2023年12月23日記(ダイハツ)
 ダイハツの不正行為報道には驚きました。件数が多いこともありま
すが、不正行為は1989年からと報道されてます。34年に及びます。そ
の間、さまざまな企業で不正問題が明らかになり、多くの会社でコン
プライアンス専門の部署を設けたり、コンプライアンス教育を行って
います。ダイハツ工業はトヨタの子会社であり、そのような取り組み
をしていると思われますが、出荷停止、生産停止となり、とても残念
に思います。私自身、3年前までダイハツ工業の自動車に乗っていま
した。12年ほど使用していましたが、何も問題もなく、快適でした。
買い替えした理由は、長年ということもありますが、万が一に備え、
衝突防止機能が必要と考えたからです。
 なぜ、このような不正を繰り返す社風になったのでしょうか。基準
を逸脱するのは“悪”という考え方があるのかと思います。しかし、
その基準を逸脱しても交通事故につながる可能性はないので、少し手
を加えて、悪から善に変えようとするのでしょう。
 基準を逸脱した場合には、その原因を追究し、改善することにより
生産力が向上するのだと思います。だから基準を逸脱したことは悪い
ことではない。逆に、改善点が見つかったというように良い方向につ
ながるものだと考えることはできないでしょうか。
 ダイハツ工業はトヨタの子会社です。子会社ということは、高い技
術力と生産力を世界トップであるトヨタが認めたということです。
 ダイハツ工業が信頼を取り戻して、優れた製品を生み出すことを期
待したいと思います。


2023年12月23日記(倒れないカラーコーン)
 寒さが本格的になり、冷たい風が厳しさを感じます。
 さて、強い風が吹くと、カラーコーン(パイロン・ロードコーン・
三角コーンなどの呼び名があります)が倒れることはよくあります。
多くは重りを付けていますが、それでも倒れることがあります。
 先日がっちりマンデーで放送された㈱カーボーイの穴あきコーンは
強風でも耐えられます。(穴から風が抜けるため倒れない)
 http://www.car-boy.co.jp/
 浸水しても流れることがありません。
 カラーコーンを購入するときは検討してください。

                       
ご安全に!

2023年12月15日記(誘導員)
 大阪市西成区の配水管の設置工事現場で12月10日、自転車で通行し
ていた人が穴に転落し、鎖骨を骨折する事故が発生しました。
 大阪市によりますと、幅が約90cm、長さが約4m、深さが約120cmの
穴に、自転車で犬の散歩をしていた通行人が転落しました。工事現場
には交通誘導員が配置されましたが、事故当時は一時的に持ち場を離
れていました。
 自転車で犬の散歩をしていた通行人にも問題がありますが、深さが
120cmもある穴があるにも関わらず、監視者に頼る方にも問題があり
ます。
 誘導員を付ければいいというものではありません。たとえば、誘導
員は右の方からくる歩行者に気を取られている間に左の方から接近し
てくる場合もあります。
 誘導員は補助的なものと考えます。転落を防止する柵を設けて、さ
らに第三者が接近しないように誘導員を設けるべきです。
 また、誘導者はトイレ等で場を離れる場合もあります。そのように
持ち場を離れる際の対応も作業計画に入れなければなりません。


2023年12月15日記(スーパーのレジ)
 ネットニュースを見ていたら、スーパーのレジにイス設置を求めて
会社と交渉を続ける大学生の話がありましたので、紹介します。
 文教大学3年生の茂木楓さん(22)は、大手スーパーのベイシアでア
ルバイトを始め、レジにイスがないことに疑問を持ち、首都圏学生ユ
ニオンを通じ会社と交渉中ということです。
 椅子に座りながらレジ操作をすることはできなくはないのですが、
商品の大きさや種類にもよるでしょう。
 レジの作業では、この安全週記で何度か話題にしたアルケリスが最
適だと思います。
 https://www.archelis.com/

 
2023年12月15日記(インフルエンザ)
 インフルエンザの流行が止まりません。定点あたりの報告数が警報
レベル(30超)を超え、全国で33.72となりました
 https://www.mhlw.go.jp/content/001178951.pdf
 来週から冷え込みが厳しくなるのでご注意ください。


2023年12月15日記(ヒートベスト・電熱ベスト)
 これから寒くなります。先日、ヒートベストを購入しました。
 首の後ろから、背中がポカポカして暖かい。これがあれば部屋の空
調は要らないくらいです。エアコンを使うと電気代も高いし、空気も
乾燥します。
 さて、さまざまなヒートベストが市販されていますが、私なりの選
び方のポイントを紹介します。
 ①バッテリーはUSB給電が良い。
  バッテリーの接続プラグが専用のものは、高い電圧で温めること
  ができますが、バッテリーが高価です。USB給電であれば、予
  備のバッテリーが市販されているモバイルバッテリーで可能
 ②ヒーター部はフレキシブルで柔らかいものが着心地がよい
 ③首の後ろにヒーターがあれば暖かさを直接感じる
 ④ベストは薄い方が良い。薄いと下着の上に着用できる。ヒートベ
  ストは作業服等の上に付けると暖かさを感じにくい

                      
 ご安全に!

2023年12月9日記(クマ撃退用スプレーの誤噴射)
 12月2日、新幹線の車内で誤って、クマ撃退用スプレーの誤噴射が
ありました。クマに襲われるという事故が多発していることから登山
客が車内に持ち込んだようです。クマを撃退する性能があるのですか
ら一般的な殺虫スプレーとは威力が違います。人間を守るためのもの
でも、使い方によっては、凶器であり、兵器でもあります。
 今年の10月にも新幹線で硫酸を漏らした事故があったばかりです。
 化学物質など危険な物を公共の場所に持ち込む場合には、落として
も割れないこと、こぼれないこと。落としても当たっても誤噴射しな
いようにしなければなりません。
 10月の硫酸も、今回のクマ撃退用スプレーによって被害を受けた車
両の損害賠償については報道されていませんが、大きな金額になるで
しょう。
 ちなみにクマ撃退用スプレーの主成分は唐辛子に含まれている“カ
プサイシン”のようです。


2023年12月9日記(都営地下鉄ホームドア)
 最近、ちょっと感動したニュースを紹介します。
 (ニュース引用)
 都営地下鉄が11月18日に浅草線の西馬込駅でホームドアの運用を開
始し、都が管理するすべての駅でホームドアの整備が完了した。「最
後の難関」だった浅草線は、従来の方法であればホームドア整備のた
めの車両改修費が約20億円に達する見込みだったが、職員のアイデア
でQRコード方式が採用され、コストを約270万円に抑えることができ
た。この驚異的なコストダウンを実現するまでの裏側や、QRコード方
式への疑問などについて、都営地下鉄を管理する東京都交通局を取材
した。
 4路線ある都営地下鉄は、2000年に三田線で初めてホームドアを整
備し、その後、2013年に大江戸線、2019年に新宿線で整備を終えた。
だが、残る浅草線は京急、京成、北総、芝山の4私鉄が相互乗り入れ
し、各路線の車両は6両や8両編成、2ドアや3ドアなど仕様が異なるの
で開閉位置を変える必要がある。これに対応した機器を設置する車両
改修費は1編成当たり数千万円、莫大な費用もネックとなり各社との
合意ができずに計画が頓挫しかねない状況となった。
 この絶望的な状況を覆したのが、職員の発案によるQRコード方式の
採用だった。車両のドアにQRコードステッカーを貼り、ホーム上部に
設置されたカメラがそれを読み取ることで、対応するホームドアを作
動させる仕組みだ。結果、車両改修は不要となり、難関だった浅草線
での整備を進めることが可能になった。車両改修であれば約20億円か
かるコストも、ステッカー代の約270万円と大幅に削減できた。
                   (ニュース引用終わり)
 電車がホームに到着した時に、電車のドアがないところのホームド
アが開いたら事故になる。逆に、電車ドアがあるところのホームドア
が開かなかったら困る。QRコードによって、ホームドアの開閉がコン
トロールできるのは素晴らしいアイデアだと感心しました。
 ただ、今までホームから線路に転落するリスクに対して、何も対策
していなかったことが問題だと感じます。転落する危険があるから白
線を引いて、白線の内側を通行することを呼びかければ事故が防げる
と考えたことが間違っていたと感じます。さらに鉄道を利用する人が
増えているにも関わらず、ホームに売店などを増設してホームが狭く
なっています。特に階段やエスカレーターがあるところの通路は狭い
ところが多い。最初からホームドアを付ける想定になっていれば、鉄
道各社の車両のドアの位置は全て同じになっていたはずです。

                      
 ご安全に!

2023年12月2日記(強盗対策)
 11月26日、東京・上野の宝飾店に3人組の強盗がありました。店で
は“さすまた”を常備しており、店員がさすまたで追い出したので、
ガラスケースを割られた程度で済んだようです。
 5月にも銀座で時計店に強盗がありました。いずれも18時ぐらいの
店員が居る時間帯のことです。
 上野の宝飾店では、強盗側にとっては思わぬ抵抗を受けたために逃
げましたが、さすまた1本では反撃を受ける可能性があるため、複数
用意し、さらに練習が必要です。
 なお、さすまたは防御しながら避難することが目的だと思います。
それは、さすまたで自由を奪ってもナイフを投げつけられるなどの危
険もあります。強盗が複数であれば、危険度は高まります。今回の場
合も3人組だったので、反撃される可能性がありました。
 さすまたには弱い面もあります。さすまたの横に広がったところを
相手に掴まれると、簡単に奪い取られます。それは、1本の棒を両手
で把持するのですが、犯人が横に広がった両方を掴むと、両手で2本
の棒を持った方が力が強くなります。そのため、ある程度の訓練は必
要です。
 以前、防災の展示会で、佐野機工のケルベロスを見せていただき、
実際に、使用させてもらいました。このケルベロスが身体に巻き付く
と自力では外せません。さすまたの進化系のようなもので、さらに防
御力が高まります。
 https://www.sanokiko.co.jp/product_post/cerberus/
 さすまたなど護身用のグッズは全ての事業場に必要だとは思いませ
んが、高級品を扱うところでは、店内に置いておくだけで狙われにく
くなるでしょう。強盗側は狙った店舗を事前に調査するでしょうから
護身用グッズがあれば、その店舗を避けるでしょう。災難除けのお守
りの効果もあると思います。 


2023年12月2日記(谷沢製作所のヘルメットがすごくいい)
 作業用のヘルメットには“飛来落下物用”と“墜落時保護用”の2
種類の規格があります(電気作業用の規格を含めると3種類)。
 墜落時保護用のヘルメットには従来、発泡スチロールの衝撃吸収材
がありましたが、谷沢製作所では発泡スチロールに代えて六角柱の衝
撃吸収体を使うことにより、ヘルメット本体とハンモック(ヘルメッ
ト内側にある頭蓋骨を覆うようなもの)の間の通気性を向上させ、ヘ
ルメット内部の温度上昇を抑える製品を作りました。商品名は“エア
ライト”、開発は2014年でした。
 現在ではさらに進化した“エアライトS”を販売しています。この
エアライトSで一番注目している点は帽体の全高が133ミリしかない
点です(エアライトは152ミリ。機種によって差はあります)。従来
モデルより約20ミリ低いということは、天井高さが低い場所でも頭頂
部が当たりにくい点です。特に足場などでは歩きやすくなります。ま
たとても軽く、重心が低いので、安定しています。私も使用していま
すが、お勧めのヘルメットです。
 なお、谷沢製作所ではフルハーネスの新製品が発売されます。新し
く超高分子量ポリエチレン繊維“ダイニーマ”を使うことにより重量
は従来モデルより44%軽くなり、収納時の容積がとても小さく、さら
に巻取式ランヤードも約30%軽くなり小型になります。来年春には、
ラインナップが充実するようなので、是非新型のフルハーネスを購入
したいと思っています。

                      
 ご安全に!

2023年11月25日記(2019年 和歌山市 鉄パイプ落下)
 (ニュース記事引用)
 和歌山市で2019年11月、ビル工事現場から落下した鉄パイプが直撃
し、下を歩いていた男性が死亡した事故で、男性の遺族が、建設会社
側に約2億円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁であり、会社側が遺
族に1億3300万円を支払う内容で和解が成立した。11月1日付。
 訴状によると、亡くなったのは銀行員の板垣智之さん(当時26歳)
12階建てのビル最上部で行われていた工事用足場の解体作業中に鉄パ
イプ(重さ約5.3kg、長さ約1.5m)が落下し、通勤途中だった板垣さ
んに直撃した。
 板垣さんの遺族が同9月、工事を担当した建設会社「ヒロケン」
(和歌山市)などを相手取り、落下防止措置を怠ったとして提訴。慰
謝料のほか、板垣さんが将来得られるはずだった収入(逸失利益)な
どの損害賠償を求めていた。
 事故を巡っては、ヒロケンの社長が業務上過失致死罪に問われ、今
年5月に和歌山地裁で有罪判決(禁錮2年、執行猶予5年)を受け、確
定した。
 和歌山地方裁判所の松井修裁判長は、落下防止ネットの設置方法が
不適切で、パイプを受け止められない状態だったと指摘したうえで、
「作業員らを指導監督すべき立場にありながら、事故防止のための基
本的な安全対策を怠った。不注意の程度は大きい」と述べました。
 (2023年5月8日)              (引用終わり)
 ヒロケンはこの事故により建設業の許可が取り消しになりました。
一つの事故により会社の存続にかかわるものです。
 この事故は落下防止ネットを付ける方法や、工事現場の下の通行規
制を行うことで防げたはずです。現場監督者は作業の方法を検討する
際に、発生しうるミスや災害を想定して安全な作業方法を検討しなけ
ればなりません。人間のやることですから、物を落とすことはゼロに
はできないでしょう。落としても災害にならないように支える物を設
置するなどの対策が必要です。


2023年11月25日記(草刈機の刃が首に当たる)
 草刈機はご存じだと思います。長いパイプの先端に直径30㎝ぐらい
の円盤状の刃物が付いています。見た目にも非常に怖い機械です。
 大分県で11月23日、29歳の男性が空き地の草刈りをしていたところ
近くにいた84歳の男性の首に当たり、死亡しました。
 草刈機はエンジン型のため、とても大きな騒音を発するため、近く
から叫んでも作業している人には聞こえないという危険があります。
そのため、近づいた人に気が付かなかったのでしょう。
 また、首の高さに刃が当たるということはキックバックが発生した
と思われます。キックバックとは、切れない固いものにぶつかった時
にその反動で跳ね返されるものです。回転刃なのでどの角度でも切る
ことはできるのですが、キックバックが発生しやすい場所を理解し、
キックバックが生じにくい刈り方が必要です。これらは講習を受ける
こと以外でも説明書やネットで調べるとすぐに判ると思います。
 プライベートの作業では労働安全衛生法等は関係ありません。関係
ないからこそ、安全を最優先に考えなければなりません。

                      
 ご安全に!

2023年11月18日記(ダムの排水口に引き込まれて死亡)
 11月14日、新潟県三条市の大谷ダムでボートに乗って作業していた
男性がボートとともにダムの排水口に引き込まれ死亡する事故があり
ました。
 この事故に関しては、まったく理解できません。なぜ、排水口があ
る場所で作業していたのでしょう。排水口に引き込まれたらボートの
エンジン程度では逃れることができません。引き込まれたらどうする
こともできないのは明らかなはずです。排水口から離れた場所だから
安全だと考えたのでしょうか。しかし、何メートル離れたら安全に作
業できるかなどは、誰も判断することはできないでしょう。
 排水口を閉じる予定だったが、連絡ミスで閉じていなかったという
ことなのでしょうか。
 排水口を閉じることができなければ作業しないことが必要です。も
し作業が必要なら、地上から作業する方法を考えるべきです。
 報道の中には、男性はライフジャケットを脱いで水中に飛び込んだ
とあり、驚きましたが、考えてみれば、水面は流れが速く、引き込ま
れるのは明らかだから潜って、流れのないところまで逃げようとした
のでしょう。しかし、これは無謀だったように思います。
 作業員が命がけで作業させることは許されません。たとえ、ボート
が転覆するようなことがあったとしても安全を確保できる作業が必要
です。


2023年11月18日記(クレーン解体中の事故)
 11月16日、兵庫県洲本市の造船所でクレーン解体作業中に作業場が
落下し、2名が意識不明の重体になりました。
 クレーン解体に当たり、別のクレーンで作業場を吊って支えながら
溶断作業をしていたところ、支えていたクレーンのワイヤーが切れ、
男性作業員が作業場ごと転落しました。解体作業の下では別の男性が
作業中であり、この男性も巻き込まれてしまいました。どんな作業で
あっても上下同時に作業することは間違っています。ボルトが落ちた
だけでも下の作業者はケガをする可能性があります。
 原因は不明ですが、気になるのは、吊り上げる重さの想定をどうし
たのでしょうか。クレーン作業では吊り上げる荷の重量を確認して、
その重量からワイヤーロープを選択します。解体作業中のクレーンは
まだ土台についている状態なので、ワイヤーに求められる強度の判断
を間違ったのではないでしょうか。また、現場は海に近い場所なので
ワイヤーが錆びて強度が下がったのではないかと感じます。

                       
ご安全に!

