PassionateBlue2.2 高校生。

 由良は目を閉じたまま、煌の背中に腕を回した。唇が塞がれる。何度も何度も執拗にキスを交わして再び視線を合わせた頃には、由良の全身の力は抜けきっていた。煌の指が髪の中を滑ってかきあげる。耳元に囁くように軽く甘く口付けると、由良は微かに身体を強張らせた。
  「煌くん・・・明るいトコ恥ずかしい・・・・・・」
  「たまにはいいだろ、違うシチュエーションも」
  「・・・・・・えっち」
  優しく睨んで、由良は目を閉じた。煌は首筋に唇を滑らせて、左手でブラウスのボタンを器用に外していく。はだけた胸元を貪るように何度も優しくキスする。由良は声を殺して喉を反らせた。快感の波が急に押し寄せてくる。切なく息が漏れる。煌はさらそれを引き出そうと、何度も焦らすようにブラのラインに沿って優しく愛撫する。拍車をかけるように煌は左手で膝からゆっくりと上向きに辿った。
  不意に寝室の扉が勢いよく開いた。ぎょっとして煌はそちらを見る。
  「・・・・・・あ」
 誠は馬鹿みたいに口を大きく開けて、また勢いよく扉を閉めた。ドアの閉まる渇いた音だけが残る。頭痛を押さえきれない様子で煌は大きな溜め息を吐いた。由良は煌とは反対に愉快そうに肩を震わせて笑う。
  「誠くんてばどうやって入ったんだろうね?タイミング悪ぅい、ふふっ」
  ノーコメントの煌は由良の胸に顔を埋めて、甘えるように頬をすり寄せる。由良は子どもを優しく抱きしめるように腕で包み込んで、煌のくせのない髪を何度も撫でた。
  きっかり30分後に、誠のいる部屋からノック音が聞こえる。二呼吸以上の時間があって、誠が出てきた。とっくに衣服の乱れを正してお茶を飲んでいた由良は元気に返事する。煌は冷めた目でドアの方を、脚を組んで見ている。
  「は〜い!入ってまーす」
  「よぅ、マジで悪かったな」
  「反省してる?」
  「超しています」
  本当に反省している様子なので、煌も許してやることにした。由良は誠の分のコーヒーをカップに移して勧めた。誠はまだ済まなそうに、椅子にかける。
  「で」
  煌が尋問口調で頬杖をついて視線を誠の目に固定して言葉を吐き出した。返答次第では容赦のないという雰囲気がありありと見える。実際煌は由良がカンタンに許してしまうのが解せない。あれでよかったものの、二人がもっと先まで進んでいたら笑い事では済まない。
  「どういう用件で俺の部屋に先回りして、しかも靴まで隠してたんだ・・・?」
  「いや、他意はねぇんだけど・・・ちょっと脅かしてやろうと思って隠れてたんだけど、ついつい寝ちまってよぅ、それで目が覚めてガラっと開けたらおまえらがよろしくやっていたっていう・・・」
  「あはは、びっくりしたよねぇ。誠くん超驚いた顔してたもん」
  「そりゃあビビったビビった。最近一番のビビった事件だった」
  「わたしもビビったよー」
  「由良・・・君なぁ・・・・・・」
  煌は無邪気に誠と笑いあう由良の姿に、コメントも怒りの姿勢をもどこかにやってしまう。こういうところが由良の不思議なところで、煌が大好きなところでもある。煌の怒りはたちどころも虚しく、由良に簡単に持ち去られてしまう。しかし由良がいいなら、煌が独りで腹を立てているというのもおかしな話だ。
 「そうそう、オレ面白いゲームを手に入れたんだよ」
 誠は寝室からバックパックを持ってきて、中から紙袋を取り出した。もったいぶって由良の目の前にちらつかせる。由良は猫の仔のように、それを取ろうと何度も手を伸ばしていた。
 「何?早く見せて見せて〜!」
 「じゃじゃーん!マリオブラザーズだっ!」
 中古のゲームショップを何軒も回って、やっと手に入れたらしい。子どもの頃3人が夢中になったゲームだ。最近何を思ったか誠はTVゲームに凝っていて、由良を巻き込んでゲーム三昧の日々である。誠の言うには、ファミコンのゲームソフトの何本かは今マニアの間で話題になっていて、高く取引されているという。
 「きゃ〜〜〜っ!誠くんエライ〜!」
 「さっそくやろうぜ!最初はグー!じゃんけんぽんっ」
 ついつられて参戦した煌が一人勝った。悔しそうな二人は何度か引き分けを重ねて、遂に由良が勝利した。誠は小さく文句を言いながらゲームのセッティングをする。煌はたまに、3人でいると子どもの頃に還ったような錯覚に陥る。これがいつまでも続けばいいと思う時、必ずだ。そう、悪くない。
 本気でやっているのにも関らず、みんなのマリオはすぐ死んでしまう。それがおかしくて、何度もコントローラを回して暫くゲームに熱中していた。また、これが続けばいいと煌は思った。



File2.0  時の扉
File2.1  幼馴染み
File2.2  高校生。
File2.3  大事なこと、信じているもの。
File2.4  バトルロワイヤル
File2.5  青春X3!
File2.6  When we were green.
File2.7  つりにゆこう
File2.8  空が青い日
巻末付録(ミニデータベース)
公式HPより抜粋記事
言い訳ついでにあとがき




TOPだぜっ 目録だぜっ 地下室TOPだぜっ