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社会保険労務士田村事務所 事務所便り 『のぞみ』 平成18年12月号
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会社に無断でアルバイトをしたら?
◆社員の兼業にどう対処?
ある企業に勤める女性社員が勤務終了後にクラブで接客のアルバイトをしていたところ、それが会社に見つかってしまい、女性社員は厳罰をおわされることになりました。
この会社の判断は正当といえるのでしょうか。
◆懲戒処分の判断基準は?
アルバイトなどの兼業を理由とした懲戒処分が正当かどうかは、企業が就業規則に兼業禁止を定めていて、その規則を適用することに合理性があるかどうかで決まります。
アルバイトによる疲労のために会社の本業に従事することが著しく困難になるような場合は、兼業禁止を適用される可能性があります。また、会社の評判を損なうような内容のアルバイトをしている場合などにも、適用事由になりうるといえます。
◆裁判例では?
裁判例の中には、就業時間後の午後6時から午前0時までキャバレーで働いていた女性社員を解雇したことについて、社員の兼業の可否について会社の承諾を得る必要があると定めた就業規則の適用は権利の濫用に当たらないとしたものがあります(1982年東京地裁)。このように、会社に無断でアルバイトをしていることも問題になります。「アルバイトをする場合は、会社の承諾を得ることが必要である」といった就業規則がある場合、無断で就業すると手続違反として懲戒事由になる可能性もあるでしょう。
◆就業規則の徹底を図ってきたかが問われる
また、会社がそれまで違反行為に厳しく対処してきたかどうかもポイントになります。会社や社外での行動に厳しく対処してこなかった会社が、急に特定の人を対象に懲罰を科すことは妥当ではないという見方もできます。
会社側が日常的に研修などを通じて就業規則の徹底を図っており、違反者には公平に処分を下していたのであれば、社員が反論するのは難しいでしょう。
企業による飲酒運転対策への
取り組み
◆飲酒運転への関心の高まり
ここ最近、飲酒運転への関心が高まり、企業の間でも飲酒運転をした社員に対し厳罰を下せるような体制を整備する動きが出始めているようです。改めてコンプライアンス(法令順守)経営の見直しに躍起になっている企業も多いのでしょうか。
酒類を扱う飲食業界や自動車に関連する運送会社、自動車メーカーなどでは以前から厳しい内規を設けて社員に飲酒運転の禁止を徹底させている例が多かったようですが、最近の危機感の高まりは、こうした業界だけにとどまらないようです。
社会保険労務士事務所や法律事務所には、「飲酒運転に対する社内処分を厳しくするためにはどうすればいいか」との相談が増えているといいます。
◆就業規則による明文化
社員が就業時間中に業務に絡み飲酒運転事故を起こせば、企業が雇い主として責任を問われ、損害を賠償する必要も生じます。多くの企業では、就業規則に「故意または重大な過失により会社に重大な損害を与えた場合」を懲戒解雇事由の1つに定めているため、処分が可能になります。
◆休日の飲酒運転でも懲戒処分は可能?
対応が難しいのは、休日の飲酒運転など、業務とはまったく関係のないケースです。
就業規則では、通常、無断欠勤や会社の秩序を乱した場合など、どんな事例が懲戒処分に相当するかを規定しているので、その規定に「飲酒運転をした場合」という項目を加えることがこの場合の対処法の1つといえます。
しかし、労働基準法では客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇を無効とすると定められています。過去には、休日に飲酒事故を起こした社員の懲戒解雇について、事件が報道されず会社の社会的評価は棄損されていないことや、他の社員からも処分が重いとの意見もあるなどとして懲戒解雇を無効とした裁判例があります。飲酒運転に対する社会の意識変化や、社内の他の処分例とのバランスを考慮すべきだといえます。
◆飲酒運転を許さない姿勢こそが重要
飲酒運転は決して許されるものではありません。法令順守の観点から、企業が就業規則などを通じて飲酒運転を許さない姿勢を社員に示せば、飲酒運転減少につながる可能性があるといえるでしょう。
医療制度改革に伴う
患者の医療費負担引上げ
◆医療制度改革関連法に救済措置
今年6月、医療制度改革関連法が国会で成立しました。10月から患者負担が引き上げられ、70歳以上の高齢者の負担増が色濃く打ち出されています。
ところが、税制改革の影響で、収入が増えてもいないのに「現役並み所得がある」と判定されて、負担が急増する高齢者が80万人程度もいることが判明し、政府は救済措置を設けました。
◆課税所得145万円以上で負担増
「現役並み所得がある」とは、「課税所得が145万円以上」であることをいいます。前年の所得をベースに自治体が7月ごろ判定し、該当者には医療費の3割負担が通知されます。
課税所得とは、収入から公的年金等控除、社会保険料控除、基礎控除など各種控除を差し引いて最終的に税率を掛ける金額です。2005年の税制改革で高齢者の一律的な優遇を是正するため、公的年金等控除が縮小され、老年者控除も廃止されました。
この結果、収入に変動がなくても控除額が減って課税所得の基準を超える人が出てきたのです。
◆本人の申請が必要
救済措置は、元の収入が夫婦世帯なら520万円未満、単身世帯なら383万円未満であれば医療費1割負担のまま据え置かれる内容です。役所では元の収入も把握していますが、救済を受けるには本人による申請が必要な仕組みになっています。
◆患者負担の月額上限も引上げ
10月からは全世代を通して1カ月当たりの患者負担上限額も引上げとなりました。
・
70歳以上の場合…「現役並み所得者」は従来の「7万2,300円+使った医療費の一定割合」から「8万100円+一定割合」に上がりました。「一般所得者」なら「4万200円」が「4万4,400円」なるので、この差は大きいといえます。ただ、税制改革の影響で、「現役並み所得」に移行した人については今後2年間、「一般」上限額のまま据え置くなどの措置もあります。
・ 70歳未満の場合…70歳未満の現役世代については通常、70歳以上の「現役並み所得者」と同じ上限が適用されます。月収が53万円以上の上位所得者は、10月から「15万円+一定割合」が上限となります。負担は増えますが、大きな手術で高額な医療費を使った際、上限が決まっていることは大きな助けになるといえます。意義を改めて認識し「公的保険は駄目だ」と決め付けずに運用していくべきでしょう。
12月の税務と労務の手続
[提出先・納付先]
10日
○
源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○
雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
○
労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]
15日
○
勤労青少年旅客運賃割引証交付申請書の提出<12月15日〜1月25日>
[労働基準監督署]
31日
○
固定資産税<都市計画税>の納付<第3期分>[郵便局または銀行]
○
健保・厚年保険料の納付
[郵便局または銀行]
○
日雇健保印紙保険料受払報告書の提出[社会保険事務所]
○
労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
本年最後の給料の支払を受ける日の前日まで
○
年末調整による源泉徴収所得税の不足額徴収繰延承認申請書の提出[税務署]
○
給与所得者の保険料控除申告書<生命保険・損害保険・社会保険>兼給与所得者の配偶者特別控除申告書の提出[給与の支払者]
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所長 特定社会保険労務士 田村 幾男
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