄に流してしまいます。水道
   の給水が確保できるまではトイレの排水にも注意が必要です。
   (トイレの水は停電時でも流れるものもあります)


               
 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年6月2日(雷)
 昔から、「地震・雷・火事・親父」が怖いものとされています。現代では
「親父」が入っていることに違和感を感じます。言い換えるなら、「地震、
雷、竜巻、爆弾低気圧」でしょうか、ちょっと語呂が悪く申し訳ありません。
2番目に入れた雷ですが、先月5月には全国で73万回も落雷があったそうで
す。これは5月としては過去最多であり、昨年の7倍に相当します。1年のう
ちでもっとも多い8月並みだそうです。多くの落雷は避雷針などに落ちてい
るので実害はないのですが、5月29日には近畿でも落雷による負傷がありま
したので、注意が必要です。しかし、注意が必要といってもどうすれば安全
に作業できるでしょうか?
 そのような質問をある方からいただき、思案しているところです。
 ①簡単な五感で感知する方法
  雷雲が広がり、空が黒くなり、ゴロゴロという音を聴き、感知する。
 ②インターネットで知る方法
  ウェザーニュースなどにアクセスして調べる。
 ③雷検知器で知る方法
  光音検出タイプ、電磁波検出タイプ、電荷検出タイプなどがあります。
  AMラジオでもノイズ(電磁波)で知る方法があります。
 それぞれに課題もあります。
 ①は雷が鳴るまで判らない。判断は人に頼るしかない。
 ②は落雷があった場所が示されるだけであるし、ピンポイントでは判りに
  くい。
 ③雷雲の成長はとても早く、わずか10分で発達し、落雷が発生することも
  ある。検知器は雷雲が成長しなければ検知できないし、検知しても時間
  的余裕はあまりない。電磁波等を検出するだけなので、雷雲の発達を予
  測するには不十分であり、安全と表示されても、数秒後に落雷があるか
  もしれない。
 結局どれを使っても、安全は保障できないということです。
 あなたは雷の光を見て、音が鳴るまでの時間を数えていませんか?(光と
音の時間差で何メートル離れたところか見当がつく(1秒で音は約330mだか
ら、もし5秒あったら、1650mの場所となる。その間隔が短くなると危険と
判断する)。以前は私自身そうしていましたが、これは間違いです。雷雲は
何十キロもの広範囲であり、その中のどこで雷が発生するか判りません。
 注)音速は温度の影響を受けます。
   25℃⇒346.18m/s 10℃⇒337.33m/s、0℃⇒331.30m/s
 雷の予見可能性についての裁判例を紹介します。
 落雷事故発生:1996年8月13日
 場所:大阪府高槻市のサッカー場での試合中
 被災状況:落雷による失明等(当時高校生)
 損害賠償請求額:6億4600万円
 裁判:2008年9月17日(高松高裁)
 判決:試合前に雷鳴が聞こえ、雲間の放電も見えていたことなどから、落
    雷発生を予見することは可能であり、教諭らは生徒の安全にかかわ
    る事故の危険性を予見し、防止する措置をとる注意義務を怠った。
 損害賠償額:3億700万円
 このことから、雷鳴や雷光が確認できれば、落雷を予見しなければならな
いということになります。工事等で屋外で作業する現場監督者はご注意くだ
さい。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年5月26日(受動喫煙防止)
 昨日、あるところで受動喫煙防止の講師をさせていただきました。
 講演の概要を紹介いたします。
 受動喫煙防止のため、完全禁煙または喫煙場所以外での喫煙を禁止すると
いう労働安全衛生法を改正する法律案要綱が平成23年10月24日に出されまし
た。昨年10月のことですが、まだ、法改正には至っていません。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001slsj.html
 法的義務はありませんが、平成16年7月12日東京地裁で受動喫煙に関する
裁判があり、安全配慮義務を怠ったという結果になりました。(概略は、事
務所の一角を喫煙場所としていたが、区画もなく、換気も不十分で、被害者
は慢性副鼻腔炎等に罹患したと主張し、損害賠償を請求したものです。)
損害賠償額としては少額(5万円)でしたが、これが判例となるため、受動
喫煙は安全配慮義務を怠ったと判断されるでしょう。したがって、法で義務
化されていませんが、企業には義務があると考えられます。
 受動喫煙を防止するため、完全禁煙にする方法もありますが、ムリな押し
つけは問題があります。今年2月22日には大阪市地下鉄の倉庫で喫煙をして、
火事になったケースもあります。ムリな禁煙押しつけは、隠れてタバコを吸
う危険もあります。
 受動喫煙を防止するためのガイドラインは平成15年5月9日に発表されてい
ますので、それに準じた対応が必要となります。
 http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-44/hor1-44-12-1-0.htm
 ポイントとしては
 ① 周囲を壁でふさいだ単独の室とすること
 ② 機械換気により大気に放出すること
 ③ 非喫煙場所と喫煙室の境界において、喫煙室へ向かう気流の風速を
   0.2m/s以上とすること(扉の開閉や人の出入りで煙が外に出ないよ
   うに喫煙室を負圧状態にすること)
 ④ 浮遊粉じんの濃度を0.15mg/m3以下、一酸化炭素濃度を10ppm
   以下にすること
 今まで多くの喫煙室を見てきましたが、排気能力不足の喫煙室が多いです。
壁は黄色く、入ったとたんに強いタバコ臭があります。
 必要な換気能力は簡単な計算で求められます。
   排気風量=最大開口面積×必要風速0.2m/s
 問題を感じる喫煙室の例として、
 ① 排気能力が不足している。(これが一番多い)
 ② ガラリ等の開口部を設けていないため、換気扇があっても、空気の流
   れが形成されないため、換気が出来ていない。
 ③ エアコンを稼働しているため、エアコンの送風によりドアからタバコ
   に汚染された空気が外部に押し出される
 ④ 窓を開けている。(外からの風により汚染された空気がドアから外に
   押し出される)
 ⑤ 換気扇の場所が適切でないため、タバコの煙が滞留している。 
 厚生労働省では受動喫煙防止相談電話相談室を設けています(平成24年度)
  相談窓口電話03-3213-1012 (厚労省が実施しているので無料)
 http://www.tokiorisk.co.jp/consulting/product_liability/jyudokitsuen.html
 たとえば、喫煙室を設置したが、タバコの煙が外部に流れ出ている。
      必要排気風量が判らない。 
      開口部をどうすれば良いか判らない。
      どのように喫煙室を作れば良いか判らない。
 など、喫煙室・受動喫煙防止の相談があれば利用してください。電話相談
だけでなく、必要と判断されると、労働衛生コンサルタント等による現場の
直接指導が無料で受けられます。
 なお、中川の講演の資料をご覧になりたい方はメールをいただければ、送
らせてもらいます。

