健診や人間ドックで肝機能異常を指摘されたことはありませんか。 その多くは脂肪肝と呼ばれ、以前は良性で非進行性とされていました。 しかし、近年このような肝障害でも、線維化(肝組織が硬化し機能が低下)が進み 肝臓がんになる例があることが分かってきました。
大量飲酒者の大部分は脂肪肝ですが、大量飲酒習慣もウイルス肝炎罹患もない、 主に肥満者で肝臓に脂肪が過剰沈着した状態を非アルコール性脂肪肝と呼び、 日本でも成人の20%位はこの状態であると推定されます。 肥満の他、生活習慣の乱れ、運動不足、ストレス、昼夜逆転の就業なども脂肪肝の発症に関係します。
肥満度の指標としてBMI(body mass index)という計算式があります。 これは体重(kg)÷身長(m)²で求められます。 この値から、以下のように肥満度と脂肪肝の合併確率を知ることができます。
BMI | 肥満度 | 脂肪肝の可能性 |
---|---|---|
≦25 | 標準 | 極めて低い |
25〜30 | 軽度肥満 | 30% |
>30 | 肥満 | 80% |
脂肪肝が進行すると、肝臓の線維化(機能が低下し、肝組織が硬くなる)が進みますが、 糖尿病・高血圧・脂質異常症は脂肪肝炎との関連が強く指摘されています。 脂肪肝を放置すると約10%が脂肪肝炎に、その後10年でその10-20%が肝硬変、 さらに毎年その数%が肝臓がんに進展すると考えられます。 この肝線維化の可能性を、健診などの採決結果を用いて予想できる以下の様な計算式 (肝線維化指標:FIB-4)があります。
日本肝臓学会のサイトの計算式 FIB-4 index計算サイトのご案内(EAファーマ 提供)(医療従事者向け) を用いることもできます。 ここで、この計算式に、血小板数を代入する際、注意が必要です。 例えば、血小板数が22.3(104/mm³)と記載されている場合、これを10倍した値223を代入します。
FIB-4から以下のように肝臓の線維化の可能性を知ることができます
FIB-4 | 肝臓の線維化の可能性 | |
---|---|---|
1 | <1.30 | 線維化はなく脂肪肝炎の可能性は低い |
2 | 1.30〜2.67 | 1と2の中間 |
3 | ≧2.67 | 肝線維化確実で脂肪肝炎の可能性が高い |
現在のところ、NASHの治療として確立された薬はありません。 最も重要なのは、普段の食事と運動などの生活習慣の是正、体重減量です。