2014年12月20日(ストレスチェック)
 厚生労働省では、改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に
関する検討会報告書をとりまとめました。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000069013.html
 ストレスチェック制度の施行は来年12月1日からです。実施方法等を安
全衛生委員会等で審議しながら取り組んでください。
 特に以前から簡易ストレス調査表などを利用してストレスチェックを実
施している事業所の多くは、事業所が実施者になっていると思われます。
今回の法改正では、「労働者の同意なく事業所に結果を通知する」ことを
禁じています。労働組合などと一括同意を得ることも禁じています。
 ストレスチェックは事業者(常時50人以上を雇用する事業者)に実施義
務がありますが、一般の健康診断と異なり、労働者に受検の義務はありま
せん。受検しなかった者に対する不利益な行為は禁止されていますが、法
の趣旨は労働者個人個人が、自らのストレス状況を認識することなので、
受検率を向上させるようにしてください。
 なお、メンタルヘルスケアには4つのケアがあります。「セルフケア」
「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業
場外資源によるケア」です。今回法改正で義務化されたのは一番最初のセ
ルフケアだけです。ストレスチェックを行えば、メンタルヘルスケアがで
きるというものではありません。ラインによるケアも重要です。ストレス
チェックとラインケアを効果的に進めていく必要があります。


                         
ご安全に!

2014年12月13日(スモークマシン)
 
10月18日に送信した330号ではスモークマシンを購入したことを書かせ
ていただきました。このたび現場で使用しましたので報告します。その
会社では塗装室と喫煙室および喫煙コーナーで使用しました。
 塗装室では塗装ブース型の局所排気装置を使用していましたが、作業
者がブースから離れた場所で吹付け作業をしていたので、局所排気装置
に煙が吸い込まれていかないことを現場の方に見ていただき、改善方法
をアドバイスさせていただきました。喫煙室では発生させた煙の吸込み
が弱いということを見ていただき、換気能力が低いので、排気装置の増
設をアドバイスしました。また喫煙コーナーでは分煙機を設置していま
したが、多くの煙が周囲に広がることを見ていただき、喫煙コーナーで
はなく、周囲を囲んだ喫煙室にする必要があると説明しました。いまま
で、“臭う”とは感じていましたが、タバコの煙を想定したスモークマ
シンで、どのように広がるかを確認できました。
 また、別の会社では喫煙室に換気装置がなく、窓を全開していました。
ここでもスモークを発生させ、窓から外に出る煙もあるが、出入り口か
ら煙が職場に流れていることも見て納得してもらいました。
 スモークマシンを利用すると、局所排気装置の効果確認および喫煙室
の状況が判りやすくなります。興味がある方は連絡ください。来年1月
末までに連絡いただいた場合は無料にて実施します。(遠方の場合はお
断りすることもあります。

2014年12月13日(ゴキブリ混入)
 “ペヤングやきそば”にゴキブリが混入したということで、まるか食
品では自主回収して生産休止を発表しました。麺を揚げた油の成分がゴ
キブリにも付着していたので、客先や輸送上ではなく、生産ラインで混
入したことが明らかになりました。
 ゴキブリ1匹で生産ラインを止め、製品を回収して廃棄しなければな
りません。被害額は相当なものです。
 日本ではそのくらい、食の安全安心が重要視されているということな
のでしょう。ゴキブリ1匹で、操業停止まで進むと会社の存続・従業員
の雇用問題にも発展するかもしれません。
 私が昔、お世話になった会社の厨房でもゴキブリ対策には苦慮しまし
た。薬を入れた餌を仕掛けても、餌になる食材などが豊富にある場所な
のでなかなか駆除は困難でしたが、段ボールの持ち込みを禁止したり、
整理整頓・清掃を合わせて実施すると徐々に効果が出てきました。日常
使わない食器等はすべて倉庫に移し、厨房機器本体を分解して中まで掃
除し、薬剤を散布しました。3S、4S、5S活動というのはどんな業
種であっても必要だと感じました。(まるか食品の整理整頓清掃に不備
があるという意味ではありませんので、誤解の無いように付けくわえさ
せていただきます)

                         
ご安全に!

2014年12月6日(ありえない?)
 
12月5日のニュースより
   12月4日午前10時55分頃、福井県坂井市春江町田端の鉄工所「中山
   機工」で、溶接中の火花がシンナーに引火、作業をしていた社員の
   冨田佳史さん(37)が、顔や手足に大やけどを負った。坂井署の発
   表によると、冨田さんはシンナー入りの一斗缶を台にして機械部品
   を溶接していた。一斗缶は爆発したが、工場などは無事だった。
 どう思いましたか?
 シンナーが入っている一斗缶を台にして溶接作業を行うなんて信じられ
ない。でも、実際に災害が発生しました。
 私はこの仕事をしているので、多くの災害状況を聞きますが、理解でき
ない行動もよくあります。その事業所に共通していることが、
 「安全衛生教育を定めていない」
 「作業の多くは、作業者が自分で考えて行う」(手順書なし)
 「整理整頓ができていない」
 「災害原因調査は被災者が悪いという判断で終わる」などがあります。
 この事故を受けて、「溶接時には引火性の液体を近くに置かない」と指
導するだけでなく、教育面の不備はないか、作業指示は適切か、シンナー
の保管状態は良かったのかなど、原因・要因・背景など検証して災害防止
に努めてください。
 この前、ある会社で気になったことがあるのですが、その会社ではヒヤ
リハット活動もリスクアセスメントも実施しています。事故が発生すると
関係者を集めて、災害対策会議を行っています。それは良いのですが、災
害発生時の対策会議と、ヒヤリハット・リスクアセスメントの対応の差が
大きいことに疑問を感じました。災害が発生すると、原因分析して再発防
止措置が行われていますが、ヒヤリハット・リスクアセスメントは担当者
だけで対応を考えています。ヒヤリハットにはちょっとタイミングが狂っ
たから事故にならなかっただけで、同じことが発生すると事故になったか
もしれません。ヒヤリハット・リスクアセスメントも事故時と同じように
対応いただきたいと考えます。

                        
 ご安全に!

2014年11月29日(違法エレベーター)
 大阪労働局東大阪労働基準監督署管内で安全基準に適合しないエレベー
ターの使用によって死亡事故が発生し、会社と代表取締役が書類送検を受
けました。エレベーターには扉がありませんでした。
 http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H26/syosyo/261126-01.pdf
 死亡したのはこの会社の社員ではなく、弁当配達業者の労働者でした。
 なぜ、国が定めるエレベーター構造規格があるにも関わらず、扉の無い
エレベーターが存在するのか疑問に思う方もおられるでしょうが現実には
かなり多いのかもしれません。その多くはエレベーター専門の業者に発注
せずに、巻き上げ機で搬器を上下させる違法エレベーターを作ったためで
す。行政側でも届け出のあるものは確認できますが、届け出が無ければ確
認できません。それを使う社員も「このエレベーターは最初から扉が無い」
ということに何の疑問も感じないようです。
 事故があった会社の社員も「扉が無いから使う時は気を付けよう」ぐら
いの感覚だったのかもしれません。そのエレベーターを外部の労働者が使
うと危険性をよく知らない訳ですから、このような事故が発生します。
 扉が無いものや、搬器(カゴ)が無い時でも扉が開くもの、扉が閉まら
なくても動くもの、囲いが不完全で手や足が入って挟まることもあります。
異常なエレベーターがあれば、直ちに使用禁止として、速やかに措置して
ください。
 また、安全基準を満たしているエレベーターでもトラブルは発生してい
ます。こちらはペットの犬が危険な状態になったという動画です。
 (ショッキングなシーンがありますので、ご注意ください)
 https://www.youtube.com/watch?v=wW4CJkwJuzM
(参考:NHKおはよう日本)
 http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2013/11/1128.html
(参考:大阪府 違法エレベーターについて)
 http://www.pref.osaka.lg.jp/kenshi_anzen/anzen_kaigi/ihouev.html
                         ご安全に!

2014年11月22日(トリクロロエチレン)
 11月20日読売新聞からの抜粋
  兵庫県明石市の金属加工工場で有機溶剤「トリクロロエチレン」を使
  う作業に従事していた50歳代の元男性従業員が、腸疾患の腸管嚢腫
  様気腫症を発症し、加古川労働基準監督署から労災認定を受けていた
  ことがわかった。
  厚生労働省によると、この溶剤が原因で同症になったとする労災認定
  は全国で2例目。
  男性は2011年2月から退職した今年6月までの間、工場内でトリクロロ
  エチレンの液体や蒸気を使って、給湯器に使う銅パイプ(直径約10cm)
  の洗浄を担当。繁忙期には1日6000~7000本を洗浄していた。
  工場内に十分な換気装置はなく、男性が作業した最初の約半年間は防
  毒マスクも着用しなかったという。男性は昨年秋頃、便秘などの症状
  が表れ、今年5月、腸管嚢腫様気腫症と診断された。
 新聞では有機溶剤となっていますが、11月から特定化学物質に指定され
た溶剤です。洗浄する部品をカゴに入れ、トリクロロエチレンの入った槽
に入れて洗浄していました。局所排気装置は無かったということなので、
呼吸域には高濃度の蒸気が発生していたと考えます。防毒マスクは支給さ
れたようですが、おそらく吸収缶の交換はできていなかったのではないで
しょうか。さらに有機溶剤作業者の選任・作業環境測定・特殊健康診断も
実施されていなかったようです。
 昭和化学㈱のSDSを見ると、「本品を試験研究用以外には使用しないで
ください」と記載されていました。
 http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/20402250.pdf
 クロロホルムのような臭いもあるので、かなり苦痛な業務だったと想像
します。「仕事だから臭くても辛抱しなければならない」と考えずに、
「今の環境は、このまま仕事していいのか」と疑問を持っていただきたい
と思います。そして、社内で回答が得られなければ、労働基準監督署や安
全衛生コンサルタントを活用してください。 

                       
  ご安全に!

2014年11月16日(ハーネス安全帯)
 墜落・転落防止のために安全帯を使うことが多いです。その多くは一本
吊りの胴ベルト型です。しかし、できればハーネス型を使っていただきた
い。その理由は、万一の場合の墜落時のことです。安全帯を使用していれ
ば地面への墜落は免れます。しかし、その際の体の負担は相当なものがあ
ります。私自身、墜落した経験はありませんが、疑似体験として、安全帯
で空中にぶら下がったことがあります。疑似体験なので、ゆっくりと空中
にぶら下がりますが、その時の痛み・辛さは想像以上でした。実際の現場
では、落差があり、加速度がありますので、身体への衝撃はかなり大きい
ことは容易に想像できます。一本吊りの安全帯の欠点は墜落時の衝撃だけ
ではありません。墜落しても安全帯で助かった場合でも、自力では元の場
所に戻れません。助けが来るまで、ただひたすら痛みに耐えるしかありま
せん。同僚が助けに行ければ、まだ良い方です。レスキュー隊が来なけれ
ば救出が困難な場合もあるでしょう。疑似体験ではわずか10秒でも苦しい
です。
 やはり、安全帯はハーネス型が適しています。ハーネス型は腰ではなく、
背中の肩甲骨あたりにフックが付いているので、直立状態でぶら下がるこ
とになるので、たとえ救出に長時間かかっても、それほど苦になりません。
 安全帯のフックは、必ず腰より高い場所に取り付けるよう教育している
でしょう。しかし、屋根上作業などでは親綱の設置が困難なため、足元に
フックを掛けるしかない場合があります。ハーネス型を使用していれば、
身体への負担が少ないので、足元にフックを掛けても耐えられるでしょう。
親綱の高さが確保できない場合には一本吊り胴ベルト型安全帯でなく、ハ
ーネス型安全帯を使用していただきたと思います。
 厚生労働省の資料で解りやすいものがありましたので紹介します。
http://ehime-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/2014071501/20141110.html
 ただし、ハーネス型であっても欠点はあります。それは、フックを掛け
なければ意味が無いということです。人間は決められたことであっても忘
れるというヒューマンエラーがあります。墜落・転落を防ぐ安全柵の設置
などが第一であり、それができなければ、ハーネス型の安全帯を使用して
ください。

                        
 ご安全に!

2014年11月8日(有機溶剤作業場の掲示物)
 有機溶剤を取り扱う場合、有機則の規定により掲示が必要です。
  有機溶剤中毒予防規則第24条(掲示)
   事業者は、屋内作業場等において有機溶剤業務に労働者を従事させ
   るときは、次の事項を、作業中の労働者が容易に知ることができる
   よう、見やすい場所に掲示しなければならない。
    一 有機溶剤の人体に及ぼす作用
    二 有機溶剤等の取扱い上の注意事項
    三 有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置
 このたび、新たに告示が出て、表記内容が変わりました。
 http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H141104K0010.pdf
 公布は11月1日、施行は平成27年1月1日です。
 約2か月間の猶予があります。
 ここからは私見ですが、有機溶剤の場場合、どの種類の有機溶剤を使用
しても同じ看板を掲示すれば法的には満足します。その対象となる有機溶
剤は55種類。ただし、11月1日より10種類が特化物に移行したので45種類
です。それぞれ特徴が異なります。解りやすい点としては、引火性のある
ものもあれば、引火の危険のないものもあります。新たな告示にはGHS
(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)もありません。
 有機溶剤作業主任者を選任するべき作業場では作業主任者が作業方法を
定め、指揮しなければなりませんが、その表記もありません。呼吸用保護
具は環境機中濃度により使用するべき呼吸用保護具を定めるべきです。こ
れは事業所によって定めていると考えられます。事業所の取り扱いルール
と一致しなければ掲示物の意味がありません。また、万一、中毒が発生し
た場合の対応は事業所で定めているでしょう。
 また、「中毒にかかった者を横向きに寝かせ」という表現がありますが、
“横向き”とは回復体位を示します。回復体位といっても判らない人が多
いでしょう。イラストまたは写真が必要でしょう。
 既製品を購入して掲示するのは簡単ですが、私はお勧めしません。追記
したりして、工夫していただくようお願いします。
 有機溶剤の場合、混合有機溶剤を使用することもあるので、複雑になり、
既製品では説明不足になることも多いです。
厚生労働省リーフレット(掲示板の例)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/leaflet_yk.pdf
                         
ご安全に!

