有性生殖・・・元々は、DNA修復や外来DNAの取り込みのため?
有性生殖 : 配偶子、有性生殖の意義、有性生殖のパラドックス
接合 : 一般型、特殊型、繊毛虫、細菌
有性生殖は、2つの細胞(個体)間で、DNAの交換を行うことにより、両親とは異なる遺伝子型をもつ個体を生み出すことです。
種によっては、有性生殖専門の細胞(配偶子)を生産します。
配偶子には、大きさが異なるものがあり、
大きな配偶子を雌性配偶子、
小さな配偶子を雄性配偶子、といいます。
大小の配偶子を生産しない種では、有性生殖を行う、つまり性はありますが、雌雄の別(性別)はないことになります。
真核生物は、基本的に有性生殖を行いますが、
原始的な多細胞動物である、クラゲ(刺胞動物)では、幼生のポリプが無性的に増殖します。
また、海綿動物は、無性生殖と有性生殖の双方を行います。
有性生殖も、雌雄同体と雌雄異体の双方の種があります。
単細胞生物の場合、細胞(個体)がそのまま接合を行うものがあり、
その場合には、2個体から1個の接合子を生じます(個体数が増えません)。
原始的な緑藻植物である、プラシノ藻は、基本的に無性生殖です。
動物・植物以外では、有性生殖は、増殖とは直接は関係しないことが多いです。
原核生物は、基本的に無性生殖です。
尚、細菌でも、有性生殖は発見されていますが、やはり増殖とは直接関係しません。
接合は、2つの細胞が互いに融合し、核の融合が生じるものです。
一般的には、接合が行われる前に減数分裂が行われて、核相が単相( n )になっており、接合によって複相( 2n )となります。
細菌の場合は、もともと単相ですが。
細菌の接合は、遺伝子の水平伝播の要因です。
プラスミドは、細胞内で複製され、娘細胞に分配される、染色体以外のDNA分子です。
Fプラスミドのように、細菌の接合を起こすものがあります。
有性生殖は、遺伝的な多様化を生じさせ、環境変化への対応や進化に貢献していると考えられていますが・・・
多様性は、目的というよりは、複製失敗の副産物のような気がしますが。
有性生殖はコストがかかるにも関わらず、多くの生物が有性生殖を行うことを、有性生殖のパラドックスといいます。
これに対する様々な仮説は、有益な遺伝子の蓄積、または有害な遺伝子の蓄積防止、をもとにしているようですが・・・
一方が有益な遺伝子、他方が有害な遺伝子の蓄積と、矛盾する気がするのですが・・・
自然選択説から考えると、有害な遺伝子の蓄積防止の方が、可能性が高い気がします。
尚、有性生殖でみられる、減数分裂の過程で、相同組み換えにより、染色体の乗換えを行います。
大腸菌等の真性細菌では、相同組み換えを介して、DNA修復や外来DNAの取り込みに関与しているようです・・・
有性生殖は、元々は、DNA修復や外来DNAの取り込みのためのものだったのでしょうか?(詳細不明)
有性生殖は、2つの個体間または細胞間で、全ゲノムに及ぶDNAの交換を行うことにより、両親とは異なる遺伝子型個体を生産することです。
遺伝子のやり取りをすることなく、生殖を行う方式を、無性生殖といいます。
繊毛虫等で起こるオートガミーは、同一細胞内で再融合が起こるため、細胞間でゲノム遺伝子のやりとりは行われていません。
このため、有性生殖には含まれません。
有性生殖は、真核生物で普遍的に認められます。
真正細菌でも発見されていますが、
古細菌では、今の所認められていません。
種によっては、有性生殖専門の細胞を生産します。
有性生殖に関与する生殖細胞のうち、次世代につながるゲノムDNAのやりとりに直接関わる細胞を、配偶子といいます。
ヒトの配偶子は、卵と精子で、その融合は、受精といいます。
菌類や植物では、受精と同義で、接合(配偶子接合)が用いられる事もあります。
受精や接合の結果生じた細胞は、接合子といいます。
一般的には、ある生物集団に属する性成熟した個体が、
相対的に小さな配偶子を生産する場合を、雄(オス)、