              
  ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年5月19日(発がん性物質)
 職業性疾病に関する興味深い記事がありました。(5/19毎日新聞より引用)
   <胆管がん>校正印刷会社の元従業員4人が死亡
   西日本のオフセット校正印刷会社の工場で、1年以上働いた経験のあ
   る元従業員のうち、少なくとも5人が胆管がんを発症、4人が死亡し
   ていたことが、熊谷信二・産業医科大准教授(労働環境学)らの調査
   で分かった。作業時に使われた化学物質が原因と強く推測されるとい
   う。遺族らは労災認定を求め、厚生労働省は調査に乗り出した。
   熊谷准教授によると、同社では91~03年、「校正印刷部門」で1
   年以上働いていた男性従業員が33人いた。発症当時の5人の年齢は
   25~45歳と若く、入社から7~19年目だった。熊谷准教授が今
   回の死亡者数を解析したところ、胆管とその周辺臓器で発生するがん
   による日本人男性の平均死亡者数に比べ約600倍になった。
   校正印刷では、本印刷前に少数枚だけ印刷し色味や文字間違いなどを
   確認するが、印刷機に付いたインキを頻繁に洗うので結果的に洗浄剤
   を多用する。洗浄剤は、動物実験で肝臓にがんを発生させることが分
   かっている化学物質「1、2ジクロロプロパン」「ジクロロメタン」
   などを含む有機溶剤。会社側は防毒マスクを提供していなかったとい
   う。91~03年当時、ジクロロメタンは厚労省規則で測定や発生源
   対策が求められていたが、1、2ジクロロプロパンは規制されていな
   かった。
 (参考:1.2-ジクロロプロパンMSDS)
   http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/04105252.pdf
 報道された会社ではないが、印刷現場は何度か見せていただいたことがあ
ります。どの機械も大型であり、メンテ時には機械の隙間の狭い中に身体を
入れなければならず、局所排気装置の設置が困難な場合が多いものでした。
 今回、報道された胆管ガンと洗浄作業との因果関係は不明ですが、その可
能性は高いと思われます。
 職業性疾病防止には呼吸用保護具(防毒マスク)を使われますが、防毒マ
スクは有害物質の吸着力の限界を超える「破過」という問題があります。こ
の破過の状態は判りにくいので、吸収缶の管理はとても難しいものです。管
理がズサンであれば、単に呼吸がしくにいだけで、健康障害の防止にならな
いこともあります。吸収缶の破過は呼吸量の増減・気温・湿度・保管状況に
よっても異なります。防毒マスクに頼らずに作業環境改善が必要です。局所
排気装置設置を検討する前に、有害性の高い物質から、有害性の低い物質に
変更することが最も重要です。特に「発がん性物質」や「発がんおそれ」の
物質は他の物質に置き換える検討が必要です。
 しかし、発がん性物質等だけ注意すれば良いものではありません。世の中
には化学物質が何万種類もあります。「発がん性物質」は発がん性があるこ
とが立証されたもので、それ以外の物質に発がん性が無いというものではあ
りません。発がん性に対する検証が行われていないものもあります。また、
単体では特に問題がなくても、生成物では有害性が高まるものがあるかもし
れません。
 また、化学物質取扱作業では、すぐに発症するケースは少ないので、「安
全」と誤解する場合もあります。
 化学物質取扱作業ではご注意ください。
                ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年5月12日(溶解炉の事故)
 5月8日のニュースを見て、とても驚きました。(読売新聞より一部引用)
  8日午前1時5分頃、愛知県西尾市吉良町の自動車部品会社「アイシン
  高丘」吉良工場の警備員から、「社員が金属溶解炉に落ちたようだ」と
  通報があった。県警西尾署員が駆けつけたところ、鉄を溶かした溶解炉
  (深さ2m、上部直径1.2m)の中から、人骨の一部とみられるものが見
  つかり、58歳男性が溶解炉に転落したのではないかとみて調べている。
  男性は7日午後8時から同僚の男性と2人で自動車のブレーキ部品を作る
  ため、溶解炉で材料の鉄を約1500度に溶かして不純物を取り除くなどの
  作業をしていた。同僚が現場を離れて戻った際、男性の姿がなく、溶解
  炉内に異物が見えたため、上司に連絡したという。
 鋳物にあまり詳しくない方は下記をご覧ください。
  アイシン高丘株式会社のHPより「鋳物ができるまで」
   http://www.at-takaoka.co.jp/casting/process.html 
 1500度もの高温によって溶けた金属の中に人間が落ちるということは考え
たくありませんが、実際に発生してしまいました。おそらく僅かな骨片しか
残っていないでしょう。本当に残念な事故です。
 鋳物工場は多数ありますが、このような事故はあまり聞きません。これは、
事故が少ないから安全だというのではなく、「熱くて接近出来ない」状態な
ので、溶解炉での事故が少ないのだと思います。厳しく教育していなくても、
目が眩むほど強い光を発し、輻射熱が高く、誰もが危険と感じ、自ら注意し
て作業するからだと想像します。
 安全指導では現場監督者が「○○へは近づくな!」と指導しても、部下は
接近してしまいますが、このような現場では「溶鉱炉に近づくな!」と言わ
なくても誰もが危険性を感じ、接近しないでしょう。
 今まで発生したことが無い事故であったとしても、リスクアセスメントを
していたら防げたかもしれません。評価としては可能性は低くても、災害の
重大性は「致命傷」と評価されるので、何らかの対策が必要なレベルになっ
たと考えられます。
 今回の事故は誰も見ていませんの状況が判りませんが、人が接近できる空
間があったことは間違いないでしょう。
 今回の事故を鋳物関係の従業員の方に説明しても、あまり危機感を感じな
いかもしれません。従業員の方は「近づきたくても熱くて近づけない」と考
えるでしょう。
 しかし、地震を考えたら危機感を感じてもらえるかもしれません。
 地震があれば、立っておれず、転倒する者、転がる者もあるでしょう。自
分ではコントロールできないのです。そこに溶解炉があるとしたら、被災の
可能性は一気に高くなります。人がそこに落ちるかもしれませんし、溶解炉
自体が倒れて、溶けた金属が飛び散るかもしれません。
 そう考えると、人が接近できないような柵が必要になります。溶けた金属
が飛び出すことも考えられるので、緊急地震速報が受信できるようにするこ
とも必要だと考えます。(このようなすぐに安全な場所に避難することが困
難な場所では高度利用者向け緊急地震速報が望ましい)合わせて、緊急地震
速報受信時の初動訓練が必要です。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年5月5日(深夜のツアーバス)
 4月29日に関越自動車道で、長距離バスが防音壁に激突し、7人が亡くなり
39人(運転手含む)が負傷する事故があったのは、連日報道されているので、
多くの方がご承知だと思います。
 運転手を含めて全員が死傷したのは、防音壁の端面に激突し、防音壁がバ
ス車内に切り込んだからです。居眠り運転して、防音壁にぶつかったのなら、
車道の反対側にバウンドするのですが、ガードレールと防音壁の僅かな隙間
に入り込んでしまいました。僅かな隙間ではありましたが、バスの接触によ
り、ガードレールが押されて、隙間が大きくなったのでしょう。接触する場
所がずれていたら、これほど多くの死傷者がでることは無かったはずです。
 この事故は運転手の居眠り運転が事故の原因ですが、多くの問題が浮かび
上がってきました。
 居眠りというのは、睡眠を充分取っていればしない。寝不足なら必ずする
というものではありません。睡眠が充分であっても、退屈と感じれば、寝て
しまい、寝不足でも運転に集中していれば寝ることもないでしょう。しかし、
運転に集中していても、2時間もの連続運転なら、集中力が切れることもあ
ります。また、会社は休日を与えたら充分と思うかもしれませんが、その休
日がハードだったりすると、休みあけでも、疲れが残ることもあります。
 規制では、1人で運転できる最大の距離は670kmということでした。670
kmとは半端な数字ですね。時速80kmで8時間なら640kmとなります。調
べてみると、総務省が行った実態調査に基づく数値ということです。もちろ
ん、669kmは安全、671kmは危険という境界ではありません。
 このバスは片道わずかに3500円でした。満員乗車しても、157,500円の売
上げしかありません。軽油代、高速道路代を引くと、約12万円です。でも、
これは満員だったからです。空席があると、売上は下がります。その中から、
バスの維持費、会社の経費、運転手の経費などを引くと、あまり残らないで
しょう。
 ツアーバス運転手は昼夜が入れ替わるような時間帯での勤務を強いられ、
長時間に及ぶ高速走行であり、快適な場所での仮眠ではないので、労働環境
は良くないでしょう。報道では年収300万円の人もおられました。インタビ
ューで他のドライバーは「睡魔と闘いながら運転することもあります。明日
は我が身。とても他人ごとではない」と答えたことがツアーバスの現状なの
かもしれません。
 この事故を契機にして、1人運転の限度や管理方法が厳しくなるでしょう。
しかし、距離をどんなに短くしても、2人体制であっても居眠り運転を無く
すことはできません。補助的な対策が必要になるでしょう。
 ランブルストリップス(名前は知らないかもしれませんが、運転する時、
見ていると思います。ラインに小さな凸凹があり、ライン上を走ると警告音
のような大きな音がするので、センターオーバーや居眠り運転防止に効果が
あります)の施工範囲を広げる。防音壁とガードレールの隙間を無くす。防
音壁とガードレールの継ぎ目では、強度の弱いガードレールを道路寄りに設
け、重ねるようにする。しかし、数千キロも高速道路があるので、困難でし
ょう。接近防止センサーや運転手の瞼の位置や、首の角度のずれなどから居
眠り運転の警告・エンジン停止装置なども技術的に可能です。
 管理方法をいくら厳しくしても、睡魔に襲われることが無くなることはあ
りません。居眠り感知装置の設置を義務付ける方が効果はあるでしょう。
 また、この事故で気になるのは、シートベルトの不具合等で装着していな
い人が居たこと。また、運転手が「バスの中でシートベルトしなくてもいい」
と答えた事です。この点だけを見ても、バス会社の安全管理体制に問題があ
ったと言えるでしょう。もっとも運転手は日雇い労働のようであり、管理体
制も何もできていない状態でした。
 本当に残念な事故です。ツアーバスに限らず、シートベルトは装着しまし
ょう。ちなみに、バスに乗る時は、後の席で非常口の近くに座るよう心がけ
ています。