2023年11月11日記(硫酸の貯水槽に転落)
 
(11月4日報道記事引用)
  福岡県内にあるメッキ加工工場で、19歳の男性が、作業中に硫酸
 が入った貯水槽に落ち死亡しました。警察は、業務上過失致死容疑
 での立件を視野に捜査を進めています。
 ◆作業中に落ちたか
  警察によりますと、11月3日、福岡県北九州市にある車両部品の
 メッキ加工工場で、勤務する19歳の男性が硫酸が入った貯水槽に落
 ちました。男性は、下半身にやけどを負い病院に運ばれ治療を受け
 ていましたが、きょう死亡が確認されました。
 ◆深さ1メートル 普段は上部に蓋
  警察によると、貯水槽は横2.5m、奥行き0.8m、深さ1mで、男
 性は当時、貯水槽の近くでポンプの部品交換作業をしていたという
 ことです。貯水槽の上部は普段、プラスチック製のふたで覆われて
 いますが、通報を受けて警察が確認したところ、ふたは完全に被っ
 ていない状態でした。
 ◆警察が立件も視野に捜査
  警察は、男性が貯水槽に落ちた経緯を調べるとともに、安全管理
 に問題がなかったか、業務上過失致死の疑いでの立件も視野に捜査
 しています。(引用終わり)
 若い労働者の痛ましい事故です。
 メッキ工場なので、硫酸槽に製品を入れるために、日頃から完全に
フタをしていないと思われます。そのフタは蒸発を防ぐためのカバー
ような簡素なものではないかと考えます。
 大きな製品を入れる開口部だから柵などを付けると作業に支障があ
ると考えたのかもしれません。しかし、今回のように接近することが
あれば、たとえ中に入ろうとしても入れないような措置が必要です。
硫酸槽に転落したら死亡することを教えて注意を促しても、立ち眩み
や、バランスを崩したり、地震の揺れで転倒して転落することも考慮
しなければなりません。

 
2023年11月11日記(排気口で転落)
 (11月9日報道記事引用) 
  日本製鉄の九州製鉄所大分地区で8日、27歳の男性社員が工場の
 排気口で作業中に転落し、まもなく死亡が確認されました。
 警察によりますと8日午後8半すぎ、日本製鉄九州製鉄所大分地区の
 関係者から「高さ2~3mから人が転落した、詳細は分からない」と
 119番通報がありました。
 転落したのは大分市明野北に住む男性(27)で、病院に運ばれました
 が、午後10時ごろ死亡が確認されました。
 会社によりますと、排気口のサイズや、一緒にいた作業員など詳し
 い状況については現在、確認中ということです。工場の排気口の中
 に入って清掃作業をしていた。(引用終わり)
 転落した原因は不明ですが、次のことが考えられます。
 ・酸素濃度が不足したことにより、転落した
 ・清掃時に薬品を使用して、薬品の蒸気を吸って意識を失った
 ・安全な足場がない場所で作業した
 ・転落の危険があるにも関わらず安全帯をしていなかった
 不明な点も多いのですが、危険な場所にも関わらず、監視者を付け
ていなかったのだろうと想像します。
 作業の前には、リスクアセスメントまたは危険予知を行い、安全な
作業方法を検討し、安全対策を十分に行わなければなりません。

                       
ご安全に!

2023年11月4日記(トヨタ生産ライン停止)
 10月18日からトヨタの工場で生産停止になる事態が発生しました。
その原因は、バネの工場である中央発條での火災事故でした。中央発
條のホームページには以下の通り発表がありました。
 (中央発條ホームページより引用)
  事故内容: シャシばね塗装ライン内の乾燥炉での爆発
 〈発生原因〉
 ・通常、燃焼室のバーナーで作り出した熱を乾燥炉へ送り込んでい
  るが、燃焼室と乾燥炉の間を循環しているダクトのフィルターの
  目詰まりが起き(隣接エリアでの撤去工事で発生した粉塵の影響)
  空気循環が悪化したことにより、熱が燃焼室内に閉じ込められ、
  高温異常が発生
 ・バーナー燃焼用の空気供給量を抑えたところ、燃焼室から不燃ガ
  スが発生、乾燥炉内に流入・蓄積
 ・その後、炉内温度が下がり過ぎたため、バーナーへの空気供給量
  を増やした際、バーナーの火が強まり、炉内の不燃ガスに到達し
  引火・爆発 
 https://www.chkk.co.jp/wp-content/themes/chkk/pdf/news/20231030_5.pdf
 (引用終わり)
 乾燥炉の炉内温度が下がったことにより空気供給を増やしたという
判断が間違っていたようです。温度が下がった時の対応として空気供
給を増やすという措置は間違っていないのかもしれませんが、温度が
下がった原因が分からないまま、空気供給を増やしたようです。
 調査の結果、フィルターの目詰まりがあり、その目詰まりの原因が
近接エリアでの撤去工事による粉じんだったとあります。
 撤去工事が近くで行われている場合には、どんな影響があるか正し
く調査する必要があります。


2023年11月4日記(歯科でアルケリス導入)
 アルケリス(立ち作業が楽になる器具。6月24日の安全週記で紹介)
を歯科で導入した事例がありました。
 https://www.archelis.com/casestudy-haramachidadentalclinic/
 これを見ると、単に立ち作業が楽になるだけでなく、作業がやりや
すくなるようです。座り作業では作業範囲に制限がでてきますが、椅
子に座っていると届きにくい場所にも容易に接近できるようです。
 座った状態でも身体を前後左右に動かす場合には向いているようで
す。

                       
ご安全に!

2023年10月28日記(無資格で作業)
 今年2月6日に大阪府岸和田市内の工場で13枚の鉄板が倒れた事故が
ありました。2m×9mの大きさで、厚みが約15mmの鉄板を13枚立て
た状態から将棋倒しのようになり1名が死亡、4人が重軽傷となりまし
た。将棋倒しになった直接原因は、クレーン操作した際に誤って鉄板
に接触し、バタバタと倒れ、その立てていた鉄板と鉄板の間で作業し
ていた作業員が挟まれた事故です。
 その事故について10月26日に書類送検がありました。
 
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202310261445.pdf
 送検されたのは、中央技建工業株式会社と安全管理の統括責任者で
した。違反内容は無資格者にクレーンの玉掛け業務を行わせた。とい
うことから、玉掛け作業に不備があったようです。(厚み15㎜の鉄板
の玉掛けには“クランプ”を使うことが多いのですが、クランプの固
定方法に間違いがあったか、サイズが合わないクランプを使用したと
考えられます)
 無資格者による事故が頻発しています。
 特にクレーンは資格が複数あるので、判りにくいものです。
 ・つり上げ荷重5t以上⇒クレーン免許
 ・つい上げ荷重0.5t以上5t未満⇒クレーン特別教育又は免許
 となりますが、クレーンには床上運転式と床上操作式があります。
 ・つり上げ荷重5t以上の床上運転式⇒クレーン免許
 ・つり上げ荷重5t以上の床上操作式⇒クレーン技能講習又は免許
 さらにクレーンでも、移動式クレーンについては、移動式クレーン
の免許や技能講習と特別教育があります。
 また、クレーンを使用するにしても移動式クレーンを使用するにし
ても玉掛け作業が発生します。玉掛け作業は
 ・つり上げ荷重1t以上⇒技能講習
 ・つり上げ荷重1t未満⇒特別教育
 また、資格を持っている場合でも理解していない方もおられます。
例えば、技能講習の資格を有している人に「あなたの資格で、法的に
認められていない作業は何ですか?」と聞いても答えられないことが
ありました。
 今回の送検事例でもクレーンの資格を持っているから玉掛けもでき
ると考えたのかもしれません。(クレーンの講習では玉掛けについて
の講義もあるので玉掛けもできると思い込んだのかもしれません)
 管理者や監督者は作業者の有する資格について十分確認して、でき
る作業とできない作業を明確にしなければなりません。
 特に請負や派遣など常用と異なる場合は注意が必要です。決して
「あなたはこの作業できますか?」と口頭で確認するのは止めてくだ
さい。必ず「あなたにこの作業をしてもらいたいので資格証を見せて
ください」と言ってください。
 また、間違いやすいのがベテラン作業者とも言えます。以前から一
緒に作業しているから、資格を有していると思い込んでいた。という
こともあります。常用の作業者でも1年に1回は資格証を提示させて確
認することが必要だと思います(資格証の紛失も多いため)。

                       
ご安全に!

2023年10月21日記(酸欠事故)
 (ニュース記事引用)
 20日午前9時ごろ、滋賀県湖南市にある合成樹脂の製造工場で、作
 業中の男性が窒素ガスを吸引し、意識不明の重体で病院に搬送され
 その後、死亡が確認されました。
 消防によりますと、20日午前9時ごろ「作業員が窒素ガスを吸って
 意識がない」と工場の関係者から通報がありました。警察によりま
 すと、工場内にある深さ約1.5メートルの容器付近で作業していた
 40代の男性作業員が倒れているのが見つかり、病院に搬送されまし
 たが、その後、死亡が確認されました。現場には窒素ガスの管と酸
 素ガスの管が天井から吊り下がっていて、作業の行程で窒素ガスを
 使い、通常マスクをかぶって作業しますが、誤って窒素ガスの管を
 マスクにとりつけたとみられるということです。(引用終わり)
 この記事を見ると、深さ1.5mの容器内は酸欠の危険場所のため、
エアラインマスクを使用していたようです。ただ、ニュース記事は間
違いで窒素ガスと空気の2つのエアーホースがあったと考えます(酸
素ガスをエアラインマスクに送ることは危険なため)。このように種
類が異なるガスの場合には、エアーホースコネクタの種類を変えて、
間違っても接続できないようにするものです。記事には「誤って」と
ありますが、作業者の確認ミスではなく、あってはならない設備的な
問題です。もう一つ考えられる原因は、作業者が勝手にエアーホース
を延長したのかもしれません。


2023年10月21日記(解体キングダム)
 NHKの番組で興味深いものとして、「解体キングダム」があります
10月18日の放送では高さ30mを超える球体のガスタンクの解体などが
放送されました。放送では“リンゴ剥き”工法と呼んでいましたが、
特殊な解体方法でした。工期短縮、コスト削減など効果的な方法でし
た。
 ご覧になっていない方にはNHKプラスで10月25日まで見ることがで
きます。(登録すれば無料で見られます)
 https://plus.nhk.jp/
 その番組の中で気になるのは、クレーンでゴンドラを吊っているこ
とです。ゴンドラを吊るワイヤーが万が一切れると、ゴンドラごと地
上に落下してしまいます。労働安全衛生規則では用途外使用に当たる
可能性がありますので、ゴンドラの落下のおそれが無いような対策が
必要となります。
 たとえば、ゴンドラの4角にワイヤーを掛ける時に、ワイヤーをそ
れぞれ2本掛けると、万が一1本が切れても、もう1本あるので、落下
は防げます。「ワイヤーが切れないだろう」と考えるのではなく、ワ
イヤーが切れた時でも事故を防ぐ対策が必要になります。

                       
ご安全に!

2023年10月14日記(新幹線車内で硫酸漏出)
 10月9日、東北新幹線の車内で、乗客のカバンから薬品が漏れて6人
がやけどなどで病院に搬送される事件がありました。
 乗客のカバンから液体が漏れ出ていることを他の乗客が指摘し、持
ち主の乗客はデッキに運びだしました。その際、通路に広がった液体
により子供が転倒し、尻を負傷しました。その両親も手などを負傷し
ました。
 肉眼で見えるほどの煙が上がっていることや持ち主の着衣がボロボ
ロになっていること、新幹線の床面の状況や報道により濃硫酸だと考
えられます。
 持ち主の男性はその濃硫酸をペットボトルに入れて車内に持ち込み
ました。JR東日本の規定によれば、酸類は危険品に該当するので、
持ち込みはできないが、除外項目には「酸類で、密閉した容器に収納
し、且つ、破損するおそれのないよう荷造した0.5リットル以内のも
の。」となっているので、量的には持ち込み可能な範囲ですが、容器
が適切ではなかったと考えられます。一般にペットボトルの材質であ
るPET(ポリエチレンテレフタレート)は酸・アルカリにも耐性が
あると言われていますが、濃硫酸を入れてどの程度の時間、保管が可
能なのかは誰もわからないでしょう。もともとペットボトルはそのよ
うな用途に使うものではありません。また、ペットボトルのキャップ
はPETではなく、PP(ポリプロピレン)などが使われています。
これも濃硫酸にどの程度耐えられるのか不明です。
 ペットボトルは軽く、耐久性もあり、さまざまな用途に使われるこ
とがありますが、飲料水用のものであり、過信は禁物です。
 労働安全衛生規則等の改正により化学物質管理が厳しくなっていま
すが、製造・取扱いだけでなく、保管や輸送についても安全性が求め
られます。


2023年10月14日記(フリーランスについて労基法改正の動きあり) 
 先週、アマゾンジャパンと契約している個人事業主の労災適用の件
に触れましたが、テレワークやフリーランス(個人事業主)などの働
き方が多様化していることから、厚生労働省では、「新しい時代の働
き方に関する研究会」の報告書をもとに、労働基準法の改正を検討し
ています。課題として、「業務に関する指示や働き方が労働者として
働く人と類似している」などがあります。
 どのような展開になるか不明ですが、従来は派遣社員で対応してい
た業務がフリーランスに置き換わるかもしれません。事業規模を拡大
しながら、労働者を増やさず、需要と供給に合わせて、ただの「便利
屋さん」として広まっていくのではないかと感じます。
 また、危険な仕事や汚い仕事などは、フリーランスに押し付けて、
「労働者使い捨て」が広まらないか心配です。

                       ご安全に!