大きな配偶子を生産する場合を、雌(メス)、
双方の配偶子を同一個体が生産する場合を、雌雄同体といいます。
雌雄別のある生物種でも、環境・個体の大きさ・齢等により、雌・雄・雌雄同体を変更するものがあります(性転換)。
動物は、一般的に雌雄異体で、
雌雄同体(カタツムリ・ミミズ等)は少数です。
植物(陸上緑色植物)は、一般的に雌雄同体ですが、雌雄異体(イチョウ・ゼニゴケ等)も多いです。
菌類では、大小の配偶子を生産する種も、配偶子の大きさに差がない種も、通常の細胞が接合(体細胞接合)する種も、認められます。
多くの原生動物・細菌では、配偶子を造らず、通常の細胞が、遺伝子交換を行います(接合)。
大小の配偶子を生産しない種では、有性生殖を行う、つまり性はありますが、雌雄の別(性別)はないことになります。
尚、動物・植物以外では、有性生殖は、個体数の増加(増殖)とは直接は関係しないことが多いです。
シダ類やアブラムシの一部等、動植物に属する生物種にも、有性生殖と増殖が直接関係しないものがあります。
シダ類の前葉体の多くは、1個体しか受精後の2n世代を造りません。
アブラムシの一部種の雌は、有性生殖時に生涯に1つしか卵をしか生産せず、雄の存在を考えると個体数は減少します。
これらの生物では、個体数の増加は、無性的に行われます。
配偶子 有性生殖
接合を行う生殖細胞を、配偶子といいます。
互いに接合する配偶子が同型の場合を、同型配偶子接合と呼び、緑藻類等にみられます。
配偶子の大きさが異なるものは、異形配偶子と呼び、
大きな配偶子を雌性配偶子、
小さな配偶子を雄性配偶子といいます。
多くの動物に見られる卵と精子のように、一般に
雌性配偶子は、大型で運動性を持たず、
雄性配偶子は、小型で運動性を備えます。
卵と精子でない異型配偶子で生殖する生物には、海藻のアオサ等があります。
また配偶子が独立せず、配偶子嚢(のう)内にあるまま、配偶子嚢が接合を行うものもあります。
生活環と有性生殖
有性生殖とは、配偶子を形成し、それが接合する過程です。
動物の場合、配偶子形成の時に減数分裂を行うので、遺伝子の組み換えに関わる現象は連続して起こります。
しかし植物や藻類、菌類では、接合と減数分裂が、生活環中の離れた過程で起きるものも少なくありません。
世代交代があるシダ植物では、減数分裂による胞子形成が無性生殖として扱われる場合がありますが、
これは配偶体世代の有性生殖に続く重要な段階であり、その意味では有性生殖の一部です。
菌類では、これに無性生殖を含む、更に複雑な生活環がみられるため、
減数分裂や接合を含む一連の円環を、有性生活環(テレオモルフ)と呼び、
無性生活環(アナモルフ)と区別しています。
菌類の有性生殖
菌類の場合、減数分裂による胞子形成のことを、有性生殖という場合があります。
子のう菌の子のう胞子、担子菌の担子胞子は、いずれも2核の融合後、その核が減数分裂することによって形成されます。
また、それらの胞子は、単独で発芽して菌糸体を形成します。
これらの接合は、特に分化した器官ではなく、菌糸等、普通の体細胞の接合によって起きます。
接合が行われても、個体数が増えない場合や、新たな個体を生じない場合もあります。
単細胞生物の場合、特に新たな配偶子を生じず、細胞がそのまま接合を行うものがあり、
その場合には、2個体から1個の接合子を生じます。
珪藻では、細胞内で減数分裂を行い、その後に接合して新たな個体が作られます。
繊毛虫の場合、小核(生殖核)が減数分裂を行って、接合した相手とそれを交換し、それぞれの細胞内で小核が再構成されます。
この場合、核の遺伝子組成は変化しますが、個体の増加を伴いません。
有性生殖では、2つの細胞の接合によって両者の遺伝子が組み替えられ、新たな遺伝子の組み合わせを持つ個体が生じます。
接合の前(配偶子を生産する場合は、その形成時)には減数分裂が行われ、
染色体の選択が生じ、配偶子の遺伝子型は多様なものとなります。