              
  ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年4月28日(熊の知恵)
 4月20日秋田県にある八幡平クマ牧場でヒグマ6頭が脱走し、従業員2人を
襲い死亡させる事故がありました。労働災害にはいろいろありますが、これ
ほど恐怖を感じるような事故は他にないでしょう。
 報道では「経営難でずさんな管理」と言われています。県が3月に行った
立入調査では、「冬は雪が積もるので運動場にクマを出さない」と証言して
います。雪深くなると、クマがフェンスを乗り越える可能性を認識していた
ようです。
 テレビ等で運動場の片隅に雪の山がスロープのようになってクマが逃げる
道が出来ていることをご覧になったと思います。この雪の山がどうして出来
たのかは定かではありません(私の知る限り報道されていません)。
 クマの知恵がどの程度か判りませんが、クマ自身が雪の山を作ったとは考
えられないでしょうか?
 クマが脱出するために雪の山を作ることなんか考えられないと決めつけて
いたのかもしれません。
 しかし、従業員は餌を与え、可愛がっていたクマに襲われて死亡するとは
本当に残念な事故でした。


2012年4月28日(道路の改善)
 
4月23日京都府亀岡市で集団登校の列に居眠り運転の車が激突した事故が
ありました。この通学路では以前は道幅が狭く、側溝があり、通学の児童が
側溝に落ちることを心配し、側溝にフタをする工事が行われました。その結
果、側溝に落ちる心配がなくなり、道も広くなりました。道が広くなると、
車はスピードを上げるようになり、交通量も増えてしまい、リスクの低減に
ならなかったのかもしれません。今から考えれば、側溝にフタをする工事の
時にガードレールを付けて、歩道と車道の隔離をしておけばよかったのです
が、全ての通学路でそれを実施するのは無理な話です。このように改良・改
善したことが新たな問題を出す例は他にもあると思います。たとえば、使い
捨てライターもその一つかもしれません。昔は“石”を擦って着火させるラ
イターが使いにくいということで、電子ライターが登場しました。誰もが簡
単に火を付けることができ、しかも、値段が安い。値段が安いから愛煙家の
ところには数多くのライターがあります。そのうちの一つを子供が触って、
火災が発生する事故が多発しました。今ではチャイルドレジスタンス機能と
いって、簡単に火が付かないライターしか作ることができなくなりました。
 森タワービルの回転ドアへの挟まれ事故(2004年)もその一つかもしれま
せん。見栄えを良くするためにステンレスの豪華なドアにし、そして重量が
増えた分だけモーターを強力にするための改良を繰り返した結果、挟まれる
と重大な事故になるような機械になってしまいました。
 このような例は他にもあるでしょう。職場の作業改善活動を進めています
が、改良が良い結果だけを生むとは限りません。新たなリスクが発生する事
もあります。改善を行う場合は新たなリスクが生じないことを確認していた
だくようお願いします。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年4月21日(一酸化炭素中毒)
 4月15日兵庫県尼崎市にあるクボタ阪神工場で2名が一酸化炭素中毒により
被災し、その内1名が死亡する事故がありました。作業としては金属を溶か
す溶解炉の清掃をしていたたようです。原因としては、溶解炉に残っていた
一酸化炭素がダクト内に流れ出たのはないかと言われています。
 この一酸化炭素による事故はファーストフードの店でも排気不足で発生す
ることがありますし、2001年9月1日に新宿区歌舞伎町の雑居ビルで火事が発
生し、44名が一酸化炭素中毒で亡くなる事件がありました。
 一酸化炭素は非常に厄介なもので、比重は空気とほぼ同じであり、無色透
明で、無臭です。したがって、人間の五感では検知できないので、危険を感
じにくいのです。
 一酸化炭素は血液中のヘモグロビンとの結合力がとても強いのです。ヘモ
グロビンは酸素と結合し、身体全体に酸素を運ぶ働きがありますが、一酸化
炭素は酸素の250倍もヘモグロビンとの結合力が高いため、酸素が不足し、
死亡することが多いのです。800ppm以上の濃度になると死亡するといわ
れています。
 今回の事故は清掃作業前の排気(換気)が不十分だったと考えられます。
排気(換気)の程度は、人間の五感では判らないので、測定器を用意してお
くべきだったと感じます。