2023年10月7日記(9月鉄骨落下事故)
 9月19日、東京駅前の建設現場で鉄骨の梁が落下した件で、新たな
展開がありました。
 (ニュース記事引用)
  東京都中央区八重洲の再開発地区のビル建設現場で9月、鉄骨が
 落下して作業員5人が死傷した事故で、鉄骨の梁を支える土台「支
 保工(シホコウ)」の強度が不足していた可能性があることが、関係者へ
 の取材で分かった。5本の梁(計約50トン)の重さに耐え切れず、
 崩落したとみられるという。警視庁捜査1課は、業務上過失致死傷
 の疑いも視野に、詳しい事故原因を調べている。
 事故は9月19日、3階部分にあった梁をクレーンのワイヤでつり上げ
 て7階に設置する作業中に起きた。男性作業員5人が、7階部分でク
 レーンのワイヤでつり上げた梁をボルトで仮止め設置していたとい
 う。
  関係者によると、5本目の梁の仮止めを完了しワイヤを外そうと
 緩めていたところ、すでに固定していた4本の梁と一緒に20m下の
 3階の床部分に落下。梁に命綱となる安全帯をつないでいた5人も一
 緒に落ち、2人が死亡、3人が負傷した。
  その後の調べで、支保工に梁5本の重さに耐えられる強度が十分
 に確保されないまま工事が進められた疑いが浮上した。また、資材
 不足などを理由に、支保工の設計を変更していたことも判明した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/28c432a83dbee211d18b4a8c457e4098647b42c5
                    (引用おわり)
 50トンを支える支保工の強度不足の可能性があるとは驚きました。
現場責任者も作業者もそのような情報はなかったでしょうから、何の
疑いもなく梁の上で作業したのでしょう。
 先日、大阪万博の建設費が当初の1250億円から倍近い2300億円にな
るという報道もありました。建設業界では資材不足・資材高騰が大き
く影響しています。大阪万博では資材高騰によるコスト増が認められ
ても民間では値上げが厳しい(できない)ので、同様の設計変更など
このような問題も各地で起こりえます。


2023年10月7日記(個人事業主の労災)
 
(ニュース記事引用)
  ネット通販大手「アマゾンジャパン」の商品配達を運送会社から
 委託され、配達中にけがをした個人事業主の60歳代男性が、横須賀
 労働基準監督署から労災認定を受けていたことがわかった。個人事
 業主は原則、労災の対象外だが、配達の実態などから運送会社側の
 指示で働く「労働者」に当たると判断された。認定は9月26日付。
 神奈川県横須賀市に住む男性は2019年、アマゾンの配送を担う運送
 会社と業務委託契約を締結。昨年9月、アマゾンの商品を配達中に
 階段から落下して腰椎を圧迫骨折する重傷を負った。男性は約2か
 月間、休業したが、個人事業主は、労災保険に自ら加入していなけ
 れば休業補償を受けられないため、収入が大きく減ったという。
 男性は、アプリで配送先などの指示を受け、1日100件以上の配達を
 こなし、運送会社側から出勤日や始業時間などについても指定され
 ていた。昨年11月、「労働者と同様に労災が認められるべきだ」と
 して労災を申請。労基署は、男性の働き方から、企業に雇用された
 「労働者」と判断し、50日間の休業補償についても認めたという。
                    (引用おわり)
 個人事業主のケガが労災として認められたということですが、貨物
運送の場合は労災保険の特別加入が認められる業種であり、特別加入
していれば補償が受けられたはずであり、自ら加入しないことを選択
したことにより雇用労働者と同じ補償を行うことに疑問を感じます。 
 ちなみに、私のような安全コンサルタントは労災の特別加入が認め
られない業種なので、日本フルハップに加入しています。

                     
  ご安全に!


2023年9月30日記(右利き・左利き)
 卓球で早田ひなという選手を知っていると思います。パリオリンピ
ックの代表選考ポイントがダントツの1番です。早田選手は左手にラ
ケットを持ちますが、右利きだそうです。東京オリンピックで金メダ
ルをとった水谷隼選手も右利きだけど、左手にラケットを持ちます。
 利き手と反対側でラケットを持つなんてすごい・不思議という感じ
です。
 さて、日本ではどのくらいの人が左利きなのかネットで調べてみる
と約11%ということです。職場で左利きの方がやりやすい作業とか、
左利きでは作業しにくいなどあるでしょうか。多くの場合、右利きを
想定した作業レイアウトになっているのではないでしょうか。組立作
業の場合は、毎日繰り返し作業を行うので、左利きであっても慣れる
のかもしれません。また、左利きだから作業しにくいと思っても言い
だしにくい場合もあるでしょう。早く・正確に・安全に作業するため
には、個人個人の特性にあった作業を考えるべきだと思います。
 たとえば、ハサミを使う作業の場合は、左手用のハサミを準備する
などの配慮が必要だと考えます。


2023年9月30日記(東北サファリパークの事故) 
 9月28日、東北サファリパーク(福島県二本松市)で飼育員がライ
オンに襲われて死亡する事故がありました。
 猛獣に襲われる事故で、最近では、2022年1月に那須サファリパー
クでベンガルトラに襲われる事故がありました。
 今回の事故では、餌を与える時に、檻の扉が開いていたようです。
 なぜ、事故は繰り返されるのでしょう。
 飼育員は危険を十二分に理解していたはずです。ライオンの出入り
口と飼育員の出入り口の扉が同時に開いていたことが原因と考えられ
ます。飼育員はまさか、檻の扉を閉め忘れているとは思わなかったで
しょう。単純なミスではありますが、人間のミスを完全に防ぐことは
できません。たとえ二人で行っても、二人が同時に見落とす可能性は
ゼロにはなりません。指差し呼称してもミスはゼロにはなりません。
 檻の扉のロックができていない時やロックが不完全な場合には警報
が鳴る仕組みも有効だと思います。
 もし、安全装置を付けるとしたら、同時に2つ以上の扉が開けられ
ないシステムが必要となります。しかし、安全装置を付けたとしても
ライオンの巨体が当たれば簡単に故障や誤作動するでしょう。事故を
防ぐためには、複数の安全装置が必要となりますが、これも、複数の
安全装置が同時に故障する可能性はゼロではありません。難しい安全
対策になりますが、ぜひ対策していただきたいと思います。

                       
ご安全に!

2023年9月23日記(東京駅前 鉄骨落下)
 9月19日、東京駅前の建設現場で鉄骨の梁が落下し、2人死亡、3人
が負傷する事故がありました。最初に報道されたのは、「つり上げた
鉄骨の上に5人が乗っていた」ということで、報道のイラストでは空
中につり上げた状態の鉄骨に5人が立っている状態でした。つり荷の
下は落下の危険があるから立入禁止なのに、そのつり上げた鉄骨の上
に人が立つなんて「信じられない・ありえない」と驚きとともに呆れ
ました。しかし、この第一報は間違いとわかり、鉄骨の柱に固定した
のちに、親綱に安全帯をかけて、作業者が鉄骨の上に立ち、ワイヤロ
ープを外す時に鉄骨が外れて落下したようです。
 そうなると、原因は、鉄骨の固定が不十分な状態で、ワイヤロープ
を外したのか、ワイヤロープが外されていない状態でクレーンを上げ
たのでボルトが破断して落下したことなどが考えられます。
 ある報道では落下した鉄骨は柱となる鉄骨に仮固定の段階だったと
ありました。クレーンは次の作業があるため、鉄骨の固定が不十分な
状態のまま、次の作業に移るために、ワイヤーを外したのでしょう。
鉄骨の重量は15トンもあるので、固定ボルトの本数が少なければ容易
に破断するでしょう。
 この事故の背景には納期に追われ、作業を急ぐために、確認が不十
分なまま、次の作業に移行しようとしたのが原因ではないかと推測し
ます。


2023年9月23日記(停止表示板)
 某雑誌に執筆している記事で「高速道路で、故障等が発生して、走
行不能になった時の措置」がテーマでした。簡単に説明すると、動く
場合は、ハザードを点灯させながら路肩に寄せて、後方に停止表示板
を取付けることです。(停止表示板とは三角形の形をして、光を反射
する構造の物で、1辺の長さは50cm以上の決まりがあります)
 みなさんの車には停止表示板は積載されていますか?
 備え付けていない人はかなり多いと思います。
 常時積載の義務はないのですが、高速道路で止まった際に停止表示
板を設置しなければ「故障車両表示義務違反」となります。
 プライベートの車両や社用車に停止表示板を搭載しているか確認し
てください。おそらく、車両購入時には付いていないと思います。ま
た、車をリースするときにも確認してください。
 発炎筒はあると思いますが、発炎筒だけでは不十分です。ちなみに
私の車には、停止表示板もあるし、緊急時のために、LED警告灯を
3個備え付けています(マグネットでボディに取り付けられるもの)


2023年9月23日記(棺内のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意)
 消費者庁のサイトに気になる情報がありました。
 棺(ひつぎ)を覗き込むと危険ということです。ドライアイスが入
っている棺に覗き込むと、中は二酸化炭素濃度が30%を超えるので危
険だというのです。二酸化炭素は比重が重いので、棺のふたを解放し
た状態でも危険な濃度になっているということです。
 詳細は消費者庁のサイトでご確認ください
 
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_071/
                       ご安全に!

2023年9月16日記(思い込み)
 9月9日、岡山県津山市にある病院駐車場の車内に2歳の男児が取り
残され、死亡(熱中症)する事件があった。祖母が朝、保育園に送り
届けてから病院に出勤する予定だったが、保育園に送ることを失念し
たことが原因だった。祖母は仕事が終わって、帰宅する際に、車内に
残された孫に気が付いたということです。
 残念な事件ですが、本来は防げたはずの事件です。昨年、大阪でも
保育所に預け忘れて車内に取り残してしまう事件があり、保育園では
出欠の連絡もなく、登園しない場合は、必ず連絡を取ることになって
いましたが、家族と一緒に自宅に居ると思い込んで連絡を取らなかっ
たようです。
 保育園などの送迎バスには置き去り防止装置の設置が義務化されて
いますが、一般家庭の車に設置するというのは難しいと思う。チャイ
ルドシートの外し方、クラクションの鳴らし方を教えるしか対策はで
きないでしょう。


2023年9月16日記(コロナ感染拡大)
 15日にコロナ感染状況の発表がありました。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00438.html
 以前の報告とは違い、定点報告になりますが、直近では「20」を超
えています。定点報告は以前からインフルエンザで行われていますが
「10」を超えると注意報レベルです。
 コロナでは新たな変異株「エリス」が増えており、報道では「第9
波」と言われています。ご注意ください。
 また、インフルエンザでは「4」を超えており、早くも流行といって
いい状態です。
 https://www.mhlw.go.jp/content/001146431.pdf
 街中を見るとマスクをしている人はとても少なくなりました。コロ
ナ禍のときには、商店の入口に消毒液が置かれていましたが、その数
はかなり減っています。

2023年9月16日記(金属アーク溶接限定技能講習)
 今年から追加された「金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習」
の採点基準の通達がありました。
 https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230912K0010.pdf
 その採点は4科目あり、合計100点満点として、各科目全てが40%以
上あり、合計得点が60点以上ということです。
 この合格基準は緩いと思います。例えば法令が40%正解でも合計得
点が60点以上であれば合格となります。これは、法令問題の半分以上
間違って理解していても合格なのです。
 この採点基準は金属アーク溶接に限ったものではありません。他の
技能講習でも同様です。
 事業所としては、筆記試験に合格して、修了証を持っていても、理
解が不十分な者が居ることを想定していただきたいと思います。特に
アーク溶接(ヒューム)については、作業方法に問題があってもすぐ
に健康影響が出ないため、注意が必要です。
                       
ご安全に!

2023年9月9日記(地震対策)
 過日、地震対策についての依頼を受けました。「建物が古く、耐震
性能が劣る危険な建物で事業を継続している。建て替えの検討は進め
ているが、まだ、実現の計画は立てられない。人命を守るための対策
について指導を受けたい」ということです。
 ポイントは3つです
 ①耐震性能は低くても倒壊の可能性を下げる
 ②人命を守るスムーズな避難
 ③教育と訓練
 一つ目の倒壊を防ぐことは現段階では不可能ですが、可能性を下げ
ることは可能です。この建物は2階がありますが、現在は2階は稼働
しておらず、物置状態です。倒壊を防ぐには建物の重心を下げる必要
があります。2階に保管している物を全て撤去すれば建物の重心を下
げることができ、倒壊の可能性は下げることができます。
 二つ目の対策としては、まず第一に不要物を無くすことです。この
工場では壁に物品を固定していますが、地震が発生すれば、これらは
落ちてくるでしょう。そして避難路を塞いでしまいます。1階の作業
場にも、古く使用されていないような溶接機などが多数あります。溶
接機にはキャスターが付いており、地震時には動いて避難の障害にな
ります。そして、避難通路(方向)を明示すること。
 三つ目が一番重要です。従業員に対し、地震発生時には倒壊の可能
性があることを周知する。この工場の一番危険なものは建物の倒壊、
次は天井クレーンの落下、天井の落下や水銀灯の落下があります。
 この工場では火災に対しての防災訓練(避難訓練)は実施していま
す。火災の避難訓練では、火元を確認し、避難指示を行うのですが、
地震を想定した避難訓練は実施されていないため、緊急地震速報が発
報した場合や、揺れが発生した場合には、避難指示など受けている余
裕はありません。この工場では緊急地震速報の全館放送設備は整って
いますが、従業員にその音を聞かせたことがないため、もし、緊急地
震速報が鳴っても、瞬時に行動できないでしょう。緊急地震速報は、
「地震発生まであと〇秒」とアナウンスできるものです。そのカウン
トダウンを聞いて、自ら避難行動をしなければなりません。
 作業者はいつも同じ作業をしているとは限りません。火災想定時の
避難訓練は1年に1回でいいかもしれませんが、地震を想定した避難
訓練はできるだけ多く実施をしましょう。そして、実施後、発報時の
作業場所や作業内容、発報3秒後の状況、発報10秒後の状況などを
各自に書かせ、その行動について検討し、改善を考えさせましょう。
 また、緊急時の行動も決めておきましょう。たとえばクレーンで荷
を吊り上げているときに地震が発生したらどうするか? この工場で
は1トンを超える製品があります。吊り上げたまま避難すると、荷が
揺れて危険な状態になるだけでなく、クレーン自体が落下する可能性
があります。また、地下ピット内での作業や大型製品の上部で作業す
ることもあります。どのような作業であっても適切な初期行動がとれ
るように指導しましょう。


2023年9月9日記(テールゲートリフター)
 トラックの後ろにリフトがついた車両(テールゲートリフター)を
見ることがあると思います。
 このテールゲートリフターは一人でも重量物の積み降ろしが可能に
なり効率がよいので、増加しています。しかし、効率がよい半面、労
働災害が増加しています、それも、重量物の下敷きになるなど致命的
な災害が増えています。
 そのため、テールゲートリフターを使った作業が特別教育の対象と
なりました(令和6年2月1日施行)。
 街中でも良く見かけますが、今まで正しい操作方法を実施している
ところは見たことがありません。それは、荷物をリフトアップすると
きに、人も一緒にリフトアップしているのです。これは間違った操作
方法です。このリフターは人を上げるようなエレベーターではありま
せん。荷物専用のリフトであり人を同時に昇降するものではありませ
ん。
 正しく使う方法は、リフト操作者は地上または、荷台の上で操作し
決してリフトの上で操作してはなりません。
 私は、特別教育を実施するために、現在、教育資料の作成中です。
 ほぼ全員が間違った操作をしている状況から正しい操作を教えるの
は非常に難しい問題です。
 例えて言えば、エスカレーターで歩いている人に対して、エスカレ
ーターは立ち止まって利用することを徹底することと同じぐらい難し
いと思います(指導することは簡単だが、実行させることは困難)。
 死亡事故例をたくさん説明して、危険性を理解していただきたいと
考えています。

                       ご安全に!


2023年9月2日記(カギをかけたのに・・・)
 ある会社の現場巡視で経験(目撃)したことをお話します。
 防護柵のあるが、扉を勝手に開けて生産設備の可動域に作業者が侵
入する危険があるため扉にチェーン(チェーンは扉の取っ手部分と防
護柵をつないでいます)をかけ、南京錠で侵入禁止にしました。南京
錠のカギは工場長が保管しています。
 現場を確認すると、扉を開けて作業者が中に入っています。どうや
って侵入したのだろうと、よく見ると、チェーンのつなぎ目にカラビ
ナを使用しており、作業者はカラビナのロックを回して、チェーンを
外していたのです、
  カラビナはこのようなものです
   https://www.cainz.com/g/4989999149968.html
 作業者は柵内から出ると、カラビナを元通りに締めなおしていまし
た。工場長に報告すると、「まさか・・・そんなことをするとは」と
呆れていました。
 作業者は思わぬ行為をするものだと、改めて感じました。
 カラビナを使ったことも間違いですが、教育指導ができていなかっ
たこと。中に入るのはどんな時で、それはなぜ発生するかの検証がで
きていなかったようです。
 対策することは重要ですが、なぜ可動域に入るか、どんな状況の時
に入るのか原因とその行為の背景を考えなければなりません。作業者
は、その都度、工場長に状況を説明してカギを受け取るのは面倒だと
考えたようです。

                       ご安全に!