配偶子の組み合わせで生じる接合子は、更に多様な遺伝子の組み合わせを持つことになります。
自ら及び近縁個体の配偶子を排除するためのシステムとして、自家不和合性を持つ種があります。
このような過程を経て、生物の多様性を生み、更には進化をもたらすのが、有性生殖の意味と考えられていますが・・・
有性生殖と比較して、短期的には無性生殖の方が有利な繁殖方法とされます。
個体数と繁殖スピードが同じ個体群なら、子供を生まない雄がいる個体群よりも、子供を生む個体ばかりの個体群の方が繁殖速度は大きいです。
例えば雌雄が1:1である集団の場合、無性生殖による繁殖速度は有性生殖の2倍となります。
また、異性を探し回る、交尾をする等の繁殖行動には、時間や体力が必要である上、交尾中は無防備です。
加えて、動植物以外の生物では、多くの場合で有性生殖は、個体数の増加とは直接関係しません。
有性生殖は、個体数の増加や個体の成長には直接結びつかないにも関わらず、必要な資源を消費します(有性生殖のコスト)。
コストがかかるにも関わらず、多くの生物は有性生殖を行うことを、有性生殖のパラドックスといいます。
有性生殖のパラドックスと有性生殖の進化を説明する仮説
無性生殖では、有害遺伝子が徐々に蓄積していき、いつかは生殖や繁殖に支障をきたすに至る、という理論
(ハーマン・J・マラーとロナルド・フィッシャー。環境に適応するスピード)。
ラチェットは、テニスのネットを巻き上げる際に使われる機構です。
有害遺伝子が蓄積されていくと、一つの効果は小さくても、遺伝子の組み合わせによって、生存や繁殖に支障をきたす可能性が高くなります。
しかし、有害遺伝子を持つ個体の方が、淘汰を受けやすいために、有害遺伝子は集団から排除される傾向にあり、
有性生殖の必要性を説くには不十分である、等の反論もあります。
有性生殖の意義を、生物の環境に対する適応から考えた説の一つで、
遺伝子の攪拌がある有性生殖の方が、環境に適応するスピードが速い、とする説(ハーマン・J・マラーとロナルド・フィッシャー。マラーのラチェット)。
突然変異によって、生存上有利な遺伝子が生じた場合、
有性生殖では、遺伝子の組み換えが生殖のたびに起こるため、
突然変異で生じた適応的な遺伝子も混ざりやすく、有利な遺伝子がそろう確率も高くなる、というものです。
無性生殖は、突然変異により有害遺伝子が発生した場合、これが次世代以降に引き継がれていくことになります。
有害遺伝子の蓄積が続けば、ある時突然多くの個体が生存不可能な値に達し、集団が壊滅的な打撃を被る可能性があります。
それを防ぐために、有性生殖による遺伝子の組み換えが有効であるとする、ようですが・・・
有利な遺伝子が蓄積したのに、組換えで消滅する可能性もありますが・・・
病原体への抵抗力をつけるために、有性生殖による世代交代と遺伝子の更新が必要、という説。
有性生殖により集団内の遺伝子を常に組み替え、手段の多様性を増さないと、
病原体とのイタチゴッコに負けてしまうという考えに基づきます。
2つの細胞が互いに融合し、核の融合等を生じるものです。
有性生殖において重要な段階です。
元来は、真核生物について適用された語ですが、
細菌のやや異なった現象も、接合と呼ばれています。
尚、真核生物でも、繊毛虫はやや特殊です。
いずれの場合でも、他個体、または他系統との間での遺伝子の交換が行われ、
新たな組み合わせを生じるという点で、共通の意味を持つものと考えられ、有性生殖を構成する段階と考えられます。
接合によって、2つの細胞の核が融合するため、接合子の染色体の数は、両者を併せたものになります。
通常は同じ核相の細胞同士が接合するため、染色体数は倍増します。
接合が行われる前に減数分裂が行われ、核相が単相( n )になっているのが普通で、接合によって複相( 2n )となります。
動物では、普通は配偶子の形成される前に減数分裂が行われた後、接合するため、単相の状態は配偶子のみです。