2012年4月21日(首都直下地震9700人)
 4月19日の新聞のトップには首都直下型地震の想定を見直し、死者は9700
人、帰宅困難者は517万人と報道されました。でもこれは東京都だけのこと
で、神奈川、埼玉、千葉を入れるともっと大きな数字になるでしょう。
 その9700人に皆さまが含まれないことを祈ります。そのためには日頃の備
えが必要です。東日本や中越、阪神と異なるのは、火事による死者が多い事
が気になります。火災により避難場所への移動が困難になるかもしれません。
避難場所は複数箇所を、避難ルートは複数考えておく必要があるでしょう。
1923年の関東大震災では9万人の方が火災によって命を失っています。通常
の火災では、炎はそれほど大きくなりませんが、何十軒という住宅が燃える
と“火炎流”が発生します。関東大震災ではその火炎流に囲まれて、逃げ場
を失って、一つの場所で万単位の方が命を失ったということがありました。
今は住宅の耐震性能が高まり、不燃素材が多くなりましたが、地震時には消
防隊が機能しなくなるため、関東大震災と同じように、火災は広がると思わ
れます。関東大震災の時と違うのは、自動車の増加です。当時とはケタ違い
に自動車が増えています。その自動車にはガソリンを大量に積んでいます。
住宅密集地では火災が広がることを想定していただきたいと考えます。
 それと、帰宅困難者が気になります。東日本大震災の時は、電車・バスな
どが止まったため、徒歩で帰る人で道がいっぱいでした。その時に余震があ
ると、窓ガラスなどが落ちて、多くの方が被災するかもしれません。徒歩で
帰宅する場合、ヘルメットは必要だと思います。それと、長い距離を歩く場
合はスニーカーが適しています。会社の個人用ロッカーの中にヘルメットと
スニーカーとペットボトルを保管しておくことをお勧めします。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年4月14日(地域防災防犯展:大阪)
 いつも目を通していただき、ありがとうございます。この安全週記も200
回目になりました。読者の中には、毎週月曜日の朝に読んで、その日の朝礼
のネタに使っていただいているという話も聞きます。そのように少しでも参
考になっているのなら本当にうれしく思います。
 さて、昨年は東日本大震災がありました。その次には首都圏で直下地震が
発生するのではないか、東海・東南海・南海の3連動地震があるのではない
かと報道されています。皆様の事業所でも地震災害には備えをしていると思
います。でも、多くの事業所では何をどうすればいいのか疑問をお持ちでは
ないでしょうか?
 安全安心株式会社では地震発生に備えたリスク評価方法を作成しました。
地震対策には事前のリスク評価が必要です。リスクが判らなければ、方針も
計画も立てることができません。方針・計画が無ければ、何も進まないでし
ょう。また、災害時の事業継続(BCM)に向けた評価方法を確立しました。
現状の対策を評価し、グラフ化し、どこに課題があるかを視覚的に判るよう
な仕組みを作りました。それらの発表の場として6月7日と8日インテックス
大阪で開催される、第6回地域防災防犯展にブースを作って説明させていた
だきます。また当日はセミナーを行い説明させていただく予定です。
 http://www.fair.or.jp/risk/2012/
 地域防災防犯展の入場は無料です。セミナー受講も無料です。
 参考に、食糧の備蓄の一つの方法として「置き菓子」を紹介します。
 http://www.ezaki-glico.net/officeglico/system.html
 これは「オフィスグリコ」といって、お菓子を会社に無料で置いてくれま
す。通常は、休憩や残業の時、小腹が空いたとか、糖分の補給にもなります。
それだけでなく、震災時には非常食としての機能もあります(大量の備蓄は
できません。補助的な備蓄です)。これなら賞味期限の心配もありませんし、
事業所にコストはかかりません。食糧等の備蓄コストの削減になりますし、
福利厚生の一つにもなると考えます。

               
 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年4月7日(立体駐車場)
 4月2日に大阪府茨木市にあるマンションの立体駐車場で3歳の男児が挟ま
れて死亡する事故がありました。
 この立体駐車場は上下に3台の車両を駐車できるものでした。母親の車は
一番下に入っていたので、駐車台をスイッチによって上昇させていました。
3歳の男児はその上昇が止まる前に駐車台に降りたようです。そこで転倒し、
上昇する台と隣の台の間に挟まれて死亡したということです。
 駐車台の上昇下降スイッチは押している時だけ稼働するものであり、運転
手一人で操作する時には、スイッチを押している時には駐車台の稼働部には
近づけないので、運転手(操作者)が一人であれば、安全は確保できるもの
でした。
 スイッチのところから男児の場所は車の陰で死角でした。男児の鳴き声に
気付いて母親がスイッチから手を離したが手遅れだったと考えられます。母
親が子供の手を握っていたり、見ていれば事故は起こらなかったでしょう。
 一人操作であれば安全が確保されていたとしても、他の人が接近する可能
性があれば危険があるというのでは安全対策が十分とは言えません。
 この立体駐車場の災害を防止するための安全装置にはいろいろ考えられま
す。例えば、エリアセンサーで侵入者を検知したり、挟まる前にダンバース
イッチで挟まった瞬間に止めることもできます。また、横や後ろからの侵入
を防ぐために三方を囲む方法もあるでしょう。しかし、三方を囲むとドアの
開閉スペースのために大きな駐車場になってしまいます。エリアセンサーで
は完全な侵入を検知することは困難ですし、ダンバースイッチを稼働部全て
に付けることも困難でしょう。しかし、そんな事をしなくても、平面駐車場
にすれば解決します。
 立体駐車場より平面駐車場の方が安全で出し入れが簡単な事は誰でも判っ
ています。そこにコストという問題があるからやむなく立体駐車場にしてい
るのでしょう。
 機械の安全性の問題というより、経済の低迷により収入が減っており、駐
車スペースにお金を掛けられないという環境的な問題だと感じます。
 今、同様の駐車場を利用している人はこの事故の状況を良く見て、良く理
解して使ってください。一人で操作するのであれば安全です。しかし、車両
を加えて5トン程度の力を有するものですから、安心はできません。例えば、
上昇下降の時間が長くスイッチを押し続けるのは面倒だと考えて、スイッチ
の隙間に爪楊枝やコインを挟んで、手を離しても動き続けるような細工をす
ると、一人であっても事故の可能性があります。手を離すと止まるという安
全装置を無効にしてはいけません。テレビで住民にインタビューしていたの
を見ると、何かを付けて、手を離しても動くようにして使っている人がいま
した。とても心配です。このような事故が二度と起こらないようにしていた
だきたいと感じます。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年3月31日(局排設置基準の緩和)
 「有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令案要綱」に係る労働政策
審議会に対する諮問及び答申の記者発表について~有害物質を取り扱う業務
について、局所排気装置の設置以外での措置が可能になります~
が3月27日に発表されました
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002680h.html
 これは、今までは、有機溶剤・特定化学物質や鉛など有害な物質の空気中
濃度を抑えるために局所排気装置が必要でしたが、局所排気装置を設置しな
くても作業環境への有効性が認められたら局所排気装置を設置しなくても良
いということです。
 たとえば、トルエン・キシレンなどの有機溶剤を使用する場合、活性炭な
どで有機溶剤蒸気を除去することができれば局所排気装置は不要ということ
になります。
 規制が緩和されたといっても、今後はこの制度を利用した装置が増えると
は考えにくいです。なぜなら、吸着させるための活性炭等を定期的に交換す
る費用や活性炭等の廃棄費用がかかります(ランニングコストが高い)。
 しかし、全く意味が無いわけではありません。
 設置する建物が高層で、屋上までの排気ダクトを設置する場合は大きなコ
ストがかかりますので、活性炭等によるの浄化の方が安い場合もあります。
 また、生産数が少なく、数か月後には設備を除去することが決まっている
場合にはコスト削減につながるかもしれません。
 さらに、電力事情が不安定な今にとっては、排気して新しい空気を入れて
空調するより、有害物の除去をしながら室内を循環させる方が温度を一定に
保ちやすいので電力削減になることもあります(製造コストの削減)。電力
使用料削減や電力使用量抑制が必要な現在には有効な対策となるかもしれま
せん。
 しかし、危険・有害要因はあります。
 空気清浄のための活性炭には“破過”の問題があります。活性炭は無限に
有害物を吸着するものではなく、限界があるのです。限界を超えてしまうと、
単に空気が流れるだけで、有害物質は除去されませんから、空気中の有害物
濃度は上昇し続けます。
 対策として、定期的に活性炭等を交換すれば良いのですが、生産量の急激
な増加などがあると、“破過”になってしまう危険があります。法に定める
作業環境測定(有機溶剤の場合6カ月に1度)では破過など異常な状態を検知
することは無理です。いかにして恒久的に職場環境を良くして、それを維持
するかです。これが最大の問題であり、それをクリアしなければ所轄の労働
基準監督署長の許可は取れないでしょう。
 設置計画に問題があれば、設置が認められず、生産に支障が生じることも
あります。最悪の場合、生産開始後、使用停止命令を受ける可能性がありま
す。導入を考えている場合は最寄りの労働衛生コンサルタントや当社にご相
談ください。