2023年8月20日記(パチンコ店 駐車場火災)
 8月20日、厚木市のパチンコ店(マルハン厚木北店)の駐車場で火
災が発生し、152台の車両が燃える事故がありました(人的被害はな
い)。
https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/90501385d42a0effa155564251aa86e41e626bb8.pdf
 出火した車両は特定でき、その車両が駐車してから約15分後にエン
ジンの下から出火したようですが、原因は特定できていません。この
駐車場は周囲に壁がない、開放式の駐車場であり、車どうしが接近し
た状態だったため、火のまわりが早かったようです。
 私の以前の車ですが、エンジンルームから何かが滴り落ちてくるこ
とがありました。その量はごくわずかだったこともあり、数かけ月後
に、車検を受けるからと思ってそのまま乗り続けました。車検に持っ
ていくと、エンジンブロックにヒビが入っているということで、修理
を断念して、車を買い替えました。私の車は出火することはなかった
のですが、今回の火災事故はそのような事が原因ではないかと感じま
す。
 パチンコ店では火災警報が鳴り、すぐに2名が初期消火に向かった
そうですが、駐車場に煙が充満し、消火活動はできませんでした。
 この場合、補償はどうなるのか調べてました。パチンコ店には補償
の義務はなく、個人の車両保険で補償が受けられるということです。
しかし、車両保険では、車両の時価となるため、新車に買い替えるに
は車両保険だけでは難しいでしょう。さらに、今は新車の即納が難し
い現状です。


2023年8月20日記(全国労働衛生週間)
 
9月1日から全国労働衛生週間(準備月間)が始まります。
 今年のスローガンは
  「目指そうよ二刀流 こころとからだの健康職場」
 「こころ」と「からだ」を分けことに違和感を感じますが、エンゼ
ルスの大谷翔平選手の活躍でこのようなスローガンに決まったようで
す。
 従来、化学物質取扱い作業の健康診断は、法令に基づき実施されて
いましたが、法改正により、化学物質のリスクアセスメント結果に基
づいて健康診断が必要となりました。
 また、平成27年からストレスチェックの実施が義務付けられました
が、その効果はあまり感じません。ストレスチェックだけでは問題解
決にはなりません。上司と部下のコミュニケーション等により、問題
点の早期発見と早期対策が必要です。この数年間はコロナのためにコ
ミュニケーションが取りにくかったと思いますが、これからは今まで
以上に、不平不満を聴く機会を設け、問題点を見つけ、対策につなげ
ていただきたいと思います。

                       
ご安全に!

2023年8月19日記(踏み抜き)
 書類送検事例を紹介します
 「踏み抜きによる墜落防止措置を講じていなかった疑い」
 
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/content/contents/001542392.pdf
 この例では明り取り窓のガラスを踏み抜いたということです。ガラ
スに人が乗るということは普通には考えにくいことですね。ガラスを
踏まないように周りのサッシを踏んでいたのが、作業に夢中になり、
足元の状態を確認せずに無意識に乗ってしまったのか、バランスを崩
して一歩足を横に出して踏んでしまったのか、強度のあるガラスだか
ら人間が乗っても大丈夫だと聞いていたが、二人乗ったから割れたの
か、いろんなことが考えられます。
 このような踏み抜きの事故ではスレート屋根が関係するものが多く
発生しています。スレート屋根は軽くて丈夫なので、工場でよく見か
けます。スレート屋根は丈夫だけど、人間の体重を支えるような強度
はありません。
 対策として、労働安全衛生規則第524条では幅30cm以上の歩み板を
設けることが必要です。歩み板を設けることにより、人間の体重を分
散(荷重が一点に集中しない)して防ぐ必要があります。

2023年8月19日記(テールゲートリフター特別教育)
 貨物自動車の後ろに昇降台が付いているものを見かけることがある
と思います(一般にテールゲートリフターと呼ばれる)。
 重い荷物を人力で上げることもなく、作業性が良くなり、省力化に
もなっています。しかし、テールゲートリフターの作業中に致命傷が
多発していることから特別教育が義務付けられることになりました。
(2024年2月1日義務化のため、2024年1月31日までに受講しなければ
ならない)
 社内で特別教育が難しい場合は、陸上貨物運送事業労働災害防止協
会などで受けることができます(ただし、学科教育のみ)。
 陸上貨物運送事業労働災害防止協会 大阪府支部の場合
 https://rikusaibo-osaka.org/news/2023/08/post-27.html
また、当社では出張講習を行います。必要があれば連絡ください。

                       
ご安全に!

2023年8月12日記(JR車両が電柱に激突)
 8月5日午後9時25分ごろ、神奈川県鎌倉市のJR大船駅近くで、小
田原発横浜行きの東海道線上り普通電車が電柱に衝突した事故があり
ました。原因は架線を支える電柱が線路側に傾いていたようです。報
道の中には、架線に接触して、電柱が引っ張られたというものもあり
ました。
 詳しい原因は不明ですが、事故後のJRの対応が気になります。当
日は花火大会のため、車内は混雑しているうえに、停電のため、冷房
は止まっています。9時を過ぎたとはいえ、相当暑い状況で熱中症の
危険がある中で乗客は1時間も閉じ込められました。もし、この事故
が日中だったら、熱中症で亡くなる乗客があっても不思議ではありま
せん。
 車体の先頭が大破しているのですから、何時間待っても動かせるは
ずはありません。すぐに乗客を降ろすべきです。
 JRは“復旧最優先”で乗客は後回しという感じです。このような
ことは過去に何度も発生しています。そのたびに事故後の会見では、
お客様に線路を歩かせることが危険だと判断したといいながら、結局
は線路を歩かせる結果になっています。
 しかし、すぐに乗客を降ろすべきといっても、豪雨の中や、氷点下
の寒風の中では降ろすべきではありません。 
 緊急事態の対処手順を定め、スムーズな避難誘導をしていただきた
いものです。
 15日には台風が上陸する可能性が高くなりました。台風ですから予
測できるトラブルです。車内への閉じ込めなどが発生しないようにし
ていただきたいと思います。

                      
 ご安全に!

2023年8月5日記(メンタルヘルス不調)
 
メンタルヘルス不調になる方は多い。どのくらい多いのか。8月4日
に厚生労働省が調査結果を発表しました。
 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r04-46-50b.html
 過去1年間(令和3年11月1日から令和4年10月31日までの期間)にメ
ンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した
労働者がいた事業所の割合は13.3%[令和3年調査10.1%]となって
います。
 このうち、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6
%[同8.8%]、退職した労働者がいた事業所の割合は5.9%[同4.1
%]となっています。
 また、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者の
割合は0.6%[同0、5%]、退職した労働者の割合は0.2%[同O、2%]
となっています。
 労働者の割合が0.6%ということは166人に1人の割合になります。
令和3年は0.5%ですから200人に1人となり、悪化していることが分か
ります。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
 この資料の「第1表」には業種別の統計もありますので、メンタル
ヘルス不調者が業界の平均より高いのか低いのか確認していただきた
いと思います。
 約200人に1人の割合で1ヶ月以上の休業者が発生しているのは非常
に多いと思います。特に情報通信業では約70人に1人の割合で発生し
ています。
 メンタルヘルス対策として、ストレスチェックの導入が進んでいま
すが、個人の結果については、会社が把握できないことがネックにな
っているようです。対策としてストレスチェックだけで終わらず、教
育など他の対策が必要です。


2023年8月5日記(整備工場でバスの下敷き)
 ニュース記事引用
  7月24日、和歌山市の自動車整備工場で26歳の男性作業員が大型
  バスの下敷きになり死亡しました。「男性が大型バスの前輪と車
  体の間に挟まれている」と関係者から消防に通報がありました。
  警察によると、男性作業員は、バスの右前方のタイヤ付近に挟ま
  れていて、意識不明の重体で病院に搬送され、その後死亡しまし
  た。当時、バスのタイヤ周りの点検作業が行われていて、男性作
  業員は、台車の上に仰向けになって車体の下にもぐり込んで作業
  をしていたとみられています。事故があったバスは、定員62人の
  大型で、車重は約16トンあり、同僚は「ガシャンと音がしたので
  見たら、挟まれていた」ということです。(引用終わり)
 それ以降新しい情報がなく、原因等はわかりません。ジャッキアッ
プして、架台で支えての作業だと想像しますが、その架台が倒れたの
か、架台が破損したのではないでしょうか。耐荷重の小さい架台を使
ったのか、変形して強度が下がったものを使用したなども考えられま
す。
 私がお客様の現場を巡視すると、脚立の踏み面や脚部が変形してい
るものを見ることがあります。変形していても使用できるのでそのま
ま使用しています。
 整備工場の事故では変形したり金属疲労で強度(耐荷重)が下がっ
たのではないでしょうか。架台のような単純な構造のものは、使用前
点検もあまり実施されないのかもしれません。しかし、大型バスの下
で作業する場合は、命を守る架台です。使用する前にはしっかり点検
して、少しでも不安を感じるものは使用してはなりません。

                       
ご安全に!

2023年7月29日記(暑い ポーラ 熱中症リスク判定)
 7月27日、私の住む枚方市で今年の最高気温39.8℃になりました。
とても暑い日が続いています。先日、初めて、マスク無しで安全講演
をさせていただきました。マスクを外した講演は4年ぶりぐらいです。
 さて、化粧品で有名なポーラが熱中症リスク判定の実験を始めまし
た。AIを活用した技術で、体調不良・朝食抜き・運動後疲労など生体
内リスク要因を顔画像から割り出し、外気温・湿度など外的要因も統
合し熱中症リスクを判定。結果は色やアラート音で作業者へ伝達しま
す。判定は「危険」「警戒」「注意」の3段階です。現場監督は、PC
やスマートフォンで人員全体のリスク判定データを確認できます。
 http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20230626_AI.pdf 
 まだ、実験段階ですが、来年の実用化を目指しているようです。


2023年7月29日記(Eラーニング SAT)
 2024年4月1日から化学物質管理者および保護具着用管理責任者の選
任が義務付けられます(化学物質リスクアセスメントを製造および取
扱いを行う事業場)。
 さまざまな講習機関が講習会を開催していますが、受講希望者が多
く、申し込みを行うのが困難なようです。
 Eラーニングを行う SAT株式会社では、化学物質管理者(取扱
事業場対象)講習および保護具着用管理責任者講習を開始しています
オンラインなので好きな時間に受講することができます。
 https://www.sat-co.info/ec/hogogu
 https://www.sat-co.info/ec/kagakukanriT
 また、化学物質管理者(製造事業場対象)講習も近日開始予定とな
っています。いずれも私、中川が講師をしています。
 ただし、保護具着用管理責任者講習は実技教育が必要となりますの
で、実技教育を自社で行う必要がありますが、社内で保護具の着用等
について、衛生管理者や作業主任者などが教育を行えば問題ありませ
ん。
 また、SATではアーク溶接特別教育や安全管理者選任時研修など
安全衛生で必要な講習を開催しています。
 https://www.sat-co.info/

                       ご安全に!

2023年7月22日記(ラインテープ “目がテン”)
 日本テレビの番組に「目がテン」があります。過日放送されたテー
マは「粘着テープ」でした。その中に気になったのは、最大の強度を
発揮できるのは24時間経過後というものです。
 職場ではさまざまなところで粘着テープを使います。床面へのライ
ンテープや浮き上がったところへの補修などで使われています。
 「床にラインテープを張ったけどすぐ剥がれる」という悩みはあり
ませんか。貼る前にきれいに汚れを拭き取って、テープを貼っていま
すか、また、貼ったところをすぐに踏んだりしていませんか?
 粘着テープは24時間後に最大の強度になることを考えると、塗装し
たあとのように「テープ貼りたて」とするべきでしょう。テープを貼
るのは休みの前の日の終業時間前がよいでしょう。
 また、ラインテープの重ね貼りを見かけることがあります。テープ
の上にテープを貼ったのでは剥がれるのは当然でしょう。
 お客様の事業所の巡視をしていると、ラインテープが剥がれても放
置されているとか、不要なラインテープが残っているなど床のライン
テープで職場のイメージは大きく異なると思います。
 5S活動のプラスαとして、SHOW(見せる)活動はいかがでし
ょうか。職場をきれいに見せるためにはラインテープを整備するのも
いいと考えます。


2023年7月22日記(動作の反動・無理な動作)
 6月までの労働災害の発生状況が公表されました。
 
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html
 この中で事故の型別をみると、「動作の反動・無理な動作」が増加
しています(死傷災害の約15%を占め、「転倒」の次に多い)。動作
の反動・無理な動作とは、重たい物を持ち上げてぎっくり腰になった
り、腰をひねったときに筋を違える。などの他、回転するような椅子
の上に立ち上がったり、ローラーコンベアの上を歩いた時に転倒する
ような場合や、離れた場所に飛び移ったりするような無理な動作があ
ります。
 ちなみに10年前の死傷災害の事故の型別を見ると、1番が転倒、2番
が墜落・転落、3番が挟まれ・巻き込まれ、4番が動作の反動・無理な
動作となっていましたが。現在では、挟まれ・巻き込まれや、墜落・
転落よりも多くなっています。
 その要因は労働者の高齢化が大きく影響していると思われます。
 職場の巡視をするときのポイントとして、「~にくい・~やすい」
を探せと言われます。「~にくい」とは、判りにくい。見にくい。聞
こえにくい。作業がしにくい。歩きにくい。持ちにくい。というもの
で、表現するときに「~にくい」という言葉を使う場所や作業をいい
ます。「~やすい」は、間違いやすい。見落としやすい。忘れやすい。
滑りやすい。つまづきやすい。落としやすい。危険な場所に触れやす
い。というもので、表現するときに「~にくい」という言葉を使う場
所や作業と感じる場所や作業を探せ。ということです。
 仕事だから仕方ないと考えずに、そのような場所や作業を探して、
対策することにより、高齢労働者の災害を未然に防ぐことにつながり
ます。高齢労働者が安全に作業ができるということは、全ての年代の
労働者も安全に作業ができ、さらに作業が楽になるはずです。

 
2023年7月22日記(自転車ヘルメット)
 4月に自転車のヘルメット着用が努力義務化されましたが、あまり
着用されていません。企業では自転車通勤者に着用の呼びかけはして
いるようですが、まだ義務化しているところは少ないようです。
 自宅周辺をみると、いまだに雨の日の傘さし運転が横行しています
傘さし運転は禁止されていますが、守られていません。禁止されてい
る行為を続けているレベルですので、努力義務(ヘルメット着用)を
守らせるのは無理な感じがします。
 過日、工事で使うヘルメットを着用して自転車運転をしている人を
見かけました。ふと、「工事用のヘルメットで自転車を運転していい
のか?」と考えました。
 自転車用のヘルメットの規格には「SGマーク(製品安全協会)」
と「JCF(日本自転車競技連盟)」があります。工事などのヘルメ
ットは厚生労働省の「保護具の規格」ですから別のものとなります。
 しかし、工場の構内で自転車に乗る場合は、ヘルメットを使い分け
る必要なないかと思います(工場内では無謀な運転をする自動車はな
いと思うため)。

                       
ご安全に!