一方、植物や藻類では、単相の栄養体を生じるものも多いです。
接合と減数分裂がどのタイミングで行われるかは、生活環の重要な特徴です。
真核生物では、2つの細胞が互いに融合して1つの細胞となり、その内部で両者の核が融合することで完結します。
融合する細胞を、配偶子(配偶細胞)と呼び、
融合によって生じた細胞を、接合子(接合細胞)といいます。
単細胞生物では、そのまま接合するものも多く、
アオミドロのように、多細胞生物でも、栄養体の体細胞が、そのまま配偶子として振舞うものもあります。
しかし、多細胞生物のほとんどは、配偶子として、特別な細胞を形成します。
配偶子に特に分化がみられない場合、配偶子の接合を、同型配偶子接合といいます。
配偶子に大小の分化を生じているものも多く、異形配偶子接合といいます。
卵と精子の接合のことを、特に受精といいます。
配偶子が、明確には形成されないものもあります。
ケカビ等の接合菌類は、菌糸から特別な枝を生じ、先端部が膨らんで、2つ向かい合って融合します。
融合で生じた細胞内では、両側の菌糸に由来する核が融合するので、それらが配偶子の核にあたると考えられます。
そこで、この菌糸の枝の膨らみを配偶子嚢と考え、その内部で配偶子を作るのを省略したとみることができます。
このように、配偶子嚢に配偶子を形成されず、配偶子嚢間で接合が行われることを、配偶子嚢接合といいます。
被子植物の場合、花粉管内の精子は、独立した細胞になりません。
その点で配偶子嚢接合に似ますが、胚嚢には卵細胞が形成されるので、配偶子配偶子嚢接合ということもあります。
担子菌類では、普通の菌糸の融合が行われます。
また、担子菌類と子嚢菌類は、細胞の融合と核の融合とが離れた時期に行われる点でも特殊です。
細胞質の融合によって二核となった菌糸は、その状態を保ったままで成長、分裂します(二次菌糸)。
この状態は、子嚢や担子器ができるまで維持されます。
繊毛虫 原生動物の有性生殖
ゾウリムシやテトラヒメナ等繊毛虫の場合、
小核(生殖核)が減数分裂を行って、接合した相手とそれを交換し、それぞれの細胞内で小核が再構成されます。
この場合、核の遺伝子組成は変化しますが、個体の増加を伴いません。
繊毛虫や一部の太陽虫は、減数分裂を行いますが、
同一細胞内で再融合が起こり、ゲノムDNAの交換を行わないことがあります(オートガミー)。
オートガミーは、有性生殖に含めないことが多いです。
ゾウリムシの接合は、細胞が融合することがなく、接合する二個体は腹面で接触し、終了すると再び分かれます。
接触部分で、核の行き来が行われます。
ゾウリムシの細胞には、大核と小核の2種の核があります。
接合が始まると、大核は消失します。
その後に小核が、減数分裂を行い、4つに分かれます。
この4つのうち、2つは消失し、1つが相手の細胞に移動します。
それぞれの細胞では、残った1つの核と、相手から来た1つの核が融合して、これが新たな小核となり、接合が終了します。
大核は、その後に小核を元に形成されます。
この場合、2つの細胞が完全に融合することはなく、
連絡を持つものの、2つの細胞は独立を保ちます。
しかし、両者の核より減数分裂で生じた核が、融合して新しい核を生じる、という面では一般の接合と同じです。
様々な細菌で、細胞間に接触を生じて、互いの遺伝子の一部をやり取りする現象が知られています(細菌の接合)。
細菌の接合で伝達されるのは、プラスミドです。
細菌の接合は、遺伝子の水平伝播の大きな要因となっています。
細胞内で複製され、娘細胞に分配される、染色体以外のDNA分子です。
一般に、環状2本鎖構造をとります。
細菌や酵母の細胞質内に存在し、染色体のDNAとは独立して、自律的に複製を行います。
尚、ウイルスは、自己複製できません。
細菌の接合を起こすもの(Fプラスミド)等があります。
複製機構が類似しているプラスミド同士は、同一宿主菌内では共存できません(不和合性)。