               
 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年3月24日(潜水士死亡)
 3月17日、大分県津久見市沖の豊後水道で、海洋牧場のブイ撤去工事で3人
の潜水士が溺れて死亡する事故がありました。
 水深57mでコンクリートブロックを引き上げるためにワイヤーをつなぐ作
業だったようです。ブロックにフックを掛けるだけのようです。3人の作業
者は12ℓから14ℓの空気ボンベを使用していました。作業後に急浮上すると減
圧障害を起こすことがあるので、浮上スピードを抑えて、水深5mぐらいで
一度停止し、圧力調整を行う必要があります。
 3人が亡くなったため、何が原因であるか特定することはできませんが、
3人とも経験が豊富なことから予期できないようなトラブルがあったのかも
しれません。
 ある方に聞くと、42mは“死にメートル”と言われ、シングルタンク(酸
素ボンベ1本)で行くべきものではない。シングルタンクではせいぜい20分
しか使えないので、ダブルタンクで行くべきだ。と言っていました。
 水深57mでは7気圧ぐらいになります。サメが接近することもあるでしょ
う。作業をミスして焦ることもあるかもしれません。呼吸が激しくなると、
空気をどんどん消費してしまいます。
 簡単な作業だからと考えたことが原因ではないかと考えます。


2012年3月24日(足場倒れ、男児死亡)
 3月19日、埼玉県東松山市でマンションの外壁補修工事のための足場が倒
れ、園児の歩く列に倒れ、男児1名が死亡し、1名が重傷を負う事故がありま
した。
 足場は縦・横ともに1.8m、高さ10mです。
 とても残念な事故ですが、どうしてこんな事になったのでしょう。
 結果的に考えると、マンションの壁面と固定をしていなかった事が原因と
なります。マンションのベランダと接続したり、壁にアンカーを打ちこんで
固定するのが手順です。この固定は完成後にするのではなく、足場を積み上
げる途中で適宜行います。それらの固定もなく、10m積み上げられました。
おそらく作業中はかなり揺れたはずです。揺れた時に“危険”と感じなかっ
たのでしょうか。
 足場の知識も経験も無い人に資材だけ渡して組立を指示したのではないか
と想像します。
 足場にはネットが付けられていました。ネットを付けると風を受けて、倒
れ易くなります。
 安易な作業指示により一般の方を巻き込むような大きな事故になってしま
いました。
 作業を指示する際にはその作業者の力量を確認して作業指示をして、作業
を確認することを怠ってはなりません。

                
ご安全に!  がんばろう、日本!