2014年11月1日(ドラドラ動画)
 今週、TBSの情報番組「朝チャン」で、ドラドラ動画の紹介がありま
した。ドラドラ動画はJAFMateのサイトでドライブレコーダー映像の投稿
し、共有しているものです。
 http://www.drive-drive.jp/index
 ドライブレコーダーは、万一の事故の場合に原因・過失が明確になると
ともに、安全教育ツールにもなります。
 以前から、イラストや写真を用いて、運転時のKYトレーニングをして
いましたが、1枚の画像より、動画の方がリアルで印象に残りやすい。安
全講習で、「路地から子供が飛び出してくる」から気を付けてと指導して
も、経験していない人にはピンとこない。でも、ドラドラ動画の映像は実
際の映像なので、その危険・怖さを疑似体験できます。
 ただ見るだけでも良いのですが、問題の場面の直前で画像を止め、これ
から何が起こるかを考えさせると、教育効果も高まるでしょう。
ドラドラ動画より一部紹介します。
 http://www.drive-drive.jp/movie?mid=1041
 http://www.drive-drive.jp/movie?mid=574
 http://www.drive-drive.jp/movie?mid=6308
 http://www.drive-drive.jp/movie?mid=1399
 http://www.drive-drive.jp/movie?mid=1726
 http://www.drive-drive.jp/movie?mid=415
 http://www.drive-drive.jp/movie?mid=2211
 http://www.drive-drive.jp/movie?mid=645
 ドライブレコーダーには事故(急ブレーキ含む)の前後を記録するもの
と連続撮影するものがあります。会社で導入するなら、連続撮影が良いで
しょう。連続撮影のデータを抜き打ちでチェックすると、社員も普段から
安全運転に心掛けるでしょう。できれば、前方と後方を映す2カメラタイ
プがいいです。運転中にスマホ操作しているところもバッチリ写ります。
 バイク用のドライブレコーダーも市販されています。ヘルメットに付け
るウェアブルカメラなどもあります。
 多くの場合、運転中は自分だけです。自分しか居ないので運転も雑にな
ることも多いでしょう。しかし、ドライブレコーダーなどで撮影すると、
運転中の行動が記録されます。「人に見られる」と意識すれば、自ら、安
全運転になっていき、事故も減るでしょう。
 マイカー通勤者に会社負担でドライブレコーダーを設置し、そのデータ
をまとめていくと、会社付近の危険マップを作ることに役立つでしょう。
 ちなみに、私の場合は、ビデオカメラを搭載しています(容易に角度を
変えて周囲を映せるため)。

                        
 ご安全に!

2014年10月25日(特化物の表示)
 特定化学物質を取扱いする場合は、作業場の見やすい場所に、その化学
物質の名称、人体に及ぼす作用、取り扱い上の注意事項、使用すべき保護
具を掲示しなければなりません(特定化学物質障害予防規則第38条の3)。
 ある会社ではこの掲示がありませんでした。掲示板は既製品が多くのメ
ーカーから販売されているので、それを購入して掲示すれば良いのです。
しかし、購入を考えた既製品を見て、このまま掲示していいのか?という
疑問を感じたのです。
 職場ではGHSのマークを用いて有害性の見える化を図っています。しか
し、どのメーカーの掲示板にもGHSマークがありません。法令では定めて
いませんので、法的には問題ないのですが、GHSマークは掲示するべきだ
と考えます。また、内容的に見ても、疑問を感じます。
 疑問を感じた表記の一例
  「取扱説明書を読んで理解して使用する」
  「適切な保護具を使用する」
  「吸引した場合は医師を呼ぶ」など
 特化物の「取扱説明書」とは何のことでしょう?SDS(安全データシ
ート)を差しているのだと思いますが、MSDSと呼ばれる時に改定され
ず、そのままになっていると思われます。また、「読んで理解して使用」
という表現にも疑問を感じます。これらの作業は、安全衛生教育を受けて
行うことが義務付けれられています。それを読んで理解したら使用してい
いというのは法違反に近いのではないでしょうか。
 「適切な保護具」という表記では何が適切か判っているのでしょうか?
 「吸引したら医師を呼ぶ」と書かれていても、医師が常駐していなけれ
ばできません。
 また、これらの作業については、作業主任者が手順を定め、指揮するこ
ととなっていますが、どの掲示板にも作業主任者の記載がありません。
 このように既製品の掲示板では多々問題があると考えます。
 みなさんの職場の掲示板の内容を確認してください。
 既製品の看板を購入して掲示すれば法的な問題はありませんが、その掲
示で本当に良いのか考えていただきたいと感じました。法を満足するだけ
で役に立たない掲示板でいいのでしょうか。限られたスペースにお金を掛
けて掲示するのですから、作業者の安全衛生に必要な情報を掲示するべき
だと考えます。

                        
 ご安全に!
2014年10月18日(スモークマシン)
 先日、スモークマシンを購入しました。スモークマシンというのは、コ
ンサートなどで煙がモクモクと広がる装置です。
 なぜ、このような物を購入したかというと、局所排気装置の点検などで
気流測定器を使いますが、気流測定器には発煙管を使用します。発煙管は
空気中の水分に反応して白い煙を出します。その白い煙を見て、空気の流
れを確認するのです。その空気の流れに合わせて風速計で風速を測定しな
ければなりません。しかし、この白い煙は腐食性ガスで人体に有害です。
 気流測定器でも局所排気装置の点検はできますが、煙が少ないため、風
速は測定できますが、局所排気装置が発散源・有害物の拡散を防止できて
いるのかまでは判断できません。
 有害物の拡散防止ができているかを判断するためには、有害物を可視化
しなければ判りません(作業環境測定では作業場所の濃度は測定できます
が、有害物の拡散状態は把握できません)。そこでスモークマシンを購入
しました。煙はプロピレングリコールを水に溶かしたものを瞬間的に蒸発
させたもので、有害性は発煙管より格段に低いです。この煙を作業場所に
充満させれば、局所排気装置の効果を眼で確認できます。周囲の空気の流
れや障害物で排出能力が低減しているかも確認できます。
 また喫煙室で使うと、タバコの煙がどのように排出されているか、タバ
コの煙が滞留するところも判ります。
 しかし、まだ現場での使用実績がありませんので、どの程度効果が得ら
れるか判りません。ついては、スモークマシンによる職場環境状態・局所
排気装置の効果確認を協力していただける企業を募集します。もちろん無
料です。ご協力いただける方は中川まで連絡ください。
(遠方の場合はお断りすることもあります。)
 条件
 ・ビデオ撮影を許可いただけること
 ・事例として、公開許可をいただけること(社名等は公開しません)
 なお、募集企業数は定めません。有効性が確かめられるまで継続します。
 うまくいけば、作業環境の把握、原因究明、環境改善の新しい技法がで
きるのではないかと期待しています。

                         
ご安全に!

2014年10月11日(石綿)
 
石綿の泉南訴訟は、10月9日最高裁において、石綿の健康被害は国に責
任があると判断されました。判決の中には、1958年には旧労働省の調査で
石綿による深刻な健康被害が出ていたことを認めながら使用を継続してい
たということが理由の一つになっています。
 石綿の輸入のピークは1974年の352,110トンです。1958年では37,738ト
ンしかありませんでした。日本が石綿の輸入した総量は9,879,865トンで
す。そのうち1959年以降に輸入した量は9,365,732トンにもなります(195
9年以降に輸入した量は約95%にもなります)。1958年に使用を禁止して
いたら石綿問題がこれほど大きな問題にならなかったでしょう。
 労働安全衛生法が施行されたのが1972年ですから10年以上何の対策もし
ていませんでした。そして2004年の石綿原則使用禁止になるまで使用が継
続することになったのです。
 私の肺には多くの石綿繊維が入っています。私が石綿作業をしていた訳
ではありません。今も僅かながら空気中に石綿繊維が飛散しています。大
気10リットルの中に1本程度含まれていると言われているので、今も毎日、
とても大量の石綿を吸っていることになります。
 なぜ、石綿が危険と言われながらも大量に使用されたのでしょうか?
 それは石綿がとても優れた材料だからです。石綿の特性として、“耐摩
耗性”“不燃・断熱性”“防音性”“耐薬品性”“絶縁性”“耐腐食性”
“紡績性”“抗張力”“親和性”“経済性”など夢の材料とまで呼ばれた
時代もありました。石綿がなければ製品にできないものまでありました。
そのため、危険だと言われながらも使用し続けました。原子力発電も同じ
かもしれません。みなさまの会社でも、「危険だけど、必要な作業」「使
いたくないけど、使わざる得ない材料」などがあるかもしれません。これ
らをどのように解決するか、頭を抱える問題です。
 石綿問題では危険と判っていたが、危険性をあまり表に出さなかったこ
とが一番問題だったかもしれません。石綿は使用禁止になっていますが、
建物解体時には石綿の除去が必要になります。石綿の健康被害はこの先、
何十年も継続していくでしょう。危険性を認識すること、自分自身の身を
守ることが必要です。

                         
ご安全に!

2014年10月4日(不意に起動する機械)
 大阪労働局内の送検事例を元に述べさせていただきます。
 労働安全衛生法違反の疑いで書類送検
 (より線機の動力しゃ断装置に危険防止措置を講じなかった疑い)
 http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H26/syosyo/260930-01.pdf
 簡単に説明しますと、起動レバーに何かが触れただけで起動する装置で
した。
 意図的に起動する場合はさほど問題になりませんが、たとえば、装置内
で誰かが作業している時に、不意に当たっただけで起動すると危険だとい
うことは理解していただけると思います。
 皆さまの会社にある機械を見てください。起動ボタンは埋頭型ボタンで、
緊急停止はキノコ型の突出になっているでしょう。起動ボタンが軽いタッ
チで起動する構造だと、意図しなくても起動して、とても危険です。逆に
非常停止ボタンは危険が迫った時にちょっと触っただけでも止まるように
します。緊急時には一刻も早く停止できるようにするためです。
 今回の事例ではレバーに不意に触っただけで起動して、巻き込まれてし
まいました。
 簡単に起動する方が楽なのですが、多くの機械では誤って起動してしま
うと労働災害の原因になりますので、簡単に起動しないようになっていま
す。
 プレス機械は過去に多くの重篤な災害が発生しています。そのため、両
手押しボタンという安全装置を付けることもあります。片手で素早く、両
方のボタンを押しても起動しません。両手で同時に両方のボタンを押さな
い限り起動しません。これがボタン一つで簡単に起動すると、空いている
片手がはさまれてしまいます。
起動は2アクション等、ちょっと面倒にし、停止は1アクションで瞬時に
できることが必要です。
 乗用車でボタンを押すだけでエンジンが起動するものもあります。これ
は、非接触キーを持つことにより、誰もが押しても起動できないようにし
ています。
 古い機械設備では簡単に起動してしまうものもあります。通常の操作で
なく、肘が当たっただけで起動しないかどうか確認してください。どのよ
うな間違った操作で起動するかを検証する必要もあります。故意に間違っ
た操作をして起動の有無を点検することも必要です。
 たとえば、グラインダー(ベビーサンダー)で発生した災害では、スイ
ッチをOFFにしないで、電源コードを抜く場合も考えられます。スイッ
チをONにしたまま電源コードを入れると、その瞬間に回転してとても危
険ですよね。人は間違った行動をするものです。間違った使い方で事故に
なることもあります。間違った使い方で起動する機械はそのリスクに応じ
た安全対策が必要です。

                         ご安全に!

2014年9月27日(受動喫煙防止)
 平成26年の労働安全衛生法改正に、受動喫煙防止の努力義務が追加され
ました。施行は平成27年6月1日です。
 義務ではなく、努力義務は余り積極的に導入しないところも多いのです
が、今は全国労働衛生週間の準備月間でもあり、今から考えて欲しいもの
です。
 今回の法改正では努力義務なので、何もしなくても労働安全衛生法違反
にはなりませんが、受動喫煙に関する裁判も数件発生しています。
 H16.7.2(東京地裁)受動喫煙による健康障害によって30万円の慰謝料
    を求めた裁判→有罪と認め、5万円の請求
 H18.10.19(札幌簡易裁判 調停)受動喫煙による健康障害によって、
    100万円の慰謝料を求めた→80万円の調停が成立
 H21.3.4(札幌地裁)受動喫煙による健康障害によって2300万円の損害
    賠償を求めた裁判→700万円で和解
 このように全て事業者側が負けています。受動喫煙防止は労働安全衛生
上では努力義務ですが、すでに裁判によって受動喫煙による健康障害は安
全配慮義務を怠ったと判断されますので、労働安全衛生法で考えるよりも
労働契約法による義務として考えなければなりません。

 厚生労働省では、受動喫煙防止説明会を全国30か所で開催します。
 受講は無料です。大阪では11月25日に開催しますが、他の都道府県は
下記をご覧ください
 http://www.irric.co.jp/contract/seminar/index.html
                         ご安全に!

2014年9月20日(内燃機関の事故)
 大阪府内の労働災害が増加しています。大阪労働局のホームページでは
毎週のように送検事例が掲載されています。今週はそのうちの一つを考え
たいと思います。
 事故は今年の5月11日、大阪市中央区のマンション新築工事現場で発生
しました。吹き付け塗装をするために内燃機関を有するコンプレッサーを
狭い室内(床面積:約50㎡)に置いて稼働させました。しかも、窓は閉め
切られた密閉状態です。内燃機関はガソリンを爆発燃焼させるために、酸
欠になり、不完全燃焼によって一酸化炭素が発生します。その結果、一酸
化炭素中毒で1名が亡くなりました。
http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H26/syosyo/260919-01.pdf
 労働安全衛生規則では自然換気の不十分な場所で内燃機関を有する機械
の使用を禁止しています。
 内燃機関の取扱については特に資格は必要ありません。誰でも燃料を入
れ、スイッチを入れると起動し、複雑な操作は必要ありません。そのため、
いつでも、どこでも、誰でも簡単に使える機械と考えていたのでしょう。
塗装業なので、内燃機関のコンプレッサーを使用するのは日常的なことで
あり、今まで事故もなかったのでしょう。危険性の高い機械ということは
認識していなかったのでしょう。しかし、眼に見えず、臭いもない酸素が
消費されていることに気が付かず、また、同じく眼に見えず、臭いもない
一酸化炭素が発生していることにも気が付きません。酸素不足や一酸化炭
素の増加は人間の五感では感知できないとても厄介なものです。
 現場では、塗料臭や排気ガス臭の不快な臭気があり、苦痛を感じる事が
当然だと思い込むため、わずかな体調の変化に気が付かず、倒れてしまう
のでしょう。
 毎日のように使っている機械でも、使用する場所などの状況によって、
リスクが変化することを知っておかなければなりません。

2014年9月20日(胆管がん その後)
 9月15日の報道では、胆管がんを発症させた校正印刷会社は、死亡者や
患者に対し1人あたり1000万円の補償金を支払う方向になっているそうで
す。遺族にとっては満足できる金額ではないかもしれませんが、企業にと
っては莫大な損失です。
 安全衛生管理活動は利益にならないと考えておられる方も居るでしょう
が、何か事故が起これば、会社の存続にもかかわる場合があります。
 今は問題無いと考えていても、実は知らなかっただけかもしれません。
 安全衛生コンサルタントの安全衛生診断を受けることをお勧めします。

                         
ご安全に!

