石川虚舟
▶ TOP PAGE
 
《ロンシャンの丘》
石川虚舟、2011
ライン紀行
 ▼ 
ヴァイセンホフの家
 
竜の血
 
天地の狭間で
 
天地成婚
 
ガラス製の泉
 
大理石製の遅延
 
ライン紀行
 
アユタヤ紀行
 
越南紀行
 
 石川虚舟 
 
ハイデガーと東洋思想
 
 
 

石川虚舟 《 ロンシャンの丘 》 2011
 
石炭は炭酸ガスを発生し、虚と化す。
漆喰は炭酸ガスを吸収し、時熟する。
ロンシャン礼拝堂参道下の炭坑跡で、石炭を採集。
参道途中で採集した赤い泥岩を、漆喰で塗り固める。
基盤の赤い泥岩は礼拝堂近くで採集。
 
礼拝堂は天と地、神なるものと死すべきものとの架け橋である。ハイデガーは物としての「橋」について次の様に思考する。
 
橋はそれ自体の 方法で天と地、神なるものと死すべきものを橋それ自体に集合させる。
MARTIN HEIDEGGER, BAUEN WOHNEN DENKEN, 1951 
cf. MARTIN HEIDEGGER, VORTRÄGE UND AUFSÄTZE,  S.147, 1954.
 
  秋空に白壁浮かぶ礼拝堂  虚舟
 
 
 
 
    2011年8月27日、ライン河左岸のアウトバーンをフランス東北部、アルザス地方に向かう。初日の宿泊地、ストラスブールの街並は、赤い泥岩の石積み。近代美術館で、クプカ、カンディンスキー、そしてアルプの作品に出会う。彼らは共に神秘主義に関係するが、ストラスブールは神秘主義者シュレーの本拠地。マルセル・デュシャンは、クプカの影響を受けている。
    28日に二日目の宿泊地、コルマールに向かう。延々とブドウ園が続く広大な盆地に、赤い泥岩を漆喰で塗り固めた集落が点在する。城塞のある赤い岩山の山頂から、ライン河の対岸にドイツのフライブルグの街を展望。距離は、車で一時間強。 29日、ライン河を渡ってハイデガーゆかりのフライブルグ大学本館内部を見学。第二次大戦で破壊された本館は、赤い泥岩の石積建築で、現在も修復中。
     午後、再度、ライン河を渡ってアルザス地方の南に接する片田舎、ロンシャンへ。ル・コルビュジェ設計の礼拝堂に詣でる。老いた修道女が乳母車の乳児をあやす長閑な光景に、戦闘機二機が超低空で飛来。リビア紛争出撃への肩ならし?。第二次大戦中、旧礼拝堂は砲撃によって破壊されるが、その残骸の石をル・コルビュジェは漆喰で壁に塗り込める。
    ハイデガーがロンシャン礼拝堂を*訪れ、賞賛したという。彼にはイエズス会宣教師を目指していた経歴。その礼拝堂は、アルプのオブジェとともに、漆喰壁に穿たれた窓の配置が、カンディンスキーの作品を想起させる。ル・コルビュジェ、ハイデガー、そしてデュシャンに、通底するものを感得する。
*cf. ディーター・イェーニッヒ/嶺秀樹他訳『芸術の空間』、 p.54 
    復路はロレーヌ地方のナンシーで一泊。19世紀前半に建設された旧市庁舎広場でライトショー。ヴィデオ・プロジェクターで旧市庁舎のファッサードに映像が投影される。30日に、アールヌーボー様式の住宅作品(二軒)を観た後、ルクセンブルグを横切って、ボンへ戻る。