2012年3月17日(パワハラ)
 厚生労働省が1月30日に職場のいじめ・嫌がらせ問題(パワーハラスメン
ト)について発表しました。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd.html
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd-att/2r98520000021hlu.pdf
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd-att/2r98520000021ien.pdf
 3月15日にはパワハラの予防・解決に向けた提言がが示されました。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000025370.html
 予防と言っても、パワハラが何かを理解していなければ進めることができ
ません。しかし、パワハラをしていても、パワハラを受けていても、自覚し
ていない場合が多いのだと思われます。
 多くの場合、「パワハラになるのか、ならないのか」という線引きができ
ない点が、パワハラ問題を難しくしています。
 なぜなら、その線引きは、人によって変わります。例えば、上司と部下の
関係でも、上司が考えている線と、部下が考えている線は違います。上司が
セーフと思っても、部下がアウトだと思うと、アウトになります。
 このように書くと、セクハラと似ているように思うかもしれませんがパワ
ハラはセクハラより面倒です。セクハラは、「余計なことをしない・言わな
い」で、ある程度避けられるかもしれませんが、パワハラは、仕事の指示・
命令にも関わりますので注意が必要です。
 企業で取り組むためには、まず「知ること」が最初だと思います。以下の
①~⑥の“パワハラとは何か”を伝えるだけでは、多くの人が「問題ない」
と感じるかもしれません。
 ①暴行・傷害(身体的な攻撃)
 ②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
 ③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
 ④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過
  大な要求)
 ⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる
  ことや仕事を与えないこと(過小な要求)
 ⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
 例えば、仕事のミスがあれば、優しく指導するのではなく、感情が表に出
て厳しい言葉を出すこともあるでしょう。“ミスをしたら怒る”どこにでも
あることですが、同僚が近くに居る時に怒られると“侮辱”と受け止めるか
もしれません。
 また、職場で懇親会をする時、上司が出張で不在の時に行うような“仲間
はずし”“無視”も部下から上司へのパワハラになるかもしれません。
 さらに、コミュニケーションを取ろうと思い、部下を誘って何軒も飲み歩
く。これは良い事だと思っても、部下から見れば、“何時間も付き合わされ
た。自分の時間が無くなる”と考えるとパワハラになるかもしれません。
 そのように考えると、パワハラに当てはまるようなことも多いのではない
でしょうか。Q&Aを作ったり、ケーススタディを作り、パワハラとは何か
を周知することが必要だと考えます。
 また、パワハラは上司と部下とのコミュニケーションが不足するほど、パ
ワハラの線引きにギャップが広がります。コミュニケーションがあれば、そ
のギャップは小さくなるでしょう。そのためには、まず、“あいさつ”が大
切です。特に4月からは新入社員も入ってきます。職場の中でみんなが「お
はよう」と声掛けることを徹底していただきたいと考えます。「おはよう」
と声を掛けると、次の言葉が出て、コミュニケーションが図れます。
 あいさつは、安全衛生の基本と同時に人間関係の基本でもあります。
                ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年3月10日(塩酸タンク転落死の続報)
 昨年8月24日に千葉県の日鉄住金鋼板において塩酸タンクに作業員2名が転
 落し、死亡する事故がありました。
 *安全週記2011年8月27日分参照
   http://www.oshms.net/diary2011.html
 先日の3月1日、日鉄住金鋼板とその工事発注担当部長と設備点検担当課長
が書類送検されました。
 部長は下請け作業員に対して、注意事項などを作成・交付しておらず、タ
ンクに塩酸が入っていることも知らせなかったということです。課長は塩酸
タンクの法定定期点検を行っていなかったということでした。
 塩酸が入っていたタンクは化学設備であり、2年以内ごとに1回、定期自主
検査が必要です。
 点検項目は以下の通りです。
1 爆発又は火災の原因となるおそれのある物の内部における有無
2 内面及び外面の著しい損傷、変形及び腐食の有無
3 ふた板、フランジ、バルブ、コック等の状態
4 安全弁、緊急しや断装置その他の安全装置及び自動警報装置の機能
5 冷却装置、加熱装置、撹拌(かくはん)装置、圧縮装置、計測装置及び制
  御装置の機能
6 予備動力源の機能
7 前各号に掲げるものの他、爆発又は火災を防止するため特に必要な事項
 (労働安全衛生法施行令第15条、労働安全衛生規則第276条)
 屋外タンクが労働安全衛生法の化学設備に該当し、定期自主検査が必要と
知っている人は少ないのではないでしょうか。
 書類送検されたのは、全て元方事業者でした。
 仕事を発注した後は、全て下請けの責任と考えていないでしょうか。
 発注した部長が、「タンクの上に登って作業しろ」と命じてはいないと想
像します。それでも発注側に過失があると認められました。
 構内の作業を発注する際には考えられるリスクを特定し、必要な指示をし
ていただきたいと考えます。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年3月3日(レーザーポインター)
 みなさんは、仕事でプレゼンをすることも多いのではありませんか?
 私は、安全教育や安全講話などでプロジェクターで投影して説明すること
が多いです。
 その時、必要な道具として、レーザーポインターがあります。昔は“指示
棒”を使っていましたが、レーザーポインターは、出席者に見ていただきた
ところを離れた場所からピンポイントで示すことができます。指示棒のよう
に、プロジェクターとスクリーンの間に入って、影を作ってしまうこともあ
りません。
 しかし、良いことばかりではありません。レーザー光線を使うので眼に有
害です。最悪の場合、失明の危険さえあります。有害要因がある以上、取扱
には注意する必要があります。リスクアセスメントするなら、可能性は非常
に小さいが、眼に重篤な障害を与えるものとして評価されます。職場のリス
クアセスメントでレーザーポインターの使用をリスクとして抽出している会
社は少ないでしょうが、確かにリスクが存在します。
 もし、眼に全く有害性の無いポインターがあればどうでしょうか?
 誰もが安心して使えると思います。
 その商品がコクヨS&T株式会社が発売しているPCプレゼンター“エア
ビーム”です。
 http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/pcp/
 これは私のイチオシの製品です。レーザー光線を使わずに、ポイントを示
すことができるのです。
 しかも、従来の赤や緑の点だけなく、色も形も大きさも自由に設定できま
す。さらに良い点としては、大きな会場で大人数に対して行う時にはスクリ
ーンを2面、3面と使うことがあります。従来のレーザーポインターでは一
つのスクリーンしか示すことができませんが、これを使うと、同時に何面で
もポイントを示すことができます。
 合わせてリスクアセスメントの例としても利用しています。従来のレーザ
ーポインターの使用時のリスクレベルはとても低いものですが、このPCプ
レゼンター“エアビーム”は有害要因がないため、リスクアセスメントの危
険・有害要因からも外れます。すなわちリスクが全くなくなる改善の事例で
もあります。
 値段が気になるかもしれませんね。1万円程度です。なお、使うのは少々
コツが必要です。従来のようにスクリーンを見ながらポイントを示すのは操
作になれるまでは難しいです。でも手元のパソコンを見ながらの操作ならス
ムーズに使えると思います。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年2月25日(隠れてタバコを吸う)
 2月22日、大阪市地下鉄御堂筋線構内の地下で火災がありました。
 このような火災はそのうち発生すると思っていました。
 原因と考えられているのは、職員が倉庫内で喫煙したことです。
 今は禁煙エリアが増えています。地下鉄の駅構内では全ての場所で禁煙に
なっています。喫煙するためには喫煙所に行かなければなりませんが、地下
のため地上に出なければなりません。しかし、地上も禁煙場所が限られてい
ます。
 今回の火災事故の要因として、私が考える原因・要因を下記に述べます。
 喫煙したいと思っても、その喫煙場所に行くためには何分も移動する必要
がある環境でした。喫煙場所に移動するのは面倒だと考えるのは誰でも同じ
です。面倒だと考えると、吸うのを止めればいいのですが、喫煙習慣がある
ので、そう簡単にはできません。その次に考えるのは、“近くでタバコを吸
える場所”を探すことです。その点、倉庫や機械室は最適な場所かもしれま
せん。会社の幹部が立ち入る可能性はほとんどなく、誰にも咎められない場
所です。報道では常習的にその場所でタバコを吸っていたということです。
彼らにとって今回の火災がタバコの始末を誤ったとは考えていないと想像し
ます。おそらく、何かのガラス瓶を灰皿として使用していたのでしょう。ガ
ラス製の灰皿は世の中にたくさんあります。ガラス製の灰皿が悪いというこ
とではないのですが、条件によっては、局所的に温度が上昇し、熱膨張によ
って割れることがあるのです。おそらく今回の火災は、灰皿として使用して
いたガラス瓶が熱膨張によって割れてしまい、火災になったのでしょう。
 世の中は、喫煙する場所を無くす(または極端に減らす)方向にあります。
過度に喫煙制限を厳しくすると、このような火災事故(隠れて喫煙)が発生
するものです。近いうちに、労働安全衛生法が改正され、職場内での喫煙を
禁止(喫煙室を除く)することが義務化されようとしています。法改正は受
動喫煙を防止することであり、喫煙者を締め出すものではありません。
 喫煙問題は労使合意のもとで進めていただきたいと考えています。禁煙を
押しつけると、“タバコ休憩”を無くし、業務効率(利益確保)につながり
ます。しかし、押し付けが厳しくなると、“抜け道”を探すのが人間です。
倉庫のような密室で喫煙が増えることを危惧しています。
 労働安全衛生法では50人以上の事業所に対して、安全または衛生委員会の
開催を義務付けています。さらにその構成員は、議長を除いて労使同数とし
ています。これは職場環境が労働者に不利にならないようにしているもので
す。“社内全域で禁煙”ということを決めることは簡単かもしれません。し
かも、全面禁煙によるメリットは多いです。しかし、“隠れて吸う”という
ことも想定していただきたいと考えます。(隠れ喫煙を防止するために、炎
を感知する感知器を設置する方法もあります)
 また、この火災では、非常放送が流れなかったという問題が明らかになり
ました。点検ミスでしょうか? もしかしたら、タバコの煙による誤作動を
防止するために故意に配線を外したのかもしれません。(ただし、火災の場
所は熱感知器のため、タバコの煙では反応しないものでした)