2014年9月13日(見える化)
 厚生労働省では、平成26年度「『見える』安全活動コンクール」として
労働災害防止活動の「見える化」事例を募集しています
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000056010.html
 「見える化」には職場に潜む危険性を見えるようにし、注意を促すもの
で、労働災害防止に効果があります。昔から、「立入禁止」とか「挟まれ
注意」などの表示はありますが、単に文字を並べただけでは理解されにく
いものかもしれません。表示をした当初はある程度の効果を得られたかも
しれませんが、長期間掲出していると、単なる模様としか感じなくなるか
もしれません。表示物はその場所で立ち止まり、危険性を確認して行動す
るために、ひと呼吸させ、危険を意識させなければなりません。
 道路を運転していると、「飛び出し注意」という看板があったりします。
しかし、文字看板というものは、読めば理解できるが、読まなければ理解
できないものです。運転中は前後左右に気を配らなければならないため、
文字の認識力は下がります「飛び出し注意」という看板より、子供が走る
イラスト看板の方が注意を促します。しかし、道の両側に埋め尽くすよう
に大量に看板を設置しても効果は望めません。
 私が考える「見える化」の一番良い事例は、トイレ(小便器)のターゲ
ットシールです(便器の中央(下側)に貼られているシール)。自然に視
界に入り、自然にシールを狙ってしまいます。利用者がそのシールを狙っ
て小便をするので、便器の周りの汚れが少なくなりました。このターゲッ
トシールは20年前に関西国際空港で導入されたのが最初と言われています。
それまでは、「きれいに使いましょう」「一歩前にお進みください」とい
う表示をしていましたが、文章よりマークの方が自然と理解され、自然に
行動するものです。
 逆に、効果に疑問を感じる看板としては、「落石注意」という道路標識
です。崖から石が落ちてくるような図が描かれていますが、落石注意と言
われてもどうすればよいか判らないものは効果に疑問を感じます。落石に
警戒して、上を見ながら走行するのは危険とも言えます。
 厚生労働省のHPで優良事例などが掲載されていますので、参考にして、
効果的な良い「見える化」を実践してください。

                         ご安全に!

2014年9月6日(ラウンドアバウト:環状交差点)
 9月1日のニュースでご覧になったと思いますが、道路交通法の改正を受
けて全国19カ所でラウンドアバウト(環状交差点)の運用が始まりました。
 この交差点は、交差点の中央に円い島と呼ばれるところがあり、その島
の周りを時計周りの一方通行になり、交差点に入った車はその島の周りを
回り、必要な場所で左折して交差点を抜けます。
 この交差点のメリットとしては、事故が減ります。日本では導入したば
かりなのでデータとしてはありませんが、諸外国での導入実績を見ると事
故が減っています。理由としては交差点の島の周りは一方通行であること、
交差点への進入時には一旦停止で、島の周りが優先され、ゆずり合いで合
流するためだと考えられています。
 もう一つのメリットとして、信号機が不要なことから、大地震発生時の
停電でも影響を受けないことがあります。そのため、今後発生すると考え
られている南海トラフ巨大地震発生時にも効果が見込めます。
 デメリットとしては、交通量の多い場所では渋滞が大きくなる可能性が
高いので不向きです。メリットを考えると、今後、増えていくと考えられ
ます。
 私が危惧している点が2つあります。一つ目は、自転車との接触です。
一方通行の道に進入する場合、左から右へ走る車がないので、左側の安全
確認は疎かになるでしょう。日本は自転車の通行が多いことが気になりま
す。自転車が一方通行を守れば問題ないでしょうが、多くの一方通行の道
は「自転車を除く」となっていますので、一方通行を逆走する自転車が無
いとは言えません。右前方しか見ていない自動車と逆走自転車とが接触す
る可能性が高いです。
 もう一つは、カーナビです。カーナビはリアルタイムで情報を更新でき
ないので、情報が古いカーナビでは、環状交差点を右折しなさいというア
ナウンスが出ます。そのまま信用して右折すると逆行になりとても危険で
す。この2つの点から日本でも事故が減るのか心配しています。

                        
 ご安全に!

2014年8月30日(合図)
 今回は8月28日の書類送検事例について考えてみたいと思います。
 事故の現場は、古紙をベルトコンベアで搬送し、圧縮する設備です。
 被災者Aが、清掃のため、高さ6mのコンベアに上がっていました。別
の作業者Bが機械設備のスイッチを操作し、起動させたため、Aはコンベ
アから落下し、圧縮機に挟まれて死亡する事故がありました。
 (6月7日発生)詳細は下記
http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H26/syosyo/260829.pdf
 労働安全衛生規則第104条では、 事業者は、機械の運転を開始する場合
において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、一定の合図を定め、
合図をする者を指名して、関係労働者に対し合図を行なわせなければなら
ない。と定められています。
 事故のあった会社では、Bが合図をしておらず、合図の方法も定めてい
ませんでした。さらに、6mの高所であるにも関わらず、転落防止の柵は
無く、安全帯も使用させていませんでした。
 みなさんの会社では機械を起動させる時の合図を決めていますか?
 特に合図の方法は決めておらず、起動スイッチを操作する時は、周囲の
状況を確認して(指差呼称等)いる場合が多いでしょう。労働安全衛生規
則第104条で定める通り「危険を及ぼすおそれがある時」なので、危険は
無いと判断した場合は合図をしなくてもいいことになります。この「危険
を及ぼすおそれ」というのが曖昧な表現です。過去に事故やヒヤリハット
があれば「危険」と判りますが、そのような事例がなければ安全と判断し
てしまうかもしれません。機械の可動部周辺に人が居なければ危険ではな
いので、合図をする必要はないかもしれません。しかし、注意いただきた
いのは、物陰の死角に人が居る場合です。「まさか、こんな場所に人が居
たとは思わなかった」ということもあります。可動部はなくても、電流が
流れて感電することも考えられます。
 また合図を決めていても、その合図が聞こえなかったり、見えなかった
りすることもありますので、相手が合図を受けたことを確認することも考
えなければなりません。
 自分の行動(作業)が他の人にどのような影響を与えるのか、いつも考
えていただきたいと感じます。

                         
ご安全に!

2014年8月23日(施行令改正:特化物)
 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令
  http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H140820K0010.pdf
 新旧対照表
  http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H140820K0011.pdf
                  平成26年8月20日 政令第288号
 上記に示すようにジクロロメタンをはじめ、有機溶剤下記10物質が特定
化学物質に移行されました。(施行:平成26年11月1日)
 ・ クロロホルム
 ・ 四塩化炭素
 ・ 1,4- ジオキサン
 ・ 1,2- ジクロロエタン(1,2-ジクロルエタン、別名二塩化エチレン)
 ・ ジクロロメタン(ジクロルメタン、別名二塩化メチレン)
 ・ スチレン
 ・ 1,1,2,2- テトラクロロエタン
    (1,1,2,2-テトラクロルエタン、別名四塩化アセチレン)
 ・ テトラクロロエチレン
    (テトラクロルエチレン、別名パークロルエチレン)
 ・ トリクロロエチレン(トリクロルエチレン)
 ・ メチルイソブチルケトン(MIBK)
 有機則から特化則に移行すると、特定化学物質作業主任者の選任が必要
になります。作業環境測定や特殊健康診断の記録の保管年数も変わります。
排ガス・排液処理、ボロ等の処理、表示物などが多々変更しなければなら
ないものがありますのでご注意ください。特に有機則では取扱量によって
局所排気装置等が必要な物質でも、特化則ではそのような取扱量による規
制はなく、全てにおいて局所排気装置等の設備が必要になりますので、早
急に取扱の有無と現状設備を確認し、対応する必要があります。
 また、この機会に対象物を取り扱う場合は安全衛生教育を実施いただく
ようお願いします。

                         ご安全に!

2014年8月16日(法改正:機械等設置の届け出)
 平成26年6月25日の法改正の中に機械等設置届の一部廃止があります。
この項目は、規制緩和と言われていますが、その対象は製造業(一部)、
電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業であって、電気使用設備の定
格容量の合計が300KW以上の事業場となっています。労働安全衛生法第
88条の2~4項に該当しない機械が対象となります。この法律は私が企業で
安全衛生担当をしていた時に苦労していたものです。30日前までに届け出
が必要なのですが、届け出までに仕様を決めて、社内決裁を受けることが
困難なことが多く、届け出に際して、実際に見たことがない機械の説明を
するのですから難しいです。機械導入担当者と一緒に監督署へ行っていま
した。これが廃止されるので、非常に楽になります。極端に言えば、仮発
注だけして、社内決裁が受けられると、翌日の設置も可能になります。
 さて、問題は、監督署の届け出が不要になるということは第三者の目で
機械の安全対策・法規制の適合等をチェックする機能がなくなるのです。
機械のメーカーからリスクアセスメント情報を得ていなかったり、法に反
する仕様であっても設置し、そのまま生産活動に使われる可能性があると
いうことです。
 労働災害を防ぐためには、監督署の確認以上のことを実施しなければな
りません。そのために、以下の内容が必要だと考えます。
 ①社内稟議に安全衛生責任者・安全管理者の回議を入れる
   または安全衛生委員会等で導入を審議する
 ②メーカーからのリスクアセスメントデータを入手する
 ③現場でのリスクアセスメントを行う
 ④作業に必要な力量(資格等)を定める
 ⑤始業点検チェック表を作成する
 ⑥作業手順書を作成する
 ⑦使用原材料のSDSを入手する
 少なくともこれらの手順によって導入の可否を判断する仕組みが必要に
なります。
 社内で導入の安全性を審議できない場合は、労働安全衛生コンサルタン
ト等をご利用ください。
 なお、施行に関して、パブリックコメント(意見募集)が出ています。
 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495140183&Mode=0
                    
     ご安全に!

2014年8月9日(エボラ出血熱)
 今回、西アフリカで流行しているエボラ出血熱について述べます。私は
医療関係者ではありませんので、危機管理として述べます。
 ご承知の通り、エボラ出血熱は死亡率が約90%にもなる病気です。さら
に面倒なことには潜伏期間が2~3週間とも言われています。予防・治療の
ためのワクチンもありません。
 エボラウイルスの発見は1976年。ウイルスの名前はその発見時の感染者
の出身地の川の名前が付けられました。1976年から毎年のように発生して
いますが、過去一番多かったのが2000年の425人(そのうち死亡は224人)
です。今回の流行では1000人近い死者がでています。遠く離れた西アフリ
カのことといえ、無関心ではいられません。
 報道を見ていると、某専門家は「日本国内で流行する可能性は無い」と
言っていました。理由は日本との直行便が無いこと、空港等での対応手順
が定められているということです。
 でも、安心していいのでしょうか?今回、現地の医師にも感染が認めら
れました。エボラウイルスは空気感染しないから、急激な流行は無いと言
われていましたが、医師の感染および急激な増加から考えると、空気感染
するのでは? と不安に感じます。
 企業での危機管理としては、
 ①感染拡大地域の駐在員の帰国指示の判断
   帰国者の健康確認等の手順決定
 ②従業員とその家族に感染拡大地域からの帰国の有無確認
 ③感染者および感染疑い発見時の対応手順決定
 ④非感染地域への駐在および出張者の可否判定
 ④非感染地域への渡航者に対する教育
 等があるでしょう。
 2003年のSARS流行時に台湾の医師が日本に滞在後、SARS感染が
確認されたことを覚えている方も多いでしょう。エボラ出血熱は潜伏期間
が長いので、同様の事が発生するかもしれません。
 まず、エボラ出血熱を知ることが必要です。
 厚生労働省のHPなどを参考にしてください。
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ebola.html

                      
   ご安全に!

2014年8月2日(換気)
 7月31日に石川県能登町の宿泊施設「ホテルのときんぷら」の炉端焼き
店「炉ばた焼もちのき亭」で小学生27人と従業員5人の合わせて32人が一
酸化炭素中毒になりました。
 店には炉(いろり)が9基あり、事故当日は6基使用されていました。換
気扇は9か所ありましたが、事故の時には全ての換気扇が止まっていまし
た。子供たちは「自然体験学習ツアー」ということで、店を貸切り、持ち
込んだ魚や野菜を炭火で焼いていました。
 原因は換気扇が止まっており、炭火をしたために酸素不足から不完全燃
焼して、一酸化炭素が充満したことでした。
 その原因の背景として、クーラーを効かすために換気扇を止めていたそ
うです。報道によると、多数の炉を同時に使うのは年に数回しかなく、今
の時期に6基も炉を同時に使うことはほとんど無いそうです。
 しかも換気扇の稼働ルールや担当者も決めておらず、運用があいまいだ
ったようです。
 飲食店、厨房、パン作り等火気を扱うところでの一酸化炭素中毒は時々
発生しています。一酸化炭素は人間には有害なのですが、色も臭いもない
ため、一酸化炭素の発生には気が付きにくいものです。換気扇の起動責任
者を決めて確認することも重要ですが、責任者が不在だったり、忘れると
他の人が気が付きにくいものです。換気扇の起動ルールと責任を明確にす
るソフト面の対策も必要ですが、一酸化炭素感知・警報器を設置するハー
ド対策も必要です。
 ホテルの一酸化炭素中毒の事故としては、2009年6月2日に山口県の山口
秋芳プラザホテルで死者が出る災害がありました。通常使用しないボイラ
ーを使用したところ、屋上にある煙突にフタがあり、排出ができなかった
ことがありました。換気扇が回転していることは見れば判りますが、その
排気が正常に外気へ放出していることも確認が必要です。  

                         
ご安全に!

