金   星
き ん せ い ・ V E N U S

太陽から二番目の金星は、地球に最も近い惑星である。公転軌道は太陽系の惑星の中で最も真円に近い。自転が逆向き(時計回り)なので、太陽は西から昇って東に沈む。軌道が地球の内側にあり、太陽との最大離角が47度であるため、日の出3時間前の東の空と、日没3時間後の西の空でしかみることができない。「明けの明星」と「宵の明星」である。軌道が地球の内側にあるため、月と同じく位相(満ち欠け)が生じる。
 金星には磁場は存在しない。ケイ酸塩を成分とする地殻とマントルが鉄とニッケルで出来た中心核を包んでいる。大気の成分はほとんどが二酸化炭素(96.5%)である。この二酸化炭素が地表からの熱を逃がさないため、熱は大気中に閉じ込められて猛烈な「温室効果」が生じている。
 金星の地表は、鉛を溶かすほどの高温(465℃)に達する太陽系で最も熱い惑星である。惑星探検家が金星の表面に下り立つとすれば、高温・高圧と強い酸のために即死することになるであろう。
 金星の雲は、大気中の二酸化炭素、硫化物、水蒸気などが太陽光に反応して生じた硫酸液の滴でできている。この硫酸の雲は太陽光を非常によく反射する。このため金星は明るく輝くので、地球から地表を観測することは難しい。
 金星は大きさ、質量そして密度が地球によく似ていることから、地球と双子の惑星と考えられていた。しかし惑星探査機の観測により、酸性の雲の下は地球とは似ても似つかぬ、とてつもない温室効果で支配された灼熱地獄の天体であることが分かった。地殻運動は、地球のプレートテクトニクスと地下のマグマの力で生ずるプリュームテクトニクスの両方であると考えられている。いずれが支配的なのかは、今後の探査まで待たなければならない。

太陽からの平均距離 1億820万km
半径 6052km
質量(地球=1) 0.815
密度(水=1) 5.24
表面重力(地球=1) 0.91
大気の組成 大部分が二酸化炭素、窒素その他の物質(硫化物や水)
平均軌道速度 秒速35km
公転周期 224.7地球日
自転周期 243地球日
軌道面の傾き 3.4度
自転軸の傾き 177.4度(つまり逆向きに自転)
表面温度 465℃
表面の圧力 地球の90倍

宇宙開発事業団提供
金星内部
中心核(ニッケル・鉄)・マントル(珪酸塩)・地殻(珪酸塩)からなっている。
金星は地球の双生児といわれるほど、地球に近い大きさ、密度をもっており、中心部に金属鉄の核、その外側に岩のマントルという地球とよく似た内部構造であると考えられています。

地形  
(地形図をクリックで拡大図が見れます。)
金星の表面には、基準表面より平均2000m高い大陸と呼ばれる二つの高地がある。北半球西部のイシュタール大陸と、赤道地域のアフロディーテ大陸である。探査機マゼランのデータを基に作成された金星の地形図である。画面のほぼ中央に見えるのがイシュタール大陸で、その右下の細長い大きな大陸がアフロディーテ大陸である。
 金星の60%は平原で占められ、高地が13%、低地が27%を占めている。金星の表面は厚い雲に閉ざされているため、合成開口レーダー(SAR)で測定された。
イシュタール大陸
 金星の西経290度から東経85度に位置している高地で、幅は1万3200kmとオーストラリアに相当する大きさである。西側には金星の基準面より3000〜5000m高いラクシュミ高原があり、その中央には高さ11kmのエベレストより高いマクスウェル山やクレオパトラと呼ばれる直径100kmの広く平らな衝突クレーターがある。上の画面で赤く見えるのが、エベレストを凌ぐ高さ1万mのマックスウエル山で、その左に金星の基準面より3000〜5000m高いラクシュミ高原がある。

マックスウエル山
金星の基準面から11kmの高さに聳える金星の最高峰である。画面のほぼ中央に見えるのが直径100kmのクレーターのクレオパトラである。クレオパトラの火口から南西の麓までの距離は、約350kmである。


アフロディーテ大陸
東経55度〜205度までの赤道地帯に広がる幅1万3900kmの金星最大の高地である。大きさは、アフリカ大陸の半分に相当する。画面では、黄色くねじれて広がって見える。この大陸はダイアナ・カズマ(上の画面の右端に見える黄色い部分)と呼ばれる急峻な崖からなる大峡谷により東西に分れている。ダイアナ大峡谷は長さが2300km、最大幅が280km、最深部は2900mもある。また、この大陸の東端にある高さ8000mのマートモンズは、活火山と考えられている。

代表的な円形地形、コロナ
探査機マゼランのデータを基にコンピュータ・シミュレーションで作成された、アルファ・レジオのコロナの立体画像である。金星の南緯30度、東経11.8度に位置する。  
画像は直径25km、高さ750mの通称パンケーキと呼ばれるコロナの連なりである。コロナは、地球で見られるような粘性の高い溶岩が高速で流れ出して形成したのか、地下のマグマのプリュームが地表を押し上げて形成したのかのいずれかによるものと考えられている。
マート・モンス
マート・モンスは、アフロディーテ大陸の東端に位置する標高8000mの火山である。火星の北緯0.9度、東経194.5度に位置し、エベレストを凌ぐ標高1万メートルのマックスウェル山(イシュタール大陸)と並ぶ火星を代表する山脈である。


金星探査
旧ソ連は、1961年2月8日のベネーラ1号を皮切りに、矢継ぎ早に一連の金星探査機(ベネーラ・シリーズ)を打ち上げた。しかし、鉛も溶かす高温と地球の90倍の圧力の中で、ほとんどの探査機は破壊されてしまった。
 1970年12月、べネーラ7号が初めて金星の着陸に成功した。続いて8号(1972年)から16号(1983年)まで16機の探査機が打ち上げられた。特に、1982年に金星に着陸した13号と14号は金星の表面で約2時間耐え抜き、荒涼とした金星地表の撮影に成功した。また、1983年に到着した15号と16号は合成開口レーダーを搭載していたので、金星の地表を1〜2mの分解能で撮影した。
 一方アメリカは、1987年5月8日にパイオニア・ビーナス1号2号を打ち上げ、金星表面を観測して地表のデータや画像を得た。1989年5月に打ち上げられた、合成開口レーダーを装備したマジェランは、2年間の観測で金星の地表の85%の地形のデータを得ることができた。



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