               
 ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年2月18日(JR西明石駅踏切事故)
 2月17日はJRが各地でトラブルになっていました。私が朝、JRを利用
しようとしたら学研都市線は踏切の不調でダイヤが乱れ、午後は阪和線で人
身事故によりダイヤが乱れ、夕方にはJR山陽線西明石駅付近でトラックと
の衝突があって、一日中影響を受けてしまいました。
 17日夕方、JR山陽線西明石駅付近の事故はちょっと気になります。事故
があったのは、一般の車両・人の侵入を禁止している踏切でした(報道では
社員専用道路とありました)。侵入したトラックはJRの子会社が注文した
品物を納品するトラックでした。この社員専用道路には遮断機がありません。
(警報器はあるが、遮断機・障害物検知装置はない)
 トラックの運転手は警報は鳴っていたが、列車が来るとは思わなかったと
いうことでした。
 気になるのは、JRが外部の業者の車両乗り入れをどのように管理してい
たかということです。
 JRに限らず、皆さま方でも、安全確保のためや、セキュリティのため、
一般の車両や一般の侵入を防ぐ措置として立入禁止(侵入禁止)措置をとる
場合があります。その場合、
 「社員以外立入禁止」
 「関係者以外立入禁止」
 「許可を受けていない者は立入禁止」
 「保護具を着用しない者は立入禁止」
 などの表示をしていると思います。この中で良く目にするのは「関係者以
外立入禁止」の看板です。問題になるのは、表示をした側の考えと、通行し
ようとする者の考えが一致しないことが多くあります。
 安全確保のための通行制限であれば、その場所はリスクが存在します。そ
のリスク低減のためには、教育・指導・制限などが必要になります。その場
所のルール・基準を守る人だけの通行を許可するものでなければなりません
が、外部の人はそんな事を考えず、「自分が関係者だ」と考えれば入ってく
るかもしれません。
 今回のJRの事故では、JR側が納品業者を誘導したのか、納品業者が自
分の判断で侵入したのかは判りませんが、誘導したのであれば、事前に通行
に必要な事を指示しなければなりませんでした。
 「関係者以外立入禁止」とはとても曖昧な表示です。
 リスクの大きさにもよりますが、
 「次の者以外は立ち入り禁止(○○課員、点検業者)」という表示が適切
だと考えます。
 フォークリフトなどの機械操作でも同じようなことが言えます。
 「次の者以外は取扱禁止(○○班長、○○社員)」など
 立入禁止の表示をした人の意図が読み手に伝わるようにしなければなりま
せん。その場所のリスクが高い場合には、セキュリティカードなどを兼用す
ることが必要だと考えます。
                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年2月11日(雪降ろし)
 北陸地方の大雪が連日報道されています。
 消防庁が9日に発表したデータでは、雪の影響で83人が死亡し、1,184人が
重軽傷を負ったということです。
 屋根の雪降ろしで転落する事故も多く発生しています。転落によってケガ
をすることもあれば、転落して、雪に埋もれてしまうこともあります。多く
の場合、安全帯をしていないようです。安全帯をしていたとしても、転落の
際に屋根からぶら下がった状態になり、一人では降りる事ができず、発見が
遅れれば低体温症になることもあります。また、周囲が真っ白なため、屋根
の端が判りにくく、目測を誤って転落することもあります。
 雪降ろしをしなくてもいい方法は3つあるそうです。
  落雪式屋根(急勾配を付け、雪割板をつける方法)
  融雪式屋根(熱エネルギーにより雪を溶かす)
  耐雪式屋根(雪の重みに耐えられるような強固な家)
 しかし、課題もあります。
  落雪式屋根(落雪のスペースが必要になる)
  融雪式屋根(エネルギー費用が負担になる)
  耐雪式屋根(建設費用が高価になる)
 豪雪地帯では高齢化が進み、自宅の雪降ろしが困難な場合があり、市役所
や民間業者が雪降ろしをしているところもあります。
 足場を組む事も困難ですし、安全帯を掛ける親綱もありません。安全に雪
降ろしをするのはとても困難です。
 何か良い方法は無いのでしょうか?
 毎年この季節には同じようなことを考えています。


2012年2月11日(インフルエンザ)
 インフルエンザの患者数が急激に増加しています。患者数が200万人を超
えたというので驚きました。私は予防接種していますし、12月の終わりにイ
ンフルエンザらしい症状がありました(予防接種をしたから軽度だったと思
います。)
 インフルエンザの治療薬としては、長年「タミフル」が使われていました
が、今年は第一三共が開発した「イナビル」が良く使われるそうです。イナ
ビルは他の治療薬より速く熱が下がるということで、評判は良いそうです。
しかし、この早く熱が下がるというのは、良いようで悪いとも言えます。な
ぜなら、熱が下がった人が、通勤・通学を開始するのです。熱が下がっても
ウイルスが無くなったわけではありません。電車の中でゴホッ、ゴホッと咳
をする人もいます。マスクをしていても完全にガードできるわけではありま
せん。そのように「治ったつもり」の人が感染を広げているのではないかと
考えてしまいます。仕事も学校も大事でしょうが、5日間ぐらい安静にして
いただきたいものです。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年1月28日(カセットコンロ事故)
 1月24日神戸市の居酒屋で爆発事故が発生し、8人が火傷などを負いました。
カセットコンロ用のガスボンベに穴を開けていた時に爆発が起こったようで
す。
 原因は空のガスボンベを金づちで叩いて穴を開けていた時に火花が出て、
床面に充満したガスに引火・爆発したと考えられます。その時、従業員が開
けていた本数は20本以上ということで、ボンベの中に残っていたものが充満
したのだと考えられます。さらに店舗の厨房の奥という狭いところで行って
おり換気が不十分だったことも要因ですし、中身が空なのかを十分確認しな
かったことも要因だと考えられます。
 みなさんは使用済みのガスボンベやスプレー缶をどのように廃棄している
でしょうか?
 そのまま他のゴミと一緒に出して、ゴミ回収車がプレスした時に火災や爆
発が発生することも全国各地で発生しています。
 まず、中身の確認が重要です。スプレー缶は噴射して確認できますが、コ
ンロのガスボンベは押しボタンが無いので、噴射を確認することはできませ
ん。振って確認するしかないでしょう。小さな音ですから、騒々しいところ
では聞き洩らすこともあるでしょう。
 次に穴を開ける方法ですが、釘を打ち付けるとか、穴が開くまで金づちで
叩くのは火花がでますし、誤って手を打ちつける危険もあるので止めていた
だきたい方法です。私が子供の頃に飲んでいた缶ジュースにはまだプルタブ
が無かったので、穴を開ける金具が附属していました。テコの原理で穴を2
つ開けて飲んでいました。テコの原理では缶切りも穴を開けるには適してい
るでしょう。ホームセンターなどでは専用の穴開け機を売っています。
 専用の穴開け機でも安全とは言えません。ガスが残っていたら、噴き出し
て顔にかかるかもしれません。メガネをすれば良いでしょうが、それより、
足で踏みつけるタイプの穴開け機が良いでしょう。
 たとえばこのようなものです。
 http://www.eco-g.co.jp/itemgas.html
 これなら、噴き出しても床面に噴出するので、安全性が高いと考えられま
す。しかし、この装置には穴を開ける針がありますので、取扱によっては、
針を踏んだりするなどの危険もあります。
 そして、重要なのはその場の換気の状況です。狭い場所で多くの缶に穴を
開けていたら、ガスが充満することもあります。屋外で行うのが適している
でしょう。
 手軽に使えるカセットコンロですが大きな破壊力を有しています。ご注意
願います。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年1月21日(コスタ・コンコルディア)
 1月13日豪華客船コスタ・コンコルディア号が転覆しました。プールもレ
ストランも充実しているし、4200人も乗船できる素晴らしいものでした。
 船には救命ボートが船の側面に設置されていますが、船はどちらに倒れる
か分りませんから、片側だけで人数分の救命ボートがあるので、左右合わせ
て約9000人が乗れるほど用意されているそうです。
 設備の絢爛豪華ですが、従業員の質は最低でした。本当にお粗末な事故で
した。テレビではタイタニック号事故(1912年4月14日)の再現とか言って
いますが全く違います。100年前と現在では技術の差がありすぎです。海の
底の地形・水深は把握できているし、GPSで位置も正確に分ります。
 事故はお粗末ですが、その後の対応は最悪です。船長が先に逃げたという
し、救命ボートには乗務員が先に乗っていたということです。おそらく避難
訓練はしていなかったのでしょう。避難訓練をしていたら、船長、乗務員は
事故時の手順を理解していたはずです。
 日本から20万円程度で10日の豪華な旅ができるということで人気がありま
した。飛行機代込みでこ価格ですから、安いと思った人も多いでしょう。
 座礁した船はこれからどうなるのでしょうか。起こして曳航するのかもし
れません。浸水したところに風船を入れて浮かせて運ぶ方法があるそうです。
 今回の事故で、多くの死者が出ました。燃料回収費用も必要になりますし、
船の損害も甚大です。
 船長を含め乗務員が避難訓練を受けて、各自の任務を理解していたら、人
的災害はもっと少なくなったでしょう。責任を明確にし、緊急時の訓練を実
施することの重要性を認識しました。