2014年7月26日(熱中症)
 25日、岐阜県多治見市では今年最高となる39.3度を記録しました。梅雨
があけ、全国各地で35度を超える猛暑日が記録されています。
 先日発表されたデータによると、昨年までの5年間で124日が勤務中に熱
中症で死亡しました。その傾向をみると、
 ・暑さになれていない作業初日・2日目が多い(初日21人、2日目15人)
 ・糖尿病など疾患のある人が4割を占める(48人)
 ・単独作業で発見が遅れた災害が4割を占める(45人)
 ・年齢は50代が最多(50代32人、40代30人、30代30人、20代7人
 ・業種別では建設業が最多(建設業48人、製造業21人、警備業10人)
 熱中症予防で必要なものは、水分塩分の補給と睡眠不足と言われますが、
熱中症予防には職場での取り組みが欠かせません。
 ・朝の作業前および休憩後の再開始前の健康チェック
 ・ミーティングの際に水分塩分補給
 ・快適な休憩場所の設置
 ・水分塩分の補給をしやすい環境
 ・作業スケジュール(休憩時間の設定、初日・2日目は暑さになれる作
  業を中心に、重労働は朝に集中するなど)
 ・一人での作業を極力避ける
  (一人で作業の場合は、無線や電話など通信手段を設けてください)
 ・KY(作業前に熱中症リスクの高い作業を確認・改善する)
 ・作業員相互で声を掛け合い、相手の健康状況を確認する。
 監督者(職長)の随時見回り、声掛けも必要です。いつもより多くの汗
をかいていたら体調が悪いかもしれません。作業員の中には、夜行バスで
朝帰宅して、そのまま出社している人がいるかもしれません。前日、お酒
を飲み過ぎで脱水症状の人がいるかもしれません。
 熱中症で誰かが倒れた時の救急措置も重要ですが、倒れる前に察知して
休憩場所に連れていくなど、早期発見がもっとも重要です。
 また、昨日より今日の方が気温が低い場合でも、熱中症の発生確率が下
がるとは言えません。熱中症は温度や湿度だけでなく、その人の健康状態
(睡眠・疲労・保水量など)が影響しますので、日々変化するものです。
その変化を敏感にキャッチすることが重要なのです。
 
                     
    ご安全に!

2014年7月19日(フォークリフト事故の書類送検)
 今年4月13日に大阪のホームセンターでフォークリフト操作中に荷崩れ
して、お客様がケガをする事故がありました。7月15日、事業所を管轄す
る淀川労働基準監督署は店長を労働安全衛生法違反で書類送検しました。
http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H26/syosyo/260716.pdf
 下記は事故の翌日の報道です(参考)  
  13日午後1時20分頃、大阪市東淀川区菅原のホームセンター「コーナ
  ンPRO東淀川菅原店」で、高さ約2.5mに積まれていた合板のうち
  約100枚の束(重さ計約500キロ)が落下し、買い物中の女性(45)に当
  たった。女性は病院に搬送され、顔や両脚の骨を折る重傷を負った。
  府警東淀川署や同店によると、コンクリートの型枠用の合板(縦182
  cm、横91cm、厚さ1.2cm)で、100枚ごとにひもで縛られていた。
  事故当時、同店の男性契約社員がフォークリフトで合板を移動させる
  作業をしていた。その際、3段に積まれたうち、一番上の分が崩れ落
  ちたという。同署に対し、男性契約社員は「フォークリフトの操作を
  誤り、荷崩れした」と説明しており、同署は業務上過失致傷容疑で調
  べている。
 送検理由の一つとして、労働安全衛生規則第151条の3に定める“作業計
画”を定めていなかったとあります。フォークリフトの運転資格を得るた
めの技能講習では必ず作業計画を作成して計画に従って作業を行うことを
学びます。送検された店長がフォークリフトの作業計画の作成義務がある
ことを知っていたのか知らなかったのか判りませんが、少なくともフォー
クリフト運転者は知っていたはずなのです。学んだことを職場で実行しな
ければ何のために講習を受けたのでしょうか。
 作業計画の無い事業所はここだけではありません。私が指導している所
でも作業計画の無い事業所もありました。技能講習で学んだことは事業所
に戻った時に生かさなければなりません。作業計画を作成すると、歩行者
との接触リスクが見つかるなど災害防止には必要なものです。
 なお、作業計画作成にあたり、事故が発生した時のような営業時間内で
あれば、お客様が接近する可能性があるので、営業時間の作業計画、営業
時間外の作業計画というように作る必要があるでしょう。(あるいは、営
業時間外はフォークリフト使用禁止など)
 私があるところで酸素欠乏作業主任者の講習をしていた時ですが、会社
に酸素濃度計が無いという人がいました。酸欠危険場所では作業主任者が
酸素濃度等を測定しなければなりません。酸素濃度計が無い場合は作業主
任者の責務が果たせません。その人には、「安易に作業主任者を引き受け
るな」と指導しました。作業主任者に任命され、酸素濃度を測ることがで
きず、酸欠事故が発生したら、事故の責任を問われます。
 事業主が労働安全衛生法等を全て熟知するのはとても困難です。外部で
技能講習を受けさせた場合は、受けた者に事業所で法違反は無いかを検証
させてください。ある会社では外部の講習を受けさせた場合は、報告書を
提出させ、現状の問題点はないか、コミュニケーションを図っているとこ
ろもあります。資格者養成は単に資格を取るだけでなく、事業所の課題を
見つける機会でもあります。

                        
 ご安全に!

2014年7月12日(全国産業安全衛生大会in広島)
 毎年、中央労働災害防止協会が開催している全国産業安全衛生大会は、
今年度、広島で開催されます。
 http://www.jisha.or.jp/taikai/index.html
 1日目が総合集会で、特別講演には元マラソンランナーでバルセロナで
銀メダル、アトランタで銅メダルを獲得した有森裕子さんが『よろこびを
力に… ~諦めない心の育て方~』として講演されます。
 2日目と3日目は分科会があります。当社も分科会で発表させていただき
ます。安全管理活動分科会(第2会場)で、3日目の10月24日13時から13時
20分までです。
 http://www.jisha.or.jp/taikai/2014/bunkakai/anzen_kanri02.html
 発表タイトルは「ツイッター型安全活動」です。きっかけは、ある事業
所から「安全管理活動が停滞している。何かアドバイスして欲しい」とい
うものでした。活動としてはヒヤリハット活動・リスクアセスメント活動
をしているものの、実態は、ほとんど提出されていませんでした。
 安全活動が停滞する理由にはいろいろあります。たとえば、フォーマッ
トに書きにくいとか、活動の目的が用紙を書くことになってしまい、効果
がない。忙しい。問題点を書くと怒られるというのもあるでしょう。
 そこで、名前も書かず、偽名で、職場の問題点(リスク)をつぶやく、
同僚それに対して、つぶやく。さらに他の同僚がつぶやくことによって、
問題点(リスク)の原因・背景が見えてきて、解決策も見えてくるように
なります。それをリスクアセスメントして、優先順位にしたがって、リス
ク低減活動をしていけば、効果的な活動だと考えています。
 安全活動のポイントは、参加しやすいこと、参加したことによって、改
善に結び付く、改善が見えることが大切だと考えています。
 改善提案を考えろと紙をもらっても、多くの方は書くことが非常に困難
でしょう。しかし、職場で「?」と思ったことをつぶやくぐらいなら簡単
にできるはずです。
 興味があれば、是非、聞きに来てください。と言いたいところですが、
広島まで遠いという方もおられるでしょう。当日はビデオ撮影して、弊社
のホームページ等で視聴できるようにしようと考えています。
 なお、毎回のことですが、会場周辺のホテルは確保が困難になりますの
で、お早めにホテル等の確保をしてください。

                          ご安全に!

2014年7月5日(硫化水素中毒)
 6月29日、北海道登別市内の登別病院で、院内で使うための温泉タンク
の中で男性職員2人が倒れているのが見つかり、救助されましたが死亡し
ました。
 経過を説明すると、前日の28日に浴室を利用した患者から「お湯が出な
い」と連絡があり、その夜、48歳と35歳の病院職員が点検に行きました。
その後2人が行方不明になり、翌日の13時ぐらいに、タンクの中で倒れて
いる2人を見つけましたが手遅れだったようです。
 温泉タンクは幅2m、奥行1m、それに高さが1.5mの直方体で、約60度の硫
黄泉がタンクの半分ぐらいまで入っていました。
 タンクの中は硫黄泉からの硫化水素が発生していました。
 点検のためにタンクの中に入ることは考えにくいので、点検口から落ち
たと考えます。おそらく、2人のうち、どちらかが、点検口を開けて、中
の状況を確認しようとして覗き込んだのでしょう。タンクの上部には硫化
水素が溜まっています。点検口を開けた時に、熱による上昇気流で高濃度
の硫化水素が噴出したのでしょう。高濃度の硫化水素は1回吸込んだだけ
で失神するほどの有害性があります。覗き込んだ状態で失神すると、体を
支えることができないので、点検口から落ちてしまいます。残った一人が
助けを求めるために事務所に戻るべきだったのですが、助けようと中に入
ろうとしたのでしょう。結局2人の作業員がタンクに落ちてしまい、誰も
そのことに気が付かなかったために救助が遅れました。
 タンクに落ちた人を一刻も早く助けようとするのは判りますが、タンク
の中に倒れた人を、一人で助け出すのは、不可能と言っていいでしょう。
 酸欠状態または硫化水素発生の場所で倒れ、その人を救助しようとした
人が命を失う事故は昔から繰り返されています。酸欠または硫化水素危険
場所では作業主任者を定め、酸素濃度・硫化水素濃度を測定し、従事者に
も特別教育が必要などの酸素欠乏症等防止規則があるのですが、知らなか
ったのかもしれません。
 硫黄泉をタンクに溜めこめば、硫化水素が発生することは認識できるは
ずです。しかし、残念ながら事故が発生しました。
 この事故を聞き、真っ先に脳裏に浮かんだ事故は2007年東京都渋谷区の
尾温泉施設「松濤温泉シエスパ」の爆発事故でした。温泉水には様々な成
分が含まれています。密閉状態に近い温泉タンクの使用は避けるべきだと
考えます。

                          
ご安全に!

2014年6月28日(安衛法改正 その1)
 6月25日、労働安全衛生法の一部改正が発表されました
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000049191.html
 今回はその中で化学物質管理について述べさせていただきます。
 法改正が必要となった要因は2012年に明らかになった印刷業における胆
管がんです。問題となった物質がジクロロメタンと1,2-ジクロロプロパン
でした。ジクロロメタンは有機溶剤の規制がありましたが、1,2-ジクロロ
プロパンは特別則(有機則・特化則等)による規制がありませんでした。
労働者の健康障害防止のためには、強化する物質の範囲を広げなければな
りません。胆管がん問題のような甚大な被害を防ぐためには、先手の対策
が必要になります。その手法としてリスクアセスメントが義務化になりま
した。リスクアセスメントの評価方法は、今後、厚生労働省が指針を公表
するとなっていますが、ベースとなるものは「コントロール・バンディン
グ」です。
 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000025152.pdf
 コントロール・バンディングはGHS分類区分に応じて、有害性ランク
を定め、揮発性(発散性)ランク(沸点等)、取扱量ランク(t・kg・mg
等)からリスクレベルを定めるものです。これで評価すると、どの物質の
どの工程のリスクが高いかが明確になります。
 しかし、コントロール・バンディングにも盲点があります。それは化学
反応による有害性が含まれていない点です。たとえば、家庭でも広く使用
されている塩素系漂白剤などは、この評価方法ではリスクレベルが低くな
ります。しかし、酸性タイプの洗浄剤を混ぜると塩素ガスが発生します。
また、化学工場で発生した爆発事故では、水に触れたり、金属に触れたり
して、水素が発生し、爆発するなどの問題がありますので、化学物質のリ
スクアセスメントとして、コントロール・バンディングをしても十分とは
言えないのです。
 厚生労働省から化学物質のリスクアセスメント手法として指針が公表さ
れる予定なので注目していきたいと考えます。
 なお、リスクアセスメントが義務になる施行日は発表されていません。
また、業種、規模等の適用についても未定です。

                       
   ご安全に!

2014年6月21日(狭い場所での有機溶剤中毒)
 (産経ニュース記事引用)
  14日午後1時35分ごろ、さいたま市大宮区吉敷町の「明治安田生命大
 宮吉敷町ビル」で、エレベーター内で塗装作業をしていた男性2人が倒
 れているのを同僚の男性が発見し、ビルの清掃員が119番通報した。2人
 はいずれも埼玉県戸田市の塗装会社経営者Aさんと同社の塗装工Bさん
 で、救急隊員が駆け付けたときは死亡していた。
  大宮署によると、Aさんら2人は午前8時半ごろから、8階に停止した
 エレベーター内で内壁の塗り替え作業をしており、液状の剥離剤を使っ
 て古い塗料を剥がしていたという。2人に目立った外傷はなかった。同
 署は剥離剤などから有毒物質が発生し、吸い込んだ可能性もあるとみて、
 詳しい死因を調べる。
  午後から作業を手伝う予定だった同僚の男性がエレベーターの扉が閉
 まり、呼びかけにも返答がなかったため、扉をこじ開けたところ2人が
 倒れていた。(以上:産経ニュースより)
 剥離剤が何かは判りませんが、ジクロロメタンなどの有機溶剤が主成分
のものでしょう。なぜ、エレベーター扉を開け、換気ダクトを使って、換
気しなかったのでしょうか。亡くなった人は塗装会社の社長と塗装工とい
う事で、有機溶剤の危険性は理解しているはずなのですが・・・・。
 防毒マスクの使用の有無は報道されていませんが、エレベーターのよう
な閉鎖空間では、空気中の有機溶剤濃度は急上昇します。気温・湿度も高
く、防毒マスクの吸収缶は数時間も使用できないでしょう。
 エレベーターには通気口がありますが、天井の通気口では、空気より重
たい有機溶剤蒸気はほとんど排出されないでしょう。
 過去に、作業中の臭気でクレームがあり、エレベーターの扉を開けるこ
とができなかったのでしょうか。臭気対策なら密閉より、ダクトで屋外へ
排出する換気の方が効果はあるはずです。
 このビルは1989年竣工ということで塗り替えなどが発生したのでしょう
が、密閉空間での作業や臭気対策などの点で、塗り替えよりクロス張替の
方が良かったのではないかと考えます。
 これからさらに気温は上昇します。気温が上昇すると、有機溶剤の蒸発
は早く進みます。防毒マスクの吸収缶は気温・湿度が高いと通常より短時
間で破過(はか:有害物吸着能力の限界)になります。ご注意ください。 

 
                         
 ご安全に!