2023年7月15日記(移動式クレーンで伐採作業)
 ニュース引用
  クレーンの先につけた籠に人を乗せて作業させた労働安全衛生法
  違反の疑いで佐世保市の造園土木業者が書類送検されました。
  労働安全衛生法違反の疑いで書類送検された佐世保市の造園土木
  業者は、おととし11月、樹木の伐採作業中、移動式クレーンの先
  に取り付けたかごに従業員を乗せて作業させたとされています。
  従業員は、高さおよそ16mの場所でチェーンソーを使って伐採作
  業をしていましたが、かごから落下し死亡したということです。
                  (引用終わり)
 クレーンでゴンドラのような物を吊り下げて、樹木の伐採作業をし
たようです。なぜ、高所作業車を使用しなかったのでしょう。また、
転落して死亡したということですから安全帯も付けていなかったよう
です。高所作業車も移動式クレーンも手配すると費用がかかるので、
移動式クレーンを高所作業車に転用しようとしたと思います。


2023年7月15日記(ウォーターキャノン)
 ニュース引用
  7月14日午前、大阪市此花区の舞洲スポーツアイランド空の広場
  で、音楽イベントの設営作業に当たっていた埼玉県内の自営業の
  男性(40)が倒れているのを別のスタッフが見つけ、119番した。
  男性はイベントで使われる水の噴射装置(高さ約1.6m、筒の長
  さ約1.5m、口径約8cmをのぞき込んでいて、誤って発射された
  大量の水が頭部を直撃したとみられる。大阪府警が業務上過失致
  死容疑を視野に調べている。
  約40台の噴射装置「ウオーターキャノン」で水を観客に浴びせな
  がら実施する音楽イベント「WATERBOMB」が15、16日に予定され
  ており、14日は約200人のスタッフがリハーサルをしていた。
  死亡した男性は噴射装置の近くに倒れていた。装置からは時速約
  120キロで大量の水の塊が発射可能で、別のスタッフが起動装置
  の電源を入れるなどしていたときに、突然複数の噴射装置から水
  が発射されたという。このスタッフは「発射ボタンを押していな
  いのに水が出た」と話しているという。(引用終わり)
 ウォーターキャノンとは殺傷能力のある大きな水鉄砲のようです。
高圧洗浄機のような棒状注水とは違い、水の塊を放出するようです。
どのような機械なのか見当がつかないので、調べてみると、窒素ガス
を圧縮して飛ばすようです。
 http://omni-w.com/
 このサイトにデモンストレーションの映像がありますが、窒素ボン
ベを寝かせた状態で使用しています。ボンベを寝かせて使用するのは
間違った使用方法です。(ボンベを寝かせて使用すると、ガスではな
く、液化状態で放出されるので危険です)
 (この会社と舞洲の事故の関係は不明です。舞洲のニュース映像に
は窒素ガスボンベのようなものは見えませんでした)
 ニュース映像を見るとウォーターキャノンは思ったより小型です。
想定以上の圧力が加わった場合、破壊(破裂)することはないのでし
ょうか。とても不安を感じます。
 音楽イベントの事故といえば、2015年に台湾で発生したカラーパウ
ダーの粉じん爆発を思い出します。
 https://news.yahoo.co.jp/articles/ebb3358c678cbd91e360c181f0d482f742377842
 このようなイベントでは観客の近くにウォーターキャノンを設置す
るので、誤発射などのトラブルを無くすことはできないでしょう。次
の事故が発生する前に止めた方がよいと思います。
 ちなみに、音楽と大砲の組み合わせといえば、チャイコフスキーの
「序曲1812年」ですね。1812年はナポレオンがロシアに遠征した年で
す。お時間があればクラシック音楽と大砲の爆音をお楽しみください
 https://orchestra-music.com/1812-canon

                       ご安全に!

2023年7月8日記(国道1号バイパス橋桁落下事故)
 7月6日深夜、国道1号バイパスの橋桁が落下し、2名が死亡する事故
がありました。
 橋桁落下事故では1991年の広島新交通システムの橋桁落下事故があ
りました。この時には、道路を通行止めにしていなかったので、停車
中の乗用車の上に落下し、9人もの人が犠牲になりました。
 最近では、2016年、神戸市での新名神高速道路の橋桁が落下しまし
た。この橋桁は長さが120m、重量は1350トンもありました。
 今回の事故の原因は明らかになっていませんが、移動中の橋桁の上
に作業員が乗っていたという報道もありました。固定できていない橋
に乗って作業することに問題があると感じます。
 もし、固定できていないところに人が乗って、それが傾いたときに
は、バランスを崩した人が橋桁より先に落ちます。その上に橋桁が落
ちてくるので致命的な事故になります。


2023年7月8日記(フォークリフトで荷が倒れた)
 6月27日、群馬県のプラスチック工場で成形機械が倒れ、壁に挟ま
れて死亡する事故がありました。
 1.5トンもある成形機械をフォークリフトで運ぶ作業ですが、その
機械をが倒れないように4人の作業者が手で押さえていたということ
です。ところが機械が倒れました。1.5トンもの機械は支えることが
できず、壁と機械に挟まれました。
 手で支えていたということは、機械の揺れや転倒を想定していたの
でしょう。想定していたのなら、機械を固定するべきなのです。
 また、この事故ではフォークで機械を上げて運んだのではなく、フ
ォークリフトの後部にあるピンで機械を載せた台車を引っ張っていま
した。フォークリフトで牽引してはいけません。これはフォークリフ
トの用途外使用となります。

                       
ご安全に!

2023年7月1日記(電子レンジの暴走)
 我が家の電子レンジが古くなったので、新しい電子レンジを購入し
ました。
 購入して2日目、2分間の加熱し、調理が終わったので、扉を開けま
したがレンジが止まりません。“とりけし”ボタンを押しても止まり
ません。本当にびっくりしました。電子レンジは、マグネトロンから
電磁波が出ています。扉を開けた状態で電磁波が放射されるのは非常
に危険です。
 電子レンジの扉はインターロック構造になっていると思っていまし
たが、必ずしもそうなっていないようです。または、インターロック
構造になっているけど、b接点ではなくa接点になっていたのかもし
れません。
 a接点とはノーマルオープン(NO)接点と呼ぶこともあり、接点
の導通不良により危険側に故障することがありますので、信頼性(安
全性)が求められる場合はb接点(ノーマルクローズ接点)にしなけ
ればなりません。
 nite(製品評価技術基盤機構)によると電子レンジの事故は5年で
157件あるということで、多くは使用者の誤使用ということですが、
今回のようなこともあるのでしょう。
 ちなみに、電子レンジは返品して、別のメーカーのレンジを買うこ
とにしました。
 電化製品は使えるからといって壊れるまで使っていいものでしょう
か。動かなくなるという故障は問題ありませんが、発火するとか、暴
走するという故障は人命に関わることがあります。
 以前、安全指導をしている会社で、製品を冷やすために家庭用の扇
風機を数台並べて最大風量で24時間連続使用しているところがありま
した。私は「好ましくない」と指導しました。高負荷で24時間連続使
用した場合の信頼性を検討するべきです。


2023年7月1日記(北海道 バスとトラック衝突事故)
 6月18日、北海道でバスとトラックの衝突事故があり、トラック運
転手とバスの運転手と乗客3人が死亡しました。
 バスの後ろを走っていた車のドライブレコーダーからトラックが車
線からはみ出したことと、トラックのブレーキ痕がないこと、トラッ
クの運転手は熱のために薬を飲んでいたことがわかりました。
 このような事故があると、バスや電車に乗る時にどの場所に座るべ
きか考えてしまいます。乗客3人は運転手の後ろに座っていました。
バスの場合は、右側後部の非常出口の近くがいいと思います。

                       ご安全に!

2023年6月24日記(アルケリス)
 先日、インテックス大阪でアルケリスを体験しました。
 “アルケリス”とは、立ち作業が楽になるものです。
 https://www.archelis.com/product-industrial/
 実際には、立っているのですが、座っている感覚になります。例え
ていうと、立っているけど、お尻を誰かに支えられている感じになり
ます。その感触には思わず笑ってしまうほど、不思議な感覚です。
 残念ながらこの私の表現力では上手く伝えられていないかもしれま
せんが、とにかく“楽”なのです。
 椅子と違って、アルケリスを装着した状態で歩くこともできるし、
立ち止まったところで少し膝を曲げると椅子に座ったように楽になり
ます。
 高齢労働者が増えている現在、1日中立って作業するのは非常に負
担だと思います。このアルケリスを装着すると、座った状態で作業で
きます。例えばプレス作業など常に立って作業していますが、座って
作業できると考えてください。製造業では終日立ち作業も多いと思い
ます。若い作業者には立ち作業は平気かもしれませんが、高齢労働者
には負担でしょう。作業環境改善として導入を検討してはいかがでし
ょうか
 気になったらデモ体験に申し込んでください。
 https://www.archelis.com/demo-contact/
 厚労省ではエイジフレンドリー補助金の募集を開始しました。この
制度を活用すれば導入しやすくなります。
 https://www.jashcon-age.or.jp/

 
2023年6月24日記(熱中症対策 ホレイベスト)
 梅雨が明ける頃から、猛暑の時期に入るでしょう。
 りょうざい屋の“ホレイベスト”を試してみました。
 https://ryozai-ya.com/
 保冷剤で身体を冷やすものは以前からありましたが、この保冷剤は
他のものより長持ちしました。職場によっては、冷却効果が長続きし
ないかもしれませんが、そのような職場では休憩なしで2時間も3時
間も連続して作業することはないでしょう。休憩の都度保冷剤を交換
すれば問題ないと思います。
 空調服も効果があるのですが、粉じんの多いところでは粉じんを吸
い込むため使えません(石綿を含有する建材の除去作業など)ので保
冷剤を使った熱中症対策が有効です。
 また、SONYのウェアブルクーラー(REON POCKET 4)も試して
みました。ベルチェ素子(電気を流すと熱を移動させる機能がある)
で冷やすものです。
 https://reonpocket.sony.co.jp/
 使ってみました。確かにペルチェ素子は冷えるのですが、身体全体
を冷やすほどの効果はありません。ただ、暑熱職場では使用に適して
いないでしょうが、通勤などでは向いていると思います。
 なお、実際に試していませんが、WORKMANの“ウィンドコア
ICE×HEATERペルチェベスト”は冷却面が広く、暑熱職場にも使える
と思います。
 https://workman.jp/shop/g/g2300035913015/
 熱中症対策には水分と塩分の補給が重要と言われますが、作業者の
身体を冷やす対策も必要です。

                       ご安全に!

2023年6月17日記(バーベキューで死亡事故 続き)
 先週にもお伝えしましたが、5月24日、福岡県のハリウッドワール
ド美容専門学校でのバーベキュー中に、炎が男子学生4人に燃え移り1
人が死亡する事故がありました。炎が小さくなったところに消毒用ア
ルコールをかけたことが原因でした。
 なぜ、このような悲惨な事故が発生する前に止めることができなか
ったのか考えていました。アルコールをかけた職員以外に被災した4
人は危険を感じなかったのでしょうか。
 ネットを見ると「愚かな行為だ」などの書き込みがありましたが、
それは「火に油を注ぐ」ということわざもありますが、燃えている炎
に油を注げば大きな火事になるというものですが、彼らは「アルコー
ルは火気厳禁」は知っていたでしょうが、「大きな炎をあげたい」と
考えていたので大きな炎が上がることを期待していたのでしょう。
 しかし、彼らは、炎が大きくなると考えていましたが、爆発的な燃
焼が起こるとは知らなかったようです。
 燃えているところに「アルコールをかけると危険」ということは知
っていても、どのような燃焼が起こるかはあまり知られていないので
はないかと思います。
 話は変わりますが、職場では「〇〇は禁止」など、作業の禁止項目
を定めています。たとえば、ボール盤を使用するときは「手袋禁止」
と表示します。しかし、なぜ禁止なのか?と問われると、答えられる
人は少ないかもしれません。
 手袋禁止というのは労働安全衛生規則第111条にあります。これは、
ビット(ドリル刃)に切粉が付くと、反射的に手を出して取り除こう
としますが、その時に、手袋が切粉に引っかかり、手袋がビットに巻
き付き、手、腕・・・と巻き込まれるためです。手袋が巻き込まれる
と人間の力では止めることができません。
 よく、質問されるのは、「加工物にエッジ部があって、素手で作業
すると危険だから手袋を認めたい」というものです。これは、加工物
をバイスに固定するまでは手袋着用で問題ありません。バイスに固定
したら、手袋を外して、ボール盤を操作しなければなりません。

                     
  ご安全に!

2023年6月10日記(2016年スキーバス転落事故)
 2016年1月15日、長野県軽井沢町の国道で「イーエスピー」(東京
都羽村市)が運行する大型バスが崖下に転落した。大学生13人と運転
手2人が死亡、26人が重軽傷を負った。バスは前日夜に東京・原宿を
出発し、長野県内のスキー場などに向かう途中でした。バスの運転手
は大型バスの経験がほとんどなく、バスのギヤ操作が上手くできず、
ニュートラルのまま、バスは曲がり角が続く峠の下り坂を時速約96キ
ロで走行し、カーブを曲がりきれなかったということです。
 6月8日に判決があり、社長に対して禁錮3年、当時の運行管理者に
禁錮4年の実刑判決となりました。
 大野洋裁判長はまず事故原因を「運転手の運転技量の不十分さが事
故に直結した」と認定しました。運行管理者は採用面接で、運転手が
入社前の約5年間、大型バスを運転していなかったことなどを認識し
ており、社長にも報告していた経緯を重視。両被告は運転手の技量不
足により事故を起こす恐れがあると予見できたと判断しました。さら
に、両被告は輸送の安全を確保すべき立場で「運転手の技量を確認し
て運行に従事させる刑法上の注意義務を怠っていたことは明らかだ」
と述べました。さらに続けて、「利益の確保を優先し、輸送の安全の
確保を軽視し続けた結果、事故を引き起こした。刑事責任は重い」と
実刑判決が相当と結論付けました。
 これはバス会社だけの問題ではありません。営業などで車を使うこ
とも多いと思います。たとえば、20年間ペーパードライバーでしたと
いう人に車の運転をさせたり、昔はフォークリフトで仕事したことが
あるけど、それ以来、何年も運転していない人にフォークリフト作業
をさせるのも同じだと思います。自動車の運転免許やフォークリフト
の技能講習修了証は、安全を保障するものではありません。運転技能
を精査したうえで作業を指示してください。


2023年6月10日記(バーベキューで死亡事故)
 5月24日、福岡県のハリウッドワールド美容専門学校でのバーベキ
ュー中に、炎が男子学生4人に燃え移り1人が死亡する事故がありまし
た。炎が小さくなったところに消毒用アルコールをかけたことが原因
でした。
 なぜ、燃えているところにアルコールをかけるのでしょう。ガソリ
ンや灯油などと同じく、燃えているところにかけるのは非常に危険で
す。
 若い方は火を起こすのが苦手なようです。無造作に炭を並べ、着火
剤などの固形燃料に頼っているからだと思います。
 報道では“火が消えかかった”ということですが、炭などの可燃物
があれば火が消えかかることはありません。消えかかるというのは酸
素(空気)が遮断されているからです。燃え上がるためには空気が必
要でその空気が流れるように炭を組み上げるのがポイントです。もし
空気が不足したら火吹き筒を使ったり、内輪で扇げばいいだけです。
 報道ではバーベキューの時にアルコールを使わないようにと注意を
促していますが、万一、着衣着火が発生したときの対応も報道してほ
しいと思います。着衣着火したときには、ストップ・ドロップアンド
ロール(SDR)です。これは、着衣着火したら、「止まって、倒れ
て、転がって」というものです。着衣着火したときに、慌てて走り出
すと空気が供給され激しく燃えてしまいます。
 万一の時のためにストップ・ドロップアンドロール(SDR)を覚
えてください。
 https://www.youtube.com/watch?v=4q2LfBYNBL0
 また、火気を使うときは消火器を準備しましょう。着衣着火の時に
は消火剤を人体に直接かけても大丈夫です。
 ちなみに、ドラム缶を2つに切ったものを使ったようですが、あれ
は、空気穴がないので適していません。使うなら空気穴を開ける必要
があります。
 また、消毒用エタノールが燃えたときには赤い炎が出ず、青い炎な
ので、屋外では燃えていることに気が付きにくい。

2023年6月10日記(授業で実験、硫化水素)
 6月8日、福岡県の中学で、生徒の約半数が病院に搬送される事故が
ありました。理科の授業で、硫黄と鉄粉を試験管内で加熱し、塩酸を
混ぜて硫化水素を発生させる実験をしていたということです。
 (同様の事故が、5月にも茨城県の中学で発生しています)
 理科の授業には必要なものかもしれませんが、換気設備が十分でな
ければ実施すべきではないと思います。
 実施するなら、第一に、硫化水素の危険性を教え、硫化水素濃度を
監視しながら、十分に換気しながら行う必要があります。
 硫化水素自殺が問題視された時期がありました。2008年のことです。
今の中学生は生まれていませんから、その報道も知らず、硫化水素の
怖さも知りません。

                       
ご安全に!

