ベネーラ・シリーズ



ベネーラ4号
 旧ソ連が打ち上げた金星ミッション・シリーズのことで、1961年2月の1号から1983年6月の16号まで続けられた。ベネーラ1〜3号は鉛をも溶かしてしまう容赦のない高温高圧、強力な腐食性を持つ大気のために燃え尽きてしまった。しかし、1967年6月12日に打ち上げられたベネーラ4号が燃え尽きる前に放ったプローブは、パラシュートで金星の大気の中を降下しデータを送ってきた。このデータで、金星の大気はほとんど二酸化炭素でできていることがわかった。


ベネーラ5号と6号


ベネーラ8号
 1969年5月16日と17日、ベネーラ5号と6号が放ったプローブは、金星の大気の中で50分ほど耐えてデータを送ってきた。1970年12月15日、ベネーラ7号が放ったプローブは金星の表面に硬着陸して23分間データを送り続けた。このデータから、金星の地表の温度が摂氏470度、気圧は地球の90倍であることがわかった。1972年7月22日、ベネーラ8号は金星の昼間の面に無傷で到着し、1時間程濃い雲を貫いてくる太陽光の量のデータを送ってきた。この結果、金星の表面は太陽光の2〜3%を受けて、地球の冬の曇った日の状態であることがわかり、地表の撮影が可能であることが証明された。

 1975年10月22日と25日にベネーラ9号と10号があいついで金星に着陸して地表の撮影に成功した。ベネーラ9号は初の荒涼とした地表と明るいもやのかかった空の画像を送ってきた。ベネーラ10号は地表から65分間データを送り、送信時間の新記録を作った。1978年12月21日、ベネーラ12号は大気に突入し、下層に少量の水蒸気の痕跡や雷雨と思われる現象を観測した。しかし、搭載したカメラのキャップが外れず、地表の撮影はできなかった。

ベネーラ15号と16号
 1981年10月30日と11月4日に打ち上げられたベネーラ13号と14号は、金星の地表で2時間耐えて、初めてカラーでパノラマ画像の撮影に成功した。13号と14号の調査で、金星の岩石は地球の玄武岩に似ていることがわかった。このシリーズでは、合計6枚の画像が撮影されたが、現存する表面から見た金星の画像はこれだけである。1983年6月2日、ベネーラ15号が、そして最後のベネーラ16号が6月7日に打ち上げられた。

 合成開口レーダー(SAR)を装備したベネーラ15号と16号は、10月に金星の軌道に到着し、1〜2kmの分解能で金星の地表を8ヵ月間撮影した。両機とも金星の極軌道を周回し、軌道面を約4度の角度に別れて飛行し、一方が撮影した地域をもう一方があらためて撮影した。撮影は北緯80度から始められ、極点を越えて北緯30度まで及んだ。それぞれ、幅81km、長さ5400kmの領域を撮影した。

 22年間に及んだベネーラ・シリーズにより、約5200平方km即ち、金星の地表の25%に当る地域が撮影された。

合成開口レーダーによる撮影とは、一連のレーダー電波を金星の地表に当て、返ってくるシグナルの時間と強度をコンピュータで分析して地形を測定する方法である。この方法で得られたデータは、探査機に搭載された高度計のデータと合わせて解析され、地表の詳細な測定と地形の分析が可能になった。


ベネーラ9号と10号          べネーラ13号と14号