2014年6月14日(マルチコプター)
 先日、ソフトバンクがヒト型ロボット「pepper」を発表しました。
感情認識ロボットということで、言葉の内容、抑揚、表情から感情までも
認識して反応するそうです。はるか以前に、ソニーが犬型ロボットAIB
Oを発売したのは1999年、あれから15年。犬からヒトへ成長したようです。
pepperは単にロボットではなく、感情を把握し、適切に対応できる
ロボットです。お客様相談窓口や、クレーム対応、通販窓口になるでしょ
う。一人暮らしの老人の話し相手になり、ボケ防止に脳への刺激を与える
かもしれません。今後がとても楽しみです。
それより私が注目しているロボットはマルチコプター型ロボットです。
 セコムの小型飛行型監視ロボット
  http://www.youtube.com/watch?v=5VlMAfKW0pw
 アマゾンのマルチコプター型配達ロボット
  https://www.iphone-girl.jp/2013/12/317810/
 などがあります。
 全て人間が操作するのではなく、マルチコプターロボットがGPSによ
り自身の位置を補正しながら、飛行姿勢を調整しながら飛ぶので、プログ
ラムしておけば、目的地に行きます。
 このマルチコプター型ロボットは人間の行けないところに行けます。搭
載したカメラでリアルタイムに画像を送るので、作業者は事務所に居なが
ら、必要なところを点検できます。例えば橋梁の高い場所の点検を地上か
らできます。高い煙突の外壁点検もできます。高速道路のトンネル内など、
人が歩くと危険な場所にも行けます。福島原発の内部調査にも利用されま
した。
 現場監督者がロボットが撮影する画像を見ながら、作業員に無線で指示
することもできます。高所作業の場合、下から見るのではなく、上空から
見ることができます。
 高所作業や酸欠の場所、有害環境の場所でも安全に点検できます。リス
ク低減策として期待しています。
                          ご安全に!

2014年6月7日(鉛入り塗料)
 今週は「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労
働者の健康障害防止について」の通達に注目します。      
 http://www.jashcon.or.jp/oshirase/kianrouhatsu0530-2.pdf
 塗料には防錆性能を求めるために鉛入りやクロム入りの塗料が多く使わ
れていました。現在は少なくなっているようです。私が以前、指導した会
社でもクロム酸鉛の入った塗料を扱っており、特化物に該当するため、作
業環境測定・健康診断・作業主任者が必要になり、コストもかかり、リス
クも増えます。そこで、鉛フリーの塗料に切り替えをお願いしました。若
干、鉛フリーの塗料の方が高いのですが、作業環境測定等のコスト削減も
あり、特化物に該当する塗料を無くしていただいたこともありました。
 今回の通達ですが、塗料剥離では防じんマスクなどの対策はしているで
しょうが、その剥離している塗料には何が含まれているかなどは余り気に
せずに作業することが多いのだと想像します。
 今後は、発注者が塗料の塗り替え時に以前の塗料の成分を通知する必要
があります。請負側は塗料の成分が判らない場合には問い合わせる必要が
あります。
 そして、鉛・クロムなどが入っている場合の対応が重要です。石綿と同
じように隔離して、粉じん飛散抑制剤を散布して、電動ファン付き呼吸用
保護具を着用して、化学防護服で身体への付着を防止し、外部に粉じんを
持ち出さないようにする必要があります。また、溶剤で溶かしながら、ス
クレーバーで剥がし取る場合もあるでしょう。溶剤の蒸気と粉じんが飛散
する場合には、電動ファン付き呼吸用保護具では粉じんとガス状成分の両
方を防護するものはないので、エアラインマスクなどの送気マスクを使用
しなければなりません。
 防護能力を重視すると、コストが上がります。防護をしなければ、作業
員の曝露が増え、健康障害のリスクが上がります。
 業務を受注するためにはコスト競争力が必要となります。今回の通達を
無視すれば、従来通りですが、通達に従うとコストは膨らみます。
 発注者側は、コストも重要ですが、周辺地域への汚染の広がりを防ぐた
めにも、通達に従った発注先選定をお願いします。
 もちろん、社内で、錆び落とし、塗装剥がしを行う時も同様です。成分
を調べ、適切に(呼吸用保護具・健康診断・作業主任者選任等)作業をし
てください。

                          
ご安全に!

2014年5月31日(タンカー爆発)
 5月29日に姫路港沖で停泊中のタンカーが爆発・炎上しました。
 タンカーは広島で原油2000キロリットルを積み、兵庫県相生市の関西電
力相生発電所で降ろして、姫路港沖に停泊し、タンク付近の甲板でグライ
ンダーを使用してサビを落とす作業をしていたということなので、その火
花等により爆発したと考えられます。
 原油を降ろしたあとですから、タンク内は空だったはずです。空であっ
ても爆発の危険があるところが、引火性液体の危険な点です。ガソリンで
も、石油でも、重油でも、わずか1%程度のガスが充満すると火花等で爆
発するのです。逆にガス濃度が高すぎると爆発しません。爆発下限値と爆
発上限値があり、ガソリンの下限値は1.4%、上限値は7.6%。重油もほぼ
同じです。爆発という点では、容器に一杯入っている引火性液体より、空
になって、容器の内側にわずかに残っているという状況の方が危険なので
す。一般的に、容器に一杯入っているガソリンタンクと空のガソリンタン
クでは空のタンクの方が安全と考える傾向にあるので、空になったタンク
を安易に放置することがあります。
 船舶安全法では、ガス濃度を確認することが義務付けられ、爆発下限値
を超えた場合は、ファンによって換気しなければなりません。
 今回の事故は、濃度を測らなかったのか、測定した時は、爆発範囲でな
かったのか、タンクから少し離れているから測定は不要と判断したか、全
く問題と感じなかったのかは定かではありません。
 引火性液体を取り扱う場合は、容器が空の場合は、油断することもある
でしょう。しかし、空の方が危険性が高い場合もありますので、社内での
教育をお願いします。

                         
 ご安全に!
 
2014年5月24日(消火器)
 初田製作所の消火器に注目しています。
 まず、住宅用消火器です。
 http://hatsuta.co.jp/fire_extinguisher/kitty.php
 人気キャラクターのキティをボディにペイントしているので、インテリ
アにもなるし、新築祝い、引っ越し祝いなどのプレゼントにいいでしょう。
住宅用消火器は設置義務がないので、消火器を備えていない方も多いと思
います。お中元で消火器なんてどうでしょう。消火器がプレゼントってい
いですね。一般家庭にも消火器が増えるといいですね。ただし、業務用消
火器にはボディの25%以上が赤色という制限があるので、キティちゃん消
火器は会社には置けません。
 もう一つ注目しているのは、“カルミエ(CALMIE)”という消火器です。
特徴は本体が超高性能樹脂「PEN」なので軽いのです。
 http://hatsuta.co.jp/fire_extinguisher/calmie.php
 火災発生時には軽い方が楽です。従来の金属製消火器では焼付塗装をし
ていましたが、塗装がなくなり、リサイクル率も向上するので、エコなの
です。
 私が注目するのは生産する側の職場環境です。従来の消火器は金属を加
工するので、プレス機等の大型機械を使用しますので、挟まれるなどの危
険があります。また、溶接によって、ヒューム(粉じん)が発生しますし、
騒音もかなり高いでしょう。粉体塗装をしているので、粉じんもあります。
労働者に有害な作業が、超高性能樹脂「PEN」を使うことにより、金属加
工・塗装作業から解放されるのです。全ての消火器が樹脂製になるのでは
ありませんので、すぐに快適な職場環境になるわけではありませんが、職
場環境が良くなることは確かでしょう。
 なお、初田製作所では工場見学も受け入れています。
 http://hatsuta.co.jp/company/factory_tour/

                          ご安全に!

2014年5月17日(転倒災害)
 平成25年の労働災害発生状況の報告がありました。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000046019.html
 死亡災害は残念ながら1000人を切ることはできませんでしたが、前年を
僅かながら改善できました。死傷災害を見ると「転倒」が目立ちます。
 死傷災害は全体で118,157人。そのうち、転倒災害が25,878人(21.9%)
 転倒災害は全ての業種で増加していますが、中でも飲食業の増加が気に
なります。私が経験したのは回転寿司のチェーン店です。メニューの中に
はマヨネーズを使ったものが増え、床に落ちたマヨネーズを歩行によって
広げてしまい、作業場所の広範囲が滑り易い状況です。また、寿司店のメ
ニューにフライ物が増えているので、フライヤーから飛び散る油が床面に
広がります。そのため回転寿司などでは転倒のリスクは増加しています。
 飲食店では衛生管理のため、床に落ちた物でも安易に掃除出来ません。
 前回紹介したNHKの番組「凄わざ」では油でも滑らない靴が取り上げら
れました。しかし、油でも滑らない靴は万能の靴ではありません。油の無
い場所では摩擦力が高すぎて歩きにくくなるでしょう。
 厨房の多くには排水溝があり、グレーチングがはめられています。グレ
ーチングの上は滑りやすく、グレーチング以外は滑り難い表面処理をして
いるため、摩擦力に差があり、滑り易いところと、滑りにくいところがあ
ることが、さらに転倒のリスクを高めています。多くの厨房では排水溝が
通路の真ん中あたりにありますので、さらにリスクが高くなります。
 対策としては、厨房室のドライ化、油吸着マットの利用、滑りにくいグ
レーチングの採用、耐滑シューズの採用、フライヤーの設置場所の変更、
皿洗い場の位置を検討したり、吸水マットを利用するなどがあります。
 厨房での転倒では、単に転倒だけで済まないこともあります。例えば、
転倒の際にコンロに手が当たったり、沸騰している鍋を倒したり、フライ
ヤーの中に手を入れたりすることもあります。

                         
 ご安全に!

2014年5月10日(旅客船セウォル号)
 韓国の旅客船セウォル号が4月16日に沈没して、もう1カ月近く経ちまし
た。いまだに行方不明者がたくさんいます。
 今週明らかになった事実で、セウォル号の最大積載量は987トンでした
が、事故があった時は3,788トンもの貨物等を積載していました。実に4倍
近い数字になります。そのままでは沈みすぎるので、バラスト水という重
心を安定させる水を2,023トンから約4分の1の580トンにしました。バラス
ト水は船の傾きをコントロールする復原力になりますので、バラスト水が
不足すると復原力を失い、転覆しやすくなります。
 セウォル号の過積載は就航を始めた昨年3月から繰り返し行われてきま
した。海運会社は大儲けです。
 最大積載量は、それを1トンでも超えると、直ちに転覆するようなもの
ではありません。復原力に影響を及ぼすので、波も風もなく、直進してい
たら、転覆せずに、目的地に着くでしょう。今回の事故では約3,800トン
を積んでおり、この日の就航が無事であれば、さらに3,900、4,000トン超
の貨物等を積むでしょう。いつか必ず事故する状態でした。船長や船員は
そのことを十分知っていたから、真っ先に逃げたのでしょう。沈没の責任
は海運会社にあって、いつか沈没することは判っていたのでしょう。
 同じように、「この程度は大丈夫だろう」という行動は多々あります。
たとえば、“あるきスマホ”もそうでしょう。歩行中は危険だと言われて
いても、そのまま目的地まで歩けることもあります。いつか、電車のホー
ムに落ちたり、人にぶつかったり、車にぶつかることでしょう。慣れてく
れば慣れるほど、危険と思わなくなります。
 産業の現場では、機械のトラブルがあった時に、機械を止めずに手を入
れて被災する事故が多発しています。「このくらい大丈夫、このくらい大
丈夫」とエスカレートすると、いつか事故になるでしょう。
 作業手順を守る・基準を守るという当たり前のことをいかに納得させ、
実行させるかが重要です。

                         
 ご安全に!

2014年5月3日(首都高火災事故)
 3月20日に発生した首都高の火災事故は記憶にあると思います。
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140321/dst14032100090000-n1.htm
 原因は塗装除去作業中に照明器具の白熱電球にシンナーが付着したこと
により発火し、足場シートに着火して燃え広がったということです。
 国土交通省から通達が発せられました。
 http://www.kensaibou.or.jp/data/pdf/20140425_01.pdf
 これによると、施工計画書にはシンナーで塗装除去は書かれておらず、
「布拭き」と書かれていました。布拭きだけで塗装除去ができるはずもあ
りません。この時点で布に何を付けるか、疑問を持ち、確認すべきだった
ようです。
 再発防止策として、施工計画書の手順を守り、危険物(引火性等)を使
用する際の施工計画を提出すること、防爆型照明器具を使うこと、ならび
に防炎・難燃シートをを使用するなどがありますが、ちょっと疑問に感じ
ます。
 ウエスにシンナーを染み込ませる程度では容易に塗料を剥がすことはで
きません。大量のシンナーを使うことでしょう。足場シートで作業場を囲
ってしまうと、密閉ほどではありませんが、閉鎖的空間になります。発生
する有機溶剤蒸気が充満します。作業環境としては悪い方です。
 塗料剥離の簡単な方法はないでしょうか。
 電動紙やすりやリューター等でも時間がかかります。
 ドライアイス剥離機(洗浄機)がよいと思います。ドライアイス洗浄機
は小さな粒状のドライアイスを高速で対象物に当て、表面を破壊していく
ものです。ドライアイス洗浄機はサンドブラストのように表面を破壊して
いきますが、すぐに気化するので、粉じんは抑制できます。ただし、欠点
として騒音が高いため、屋外作業しかできないでしょう。(剥がれた塗料
で粉じんが発生しますので、粉じん対策が必要です)
 塗装剥がしに適しているか判りませんが、木工用ボンドを塗る方法が有
効かもしれません。汚れた部分に木工用ボンドを塗り、固まって透明にな
ったら剥がします。汚れ取りに使われることもあります。
 橋梁のような大きな面積の塗料剥がしに適したものがあれば教えてくだ
さい。
 さて、もうひとつ気になるのが消火器です。国土交通省の通達には記載
がありませんが、初期消火活動は行われなかったようです。消火器が現場
になかったのではないでしょうか?消火器がなければ、逃げることしかで
できません。
 このように作業に関しては、どの方法が生産性が高いか、どの方法が作
業環境がよいか検討し、最適な方法と、万一に備えて、必要な防災器具を
揃えておくことが必要だと考えます。
                         ご安全に!