2023年6月3日記(令和4年職場における熱中症 労働災害発生状況)
 厚生労働省は令和4年の職場における熱中症による死傷災害の発生
状況を公表しました。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33275.html
 これによると、令和4年の死亡者は30人でした。これは2010年の47
人に次に多い数です。休業4日以上の死傷者は827人でした。2018年の
1178人ほどではありませんが、とても多い人数です。
 毎年、熱中症予防が叫ばれており、意識は広まっているはずですが
まだまだ多い状況です。
 近年では空調服を使用する方も増えているのですが、空調服を着て
いたら安全とは言えません。空調服は冷たい風が出るのではなく、汗
をかいたときに風を当てるので、汗が蒸発して気化熱により熱を奪う
ものですから、汗をかかないとあまり効果はないのです。また、空調
服を着た場合は、汗が乾くため、汗をかいたという自覚を感じないか
もしれません。
 さて、熱中症予防には水分(塩分を含むもの)を摂るように指導し
ていると思いますが、どのくらいの量が必要なのでしょうか。休憩時
間にコップ1杯飲んだら大丈夫と思っていませんか?
 作業の前に排尿して、水分を補給して、体重を計り、休憩の時に体
重を計れば失った水分量がわかると思います。特に重筋作業を行う場
合には試してみて欲しいと思います。
 なお、水分摂取のために緑茶を飲む方も多いでしょう。しかし、緑
茶には利尿作用があるため、熱中症防止としては、望ましくないと考
えます。
 今、多くの地域で梅雨に入りましたが、梅雨が明ける頃から急激に
気温が上昇しますのでご注意ください。

                       
ご安全に!

2023年5月27日記(令和4年労働災害発生状況)
 厚生労働省は令和4年の労働災害発生状況を公表しました。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33256.html
 
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html
 死亡災害は過去最低になった反面、休業4日以上の死傷災害は過去
20年で最大です(新型コロナ除く)。
 特に問題となるのは高齢者の災害です。労働者数は50歳未満が約6
割、50歳以上が約4割という状況で、50歳以上の労働災害は約55%を
占めています。
 職場では労働災害防止のためにリスクアセスメント活動をしている
と思います。ぜひ「作業者が高齢者だったら」ということを考慮して
リスクアセスメントをしていただきたいと思います。
 また、気になるのは、陸運業での労働災害が増加傾向にあることで
す。宅配などが増えていることも含め、従事する労働者が増えている
こともありますが、歯止めをかけ、減少させなければなりません。今
年の法改正で荷役作業でのヘルメット着用範囲が広げられました。改
正前は5トン以上の貨物自動車での荷役作業時には着用が必要ですが、
令和5年10月からは2トン以上となります。ただ、2トン未満は安全と
いうわけではありませんので、ヘルメット着用していただきたいと思
います。また、ヘルメットは災害の程度を下げる対策にすぎません。
荷台への昇降は昇降設備を設けたり、荷台の上での作業では、外側に
背を向けないように作業することが必要です(外側に背中を向けて作
業すると、後ずさりした際に転落するため)。


2023年5月27日記(UV殺菌機による災害)
 UV殺菌機による労働災害が発生し、食品製造会社と同社の取締役
が送検されました。
 https://www.rodo.co.jp/news/148811/
 紫外線(UV)による殺菌は熱を使わないために食品の賞味期限を
長くすることができるのですが、覆いなどが不十分であれば、目の障
害につながります。
 私が通う歯科医院でもコロナ対策のためにUV殺菌灯を導入しまし
た。そこでは診療時間外のみ使用しているので、どの程度の光なのか
判りませんが、紫外線で菌やウイルスを殺すのですから裸眼で見れば
障害につながるのは当たり前だと思います。
 同社ではUV殺菌機を使い始めた日での災害だったようです。新し
い機械などを導入する場合には、リスク検証しなければなりません。

                      
 ご安全に!

2023年5月20日記(解体キングダム オズの魔法使い)
 NHKの番組で「解体キングダム」をご存じでしょうか
 5月17日の放送ではアスベスト除去工事でした。アスベスト除去の
指導をしている私にはとても興味深い番組でした。アスベスト除去の
専門業者であり、勉強になりました。
 その番組の中で1939年に公開され、アカデミー賞作品になった“オ
ズの魔法使い”の話がありました。劇中で雪が降り積もるシーンがあ
るのですが、その雪はアスベストを綿状にほぐしたものでした。アス
ベストが雪の演出に使われていたとは驚きました。
 興味がある方はNHKプラスでご覧ください(配信は5月24日まで

 https://www.nhk.jp/p/ts/JM3P4YLR7K/

2023年5月20日記(品川区 クレーン車転倒で死亡事故)
 5月16日、東京都品川区でクレーン車が転倒し、車3台が下敷きにな
り、その中に居た人が死亡する事故がありました。
 クレーンが転倒した原因は、掘削用の機械を吊り下げたままクレー
ン走行したということです。クレーン車はアウトリガーを出して使用
するものなので、アウトリガーを出さない状態で吊り下げること自体
が間違っています。さらにその状態で走行したのですから、転倒する
のは当たり前だと思いました。
 しかし、ネットの書き込みを見ると、アウトリガーを地面から浮か
せた状態にしたりして吊ったまま走行することはよくあるのだそうで
す。危険性を熟知したベテランが転倒防止の“手”を打って作業して
いるのでしょうが、それを見よう見真似で行うと大きな事故につなが
ります。
 納期や作業スペースなどの制限があっても、安全第一、基本に忠実
に作業をしていただきたいと思います


2023年5月20日記(労働者死傷病報告等の電子申請を原則義務化)
 令和7年1月1日より、安全衛生法関連の報告が電子化される省令案
の答申結果が公布されました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33137.html
 対象となるのは、
 「じん肺健康管理実施状況報告」
 「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者等選任報告」
 「定期健康診断結果報告」
 「歯科健康診断結果報告」
 「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告」
 「労働者死傷病報告」(休業4日以上および休業4日未満)
 「有機溶剤等健康診断結果報告」
 などです。
 また省令案の答申の段階なので、近日、省令改正が公布されると思
います。


2023年5月20日記(可燃ごみの名前)
 ゴミの分別は、地域ごとにいろいろな種類がありますが、代表的な
ものが「可燃ゴミ」と「不燃ゴミ」の2種類です。
 徳島市が「可燃ゴミ」の名称を変更すると発表しました。その名称
『分別頑張ったんやけど、燃やすしかないゴミ』。
 これは面白い。名称は長くなりますが、まず第一に分別が重要だと
いうことをアピールした名称です。
 徳島市の調べによると、「可燃ゴミ」の37%は紙類だったことから
分別を意識させるためのようです。

                       ご安全に!

2023年5月13日記(洗浄液で缶破裂)
 5月8日、東京都足立区の東武鉄道西新井駅で、「缶コーヒー」の缶
が破裂して女性がけがをした事件がありました。缶コーヒーを切符売
り場付近に置いた男性は「職場から洗剤を缶に入れて持ち帰った。人
を傷つける意図はなかった」と言っており、過失なのか、犯罪なのか
はよくわかりません。
 破裂した際に飛び散った液体で複数人が化学火傷をしました。
 缶に入れた液体は報道されていませんが、水酸化ナトリウムを含有
している洗浄液ではないかと思います。水酸化ナトリウムは、金属腐
食性があり、金属と反応すると水素が発生します。その水素の圧力が
高まり缶が破裂したと考えます。
 (水酸化ナトリウムのSDS)
  https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1310-73-2.html
 このような容器が破裂することは職場でも考えられます。職場で使
用している化学物質をアルミや金属製の容器に移し替えた時にも発生
するでしょう。
 小分けするときには、容器の種類が重要ということを理解していた
だきたいと思います。
 東京消防庁のホームページにも同様の記事がありましたので、ご確
認ください。
 
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/nichijou/detergent/
                       ご安全に!

2023年5月6日記(特定化学物質の表示)
 特定化学物質障害予防規則第38条の3で、特別管理物質については、
特定化学物質の名称、人体に及ぼす作用、取扱いの注意事項等を掲示す
ることが定められており、多くの事業場で市販の掲示板を購入して掲示
しています。
 先日の安全週記で、令和5年10月1日からは特定化学物質すべてに対し
て掲示が必要になることをお知らせしました。
 https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H230421K0010.pdf
 ただ単に掲示するだけでは意味がないように感じることがあります。
 例えば、ジクロロメタンを使用している職場でジクロロメタンの掲示
をしていても、職場では容器に別名の“メチクロ”を記載している場合
は、ジクロロメタンと認識していないことも考えられます。他には、塗
料やシンナーなどにメチルイソブチルケトンが含まれている場合にメチ
ルイソブチルケトンの表示をしても同じです。そのため、掲示する際に
は、職場で使用している名前を併記していただきたいと思います。さら
に、GHSシンボルマークを追記した方が良いと考えます。
 しかし、私としては、特定化学物質の掲示については、自社で作成す
る方が良いと思います。理由としては、
 ①市販されている掲示板は一般的なものであり、作業と一致しないこ
  とが多い
 ②「保護具着用」と表記することが多いが、具体的な保護具の種類を
  記載する方が良い。また、保護具の写真を入れることにより、必要
  な保護具がわかりやすい
 ③リスクアセスメントの結果と合わせた掲示にできる
 ④別名など職場で呼称している名称にできる
 ⑤対象作業を記載することによりわかりやすくなる
 ⑥塗料などの複数の物質が含まれている場合は1枚の掲示物にするこ
  とが可能となる
 などがあります。また、自社で作成することにより、化学物質の危険
性や有害性の理解を高めることにもつながるでしょう。

                         
 ご安全に!

2023年4月29日記(騒音障害防止のためのガイドライン)
 厚生労働省は、「騒音障害防止のためのガイドライン」を改訂しま
した。(令和5年4月20日 基発0420第2号)
 https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230425K0010.pdf
 https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230425K0011.pdf
 従来の騒音障害防止ガイドライン(平成4年)と大きく異なるもの
ではありませんが、いくつか追加・修正されました。
①ガイドラインの対象となる作業は60項目で従来のものと同じですが
 60項目以外でも騒音レベルが高い業務はガイドラインに基づく対策
 が求められる。
②機械設備製造業者に対して低騒音化を求める。
③労働衛生管理体制として、騒音障害防止対策の管理者を選任する。
④元請事業者は関係請負人に対して騒音障害防止の指導援助を行う。
⑤作業環境測定では、騒音源が移動する場合は、「個人ばく露測定」
 を求める。など、騒音測定について細かく定められた。
⑥等価騒音レベルの許容基準(等価騒音レベルと作業時間の基準)が
 定められた。
⑦騒音健康診断の一次検査、二次検査の内容が定められた。また、事
 後措置の基準が設けられた。
⑧騒音障害防止の教育について、管理者対象のものと作業者対象のも
 のが定められた。
⑨計画の届出については、対象となる設備の騒音障害防止対策が求め
 られた。

 難聴の原因には騒音職場と加齢がありますが、ライブハウスなどで
大音量を聞いたり、イヤホンで大音量の音楽を聴いたりするなど、仕
事や加齢以外の要因が少なくありません。WHOでは仕事以外の要因
として「レジャー騒音」が難聴リスクを高めると警鐘を鳴らしていま
す。
 私自身(61歳)も難聴が進んでいるのではないかと感じることもあ
ります。新型コロナが落ち着いてきて、野球場などでは声出し応援が
可能になり、レジャー騒音も高くなっていくでしょう。
 皆さんもご自身の耳を大切にしてください。

                       ご安全に!

2023年4月22日記(特化則第38条の3および有機則第24条第2項)
 有機溶剤中毒予防規則第24条第2項では有機溶剤の注意事項を掲示
しなければならないことになっており、多くの事業所で幅が150cm
もある大きな掲示板を掲げていると思います。第24条の2項では、掲
示物の大きさまでが定められていましたが、この規制が削除されたの
で掲示物は必要ですが、大きさは任意となりました。
 特定化学物質障害予防規則第38条では「特別管理物質」のみ取り扱
いの注意事項の掲示が必要だったのですが、令和5年10月1日からは特
定化学物質すべてに対して掲示が必要になりますのでご注意ください。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H230421K0010.pdf


2023年4月22日記(コロナ第9波?)
 コロナ前の日常が戻りつつあります。しかし、徐々にではあります
が、感染者は増加傾向にあり、第9波がくるのではないかという報道
があります。
 電車に乗るとマスクを付けていない人が増えてきました。飲食店に
入ると、ほとんどの人がマスクを外しており、マスクをしているのは
飲食店のスタッフだけのようです。
 入口に置いている消毒液を使わない人も増えてきています。
 ゴールデンウィーク前ですが、観光地では以前の賑わいに戻ってい
るようです。プロ野球でも観客の人数制限もなく、声を出す応援も認
められています。
 企業の中でも席と席の間のガードを外しているところもあるようで
す。
 多くの人が、「コロナは過去のもの」と考えているようです。そし
て5月8日から「5類」に移行することが決まっており、新規感染者が
増えても、行動制限は発せられることはないでしょう。専門家の中に
は第9波がくると考えている人も多く、現実になるのではないかと心
配しています。
 私自身、昨年11月に5回目のワクチンを打ちましたが、もう5ヶ月経
過していますので、どの程度抗体の効果が続いているのでしょうか。
 今週からゴールデンウィークに入ります。新規感染者の増減につい
ては今後とも注視していただきたいと思います。

                       
ご安全に!

2023年4月15日記(富山地方鉄道で作業員が死亡)
 富山市内の富山地方鉄道の線路上で、線路補修作業者が列車に接触
して死亡する事故がありました。
 事故は4月11日の午前に発生しました。亡くなったのは19歳の作業
員でした。
 作業員4人は敷石に手を加え、線路の高さを調整するしており、列
車の接近を監視するために2人の見張り役を設けていました。
 線路補修ではタイタンパを呼ばれる振動を発する機械を使いますの
で、かなりの騒音があります。
 事故の原因は避難指示が遅れたということでしたが、それだけでは
ないように感じます。
 作業は、列車の通過予定時間を当然知っており、さらに見張りを立
てているにもかかわらず事故が発生しました。
 列車の運転士には補修作業の連絡が届いていないのではないかと感
じます。
 作業員が注意すれば安全に作業ができると考えているようですが、
万一の事故を防ぐためには、作業者と運転士が情報を共有することが
重要です。
 鉄道作業員の事故で特に記憶にあるのは、2006年の伯備線の事故で
す。作業員3人死亡、2人が負傷しました。この事故も線路の補修作業
員が列車にひかれました。原因は、雪などによってダイヤの乱れがあ
り、現場責任者は、次に接近する列車を間違えたために、列車が来る
方向と逆の方向に見張り員を配置したために特急列車の接近に気が付
かなかったことが原因でした。

                      
 ご安全に!

2023年4月8日記(三幸製菓火災)
 2022年2月、新潟県村上市にある「三幸製菓」の荒川工場で火災が
発生し、従業員6人が死亡した事故がありました。総務省消防庁は、
3月31日、最終的な報告書をまとめました。報告によると、せんべい
の乾燥機にたまった油分を含んだかけらが乾燥機の熱を受け、酸化反
応を起こしたことで高温になって火が出たということです。また、再
現実験の結果から、会社が断熱材として工場の天井に吹きつけていた
発泡ポリウレタンに着火し、延焼が拡大したと発表しました。発泡ウ
レタンは空気を含んでいることと、表面積が大きいのでものすごく火
のまわりが早くなります。断熱材は天井の中に敷き詰められているこ
とが多く、火災の広がりが判りにくくなることもあります。
 また、多数の死傷者が出た要因については、火災が急速に拡大し夜
間に停電したことに加え、有毒ガスを含んだ黒煙が大量に発生したこ
とから非常灯などの照明があったとしても視界は全く失い、避難が困
難だったと考えられます。
 さらに、当時、夜間に勤務していた従業員の多くは消防訓練に参加
したことが無く、防火シャッターや非常時の出口が周知されていなか
ったことが、避難をより困難にさせたということです。
 以前訪問した企業では防火シャッターの横の出入り口を使用しない
ので、出入り口の前に物を置いて使えなくしていました。火災が発生
すると、防火シャッターは閉まり、避難ができなくなる状態でした。
 この工場ではボヤ程度の火災が複数回発生していたということでし
たが、対策も不十分でした。

                       
ご安全に!