2012年1月21日(マンホールでの事故)
 1月20日愛知県北名古屋市で水道管工事での酸欠および一酸化炭素中毒が
発生し、6人が被災しました。
 マンホール内の水をエンジン付きポンプで排水しようとしていたが、ホー
スが短いため、エンジン付きポンプを地下に降ろしました。エンジンによっ
て酸素が不足し、不完全燃焼で一酸化炭素が充満したことが原因でした。6
人が被災しました。空気呼吸器などを使わずに救出に向かったため、次々と
倒れたようです。幸い、命には別条ないそうですが、異常に気が付くのが遅
れていたら6人が死亡していたかもしれません。
 社長は記者会見で「マンホール内にエンジンポンプを入れることは考えら
れない」と答えました。確かに、マンホール等換気が不十分なところでエン
ジン付きポンプを使ってはいけないことは常識と考えている人は多いでしょ
う。しかし、教育を受けていない人には常識ではないかもしれません。今回、
エンジンポンプを地下に降ろしたのは現場監督者の指示によるものでした。
酸素濃度測定も換気もしていませんでしたし、呼吸用保護具を使わずに救出
に行ったことから、教育が不十分だったと考えられます。
                ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年1月14日(ノンアルコールビール)
 ノンアルコールビールが良く売れているようです。ノンアルコールのビー
ルだけでなく、ノンアルコールカクテルも好評のようです。「ノンアル市場」
という言葉が生まれるほど注目されています。
 アサヒビールが来月発売するノンアルコールのビール風味飲料「ドライゼ
ロ」がちょっと話題になっています。アサヒビールがビールシェアトップの
「アサヒスーパードライ」のデザインや名前が似ていることです。スーパー
ドライは1987年に販売開始され、ビールシェア50%を超える大ヒット商品で
す。銀色のラベルを見ただけでスーパードライと思い込むのではないでしょ
うか。
 話題になっているのは、間違えて飲むのではないかということです。車を
運転するため、「ドライゼロ」を飲もうと思って、間違えて「スーパードラ
イ」を飲む可能性があります。ビール風味ですから、人によっては気が付か
ないかもしれません。そのまま車を運転すると大変なことになります。人間
の思い込みは味覚にも影響します。「ノンアルコールビールのドライゼロを
どうぞ飲んでください」と言われて、実はスーパードライだったとしたら、
「このドライゼロは色も泡も喉越しもビールと変わらないなぁ。良くできた
ものだ」と感心し、アルコールが入っていることに気が付かないかもしれま
せん。
 ビールと思ってノンアルコールビールを飲んだ時は、問題ないのですが、
ノンアルコールビールと思ってビールを飲み、運転すると取り返しのつかな
いこともあります。
 ドライゼロには「ビールではありません」「ノンアルコール」と記載があ
りますが、スーパードライには「これはお酒です」と記載されていません。
 ビールは飲酒運転になりますが、ノンアルコールビールは飲酒運転になり
ません。交通事故のリスクで考えると、ビールはリスクが高くて、ノンアル
コールビールはリスクが低くなります。リスクの高い方に注意喚起の表示が
なく、リスクの低い方に、「アルコールゼロです」という注意喚起の表示が
あることに安全面での疑問を感じます。
 また、宴会などで、ノンアルコールビールを飲んでいる人のグラスにビー
ルを知らずに注いでしまうことも考えられます。くれぐれもご注意ください。

                
ご安全に!  がんばろう、日本! 

2012年1月7日(緊急地震速報)
 年末にはいろいろな報道番組がありました。12月25日TBSの番組で「報
道の日2011」があり、この中で興味深い内容がありました。
 東日本大震災直後の映像です。仙台市内のあるホテルで「次世代移動体シ
ステム研究報告会」が行われました。そこは震源地より約174km離れた場
所です。講習会の受講者の携帯電話が一斉に緊急地震速報を発しました。そ
の5秒後にシャンデリアの揺れが分かる程度の小さな揺れがはじまり、その
23秒後に大きな横揺れがありました。
 報告会の会場は椅子席で200人程度の受講者がいました。緊急地震速報が
鳴った直後は誰も動きません。主催者がシャンデリアの揺れを見て、「シャ
ンデリアの真下の人はすぐに移動してください」とアナウンスするまで誰も
動きません。微振動が約20秒ほど続き、受講者がだんだんと立ち上がり始め
た時に大きな横揺れが始まりました。
 地震では初期微動でのP波と呼ばれる小さな縦揺れと主要動でのS波と呼
ばれる大きな横揺れが同時に発生します。P波とS波とは伝播速度が異なり、
P波は毎秒約7km、S波は毎秒約4kmの速さで伝わります。この伝播速度差を
利用して、震源に近い地点におけるP波の観測に基づき、あとからくるS波
の伝播を時系列的に予測し、発報するものが緊急地震速報です。
 この緊急地震速報には「一般向け」と「高度利用者向け」の2つがありま
す。高度利用者向けは観測点が1か所P波を感知し発報します。一般向けは
複数の観測点がP波を感知して、最大震度5弱と推定した時に発報します。
そのため、高度利用者向けの方が早く発報します。しかし、1カ所の情報の
ため、誤報もあり、地震の大きさはまだ不明確です。一般向けは発報が遅い
が、大きな地震が来る事が分かります。
 この緊急地震速報を聞いた瞬間の行動が重要になります。
 緊急地震速報を聞いた瞬間に、ハシゴや脚立から降りることができれば、
減災効果があります。
 しかし、緊急地震速報が発報した直後にすぐ行動を起こすには訓練が必要
だと思います。防災訓練などで実施してはいかがでしょうか?
 発報の月日だけ決めて、全社員に連絡し、任意の時間に社内緊急放送で発
報します。
 発報の5秒後などに「今の状況を記憶してください」とアナウンスします。
そうすることによって、発報直後に社員が何をしたかが分かります。それを
集計すると、初期行動の問題点が把握できるのではないでしょうか?
 5秒以内に上から物が落ちてこないような場所を見つけて移動できていれ
ば良いと思います。防災用ヘルメットがある会社ではヘルメットの着用など
が良いでしょう。
 火災の時の避難訓練とは違ってきます。大きな揺れが発生している時は動
かない方が良いです(崩壊の危険がある時を除く)。火災時の避難訓練のよ
うに一列に並んで逃げることは現実には無意味だと思います。
 緊急地震速報には問題もあります。それは直下型の地震など、震源域に近
い場所では、大きな揺れが発生してから、速報が出ることになりますし、速
報の何秒後に大きな地震が来るのか分かりません。
 地震が発生しないことが好ましいのですが、頭の片隅に発報を聞いたら何
をするかを考え、すぐに行動に移せることが重要です。
 (参考:気象庁「緊急地震速報の仕組み」)
  http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/Whats_EEW.html

 
                
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