2014年4月26日(体感教育)
 大阪労働局主催で「危険体感教育」が開催されます。
 7/5、7/14、9/12、9/16、10/4、10/7、10/17、11/7、11/13、12/3の10
回が予定されています。大手の企業の協力をいただいて無料で実施されま
す。定員は各10人で、合計100人しか受けられませんが、この機会に受講
してはいかがでしょうか?(詳細は下記)
 http://osaka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/osaka-roudoukyoku/H26/anzen/260425-1.pdf
 体感教育の重要性は、たとえば、玉掛けした荷をクレーンで吊り上げる
時に、「荷・ワイヤーに触れるな」と指導するでしょう。それはなぜ触れ
てはいけないかを指導しているでしょうか?「挟まれたら危険だから」と
指導しても、多くの人が挟まれた経験が無いので、挟まれたらどうなるか
解りません。実際に手・指を挟む実体験は行いませんが、模擬的に挟まれ
ることを体験するのは効果があると考えます。「百聞は一見に如かず」と
言われるように、毎日繰り返して指導するより、1度体験する方が理解が
効果があるでしょう。
 私の会社に安全講演の依頼をいただくことがありますが、最近は疑似体
験を入れることがあります。たとえば、スマホの画面に注視しているとき
に、周囲の状況はどのくらい理解できるのか?実際にやってみると、見え
ているようで見えていないことを体験していただいています。
 なお、危険体感教育を社内で実施したいが、設備が無いとお困りの場合
は、設備のレンタルという方法もあります。
 アジアクリエイト㈱
 http://www.asia-create.jp/
 ㈱真岡製作所
 http://www.mohkamfg.com/
 また、社内にあるもので体感教育を行いたい場合は、当方にお問い合わ
せください。実施方法や教育についてお手伝いさせていただきます。

                     
    ご安全に!

2014年4月19日(原因究明)
 4月13日に大阪のホームセンターでお客様がケガをする事故がありまし
た。ニュース記事を添付しますので、ご覧下さい。
  13日午後1時20分頃、大阪市東淀川区菅原のホームセンター「コーナ
  ンPRO東淀川菅原店」で、高さ約2.5mに積まれていた合板のうち
  約100枚の束(重さ計約500キロ)が落下し、買い物中の女性(45)に当
  たった。女性は病院に搬送され、顔や両脚の骨を折る重傷を負った。
  府警東淀川署や同店によると、コンクリートの型枠用の合板(縦182
  cm、横91cm、厚さ1.2cm)で、100枚ごとにひもで縛られていた。
  事故当時、同店の男性契約社員がフォークリフトで合板を移動させる
  作業をしていた。その際、3段に積まれたうち、一番上の分が崩れ落
  ちたという。同署に対し、男性契約社員は「フォークリフトの操作を
  誤り、荷崩れした」と説明しており、同署は業務上過失致傷容疑で調
  べている。

 事故の原因はフォークリフトの操作を誤ったということです。この男性
社員がフォークリフトの資格を有しているかは不明ですが、この事故の再
発防止としてどのような対策を行うでしょうか。「フォークリフトの運転
時には周囲をよく確認して、慎重に操作しなさい」と指導するのではない
でしょうか?
 この事故の原因は操作ミスですが、他に重大な原因があると考えます。
 ◎お客様が居る時間帯にフォークリフトの運転をしたこと
 ◎お客様が危険な区域に入ってきたこと
 お客様に指揮命令することはできませんから、お客様の居る営業時間内
にフォークリフトを操作したことが問題です。また、やむを得ず、営業時
間に作業が必要な場合は、周囲への立ち入りを禁止する柵を設置し、監視
者を配備しなければなりません。立ち入り禁止の柵をするだけでは、状況
を理解できない子供が柵をくぐったり、乗り越えて侵入する可能性があり
ますので、監視者が必要です。
 直接的な原因だけを捉えて対策しても再発を防げないかもしれません。
間接的な要因、背景的な要因などあらゆる角度から事故に関係するものを
見つけ、それぞれの対策を考えなければなりません。
 再発防止策の検討時に原因究明が不十分であれば、再発の可能性は高く
なります。

                        
 ご安全に!

2014年4月12日(安全推進者)
 「安全推進者」という言葉は労働安全衛生法には存在しません。推進者
として労働安全衛生法で定めているのは「安全衛生推進者」「衛生推進者」
です。それが3月28日の通達「労働安全衛生法施行令第2条第3号に掲げる
業種における安全推進者の配置等に係るガイドラインの策定について」と
して登場しました。この安全推進者が必要な業種・規模は、10人以上50人
未満の労働者を使用する、その他の業種となります。
http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-55/hor1-55-13-1-0.htm
 (注:その他の業種とは)
   林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業、製造業(物の加工業含む)
   電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、
   家具・建具・什器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・什器小
   売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修
   理業
 この通達で効果を期待しているのは、第三次産業、特に、小売業、社会
福祉施設、飲食店です。以前は労働災害も少ないことから「その他の事業」
として扱われていましたが、労働災害(休業4日以上)の三分の一が、そ
の他の事業から発生しているため、労働災害の発生防止などの安全管理が
重要になっています。今回のものは労働安全衛生法ではなく、ガイドライ
ンなので選任していなくても法違反にはなりませんが、企業の責任として
労働災害の防止は義務であります。その義務を遂行するために安全管理を
担当する人の選任が必要です。
 飲食店では包丁やガスコンロを使うので、切り傷や火傷は日常茶飯事で
問題視していないところもあるかもしれません。しかし、肉を回転する刃
で切断するスライサーでは簡単に指を切断してしいます。また高温の油が
入っているフライヤーに腕を突っ込み、知覚障害が残るケースもあります。
さらに転倒事故で腰の骨を折って何カ月も入院することも発生しています。
 今回の通達はガイドラインなので法的強制力はありませんが、昨今の労
働災害の現状をみると、法規制として、選任の義務化していく必要がある
と考えます。どんな事業であってもリスクの無い事業はありません。上記
のガイドラインでは10人以上の事業所となっていますが、全ての事業所で
安全推進者、安全衛生推進者を選任し、必要な教育を受けさせ、災害防止
に努めていただきたいと考えます。

                         ご安全に!

2014年4月5日(人間ドック新基準値)
 新しい年度を迎え、定期健康診断の計画を進めている会社も多いと思い
ます。あまり知られていないようですが、血液検査で基準内・基準外の判
定を行う基準値は統一されていないのです。健康診断を行う施設ごとに違
うかもしれません。このたび、日本人間ドック学会などが作る専門家委員
会で、「健康」と判断される基準値の範囲を広げ、新たな基準値を発表し
ました。

 項目    男性     女性     (従来値)
 中性脂肪  39~198   32~134     30~149
                     (男女共通) 

 悪玉           31~45歳
 コレステ  72~178   61~152     60~119
 ロール          46~65歳    (男女共通)
              73~183

 総            31~45歳
 コレステ  150~254   145~238    140~199
 ロール          46~65歳    (男女共通)
              163~273
(単位はいずれもmg/dL)

 新しい基準では男女別になりました。さらに女性は年齢の区分が入りま
した。これにより、今までは基準外だったものが基準内になるかもしれま
せん。「これで今年から基準内になる。良かった」と思う方もおられるで
しょう。ただし、この新基準には強制力はありません。健康診断の基準値
は従来通り、各健康診断機関で決定することになります。
 気を付けていただきたいのは、仮に昨年の悪玉コレステロール(LDL)
値が70で基準内とし、今年が170だとすると、新基準では基準内になりま
す(男性の場合)が、1年で100mg/dLも増加したことになり、異常と判断
するべきでしょう。
 基準が緩和されたように見えますが、大事なのは過去との比較です。基
準内であっても大きな増減があることは異常があると考える必要がありま
す。

                        
 ご安全に!

2014年3月29日(地震時の転落事故)
 東日本大震災の際に、転落して死亡したのは、安全配慮義務違反として
元請けに損害賠償を求める訴訟がありました。
 東京電力常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)の煙突工事中に東日本大
震災に遭い、転落死した作業員3人の遺族が3月10日、安全への配慮を怠っ
たとして、元請けの三菱重工鉄構エンジニアリング(広島市)と東電を相
手に、計約3億4700万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁に起こしまし
た。提訴したのは、事故で亡くなった作業員4人のうち、下請け会社社員
ら3人の遺族です。訴状によると、男性らは2011年3月11日の地震発生時、
煙突建設工事のため地上220メートルで作業していたが、足場を固定して
いた金具が外れて18~36メートル下に落下、死亡しました。遺族側は、元
請けは足場の金具の点検を目視でしか行っておらず、落下防止のネットを
設置するなどの安全配慮義務を怠ったなどと主張しています。

 民事の損害賠償に労働契約法による労働者の安全への配慮義務がありま
す。そしてその判断には「予見可能であったか?」「結果の回避が可能で
あったか?」がポイントになります。
 地震が発生するのは想定しなければならないでしょうが、これほどの大
地震が起きることまでは予見できなかったかもしれません。また、足場の
金具が外れたということですが、施工ミスだったのか、揺れに耐えきれず
破断したのか判りません。

 今では多くの方が携帯電話などによって緊急地震速報を受信できる環境
があります。緊急地震速報をキャッチしたら、速やかに自分の生命を守る
行動をしなければなりません。足場の上で作業している時に緊急地震速報
がなったら、安全帯のフックを掛けるなど転落防止の措置をしなければな
りません。緊急地震速報が鳴ると、急いで足場から降りなければならない
と考える人が多いでしょうが、携帯電話の緊急地震速報は何秒後に大きな
揺れがくるのか判りません。昇降のタラップを降りている時に大きな揺れ
があると、被害を拡大してしまいます。携帯電話の緊急地震速報では、足
場から降りていいのか、その場所に留まるべきなのかの判断が困難です。
 そこでお勧めするのは、センチュリーの「地震の見張り番@home」
 http://www.century.co.jp/products/zak/bousai/jmb-ah.html
 大きな揺れ(S波)の到着時間をカウントダウンで表示しますので、ど
の程度の避難行動が可能か判断できます。
 これは家庭用ですが、現場でも利用できます。
 (5年間の情報配信料込で税抜き3万円なので、安価だと考えます)


                       
  ご安全に!

2014年3月22日(首都高速火災)
 3月20日午後、首都高速の3号線で火災が発生し、通行止めが続いていま
す。原因は塗装の塗り替え作業で古い塗装を剥がしている時に、電球の上
にシンナーを含んだウエスが落ち、加熱され、出火したということです。
その上、養生のビニールシートや塗料など燃えやすいものがたくさんあっ
たということです。なぜ、こんなに大きな火災になったのでしょう。
 推測すると、「消火器が無かった」ことがあると考えます。
 普通、足場の上に消火器を置くでしょうか? 多くの場合、足場の上に
消火器を持ち込むことはないでしょう。消火器が無ければ、小さな火災で
も消火は困難です。消火できない上に引火性の塗料があれば、このような
大きな火災になるでしょう。
 裸火を使わない場合でも引火性液体を足場上で使用する場合には万一に
備えて、消火器は必要だと考えます。ただし、消火器が足場の柵の隙間か
ら落ちると、大きな事故になりますので、消火器の落下防止には十分対策
する必要があります。
 今回の火災では作業者が全員避難できたので良かったのですが、出火の
場所が昇降設備のある場所と同じであれば、逃げることができず、最悪の
結果になったかもしれません。
 あらゆるリスクを想定する危険感受性が必要なのだと感じました。


2014年3月22日(温水危機一髪)
 
3月17日にNHKで「きっと役立つ?危機回避術 温水危機一髪」という番
組がありました。これはとても面白かったです。俳優の温水洋一が、「世
界一運がない男」の設定で、日常の危機から回避する方法をドラマを見て
クイズに答えるというものです。
 中でも興味深かったのは、温水洋一がタクシーに乗っている時、運転手
が急な体調不調により、意識を失った状況です。最適な方法を当てるもの
ですが、選択肢は「サイドブレーキを引く」「ギヤをローに入れる」「ギ
アをパーキングに入れる」の三択です。
 私はサイドブレーキと考えましたが、答えは「ギヤをローに入れる」で
した。理由はサイドブレーキを使用すると、車は止まるが、止まる時に左
右に振れる可能性があるということです。対向車と正面衝突になる可能性
があるので、ギヤをローに入れて、エンジンブレーキで速度を落として、
最後はサイドブレーキで停止するということでした(運転手はアクセルペ
ダルから足が離れていました)。
 3月3日の北陸道での夜行バス事故を思い出しました。バスのオートマ車
は見たことがありません。MTならギヤをローに入れるのは困難です。あ
の事故はおそらくアクセルペダルを踏みっぱなしの状態です。アクセルペ
ダルから足を外すことを考えなければなりません。アクセルペダルは乗客
から見ると一番奥にありますので、足をどけるのは困難です。そんな時は、
運転手の腰のベルトを思いっきり引っ張ることが最善だと考えます。腰の
位置が変われば、アクセルペダルから足は離れるでしょう。アクセルOFF
ならスピードは落ちて、ハンドルコントロールで障害物を避けられるかも
しれません。(ただ運転手を引っ張るのではなく、お腹のあたりのベルト
を持って、回転するように引っ張るのが効果的)
 ちなみに番組の中の他の問題は、「下痢の時にトイレを我慢する方法」
「毒蛇に指をかまれた時の対処方法」「ピストルを持った強盗に出合った
時の対処方法」です。トイレを我慢するにはつま先立ちをすることです。
つま先立ちをすると、肛門付近の筋肉が締ります。毒蛇の毒を出すには吸
い出すのが効果的です。強盗が金を出せと言った時には、金をすぐに出さ
ず、金のある場所を教えるのが良いそうです。「金を出せ」と言われた時、
ポケットから金を出そうとすると、強盗から見ると、「武器を出す」と思
われ、逆上するかもしれないので、「金は内ポケットにある」と強盗に従
う意思があることを示すのが生き延びる可能性が高いということでした。
(なお、毒蛇の毒を吸い出すのが良いのですが、口内炎などがあると、救
助者が危険な場合があります)

                        
 ご安全に!