2023年4月1日記(京都 保津川転覆事故)
 3月28日、京都の保津川下り船が転覆し、船頭が死亡する事故があ
りました。幸い、乗客は全員無事だったようです。
 この事故では3つの点が気になりました。
 一つ目は、緊急連絡体制です。携帯電話が使用できない圏外エリア
だったようです。無線も使えず、携帯も使えないというのはあっては
ならない問題です。今回の場合、後続船が無線を搭載していたので、
保津川遊船組合に連絡を取ったようですが、事故現場から組合を通し
て119通報では時間がかかります。緊急時に備え、現場から119に通報
する手段が必要となりますので、携帯が圏外であれば、衛星電話等を
常備しておかなければなりません。
 二つ目は、救命胴衣です。死亡した船頭は救命具を付けていなかっ
た(ただし、転覆時に外れた可能性がある)ようです。また、乗客に
対して使い方の説明がなかったとも報道されていますし、サイズ調整
ができなかったという報道もありましたので、説明内容にも不備があ
ったようです。この船で使用されていたのは胴ベルト形で浮き輪のよ
うに膨らむようですが、波のない湖ではありませんので、ベスト形の
方が良いと思います。
 三つ目は管理体制です。船頭は個人事業主で保津川遊船組合が運営
しているようで責任体制が不明確です。そのため、緊急連絡体制に不
備があったり、救命胴衣の説明にも不備があったのではないかと感じ
ます。今回の乗客は全員無事だったのですが、乗客の中に心肺停止状
態の方が発生した場合に備えて、心肺蘇生の訓練はできているのでし
ょうか? 死亡された船頭に対して心肺蘇生が施されたかどうかは報
道がありませんが、心肺蘇生したという報道もないので、できてなか
ったように感じました。


2023年4月1日記(アルコール中毒死で損害賠償)
 2017年に近畿大のテニスサークルの飲み会で急性アルコール中毒が
発生し、死亡した事故について、両親が当時の参加者18名に1億500万
円の損害賠償を求めた訴訟があり、裁判長は適切な救護を行ったとし
て、当時の学生16名に対して6700万円の損害賠償を命じました。
 アルコールを無理に飲ませたことの責任ではなく、アルコール中毒
で倒れた学生に対して適切な措置(救急車を呼ぶなど)をしなかった
責任があると判断されたようです。
 傷病者が発生した際の措置については十分な指導が必要だと考えま
す。たとえば、熱中症になった方を休養室で休ませている間に症状が
悪化して死亡した場合には、同様の損害賠償を求められる可能性があ
ります。すべての事案で救急車を要請することは正しいとは言えませ
ん。判断できるように教育することが必要です。

                       
ご安全に!

2023年3月25日記(書類送検事例 労災隠し)
 今回も書類送検事例について述べます。
 今回取り上げたものは労災隠し(労働者死傷病報告を提出しない)
です。(下記は大阪労働局のサイトです)
 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202303221954.pdf
 貨物運送及び倉庫管理業をしている事業者ですが、労働者が貨物自
動車に積んだ荷のシート掛け作業を行う際に墜落し、4日以上の休業
を要する災害が発生したにも関わらず報告書を提出していなかったと
いうことです。この労働者死傷病報告の未提出は、一般に労災隠しと
呼ばれており、発覚した場合には書類送検されます。この件では本社
の総務課長と大阪営業所長が共謀して災害を隠そうとしたようです。
 休業1日以上の災害が発生した場合には労働者死傷病報告の提出が
義務付けられています(休業4日以上は遅滞なく提出すること、休業
1日~3日の災害については、四半期ごとに提出することが定められて
います)。
 隠そうとした当人は黙っておけばお咎めがないと考えたのかもしれ
ませんが、病院で労災保険を使って治療したり、健康保険証を使って
治療に行った際に、仕事中ということが発覚したり、ケガをした方が
同僚に相談して、同僚が労働基準監督署に報告したり、SNSでつぶや
くなどいろんな状況になって労働基準監督署に情報が流れてしまいま
す。昔はどうかわかりませんが、現代ではこのような隠し事は必ず露
見すると考えてください。

 
2023年3月25日記(貨物自動車の荷役作業時のヘルメット)
 上記の書類送検に関係して、ヘルメットの法改正について説明しま
す。従来、貨物自動車の荷台上での作業時のヘルメットについては、
最大積載量5トン以上で着用義務がありましたが、この春の改正によ
り、最大積載量2トン以上で着用義務が生じます(施行はR5.10.1)。
 これは、昨今、荷台の上から転落・墜落事故が多発していることか
ら5トン以上を2トン以上に着用義務の範囲を広げることになりました。
ただ、2トン以上は危険であり、軽トラックの荷台は安全というわけ
ではありませんので、すべての貨物自動車ではヘルメット着用を社内
ルールとして指導していただきたいと思います。
 また、ヘルメットには「飛来・落下物用」と「墜落時保護用」の2
種類がありますので、荷台の上での作業は「墜落時保護用」を使用し
てください。なお、「飛来・落下物用」と「墜落時保護用」の区別は
頭に着用した状態ではわかりません。間違えて着用した場合、他者か
らは判別できないので、2種類のヘルメットを使用している場合は色
などを変えて見分けがつくようにしてください。

                       
ご安全に!

2023年3月18日記(書類送検事例)
 羽曳野市にある金属加工会社で、ボール盤使用時に軍手を着用して
いたということで書類送検がありました。
 
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/202303131632.pdf
 金属加工の現場では“加工物に皮脂を付けてはいけない”、“エッ
ジ部で指を切る”“加工物が滑りやすい”などの理由で手袋(軍手)
を着用することが非常に多い。その加工物に穴あけするためにはボー
ル盤を使うのですが、ボール盤のビットや切粉に軍手が引っかかると
巻き込まれてしまいます。ボール盤は金属に穴をあける強さ(トルク)
がありますので、人間の力では止められません。そのまま軍手が巻き
込まれ、指・手・手首・前腕と巻き込まれ、上半身まで巻き込まれて
致命傷になります。途中で軍手の指先部分が切れれば災害にならない
のですが、軍手は丈夫で切れません。軍手の指先が引っ張られると、
指が締め付けられるので軍手は脱げません。そのため、ボール盤使用
時には手袋は法令でも禁止されているのです。
 事故につながる不安全行動は、ドリルの先端の切粉を払いのけるよ
うな行動です。ブラシのような物を使えばいいのですが、“つい”と
か“反射的に”指先で払いのけてしまうことが問題です。
 正しい作業は、ボール盤のバイス(万力)に加工物を取付けるまで
は軍手を着用しても良いが、ボール盤を起動する前に軍手を外すこと
です。加工が終われば、軍手を着用してバイスから加工物を取り外す
べきです。
 しかし、指示するのは簡単ですが、作業者にとっては非常に面倒な
ことかもしれません。
 対策としては、軍手を都度着脱する方法と、指先を接近させること
ができない状態を作る方法です。ドリルを上下させる操作レバーと任
意の場所に付けたボタンの両方を同時に触れていないと主軸が回転で
きない構造にするのです。すわなち、両手押しボタンと同じ構造にす
れば、両手が塞がる状態なので、ドリルの先端に触れることもなく、
軍手を着用しながら加工ができます。


2023年3月18日記(ChatGPTがすごいらしい)
 「ChatGPT(チャットGPT)」聞いたことありますか?
 OpenAIという企業が「質問に対して、自然な言葉で返答してくれる
高度な対話型AI」として開発したものです。無料ということで登録し
ました。
 たとえば、「ヒヤリハット活動を活性化するにはどうしたらいいで
すか」と質問すると、ChatGPTの解答は以下の通りです。
 「ヒヤリハット活動を活性化するためには、以下のような取り組み
が有効です。
1.ヒヤリハット報告書の作成方法を明確にする:社員がヒヤリハッ
トを報告しやすい環境を整えることが重要です。報告書の作成方法や
報告先、報告の進め方などを明確にし、社員に周知徹底することが必
要です。
2.ヒヤリハット報告書の対応体制を整える:ヒヤリハット報告書が
あった場合には、迅速かつ適切な対応が求められます。対応体制を整
え、適切な対応を行うことが重要です。
3.ヒヤリハット報告書のフィードバックを行う:報告書を提出した
社員には、フィードバックを行うことで、報告書を提出することの重
要性を再認識してもらうことができます。また、フィードバックを通
じて報告書の質を向上させることもできます。
4.ヒヤリハット報告書の報告者を表彰する:ヒヤリハット報告書を
提出した社員には、表彰する制度を導入することで、ヒヤリハット報
告書を提出することに対するモチベーションを高めることができます。
5.ヒヤリハット報告書の活用を広める:ヒヤリハット報告書は、単
なる報告書として終わらせるのではなく、改善活動に活かすことが重
要です。報告書の内容を分析し、改善の提案を行うことで、社員の意
見を取り入れた改善を進めることができます。
以上のような取り組みを行うことで、社員が積極的にヒヤリハット報
告書を提出しやすい環境を整え、ヒヤリハット活動を活性化すること
ができます。」
 この回答はいかがでしょうか。“ヒヤリハット”という言葉を正し
く認識しており、いい答えだと思います。安全活動にも企業活動にも
「ChatGPT」は使えそうです。
 次に、安全コンサルタントの試験問題でどのような回答がでるかと
思い、間違った選択肢を提示し、何が間違っているかを質問しました。
(設問)「黄銅は銅とスズの合金、青銅は銅と亜鉛の合金であり、一
般に黄銅の方が青銅よりも耐食性が高い。この文章の何が間違いです
か?」
(ChatGPTの解答)「この文章には明確な間違いはありません。黄銅
は銅とスズの合金であり、青銅は銅と亜鉛の合金であることは事実で
す。また、一般的に黄銅の方が青銅よりも耐食性が高いとされていま
す。したがって、この文章は正しい情報を伝えています。」
 アレレ?正解は「黄銅は銅と亜鉛の合金、青銅は銅とスズの合金」
なのでChatGPTは間違っています。
 ChatGPTも間違いはありますが、これから進化していくことでしょ
う。完成度が高まると仕事の効率化につながると考えられます。
(参考)
 ChatGPTを使う方法。次のURLにアクセスし、『TRY CHRTGPT』をク
リックし、『Sign up』をクリックして進めていきます。
https://openai.com/blog/chatgpt

                       ご安全に!

2023年3月11日記(石見銀山観光客転落死)
 3月8日、島根県の世界遺産である石見銀山の観光客が川沿いの柵に
もたれかかり、柵が折れて川に転落して死亡する事故がありました。
 木製の柵は2021年4月に腐食していることを確認し、柵の前にコー
ンを置いて注意喚起していたということですが、映像を見ると、コー
ンには「通行止」の表示があるだけでした。市の職員はコーンを置い
ていれば注意喚起になると考えたのでしょうが、コーンには「柵が腐
食しているから近づくな!触るな!」という意味はありません。ただ
「通行止」と書いてあるだけなので、観光客は柵が危険とは考えなか
ったのでしょう。
 しかも、2021年4月に異常に気が付きながら補修予定が2023年度中
とは対応が遅いと感じます。
 多くの事業所や現場で赤いコーンを使用しています。通行止めや、
侵入禁止などが多いでしょう。そのほかにも、たとえば、頭上に燕の
巣があって、フンが落ちる場所に置いたりします。また、床面に突起
物があって、つまづく事を防止するために置いたりします。突起物に
かぶせるように置いた場合、他の人にはコーンの理由がわからず、勝
手に動かされる場合があります。
 コーンを置いた場合には必ずしも注意書きを付ける必要はありませ
んが、知らない人が見たら、どう考えるのか考え、必要な表示をして
ください。

                       
ご安全に!

2023年3月4日記(ナッジ効果)
 厚生労働省の安全プロジェクトが「見える」完全活動コンクールの
結果を発表しましたので、安全活動の参考にしてください。
 
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzenproject/concour/2022/result.html#01
 この中に“ナッジ効果”というのがあります。皆さんはナッジ効果
(ナッジ理論)をご存じでしょうか。私は不勉強で知りませんでした。
 ナッジ理論は「小さなきっかけを与えて、人々の行動を変える戦略」
です。行動経済学で用いられる理論のひとつとして扱われます。ちな
みに、「ナッジ(nudge)』とは直訳すると「ヒジでちょんと突く」
という意味です。
 ナッジ理論は、2017年に理論の提唱者である行動経済学者リチャー
ド・セイラー教授がノーベル経済賞を受賞したことで、アメリカの企
業を中心に世界的に広まってきていました。現在では、多くの企業の
マーケティング戦略で利用されるほか、イギリスやアメリカの公共政
策でも使われています。ささやかなきっかけを与えることで、人々の
行動をガラッと変えてしまうことから、「現代の魔法」とも言われて
います。
 難しそうだと思うかもしれませんが、“ナッジ”はさまざまなとこ
ろにあります。たとえば、
・エレベーターでのコロナ対策として、四隅に足の印を書いて、定員
 が4人とわかるようにした。
・「ここは自転車捨て場です」と貼り紙したら、放置自転車がなくな
 った。
・タバコのポイ捨て対策として、タバコの吸い殻で投票するアンケー
 トボックスの設置。アンケートには「現在、世界最高のプレイヤー
 と言ったら?」という質問で、選択肢として、クリスティアーノ・
 ロナウドとリオネル・メッシの名前書いた箱(吸い殻入れ)があり、
 タバコを吸った人は、どちらかに投票したくなり、ポイ捨てが減っ
 た。
・男性用小便器の中央付近に“的(まと)”のシールを貼ったところ
 そのシールを狙って用をたすようになり、小便器周辺の汚れが減っ
 た。
・駅のホームに並ぶ位置を表示したことにより、並びやすくなった
 このような例はたくさんあると思います。皆さんの職場でも導入し
て、小さなきっかけを与え、大きな効果を狙ってみませんか?

                       
ご安全に!

2023年2月25日記(かご台車が転倒し、従業員が下敷き)
 2022年5月24日静岡県のヤマト運輸の営業所内で、かご台車をフォ
ークリフトで大型トラックに積み込む際にかご台車が転倒し、従業員
が下敷きになり背骨を折る重傷を負いました。沼田労働基準監督署は
2023年2月20日、作業指揮者が作業の指揮をしていなかったとして営
業所の副所長を書類送検しました。
 事故の要因としては、
  ・フォーリフトおよびかご台車に接近していた
  ・かご台車の重心が高く倒れやすい
  ・フォーリフトの操作を誤ったなどがあると考えます。
 かご台車は、荷役作業の効率化につながり多くの事業所で使用され
ていますが、フォークリフトでかご台車を昇降させたり運ぶ時は注意
が必要です。それは、かご台車には4つのキャスターがあるため、フ
ォークを差し込むためには、中央付近にフォークを差し込むので、不
安定になってしまいます。また、かご台車の底面は金属製のため、フ
ォークが滑りやすいということもあります。そのため、かご台車の転
倒に備えて十分距離を空ける必要があります。


2023年2月25日記(沖電気で製造工程にAIを導入)
 テレビ東京系で放送されている“知られざるガリバー”の放映があ
りました。その中で電話機の製造工程で“エアーで埃を吹き飛ばす”
がありますが、その作業を忘れてしまう可能性があります。エアーを
かける作業をわすれても後の工程では発見ができません。そのため、
AIに標準的な作業を映像で学習させ、作業者の動ぎをチェックさせ
ます。作業手順を忘れるとAIが判定してミスを見つけることができま
す。
 このようにAIで作業ミスを検知することができれば、労働災害の
防止につながることを期待します。

                      
 ご安全に!