2014年3月15日(使ってみました「デジタル耳せん」)
 KING JIMが3月7日に「デジタル耳せん」を発売しました。
 http://www.kingjim.co.jp/sp/mm1000/
 「人の声は聞こえて、騒音だけをカット」するという夢のような耳せん
ですが、騒音というのは人間の声も騒音になりますので、この商品の騒音
とは、300ヘルツ以下の音をカットするものです。カットといっても遮断
するのではなく、300ヘルツ以下の音をキャッチし、その音の逆位相の音
を発生させることによって、音を打ち消すものです。
 300ヘルツ以上の高い周波数の音に対しては逆位相の音を出しませんの
でそのまま聞こえます。おおよそ男性の声は300から550ヘルツ、女性は4
00から700ヘルツ程度なので、ほとんど会話には問題ありません。この商
品は300ヘルツ以下に対してカットしますので、目覚まし時計など1000か
ら2000ヘルツのような耳障りな音に対しては効果がありません。
 生産の現場で使用できないかと考えましたが、騒音職場になる85デシ
ベル以上の第2管理区分、第3管理区分というところでは、300ヘルツより
低い音にのみ遮音効果があるので、使えないと考えてください。ただし、
騒音発生源の周波数分析をして、300ヘルツ以下の騒音だけが発生してい
る特定の職場には使用できるかもしれません。
 ただし、騒音職場対策としての防音保護具には有効ではありませんが、
第1管理区分のような耳栓をしなくても良い職場であるが、不快な音が多
いという職場では緩和効果があると考えます。実際に地下鉄に乗って装着
してみましたが、振動音のような周波数の低い音はカットされるので、逆
に周囲の話し声はよく聞こえました。騒音第1管理区分の作業場で耳栓の
着用義務はないけど、不快なので、耳栓を着用したい。しかし、耳栓を着
用すると指示のような声が聞こえなくなるという職場では適した耳栓かも
しれません。

                         ご安全に!

2014年3月8日(北陸道バス事故)
 3月3日北陸道で夜行バスがサービスエリア内のトラックに激突し、運転
手と乗客が死亡し、10人が重傷、13人が軽傷を負う事故が発生しました。
 高速バスでの居眠り事故としては、2012年関越自動車道で乗客7人が死
亡し、38人が重軽傷を負う事故がありました。この事故を受けて、一人の
運転手が走行できる距離および時間を定めたり、新高速乗合バス制度を制
定したり、管理方法を強化していきました。
 今回のバス事故は、当初、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われました。
会社は睡眠時無呼吸症候群の検査をした際に、事故で死亡した運転手は、
「要経過観察」となり、バス会社は産業医と相談して「業務可」と判断し
ました。トラックに激突する前にガードレールに4回接触したとも報道さ
れています。事故の40秒以上前から意識が無かったようです。ガードレー
ルへの接触の後、乗客が運転手に声を掛けました。居眠り運転であれば、
ガードレールへの接触や乗客の呼びかけなどで目が覚めるでしょう。とい
うことは睡眠時無呼吸症候群による居眠りとは違うようです。心疾患、脳
疾患などが疑われます。これが今回の事故原因であれば、連続労働日数、
労働時間、休憩時間、運転距離、運転時間等の制限だけでは対策できませ
ん。
 バスに限らず、タクシーなど全ての車両で発生するかもしれません。中
には、乗客が意識を失った運転手に代わってハンドル操作して無事に乗り
こなしたこともありましたが、夜行バスの場合、乗客の室内は真っ暗なの
で、何かに接触しない限り、乗客は異常には気が付きません。脳・心疾患
を完全に防ぐ健康管理は不可能です。脳波・心臓の鼓動をモニターして、
異常を感知すると、エンジンをOFFにすることは技術的に可能でしょう
が、現実的ではありません。現在市販されているアイサイトなど衝突防止
システムはありますが高速道での運転には対応できません。
 しかし、現在では、無人運転の実験が進められていますので、将来的に
はこのような事故を防ぐことも可能になるでしょう。
 既存のもので効果があるものとしては、ナルセペダルでしょう。ナルセ
ペダルはアクセル操作は足を横に動かさなければ、加速できません。意識
が無ければ、アクセルはOFFになりますし、意識を失い、ハンドルの方
にもたれかかると、ブレーキペダルに乗せた足に体重がかかり、自然とブ
レーキがかかるので、被害の低減は可能です。
(参考:ナルセペダル)
 http://www.naruse-m.co.jp/
 乗客の立場で考えると、シートベルトが重要です。今回の事故で重傷者
と軽傷者の場所はバラバラでした。シートベルト装着者と未装着者との差
があったと考えられます。

                        
 ご安全に!

2014年3月1日(京浜東北線)
 23日午前1時ごろ、京浜東北線で回送電車が資材運搬用重機と衝突して
脱線・横転する事故がありました。回送電車なので乗客が居なかったのが
幸いです。しかし、23日終日運休になり、大きな影響がありました。
 新聞では重機のオペレーターが間違えて線路に入ったと報道がありまし
たが、そんな単純なミスではありません。もし、重機のオペレーターが独
断で線路に侵入できるなら、そっちの方が大きな問題です。
 おそらく、元請けがあって、2次請けがあるでしょう。作業計画に基づ
いて運行状況の確認し、作業計画に従って、指示をするのですから、何人
もの関係者が確認できたはずなのです。しかし、このような事故が発生し
ました。
 回送電車の運転手は重機を発見して急ブレーキをかけたが間に合わなか
ったということです。急ブレーキをかけても間に合わないのであれば、事
故を防げません。事故を防ぐためには、安全対策が必要です。
 京浜東北線では列車同士の衝突を防ぐために自動列車制御装置(ATC)
が設置されていますが、工事用重機にはATCは設置されていませんでした。
 異常事態を発見すると急ブレーキをかけます。ブレーキで回避するため
には、止まれるスピードで走行しなければなりません。しかし、今の交通
網はそんなにゆっくり走れません。安全を確保するには、事前に感知し、
間に合うように止めるための技術が必要です。その技術があるにも関わら
ずATCを搭載していなかったのは問題だと考えます。
 もちろん、工事責任者等、どこかで誰かが間違った判断をしたことが原
因ですが、人間は間違うものです。人間の間違いを事故につなげないシス
テムが必要なのです。

                         
ご安全に!

2014年2月22日(大雪)
 14日からの大雪は記録的な大雪で、1週間経過しても孤立集落は解消さ
れていません。屋根の崩落や、農家のビニールハウスがつぶれたり、今回
の被害は過去最大でしょう。
 雪による悲惨な事故も発生しています。たとえば、16日に埼玉県深谷市
では、運輸会社の駐車場で雪遊びをしていた5歳の女の子が除雪していた
父親が運転する車にひかれる事故がありました。調べてみると、父親の実
家の運輸会社ということで、娘を駐車場で遊ばせていたようです。小さな
子供が雪で遊ぶと、身体中に雪が付き、積雪の中に居ると、気が付かない
ものです。このように除雪中の事故は毎年のように発生しています。監視
者を付けるなどして、除雪場所への人の立ち入りを防止しなければならな
いでしょう。
 菅官房長官は17日の記者会見で立ち往生した車両が除雪作業の妨げにな
るとして、車を強制的に撤去できるように法整備を検討すると発表しまし
た。車が動かなくなり、乗り捨てた人も多かったようです。地震など車を
置いて避難する際には、ドアロックを解除し、キーを差したまま避難する
ように指導されていますが、大雪と地震は別のものと感じたのかもしれま
せんが、ドアロックして乗り捨てた人が多かったようです。
 政府が考えている強制撤去は、車の持ち主がいなくても、レッカー移動
しても良いというものだと考えられます。しかし、緊急時にはレッカー車
の確保は困難です。ガラスを破壊して、サイドブレーキを解除して、けん
引しようとしてもハンドルロックがかかりますので、動かすことは困難で
す。
 地震時に限らず、道路に車を置いて、離れる場合には、キーを付けたま
ま避難する必要があります。法改正も必要かもしれませんが、国民への周
知指導も必要です。
 

2014年2月22日(自転車荷台の子供)
 先日の帰宅時に駅前のATMの前に自転車が止めてありました。よく見
ると後ろの荷台には小さな子供が乗ったままです。母親はATMの中に入
っていました。子供はヘルメットをしていません。もし、自転車が倒れた
ら大変です。自転車のスタンドをしていても、通行者が接触して自転車が
転倒する可能性もあります。そのまま放置する訳にいかないので、自転車
の荷台を押さえて、母親が戻るのを待ちました(子供を抱きかかえて降ろ
すべきでしょうが、トラブルを避けるために荷台を押さえました)しばら
くして、ATMから出てきた母親はかなり驚かれましたが、「おかあさん、
子供を荷台に乗せたまま離れると、自転車が転倒するかもしれませんよ」
と言い残して、その場を去りました。
 母親からすると、今まで倒れたこともないし、短い時間だからと考えた
かもしれませんし、倒れることなんて全く考えてなかったかもしれません。
 その母親に危険性を理解していただき、繰り返さないことを祈ります。
                         ご安全に!

2014年2月15日(養豚場の5S)
 2月12日、TBSの朝ズバで養豚場の5S活動が紹介されました。
 株式会社 林牧場(群馬県)
  http://www.f884.co.jp/index.html
 5Sというと特に目新しいものではありませんが、養豚場での採用はほ
とんど無いそうです。養豚場というと3K職場(キツイ、汚い、危険)と
呼ばれ、労働者離れが進んでいます。ところが、この林牧場では学生など
の就職希望者からの問い合わせが殺到しているのです。その5S活動は徹
底しており、まるで食品製造工場のように、豚舎に入る時には靴の洗浄ま
でしています。豚舎にはフンさえ落ちていません。レポーターの話では豚
舎特有の臭いもなく、養豚場とは思えないほど、きれいに整備され、維持
されています。
 労働者に優しい職場が豚にとっても好影響を与え、豚のストレスも少な
く、病気になりにくく、健康に育ちます。健康状態が良いと他の養豚場の
豚より味が良いというのです。豚の品質は、エサ・水・環境・遺伝の4要
素で決まるそうですが、5Sが豚の成育環境作りに役立っています。
 5S活動が豚への健康・品質(味)に影響するとは、知りませんでした。
徹底した5S活動は製品(豚)、労働者、業界に与える影響など業績にプ
ラス効果を与えた好事例だと思います。
 あなたの会社の5S活動は業績に効果をあげていますか?

                        
 ご安全に!

2014年2月8日(法改正案)
 2月4日、「労働安全衛生法の一部を改正する法律案要綱」について、労
働政策審議会から答申が行われました。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000036591.html
 メンタルヘルス対策や受動喫煙防止対策は以前から改正の審議が行われ
ていましたが、今回新たに化学物質管理の規制が厳しくなる予定です。こ
の背景としては、大阪の印刷業で多発した胆管ガンがありました。現在、
安全データシート(SDS)の交付義務のある640の物質について、一定
の危険・有害な物質の作業についてリスクアセスメントが義務付けられま
す。現在リスクアセスメントは平成18年の改正により努力義務になってい
ますが、一部の危険・有害性のある作業では義務化されます。
 リスクアセスメントを実施している企業は増えていますが、その対象は
挟まれる・墜落等の労働災害を想定した、発生した場合の重大性とその発
生の可能性等を評価している会社が多いでしょう。しかし、化学物質のリ
スク評価は同じような評価で良いでしょうか?発がん性がある物質であれ
ば、重大性は「致命傷」などの高く評価しても、可能性は簡単には評価で
きません。それは、取扱量、揮発性・飛散性、作業環境管理状況、取扱時
間等が関係してくるので、可能性が高いとか低いという漠然な評価では適
切なリスクレベルが評価できないと考えます。たとえば、発がん性のある
物質を100cc使う場合と、1000リットル使う場合では有害性は異なるでし
ょう。また、局所排気装置がある場合と無い場合もあるでしょう。これら
「取扱量」「性状」「工学的対策」「作業時間」等を評価のポイントに含
める必要があると考えます。
 どのようなリスクアセスメントを行えば良いか判らない場合は、弊社ま
たは労働衛生コンサルタント等へご相談下さい。
 また、今回の改正案では機械設備等の事前届け出が一部不要となります
(事業場規模による届け出の廃止で、危険・有害な設備の届け出が不要に
なるというものではありません)。届け出が不要になるから、楽になった
とか、助かったと考えるのは、ちょっと早いです。従来は届け出ることに
よって、機械設備等の安全性について監督署が審査してくれたのですが、
今後は審査しないということです。事業所への責任が高くなったと考えな
ければなりません。自らの計画を自ら評価し、許容できるリスクでなけれ
ななりません。特に気を付けなければならないのは、自社で設計して、自
社で制作する機械です。メーカーも監督署も安全性について評価しません
ので、社内で厳しく審査する必要があります。
 新規機械設備の導入は今まで以上に真剣に取り組まなければなりません。
 もうひとつ大きな改正が予定されています。
 重大な災害が企業内の複数の事業所で発生していることへの対策です。
今まで、労働安全衛生法は事業所単位を対象としていましたが、今度は企
業へ指導できることになります。
 たとえば大阪に本社があって、広島工場や三重工場で同様の災害が発生
すれば、大阪の本社へ指導することになります。これには、安全管理を工
場任せにせず、企業として各工場を指導する必要があるというように考え
ます。
 まだ法改正の案の状態ですので、実施日等は決まっていませんが、準備
を進めていただきたいと考えます。

                         
ご安全に!