2023年2月18日記(足場の改正)
 労働安全衛生規則の一部を改正する省令(案)の答申結果が公表さ
れ、省令の改正が行われます。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31060.html  
 ポイントが3つあります。
1.一側足場の使用範囲を定める。
 一側足場とは、建地(支柱)の片側だけにブラケット等を付けるも
ので、狭い場所に使用されます。この一側足場からの転落事故が多い
ため、十分な広さがある場合の使用を禁止するものです。具体的には、
1m以上の幅があれば、一側足場を使用せず、枠組足場などの“本足
場”を使用しなければなりません。私の家で屋根の改修と外壁の塗装
の際には、隣家との間が狭いため、一側足場で作業していました。足
場板の幅は30㎝程度なので、踏み外したりして転落事故が多いことも
うなづけます。省令交付は3月の予定で施行日は令和6年4月1日の予定
です。
2.足場の点検者を指名すること
 足場作業では完成後と始業時点検が義務付けられているが、守られ
ていないことが多く、点検者を指名することが義務付けられます。
    省令交付は3月の予定で施行日は令和5年10月1日の予定
3.足場の点検記録に点検者の氏名を追加すること
 点検記録に点検者の氏名を追加することが定められました。
    省令交付は3月の予定で施行日は令和5年10月1日の予定 

2023年2月18日記(荷役作業の改正:ヘルメットと特別教育)
 労働安全衛生規則の一部を改正する省令(案)の答申結果が公表さ
れ、省令の改正が行われます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31052.html
ポイントは2点です
1.貨物自動車で荷役作業を行う場合のヘルメット着用義務の範囲が
  広がります。
 現在は、5トン以上の貨物自動車の荷台に上がる作業ではヘルメッ
トの着用が義務付けられていますが、改正後は、2トン以上の貨物自
動車が対象となります。
  (省令交付は3月の予定で施行日は令和5年10月1日の予定)
 この改正には疑問を感じます。貨物自動車の荷台から転落する災害
が多いのは知っていますが、なぜ2トン以上としたのでしょう。2トン
未満は事故がないというわけではありません。軽トラックでも荷台か
ら転落する危険もあります。省令改正は2トン以上ですが、事業所で
はすべての貨物自動車を対象としていただきたいと考えます。
2.テールゲートリフターによる荷役作業を特別教育の対象とする
 テールゲートリフター(貨物自動車の後部にリフトを付けたもの)
を使用して荷役作業を行う者に対して特別教育を義務付けることにな
りました。特別教育は学科4時間、実技2時間の計6時間です。課題に
なるのは、施行日が令和6年2月1日の予定です。現在、テールゲート
リフターを使用して作業している労働者はとても多いです。特別教育
の内容は何も公表されていません。当然、講習機関もありません。テ
キストも市販されていません。来年1月末までに全員が受講するのは
不可能だと感じます。省令交付の際には猶予期間も併せて交付される
とは思いますが、社内で対象者がいる場合には教育計画を立ててくだ
さい。
 当社ではテールゲートリフター特別教育の出張講習を計画していま
す。必要があれば連絡ください。準備ができ次第実施します。

                       
ご安全に!

2023年2月11日記(2トンの鉄板が将棋倒しになり1名が死亡)
 
今週は労働災害の報道が目立ちました。特に気になるのは、2月6日
に大阪府岸和田市で13枚の鉄板が倒れた事故です。2m×9mの大きさ
で、厚みが約15mmの鉄板を13枚立てた状態から将棋倒しのようにな
り1名が死亡、6人が重軽傷となりました。
2m×9mの鉄板を立てて置いたことがとても気になります。“板は立
てて置くものではない”と多くの方が感じるでしょう。作業責任者は
危険性を認識して、倒れないような対策を施したようですが、クレー
ン作業で吊った荷が当たって倒れたようです。
 報道では「原因はクレーンの操作ミス」と出ていましたが、作業の
決め方に問題があったと考えます。


2023年2月11日記(2月13日開催 労働政策審議会安全衛生分科会)
 2月13日に開催される労働政策審議会安全衛生分科会では労働安全
衛生関係の改正が多く審議されます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31062.html
①防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具の型式検定
 これにより、電動ファン付き呼吸用保護具で有機溶剤作業等ができ
るため、労働者の有機溶剤による健康影響を低減させることができま
す。(施行日:令和5年10月1日)
②テールゲートリフター操作業務の特別教育義務化
 これによりテールゲートリフターを操作するためには特別教育の修
了が必須となります。(施行日:令和6年2月1日)
③最大積載荷重が2トン以上貨物自動車から荷を降ろす作業を行う際
 には、昇降するための設備を設けなければならない。また、荷台か
 らの墜落による危険を防止するためにヘルメットを着用しなければ
 ならない。(施行日:令和5年10月1日)
④一側足場の使用範囲が、幅1m以内に限定となる。
 (施行日:令和6年4月1日)
⑤足場の点検後の記録および記録の保存義務(施行日:令和6年2月1日
⑥金属アーク溶接等作業主任者の選任
 金属アーク溶接作業主任者限定技能講習が新設される
 (施行日:令和6年1月1日)

 などの改正が審議されます。資料通りに決定すると考えられます。
 交付されたときには、安全週記でできるだけ解説していきたいと思
います。また、この審議会では“第14次労働災害防止計画”も審議さ
れます。

                 
      ご安全に!

2023年2月4日記(回転すしの迷惑行為)
 最近、回転寿司店での迷惑行為(卓上の醤油に口をつけたり、湯飲
みに口をつけて元の場所に戻す、レーンを流れる寿司に唾をつける、
他の客が注文したものに手をつける等)が報道され、とても腹立たし
く思います。
 それらの報道を見て、数年ぶりに回転寿司を食べに行きました。入
口にはディスプレイがあり、人数などを入力すると、席を指定する番
号札が出てきて、その席に座るまで店員は見かけません。食べ終わっ
て会計ボタンを押すと店員が皿などの確認にくるだけで、支払いも無
人レジになっていました。
 安くて美味しい寿司を提供するためには、無人化も必要なのでしょ
うが、悪さを行う者にとっては、「誰も見ていない」状態となるので
しょう。
 この迷惑行為は単なるイタズラではすみません。スシローの株価は
160億円下落するなど影響は深刻です。巨額な賠償請求をおこし、同
様の犯罪を抑制するべきだと感じます。
 さて、職場はどうでしょう。誰も見ていなかったらルールに反する
行動が発生するかもしれません。
 ある会社では階段での転倒事故が複数発生し、「階段の昇降では必
ず、手すりを持つ」というルールを作りました。しかし、なかなか定
着しません。そこで、階段に監視カメラを設置し、「ビデオ撮影中」
と掲示し、手すりを持つルールが定着したそうです。
 「見ているぞ」のアピールが不安全行動や犯罪の抑止力につながり
ます。

                       
ご安全に!

2023年1月28日記(大雪)
 25日の雪には参りました。JRはすべて止まり、京阪電車は通常運
転をしていたので、枚方駅までバスで行こうと考えていましたが、バ
スが全く来ません。自動車利用者が多い上に事故で交通がマヒしてい
たということです。雪はさほど降っていなかったのですが、路面が凍
結したうえに、ノーマルタイヤの自動車が多かったのだと思います。
 その前日にはJR京都線で電車が立ち往生しました。原因はポイン
トが凍結したということです。ほかの私鉄では融雪機を使ったので凍
結は防げたようです。JRでは積雪予報が10㎝以上であれば融雪機を
使用するルールだったようです。雪の予報は8㎝だったので融雪機を
使用しなかった。そのために対応が遅れたということでした。それで
感じるのは「10cmルール」はどのように決められたのでしょう。
9㎝までは凍結しなかったという過去のデータでしょうか? おそら
く何の根拠もなく、「数センチでは必要ない、10㎝を基準にしよう」
程度のことだと思います。しかし、同じ積雪でも気温が異なれば、凍
結の程度も変わります。ポイント凍結の可能性を単に積雪予報だけで
判断するところがお粗末だと思います。
 皆様の会社や職場にはいろいろなルールや作業手順があると思いま
す。いままで事故やトラブルがなくても、ルールや作業手順が正しい
のではなく、たまたま事故もトラブルもなかっただけなのかもしれま
せん。
 たとえば、2m以上の脚立を使うときには「ヘルメット着用」と決
めている会社もあるでしょう。1.8mの脚立は安全なのでしょうか?
事故が発生してからルールを変更するのではなく、事故が発生する前
にルールの再検討をしていただきたいと思います。


2023年1月28日記(延長コードが原因)
 22日に神戸市兵庫区の集合住宅で8人が死傷する火災があり、兵庫
県警は劣化した延長コードが原因で出火した可能性が高いと発表しま
した。延長コードにはショート痕があり、近くにはキャスター付きの
テーブルがあったことから、くりかえし、キャスター付きのテーブル
で延長コードを踏んだことが原因ということです。ビニルのコードは
弾力性があるので、踏んでも大丈夫だろうと考える人もいるでしょう。
しかし、延長コードの中にはたくさんの細い素線が入っています。踏
むたびに1本2本と切れていくと、断線に近い状態になり、加熱したり
してとても危険です。延長コードは踏んだりしないように丁寧に扱っ
て下さい。

                       
ご安全に!

2023年1月21日記(優先道路)
 福島県で1月2日に乗用車と軽自動車が衝突し、軽自動車が横転して
炎上する事故があり、4人が死亡する事故がありました。
 現場は信号のない交差点で、軽自動車が走行する車線が優先道路で
した。乗用車の運転者は交差点という認識がなく、そのまま交差点に
侵入して事故になったようです。
 優先道路側を走行する車線には「優先道路」を示す標識があり、優
先道路ではない道路には「止まれ」の標識があります。また、優先道
路を示す方法としてセンターラインがあります。センターラインがあ
る道路が優先道路となるのです。今回の事故では「止まれ」の標識も
なく、優先道路側に引かれているセンターラインは消えてほとんど見
えない状態でした。この事故では道路にも問題があったと言えます。
事故後にセンターラインの引き直し工事が行われました。しかし、事
故が起こってからセンターラインを引き直すのでは後追い対策にすぎ
ません。
 道路の異常を見つけた場合には「道路緊急ダイヤル#9910」という
ものがあります。
 https://www.mlit.go.jp/road/dia/
 また、国土交通省では“ご意見・ご要望”窓口を設けています。
 https://www.mlit.go.jp/road/110.htm
 なお、優先道路の標識も“止まれ”の標識もセンターラインもない
場合はどちらが優先道路か判りますか?この場合は、運転者から見て
左側から交差点に進入する車が“優先”となります。

2023年1月21日記(また、スプレー缶の穴開けで事故)
 1月16日、東京都港区のビルの2階で爆発・火災が発生しました。原
因はスプレー缶に穴を開けてガス抜きをし、ライターをハンマーで壊
していたということです。室内でガス抜きをする事故がたびたび発生
しています。2018年12月16日に札幌の不動産仲介店舗での爆発、2019
年7月6日に産業廃棄物処理運搬会社で資材・工具通販会社モノタロウ
で不要になった洗浄スプレーの爆発などがあります。
 今回の事故では、「換気扇を使っているから大丈夫だろう」と思っ
た旨の報道がありました。しかし、可燃性ガスは比重が重いため、換
気扇では十分な換気は得られません。
 スプレー等を廃棄する時は、自治体の決めたルールに従い、穴を開
けなければならない場合は、必ず屋外で穴を開けてください。産業廃
棄物として廃棄する場合は処理業者と打ち合わせしてください。

2023年1月21日記(電動キックボード)
 電動キックボードに関する道路交通法の改正が今年7月1日に施行さ
れます。新設される車両区分は「特定小型原動機付自転車(特定小型
原付)」となり、最高速度20km/h(定格出力0.6kW)となります。
免許は不要で、ヘルメットの着用義務もありません(ヘルメット着用
は努力義務)。ほぼ自転車と同じ規制なので今後増えてくると予想し
ます。なお、歩道走行については最高速度6km/hまでであれば、最高
速度表示灯を点滅させれば可能となります。しかし、最高速度6km/h
で走行するルールは守られるでしょうか。また、電動キックボードの
車輪は直径が小さいため、数センチの段差で転倒するでしょう。事故
は増えると考えられます。また、現在は自転車保険の加入が義務化さ
れつつありますが、特定小型原付は自転車ではありませんので、自転
車保険に入っていても効力はありません。
 企業においては、通勤ルールを検討しなければならないでしょう。
特定小型原付を利用しての通勤を認めるのか、また、認める場合には
どのような条件を付けるべきか検討していただきたいと思います。

                      
 ご安全に!

2023年1月14日記(非常停止ボタン)
 昨年4月23日の安全週記で「非常停止ボタン」の表示がない機械設
備が多い。非常停止ボタンの位置を明らかにし、作業者に理解させ、
万が一の際にはためらわず操作しなければならないので、表示を付け
なければならないと指導してきまたことを書きました。
 表示について調べてみると「ISO13850(2015)」と「JIS Z 9703
(2019)」には“表示は不要”となっていました。ただし、「アクチ
ュエータおよびその背景のいずれにも、文字または図記号を記載した
ラベルは付けない方がよい。」という表現なので表示を禁止するもの
ではないと理解しています。この規定では背景を黄色にすることと定
められています。なぜ、非常停止やEMERGENCY STOPなどの表示が不要
かというと、文字が書いてあると、それを読んで理解しようとするの
で操作が遅れる可能性があるということです。
 参考
 https://jp.idec.com/RD/safety/law/iso-iec/iso13850
 現在、“非常停止”等の表示がある場合、外さなければならないと
はいいませんが、背景を黄色としていただきたいと考えます。
 また、非常停止装置の点検はどうされているでしょうか? 機械の
使用前点検として、非常停止装置の有効性確認は必要です。
 ところで、昨年4月の金属プレス加工技術展でメーカーにいろいろ
効きましたが、誰一人として「ISOやJISによって非常停止ボタンの表
示は不要」と答える人は居ませんでした。


2023年1月14日記(インフルエンザ)
 厚生労働省は、毎週、インフルエンザの報告を発表しています。
 https://www.mhlw.go.jp/content/001036675.pdf
 これによると山形県以外はインフルエンザが流行しているというこ
とです。ちまたでは、コロナとインフルエンザの両方に感染したとい
う話もあります。ご注意ください。
 また、コロナによる死者が1日に全国で500人超ということもありま
した。オミクロン株は致死率は低いと言われてきましたが、1日に26
万人が感染したという第7波の時より死者が多いのです。これは自身
で検査して陽性になり自宅隔離をするなど、新規感染者として報告の
あがらない人が多いということなのでしょう。引き続いて、新型コロ
ナ対策とインフルエンザ対策を継続していただきたいと思います。

                       ご安全に!

2023年1月7日記(交通事故死者数について)
 令和4年の交通事故死者数の発表がありました。
 https://www.npa.go.jp/news/release/2023/20230104001jiko.html
 6年連続で過去最少を更新しており、緩やかではありますが、確実
に死者が減っています。しかし、人口が減っているのだから事故も死
者も減るのが当然だとも言えます。
 警察庁は人口10万人あたりの死者数を発表しています。過去10年で
は、3.44→3.23→3.24→3.07→2.91→2.79→2.54→2.25→2.09→2.08
となっており、令和3年とほとんど変わっていません。
 街中を見ると、電動キックボードが増えてきたように感じます。電
動キックボードは自転車とは違いますので、自転車走行が認められて
いる歩道での走行はできないのですが、自転車の感覚で走行している
のを見かけます。非常に怖さを感じます。また、“トライク”という
乗り物をご存じでしょうか? 3輪の乗り物で、一見バイクに見えま
すが、車輪が3つあるものです。これはヘルメット着用義務がありま
せん。ヘルメット着用義務がなくても、危険性はバイクとあまり変わ
りません。会社の通勤でトライクを使う場合はヘルメット着用義務の
社内ルールにしていただきたいと思います。現在、トライクで通勤す
る人がいなくても、社内ルールを改訂して、ヘルメット着用義務にし
た方が良いでしょう。電動キックボードも同じです。社内の誰かが、
トライクや電動キックボードで通勤を始めてからは社内ルールの改訂
が難しいと思いますので、早めに社内の通勤ルールを定めた方が良い
と考えます。
 令和4年の死者数を見ると、大阪府と兵庫県は2年連続して前年を上
回っています。これからも大雪があったり、路面凍結が続きます。社
内の誰かが事故を起こす前に、冬期の交通安全について教育を実施し
ていただくようお願いします。

                      
 ご安全に!



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