2014年2月1日(踏切事故)
 1月26日小田急小田原線相模原の踏切で84歳の女性が踏切を渡り切れず
に轢かれてしまう事故がありました。この踏切にはカメラが設置されてい
ました。そのカメラによると、女性が踏切に入って、間もなく、遮断機が
下り始め、30秒ほどで電車が来て轢かれたそうです。通りかかりの男性が
非常ボタンを押したけど間に合いませんでした。
 このニュースを聞いた時に、「そのカメラの設置目的は何?」と考えま
した。事故の検証の為だけなのでしょうか?そのカメラが撮影したものを
運転席に中継できないのでしょうか。昔と違って、今では簡単に映像を送
ることができます。
 鉄道はカーブが多く、踏切内の状況を目視で見ることができない所が多
くあります。踏切目前で異常に気づいても、ブレーキは間に合いません。
踏切の前で減速して、「踏切内に異常があるかもしれない。万一の時には
ブレーキで回避できるようにしよう」と考えている運転手が居られるでし
ょうか。「気付いた時には間に合わなかった」と事故は無くさなければな
りません。昔は要所の踏切には保安員がいましたが、今はほとんどありま
せん。カメラ映像は踏切の保安員の役割をしなければならないと考えます。
 いつまでも、「踏切の中に居た人の過失で、鉄道側の過失は無い」と考
えていいのでしょうか。昨年10月1日にJR横浜線で踏切内で倒れていた
男性を救助しようとして、40歳の女性が轢かれて死亡する事故も発生して
います。踏切内に残された人の責任で終わらさず、そのような時でも安全
に走行できるようにしなければならないでしょう。
 踏切内で死亡した方の遺族が鉄道会社を訴えるということは、聞いたこ
とがありませんが、踏切内の事故も多く、踏切内に人が居ることも十分予
見できるはずです。事故を予見し、必要な措置を取る責任が鉄道事業にも
あると判定されるようになっていくでしょう。
 鉄道を高架にして、踏切を無くすのが最善でしょうが、現実的ではあり
ません。カメラの映像を元にブレーキを掛けるコストはそれほど高額では
ありません。現に乗用車にも搭載されています。
 踏切の数はとても膨大です。簡単にはできないでしょうが、この状況が
永遠に続くことは避けなければなりません。ハード対策ができなければ、
踏切の前で減速すればよいのです。
 昨年10月1日にJR横浜線で死亡した村田奈津恵さんの行為が無駄にな
らないことを期待しています。

                       
  ご安全に!

2014年1月25日(JR北海道)
 1月24日、国土交通省は、「JR北海道に対する輸送の安全に関する事
業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令について」を
出しました。
 http://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo07_hh_000054.html
 平成23年には列車脱線火災事故を発生させ、79人もが負傷し、昨年の貨
物列車脱線事故では、レール幅の測定結果を改ざんしたことが明るみにな
り、しかも、44か所の保線現場の中で33か所で改ざんが行われていました。
 JR北海道では、懲戒解雇を含め、多くの役員、社員の処分を行いまし
た。懲戒解雇とは厳しい処分です。改ざんを行った保線現場の方が多いと
いうことは、各保線現場で同様の要因があったのでしょう。レール幅が基
準を超えていても、直す資材も人材も不足していたそうです。異常だと判
っていてもそれを是正するための資材も人材も不足していたら、対処でき
ないのは明らかです。対処できなければ、点検結果を改ざんして、「異常
無しに書きなおしたい」と考えるのは当然の流れだったのではないでしょ
うか。
 再発防止には厳しい処分を行うことが正しいとは限りません。2005年の
JR西日本福知山線脱線事故で107名の命を奪った無謀な運転は、「日勤
教育」という厳しい処分が背景にありました。ペナルティが厳しければ厳
しいほど、隠蔽行為を作る要因でもあります。
 多くの社員がなぜ「改ざん」という方法を取ったのか、その誘発要因の
対策は進んでいるのでしょうか。
 修繕するための資材・機材が必要ですし、その作業者の確保の問題もあ
ります。点検した結果、異常が認められた際の措置(報告ルート・報告期
限・処置・処置期限等)が実行できるかが重要です。何らかの問題で実行
できない事態になれば、同様のことが起こるでしょう。
 事件の背景には、現場の問題点が上層部へ届いていないことがあったで
しょう。なぜ、問題点が上層部へ届かなかったのか、なぜ、上層部は現場
の問題点を把握し、必要な措置を怠ったのでしょうか。
 関係者の処分だけでは解決しません。人・モノ・金が不足し、組織が機
能していない中での出直しとなりました。

 
2014年1月25日(ノロウイルス)
 浜松の集団食中毒の原因となったノロウイルスが驚異的に広がっていま
す。非常に強い感染力で、わずか、10個のウイルスで感染してしまいます。
患者の吐しゃ物1グラムに100万個以上、患者の便1グラムに1億個以上のウ
イルスが入っていると言われています。
 もし、職場で感染者がいて、嘔吐等をしたとき、どう処置をするか決め
ていますか?すぐに触らないこと、マスク・眼鏡・手袋を装着し、塩素系
の消毒液を掛けながら除去して、さらに周囲を消毒液を使いながら、複数
回掃除してください。その時、除去したものを密閉することが重要です。
 浜松での感染でノロウイルスに感染していた人がいましたが、症状は出
ていなかったそうです。症状がなくても、感染源になってしまうという危
険性があります。
 正しい知識を持ち、正しい対応をしてください。
(参考:厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A)
 http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

                           
ご安全に!

2014年1月18日(おおすみ衝突事故)
 1月15日朝8時ごろ、広島県沖を航海していた海上自衛隊の輸送艦“おお
すみ”と釣り船“とびうお”が衝突する事故があり、“とびうお”の船長
と釣り客1名が亡くなりました。
 同じような事故は、2008年2月19日にイージス護衛艦“あたご”と漁船
“清徳丸”が衝突し、乗員2名が行方不明となり、認定死亡とされました。
 “おおすみ”は長さ178m、“とびうお”は長さ7.6mです。これだけ大
きさが異なると、双方の見え方も違うでしょう。
 原因は特定されていませんが、釣り船を認識したが、追い越した際に、
危険は無くなったと思い込んだのだと推測します。
 互いに目的地などは把握していませんから、相手がどちらに進むかは判
りません。6年前の事故により、接近した船への警戒はしていたのでしょ
うが、ある時点で「問題なし」と判断すると、それ以降、相手の位置・動
向に警戒しなかったのでしょう。
 もし、釣り船の4人が救命胴衣を付けていたら、結果は違ったのかもし
れません。救命胴衣は船に常備していても、今回のような事故が発生して
から救命胴衣を取りに行ったり、着用するような余裕はありません。船に
乗る前から上陸する時まで着用するべきでしょう。(救命胴衣の着用と言
えば、2011年8月17日の天竜川川下り船転覆事故を思い出します。5人が死
亡した事故でしたが、救命胴衣の着用を軽視していました)
 保護具はとても重要です。世の中には“絶対安全”はありません。万一
に備えて装着が必要です。昨年暮れに、世界一速いと言われたカーレーサ
ーのシューマッハ氏がスキーで転倒しました。ヘルメットを着用していま
したが今も意識不明の状態が続いています。ヘルメットは割れていたとい
うことでしたが、もしヘルメットを装着していなければ即死だったでしょ
う。
 どんなに優れた技術・経験を持っていても、全ての危険を回避すること
は困難です。人間はミスをしますし、判断を誤ります。思わぬ事態に遭遇
するかもしれません。保護具は重要です。

                        
   ご安全に!
 
☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 85 ☆  
 緊急地震速報
  先日、あるテレビを見ていると、緊急地震速報を携帯電話等でキャッ
  チしたら、すぐに安全なところに逃げなさい。と言っていましたが、
  これは間違いです。緊急地震速報が鳴った瞬間にはどこで地震が発生
  したのかは判りません。緊急地震速報から0.5秒後に強い揺れがある
  か、10秒後なのかは速報の瞬間には判りません。
  速報が鳴った瞬間に建物の外に走り出すのは、危険です。
  「地震が来る」と認識し、落ち着いて行動してください。 

2014年1月11日(三菱マテリアル爆発事故)
 1月9日午後2時ごろ、三菱マテリアル四日市工場で爆発事故が発生し、
5人が死亡、12人が重軽傷を負う事故が発生しました。
 爆発したものは長さ6m、重さ4.3トンもの熱交換器です。熱交換のため、
表面積を増やす必要があり、約300本ものチューブがあります。このチュ
ーブには、トリクロロシランの残留物が付着しており、水分と反応して水
素が発生するため、洗浄作業の前に約3カ月間、窒素ガスを通気して爆発
を防ぐ対策が行われてきました。ということは、爆発の危険が高いという
ことは認識していたようです。
 しかし、チューブの状態の確認は素手で触って確認するなど、作業マニ
ュアルを作成しておらず、現場の経験に委ねていたようです。
 300本ものチューブ内の状況は1本づつ確認していませんでした。3か月
間、窒素ガスを通気したら化学反応は抑えられるという考えだったようで
す。
 まだ原因は特定されていませんが、チューブ内面にトリクロロシランの
残留物が付着し、チューブが閉塞している状態だったので、窒素による通
気ができておらず、水素が発生して爆発したと推測できます。
 熱交換器は直径が約90cmの円筒形であり、その内部に300本ものチュ
ーブが入っているので、全てを触って確認することは不可能です。300本
の中に、閉塞したチューブがあっても判らないでしょう。閉塞してしまっ
たチューブに何カ月も通気しても意味がありません。
 また、工場では熱交換器の交換頻度を定めておらず、今回の熱交換器は
7年も使用していました。危険と認識していながら、7年も使い続きたこと
がとても信じられません。
 その間、チューブ内の残留物の付着状況は確認していませんでした。
300本のチューブが数本閉塞しても機能的には問題ないでしょう。しかし、
閉塞すると今回のような爆発事故が発生します。
 チューブ内の残留物の付着状況は把握できないし、洗浄作業前の通気作
業も何日すれば良いかも把握できていません。この熱交換器の洗浄作業を
安全に行うことは無理でしょう。安全に行うためには、少なくても全ての
チューブ内の状況を流量計や温度計などで把握する必要があります。
 今後、交換・洗浄作業の頻度を定めるとして生産再開を考えるでしょう
が、その頻度を特定する根拠が見つからないでしょう。生産再開には多く
の課題が残っています。

                          
 ご安全に
 
☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 84 ☆  
 阪神淡路大震災(1995年1月17日午前5:46発生 M7.3)
  あの地震から19年が経過します。6,434名の方が命を失い、約44千人
  の方が負傷しました。早朝ということで就寝中の人が多く、死者の多
  くは、圧死でした。
  皆様の会社・ご家庭では転倒防止措置を行っているでしょうか?
  震災後に転倒対策をしたけど、レイアウト変更などで、転倒対策が外
  されていることは無いでしょうか?
  17日を思い出して、転倒対策の点検を実施してください。
  東日本大地震のように長時間の揺れがあると、転倒防止の留め具も緩
  み外れる可能性があります。複数個所の固定が必要になります。

2014年1月4日(自転車の左側通行)
 本年も「安全週記」をよろしくお願いします。
 昨年12月1日より、自転車走行は左側走行とし、罰金も科せられるよう
になりました。「おかしい?左側走行は昔から」と感じた方も居るかもし
れません。従来より車道を走る時は左側走行でした。今回の改正では路側
帯も含まれるのです。改正前は路側帯を逆走行しても法違反にはならなか
ったのです。
 自転車の逆走は本当に怖いです。以前、私が夜間に運転していた時の事
ですが、信号の無い道路を右折しようと、対向車の通過を待っていました。
通行量が多いので、通行の切れ目を狙って右折しようと待っていました。
やがて少しの切れ目があったので、右折し掛けた時、無灯火の自転車の逆
走がありました。運転席から見ると、右側斜め後方です。歩道上は確認し
ていましたが、右側後方の遠くまでは見ていません。突然、目の前を横切
って走り抜けました。私は自転車の存在には全く気が付いていませんでし
たので、危うく加害者になるところでした。
 12月1日より罰金が追加され、取り締まりが強化されましたが、良くな
ったと感じますか? 私の見る限りでは全く改善されていません。
 さて、どうして、自転車走行がこのように荒れてしまったのかを考えま
した。1960年後半からの「交通戦争」がポイントのようです。それまでは
自転車は軽車両なので、車道走行になっていましたが、自転車と乗用車の
接触事故が多発したため、警察庁は自転車の歩道走行を認めたのです。今、
考えるとこれが原因ではないかと感じます。その時、自転車走行を免許制
にするとか、ヘルメット・プロテクター等の装備を義務化したり、違反者
には罰金を科せるなどの手を打っていたら、今と違ったかもしれません。
 昨年、警察庁では自転車と歩行者の事故が多発していることから、自転
車は原則車道を走行するように通達しました。ただし、自転車走行可とい
う表示された歩道が多いため、通達と現実が合っていません。
 まだまだ自転車関連の交通事故は収まりそうにありません。
 自分の身は自分で守ることを心がけて下さい。道を歩く時も自転車が飛
び出してくるかもしれないというKY(危険予知)をしながら歩きましょ
う。危険予知には聴覚も大切です。イヤホンを付けて歩くのは止めた方が
良いでしょう。
 自転車に乗る方は保険に入っていますか?
 仕事中に自転車に乗る人も多いでしょう。仕事中に自転車でケガをした
場合は労災保険の適用がありますが、これは相手方の補償はありません。
仕事中の自転車の保険は必ず入るようにしてください。
 皆様の交通安全をお祈りします。被災者にならないように、また、加害
者にならないようにご注意ください。

                          
 ご安全に!
 
☆ 地震減災のワンポイントアドバイス 83 ☆  
 地震ハザードステーション
  http://www.j-shis.bosai.go.jp/map/
  地震ハザードステーションのページでは、30年以内に震度X以上の揺
  れに見舞われる確率を地図上に示しています。30年以内ということな
  ので、今年かもしれないし、30年後かもしれません。あまり意味が無
  いと感じるかもしれませんが、とても有意なものです。
  地図上で濃く表示されている部分は地盤が軟らかいので、同じ地震で
  も大きく揺れるというように理解して下さい。
  もし、新しく家を買うなら、選ぶ参考にしても良いでしょう。

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